特許拒絶査定不服審判
2017-016402
人間、動物およびバイオテクノロジー産業において、RNAウイルスと、それによって引き起こされる感染または疾患を、予防、除去、治療するための、ピクロリザ・クロア抽出物
- 審判番号
- 2017-016402
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-209566外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月06日
- 審決日
- 2018年10月23日
- 公報発行日
- 2019年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】メダサニ, ムニセクハー
- 【請求人代理人】尾崎 隆弘
- 分類
- P18 .536-Z (A61K) / P18 .537-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-209566「人間、動物およびバイオテクノロジー産業において、RNAウイルスと、それによって引き起こされる感染または疾患を、予防、除去、治療するための、ピクロリザ・クロア抽出物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月12日出願公開、特開2016- 26203〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、2010年9月2日(パリ条約による優先権主張 2009年9月4日、インド(IN))を国際出願日とする特願2012-527450号の一部を、平成27年10月26日に新たな特許出願としたものであって、平成28年8月12日付け拒絶理由通知に対し、平成29年2月14日受付けの手続補正書及び同日受付けの意見書が提出されたが、同年6月29日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年11月6日に拒絶査定不服審判が請求され、同年12月12日受付けの手続補正書によって審判請求書のうちの請求の理由を補正する手続補正がなされた。
2.本願発明
本願請求項1~24に係る発明は平成29年2月14日受付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1~24に記載されたとおりのものであり、そのうち、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「人間および動物対象におけるウイルスによる感染、障害および疾患の、予防、除去、治療および管理に使用するための、また、肝臓保護薬および抗高脂血症薬の用途に使用するための、ピクロリザ・クロア・ロイル種、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネル種およびネオピクロリザ・スクロフラリフロラ種の内の1つ、または、それらの任意の混合物の植物に存在する1つまたは複数のテルペンおよび前記植物に存在する1つまたは複数の脂肪酸を含む、医薬用または栄養補助用組成物。」
なお、以下、本願発明における「ピクロリザ・クロア・ロイル種、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネル種およびネオピクロリザ・スクロフラリフロラ種の内の1つ、または、それらの任意の混合物の植物に存在する1つまたは複数のテルペンおよび前記植物に存在する1つまたは複数の脂肪酸を含む」組成物を、単に「本願発明の組成物」という。
また、本願発明における「人間および動物対象におけるウイルスによる感染、障害および疾患の、予防、除去、治療および管理に使用するための、また、肝臓保護薬および抗高脂血症薬の用途に使用するための」との用途を単に「本願発明の用途」という。
3.当審の判断
(1)特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)について
ア 特許法第36条第4項第1号は、明細書の発明の詳細な説明の記載は、「その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」でなければならないと定めるところ、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、当該発明に係る物の生産、使用等をいうものであるから、実施可能要件を満たすためには、明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が当該発明に係る物を生産し、使用することができる程度のものでなければならない。そして、医薬の用途発明において、一般に、物質名、化学構造等が示されることのみによっては、当該用途の有用性及びそのための当該医薬の有効量を予測することは困難であり、当該医薬を当該用途に使用することができないから、医薬用途発明において実施可能要件を満たすためには、本願明細書の発明の詳細な説明は、その医薬を製造することができるだけでなく、出願時の技術常識に照らして、医薬としての有用性を当業者が理解できるように記載される必要がある。
