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特許拒絶査定不服審判

2019-015427

ICタグ読取装置

審判番号
2019-015427
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-199640
請求日
2019年11月18日
審決日
2020年09月14日
公報発行日
2020年12月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】下田工業株式会社
  • 【請求人代理人】工藤 一郎
  • 【請求人】株式会社エフテクト
  • 【請求人代理人】工藤 一郎
審判長/審判官
  • 審判長 田中 秀人
  • 審判官 月野 洋一郎
  • 審判官 須田 勝巳
分類
P18 .121-Z (G06K) / P18 .575-Z (G06K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第164条第3項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-199640「ICタグ読取装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開,特開2017- 72995〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は,成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成27年10月7日の出願であって,平成30年10月3日に出願審査の請求がなされ,平成31年3月20日付けで審査官により拒絶理由が通知され,これに対して令和1年7月31日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ,同年8月13日付けで拒絶査定(以下,「原査定」という。)がなされ,これに対して同年11月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正がなされ,令和2年2月27日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされ,同年8月12日付けで上申書が提出されたものである。 第2 令和1年11月18日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和1年11月18日にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1乃至5の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所である。以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正後の請求項」という。) 「  【請求項1】 ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置であって、 ゲートの進行方向の左右に二つの電波吸収板が備えられ、それぞれは、 炭素繊維及び合成繊維を含み、合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた第一電波吸収板と、 シールド不織布からなり第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と、 であり、 ICタグ読取用アンテナは、ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側と、天井面内面側とに備えられているICタグ読取装置。 【請求項2】 シールド不織布中における炭素繊維の含有割合は、10%以上、35%以下である請求項1に記載のICタグ読取装置。 【請求項3】 シールド不織布の体積密度は、30kg/m3から1000kg/m3である請求項1又は2に記載のICタグ読取装置。 【請求項4】 シールド不織布の厚みは1mmから30mmである請求項1から3のいずれか一に記載のICタグ読取装置。 【請求項5】 第一電波吸収板のシールド不織布の炭素繊維の含有割合は、 第二電波吸収板のシールド不織布の炭素繊維の含有割合よりも小さいことを特徴とする 請求項1から4のいずれか一に記載のICタグ読取装置。 」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,令和1年7月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至5の記載は次のとおりである。(以下,この特許請求の範囲に記載された請求項を「補正前の請求項」という。) 「  【請求項1】 炭素繊維及び合成繊維を含み、合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた第一電波吸収板と、 シールド不織布からなり第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と、 ICタグ読取空間の内側壁面のいずれか一以上の位置に配置されるICタグ読取用アンテナと、 ICタグが付されたものを読取空間に出し入れするための一以上の出入口と、 からなるICタグ読取装置。 