特許拒絶査定不服審判
2023-012907
バドミントンラケット
- 審判番号
- 2023-012907
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-187402
- 請求日
- 2023年08月02日
- 審決日
- 2024年07月31日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ビクター ラケッツ インダストリアル コーポレイション
- 【請求人代理人】斉藤 達也
- 審判長/審判官
- 審判長 殿川 雅也
- 審判官 川俣 洋史
- 審判官 桐山 愛世
- 分類
- P18 .121-Z (A63B) / P18 .537-Z (A63B) / P18 .56 -Z (A63B) / P18 .57 -Z (A63B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-187402「バドミントンラケット」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月 7日出願公開、特開2020- 69388〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和1年10月11日(優先権主張2018年11月2日(以下「優先日」という。)台湾)の出願であって、令和4年10月7日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和5年3月20日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和5年8月2日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年8月2日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲を全文にわたって補正をするものであるところ、特許請求の範囲について、下記(1)に示す本件補正前の(すなわち、令和4年12月28日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1乃至4を、下記(2)に示す本件補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至3へと補正するものである。
(1)本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
フレームと、
人工グリップであって、
先端を有する把持部と、
前記把持部の前記先端に連接される挿設部であって、前記挿設部は第一頂面及び第一開口部を有し、前記第一開口部は前記第一頂面に位置され、前記把持部及び前記挿設部の内部は互いに連通される中空構造であることと、
前記第一頂面に連接されると共に前記第一開口部から前記把持部の内部に向けて延伸される固定部材と、をさらに含むことと、
前記人工グリップの前記挿設部に覆設され、第二頂面及び第二開口部を有し、前記第二開口部は前記第二頂面に位置され、前記第一頂面と前記第二頂面との間には間隔の長さを有し、キャップの長さを有し、前記キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲であるキャップと、
一端が前記フレームに連結され、他端は前記第二開口部及び前記第一開口部を順に貫通させて前記固定部材に挿設されるシャフトと、を備えることを特徴とするバドミントンラケット。
【請求項2】
前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のバドミントンラケット。
【請求項3】
前記固定部材は前記挿設部及び前記把持部の内部に位置されることを特徴とする請求項1に記載のバドミントンラケット。
【請求項4】
前記人工グリップは前記人工グリップに内設される複数の支持部材を有し、これら前記支持部材は前縁及び後縁をそれぞれ有し、前記前縁は前記挿設部の内側壁に連接され、前記後縁は前記固定部材の外側壁及び前記把持部の内側壁に連接されることを特徴とする請求項3に記載のバドミントンラケット。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】
フレームと、
人工グリップであって、
先端を有する把持部と、
前記把持部の前記先端に連接される挿設部であって、前記挿設部は第一頂面及び第一開口部を有し、前記第一開口部は前記第一頂面に位置され、前記把持部及び前記挿設部の内部は互いに連通される中空構造であることと、
前記第一頂面に連接されると共に前記第一開口部から前記把持部の内部に向けて延伸される固定部材と、をさらに含むことと、
前記人工グリップの前記挿設部に覆設され、第二頂面及び第二開口部を有し、前記第二開口部は前記第二頂面に位置され、前記第一頂面と前記第二頂面との間には間隔の長さを有し、キャップの長さを有し、前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲であるキャップと、
一端が前記フレームに連結され、他端は前記第二開口部及び前記第一開口部を順に貫通させて前記固定部材に挿設されるシャフトと、を備えることを特徴とするバドミントンラケット。