そこで、本願明細書の発明の詳細な説明が、本願発明の医薬としての有用性、すなわち本願発明の組成物が本願発明の用途の有用性を示すことを当業者が理解できるように記載されているかについて、以下検討する。
イ 発明の詳細な説明の記載について
(ア)本願明細書の発明の詳細な説明には、以下のような記載がある(なお、下線は当合議体による。)
「【背景技術】
【0002】
ゴマノハグサ目の植物には、伝統的医学体系で報告されているように、薬理作用があることが知られている。これら植物の薬効は、この目の植物に存在する数多くの配糖体に起因している。ゴマノハグサ科の植物の中で、最も入手しやすいのは、ピクロリザ(Picrorrhiza)属(コオウレン属)の植物である。この属の中の3つは、毒性の無さと安全性から、特に興味深い。3つとは、ピクロリザ・クロア・ロイル(Picrorhiza kurrooa Royle)、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネル(Picrorhiza scrophulariflora Pennell)およびネオピクロリザ・スクロフラリフロラ(Neopicrorhiza scrophulariiflora)である。
【0003】
ピクロリザ・クロア(Picrorhiza kurrooa)(インドではKatukaとして知られる)は、インドで広く見られる植物である。ヒマラヤの高度約3000~5000メートルに生息する。抽出物は、肝臓保護薬と免疫調整薬としての性質があることで知られている。この植物の根は、インドのアーユルヴェーダ医学体系(伝統医学体系)で、喘息、気管支炎、マラリア、慢性赤痢、ウイルス性肝炎、胃のむかつき、サソリによる刺傷用に、また、食欲を刺激し消化力を高める苦味トニックとして、伝統的に使用されている。肝臓保護薬としての、また解熱目的での治療的価値で知られているが、これが肝炎や他のウイルスに対して作用するのか、または単なる肝臓の活性剤であるのかに関しては、従来技術の中には、開示や証拠がない。
【0004】
この植物は、中国、ネパール、ブータンおよび他の地域にも生息し、その根および匍匐茎は、伝統的に、赤痢、黄疸、骨蒸、肝臓保護、免疫調整機能の用途で使用されてきた。この植物、特に根は、テルペノイドおよび配糖体が豊富なことで知られている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
…種名のピクロリザ・クロア(Picrorhiza kurrooa)は、以後、簡略化のため、「PK」と略すことにする。本明細書においては、頭文字「PK」は、前記ピクロリザ種を指す。前記頭文字は、文脈に応じて、上述の3つのピクロリザの種の1つまたは複数の種を同時に指すことができるものとする。…」
「【0009】
PK中の有効成分は、従来技術において、クツキン(kutkin)と呼ばれ、配糖体であるクツコシド(kutkoside)を含む。有効成分には更にピクロシドI、II、IIIと呼ばれるイリドイド配糖体および他のピクロシドが含まれる。アポシニン、ドロジン(drosin)、および9つのククルビタシン配糖体など他の成分もいくつか特定されているが、最初に挙げたアポシニンは強力な抗炎症薬であり、他の2つについても、薬理作用があるとされている。これらの薬効成分は、前記目(ゴマノハグサ科)全体に一様に存在し、また特に、P.属の植物全てに存在している。従来技術では、今に至るまで、前記PK抽出物の薬効が、特定の有効成分に帰せられることはなかった。
【0010】
特にP.属の植物物質、また一般にゴマノハグサ科(S.科と略すことにする)の植物物質は、親油性成分と非親油性成分の両方を含んでいることが知られている。本明細書においては、前記科の親油性化合物および成分を略してLCで記し、同様に、前記科の非親油性成分および化合物を略してNLCと記すことにする。これは簡略化のためであり、本発明の範囲に何ら限定を設けるものではない。」
「【0012】
本発明者は、伝統医学または現代の従来技術において報告、議論、調査の対象となってきた、上記PKの薬効成分の全てが、主にNLCであることに気づいた。従来技術(伝統医学を含む)が、抽出溶媒として水およびアルコール(メタノールおよびエタノール)のみを使用するという殻に、自らを閉じ込めていたことは、注目に値するだろう。本発明者は、一般的に、前記溶媒は、前記NLCを抽出するが、LCを殆ど全て除外してしまうことに着目した。このような訳で、従来技術の注意はNLCとその薬理作用のみに向けられ、これら他の成分にまで拡大されることが無かった。
【0013】
