特許拒絶査定不服審判
2017-015477
複合材料の不規則性の検査のための超音波モデリング
- 審判番号
- 2017-015477
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-001463外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月18日
- 審決日
- 2019年02月07日
- 公報発行日
- 2019年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ・ボーイング・カンパニー
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 分類
- P18 .536-WZ (G01N) / P18 .537-WZ (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法36条6項2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 1463「複合材料の不規則性の検査のための超音波モデリング」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-152227〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年1月9日(パリ条約による優先権主張2012年1月20日、米国)の出願であって、平成28年10月31日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月10日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年6月28日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年10月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものであり、その後、当審において平成30年7月24日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年10月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、前記当審拒絶理由1のうち解消されていない拒絶理由について、再度(初回応対平成30年11月13日「応対記録」参照。以下「応対記録」という。)、当審において平成30年11月29日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由2」という)が通知され、同年12月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明は、平成30年12月26日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)によって補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ファイバーリッチ層および樹脂層を積層させた複合材料の積層レイアップ構造である複合構造(200)の検査に使用される方法であって、
しわの最大高さ、およびしわの幅を含む少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータを規定することと、
前記少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた、仮想モデルの超音波の反射信号の第1の波形データセットを供給するために、前記仮想モデルに向けて前記超音波の少なくとも一つの波シミュレーションを伝送するように構成されたモデリングモジュールによる前記仮想モデルの第1の検査シミュレーションを、少なくとも刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、前記少なくとも一つの刺激機構と前記複合構造との間の距離、および前記少なくとも一つの刺激機構とセンサとの間の距離を含む第1の評価設定を使用して行うことと、
前記第1の波形データセットに基づいて第1の仮想画像(572)を生成することと、
前記第1の仮想画像(572)の品質が、前記しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすかどうかを決定することと、
前記第1の仮想画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、前記超音波の刺激機構による前記複合構造の前記超音波の物理的検査を行うため前記第1の評価設定を使用することであって、前記刺激機構は、前記複合構造内の不規則性を検知するために前記複合構造に向けて少なくとも一つの物理波を伝送するために、前記第1の評価設定を使用することと、
前記第1の評価設定を、前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定することと、
ユーザインターフェースを介して前記刺激機構に関連付けられたデータを供給することであって、前記データが少なくとも刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、前記少なくとも一つの刺激機構と前記複合構造との間の距離、および前記少なくとも一つの刺激機構とセンサとの間の距離を含む、供給することと、
前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定であり、有限要素解析を使用して再規定される、再規定された第2の評価設定として規定することと、