【請求項2】
前記固定部材は前記挿設部及び前記把持部の内部に位置されることを特徴とする請求項1に記載のバドミントンラケット。
【請求項3】
前記人工グリップは前記人工グリップに内設される複数の支持部材を有し、これら前記支持部材は前縁及び後縁をそれぞれ有し、前記前縁は前記挿設部の内側壁に連接され、前記後縁は前記固定部材の外側壁及び前記把持部の内側壁に連接されることを特徴とする請求項2に記載のバドミントンラケット。」(下線部は補正箇所であり、審決で付した。)
2 補正の適否
(1)補正事項について
ア 本件補正により、本件補正前の請求項1の「キャップ」に係る発明特定事項である「前記キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲である」が削除され、「前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲である」との発明特定事項が追加された。
イ 特許法第17条の2第5項の規定によれば、拒絶査定不服審判の請求と同時にする特許請求の範囲についての補正は、請求項の削除(第1号)、特許請求の範囲の減縮(第2号)、誤記の訂正(第3号)、明りようでない記載の釈明(第4号)のいずれかを目的とするものに限るとされている。
ウ そこで、上記補正事項について検討する。
願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の明細書の段落【0025】に記載されているとおり、「キャップの長さC2は36mm乃至43.5mm」を前提として、「キャップの長さに対する間隔の長さの比率」を「0.39乃至0.83の間の範囲」とすると、「間隔の長さ」は、17mm乃至30mmと算出できる。
しかし、本件補正後の請求項1には、「キャップの長さC2」は何ら特定されていないから、本件補正前の請求項1の「前記キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲である」との特定事項と本件補正後の請求項1の「前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲である」との特定事項とは同一視できない。
また、本件補正後の請求項1の「前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲である」との特定事項は、「キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率」に換算しても、「キャップの長さC2」は何ら特定されていないから、一義的に特定できない、すなわち、「0.39乃至0.83の間の範囲」であるとは特定できず、「0.39乃至0.83の間の範囲」より広範な範囲となり得る。
そうすると、上記補正事項は、本件補正前の請求項1の「キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲である」との特定事項を削除したか、「キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲である」との特定事項を拡張して「前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲である」との特定事項としたものと認められるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当しない。
また、上記補正事項が、同項第1、3、4の各号に掲げられた、いずれの目的とするものにも該当しないことは明らかである。
(2)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、令和4年12月28日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(1)の【請求項1】に記載のとおりのものである。
第4 原査定における拒絶の理由
原査定の理由とされた、令和4年10月7日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は、以下の理由を含むものである。
理由1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由3.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
理由3について
請求項1には、「前記キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲である」との記載、請求項2には「間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲である」と記載されているが、発明の詳細な説明には、このような数値範囲とする根拠が記載されておらず、また、この数値範囲内に含まれるものと含まれないものとの比較も示されていないため、このような数値範囲とする技術的意味が明らかでなく、また、この数値範囲について、発明の詳細な説明に開示された内容から拡張ないし一般化できるとはいえない。