P.植物物質の主要NLCは、その配糖体である。現代では、様々な植物配糖体の広範囲な薬理作用が、明らかにされている。薬理作用は、広範囲の疾患および障害に及んでいる。植物界では、様々な型の配糖体が発見されている。従来技術においては、少なくとも薬理作用と効果に関する限り、焦点と注目は完全にP.配糖体に集まっていた。従来技術は、S.科植物の他の成分の性質と範囲、つまり、前記LCとその医薬上の重要性に関する認識がなかったように見受けられる。このことは、多かれ少なかれLCも抽出し、研究、調査、医学的精査の対象としたであろう他の溶媒が、従来技術では実質上調査から除外されていたことを考えれば、理解に難くない。そのようなことがなければ、従来技術においても、LCの薬効の性質と範囲について研究されていたのではないだろうか。また、恐らく、水とアルコールによる抽出物だけでも少なからぬ薬効を示し、十分に広い調査範囲があったために、他の抽出溶媒、ひいてはS.科の親油性成分にまで、注意が広がらなかったのであろう。」
「【0014】
実験観察により、本発明者は、前記LC(S.科の親油性化合物)の薬理活性が非常に高いレベルにあることを、明らかにした。本発明者によって最初に観察されたのであるが、前記LCの薬効の程度および範囲は、前記配糖体と比べて、かなり、驚くほどに高く広い。本発明は、前記LCについて考慮し、例えば抗ウイルス化合物としての、その並外れた医学的重要性を確認した、最初の発明である。本発明は、また、NLCの存在がLCの薬効を損ない減じる傾向があり、このため、NLCを実質的に含まないか、極少量しか含まないLC含有PK抽出物の製造が重要であることを明らかにした、最初の発明である。本発明者は、この目的のため、新規の工程を提供し、また、前記LCを選択的に抽出して前記NLCを実質的に除外するか、抽出物へのNLCの抽出を最小にするような抽出特性を持つ、適切な溶媒を特定するものである。
【0015】
本発明者は、NLCがLCの薬効を隠してしまうことに気づいた。前記LCを含有する抽出物に存在するどのNLCにも、LCの薬効を減じる効果がある。S.科のNLCの一部は、LCと反対の作用を有するのではないかと考えられる。メカニズムはともあれ、本発明は、LCが顕著な薬効を有すること、LC抽出物の薬効を完全に実現するためには、好ましくは、LC抽出物が、実質的にNLCを含まないようにするべきであることを実験的に明らかにした。
【0016】
以上のように、本発明における新規のPK抽出物と従来技術のPK抽出物は、前者の薬効成分が後者とは異なる点で、全く根本的に異なっている。前者の薬効成分は実質的に後者には存在せず、後者の薬効成分は、本明細書で以下に詳述する理由で、前者から実質的に除かれている。前者の薬効成分はS.科植物のLCであり、後者のようにS.科の配糖体ではない。
【0017】
前者の主要な薬効成分は、S.科の植物に含まれる脂肪酸、テルペン、そして、S.科植物配糖体に由来するアグリコンである。本工程で抽出物に抽出される前記脂肪酸、テルペン、およびアグリコンは、後者にはない。PK植物の配糖体には、ピクロシドI、II、III等があることが知られている。つまり、後者は、主に前記ピクロシドと、アポシニンと呼ばれる化合物からなり、一方で、前者には、実質的に、前記ピクロシドも他の配糖体も、またアポシニンも含まれていない。元の植物物質には前記ピクロシドが存在するが、本発明の抽出物に含まれているのは、それらに由来するアグリコンの方である。
【0018】
つまり、本発明の工程は、単なる物理的な抽出工程ではなく、化学変化をも含んでいると言える。本発明者は、抽出工程中で加水分解とエステル化反応が起き、その結果、抽出物中に前記アグリコンが現われるものと考えている。なんらの義務を負うものではないが、実験調査により、より高い薬効が既に実証されていることから、このような仮説を提示するものである。本発明には、抽出中に化学反応が起きることの実験的証拠があり、従って、本発明の抽出工程は、物理変化と化学変化の組合せである。本発明では、ヘキサン抽出物と、第1溶媒をエタノール、第2溶媒をヘキサンとする抽出物とを作成した。前者の方法では、LCの収率が35%高いことがわかった。HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により、アグリコン、ステロイドテルペンおよび長鎖の脂肪酸構造が、抽出物中に存在することが示された。収率の多い分は、ヘキサン抽出物中に存在する、これらアグリコン、ステロイドテルペンおよび長鎖の脂肪酸に相当すると考えられる。これらの化合物は(元々S.科の植物物質に存在している化合物も、該元々存在している化合物の一部の反応生成物も)、エタノール-ヘキサン溶媒システムで得られた抽出物には、実質的に存在しない。エタノール-ヘキサン溶媒システムでは、抽出中にこれら成分が排除される。
【0019】
本発明の抽出物は、さらに、S.科植物に存在する脂肪酸を含んでいる。S.科配糖体は、非常に苦い化合物であり、従来技術のPK抽出物を非常に不味くしている。これとは対照的に、本発明のPK抽出物は、苦味成分が全くないため、非常に味が良い。水およびアルコール抽出物には、多くの臭い成分が抽出され、その結果、従来技術のPK抽出物は強烈な不快臭があり、人間および動物が消費するための受容性を低下させている。S.科植物に含まれる、前記したピクロシドおよび他の配糖体は、非常に苦い化合物である。より少量ではあるが、PK植物には、他の苦味成分も存在する。他方、本発明の抽出物は、実質的に無臭である。全てにおいて、本発明の抽出物は、従来技術の抽出物とは異なる枠組みに入るものである。
