特許拒絶査定不服審判
2017-009264
植生基盤および植生基盤の製造方法
- 審判番号
- 2017-009264
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-501963
- 請求日
- 2017年06月26日
- 審決日
- 2018年09月20日
- 公報発行日
- 2018年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東レ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 【請求人】ミツカワ株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人栄光特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 伊藤 昌哉
- 審判官 信田 昌男
- 分類
- P18 .121-WZ (A01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-501963「植生基盤および植生基盤の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日国際公開、WO2013/054859〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2012年10月11日(優先権主張2011年10月13日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年8月26日付けで拒絶理由が通知され、同年10月21日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年3月23日付けで拒絶査定がなされた。本件は、これに対して、同年6月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成30年5月14日付けで拒絶理由が通知され、同年7月11日付けで意見書及び手続補正書が提出された。平成30年7月11日付けの手続補正書の内容について、平成30年7月26日に電話で問い合わせた事項について、同年8月1日に請求人からファクシミリで回答が提出され、ファクシミリでの回答内容について、さらに、同年8月6日に電話で問い合わせて、回答を得た。
第2 本願発明について
本願の特許請求の範囲の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成30年7月11日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの本願発明1は、次のとおりのものである。
「ポリ-L-乳酸を含むポリ乳酸マルチフィラメント繊維により編成され、かつ編成された編地内部に培養物が充填されてなる筒状編地を隣接して並置した植生基盤であり、
前記ポリ乳酸マルチフィラメント繊維のカルボキシ末端濃度が、前記ポリ乳酸マルチフィラメント繊維全体に対し30当量/ton以下であり、
前記植生基盤は、互いに隣接する前記筒状編地の間に境界面を有し、その境界面内のうちの上方部に種子または苗が配置されており、
前記筒状編地の通気度が100~400cc/cm2/secであることを特徴とする植生基盤。」
上記請求項1の記載の「ポリ-L-乳酸を含むポリ乳酸マルチフィラメント繊維」の「を含む」が示す技術事項について、請求人のファクシミリでの回答及び電話での回答を参照すると、「を含む」は、「ポリ乳酸マルチフィラメント繊維」が添加物や製造上の不純物を含むことを意味し、ポリ乳酸は、実質的にポリ-L-乳酸からなり、他のポリ乳酸や脂肪族ポリエステルは含まないものと認める。
第3 拒絶の理由
平成30年5月14日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由3は、次のとおりのものである。
本願発明は、その優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・本願発明1
・引用文献1~9
(1)略
(2)略
(3)引用文献3を主引例とする。
引用文献等一覧
1.略
2.略
3.特開昭58-94321号公報
4.特開2005-110590号公報
5.特開2001-11833号公報
6.登録実用新案第3059979号公報
7.特開2009-299304号公報
8.特開昭58-69932号公報
9.登録実用新案第3110841号公報
10.略