<引用文献等一覧>
1.中国特許出願公開第107149754号明細書
2.台湾実用新案公告第M547410号公報
第5 引用例
1 引用例1
本願の優先日前である2017年9月12日に公開された中国特許出願公開第107149754号明細書(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、括弧内の日本語訳は、当審で作成した。また、下線は当審で付した。以下、同様。)
(1)「
[図:0001418763000001.jpg]
」
(当審訳:1.アジア人の手のひらサイズに適したロングシャフトバドミントンラケットで、ラケットフレーム、ラケットシャフト、ラケットハンドルから構成されており、ラケットハンドルはコーンカバー、木製ハンドル、バックカバーで構成されており、ラケットハンドルの長さは175mm~185mm、ラケットハンドルのコーンカバーとバックカバーの長さを15mmとすると、対応する木製ハンドルの長さは160mm~170mmとなります。ラケットの長さは663mm~675mmです。)
(2)「
[図:0001418763000002.jpg]
」
(当審訳:[0002] 現在のバドミントンはイギリスで生まれました。1873年、イギリスのグラスゴー郡ブルーミントンの町にビューフォートという公爵がおり、インドから帰国した数人の退役将校が反撃するためにネット越しにラケットを使う方法を導入した。人々はシャトルコックのゲームに非常に興味を持っています。1893年、英国の14のバドミントンクラブが全英オープンの前身となるバドミントン協会を設立しました。1992年からバドミントンはオリンピックの正式種目となった。バドミントンラケットは、一般にラケットフレーム、ラケットシャフト、ラケットハンドルで構成されます。ラケットの長さは一般的に674mmで固定されています。ラケットのハンドルは、コーンカバー、木製ハンドル(他の素材も含む広義)、バックカバーで構成されており、ラケットは背が高くて手が器用なヨーロッパ人やアメリカ人によって最初に発明されたため、長さが知られています。ラケットハンドルの長さは195mm、200mm、205mm、210mmです。ラケットハンドルのコーンカバーとバックカバーの長さは通常15mmで、対応する木製ハンドルの長さは180mm、185mm、190mm、195mmです。しかし、ラケットのハンドルの長さは欧米人の手のひらの大きさに比べて相対的に短く、たとえ短くても明らかに長すぎます。ラケットの全長とラケットフレームの長さが決まると、ラケットハンドルが長すぎると、ラケットシャフトの長さを短くすると打球力が弱くなり、資源の無駄になってしまいます。)
(3)「
[図:0001418763000003.jpg]
」
(当審訳:[0004] ラケットハンドルはコーンカバー、木製ハンドル、バックカバーで構成されており、ラケットハンドルの長さはコーンカバーとバックカバーを合わせた長さを15mmとすると、対応する木製ハンドルの長さは160mm?170mm、ラケットの全長は663mm?675mmです。ラケットの全長とラケットフレームの長さを決定した後、長すぎるラケットハンドルをアジア人の手のひらのサイズに合わせて短くし、ラケットシャフトの長さを長くし、打撃力を向上させ、ラケットのパフォーマンスを改良しました。)
(4)「
[図:0001418763000004.jpg]
」
(当審訳:[0007] 図中の1はラケットフレーム、2はラケットシャフト、3はラケットハンドル、4はコーンカバー、5は木製ハンドル、6はバックカバーです。)
(5)「
[図:0001418763000005.jpg]
[図:0001418763000006.jpg]
」
(当審訳:[0008] ラケットハンドル3は、コーンカバー4、木製ハンドル5およびバックカバー6から構成される。ラケットハンドル3の長さbは、ラケット上のコーンカバー4の長さにバックカバー6を加えたものである。ハンドル3は15mm、木製ハンドルの長さaは165mm、ラケットの全長cは675mmに相当します。ラケットの全長cとラケットフレーム1の長さが決定された後、アジア人の手のひらの大きさに応じてラケットハンドル3の長さを20mm短くする(よく知られている典型的なラケットハンドルの長さは200mmである)。ラケットシャフト2の長さが20mm長くなり、打撃力が増大し、ラケット性能が向上する。)
(6)「
[図:0001418763000007.jpg]
」
(7)上記(6)より、コーンカバー4はハンドル5の先端部分を覆っていることが看取できる。
(8)上記(2)より、ハンドルは、他の素材も含むものであるから、木製以外の素材からなるハンドルといえる。
そうすると、上記記載事項(1)乃至(7)及び認定事項(8)より、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「アジア人の手のひらサイズに適したロングシャフトバドミントンラケットであって、
ラケットフレーム、ラケットシャフト、ラケットハンドルから構成されており、
ラケットハンドルはコーンカバー、木製以外の素材からなるハンドル、バックカバーで構成されており、
コーンカバーはハンドルの先端部分を覆い、
