特許拒絶査定不服審判
2017-011414
カルボン酸系重合体組成物
- 審判番号
- 2017-011414
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-055054外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年08月01日
- 審決日
- 2018年06月04日
- 公報発行日
- 2018年09月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社日本触媒
- 分類
- P18 .113-Z (C08F) / P18 .121-Z (C08F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013- 55054「カルボン酸系重合体組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月29日出願公開、特開2014-181252〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年3月18日に出願され、平成28年9月28日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月4日付けで拒絶理由が通知され、同年2月28日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月26日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成29年8月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成29年2月28日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本願明細書等」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「式(I):
で表わされる化合物である、α-アリルオキシメチルアクリル酸を、全単量体成分中において5~100質量%含む単量体成分を溶媒中で重合する工程を含む重合体組成物の製造方法であって、
該重合体は、式(II):
で表わされる構造単位を主鎖中に含むカルボン酸系重合体であることを特徴とする、カルボン酸系重合体組成物の製造方法。」
第3 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明は、引用文献1(特開2010-168539号公報)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないというものを含むものであり、同じく、請求項1に係る発明は、当業者が、引用文献1に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものを含むものである。
第4 当審の判断
1 刊行物:特開2010-168539号公報(平成29年1月4日付けの拒絶理由通知書における引用文献1。以下、単に「引用例」という。)
2 引用例の記載事項
本願出願前に日本国内において頒布された引用例には、次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】
下記式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合させてα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、単量体成分を連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる工程を含むことを特徴とするα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体の製造方法。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す。)
【請求項2】
前記重合工程は、重合溶媒と単量体成分との合計100質量%に対して、単量体成分の濃度を15質量%以上として重合することを特徴とする請求項1記載のα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体の製造方法。」(特許請求の範囲請求項1及び2)
(2)「すなわち本発明は、下記式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合させてα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体を製造する方法であって、該製造方法は、単量体成分を連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる工程を含むα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体の製造方法である。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す。)
以下に本発明を詳述する。
本発明は、上記式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体(以下では、「AMA単量体(A)」ともいう。)を含む単量体成分を重合させてα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体を製造する方法である。AMA単量体(A)は、環化重合することによって、下記式(2);
【化2】
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す。)で表される構成単位を有するα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体(以下では、「AMA重合体(B)」ともいう。)を製造することができる。上記AMA重合体(B)は、主鎖に環構造(テトラヒドロフラン環)を有することで耐熱性に優れ、更に、テトラヒドロフラン環(THF環)の両隣にメチレン基を有するものであることから柔軟性が高く、相溶性や溶剤溶解性に優れるものとなる。
なお、本明細書中で、α-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体とは、上記式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体を含む単量体成分が重合した重合体のことであり、例えば、Rが水素原子である場合には、α-アリルオキシメチルアクリル酸が重合したα-アリルオキシメチルアクリル酸重合体であり、Rが炭素数1~30の有機基である場合には、α-アリルオキシメチルアクリル酸エステルが重合したα-アリルオキシメチルアクリル酸エステル重合体のことである。もちろん、α-アリルオキシメチルアクリル酸とα-アリルオキシメチルアクリル酸エステルとの両方を用いて製造されるものであってもよい。