【0020】
本発明の抽出物におけるテルペンおよび他の成分の薬理作用のメカニズムは解明されておらず、従来技術の抽出物成分に対するそれら成分の薬理作用の優位性に関する説明も得られていない。しかし、本発明者は、やはり、前記の一層優れた薬理活性が、実験により、実験的に明らかにされていると考えている。
【0021】
つまり、従来技術の抽出物の短所は、S.科植物の前記テルペンおよび他のLCよりもかなり薬効の少ない配糖体成分の存在である。配糖体の薬効の範囲も、前記したテルペンおよびその他のLCより、かなり狭い。該配糖体には、肝臓保護作用があることが報告されているが、抗ウイルス作用はない。(インドにおける肝疾患用植物薬、SP Thyagarajan, S Jayaram,V Gopalarkrishnan, R Hari,P Jeyakumar, MS Sripathi,Journal of Gastroenterology and Hepatology Volume 17,pages S370-S376, December 2002)他方、前記LCは、DNAウイルスとRNAウイルスのいずれに対しても強力な抗ウイルス作用があり、従って、前記LCは、限られた肝臓保護、再生作用が報告されている前記NLCよりも、広範囲に作用する。従来技術の抽出物は、非常に苦く、ほとんど受け入れ難い程であり、またさらに、強烈な不快感のある臭い成分による受け入れ難さも加わっている。
【0022】
従来技術の抽出過程の短所は、水と、エタノールおよびメタノールの2種類のアルコールに溶媒を限定し、S.科植物のLCを含む、新規の、より良く、医学的に、より有益で効果的な抽出物を生じさせる、全ての溶媒に範囲を広げていないことである。
【0023】
本発明者は、主に前記親油性成分を含むPK抽出物の使用が、肝炎ウイルスおよび他のDNAおよびRNA型のウイルスの作用を積極的に妨げることを、細胞株によって、実験的に明らかにした。さらに、これによりウイルス構造が破壊されることから、非常に効果的な抗ウイルス組成物であることが確かである。
【0024】
よく知られているように、細胞膜の構造に関係のあるリン脂質には、2つの親油性の高いアルキル鎖と、他端にあるコリンリン酸を代表とする非常に親水性の高いイオン基が含まれている。本発明者は、これにより、PK抽出物の親油性部分および他の構造が、ウイルス性疾患の治療において薬理学的により高い活性を呈するものと考えている。本発明者によるインビトロ調査は、複数の独立の研究所によって確認された。それによれば、PKの親油性化合物は、B型肝炎、インフルエンザ、HIVのようなレトロウイルス、および他のウイルスを含む、DNAおよびRNAウイルスに対する非常に高い抗ウイルス特性を有することが確認された。
【0025】
本発明者によれば、前記S.科植物に存在するテルペンの1つまたは複数と前記科の植物に存在する1つまたは複数の脂肪酸との組合せ(混合物)は、多くのウイルス、菌類、バクテリア、寄生生物、原虫による感染、障害および疾患に対して非常に効果的な、新規で強力な抗ウイルス組成物である。該新規な組成物は、DNAウイルスおよびRNAウイルスの何れに対しても効果がある。このため、該組成物は、研究および産業、特に工業的発酵醸造産業における生化学的および生物工学的工程に適用可能である。本発明の新規な組成物は、さらに、前記科の植物に存在する配糖体のアグリコンの1つまたは複数を含んでもよい。本発明の組成物の成分は、植物由来でもよく、合成起源または部分合成起源でもよい。前記組成物は、前記成分の混合工程によって作ることもでき、部分的にまたは全て植物物質から得ることもできる。
【0026】
本発明では、一般的にはS.科の植物物質、特にはP.属の植物物質に対し、抽出を行なった。これらの抽出物に対し、いくつかの分取物を得るため、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって分取を行なった。該分取物は、それぞれがS.科植物の前記テルペンと脂肪酸を含むため、本発明の組成物を構成することができる。該分取物に関しては、本明細書で、後で詳述する。
【0027】
本発明者は、人間または動物対象に対して本発明の前記抽出物または組成物を投与すると、体の免疫過程により、抗原と抗体が作り出されることを発見した。この過程のメカニズムは完全には解明されていないが、本発明者は、抗体および、抗原、免疫原、免疫血清、抗血清、血清、免疫グロブリンなど抗体と類似の種および物質が前記対象において作り出され、使用された人間、動物、鳥または水性動物対象、つまり本発明の抽出物または組成物を投与された対象の血清中から単離可能であることを明らかにした。このように単離された抗体および類似種は、予防または治療を必要とする対象に投与するためのワクチン、アジュバントおよびその他製剤を製剤するために使用することができる。前記抗体、類似の種および物質を、本明細書中では、まとめて「免疫系関連種(immune system related species)」と呼ぶことにする。
【0028】
