特許拒絶査定不服審判
2017-012572
スタンソポルフィン
- 審判番号
- 2017-012572
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-544965外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月24日
- 審決日
- 2018年08月01日
- 公報発行日
- 2019年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インファケア ファーマスーティカル,コーポレイション
- 【請求人代理人】梶 俊和
- 【請求人代理人】中村 英子
- 分類
- P18 .113-Z (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-544965「スタンソポルフィン」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日国際公開、WO2013/082559、平成27年 1月 5日国内公表、特表2015-500243〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
この出願は、2012年11月30日(パリ条約による優先権主張 2011年12月 1日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とするものであって、平成28年8月8日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月9日に意見書および手続補正書が提出され、同年4月14日付けで拒絶査定され、同年8月24日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明10」あるいはまとめて「本願発明」という。)は、平成29年2月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
乳児における高ビリルビン血症又はその症状を治療する方法に使用されるスタンソポルフィンであって、
排除因子が存在せず、少なくとも1つのベースラインの総ビリルビンレベルが所定閾値を超え、かつ少なくとも1つの危険因子が存在する高ビリルビン血症の乳児に、治療量のスタンソポルフィンを投与することを含み、
前記排除因子が、新生児甲状腺疾患の臨床的示唆、妊婦の橋本病以外の母親の現状対処できない甲状腺疾患、眼科予防のエイトロマイシン軟膏以外のQT間隔を延ばし得る薬剤を用いた乳児における治療又は治療要請、長いQT症候群の家族歴、乳幼児突然死症候群の家族歴、既知のポルフィリン症、ポルフィリン症の危険因子、ポルフィリン症の家族歴、全身性エリテマトーデスの母親の既往歴、出産の30日前又は授乳の場合は出産後のフェノバルビタールの母親の使用、母親の現在の薬物又はアルコールの乱用、薬物又はアルコールの母親の経歴、アプガー指数が5分後に6以下、先天性の異常、感染、酸血症、敗血症、肝炎;予測可能な将来における外科手術又は手術室光照射を必要とする過剰リスク、1分間あたり60超の呼吸数で規定される心肺窮迫、新生児の一過性多呼吸の診断、異常な聴覚又は眼科的所見、実験的スクリーニング評価における臨床的に有意な異常、高い直接又は抱合型ビリルビン(TSBが5.0mg/dL未満の場合は1.0mg/dL超、又はTSBが5.0mg/dL以上の場合は20%超のTSB)、標準的治療にもかかわらず持続した低血糖(40mg/dL未満の血糖)、正常な上限(ULN)の2倍を超えるALT及び/又はASTとして規定される肝疾患、ULNの2倍を超えるクレアチン及び/又は血中尿素窒素として規定される異常肝機能、同種免疫血球破壊によって生じたものではない球状赤血球症のような構造的赤色細胞の何らかの血液汚れの所見、一貫した(連続3回)36℃超及び/又は37.5℃超の腋窩の温度として規定される体温調節障害、感光性薬物又は薬剤の使用;ULNを上回る血清ナトリウムである高ナトリウム血症として規定される脱水症、静脈内免疫グロブリン(IVIG)又はアルブミンの使用、ビリルビンをアルブミンから置換することが知られている又は疑われている薬剤(例、セフトリアキソン又はサルファ系抗生物質)を用いた出産後の治療、限定されるものではないが肺疾患や心疾患などの重大な病的症状、出産後の何らかの研究的な薬剤又は装置の使用、臨床試験への参加、及びこれらの組み合わせから選択され、
前記少なくとも1つの危険因子が溶血性疾患であり、
該所定閾値は、乳児年齢に対応する2004AAPノモグラムに準じた光線療法の投与についての閾値を1~3mg/dL下回り、
前記スタンソポルフィンの前記治療量が、乳児の体重を基準に0.75mg/kg~5mg/kgであり、
該高ビリルビン血症又はその症状を治療する方法に使用されるスタンソポルフィン。
【請求項2】
乳児がクームス陽性である、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項3】
AAPガイドラインに基づいて光線療法を開始すべきかを決めるための、乳児にスタンソポルフィンを投与した後の6~72時間にスタンソポルフィンの投与に続く治療後の総ビリルビンレベルの確定をさらに含む、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項4】
所定の閾値が、2004AAPガイドラインによる生後12時間以下の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは1~3mg/dL、2004AAPガイドラインによる生後12時間以下の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは1mg/dL、2004AAPガイドラインによる生後12時間以下の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは2mg/dL、2004AAPガイドラインによる生後12時間以下の乳児に対する光線療法の適用についての閾値、2004AAPガイドラインによる生後12時間~48時間の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは1~3mg/dL、2004AAPガイドラインによる生後12時間~48時間の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは2mg/dL、2004AAPガイドラインによる生後12時間~48時間の乳児に対する光線療法の適用についての閾値より低くは3mg/dLから選択される、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項5】
スタンソポルフィンの治療量の投与が、生後6時間以内、生後12時間以内、生後24時間以内、及び生後48時間以内から選択された時間に行われる、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項6】
乳児が35~43週間の在胎期間である、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項7】
スタンソポルフィンの治療量が、乳児の体重を基準に、0.75mg/kg、1.5mg/kg、3.0mg/kg、及び4.5mg/kgから選択される、請求項1に記載の
スタンソポルフィン。
【請求項8】