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献3の記載
引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(1)「3.発明の詳細な説明
本発明は柔軟可撓性のポリウレタンスポンジ体のような厚肉板状マットを折曲げて定植器に充てんしてマットの接触すき間に苗を定植するもので、定植用のすき間を改めて作る必要もなくしかも苗の間かくを任意に設定することができる定植栽培装置を提供することを目的とするものである。
以下、実施例について説明する。
第1図ないし第3図において1は定植器で、2は多孔質のポリウレタンスポンジ体のような厚肉板状マットである。
先ず、マットを適当の長さで切断し、のり巻き状に巻いて、そのマットの接触すき間3が定植器1の上側にあるように充てんする。
4は苗であって、前記接触すき間3に差込む、かくして水を供給して苗を育成する。
接触すき間3は定植器1の内底まで到達しているので、従来のように苗定植用のすき間を予め作る必要もなく た苗の主根は安定して、かつ容易に伸延成長することができるととも、すき間の毛管現象作用で水は十分に行きわたることができる。
また、すき間3は連続的な線状に形成されているので、苗の位置決めを所定のかつ任意の間かくをもって行うことができる効果がある。
さらに従来の土のようにマットは定植器の外にこぼれることがないので清潔な栽培を行うことができる。
また定植器1の大きさ、形に応じてマットを適当の長さに切断すればよく、場合によっては短い長さのマットの場合はつぎ足して用いることもできる。
第4図のマットはナイロンのような袋状の布網2’に土砂を封入したものである。
第5図はマットを平行層状に折曲げて定植器1’に充てんしたものである。
第6図は水槽5の上ぶた8に布綿6をのせてその一端をふた8の孔を通して水槽5の水7に浸漬する。
水は毛管現象により定植器1の底孔を通してマット2の接触すき間3を通して苗4に自動的に供給されるものを示す。」
(2)第1~6図は以下のとおりのものである。
「
」
2 引用発明
引用文献3の第1及び5図を参照し、第4図を見ると、袋状の布網2’は、筒状であることが、明らかに読み取れる。
すると、上記引用文献3の記載事項から、引用文献3には、以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「マットを平行層状に折曲げて、そのマットの接触すき間3が定植器1’の上側にあるように定植器1’に充てんした定植栽培装置であって、マットはナイロンのような筒状で袋状の布網2’に土砂を封入したものであり、苗4が、前記接触すき間3に差込まれた、定植栽培装置。」
3 引用文献4の記載
引用文献4(特に段落【0006】参照)には、植生基盤を形成する繊維構造体として、編物、織物、又は不織布からなる筒状の生地に培養土を充填して構成するという技術事項(以下、「引用文献4の技術事項」という。)が記載されている。
4 引用文献5の記載
引用文献5(特に、段落【0001】、【0006】、【0016】、【0022】参照)には、耐光性を有し、加水分解を経て生分解され、分解最終物が自然界に存在する物質に変換される土木用袋体を提供することを目的として、植栽土嚢にも使用する土木用袋体を構成する、織物あるいは編物である布帛を形成する繊維として、ポリ-L-乳酸からなる長繊維糸を使用すること(以下、「引用文献5の技術事項」という。)が記載されている。
5 引用文献6の記載
引用文献6(特に、段落【0004】、【0005】参照)には、ポリ乳酸のような生分解性を有する素材を用いて作成した布状物を縫製して得た四辺形の袋用に用土を入れた植栽用土のう袋(以下、「引用文献6の技術事項」という。)が記載されている。
6 引用文献7の記載
引用文献7(特に、段落【0029】~【0035】参照)には、砂嚢を形成する筒状編地に用いられる繊維材料として、生分解性を持つ上に、耐光性に優れ、適度な耐久性を併せ持つ、ポリ乳酸繊維を使用することが好ましく、さらに、そのカルボキシ末端濃度が10当量/ton以下とすると、ポリ乳酸繊維の加水分解を抑制して、適度な期間、砂嚢袋として機能し、その後は、自然に戻るという環境に優しい砂嚢が得られること(以下、「引用文献7の技術事項」という。)が記載されている。
7 引用文献8の記載
引用文献8(第2頁左上欄第6~9行参照)には、植生材料の収容された細長の袋体を形成する不織布として、通常通気量10~300cc/cm2/sec(引用文献8中の「cc/cm/sec」は誤記であると認める。)のものを使用すること(以下、「引用文献8の技術事項」という。)が記載されている。
8 引用文献9の記載