従って、本発明の目的は、ゴマノハグサ科(目)植物の植物物質に存在するテルペンおよび脂肪酸の混合物を含む組成物を提供することである。」
「【課題を解決するための手段】
【0038】
上記目的を達成するため、本発明によれば、人間および動物対象におけるウイルス、菌類、バクテリア、寄生生物および原虫による感染、障害および疾患の、予防、除去、治療および管理に使用するための、また、肝臓保護薬、抗高脂血症薬、抗糖尿病薬、腎臓保護薬として他の用途に使用するための、ゴマノハグサ科植物に存在する1つまたは複数のテルペンおよび前記科の植物に存在する1つまたは複数の脂肪酸を含む、医薬用、栄養補助用または食品用の組成物が、提供される。 」
「【0044】
従って、本発明の組成物および本発明のPK抽出物は、基本的に、S.科植物のテルペン成分を含有している。文脈と矛盾しない限り、以後、本明細書中で、本発明の組成物に対する言及は、本発明の抽出物に対しても当てはまると考えることができ、逆もまた同様である。それらは、S.科植物の1つの前記テルペンまたは前記テルペンの任意の混合物を含むことができる。それらは、さらに、基本的に、S.科植物の1つまたは複数の脂肪酸を含む。前記テルペンと脂肪酸の組合せにより、治療上の相乗作用が現われる。そのような相乗作用は、3成分系、つまり、前記テルペン、脂肪酸、アグリコンによっても現われる。好ましくは、テルペンは主要LC成分であり、テルペンと脂肪酸がともに、組成物/抽出物中の親油性成分の主要部分を形成する。前記抽出物および組成物はまた、S.科植物中に存在する配糖体由来のアグリコンを含有することが好ましい。これら配糖体は、抽出条件の下で反応(加水分解など)および/または分解を起こして、それぞれ対応するアグリコンを生成し、それらアグリコンが、次に、本発明の溶媒によって、抽出物中に抽出される。前記テルペン、脂肪酸およびアグリコンの合計量、つまりLC全体の合計量が、80重量%以上であることが好ましい。本発明の抽出物は、前記苦味のある配糖体を含まず、抽出物中の他のNLCの量が、抽出物全体の0.01重量%~20重量%であることが好ましい。前記配糖体、クツキシド(kutkiside)、ピクロシド、アポシニン、およびドロジンの合計量が、抽出物の20重量%を超えないことが好ましい。抽出物の10%未満が水溶性であることが好ましい。上記したパラメータは、文脈に基づいて異なった解釈をする必要が無い限り、本発明の組成物と抽出物の両方に適用できる。」
「【0047】
本発明の範囲内で、本発明の前記PK抽出物は、前記S.科植物の如何なる種の抽出物であってもよい。本発明の抽出工程は、如何なる前記植物種または他の植物物質に対しても、簡単かつ単純に拡張可能であることに気づくだろう。同様に簡単かつ単純に、前記工程は、前記種の任意の混合物に対しても適用可能である。抽出物は、明細書中で先に述べた三つの種、つまり、ピクロリザ・クロア・ロイル、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネルおよびネオピクロリザ・スクロフラリフロラの混合物から抽出されることが好ましい。これら3種は、毒性の観点から好ましい。」
「【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明のより明確な理解のため、以下、本発明の実施例について説明するが、これらは、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0066】
1.前記PK植物の根および匍匐茎を入手し、天日乾燥した。手作業で、異物の除去を行なった。
2.砂および土を除去するため、スプリンクラーによって、植物物質を水洗いした。
3.水分を低下させるため、真空に引いて、植物物質を空気乾燥させた。
4.次に植物物質を手作業ですり潰し、すり潰した植物物質を空気乾燥し、微量の水分まで除去した。
5.この植物物質を1バッチ取って重量を測り、反応装置(抽出容器)に入れた。
6.ヘキサンを加え、固体-液体混合物を加熱した。(任意の他の無極性溶媒に代えてもよい。)
7.加熱した混合物の撹拌を継続した。
8.前記反応を含む抽出工程を、約24時間進行させた。
9.植物物質と溶液を分離した。
10.該溶液を、真空に引きながら他の容器に移送した。
11.該溶液を3回濾過して、懸濁物と非溶解物を除去し、その後、該溶液を反応容器(蒸発器)に送り、真空に引いて溶媒を蒸発させた。蒸発の間、温度は、70℃未満に維持した。
12.溶媒は回収し、抽出での再利用に回した。
13.蒸発によって生じた固体残渣を、管理された雰囲気の中で真空に引いて空気乾燥した。乾燥した植物物質が、本発明の抽出生成物であり、これを、試験に回した。
【実施例2】
【0067】
1.実施例1のステップ1および2と同じ操作を行なった。
2.PK植物物質を、機械的手段で小片にすり潰した。
3.1バッチ分を測定して取り出し、反応装置(抽出容器)に入れた。
4.ペンタンと酢酸エチルの溶媒混合物を反応装置に入れた。(ペンタン、酢酸エチル、アセトン、n-ヘキサン、エーテル、クロロホルムおよびテトラヒドロフランの任意の混合物に代えてもよい。)