上記単量体成分に含まれる式(1)で表される単量体の含有量は、目的、用途や、AMA重合体(B)の分子量に応じて適宜設定すればよいが、全単量体成分中、好ましくは、1~100mol%、より好ましくは2~100mol%、更に好ましくは5~100mol%である。このような範囲とすることにより、AMA重合体(B)は、式(2)で表される構成単位に由来する優れた特性を発揮することができる。」(段落【0010】~【0015】)
3 引用例に記載された発明
摘示2(1)の請求項1及び2の記載を併せみると、引用例には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「下記式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体を含む単量体成分を重合させてα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、単量体成分を連鎖移動剤の存在下でラジカル重合させる工程を含み、
前記重合工程は、重合溶媒と単量体成分との合計100質量%に対して、単量体成分の濃度を15質量%以上として重合する、α-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体の製造方法。
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す。)」
4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体」は、「式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す」と特定されており、Rが水素の場合を明確に包含するものであるから、本願発明における「式(I):
で表わされる化合物である、α-アリルオキシメチルアクリル酸」に相当するといえる。
そして、引用発明における「式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体」を重合して得られたα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体は、引用例の摘示2(2)には、「式(1)で表されるα-アリルオキシメチルアクリル酸系単量体(以下では、『AMA単量体(A)』ともいう。)を含む単量体成分を重合させてα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体を製造する方法である。AMA単量体(A)は、環化重合することによって、下記式(2);
【化2】
(式中、Rは、水素原子、又は、炭素数が1~30の有機基を表す。)で表される構成単位を有するα-アリルオキシメチルアクリル酸系重合体(以下では、『AMA重合体(B)』ともいう。)を製造することができる。上記AMA重合体(B)は、主鎖に環構造(テトラヒドロフラン環)を有することで耐熱性に優れ、更に、テトラヒドロフラン環(THF環)の両隣にメチレン基を有するものであることから柔軟性が高く、相溶性や溶剤溶解性に優れるものとなる。」と記載されていることからすると、本願発明における「該重合体は、式(II):
で表わされる構造単位を主鎖中に含む」ことと一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で一応相違するといえる。
<一致点>
「式(I):
で表わされる化合物である、α-アリルオキシメチルアクリル酸を含む単量体成分を溶媒中で重合する工程を含む重合体組成物の製造方法であって、
該重合体は、式(II):
で表わされる構造単位を主鎖中に含むカルボン酸系重合体である、カルボン酸系重合体組成物の製造方法。」
<相違点>
単量体成分中のα-アリルオキシメチルアクリル酸の割合に関し、本願発明では、「全単量体成分中において5~100質量%含む」と特定しているのに対し、引用発明では、特に特定していない点。
5 相違点についての判断
引用例の摘示2(2)には、「単量体成分に含まれる式(1)で表される単量体の含有量は、目的、用途や、AMA重合体(B)の分子量に応じて適宜設定すればよいが、全単量体成分中、好ましくは、1~100mol%、より好ましくは2~100mol%、更に好ましくは5~100mol%である。このような範囲とすることにより、AMA重合体(B)は、式(2)で表される構成単位に由来する優れた特性を発揮することができる。」と記載されており、斯かる範囲は、mol%と質量%との違いはあるものの、本願発明における範囲と重複一致する範囲を包含しているといえる。
そもそも、単量体成分を重合するに際しては、単量体成分が必要であることは明らかであって、当該単量体成分を重合して得られる重合体においてその繰り返し単位に由来する特性を発揮させるためには、当該単量体成分の全単量体成分に対する割合を所定量以上とする必要があることも明らかである。
そうすると、引用発明の式(1)で表される単量体の全単量体成分中の含有量は、所定量以上必要であるから、少なくとも5mol%以上であると解するのが自然であって、そうであれば、本願発明の単量体成分中のα-アリルオキシメチルアクリル酸の割合である「5~100質量%」と重複一致するものといえる。
してみると、引用発明は、式(1)で表される単量体の全単量体成分中の含有量について、本願発明と重複するものである。
したがって、相違点は実質的な相違点ではない。
よって、本願発明は、引用発明と同一である。
また仮に、相違点が実質的な相違点であるとしても、引用例には、上記のとおり、「単量体成分に含まれる式(1)で表される単量体の含有量は、目的、用途や、AMA重合体(B)の分子量に応じて適宜設定すればよいが、全単量体成分中、好ましくは、1~100mol%、より好ましくは2~100mol%、更に好ましくは5~100mol%である。」(摘示2(2))と記載されているから、引用発明において、斯かる記載に基いて、式(1)で表される単量体の含有量を全単量体成分中5~100mol%と決定することに格別の困難性は見当たらず、その場合には、本願発明の「全単量体成分中において5~100質量%含む」と重複一致する範囲を包含していることは明らかであって、それによる効果も格別のものでもない。
したがって、本願発明は、当業者が、引用発明に基いて容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された特開2010-168539号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
または、本願の請求項1に係る発明は、当業者が、その出願前に頒布された特開2010-168539号公報に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、その理由により拒絶されるべきものである。
原査定の理由は妥当なものである。
よって、結論のとおり審決する。
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