特許拒絶査定不服審判
2017-013117
スクラロースを含有する組成物及びその応用
- 審判番号
- 2017-013117
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-089036外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年09月05日
- 審決日
- 2018年02月19日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人三枝国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (A23G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 89036号「スクラロースを含有する組成物及びその応用」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月27日出願公開、特開2015-154781号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯
本願は、1999年10月28日(優先権主張1998年10月28日、日本国(3件) 1998年10月29日、日本国(8件) 1998年11月17日、日本国(8件) 1998年11月25日、日本国(4件) 1998年11月30日、日本国 1998年12月11日、日本国(12件) 1999年1月26日、日本国(3件) 1999年6月4日、日本国(10件) 1999年7月14日、日本国(4件) 1999年7月15日、日本国 1999年9月3日、日本国 1999年9月7日、日本国)を国際出願日とする特願2000-577899号の一部を、平成21年10月13日に新たな特許出願とした特願2009-236739号の一部を、平成24年5月28日に新たな特許出願とした特願2012-121372号の一部を、平成24年12月18日に新たな特許出願とした特願2012-276219号の一部を、平成26年1月7日に新たな特許出願とした特願2014-1003号の一部を平成27年4月24日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月3日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成28年5月9日付けで意見書及び手続補正書が提出された後、平成28年9月2日付けで通知された拒絶の理由に対して、平成29年1月12日付けで意見書及び手続補正書が提出された後、平成29年5月29日付けで平成29年1月12日付けの手続補正書による補正が却下されるとともに平成28年9月2日付けで通知された拒絶の理由によって拒絶査定され、これに対して、平成29年9月5日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。
2 平成29年9月5日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1) 本件補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項4は、
「甘味料として砂糖に代えてラクチトール及びスクラロースを含有するハードキャンディー。」
と補正された(本件補正後の前記請求項4に係る発明を、以下、「本願補正発明」という。)。
(2) 本件補正の目的
本件補正は、本願補正発明に関し、本件補正前の請求項4に係る発明を、本件補正前の請求項4に係る発明を特定するために必要な事項である「ラクチトール及びスクラロースを含有するハードキャンディー」について、「甘味料として砂糖に代えて」と限定するものであって、本件補正前後の両発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一のものである補正を含むものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するので、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(3) 引用例
本願の出願(優先日)前に日本国内又は外国において頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-57148号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア) 「(1)ラクチトールとそれ以外の寡糖類とを含有してなるハードキャンディ。」(1ページ左下欄5~6行)
(イ) 「従来、キャンディ類は砂糖を原料として製造されてきたがこのような背景のもとに、今日ではエネルギーの無い、あるいはエネルギーの低いキャンディや低甘味あるいは虫歯になりにくい(低う蝕性)キャンデイ類が要求されるようになってきた。
近年、砂糖の代替物がいくつか開発され、キャンディ類の原料として使われている。すなわち低カロリー甘味料としては還元澱粉糖化物、還元麦芽糖水飴,マルチトールがあり、低う蝕性甘味料としてはネオシュガー,カップリングシュガー,パラチノース,パラチニット,ソルビトール,マニトール,キシリトール,還元澱粉糖化物,還元麦芽糖水飴,マルチトールなどがあるが低カロリー、低う蝕性の両方の機能を満足する甘味料は還元澱粉糖化物,還元麦芽糖水飴,マルチトールだけである。」(1ページ右下欄1~17行)
(ウ) 「上記のような状況に鑑み、本発明者らは種々検討した結果、低甘味,低う蝕性ハードキャンディにはラクチトールを組み合わすことによってテクスチャーのすぐれた、コールドフローのおきにくいハードキャンディ類ができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ラクチトールとそれ以外の寡糖類とを含有してなるハードキャンディを提供するものである。