引用文献9(特に、段落【0012】~【0014】参照)には、植物種子の収容された植生袋を形成する不織布として、通常通気量10~300cc/cm2/sec(引用文献9中の「cc/cm/sec」は誤記であると認める。)のものを使用すること(以下、「引用文献9の技術事項」という。)が記載されている。
第5 対比
1 本願発明1と引用発明3とを対比する。
(1)引用発明3の「土砂8」は、本願発明1の「培養物」に相当する。
また、本願発明1の「筒状編地」は袋体であるといえるから、引用発明3の「筒状で袋状の布網2’」と本願発明1の「筒状編地」は、「筒状の袋体」である点で共通する。
すると、引用発明3の「ナイロンのような筒状で袋状の布網2’に土砂を封入したものであ」る「マット」と、本願発明1の「ポリ-L-乳酸を含むポリ乳酸マルチフィラメント繊維により編成され、かつ編成された編地内部に培養物が充填されてなる筒状編地」は、「培養物が充填されてなる筒状の袋体」である点で共通する。
(2)引用発明3の「マットを平行層状に折曲げて、そのマットの接触すき間3が定植器1’の上側にあるように定植器1’に充てんした定植栽培装置」と、本願発明1の「筒状編地を隣接して並置した植生基盤」とは、「筒状の袋体を隣接して並置した植生基盤」である点で共通する。
(3)引用発明3の「マットの接触すき間3」と、本願発明1の「植生基盤」が「互いに隣接する前記筒状編地の間に」「有」する「境界面」とは、「植生基盤」が「互いに隣接する前記筒状の袋体の間に」「有」する「境界面」である点で共通する。
そして、引用発明3では、「そのマットの接触すき間3が定植器1’の上側にあるように定植器1’に充てんした」のであるから、引用発明3の「苗4が、前記接触すき間3に差込まれた」ことは、「苗4」が「接触すき間3」のうちの上方部に差し込まれたことは、明らかである。
すると、引用発明3の「苗4が、前記接触すき間3に差込まれた」ことは、「本願発明1の「その境界面内のうちの上方部に種子または苗が配置されて」いることに相当する。
2 一致点
以上のことから、両者は、
「培養物が充填されてなる筒状の袋体を隣接して並置した植生基盤であり、
前記植生基盤は、互いに隣接する前記筒状の袋体の間に境界面を有し、その境界面内のうちの上方部に種子または苗が配置されている植生基盤。」で一致し、次の各点で相違する。
3 相違点
(1)筒状の袋体が、本願発明1では、「編成された編地」であるのに対して、引用発明3では、「布網2’」である点。(相違点ア)
(2)筒状の袋体の材料が、本願発明1では、「ポリ-L-乳酸を含むポリ乳酸マルチフィラメント繊維」であって、「前記ポリ乳酸マルチフィラメント繊維のカルボキシ末端濃度が、前記ポリ乳酸マルチフィラメント繊維全体に対し30当量/ton以下であ」るのに対して、引用発明3では、「ナイロン」である点。(相違点イ)
(3)本願発明1では、「前記筒状編地の通気度が100~400cc/cm2/secである」のに対して、引用発明3では、「筒状で袋状の布網2’」の通気度が明らかでない点。(相違点ウ)
第6 判断
1 相違点アについて
引用文献4の技術事項のように、植栽用に培養物を収納する袋体を形成する布地として、編物、織物、不織布等はいずれもその選択肢に普通に挙げられるものであるから、引用発明3の「布網2’」を、編物、すなわち、編成された編地で形成することは、当業者であれば、適宜選択し得ることである。
2 相違点イについて
まず、布地を形成する繊維を、マルチフィラメント(糸)とするか、モノフィラメントとするかは、適宜選択し得ることにすぎない。
次に、植栽用に培養物を充填する袋体を形成する繊維の材料として、生分解性の材料の1つである、ポリ-L-乳酸を使用することは、引用文献5の技術事項、引用文献6の技術事項で示されるように、周知技術である。
そして、生分解性のポリ-L-乳酸が、まず、加水分解により低分子化され、その後、微生物等により最終的に水と二酸化炭素に分解されることが技術常識であり、この生分解の程度を調整するために、ポリ乳酸繊維のカルボキシ末端濃度を調整すること、具体的には加水分解を抑制するために、カルボキシ末端濃度を10当量/ton以下程度にすることが、引用文献7の技術事項として示されている。
すると、引用発明3のナイロンに換えて、ポリ-L-乳酸からなるマルチフィラメント繊維とし、さらに、その生分解性(どの程度の期間で最終的に分解されるか)を調整するために、ポリ-L-乳酸からなるマルチフィラメント繊維のカルボキシ末端濃度を適宜調整して、30当量/ton以下とすることは、当業者が容易になし得たことである。
3 相違点ウについて