前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し、前記第1の仮想画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた、前記仮想モデルの前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された第2の評価設定を使用して行うことと、
前記第2の波形データセットに基づいて第2の仮想画像(572)を生成することと、
前記第2の仮想画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすことを決定することと、
前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定を第2の評価設定として規定し、前記第2の評価設定を、前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定することと、
前記第2の仮想画像の品質が前記所定の閾値を満たすと決定された場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第2の評価設定を使用することであって、前記刺激機構は、前記複合構造内の前記しわを含む不規則性を検知するために前記複合構造を物理的に検査するように前記複合構造に向けて少なくとも一つの物理波を伝送するために、前記第2の評価設定を使用することと、
を含む方法。」
第3 当審拒絶理由2について
平成30年11月29日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
1 理由1(明確性)について
理由1は、当審の平成30年7月24日付け拒絶理由通知書で指摘した事項に対し、平成30年10月29日提出の手続補正書及び意見書によっては解消されない事項について再度指摘するものであるとしたうえで、以下の事項を指摘している。
(1)略
(2)略
(3)請求項1で「前記第1の画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすかどうかを決定すること」及び「記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第1の評価設定を使用すること」と記載されているが、「第1の画像の品質」を表す何の値が、どのような値(閾値)を満たすかどうか決定するのか不明確である。この点、請求項5についても同様である。
なお、これについては、下記の理由3(1)の点で実施可能要件も満たしていない。
(4)請求項1で、第2の評価設定について、
「前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定を第2の評価設定として規定することと、前記第1の画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、前記第1の評価設定とは異なる前記第2の評価設定を使用して行うことと、前記第2の波形データセットに基づいて第2の画像(572)を生成することと、前記第2の画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすことを決定することと、前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定を第2の評価設定として規定し、前記第2の評価設定を、前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定することと、前記第2の画像の品質が前記所定の閾値を満たすと決定された場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第2の評価設定を使用することであって、前記刺激機構は、前記複合構造内のしわを含む不規則性を検知するために前記複合構造を物理的に検査するように前記複合構造に向けて少なくとも一つの物理波を伝送するために、前記第2の評価設定を使用する」と特定されているが、「第1の評価設定」と「第2の評価設定」との関係が不明確である。
すなわち、「前記第1の画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた第2の波形データセットを供給する」との記載からは、下記の図8における「770」の工程のことを特定しているように解されるが、「別の評価設定を第2の評価設定として規定する」及び「前記第1の評価設定とは異なる前記第2の評価設定を使用して行う」との記載からは、図8とは別の評価設定(例えば、不規則パラメータから規定しなおす等)を行うようにも解され、前後者どちらのものとして特定すればよいのか不明確である。
【図8】
(5)上記(4)にも関連するが、請求項1で「前記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、・・・・前記第1の評価設定を使用する、・・・・前記第1の画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、・・・・第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、・・・・前記第2の評価設定を使用して行う、・・・・前記第2の画像の品質が前記所定の閾値を満たすと決定された場合に、・・・・前記第2の評価設定を使用する」と記載されいるが、当該記載からは、上記図8における「770」の工程が一度しか繰り返さないことになり、技術的に発明が十分に特定されているとはいえない。
さらに、「前記第1の画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、・・・・第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、・・・・前記第2の評価設定を使用して行う」ことについて、当該特定事項からは、上記図8の「770」の工程が、「730(モデルを検査する)」工程に戻るものともいえるが、図8においては「720(モデル生成する)」工程に戻っており、両者の関係が不明確である。この点、請求項5についても同様である。
