特許拒絶査定不服審判
2017-011808
ボウリングボール
- 審判番号
- 2017-011808
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-177052外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月20日
- 審決日
- 2019年08月20日
- 公報発行日
- 2019年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】上田 孝彦
- 分類
- P18 .121-WZ (A63B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-177052「ボウリングボール」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 29664〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,平成27年7月31日に出願されたものであって,平成28年9月1日付けで拒絶の理由が通知され,平成28年11月11日に手続補正がなされたが,平成29年4月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に,手続補正(補正命令に応じて,平成29年12月15日付けの手続補正書によりさらに補正がなれている)がされたものである。
その後,当審において,平成31年2月1日付け(発送日は,同月12日)で拒絶の理由が通知され,その指定期間内である同年4月16日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明について
本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成31年4月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるつぎのとおりのものである。
「【請求項1】
ボール表面に穴を開け,複数の指が一緒にかつ同時に入る大きさの穴がひとつあるふたで,開けた穴をふさぎボールの球体を形成するとともに,ボール内部に空間をもうけたボウリングボール」
第3 当審拒絶理由の概要
平成31年2月1日付けで当審において通知された拒絶の理由(以下,「当審拒絶理由」という。)の概要はつぎのとおりである。
この出願に係る発明は,その出願日前に日本国内又は外国において,頒布されたつぎの刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明及び周知事実に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<請求項1及び2に対して>
刊行物1:米国特許出願公開2008/0039220号明細書
刊行物2:米国特許第1897714号明細書
刊行物3:特開昭60-122577号公報
というものであり,具体的には,請求項1に係る発明は,刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明を適用して,請求項2に係る発明は,刊行物1に記載された発明に刊行物3に記載のものを適用して,又は,刊行物2に記載された発明に,刊行物1及び3に記載の周知技術を適用して,当業者が容易に発明をすることができたものであるというものである。
第4 各刊行物の記載事項
1 刊行物1について
当審拒絶理由において引用された刊行物1(米国特許出願公開2008/0039220号明細書)には,つぎの事項が記載されている。
(1)刊行物1記載事項
ア 「[0013]FIG. 1A shows the preferred embodiment wherein an inset for making a handle in a bowling ball, with a handle formed in the inset by a cavity in the inset, wherein the cavity has the general shape of the side view of a person's hand with fingers closed toward the person's palm. 」(当審訳:「図1Aは,好ましい実施例として,ボウリングボールにハンドルを形成するための挿入部材であって,挿入部材の空洞によって挿入部材に形成されたハンドルを備え,当該空洞は,指が人の手のひらに向けて閉じられた状態の人の手の側面の一般的な形状を有しているものを示している。」)
イ 「[0014]FIG. 1B shows the inset having a cavity with a shape similar to that of the side of a person's hand with fingers closed toward the person's palm.」(当審訳:「図1Bは,人の手のひらに向けて閉じられた指を持つ人の手の側面の形状と同様の形状の空洞を有する挿入部材を示している。」)