一般に、植栽用に培養物を充填する袋体の通気度は、設置場所の土壌や気候、植栽する植物の種類、充填する培養物の種類等によって、適宜設計する事項にすぎない。
例えば、特開平9-140255号公報に「樹脂フィルムの通気性が悪いと植物育成床内の湿度や温度が上昇し、培養土中の酸素が欠乏して、植物の成育に悪影響を及ぼす欠点がある。」(段落【0005】)、国際公開第2004/110131号に「植物栽培においては、根に十分な酸素と適切な水分を供給することが肝要であり、根腐れ及び水腐れは何れも防がねばならない。」(段落[0006])などと記載されるように、植物の栽培において、根域の通気性がないと根腐れなどを起こし、成育に悪影響を及ぼすことは一般的な常識である。
そして、成育に悪影響を及ぼさないように、培養物を充填する袋体の通気性を適切に設定することは、特開平9-41384号公報に、「なお、綿、麻等の天然繊維は浸水性、通気性を持つため、これらの繊維分解素材を備えた不織布からなる袋体によれば、種子の発芽、植物の生育等に適した水分、酸素等の供給が確実に得られる。従って、袋体16が植物の生育等を妨げることもない。」(段落【0043】)、特開平9-296449号公報に「緑化資材10の網目または通孔13からは、植物種子31または挿木32の根33が必要とする土中の酸素が供給されることになるだけでなく、例えば図5に示すように、植生植物の根33が網目または通孔13から土中に伸び易くなるのである。」(段落【0020】)、特開平10-136775号公報に「緑化用袋体を網目の粗い網状シート材で構成することで、袋体に良好な通気性および排水性を確保でき、さらに植物生育基材が団粒構造を呈することで、植物生育基材内部に適度の通気性、保水性、排水性を付与できると共に、植物生育基材が緑化用袋体を構成する底部網状シート材を透過して地山との間の隙間をなくし、植生植物の根腐れや乾燥にる枯死を防止して、これまでにない良好な植物環境を提供できる。」(段落【0025】)などと記載されるように、当業者の技術常識である。
そうすると、植栽用に培養物を充填する袋体の通気性を設計する際に、根腐れなどの成育への悪影響を及ぼさないことを考慮することは、当業者であれば、普通に行うことにすぎない。
また、実際の通気度として、引用文献8の技術事項には10~300cc/cm2/sec、引用文献9に技術事項には20~350cc/cm2/secが示されており、100~400cc/cm2/sec程度の数値が格別特異な数値であるとも認められない。
よって、引用発明3の「布網2’」の通気度を適宜設定して、100~400cc/cm2/secとすることは、当業者が容易になし得たことである。
4 効果について
本願発明1が奏し得る効果は、引用発明3、周知技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。
なお、本願発明1が奏し得る効果について、請求人は、平成30年7月11日付けの意見書(以下、単に「意見書」という。)の【意見の内容】6.(4)イ.において、
「筒状編地の通気度を100cc/cm2/sec以上とすることの上記効果は本願明細書の[実施例]の実施例1の植生基盤(筒状編地の通気度は311cc/cm2/sec)の評価結果と参考例1の植生基盤(筒状編地の通気度は59cc/cm2/sec)の評価結果との対比でも示されており、実施例1は植物(キリン草)の生育状態が非常に良く、一方参考例1は植物の生育状態は良いものの実施例1より劣る結果となりました。すなわち、互いに隣接する筒状編地の間に形成される境界面のうちの上方部に種子又は苗を配置する構成の植生基盤において、筒状編地の通気度を100~400cc/cm2/secとすることで、本願発明の顕著な効果が得られます。」
と記載している。
本願明細書に記載された実施例1、参考例1は、
「【0073】
I.植生基盤の評価
筒状編地に市販の培養土を充填して、この端部を中心として、渦巻きのように外側に向かって並べ、編地同士が隣接するように置いた。編地同士が隣接した部分の凹部の中心に、キリン草(多年草)の種を15cm間隔に植えて下地がコンクリート面である屋外に放置して定期的に水を散布して育成し、2ヵ月後に植生基盤と一緒に移動させて地面に設置し、運搬性の評価および1.5年後の育成状態と植生基盤の外観を確認して、以下の基準による4段階のランク付け評価を行った。
優秀:生育状態が非常に良く、植生基盤の外観変化は全くなく、持ち運びが良好である。
秀:生育状態が良く、植生基盤の外観変化はなく、持ち運びが良好である。
普通:生育状態がやや劣るが、植生基盤の外観変化はないが、持ち運びが困難である。
不可:生育状態が悪く、植生基盤が著しく劣化して外観を保持していない、または、持ち運びが困難である。」