なお、これについては、下記の理由3(2)の点で実施可能要件を満たしているとはいえない。
(6)小括
よって、上記(1)の点で請求項5及びそれを引用する請求項6~8の記載、上記(2)~(5)の点で、請求項1及び5並びにそれらを引用する請求項2~4及び6~8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
特に、上記(3)~(5)については、意見書において何ら実質的な説明を行っていない。
2 理由2(サポート要件)について
略
3 理由3(実施可能要件)について
理由3は、当審の平成30年7月24日付け拒絶理由通知書で指摘した事項に対し、平成30年10月29日提出の意見書において何ら実質的な説明を行っていないことから、請求人に説明の意思があるかどうか確認した(「応対記録」参照。)うえで、再度、以下の事項を指摘している。
(1)上記理由1の(3)で指摘したことにも関連するが、請求項1で「前記第1の画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすかどうかを決定すること」及び「記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第1の評価設定を使用すること」について、発明の詳細な説明では、これらと同じ内容の文章が繰り返されているだけであり、例えば、
「【0028】
この例示的な実施形態では、撮像モジュール570は波形セットに基づいて画像を生成し、画像の品質が所定の閾値を満たすかどうかを決定する。図6は、撮像モジュール570によって生成された複合構造200の仮想画像572のスクリーンショットである。画像の品質が所定の閾値を満たす場合、この例示的な実施形態では、評価モジュール580は、所定の評価設定を、複合構造200の検査に使用するための所望の評価設定として認定する。画像の品質が所定の閾値を満たさない場合、この例示的な実施形態では、評価モジュール580は、少なくとも一つの所望の評価設定が認定されるまで、有限要素解析を用いるプロセスを繰り返す。」という記載もあるものの、「画像の品質」をどのような値で表すのか全く記載されていない。「画像の品質」をどのような値で表すのか不明である以上、それを「閾値」なる値と比較もできず、どの程度の値を閾値とするのかも不明である。この点、請求項5についても同様である。
してみれば、発明の詳細な説明は、上記点において、当業者が請求項1及び5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
(2)上記理由1の(5)で指摘したことにも関連するが、「前記第1の画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、・・・・第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、・・・・前記第2の評価設定を使用して行う」ことについて、上記図8の「770」の工程が、「720(モデル生成する)」工程に戻っており、発明の詳細な説明に「仮想画像の品質が所定の閾値を満たさない場合、この例示的な実施形態では、コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、刺激機構に関連付けられた別の評価設定が規定され770、再規定された評価設定を使用して不規則性パラメータに基づく別のモデルが生成される720。」(【0032】)と記載されている。 しかしながら、仮想画像の品質が所定の閾値を満たさない場合に、超音波シミュレーションにおける超音波の伝送条件等を変更してモデル検査をするのではなく、モデルから生成し直してしまっては、その新たなモデルでまた超音波シミュレーションを行うことになり、あるモデルに対する超音波の伝送条件等は決定しないことにもなる。この点、請求項5についても同様である。
してみれば、発明の詳細な説明は、上記点において、当業者が請求項1及び5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
(3)請求項1の「少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータを規定すること」について、モデリングモジュールによるシミュレーションを行うにあたって、その値(パラメータ)を予めどのように得るのか不明である。発明の詳細な説明には、「コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、少なくとも一つの不規則性パラメータが決定される710。この例示的実施形態では、不規則性パラメータには、不規則性の厚み290、不規則性の幅300、不規則性の長さ、不規則性の位置、及び/又は不規則性の形状が含まれる。」(【0031】)と記載されているが、コンピュータシステム500及び/又はユーザによって不規則性の厚み、幅、長さ、位置及び/又は形状を予めどのように得るのか不明である。過去の検査の結果から用いる材料、製造方法、大きさ等によってある程度の目安があるのか、ユーザ(熟練者)の経験によるものなのか、適切な不規則性パラメータの値を入力しないと、適切な評価設定にはならないことになる。この点、請求項5についても同様である。
してみれば、発明の詳細な説明は、上記点において、当業者が請求項1及び5に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
(4)小括
発明の詳細な説明は、当業者が請求項1及び5並びにそれらを引用する請求項2~4及び6~8に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 当審の判断
