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特許拒絶査定不服審判

2017-008503

スマート電源

審判番号
2017-008503
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-547574外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年06月12日
審決日
2018年03月12日
公報発行日
2018年04月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (G06K) / P18 .575-WY (G06K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第184条の12第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-547574「スマート電源」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/101652、平成27年 3月26日国内公表、特表2015-509231、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成24年(2012年)12月20日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2011年12月27日,米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年 6月17日 審査請求・手続補正 平成27年 7月28日 拒絶理由通知 平成27年10月26日 意見書・手続補正 平成28年 2月 1日 拒絶理由通知 平成28年 7月11日 意見書・手続補正 平成28年10月25日 拒絶理由通知 平成28年12月 6日 意見書・手続補正 平成29年 1月31日 拒絶査定(以下,「原査定」という。) 平成29年 6月12日 審判請求・手続補正 平成29年 8月15日 上申書 第2 原査定の概要 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記   (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項 1-11 ・引用文献等 1-5 ・備考 新たに引用する引用文献5(段落[0001],[0022]参照)には,複数のRFIDタグが近接して存在する場合のRFIDの読み取り・書き込みに関する技術が記載されているところ,段落[0022]には,「単体のRFIDタグは13.56MHzに共振するアンテナ(コイル)を備えている。しかし,複数のRFIDタグを重ねあるいは近接して配置すると,近接するRFIDタグのアンテナ同士の影響でアンテナの相互インダクタンスが大きくなる。RFIDタグのアンテナの総合インダクタンスが変化し,タグの共振周波数が変化する。」 と記載されている。 引用文献5の前記記載は,複数のRFIDが近接して配置されると,近接するRFIDタグのアンテナ同士の影響でタグの共振周波数が変化するという周知の物理現象を説明するものである。 そして,引用文献1(段落[0023]-[0045],図1-図7参照)には,電池(本願発明の「バッテリ」に相当する)にアンテナを有するICタグ(本願発明の「第1のRFID」に相当する)を装着することが開示されているところ,かかるタグ付きの電池に,引用文献2-4に示されるRFIDと同じ共振周波数を有するアンテナを有するリピータを設ける周知技術を適用すること,すなわち,第1のタグと同じ共振周波数を有するアンテナを有するリピータを第2のタグとして第1のタグに近接してバッテリーに添付することは,当業者であれば容易に想到し得るものである。 出願人が主張するように引用文献1-4には,本願発明の「第1のRFIDタグの第1の共振周波数は,第2のRFIDタグの存在により,シフトする点についての記載および示唆はないものの,引用文献5に記載の周知の前記物理現象を参酌すれば,第2のタグを第1のタグに近接して配置した時点で,必然的に,第1のタグの共振周波数は変化するものと解するのが相当であり,単に,第1のRFIDタグの第1の共振周波数がシフトする点についての記載がない点をもって,本願発明と,引用文献1に記載の発明に引用文献2-4に示される周知技術を適用して為された発明との間に技術的な相違点が存在するものとは認められない。 この点については,本願明細書を参酌しても,「第1のRFIDタグの第1の共振周波数は,第2のRFIDタグの存在により,シフトする点」について,単に測定した結果を提示するのみであって,第1のRFIDタグの第1の共振周波数をシフトするための,第1,第2のRFIDタグの具体的な構成,配置関係などに何ら特徴的な技術事項が開示されていないことをもってしても裏付けられるものである。 よって,出願人の主張する前記相違点は,引用文献1に記載の発明に引用文献2-4の前記周知技術を適用した結果,必然的に生じる物理現象であると認められ,本願発明に特徴的な技術事項を特定するものではないから,依然として,本願発明は引用文献1に記載発明及び引用文献2-4に記載の周知技術,引用文献5に記載の周知の物理現象に基づいて,当業者であれば容易なし得るものと認められる。 <引用文献等一覧> 1.特開2006-324074号公報 2.特表2008-530682号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2009-37374号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2004-253858号公報(周知技術を示す文献) 5.特開2010-154012号公報(周知技術を示す文献:新たに引用された文献) 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正によって請求項1及び8に「前記第1のRFIDタグが,10パーセント超の延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺上に延伸し,前記第2のRFIDタグが,断面において前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺の10パーセント~80パーセントの延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記周辺上に延伸する,」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また前記事項は,本願の特許法第184条の12第2項に規定する翻訳文等の請求項9に記載されているから,翻訳文新規事項を追加するものではないといえる。 そして,「第4 本願発明」から「第6 対比及び判断」までに示すように,補正後の請求項1ないし10に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願の請求項1ないし10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は,審判請求時の補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりである。 「【請求項1】 信号通信デバイスを有する,円筒形の,使い捨て又は再充電可能なバッテリであって, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは,外側表面を有し, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面上に位置付けられる,少なくとも第1のRFIDタグであって,第1の共振周波数及びアンテナを有する,少なくとも1つの第1のRFIDタグと, 前記第1のRFIDタグの共振周波数と同様である第2の共振周波数を有する,少なくとも1つの第2のRFIDタグであって,前記第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように,前記第1のRFIDタグに隣接する前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面上に位置付けられる,前記第2のRFIDタグと,を更に備え, 前記第1のRFIDタグの前記第1の共振周波数は,前記第2のRFIDタグの存在により,シフトするものであり, 前記第1のRFIDタグが,10パーセント超の延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺上に延伸し, 前記第2のRFIDタグが,断面において前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺の10パーセント~80パーセントの延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記周辺上に延伸する, 使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項2】 前記第2のRFIDタグが,前記アンテナに物理的に接触しない,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項3】 前記第1のRFIDタグ及び前記第2のRFIDタグのうちの少なくとも1つが,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面に一致する,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項4】 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面が円筒形である,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項5】 複数のRFIDタグを備える,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項6】 間隙が,前記少なくとも1つの第2のRFIDタグと前記少なくとも第1のRFIDタグとの間に存在し,前記間隙が,1mm~75mmの間隙,10mm~50mmの間隙,及び30mm~50mmの間隙からなる群より選択される,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項7】 前記少なくとも1つの第2のRFIDタグが,20パーセント~100パーセントの増加係数,30パーセント~90パーセントの増加係数,40パーセント~80パーセントの増加係数,及び約80パーセント超の増加係数からなる群より選択される増加係数で信号結合を増加させる,請求項1に記載の使い捨て又は再充電可能なバッテリ。 