5.反応装置の内容物を継続的にかき混ぜながら加熱した。約36時間、抽出を行なった。
6.植物物質と溶液の分離を行なった。
7.溶液を、真空に引きながら他の容器に移送した。
8.溶液を3回濾過し、澄んだ液体を、真空に引きながら約80℃で蒸発させた。
9.溶媒を回収した。
10.蒸発によって生じた固体残渣を集め、窒素雰囲気(二酸化炭素に代えてもよい)の中で真空に引いて空気乾燥させた。
11.乾燥された生成物が、本発明の抽出生成物であり、これを試験に回した。
【実施例3】
【0068】
1.実施例1のステップ1および2と同じ操作を行なった。
2.PK植物物質をペースト状にすり潰し、十分な量の水と混合した。
3.配糖体のエステル化反応を開始するため、有機酸(無機酸に代えてもよい)を加えてpHを下げた。
4.約24時間撹拌を継続した。
5.この段階で、n-ヘキサン溶媒(石油エーテルに代えてもよい)を加え、撹拌しながら約4時間、抽出を続けた。
6.溶液の上澄みを移し(デカントし)、濾過した。
7.真空に引きながらで約75℃に加熱し、溶液から溶媒を蒸発させた。
8.半固体残渣を集め、真空に引きながら約マイナス80℃で脂肪分解し(lypolise)、更に加工して、粉末状にした。
9.この粉末が本発明の抽出生成物であり、これを試験に回した。
【実施例4】
【0069】
1.実施例1のステップ1および2と同じ操作を行なった。
2.PK植物物質をすり潰してペースト状にし、蒸気蒸留した。
3.蒸気を凝縮させ、蒸気蒸留後の残留溶液を集めた。
4.エステラーゼ酵素を加えた。pHと温度を調節して、溶液を約6時間撹拌した。
5.酵素を変性させるため、真空に引いて、温度を約100℃まで上昇させた。
6.その後、溶液を冷却した。
7.石油エーテルを加え、混合物を約4時間撹拌した。
8.溶液を濾過し、酵素の滓と非溶解性の粒子を取り除いた。
9.溶液を、石油エーテル層と水層に分離した。
10.真空に引きながら石油エーテルを加熱し、溶媒を蒸発させた。
11.本発明の抽出生成物である固体残渣を集めた。
12.抽出生成物を空気乾燥させ、試験に回した。
13.水層から水を蒸発させた。蒸発は真空に引きながら行なった。残渣には、PK植物物質の水溶性成分が含まれていた。
【実施例5】
【0070】
1.実施例1のステップ1、2および3と同じ操作を行なった。
2.PK植物物質を、機械的手段で小片にすり潰した。
3.1バッチ分を測定して取り出し、抽出反応装置に入れた。
4.計量したエタノール溶媒(メタノールに代えてもよい)を反応装置に入れた。
5.反応装置の内容物を、撹拌しながら所要温度まで加熱し、その状態を約24時間維持した。
6.溶液を真空に引きながら別の反応容器に移送した。
7.溶液を3回濾過した。
8.溶液に水を加え、約1時間撹拌した。
9.n-ヘキサン溶媒(ペンタンに代えてもよい)を加え、内容物を、約6時間撹拌した。
10.溶液を約4時間静置した。
11.固体または半固体状の、本発明の抽出生成物を回収するため、真空に引きながら蒸
発を行い、溶媒を蒸留した。
12.水とアルコールを含んだ平衡液(balance liquid)を蒸留し、溶媒を回収した。
13.生成物を窒素雰囲気(CO2雰囲気に代えてもよい)で真空に引いて空気乾燥させ、試験と、微生物検査に回した。
【実施例6】
【0071】
1.実施例1のステップ1から3と同じ操作を行なった。
2.実施例5のステップ2と同じ操作をおこなった。
3.PK植物物質の1バッチ分を測定して取り出し、抽出反応装置に入れた。
4.反応装置に所要量のn-ヘキサンを入れた(本実施例では、溶媒を、ペンタン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテルおよび石油エーテルに代えてもよい)。
5.反応装置の内容物を所要温度まで加熱し、約24時間撹拌した。
6.溶液を、真空に引きながら他の容器に移送し、3回濾過した。
7.真空に引きながら溶液を加熱して溶媒を蒸発させ、固体または半固体状の、本発明の抽出生成物を得た。
8.窒素雰囲気(CO2雰囲気に代えてもよい)で真空に引き、空気乾燥させることによって、生成物から残留溶媒を取り除いた。
9.生成物を、物理的特性の試験と微生物的評価に回した。」
(イ) 上記(ア)によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、ピクロリザ・クロア・ロイル種、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネル種およびネオピクロリザ・スクロフラリフロラ種(以下、三種を併せて「PK」という。)を含むゴマノハグサ科の植物は、伝統的医学大系で報告されているように、薬理作用があることが知られており(【0002】)、従来は、PKを水及びアルコールを抽出溶媒として抽出した「非親油性成分」とその薬理作用(肝臓保護薬と免疫調整薬としての作用)のみに注意が向けられていたところ(【0003】、【0012】、【0022】)、本発明者は、実験観察により、従来技術のPK抽出物とは薬効成分が異なる、「親油性化合物(成分)」の薬理活性が非常に高いレベルにあることを明らかにしたものであり(【0010】、【0014】~【0016】)、「本発明」は、「親油性化合物(成分)」について考慮し、例えば抗ウイルス化合物としての、その並外れた医学的重要性を確認した、最初の発明であることが記載されている(【0014】)。