スタンソポルフィンが筋肉注射によって投与される、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項9】
スタンソポルフィン投与後の総ビリルビンレベルがベースラインの総ビリルビンレベルを超える光線療法の適用をさらに含む、請求項1に記載のスタンソポルフィン。
【請求項10】
スタンソポルフィン投与に続く治療後の総ビリルビンレベルの確定をさらに含み、治療後の総ビリルビンレベルは、乳児へのスタンソポルフィン治療量投与24時間後にベースラインの総ビリルビンレベルを少なくとも5%下回り、治療後の総ビリルビンレベルは、乳児へのスタンソポルフィン治療量投与48時間後にベースラインの総ビリルビンレベルを少なくとも10%下回る、又は治療後の総ビリルビンレベルは、乳児へのスタンソポルフィン治療量投与72時間後にベースラインの総ビリルビンレベルを少なくとも20%下回る、請求項1に記載のスタンソポルフィン。」
第3 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由1は、本願発明はスタンソポルフィン自体の発明であるところ、引用文献1及び引用文献2に記載された化合物と請求項1~10に記載のスタンソポルフィンにおいて、化合物自体に差異はないから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
また、理由2として、本願発明は特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を示している。
第4 当審の判断
(1)引用文献に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物であるPediatrics,1999年,103(1),p1-5(以下「引用文献1」という。)、及び特表2010-505854号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
なお、引用文献1は原文が外国語であるため、当審による翻訳文で示す。また、下線は当審で付した。
・引用文献1
(1a)
「目的 強力なビリルビン産生阻害剤であるSn-メソポルフィリン(SnMP)の効果を、a)・・・(略)・・・において評価すること。
・・・(略)・・・
結論 SnMPの単回投与は、生後48~96時間に高ビリルビン値を有する母乳期の新生児の高ビリルビン血症の管理において効果的であることがわかった。・・・(略)・・・」(ABSTRACT)
・引用文献2
(2a)
「【請求項1】
少なくとも約38週間の妊娠期間の幼児における高ビリルビン血症を治療する方法であって、必要とする幼児に、低用量のスタンソポルフィンを投与することを含む治療方法。」(特許請求の範囲)
(2b)
「【0030】
スタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド、ケミカルアブストラクト登録番号106344-20-1)は、Stanate(商標登録)としても知られる(インファケア・ファーマシューティカルズ社の商標、プライマウス・ミーティング、ペンシルバニア州)。スタンソポルフィンは、次の構造を有し、分子式C34H36Cl2N4O4Snと分子量754.29を有する。
【0031】
」(段落【0030】~【0031】)
上記(1a)より、引用文献1には「Sn-メソポルフィリンである化合物。」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているものと認める。
また、上記(2a)、(2b)より、引用文献2には、「スタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド)である化合物。」の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されているものと認める。
(2)対比・判断
本願明細書の段落【0084】には「いくつかの態様において、メタロポルフィリンは、錫メソポルフィリン(スタンソポルフィンとも称する)である。」、同【0158】~【0159】には「いくつかの態様において、メタロポルフィリンは、錫IVメソポルフィリンIX二塩化物である(スタンソポルフィン又はSnMPとも称す)。」と記載され、錫IVメソポルフィリンIX二塩化物の構造として次の化学式が記載されている。
これらの記載事項から見て、本願発明1の「スタンソポルフィン」は錫メソポルフィリンであるといえるから、引用1発明の「Sn-メソポルフィリン」、引用2発明の「スタンソポルフィン(錫(IV)メソポルフィリンIXジクロリド)」は、何れも本願発明1の「スタンソポルフィン」に相当する。
本願発明1は、「乳児における高ビリルビン血症又はその症状を治療する方法に使用される」、「排除因子が存在せず、少なくとも1つのベースラインの総ビリルビンレベルが所定閾値を超え、かつ少なくとも1つの危険因子が存在する高ビリルビン血症の乳児に、治療量のスタンソポルフィンを投与することを含み」等、「スタンソポルフィン」の用途を限定する数々の事項によって特定されているが、その末尾を「・・・スタンソポルフィン。」とする表現によって記載されており、要するに「スタンソポルフィン」という化合物の発明であると認められる。スタンソポルフィン自体は、その用途をどのように特定しても、化合物として別異のものにはならないから、本願発明1は、その用途を特定する事項がどのような内容であるかによらず、スタンソポルフィンという化合物自体の発明であるというほかはない。
そうすると、本願発明1は、引用1発明、引用2発明と比べても、それぞれ化合物として変わるところがない。
また、本願発明2~10は、本願発明1を引用して記載され、やはりその用途を限定するための特定事項がそれぞれ付加されているものの、何れも末尾を「スタンソポルフィン。」とする表現で記載されている。よって、本願発明1と同様、本願発明2~10もスタンソポルフィンという化合物自体の発明であるというほかはない。
そうすると、本願発明2~10も、引用1発明、引用2発明と、それぞれ化合物として変わるところがない。
以上のとおり、本願発明1~10は、引用文献1又は引用文献2に記載された発明である。
(3)審判請求人の主張
審判請求人は、意見書及び審判請求書において、引用された文献の何れにも本願発明で特定する用途が記載されておらず、それら用途において本願発明は引用文献に記載の発明と相違し、ひいては進歩性を有するという旨の、主に原査定の拒絶の理由2に対する反論を繰り返し、同理由1、特に本願発明が用途を特定する事項に関わらずスタンソポルフィン自体の発明であると認められる点については特段の意見等を述べていない。
しかしながら、上で述べたとおり、本願発明1~10はスタンソポルフィンという化合物自体の発明であると言わざるを得ず、用途をどのように特定しても、化合物自体を別異のものとして特定することにはならないのであるから、引用1発明、引用2発明と本願発明との間に相違点を認めることはできない。よって、審判請求人の主張は採用できない。
したがって、審判請求人の主張を検討しても、なお、本願発明1~10は引用文献1又は引用文献2に記載された発明である。
第5 結び
以上のとおり、本願発明1~10は引用文献1又は引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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