【請求項8】 少なくとも第1の使い捨て又は再充電可能なバッテリと,第2の使い捨て又は再充電可能なバッテリと,を備える,システムであって,前記第1の使い捨て又は再充電可能なバッテリが第1の外側表面を有し,前記第2の使い捨て又は再充電可能なバッテリが第2の外側表面を有し, 前記システムは, 前記第1の外側表面上に位置付けられる,第1のRFIDタグであって,第1の共振周波数及び第1のアンテナを有する,第1のRFIDタグと, 前記第2の外側表面上に位置付けられる第2のRFIDタグであって,前記第1の共振周波数と同様である第2の共振周波数を有する,第2のRFIDタグと,を備え,前記第1のRFIDタグ及び前記第2のRFIDタグが,読取器にデータを提供し,前記第2のRFIDタグが,前記第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように,前記第1のRFIDタグに隣接して位置付けられ, 前記第1のRFIDタグの前記第1の共振周波数は,前記第2のRFIDタグの存在により,シフトするものであり, 前記第1のRFIDタグが,10パーセント超の延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺上に延伸し, 前記第2のRFIDタグが,断面において前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺の10パーセント~80パーセントの延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記周辺上に延伸する,システム。 【請求項9】 前記第1のRFIDタグが,前記第1の使い捨て又は再充電可能なバッテリにおける残りの電力レベルに関するデータを提供し,前記第2のRFIDタグが,前記第2の使い捨て又は再充電可能なバッテリにおける残りの電力レベルに関するデータを提供する,請求項8に記載のシステム。 【請求項10】 受動的リピータを備えるカバーを更に含み,好ましくは,第3のRFIDタグが,前記システムに関するデータを提供する,請求項8に記載のシステム。」 第5 引用文献及び引用発明 1 引用文献1について (1)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,電池に製造,流通,使用等に必要な情報,更には電池が使用済みとなった後に回収,リサイクルされるときに必要な情報などを記録することを可能にする電池に対する情報記録方法及びその装置に関するものである。」 イ 「【背景技術】 (中略) 【0003】 また,電池の種類は多く,乾電池などの一次電池から二次電池まで多様な種類のものが使用されている。これらの電池が使用済みとなったときには回収してリサイクルすることにより,廃棄物の発生抑制と資源の有効な利用を図る上で重要である。乾電池などの一次電池については経済的,効率的なリサイクル技術が確立されていないことから現状では一般廃棄物として多くが処理されている。二次電池については,資源有効利用促進法により回収及びリサイクルが義務付けられている。回収リサイクルの対象となる小型二次電池は,ニッケルカドミウム蓄電池,ニッケル水素蓄電池,リチウムイオン二次電池,小型シール鉛蓄電池となっている。これらの小型二次電池は,その多くが家電製品や事務機器,通信機器,防災機器などに電池パック,組電池,基板実装などの形態として機器に組み込まれており,機器の修理,保守,廃棄時に使用済み電池として取り出される。また,乾電池と互換性のあるニッケル水素蓄電池では,それが使用済みとなったとき乾電池と同じルートで廃棄処分されていることもあるので,乾電池中から分別する必要がある。回収された小型二次電池は,カドミウム,鉛などの有害物質を含む電池や,コバルト,リチウムなどの希少金属や金,白金などの貴金属を含む電池があり,確実に回収して有害物質を適正処理すると共に有用金属のリサイクルを図る必要がある。しかし,電池の分別回収ルートは確率されておらず,様々な種類の電池が混在した状態で回収されてくるのが多い実状にある。このような様々な種類の電池が混在している状態から電池を種類別,更には使用されている材料,組成別に分別するためには,個々の電池に分別に必要な情報が記録されていることが要求される。例えば,リチウム二次電池は基本的にリチウムを活物質として用いているもののコバルト系,マンガン系など多様な品種が存在する。」 ウ 「【0023】 以下,添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態は,電池個々にICタグを装着し,ICタグにその電池の製造,流通,使用及び使用済み後の回収リサイクルに必要な任意情報を記録し,所要拠点においてICタグから情報を読み出すことにより,電池の製造,流通,使用及び使用済み後の分別回収の用に供することができるようにしたものである。 (中略) 【0026】 図2(a)は,円筒形のリチウムイオン二次電池3にICタグ1を装着した状態を断面図で示しており,発電要素を収容した有底円筒形の電池缶31の開口部をガスケット33を介して封口する封口板32上に樹脂製の台座35を設け,前記台座35上にICタグ1を装着している。前記封口板32の中央部には正極端子(又は負極端子)34が突出形成されており,台座35はその上面が正極端子34の頂部より下となる厚さに形成されている。 【0027】 また,円筒形のリチウム電池では,図2(b)に示すように,封口板32上に上絶縁板29が,電池缶の底面に下絶縁板30が配設されているので,上絶縁板29の場合では,その内側にICタグ1を取り付けると,金属性である封口板32との離隔距離を確保することができ,下絶縁板30の場合では,下絶縁板30の厚さを可能な限り厚く形成して金属面からの離隔距離を確保し,それにICタグ1を装着すると,金属の影響を緩和させて電池にICタグ1を装着することができる。なお,上絶縁板29,下絶縁板30は熱収縮性のタック性を有する外装ラベル4により固定される。 【0028】 電池の多くは上記実施例に示すように,ほぼ全周が金属によって被覆されており,金属製の封口板22,32の上にICタグ1を直接装着すると,リーダ・ライタからのアクセス電波が金属の影響を受けて充分な通信距離を確保することが困難になる。特に,ICチップの作動電力をリーダ・ライタからのアクセス電波よりアンテナに誘起される誘起起電力に求めているパッシブタグの場合,誘起起電力はICチップの作動電力より大きくなければならない。そこで,上記構成のように金属製である封口板22,32の上に樹脂製の台座23a,35を配し,その上にICタグ1を装着することによってアクセス電波が金属に影響されることを緩和することができる。 (中略) 【0031】 上記したICタグ1の装着位置は,角形電池又は円筒形電池の封口板上としているが,図2に示すように,円筒形電池では電池缶31の開口部を封口板32によって封口する場合に,電池缶31の開口部側の周面に内側に向けて凹部36が形成され,封口板32によりガスケット33を介して封口する際の段部としている。この凹部36にICタグ1を装着することができる。角形電池の場合では,封口板22の下部は発電要素との間に空間があるので,その空間に対応する電池缶21の上部位置に,図1に示すように,凹部25を形成することができ,その凹部25にICタグ1を装着することができる。」 (2)引用発明 前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ICタグはリーダ・ライタからのアクセス電波により通信することができ,電池缶の開口部側の周面に凹部が形成され,この凹部にICタグが装着された円筒形電池であって,その前提として電池には乾電池などの一次電池から二次電池まであること。」 2 引用文献2について (1)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【0002】 ラジオ周波数識別タグ,つまりRFIDタグは長い歴史を有し,各々が固定の事前にプログラムされたIDを備えた「中継器」タグの使用に大いに基づいている。 【背景技術】 【0003】 これらのタグはバーコードを置き換えるために設計されることが多く,低電力双方向通信を行うことができる(US03713148,The Mercury News,「RFID開発者がその起源を議論」,Sun,2004年7月18日)。能動型RFIDタグは,タグ回路に電力を供給するための電池を有する。それらは一般に13MHz~2.3GHzの周波数範囲で動作する大きな素子であり,中継器として機能する。中継器は基地局によって送られるキャリアを用い,タグは通常,共振調整アンテナを単に短くするか離調し,反射エネルギの変化を生成することによって通信を行う。これは,基地局によって検出可能な反射信号を生成する。この方式は,タグ内に含まれる回路の複雑さを最小化する。受動型RFID中継器タグは電池を持たず,電力用に同じキャリア信号を用いる。」 (2)技術的事項2 前記(1)より,引用文献2には次の技術的事項(以下,「技術的事項2」という。)」が記載されていると認められる。(当審注:前記(1)の「中継器」については,対応する原文である国際公開第2006/085291号において「transponder」と記載されており,「応答器」の誤訳と認められるが,ここではそのまま用いる。) 「能動型RFIDタグは「中継器」として機能し,「中継器」は基地局によって送られるキャリアを用い,タグは通常,共振調整アンテナを単に短くするか離調し,反射エネルギの変化を生成することによって通信を行い,これは,基地局によって検出可能な反射信号を生成するものであること。」 3 引用文献3について (1)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,電子機器内の電子部品に実装された電子タグおよび電子タグの付属品の取付け構造に関するものである。」 イ 「【0028】 図3は,電磁波中継器130の構成を示す図である。