【請求項2】 シールド不織布中における炭素繊維の含有割合は、10%以上、35%以下である請求項1に記載のICタグ読取装置。 【請求項3】 シールド不織布の体積密度は、30kg/m3から1000kg/m3である請求項1又は2に記載のICタグ読取装置。 【請求項4】 シールド不織布の厚みは1mmから30mmである請求項1から3のいずれか一に記載のICタグ読取装置。 【請求項5】 第一電波吸収板のシールド不織布の炭素繊維の含有割合は、 第二電波吸収板のシールド不織布の炭素繊維の含有割合よりも小さいことを特徴とする 請求項1から4のいずれか一に記載のICタグ読取装置。」 2 補正の適否 本件補正は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ICタグが付されたものを読取空間に出し入れするための一以上の出入り口と、からなるICタグ読取装置」という事項を,「ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置」と限定し,「電波吸収板」について,「ゲートの進行方向の左右に」「備えられ」との限定を付加し,ICタグ読取用アンテナについて,「ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側と、天井面内面側とに備えられている」との限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1(1)の【請求項1】に記載した以下のとおりのものである。 「  【請求項1】 ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置であって、 ゲートの進行方向の左右に二つの電波吸収板が備えられ、それぞれは、 炭素繊維及び合成繊維を含み、合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた第一電波吸収板と、 シールド不織布からなり第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と、 であり、 ICタグ読取用アンテナは、ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側と、天井面内面側とに備えられているICタグ読取装置。」 (2)引用文献等の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である,特許第4953201号公報(平成24年6月13日発行,以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様。) A 「【0009】 以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。 図1,図2は本発明に係るRFIDゲート構造の実施の一形態を示し、このRFIDゲート構造は、RFIDタグ7を付設した被識別体10が通過する通路部13の一側に、RFIDタグ7に記憶させた情報を読み取るUHF帯( 800MHz~ 960MHz)用のRFIDアンテナ8が配設されている。RFIDアンテナ8は、その電波放射面28が通路部13の向き(被識別体10の通路方向12)と平面視で平行状となるように、床面から所定(例えば、1300mm)の高さ位置となるように図示省略の保持部材によって保持される。」 B 「【0019】 次に、図8,図9は本発明に係るRFIDゲート構造の他の実施の形態を示し、図1,図2のゲート構造との相違点は、通路部13の両側に夫々、RFIDアンテナ8を配設し、かつ、通路部13を挟んで各RFIDアンテナ8の反対側に電波吸収側壁1を配設した点である。一側・他側のRFIDアンテナ8A,8Bは、夫々の電波放射面28,28が平行かつ対向状になるように同じ高さ位置又は相違する高さ位置として、側壁1の中央矩形板19aの表て面(通路部13側の面)にRFIDアンテナ8を固着する。また、一側・他側の電波吸収側壁1A,1Bは、夫々の中央矩形板19a,19aが相互に平行状として向かい合って、立設されている。各電波吸収側壁1とこれに対向するRFIDアンテナ8の配置、アンテナ8の設置高さ、各側壁1にICタグ9が取着される構成は、図1~図5で説明した構成と同じである。」 C 「図8 」 (図8を参照すると,“RFIDタグ7を付設した被識別体10を収容したカートが,RFIDゲート構造の通路部13を通路方向12の向きで通過することで,通路部13の両側に配設されたRFIDアンテナ8がRFIDタグ7の情報を読み取る”態様が読み取れる。) (イ)上記A乃至Cの記載から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「RFIDゲート構造であって, このRFIDゲート構造は,RFIDタグを付設した被識別体が通過する通路部に,RFIDタグに記憶させた情報を読み取るRFIDアンテナが配設されており, 通路部の両側に夫々,RFIDアンテナを配設し,かつ,通路部を挟んで各RFIDアンテナの反対側に電波吸収側壁を配設したものであり, 一側・他側のRFIDアンテナは,側壁の表て面(通路部側の面)にRFIDアンテナを固着する RFIDゲート構造。」 