ラクチトール(4-O-β-D-ガラクトピラノシル-D-ソルビトール)は乳糖を水素添加して得られる糖アルコールの1種で、甘味度は砂糖の0.3~0.4倍、カロリーは砂糖の約0.5倍の低う蝕性の砂糖に似た甘味素材である。さらにこの化合物は吸湿性がなく、結晶化しやすく、加熱による着色がないなどキャンディ用の素材として優れた特徴を持っている。」(2ページ左上欄15行~右上欄11行)
(エ) 「ラクチトール以外の寡糖類としては、単糖から十糖からなる糖類や還元澱粉糖化物および還元麦芽糖水飴などの混合物および低う蝕性糖類が含まれる。すなわち、、D-ソルビトール,マルチトール,マニトール,キシリトール,パラチニットなどの糖アルコールの外、還元澱粉糖化物や還元麦芽糖水飴のような混合物も含まれる。また、低う蝕性糖類としてはネオシュガー,カップリングシュガー,パラチノースが含まれる。」(2ページ左下欄2~10行)
(オ) 「本発明のハードキャンディは、必要に応じて他の成分たとえば有機酸およびその塩類(例、クエン酸,イソクエン酸,マレイン酸,フマル酸,コハク酸,アジピン酸,リンゴ酸などおよびその塩類)、着香料(例、いちご,りんご,オレンジ,レモン,パイナップル,メロン,コーヒー,ココア,ミルク,ミントなどの各フレーバーの他、植物性各種香料,ハーブ香辛料など)、着色料(例、β-カロチン,クロロフィルなどの天然着色料の他、各種合成着色料など)あるいは甘味の調整を目的として高甘味度甘味料(例、アスパルテーム,サッカリンナトリウム,アセスルファムK,シュクラロース,アリテームなどの合成甘味料およびステビオサイド,レバウディオサイド,α-グリコシルステビオサイド,グリチルリチン,ソーマチンなどの天然甘味料など)、ビタミン類(例、アスコルビン酸,ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンEおよびこれらの塩類あるいはそのエステル類など)などを適宜配合してもよい。」(2ページ左下欄11行~右下欄9行)
(カ) 「本発明のハードキャンディの製造は例えば次のように行う。
所望量のラクチトールおよびそれ以外の寡糖類に、これらの総量の0.05~0.5倍量の水を加え、150~180℃に加熱して煮詰め、150℃前後にした後、所望により有機酸類,着香料,着色料,高甘味度甘味料などのその他の添加物を加え、ドロップ,あめ玉などの型に入れ室温程度に冷却する。冷後型ぬきして各種ハードキャンディが得られる。
このようにして得られる本発明のハードキャンディは、低カロリー、低う蝕性であり、テクスチャーが良く、歯に付着しにくい。また高温高湿下での形くずれが少なく、包装材料への付着も少ない。さらに製品の透明度が高く商品価値が高い。」(2ページ右下欄11行~3ページ左上欄5行)
(キ) 「実施例4
アセスルファムKで甘味を補強した低カロリーキャンディを以下の組成によって作った。
「ラクチット」(ラクチトール・2水和物,武田薬品工業)1540g,「リカジン」(還元澱粉糖化物,固形分75.1%,武田薬品工業)803g,アセスルファムK 5gに水400ml(当審注:「ml」は筆記体小文字の「ミリリットル」。)を加えて160~170℃で加熱して2055gまで煮詰め、
145~150℃とした後、型に入れて25℃まで冷却して型抜きした。
得られたハードキャンディはガラスのような無色透明な外観をした、さっぱりした甘味のキャンディで、甘味の強さは砂糖を使用したものと同じであった。」(3ページ右下欄2~15行)
(ク) これらの事項を総合すると、特に実施例4の記載から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「低カロリーキャンディであってラクチトールとそれ以外の寡糖類である還元澱粉糖化物及びアセスルファムKを含有するハードキャンディ。」
(4) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
用語の意味・内容からして、本願補正発明の「スクラロース」と引用発明の「アセスルファムK」とは技術常識から「高甘味度甘味料」の限りにおいて一致しているので、本願補正発明の「ラクチトール及びスクラロースを含有するハードキャンディー」と引用発明の「ラクチトールとそれ以外の寡糖類である還元澱粉糖化物及びアセスルファムKを含有するハードキャンディ」とは「ラクチトール及び高甘味度甘味料を含有するハードキャンディー」の限りにおいて一致している。
したがって、両者は、
「ラクチトール及び高甘味度甘味料を含有するハードキャンディー。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点>
本願補正発明が「甘味料として砂糖に代えて」ラクチトール及び高甘味度甘味料を含有するハードキャンディーでありその「高甘味度甘味料」が「スクラロース」であるのに対して、引用発明では「それ(ラクチトール)以外の寡糖類である還元澱粉糖化物」を含有するものの「低カロリーキャンディであって」その「高甘味度甘味料」が「アセスルファムK」である点。
(5)判断
上記<相違点>について検討する。
引用発明の「低カロリーキャンディであって」における「低カロリー」とは、引用例に「甘味の強さは砂糖を使用したものと同じであった」(上記「(キ)」参照。)と記載されているにもかかわらず、砂糖を使用したものよりもエネルギー摂取量の低い、低カロリーであることを意味することは、当業者にとって明らかである。また、例示するまでもなく、「甘味度は砂糖の0.3~0.4倍、カロリーは砂糖の約0.5倍の」(上記「(ウ)」参照。)ラクチトール、「低カロリー甘味料」(上記「(イ)」参照。)の還元澱粉糖化物及び高甘味度甘味料は、本願の優先日前、砂糖の代替物として知られていた。したがって、引用発明は実質的に「甘味料として砂糖に代えて」「ラクチトールとそれ以外の寡糖類である還元澱粉糖化物及び高甘味度甘味料を含有するハードキャンディー」といえる。