1 事案に鑑み、当審拒絶理由2の理由3(実施可能要件)から検討する。
(1)理由3の(1)について
ア 本願明細書の記載
本願発明の「前記第1の画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすかどうかを決定すること」及び「記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第1の評価設定を使用すること」に関して、本願明細書には、上記第3の3(1)で摘記した【0028】以外に、以下の記載がある。
「【0010】
・・・。第1の画像の品質が所定の閾値を満たす場合、第1の評価設定は所望の評価設定として認定される。これにより、第1の評価設定を使用して、しわなどの不規則性について複合構造を物理的に検査することができる。」
イ 判断
本願発明の「画像の品質」について、それをどのような値で表すのか【0028】及び【0010】を含む発明の詳細な説明に記載されておらず、「画像の品質」をどのような値で表すのか不明である以上、それを「閾値」なる値と比較もできず、どの程度の値を閾値とするのかも発明の詳細な説明に記載されておらず不明であることから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
ウ 請求人の主張
請求人は、平成30年12月26日提出の意見書(以下「意見書」という。)で、
「(4)拒絶理由の理由3について
理由3(1)-(3)について、出願時明細書の段落[0010]および段落[0028]にも記載されているように、画像の品質を表す値は、不規則性パラメータに基づいて生成されたモデルの不規則性により異なるものであり、図6に示すように、品質は、第1の評価設定を使用した第1の検査シミュレーションが、不規則性を表し、しわの検査を可能とする第1の波形データセットに基づいて生成された第1の画像であるかどうかにより決定されるものとなっています。」と主張し、さらに、同意見書で理由3の(1)に関連する理由1の(3)に対する説明として、
「理由1(3)について、出願時明細書の段落[0010]には、「第1の画像の品質が所定の閾値を満たす場合、第1の評価設定は所望の評価設定として認定される。これにより、第1の評価設定を使用して、しわなどの不規則性について複合構造を物理的に検査することができる。」と記載されており、また、段落[0028]には、「この例示的な実施形態では、撮像モジュール570は波形セットに基づいて画像を生成し、画像の品質が所定の閾値を満たすかどうかを決定する。図6は、撮像モジュール570によって生成された複合構造200の仮想画像572のスクリーンショットである。」という記載があります。すなわち、第1の評価設定により、しわなどの不規則性について検査できる場合に、第1の画像の品質が所定の閾値を満たしていることになります。したがって、品質は、第1の評価設定を使用した第1の検査シミュレーションが、不規則性を表し、しわの検査を可能とする第1の波形データセットに基づいて生成された第1の画像であるかどうかにより決定されるものであり、したがって、その発明の内容は明確であると思料致します。」と主張している。
しかしながら、上記意見書では、「画像の品質」をどのような値で表すのか明らかにしておらず、それを「閾値」なる値と比較もできないことから、本願発明の「前記第1の画像(572)の品質が」「所定の閾値を満たすかどうかを決定すること」ができず、さらに、本願発明の「記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合」を判断することができないのであるから、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
してみれば、請求人の意見書による主張によって、当審拒絶理由2の理由3(1)が解消されることにはならない。
エ 小括
よって、当審拒絶理由2の理由3(1)で指摘した事項は、意見書の主張を参照しても解消されておらず、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由3の(2)について
ア 本件補正により、上記第3の理由3の(2)で指摘した本願発明の特定事項は「前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定であり、有限要素解析を使用して再規定される、再規定された第2の評価設定として規定することと、前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し、前記第1の仮想画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた、前記仮想モデルの前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された第2の評価設定を使用して行うこと」(下線は補正部分)と補正された。
イ 本願明細書の記載
上記アで記載した本願発明の特定事項に関して、本願明細書には、以下の記載がある。なお、下記の【0028】、【0031】及び【0032】については、上記第3の3で摘記した箇所が一部であることから、再摘記した。
「【0023】
この例示的な実施形態では、メモリデバイス510は、実行可能な命令及び/又は他のデータなどの情報が選択的に格納され及び取り出されることを可能にする一又は複数のデバイス(図示しない)を含んでいる。この例示的な実施形態では、このようなデータには、限定されないが、複合材料の特性、超音波の特性、モデリングデータ、撮像データ、補正曲線、動作データ、及び/又は制御アルゴリズムが含まれる。この例示的な実施形態では、コンピュータシステム500は、自動的にパラメトリック有限要素解析を実施することにより、複合構造200及び/又は不規則性270の検査に使用される所望の評価設定を決定するように構成されている。」
「【0028】