ラケットハンドルの長さは175mm~185mm、ラケットハンドルのコーンカバーとバックカバーの長さを15mmとすると、木製以外の素材からなるハンドルの長さは160mm~170mmとなる、
ロングシャフトバドミントンラケット。」(
2 引用例2
本願の優先日前である2017年8月21日に公開された台湾実用新案公告第M547410号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「
[図:0001418763000008.jpg]
」
(当審訳:【中国新名桐】
バドミントンラケットとそのハンドル)
(2)「
[図:0001418763000009.jpg]
」
(当審訳:【0003】 ボールを打つとき、以下に示すように、木製のハンドルを使用すると、より優れたハンドパワーを達成することができる。しかし、木材の重さは一定ではなく、出力も一定ではなく、傷つきやすい素材です。したがって、それに応えて誕生したのが人工グリップです。現在、最も一般的な人工グリップは、カーボンファイバーで作られており、軽量化のため、ラケットフレーム、中筒、ハンドルは一体成型で形成されています。中筒とハンドルが一つのバルブで成形するため、中間チューブの特性を弱めることができず、その結果、ボールパワーが低下し、構造強度が低下します。)
そうすると、上記記載事項(1)及び(2)より、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「中筒とハンドルからなるバドミントンラケットの人工ハンドル。」
第6 理由3(サポート要件)について
1 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)には、以下のとおり記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、木の重量は不安定であり、且つ生産量も安定しないため、材料不足に陥りやすい。このため、人工グリップが誕生した。現在最も普及する人工グリップは炭素繊維材質を採用しており、軽量化を達成し、フレーム、シャフト、及びグリップが一体成形されるように形成されている。例えば、打球する場合、シャフト及びグリップの相対位置が固定されており、シャフトに可動の緩衝空間がないので、シャフトの可動性(自由度)が低下し、打球感が悪化し、且つ構造強度も低下した。
【0004】
そこで、本発明者は上記の欠点が改善可能と考え、鋭意検討を重ねた結果、すなわち、人工グリップのバドミントンラケットにより、木製グリップが直面する木の重量、生産量の不安定さ、及び従来の人工グリップがシャフトの性能を効果的に発揮できず打球感が悪化するという問題を解決させる。
【0005】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、バドミントンラケットを提供することを目的とする。換言すれば、挿設部とキャップとの間の間隔の長さを増やすことでシャフトの動く自由度を高めることにより、従来の人工グリップがシャフトの性能を発揮できず打球感が悪化するという問題を解決させる。」
「【第1実施形態】
【0020】
図1は本発明の第1実施形態に係るバドミントンラケットを示す概略図であり、図2は図1に示すバドミントンラケットを示す分解概略図である。本実施形態に係るバドミントンラケット1は、フレーム10と、グリップ20と、キャップ30と、シャフト40と、を備える。シャフト40の一端はフレーム10に連結され、他端はキャップ30及びグリップ20に連結される。本実施形態に係るグリップ20は把持部21と、挿設部22と、固定部材23と、を含む。把持部21は先端211を有し、挿設部22は把持部21の先端211に連接される。より詳しくは、本実施形態では、グリップ20の円柱体に類する部分が把持部21と呼ばれ、且つ把持部21の先端211が連接される平頂円錐体に類する部分が挿設部22と呼ばれる。把持部21は使用者が把持するために用いられ、挿設部22にはキャップ30が覆設される。よって、挿設部22の形状はキャップ30の形状に相互に適合する。
…
【0022】
固定部材23は第一頂面221に連接されると共に第一開口部222から把持部21の内部に向けて延伸される。換言すれば、固定部材23の先端は挿設部22に連接され、他の部分は挿設部22及び把持部21の内部に位置される。また、本実施形態の固定部材23は管状構造であり、シャフト40が収容される(後述する)。好ましくは、グリップ20の長さL2に対する固定部材23の長さL1の比率は0.59乃至0.79の間の範囲である。例えば、固定部材23の長さL1が110mmであり、グリップ20の長さL2が165mm乃至185mmの間の範囲である。
…
【0025】
本実施形態では、キャップ30とグリップ20との間の空間を増やすことにより、シャフト40の可動の緩衝空間を増加させ、こうして打球感を高める。具体的には、本実施形態に係る第一頂面221と第二頂面31との間には間隔の長さS2を有し、キャップ30はキャップの長さC2を有する。キャップの長さC2に対する間隔の長さS2の比率は0.39乃至0.83の間の範囲である。ちなみに、本実施形態に係るキャップ30のサイズ及び規格は従来のキャップ80とほぼ同じであり、よって、キャップの長さC2は36mm乃至43.5mmの間の範囲であり、本実施形態では41mmを例とし、且つ本実施形態による間隔の長さS2は17mm乃至30mmの間の範囲とする。