また、「本発明」における新規のPK抽出物における主要な薬効成分は、脂肪酸、テルペン、そして、植物配糖体に由来するアグリコンであり(【0017】、【0044】)、本発明者は、主に「親油性成分」を含むPK抽出物の使用が、肝炎ウイルスおよび他のDNAおよびRNA型のウイルスの作用を積極的に妨げることを、細胞株によって、実験的に明らかにしたこと(【0023】)、及び、本発明者によるインビトロ調査は、複数の独立の研究所によって確認され、それによれば、PKの「親油性化合物(成分)」は、DNA及びRNAウイルスに対する非常に高い抗ウイルス特性を有することが確認されたこと(【0024】)が記載されている。
さらに、PK植物物質から、ヘキサン、ペンタンと酢酸エチル、石油エーテルなどの抽出溶媒を用いて得られた抽出生成物を微生物検査等に回したことが、実施例1~6として記載されている(【0065】~【0072】)。
イ しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明には、実施例1~6として、PK植物物質から、ヘキサン、ペンタンと酢酸エチル、石油エーテルなどの抽出溶媒を用いて得られた抽出生成物を微生物検査等に回したことが記載されているものの(【0065】~【0072】)、その検査の結果は具体的に記載されていない。また、得られた抽出生成物に含まれ得る多数の成分のうち、様々な構造を包含し得る「テルペン」と「脂肪酸」の組合せが、その具体的な構造によらず、抗ウイルス作用等を示すという結果も具体的に記載されていない。
また、実施例以外の発明の詳細な説明には、「実験観察により、本発明者は、前記LC(S.科の親油性化合物)の薬理活性が非常に高いレベルにあることを、明らかにした。」(【0014】)、「本発明者は、主に前記親油性成分を含むPK抽出物の使用が、肝炎ウイルスおよび他のDNAおよびRNA型のウイルスの作用を積極的に妨げることを、細胞株によって、実験的に明らかにした。」(【0023】)、「本発明者によるインビトロ調査は、複数の独立の研究所によって確認された。それによれば、…非常に高い抗ウイルス特性を有することが確認された。」(【0024】)のように、抗ウイルス作用等の薬理活性を実験的に確認した旨が記載されているものの、その実験の結果は具体的には何ら記載されていない。
さらに、発明の詳細な説明には、「本発明の抽出物におけるテルペンおよび他の成分の薬理作用のメカニズムは解明されておらず」(【0020】)、「本発明者は、これにより、PK抽出物の親油性部分および他の構造が、ウイルス性疾患の治療において薬理学的により高い活性を呈するものと考えている。」(【0024】)と記載されており、本願発明の組成物が本願発明の用途の有用性を示すに至る機序についても、具体的に記載されているわけではない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明の記載からは、従来技術において肝臓保護薬と免疫調整薬として薬効が知られていたPK抽出物とは薬効成分が異なり新規である、主に「親油性成分」を含むPK抽出物、具体的にはPKに存在するテルペン及び脂肪酸を含む本願発明の組成物が、抗ウイルス作用、肝臓保護作用又は抗高脂血症作用を示すこと、すなわち本願発明の用途の有用性を示すことを、当業者が具体的に理解することはできない。
ウ そして、原出願日当時、PKに存在する「テルペン及び脂肪酸」が、その具体的な構造に関わらず、抗ウイルス作用、肝臓保護作用又は抗高脂血症作用を示すことが、技術常識となっていたということはできない。
エ したがって、本願明細書の発明の詳細な説明は、原出願日当時の技術常識に照らして、本願発明の組成物が本願発明の用途の有用性を示すことを、当業者が理解できるように記載されているとはいえない。
(2)特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)について
ア 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識等に照らして当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、本願発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討する。
イ 本願明細書の発明の詳細な説明には以下のように記載されている。
「【0024】
よく知られているように、細胞膜の構造に関係のあるリン脂質には、2つの親油性の高いアルキル鎖と、他端にあるコリンリン酸を代表とする非常に親水性の高いイオン基が含まれている。本発明者は、これにより、PK抽出物の親油性部分および他の構造が、ウイルス性疾患の治療において薬理学的により高い活性を呈するものと考えている。本発明者によるインビトロ調査は、複数の独立の研究所によって確認された。それによれば、PKの親油性化合物は、B型肝炎、インフルエンザ、HIVのようなレトロウイルス、および他のウイルスを含む、DNAおよびRNAウイルスに対する非常に高い抗ウイルス特性を有することが確認された。」