この例示的な実施形態では、撮像モジュール570は波形セットに基づいて画像を生成し、画像の品質が所定の閾値を満たすかどうかを決定する。図6は、撮像モジュール570によって生成された複合構造200の仮想画像572のスクリーンショットである。画像の品質が所定の閾値を満たす場合、この例示的な実施形態では、評価モジュール580は、所定の評価設定を、複合構造200の検査に使用するための所望の評価設定として認定する。画像の品質が所定の閾値を満たさない場合、この例示的な実施形態では、評価モジュール580は、少なくとも一つの所望の評価設定が認定されるまで、有限要素解析を用いるプロセスを繰り返す。」
「【0031】
図8は、複合構造200及び/又は不規則性270を検査するためにコンピュータシステム500によって実施されうる例示的な方法700のフロー図である。実施の間、この例示的な実施形態では、コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、少なくとも一つの不規則性パラメータが決定される710。この例示的実施形態では、不規則性パラメータには、不規則性の厚み290、不規則性の幅300、不規則性の長さ、不規則性の位置、及び/又は不規則性の形状が含まれる。この例示的な実施形態では、不規則性のパラメータに基づいてモデルが生成され720、不規則性パラメータ及び/又はモデルに関連付けられた波形データを供給するためにモデルが検査される730。具体的には、この例示的な実施形態では、モデルの検査730には、ユーザによって規定されるコンピュータ500及び/又は刺激機構又は超音波試験(UT)ソースに関連付けられた評価設定が用いられる。
【0032】
この例示的な実施形態では、波形セットに基づいて仮想画像を生成する740ために撮像アルゴリズムが適用され、仮想画像の品質が所定の閾値を満たすかどうかが決定される750。仮想画像の品質が所定の閾値を満たす場合、この例示的な実施形態では、評価設定が、複合構造200の検査に使用するための所望の評価設定として認定される760。仮想画像の品質が所定の閾値を満たさない場合、この例示的な実施形態では、コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、刺激機構に関連付けられた別の評価設定が規定され770、再規定された評価設定を使用して不規則性パラメータに基づく別のモデルが生成される720。例えば、この例示的な実施形態では、評価設定は有限要素解析を使用して再規定される。別の構成では、評価設定は、本明細書に記載のように方法及びシステムを機能させることができる任意の方法及び/又はプロセスを使用して再規定することができる。この例示的な実施形態では、方法700は、少なくとも一つの所望の評価設定が認定される760まで繰り返される。」
ウ 判断
(ア)評価設定について
本願発明の「第1の評価設定」は、本願発明において「超音波の反射信号の第1の波形データセットを供給するために、前記仮想モデルに向けて前記超音波の少なくとも一つの波シミュレーションを伝送する」「第1の検査シミュレーションを」「行う」際に「使用」する「少なくとも刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、前記少なくとも一つの刺激機構と前記複合構造との間の距離、および前記少なくとも一つの刺激機構とセンサとの間の距離を含む」もので、「前記超音波の刺激機構による前記複合構造の前記超音波の物理的検査を行うため」「使用する」もので、「前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定」されるものであると特定されており、
本願発明の「第2の評価設定」は、「前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定であり、有限要素解析を使用して再規定される、再規定された」もので、「前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを」「行う」際に「使用」する「前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された」もの、「前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定」されるもので、「前記複合構造の物理的検査を行うため」「使用する」もので、「前記複合構造を物理的に検査するように前記複合構造に向けて少なくとも一つの物理波を伝送するために」「使用する」ものであると特定されている。
これらの特定事項から、「第1の評価設定」及び「第2の評価設定」は、モデルを検査するための超音波の刺激機構における、刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等を設定することである。
(イ)有限要素解析について
本件補正により、「第2の評価設定」は「有限要素解析を使用して再規定され」るものと特定されたが、上記イで摘記した本願明細書には、有限要素解析を用いて、何の要素をどのように有限要素解析することにより刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等について、再規定するのか記載されていない。
(ウ)モデルの生成、モデルの検査について
本件補正により「前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し」と特定され、上記イで摘記した本願明細書にも、「再規定された評価設定を使用して不規則性パラメータに基づく別のモデルが生成される720」との記載はある。