という評価を行ったものであるから、実施例1の通気度311cc/cm2/sec、参考例1の通気度59cc/cm2/secという数値は、上記の特定の条件(市販の培養土を使用し、キリン草を植えて、屋外のコンクリート面上に放置して、2ヶ月後に植生基盤と一緒に地面に設置した)下での意味を持つものでしかなく、何の条件の特定もない、本願発明1において、100~400cc/cm2/secという数値範囲が顕著な効果を奏するか否かは確認できず、さらに、実施例1の通気度311cc/cm2/sec、参考例1の通気度59cc/cm2/secという数値だけでは、100、400という上下限値に格別臨界的意義も認められない。
5 請求人の主張について
(1)拒絶理由の内容の理解について
請求人は、意見書の【意見の内容】6.(4)ア.において、
「相違点ウについては引用文献8、9を組み合せることにより、当業者が容易になし得たことであると認定されています。」
と記載している。
しかし、拒絶理由は、
「相違点ウについて
一般に、植栽用土のうの通気度は、設置場所の土壌や気候、植栽する植物の種類、土のうに封入する培養土の種類等によって、適宜設計する事項にすぎない。
そして、実際の通気度として、引用文献8(第2頁左上欄)には10~300cc/cm2/sec、引用文献9(段落【0013】)には20~350cc/cm2/sec(いずれも、文献中のcc/cm/secは、cc/cm2/secの誤記であると認める。)が示されており、100~400cc/cm2/sec程度の数値が格別特異な数値であるとも認められない。
すると、引用発明1~3の「袋体11」、「包装材7」、「布網2’」の通気度を適宜設定して、100~400cc/cm2/secとすることは、当業者が容易になし得たことである。」
と記載されたとおりのものであって、引用発明3において、通気度は種々条件により適宜設計し得ることにすぎないというものであって、引用文献8、9は、適宜設計された結果の数値として100~400cc/cm2/sec程度の数値が通常設計されないような特異な数値ではないことを示すために、引用したものであることは、明らかである。
すると、引用発明3に、引用文献8、9を組み合わせることにより容易になし得たという請求人の理解は、拒絶理由を誤解するものであり、この誤解に基づく、請求人の主張は失当であるというほかない。
(2)通気度について
請求人は、意見書の【意見の内容】6.(4)ウ.において、
「引用文献8には細長の袋体の通常通気量を10~300cc/cm2/secとする目的について何ら記載されていません。よって、当業者であっても、積極的な植物の成長のために、筒状編地の通気度を調整することには想到し得ません。」、
「引用文献9には肥料袋及び植生袋の通気量を20~350cc/cm2/secとする目的について何ら記載されていません。よって、当業者であっても、積極的な植物の成長のために、筒状編地の通気度を調整することには想到し得ません。」
と記載している。
確かに、引用文献8、9には、通気度を調整する目的の記載はないが、引用文献8、9は、上記(1)で説明したとおりの趣旨で引用したものであり、通気度の調整の目的を引用しようとするものではないから、上記請求人の主張は意味がない。
(3)根の伸長について
請求人は、意見書の【意見の内容】6.(4)イ.及びウ.において、
「前記筒状編地の通気度が100~400cc/cm2/secであることで、植物の根の筒状編地内部への伸長が促進される」、
「引用文献8には上記細長の袋体の内部に植物の根が伸長すること・・については何ら記載も示唆もされていません。」
と記載している。
「筒状編地」の通気度の数値と植物の根の「筒状編地」内部への伸長とが、どの程度関係するかは本願の発明の詳細な説明の記載では明らかではないが、前記記載は、「筒状編地」が根を通す効果を奏することを主張するものと思われる。
しかし、引用発明3は、「苗4が、」「マットの」「前記接触すき間3に差込まれ」るのであるから、「苗4」の根は、「マット」内に伸長しなければ成育できないことは明らかである。すると、「ナイロンのような筒状で袋状の布網2’に土砂を封入したものであ」る「マット」内に、「苗4」の根が伸長するように、「布網2’」が根を通すように設計することは、当然のことであるといえる。
したがって、この点において、本願発明1が格別な効果を奏するとは認められない。
4 結論
したがって、本願発明1は、引用発明3、周知技術及び技術常識に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-009264