【0026】
本実施形態に係るグリップ20の製造において、グリップ20の挿設部22の長さを減らすことにより前述の間隔の長さS2とキャップの長さC2との比率の制限を達成させる。例えば、木製グリップ90の挿設部92の長さを1と定義する場合、本実施形態による挿設部22の長さは0.5まで減らす。すなわち、本実施形態の挿設部22の長さは従来の挿設部92の長さの1/2とする。」
「【0031】
第1実施形態及び第2実施形態に係るグリップ20、20aがバドミントンラケットに適用された後、複数の使用者によって試用が行われ、使用者の試用結果が得られる(図7A参照)。図7Aは本発明の第1実施形態と第2実施形態に係るグリップの打球感を示す表である。一般的なバドミントンラケットのテストでは、選手(使用者)が打球した後に硬度、力の伝達、手の震え、及び快適度等の項目について評価を行い、満点は9点とする。硬度に関しては、硬めまたは適度な打球感が攻撃に適し、図7Aから分かるように、第1実施形態に係るグリップ20を使用して打球すると、その硬度は第2実施形態に係るグリップ20aに比べて硬く、より攻撃に適する。力の伝達に関しては、点数が高いほど伝達効果が高いことを示し、第1実施形態に係るグリップ20の伝達効果は第2実施形態に係るグリップ20aよりも優れている。手の震えに関しては、点数が高いほど手が震えにくいことを示し、第1実施形態に係るグリップ20は第2実施形態に係るグリップ20aに比べてより手が震えにくいことを示し、使用者がバドミントンをコントロールしやすいことを示す。また、快適度も第1実施形態に係るグリップ20は第2実施形態に係るグリップ20aよりも優れている。第1実施形態に係るグリップ20は全体的に第2実施形態に係るグリップ20aよりも優れており、これは第1実施形態の支持部材24の前縁241が挿設部22の内側壁223にのみ連接され、固定部材23の外側壁231には連接されないためである。すなわち、支持部材24の前縁241に凹部243が形成され、支持部材24が不完全な設計であるため、シャフトの可動の緩衝空間が増加し、第1実施形態に係るグリップ20の打球感が第2実施形態に係るグリップ20aに勝る。
【0032】
続いて、打球感が好ましいグリップ20(第1実施形態参照)及び木製グリップ90について使用満足度をテストする(図7B参照)。図7Bは本発明の第1実施形態に係るグリップ20と木製グリップ90の打球感を示す表である。図7Bから分かるように、第1実施形態に係るグリップ20を使用して打球すると、その硬度は木製グリップ90よりも硬く、より攻撃に適している。また、第1実施形態に係るグリップ20の力の伝達効果、手の震え、及び快適度も全て木製グリップ90よりも優れている。ちなみに、第2実施形態に係るグリップ20a及び木製グリップ90の使用満足度のテスト表は列記していないが、図7A及び図7Bに示される結果を総合すればグリップ20a(第2実施形態参照)が達成させる打球感が木製グリップ90とほぼ同じであることを推定できる。」
「
[図:0001418763000010.jpg]
」
2 上記1の記載より、本願発明が解決しようとする課題は、「人工グリップのシャフトの動く自由度を高めることにより、打球感が悪化するという問題を解決させる」ことであると認める。
3 上記課題に対し、明細書等には、第1実施形態の打球感は第2実施形態及び木製グリップに勝ることが示されている。
4 しかし、第1実施形態は、キャップの長さが41mmと記載されているものの、第一頂面221と第二頂面31との間には間隔の長さについては、「17mm乃至30mmの間の範囲」(段落【0025】参照。)と記載されているだけで、第1実施形態の間隔の長さは不明である。
5 そうすると、発明の詳細な説明を参酌しても、本願発明の課題を解決しうるための「第一頂面221と第二頂面31との間の間隔の長さ」が不明なところ、ましてや、キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は算出できるわけでもないから、特許請求の範囲の請求項1の「キャップの長さに対する前記間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲であるキャップ」との範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。
6 したがって、特許請求の範囲の請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第7 理由1(進歩性)について
対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)後者の「ラケットフレーム」、「ラケットハンドル」、「木製以外の素材からなるハンドル」、「コーンカバー」、「ラケットシャフト」及び「ロングシャフトバドミントンラケット」は、前者の「フレーム」、「グリップ」、「把持部」、「キャップ」、「シャフト」及び「バドミントンラケット」に相当する。