ウ 「[0016] FIG. 1A shows a preferred embodiment 1000, wherein a handle is formed in the bowling ball 1100 by an inset 1400. Material is removed from the bowling ball 1100 by use of a router or similar tool, to form a hole 1200 in the bowling ball 1000, the hole 1200 having dimensions necessary to accommodate the inset 1400. Preferably, the hole is made with threads 1250 so that the inset 1400, also having threads 1410, may be screwed into the hole 1200. The inset 1400 is made with indents 1430 for engaging by a spanner wrench, by which the inset is turned. Optionally, the hole may be made without threads so the inset 1300 is inserted into the hole 1200 and glued or retained by other means. 」(当審訳:「図1Aは,好ましい実施の形態1000を示しており,そこには,ハンドルが,挿入部材1400によってボウリングボール1100に形成されているものが示されている。材料が,ボウリングボール1100に,挿入部材1400を収容するのに必要な寸法を有する孔1200を形成するために,ルータまたは同様の工具を用いてボウリングボール1100から除去されている。好ましくは,孔は,ねじ山1250を有し,同様にねじ山1410を有する挿入部材1400が孔1200内にねじ込むことができるようになっている。挿入部材1400は,スパナ,レンチによって係合するためのくぼみ1430を有し,これによって回転される。必要に応じて,孔は,ねじ山なしで形成され,挿入部材1300(当審注:1400の誤記と認める)は孔1200内に挿入され,その他手段により接着又は保持される。」)
エ 「[0017]With reference to FIG. 1B, the inset 1400 is shown, having a single cavity 1420, the cavity 1420 having an entrance 1422 and a termination 1424. The finger's of a bowler's hand are inserted into the entrance 1422 of the cavity 1420, and are cupped inside the cavity 1424, with ends of the person's fingers being received by the termination 1424 of the cavity 1420.」(当審訳:「図1Bを参照すると,挿入部材1400は,単一の空洞1420を有し,当該空洞1420が入口1422および終端部1424を有するものが示されている。ボウラーの手の指は,空洞1420の入口1422に挿入され,指の終端が空洞1420の終端部1424によって受け止められることで,空洞1420(当審注:1424は1420の誤記と認める。)の内部でカップ状になる。」)
オ 「[0018]With reference to FIG. 1A, as the ball 1100 rolls, any point on the surface may contact the surface of the bowling alley, including the portion of the ball where the bowler's fingers enter the cavity 1420 forming the handle. Since that portion of the ball's handle is formed without material, when a point in proximity of the handle 1420 contacts the surface of the alley, the ball will drop slightly. However since the ball at the point of contact deviates only slightly from a perfect spheroid, the deviation from a perfect spheroid is very slight so that the rolling characteristics of the ball will be minimally impacted-no more than the affect on the ball from the finger holes in the ball. 」(当審訳:「図1Aを参照すると,ボール1100が転動すると,ボウラーの手の指が入るハンドルを形成する空洞1420のボールの部分を含む表面上のあらゆる点は,ボウリングレーンの表面に接触する。ボールのハンドルの部分が材料なしに形成されているので,ハンドル1420の近傍にある点は,アレイの表面と接触すると,ボールはわずかに低下する。しかしながら,接触点でのボールは完全な回転楕円体形状からわずかしか離れていないので,完全な回転楕円体形状からのずれは非常にわずかであり,ボールの指の孔からのボールへの影響以上に,ボールの回転特性に殆ど影響しないであろう。」)
カ 「[0019] When the inset has been inserted into the bowling ball, the inset has been made so the rotational moment of inertia of the ball is uniform, with minimal deviation from that of a standard bowling ball without the inset. The method of varying the material properties are selected from a set of methods comprising: (1) varying the density of the composite material from which the ball is formed, or (2) adding weights to compensate for material that is removed to form the handle to accept the inset.」(当審訳:「挿入部材がボウリングボールに挿入されたとき,ボールの回転慣性モーメントが均一になるようにすることで,挿入部材を備えない標準的なボウリングボールとのずれを最小にした。材料特性を変化させる方法は,(1)ボールが形成される複合材料の密度を変化させる,または(2)挿入部材を受け入れるためのハンドルを形成するために除去される材料を補償するために重みを加える,を含む一連の方法をから選択される。」)