イ 引用文献2 (ア)同じく原査定に引用され,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2005-191086号公報(平成17年7月14日出願公開,以下,「引用文献2」という。)には,以下の事項が記載されている。 D 「【0021】 平均繊維長25~200mmの炭素繊維を20重量%以上含み、少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂繊維を1~30重量%含む綿状の繊維ウェブを、ニードルパンチにて繊維間を絡めることにより結合してなる不織布であって、前記ポリオレフィン系樹脂繊維を最大15重量%溶融し再硬化したことにより残留繊維間が接着していることを特徴とする電波音波吸収体である。一方の面で炭素繊維の比率を高め、該面から漸減するように層内に炭素繊維による体積抵抗率の勾配を設け、他方の面でバサルト繊維の比率を高め、該面のバサルト繊維を不燃化又は準不燃化したものが好ましい。」 (イ)上記Dの記載から,上記引用文献2には次の技術が記載されているといえる。 「炭素繊維を含み,ポリオレフィン系樹脂繊維を含む綿状の繊維ウェブを,繊維間を絡めることにより結合してなる不織布であって,前記ポリオレフィン系樹脂繊維を溶融し再硬化したことにより残留繊維間が接着している電波吸収体。」 ウ 参考文献 (ア)本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2009-155108号公報(平成21年7月16日出願公開,以下,「参考文献」という。)には,以下の事項が記載されている。 E 「【0065】 搬入側検品ステーション53の読取装置55も、第1の実施例の読取装置10と同様の構成で、図20に示すように、制御部57、記憶部(記憶手段)58、送信部59、受信部60およびアンテナ装置61を備えている。アンテナ装置61は、入荷物のRFIDタグ51に電波を送信する送受信兼用のアンテナ62~64を備えている。 【0066】 上記アンテナ62~64は、図18(a)にも示すように、搬入側検品ステーション53に搬入側コンベア45を跨ぐように設置されたトンネル状胴体66の内面に設置されている。このトンネル状胴体66の天井面に設置されたアンテナ62は天井面に直角な方向に移動可能に支持され、トンネル状胴体66の左右の各内面に設置されたアンテナ663,64は左右各内面に直角な方向に移動可能に支持されている。 【0067】 このようにアンテナ62~64を内側に配設したトンネル状胴体66の内部は、RFIDタグ51との通信エリアとなる。そして、この通信エリア内にであるトンネル状胴体66内を通過するRFIDタグ51以外のRFIDタグタグと通信することを防止するために、トンネル状胴体66は、例えばアルミ材、鉄材などの電波シールド材、電波吸収材などによって構成されている。また、トンネル状胴体66の入口および出口には、同じく電波シールド材、電波吸収材などによって構成されたシールドカーテン65(出口側のもののみ図示)が設けられている。」 (イ)段落【0066】に記載の「トンネル状胴体66の左右の各内面に設置されたアンテナ663,64」の記載は,「トンネル状胴体66の左右の各内面に設置されたアンテナ63,64」の誤記であると認められる。 (ウ)上記Eの記載及び上記(イ)の認定から,上記参考文献には次の技術が記載されているといえる。 「読取装置はアンテナ装置を備えており, アンテナ装置は,入荷物のRFIDタグに電波を送信する送受信兼用のアンテナ62~64を備えており, アンテナ62~64は,トンネル状胴体の内面に設置されており, このトンネル状胴体の天井面に設置されたアンテナ62は天井面に支持され,トンネル状胴体の左右の各内面に設置されたアンテナ63,64は左右各内面に支持されており, アンテナ62~64を内側に配設したトンネル状胴体の内部は,RFIDタグとの通信エリアとなり, トンネル状胴体は,電波吸収材によって構成されている, 読取装置。」 (3)対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「RFID」は,本件補正発明の「ICタグ」に相当するものであって,引用発明の「RFIDゲート構造」は,「RFIDタグに記憶させた情報を読み取る」ものであって「ゲート構造」であるから,本件補正発明の「ICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置」に相当する。 そして,上記「(2)引用文献等の記載事項」のCから,“RFIDタグ7を付設した被識別体10を収容したカートが,RFIDゲート構造の通路部13を通路方向12の向きで通過することで,通路部13の両側に配設されたRFIDアンテナ8がRFIDタグ7の情報を読み取る”態様が読み取れるところ,引用発明の「RFIDタグ7を付設した被識別体10」は本件補正発明の「ICタグが付された物品」に相当するものである。 よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置”である点で一致している。 (イ)引用発明の「電波吸収側壁」は,本件補正発明の「電波吸収板」に相当するものである。