そして、引用例には、「アセスルファムKで甘味を補強した低カロリーキャンディ」(上記「(キ)」参照。)と記載されているから、引用発明においては、低カロリーキャンディの甘味を補強するために、高甘味度甘味料であるアセスルファムKを用いているものといえる。さらに、引用例には、「甘味の調整を目的として高甘味度甘味料(例、・・・(略)・・・アセスルファムK,シュクラロース・・・(略)・・・)・・・(略)・・・を適宜配合してもよい。」(上記「(オ)」参照。)と記載されているから、甘味の調整を目的として高甘味度甘味料であるアセスルファムKやシュクラロースを用いることも示唆されている。そうすると、引用発明において、低カロリーキャンディの甘味を補強・調整するために、高甘味度甘味料であるアセスルファムKに代えて若しくはアセスルファムKと共に、同じく高甘味度甘味料であるシュクラロースを用いることは当業者に格別な困難性があるものとはいえない。
以上のことからすると、引用発明をして上記相違点に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
また、引用例には、「得られたハードキャンディはガラスのような無色透明な外観をした、さっぱりした甘味のキャンディで(あった)」(上記「(キ)」参照。)と記載されているから、引用発明は、ガラスのような無色透明な外観をした、さっぱりした甘味であるといえるところ、引用発明においてアセスルファムKに代えて若しくはアセスルファムKと共にシュクラロースを用いることで、ガラスのような無色透明な外観をした、さっぱりした甘味を損なうことが、本願の優先日前に知られていたとは認められない。そうすると、引用発明においてアセスルファムKに代えて若しくはアセスルファムKと共にシュクラロースを用いることで、ガラスのような無色透明な外観をした、さっぱりした甘味のハードキャンディが得られるものと当業者は予測するものといえる。
ここで、平成29年9月5日付けの審判請求書(「【請求の理由】 3. (3-2) (a)」の項参照。)における、本願補正発明は「透明感のあるリッチ感があり」「すっきりした爽やかな甘味質を有する」という特性を有し、つまりその効果は予想外のものであり、当業者であっても予期できるものではない旨の、審判請求人の主張について検討する。
審判請求人は、「透明感のあるリッチ感」とは、視覚的に透明であり高級感があること(透明感により高級感が醸し出されていること)を意味する旨、主張する(「審判請求書 【請求の理由】 3. (3-2) (b)」の項参照。)ところ、本願明細書には「透明感」、「リッチ感」について何ら具体的に定義されていないものの、「リッチ感」との表現は、「透明感」との表現を言い換えたものといえる。したがって、本願補正発明の特性の「透明感のあるリッチ感」が、引用発明の特性の「ガラスのような無色透明な外観」と格別異なるものとはいえない。
また、「すっきりした爽やかな甘味質」については、本願明細書には「爽やかな」甘味について何ら具体的に定義されていないところ、例えば段落【0037】における「さっぱりとした爽やかな甘味質」や「すっきりとした爽やかな甘味」のように、「さっぱりとした」や「すっきりとした」との表現と「爽やかな」との表現が同時に用いられていることからすると、本願補正発明の特性の「爽やかな」との表現は、「すっきりした」、「さっぱりとした」との表現を言い換えたものといえる。したがって、本願補正発明の特性の「すっきりした爽やかな甘味質」は、引用発明の特性の「さっぱりした甘味」と格別異なるものとはいえない。
そうすると、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明及び引用例に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものであって格別の効果であるとまでは認められない。
よって、本願補正発明は、引用発明及び引用例に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(6) むすび
以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
3 本願について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認められる。
「ラクチトール及びスクラロースを含有するハードキャンディー。」
(1) 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明は、上記「2 (3)」の項に記載したとおりである。
(2) 対比・判断
本願発明は、前記「2」の項で検討した本願補正発明における「甘味料として砂糖に代えて」と特定していた点を削除したものに相当し、本願補正発明は本願発明の構成をすべて備えるから、前記「2 (4)、(5)」の項にて検討した本願補正発明と同様に、本願発明は、引用発明及び引用例に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3) むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用例に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は同法第49条第2号の規定に該当し、本願の他の請求項1ないし3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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