しかしながら、「第2の評価設定」は上記(ア)で述べたとおり、モデルを検査するための超音波の刺激機構における、刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等を設定することであり、この点、上記イで摘記した本願明細書にも、「モデルの検査730には、ユーザによって規定されるコンピュータ500及び/又は刺激機構又は超音波試験(UT)ソースに関連付けられた評価設定が用いられる。」と記載されている。
してみれば、「モデルの生成」は不規則性パラメータに基づいて生成されるものであるものの、その生成されたモデルを検査するための「超音波の刺激機構における、刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等」の要素によってモデルが生成されるものではないことから、不規則性パラメータを変更してモデルを再度生成することになると、その再度生成されたモデルを検査するための「超音波の刺激機構における、刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等」も異なってくる。
したがって、上記第3の理由3の(2)で指摘した「仮想画像の品質が所定の閾値を満たさない場合に、超音波シミュレーションにおける超音波の伝送条件等を変更してモデル検査をするのではなく、モデルから生成し直してしまっては、その新たなモデルでまた超音波シミュレーションを行うことになり、あるモデルに対する超音波の伝送条件等は決定しないことにもなる」との指摘に係る不備は解消されていないことになり、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
エ 請求人の主張
請求人は、意見書で、「(4)拒絶理由の理由3について」において、理由3の(2)について何ら説明していない。また、意見書で理由3の(2)に関連する理由1の(5)に対する説明として、
「理由1(5)について、出願時明細書の段落[0031]には、「モデルの検査730には、ユーザによって規定されるコンピュータ500及び/又は刺激機構又は超音波試験(UT)ソースに関連付けられた評価設定が用いられる。」と、段落[0032]には、「コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、刺激機構に関連付けられた別の評価設定が規定され770、再規定された評価設定を使用して不規則性パラメータに基づく別のモデルが生成される720。」と記載されています。すなわち、図8には、評価設定を用いたモデルの検査730と、再規定された評価設定を使用して不規則性パラメータに基づく別のモデルの生成720、そして、別の評価設定の再規定770が示されていることは明らかです。そして、そして、上述のように新請求項1および5を「前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し、前記第1の仮想画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた、前記仮想モデルの前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された第2の評価設定を使用して行うことと、」と修正する補正をしましたので、その発明の内容は明確になったと思料致します。」と主張している。
しかしながら、意見書では、上記第3の理由3の(2)で指摘した「仮想画像の品質が所定の閾値を満たさない場合に、超音波シミュレーションにおける超音波の伝送条件等を変更してモデル検査をするのではなく、モデルから生成し直してしまっては、その新たなモデルでまた超音波シミュレーションを行うことになり、あるモデルに対する超音波の伝送条件等は決定しないことにもなる」に対応すべく、「モデルの検査730」、「モデルの生成720」及び「評価設定の再規定770」との関係について説明していないことから、請求人の意見書による主張によって、当審拒絶理由2の理由3(2)が解消されることにはならない。
エ 小括
よって、当審拒絶理由2の理由3(2)で指摘した事項は、意見書の主張を参照しても解消されておらず、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない
(3)理由3の(3)について
ア 本願明細書の記載
本願発明の「少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータを規定すること」について、モデリングモジュールによるシミュレーションを行うにあたって、その値(パラメータ)を予めどのように得るのかは、発明の詳細な説明に「コンピュータシステム500及び/又はユーザによって、少なくとも一つの不規則性パラメータが決定される710。この例示的実施形態では、不規則性パラメータには、不規則性の厚み290、不規則性の幅300、不規則性の長さ、不規則性の位置、及び/又は不規則性の形状が含まれる。」(【0031】)と記載されているのみである。
イ 判断
コンピュータシステム500及び/又はユーザによって不規則性の厚み、幅、長さ、位置及び/又は形状を予めどのように得るのか記載されておらず、過去の検査の結果から用いる材料、製造方法、大きさ等によってある程度の目安があるのか、ユーザ(熟練者)の経験によるものなのか不明であり、不規則性パラメータの値を予めどのように得るのか明らかでない。
してみれば、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
ウ 請求人の主張
請求人は、意見書で、
「(4)拒絶理由の理由3について
・・・。また、不規則性の厚み、幅、長さ、位置及び/又は形状は、コンピュータ及び/又はユーザーによって予め決めることができ、不規則性パラメータのための値は、不規則性パラメータに基づいて生成されたモデルの不規則性により異なるようになっていることは、当業者であれば理解できるものであり、したがって、当業者であれば新請求項1に係る発明を実施することは可能であると思料致します。」と主張するにとどまり、当審拒絶理由2の理由3(3)で指摘した「過去の検査の結果から用いる材料、製造方法、大きさ等によってある程度の目安があるのか、ユーザ(熟練者)の経験によるものなのか」について説明していない。