そして,引用発明は,「通路部の両側に夫々,RFIDアンテナを配設し,かつ,通路部を挟んで各RFIDアンテナの反対側に電波吸収側壁を配設」したものであり,上記「(2)引用文献等の記載事項」のCから,“カートが,RFIDゲート構造の通路部13を通路方向12の向きで通過する”ことが読み取れるので,結局,引用発明の「電波吸収側壁」は,カートの進行方向に対して左右に対向して備えられており,それぞれ本件補正発明の「第一電波吸収側板」,「第二電波吸収側板」に相当するものであって,“RFIDタグの読み取り空間を形成するように配置されている”といえる。 また,引用発明の「RFIDアンテナ」は,本願発明の「ICタグ読取用アンテナ」に相当するところ,前述したように,「電波吸収側壁」は,カートの進行方向に対して左右に対向して備えられており,「通路部を挟んで各RFIDアンテナの反対側に電波吸収側壁を配設」したものであるから,「ICタグ読取用アンテナ」は,“ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側に備えられている”ことは自明である。 よって,本件補正発明と引用発明とは,後記の点で相違するものの,“ゲートの進行方向の左右に二つの電波吸収板が備えられ”ており,“それぞれは,”“第一電波吸収板と,第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板”であり,“ICタグ読取用アンテナは,ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側に備えられているICタグ読取装置”である点で一致している。 イ 上記(ア)及び(イ)の検討により,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 <一致点> 「ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置であって, ゲートの進行方向の左右に二つの電波吸収板が備えられ,それぞれは, 第一電波吸収板と, 第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と, であり, ICタグ読取用アンテナは,ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側に備えられているICタグ読取装置。」 <相違点1> 第一電波吸収板及び第二電波吸収板に関して,本件補正発明の電波吸収板は,「炭素繊維及び合成繊維を含み、合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた」電波吸収板であるのに対して,引用発明の電波吸収側壁には,そのような特定がなされていない点。 <相違点2> 本件補正発明は,ゲート内の「天井面内面側」にICタグ読取用アンテナを備えているのに対して,引用発明は,そのような特定がなされていない点。 (4)当審の判断 ア 相違点1について 引用文献2には,上記「(2)イ 引用文献2」の(イ)に示したとおり, 「炭素繊維を含み,ポリオレフィン系樹脂繊維を含む綿状の繊維ウェブを,繊維間を絡めることにより結合してなる不織布であって,前記ポリオレフィン系樹脂繊維を溶融し再硬化したことにより残留繊維間が接着している電波吸収体」 が記載されている。 上記記載によると,引用文献2に記載の「電波吸収体」は,「炭素繊維」及び「ポリオレフィン系樹脂繊維」を含む「不織布」であって,「ポリオレフィン系樹脂繊維を溶融し再硬化した」ものであるから「電波吸収板」といえるものである。ここで「ポリオレフィン系樹脂繊維」は,合成繊維の一種であって,「ポリオレフィン系樹脂繊維を溶融し再硬化した」ことにより,“表面から炭素繊維が脱離することを防止”されていることは明らかであり,このような炭素繊維が離脱することを防止した不織布からなる電波吸収板は,“シールド不織布”といえるものである。 してみると,引用文献2には,「炭素繊維及び合成繊維を含み,合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた電波吸収板」が開示されているといえる。 引用発明の「電波吸収側壁」と引用文献2に記載の「電波吸収体」は,ともに,電波吸収板という共通の技術分野に属するものであって,電波を吸収して電波の漏洩を防ぐという共通の機能を有するものであるから,引用発明における「電波吸収側壁」として,引用文献2に記載の「電波吸収体」を採用し,「炭素繊維及び合成繊維を含み,合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた」電波吸収板とすることは,当業者であれば容易になし得たものである。 イ 相違点2について 参考文献には,上記「(2)ウ 参考文献」の(ウ)に示したとおり, 「読取装置はアンテナ装置を備えており, アンテナ装置は,入荷物のRFIDタグに電波を送信する送受信兼用のアンテナ62~64を備えており, アンテナ62~64は,トンネル状胴体の内面に設置されており, このトンネル状胴体の天井面に設置されたアンテナ62は天井面に支持され,トンネル状胴体の左右の各内面に設置されたアンテナ63,64は左右各内面に支持されており, アンテナ62~64を内側に配設したトンネル状胴体の内部は,RFIDタグとの通信エリアとなり, トンネル状胴体は,電波吸収材によって構成されている 読取装置。」 が記載されている。 