(2)後者の「木製以外の素材からなるハンドル」は「ロングシャフトバドミントンラケット」の端部に設けられたものであることは明らかであるから、後者の「木製以外の素材からなるハンドル」が先端を有することは明らかである。
(3)後者の「ラケットハンドル」は、先端部分を「コーンカバー」で覆われるものであるから、後者の「ラケットハンドル」の「コーンカバー」で覆われる部分は、前者の「挿設部」に相当する。
(4)後者の「コーンカバー」及び「ハンドル」は、バドミントンラケットの技術常識を勘案すると、ラケットシャフトが貫通し、頂部が円錐台形であるから、「コーンカバー」及び「ハンドル」は、ともに、頂面及び開口部を有し、「コーンカバー」の頂面と「ハンドル」の頂面との間には間隔を長さを有しているといえる。そして、「ハンドル」については、「ラケットハンドル」の先端部分であって、「コーンカバー」で覆われる部分に形成されているといえる。
2 本願発明と引用発明の一致点と相違点について
上記1の対比を踏まえると,本願発明と引用発明とは,つぎの一致点で一致し,相違点において相違する。
[一致点]
「フレームと、
人工グリップであって、
先端を有する把持部と、
前記把持部の前記先端に連接される挿設部であって、前記挿設部は第一頂面及び第一開口部を有し、前記第一開口部は前記第一頂面に位置され、
をさらに含むことと、
前記人工グリップの前記挿設部に覆設され、第二頂面及び第二開口部を有し、前記第二開口部は前記第二頂面に位置され、前記第一頂面と前記第二頂面との間には間隔の長さを有し、
キャップと、
一端が前記フレームに連結され、他端は前記第二開口部及び前記第一開口部を順に貫通させて前記固定部材に挿設されるシャフトと、を備えるバドミントンラケット。」
[相違点]
本願発明の「グリップ」が「人工」グリップであって、「把持部及び挿設部の内部は互いに連通される中空構造であり」、「第一頂面に連接されると共に第一開口部から把持部の内部に向けて延伸される固定部材」を含み、「キャップの長さに対する第一頂面と前記第二頂面との間の間隔の長さの比率は0.39乃至0.83の間の範囲であるキャップ」を備えているのに対し、引用発明1は、その点が明らかでない点。
3 上記相違点についての検討
引用発明2の「中筒」、「ハンドル」及び「人工ハンドル」は、それぞれ、本願発明の「固定部材」、「把持部」及び「人工グリップ」に相当する。
バドミントンラケットの技術常識を勘案すると、引用発明2の「中筒」及び「ハンドル」はラケットのシャフトが貫通するから、内部は互いに連通する中空構造であって、頂面に連接されると共に開口部からハンドルの内部に向けて延伸されているといえる。
そうすると、上記相違点に係る構成における、「比率は0.39乃至0.83の間の範囲」以外の構成は引用発明2に示されているといえる。
ここで、キャップの長さC2に対する間隔の長さS2の比率について、シャフトの可動の緩衝空間が増加するため、バドミントンラケットの打球感が高まる(【0034】参照。)と記載されているが、比率の臨界的意義については、明細書等には何ら記載されていないから、キャップの長さに対する間隔の長さの比率を0.39乃至0.83の間の範囲とすることは、当業者が適宜なし得る程度の設計的事項である。
してみると、引用発明1に、引用発明2を適用する際に、キャップの長さに対する間隔の長さの比率を適宜設定することで、上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の効果も、引用発明1及び引用発明2から、当業者が予測し得る程度のものといえる。
第7 明瞭でない記載の釈明
上記第2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるところ、仮に、本件補正が、明りようでない記載の釈明を目的とした補正であったとして、以下検討する。
1 理由3(サポート要件)について
上記第6 1乃至3のとおりであって、第1実施形態の間隔の長さは不明である。
そうすると、発明の詳細な説明を参酌しても、本願発明の課題を解決しうるための「第一頂面221と第二頂面31との間の間隔の長さ」が不明であるから、特許請求の範囲の請求項1の「第一頂面と前記第二頂面との間には間隔の長さを有し、キャップの長さを有し、前記間隔の長さは17mm乃至30mmの間の範囲であるキャップ」との範囲まで、拡張ないし一般化できるとはいえない。
したがって、本件補正後の請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。
第8 むすび
以上のとおりであるから、特許請求の範囲の請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許を受けることができない。
また、本願出願の出願前に頒布された引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
さらに、仮に、本件補正が、明りようでない記載の釈明を目的とした補正であったとしても、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項については検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-012907