「【0028】
従って、本発明の目的は、ゴマノハグサ科(目)植物の植物物質に存在するテルペンおよび脂肪酸の混合物を含む組成物を提供することである。」
これらの記載と本願請求項1の記載を併せると、本願発明の解決すべき課題(以下、「本願発明の課題」という。)は、人間及び動物対象におけるウイルスによる感染、障害及び疾患の、予防、除去、治療及び管理に使用するための、また、肝臓保護薬および抗高脂血症薬の用途に使用するための、ピクロリザ・クロア・ロイル種、ピクロリザ・スクロフラリフロラ・ペネル種及びネオピクロリザ・スクロフラリフロラ種の内の1つ、または、それらの任意の混合物の植物に存在する1つまたは複数のテルペン及び前記植物に存在する1つまたは複数の脂肪酸を含む、医薬用または栄養補助用組成物を提供することであると認められる。
ウ 一方、上記(1)で既述のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の組成物が本願発明の用途の有用性を示す薬理試験結果は、具体的には何ら記載されておらず、本願発明の組成物が当該有用性を示すに至る機序についても記載されていない。
また、上記(1)で既述のとおり、原出願日当時、PKに存在する「テルペン及び脂肪酸」が、その具体的な構造に関わらず、抗ウイルス作用、肝臓保護作用又は抗高脂血症作用を示すことが、技術常識となっていたということはできない。
そうすると、本願発明の組成物が本願発明の用途の有用性を示し、本願発明の課題を解決できることを、当業者が認識することはできない。
したがって、原出願日当時の技術常識に照らして、本願発明が、発明の詳細な説明の記載により当業者が本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいうことはできない。
(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は平成29年12月12日受付けの手続補正書における請求
の理由において、以下のように主張する。
「実施可能要件に関し、出願時の技術常識を考慮すると、発明の詳細な説明に[0066]~[0071]の実施例が記載されており、医薬の用途発明としては、当業者が請求項に係発明の実施ができる程度の明確かつ十分に記載したものである。当業者の出願時の通常の知識によることは、本願発明の対応する2つの米国出願…のそれぞれの審査通知で、実施可能要件とサポート要件違反は認定されておらず、対応欧州出願の審査通知で、実施可能要件とサポート要件違反は記載され、応答書で否定する意見を提出していることから、本願の明細書の実施例等、対応外国出願の審査経過、薬理試験結果を総合的に判断すると、原査定は、出願時の技術常識を誤った結果、「実施可能要件」の「可能」の解釈を誤ったものであり、本願発明について、当然、実施可能要件は証明されているといえる。
サポート要件に関し、前記と同様に、原査定は、出願時の技術常識の範囲を誤った結果、「サポート要件」の「本願発明の課題を解決できると認識できる範囲」の解釈を誤ったものであり、本願発明については、当然、サポート要件は証明されているといえる。」
イ しかしながら、審判請求人が主張する米国及び欧州での対応外国出願の審査経過は、本件には直接関係がない。
また、審判請求人は、「原査定は、出願時の技術常識(の範囲)を誤った」と主張するが、原査定がどのような「技術常識」についてどのように誤ったものであるのか、何ら具体的な主張をしていないので、審判請求人の上記主張により原査定に誤りがあったとすることはできない。
さらに、審判請求人の主張における「薬理試験結果」は、平成29年2月14日受付けの意見書の添付資料1~6に示された薬理試験結果のことを指すものと解されるところ、前記の通り、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の組成物の薬理試験結果が全く記載されていない以上、後から提出された資料1~6に示された薬理試験結果により、本願明細書の記載を補完することができないことは明らかである。そして、資料1~6は、原出願日当時の技術常識を裏付けるものでもない。したがって、資料1~6に示された薬理試験結果を、実施可能要件及びサポート要件の検討において、参酌することはできない。
よって、審判請求人の上記の主張は、実施可能要件及びサポート要件に関する当審の判断を左右するものではない。
4.むすび
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は特許法第36条第4項第1号の規定を満たさず、かつ本願特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号の規定を満たさないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-016402