してみれば、請求人の意見書による主張によって、当審拒絶理由2の理由3(3)が解消されることにはならない。
エ 小括
よって、当審拒絶理由2の理由3(3)で指摘した事項は、意見書の主張を参照しても解消されておらず、発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
2 理由1(明確性)について
(1)理由1の(3)について
当審拒絶理由2の理由1(3)で指摘した、本願発明の「前記第1の画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の検査を可能とする所定の閾値を満たすかどうかを決定すること」及び「記第1の画像の品質が前記所定の閾値を満たす場合に、刺激機構による前記複合構造の物理的検査を行うため前記第1の評価設定を使用すること」における「第1の画像の品質」を表す何の値が、どのような値(閾値)を満たすかどうか決定するのか不明確であることについては、本件補正で補正されなかったことから、不明確のままであり、この点、上記1の(1)で述べたとおり、本願明細書及び請求人の意見書による主張を参照しても明らかになるものではない。
よって、本願の請求項1の記載は、上記の点で不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)理由1の(4)について
上記第3の理由1の(4)で指摘した事項については、本件補正により、「前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定であり、有限要素解析を使用して再規定される、再規定された第2の評価設定として規定することと、前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し、前記第1の仮想画像(572)の品質が所定の閾値を満たさない場合に、少なくとも一つの不規則性(270、450)パラメータに関連付けられた、前記仮想モデルの前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを、前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された第2の評価設定を使用して行うこと」(下線は補正部分)と補正された。
しかしながら、上記1(2)で説示したとおり、「第2の評価設定」はモデルを検査するための超音波の刺激機構における、刺激ソースの種類、刺激ソースのビーム幅、刺激機構と複合構造との間の距離、刺激機構とセンサとの間の距離等を設定するものである一方、「第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成」すると特定され、「第2の評価設定」はモデルを検査するものであるのか、モデルを生成するものであるのかは明確とはいえない。そして、「有限要素解析を使用して再規定」することについても、「第2の評価設定」するにあたり何の要素を有限要素解析するのかは明確とはいえない。
よって、本願の請求項1の記載は、上記の点で不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(3)理由1の(5)について
上記第3の理由1の(5)で、「上記図8における「770」の工程が一度しか繰り返さないことになり、技術的に発明が十分に特定されているとはいえない。」と指摘したことについては、本件補正で補正されず、意見書においても何ら説明がないことから、依然として、一度しか繰り返さないのか、(「波形データセットに基づいて」「仮想画像(572)を生成」し、「仮想画像(572)の品質が、しわを含む不規則性に関する前記複合構造の
検査を可能とする所定の閾値を満たす」まで)複数回繰り返すのかが明確とはいえない。
また、「上記図8の「770」の工程が、「730(モデルを検査する)」工程に戻るものともいえるが、図8においては「720(モデル生成する)」工程に戻っており、両者の関係が不明確である。」との指摘については、上記(2)で記載したとおり、本件補正で「前記再規定された第2の評価設定を使用して前記不規則性パラメータを基にモデルを生成し」と特定された一方で、上記1(2)ウ(ア)で述べたとおり、本願発明の「第2の評価設定」は、「前記刺激機構に関連付けられた別の評価設定であり、有限要素解析を使用して再規定される、再規定された」もので、「前記超音波の前記反射信号の第2の波形データセットを供給するための第2の検査シミュレーションを」「行う」際に「使用」する「前記第1の評価設定とは異なる前記再規定された」もので、「前記複合構造(200)の検査に使用される所望の評価設定として認定」されるもので、「前記複合構造の物理的検査を行うため」「使用する」もので、「前記複合構造を物理的に検査するように前記複合構造に向けて少なくとも一つの物理波を伝送するために」「使用する」ものであると特定されており、これらの特定事項から「第2の評価設定」はモデルを検査するためのものである。
してみれば、「第2の評価設定」によって、「730(モデルを検査する)」工程に戻るものであるのか、「720(モデル生成する)」工程に戻るものであるのか、依然として技術的に明確とはいえない。
よって、本願の請求項1の記載は、上記の点で不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
第5 むすび
以上のことから、本願の請求項1の記載は不明確であり、そして、発明の詳細な説明は当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。
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2017-015477