ここで,「アンテナ62~64」は,「入荷物のRFIDタグ」を読み取るものであって,「電波吸収材によって構成されている」「トンネル状胴体の内面に設置されており」,「アンテナ62は天井面に支持され」,「アンテナ63,64は左右各内面に支持され」ているものである。そして,「トンネル状胴体」はゲート型の胴体に他ならないから,結局,参考文献には,電波吸収材によって構成されているゲート型のRFIDタグ読取装置において,左右各内面と「天井面内面側」にRFIDタグを読み取るアンテナを備える技術が開示されているといえる。 引用発明と参考文献に記載の技術とは,ゲート型のRFIDタグ読取装置という共通の技術分野に属するものであって,電波吸収材によって構成されているゲートの左右側壁内面側にアンテナを配置しているという構造で共通しており,さらに,RFIDタグ読取装置において,RFIDタグを確実に読み取るというのは自明な共通の課題であるから,引用発明に参考文献に記載の技術を適用し,ゲート内の「天井面内面側」にICタグ読取用アンテナを備えるとすることは,当業者であれば容易になし得たものである。 ウ 小括 上記で検討したごとく,相違点1及び2に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明,引用文献2及び参考文献に記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 したがって,本件補正発明は,引用発明,引用文献2及び参考文献に記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 3 本件補正についてのむすび よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明の認定 令和1年11月18日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,同年7月31日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「  【請求項1】 炭素繊維及び合成繊維を含み、合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた第一電波吸収板と、 シールド不織布からなり第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と、 ICタグ読取空間の内側壁面のいずれか一以上の位置に配置されるICタグ読取用アンテナと、 ICタグが付されたものを読取空間に出し入れするための一以上の出入口と、 からなるICタグ読取装置。」 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明,及び引用文献2に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 引用文献1:特許第4953201号公報 引用文献2:特開2005-191086号公報 3 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 原査定の拒絶の理由に引用された,引用文献1及び2とその記載事項は,上記第2の[理由]2(2)ア及びイに記載したとおりである。 4 対比・判断 ア 本願発明は,上記第2の[理由]2(1)で検討した本件補正発明から,「ICタグが付された物品を収容したカートを通過させることでそのカートに収容されている物品に付されたICタグの情報を読み取るためのゲート型のICタグ読取装置」との限定を,「ICタグが付されたものを読取空間に出し入れするための一以上の出入り口と,からなるICタグ読取装置」と変更し,「電波吸収板」について,「ゲートの進行方向の左右に」「備えられ」との限定を削除し,ICタグ読取用アンテナについて,「ゲートの通過方向に対してゲート内の左右側壁内面側と,天井面内面側とに備えられている」との限定を削除したものである。 イ そうすると,上記第2の[理由]2(3)における検討内容を踏まえると,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 <一致点> 「第一電波吸収板と, 第一電波吸収板と対向してICタグ読取空間を形成するように配置される第二電波吸収板と, ICタグ読取空間の内側壁面のいずれか一以上の位置に配置されるICタグ読取用アンテナと, ICタグが付されたものを読取空間に出し入れするための一以上の出入口と, からなるICタグ読取装置。」 <相違点a> 第一電波吸収板及び第二電波吸収板に関して,本願発明の電波吸収板は,「炭素繊維及び合成繊維を含み,合成繊維成分で固化された表面から炭素繊維が脱離することを防止した不織布であるシールド不織布を備えた」電波吸収板であるのに対して,引用発明の電波吸収側壁には,そのような特定がなされていない点。 ウ そして,上記相違点aは,上記第2の[理由]2(3)における,相違点1と同じであり,上記第2の[理由]2(4)で検討したように,相違点1は,引用発明及び引用文献2に記載の技術に基づいて,当業者が容易になし得たものであるから,本願発明は,引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2019-015427

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