キ FIG 1A
ク FIG 1B
ケ 図1Bから,挿入部材1400の表面が平らであることが看て取れることから,図1Aに照らせば,ボールに挿入された際の挿入部材1400のボール表面に露出する部分は,平らなものであることが看て取れる。
(2)刊行物1に記載の発明
上記(1)のアないしコによれば,刊行物1には,つぎの発明が記載されているものと認められる。
「挿入部材によって,ハンドルが形成されるボウリングボールであって,ボウリングボールに,挿入部材を収容するのに必要な寸法を有する孔が形成されており,孔にはねじ山が形成されており,挿入部材は,スパナ,レンチによって係合するためのくぼみを有し,これによって回転されることで 挿入部材が孔内にねじ込まれるものであって,挿入部材は,ボールに挿入された際のボール表面に露出する部分は平らなものであり,指が人の手のひらに向けて閉じられた状態の人の手の側面の一般的な形状を有している単一の空洞を有し,当該空洞が入口および終端部を有するものであり,ボウラーの手の指が空洞の入口に挿入され,指の終端が空洞の終端部によって受け止められることで,空洞の内部でカップ状になる,ボウリングボール」(以下,「刊行物1発明」という。)
3 刊行物3について
(1)刊行物3記載事項
当審拒絶理由において引用された刊行物3(特開昭60-122577号公報)には,つぎの事項が記載されている。
ア 「第3及び4図に最も適切に示す如く,ボウル12は当初親指穴14と空洞16のある区域に凹部28があった。凹部28には円筒状の栓30が嵌合されている。
栓30はボウル12に容易に接着できる材料から作られている。材料は望ましいバランス上の影響を得るためボウルの残余とは異なるものであってもよい。栓30を作る最適な材料として弾性プチスチック(当審注:プチスチックは,プラスチックの誤記と認める。)がある。
栓30の中に形成される空洞16はボウラーの指22,24を無理なく受けいれる形状寸法である。ボウラーの指を余裕をもって受け且つ挿入された指の側面に接触する30~35度の楕円が望ましい形状である。空洞16の内壁は表面での楕円34の形状寸法に沿って湾曲している。」(5頁右下欄下から2行~6頁左上欄13行)
イ FiG3
ウ FiG4
第5 当審の判断
1 本願発明と刊行物1発明との対比
(1)刊行物1発明の「挿入部材は,単一の空洞を有し,当該空洞が入口および終端部を有するものであり,ボウラーの手の指が空洞の入口に挿入され,指の終端が空洞の終端部によって受け止められることで,空洞の内部でカップ状になる」ものにおいて,「挿入部材」が有する「単一の空洞」が有する「入口」は,「ボウラーの手の指」が「挿入される」ものであるところ,「空洞」は,「指が人の手のひらに向けて閉じられた状態の人の手の側面の一般的な形状を有している」のであるから,ここでの「空洞」の「入口」は,本願発明の「複数の指が一緒にかつ同時に入る大きさの穴」に相当する。
(2)刊行物1発明の「入口」及び「終端部」を有する「空洞」は,「挿入部材」に設けられるものであり,当該「挿入部材」が,ボウリングのボールに形成された孔に挿入されるものであるから,刊行物1発明の「挿入部材」,「ボウリングボールに形成された孔」,「挿入部材が,ボウリングボールに形成された孔に挿入される」ことは,それぞれ,本願発明の「ふた」,ボール表面に空けられた「穴」,「開けた穴をふさ」ぐことに相当する。
(3)刊行物1発明のボウリングのボールに形成された「挿入部材を収容するのに必要な寸法を有する孔」は,ボウリングボールの内部に「挿入部材」を収容するために形成されたものであるから,ボウリングボールの内部に形成されることは明らかであって,本願発明の「ボール内部に空間をもうけた」ことに相当する。
(4)上記のとおりであるから,本願発明と刊行物1発明とは,つぎの一致点で一致し,相違点で相違する。
<一致点>
「ボール表面に穴を開け,複数の指が一緒にかつ同時に入る大きさの穴がひとつあるふたで,開けた穴をふさぐとともに,ボール内部に空間をもうけたボウリングボール」である点
<相違点1>
本願発明が,「ふた」で「空けた穴をふさぎ」,ボールの「球体」を形成するのに対して,刊行物1発明は,「挿入部材」の「ボールに挿入した際のボール表面に露出する部分」は平らなものであり,挿入部材が挿入された際ボール表面に露出する挿入部材の部分のボウリングボールの表面は球体とはならない点
2 相違点1についての判断
上記相違点1について検討するに,刊行物3には,ボウルに形成した凹部に複数の指を受け入れる空洞を形成した栓を接着して一体化するものが記載され,図4によれば,当該栓の表面が球面となるものが看て取れるように,ボウリングボールの表面に開けた穴を塞いで球面を形成するように塞ぐ部材の表面を球面とすることは本願出願前公知の技術であるから,当該公知の技術を適用し,刊行物1発明の「挿入部材」の表面をボールに挿入した際にボール表面に露出する挿入部材の部分が球面となるように形成することは,当業者が容易に想到し得ることである。
そして,本願発明の奏する効果も,刊行物1発明及び刊行物3に記載の技術に基づいて当業者が予測し得る程度のものであって,格別のものということはできない。
したがって,本願発明は,刊行物1発明に刊行物3に記載の技術を適用することにより,当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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