図3を参照すると,電磁波中継器130は,コイル310,コイル320,磁性体330,磁性体340,線材350,および,導電性材料の筐体150の一部で構成されている。なお,コイル310と磁性体330は,電子機器100の外側に位置し,コイル320と磁性体340は,電子機器100の内側に位置する。 【0029】 電磁波中継器130は,電子タグ120とリードライタ端末機等との通信において使用される電磁波と同じ電磁波しか通過しないしくみになっている。具体的には,コイル310とコイル320が,電子タグ120とリードライタ端末機等との通信において使用される電磁波と同じ周波数で共振するように設計されている。なお,この周波数は,電子部品140から発生するノイズの周波数との異なるように設定されている。 【0030】 不図示の外部のリードライタ端末機等から電子機器100へ発信された電磁波は,コイル310に到達し,磁性体330を介して電流に変換される。電流は,線材350を通じて,磁性体340に伝わり,コイル320にて電磁波に変換される。変換された電磁波は,電子タグ120に到達し,これによって,電子タグ120は所定の動作を開始する。また,電子タグ120から電磁波中継器130を介して,外部のリードライタ端末機等への通信も同様な電磁波と電流の変換を通して行われる。」 (2)技術的事項3 前記(1)より,引用文献3には次の技術的事項(以下,「技術的事項3」という。)」が記載されていると認められる。 「電子タグとリードライタ端末機との通信において使用される電磁波中継器であって,通信周波数と同じ周波数で共振するように設計されていること。」 4 引用文献4について (1)引用文献4の記載 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は,ICタグが物品の金属製の筐体内に設置されていても,ICタグの通信距離を十分確保することができるICタグ用のブースタアンテナ装置に関する。」 イ 「【0012】 ブースタアンテナ,ICタグの間に配設する補助ブースタアンテナは,それを介してブースタアンテナをICタグに電磁結合させ,筐体外のリーダライタからの電波をICタグに到達させることができる。なお,補助ブースタアンテナは,ブースタアンテナとICタグとの間に電波を中継するから,筐体内において,ブースタアンテナとICタグとの間にシールド性の接地導体が介在するような場合であっても,接地導体を迂回する信号経路を容易に形成することができる。 【0013】 2組以上の補助ブースタアンテナを設ければ,ブースタアンテナとICタグとの間の筐体内の信号経路の自由度を一層向上させることができる。 【0014】 補助ブースタアンテナに付設する磁性シート材も,補助ブースタアンテナを金属製のシャーシ板などに貼り付けて設置することを可能にする。なお,このときの補助ブースタアンテナの構造や,磁性シート材の仕様は,ブースタアンテナの構造や,ブースタアンテナ用の磁性シート材の仕様と全く同様である。 【0015】 【発明の実施の形態】 以下,図面を以って発明の実施の形態を説明する。 【0016】 ICタグ用のブースタアンテナ装置は,物品の金属製の筐体K内に配設するブースタアンテナBを備えてなる(図1)。ただし,物品は,たとえば図示しないコンベヤラインを介し,図1の紙面に垂直方向に搬送されているものとする。 【0017】 物品の筐体K内には,非接触形のICタグTが配設されている。また,筐体Kの外部には,ICタグTと双方向にデータ交換するリーダライタAが配設され,リーダライタAには,アンテナLaが付設されている。 【0018】 ブースタアンテナBは,筐体K内において,筐体Kの開口部K1に臨ませて配設されている。ブースタアンテナBは,絶縁性のシート材またはフィルム材からなる基材11上に,二次元の螺旋状のコイルL,平行電極形のコンデンサCを含む共振回路12が導電パターンとして形成されている(図2)。なお,基材11の片面には,磁性シート材13が一体に貼り合わせるようにして付設されている。共振回路12は,リーダライタAのアンテナLaとともに,ICタグTの使用周波数に共振しているものとする。」 ウ 図2及び図3には,二次元の螺旋状のコイルLとコンデンサCが閉回路を構成すること,が記載されていると認められる。 (2)技術的事項4 前記(1)より,引用文献4には次の技術的事項(以下,「技術的事項4」という。)」が記載されていると認められる。 「ICタグ用のブースタアンテナ装置であって,二次元の螺旋状のコイルL,平行電極型のコンデンサCの閉回路からなる共振回路が導電パターンとして形成されており,共振回路はICタグの使用周波数に共振していること。」 5 引用文献5について (1)引用文献5の記載 原査定に引用された引用文献5には,図面とともに次の事項が記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,RFID (Radio Frequency Identification) タグを使用する識別システムに関し,特に,複数枚のRFIDタグが近接して存在する場合のRFIDタグの読み取り・書き込み性能を向上させたRFIDタグ用の識別システムに関する。」 イ 「【0022】 図6(A)に示されるように,単体のRFIDタグは13.56MHzに共振するアンテナ(コイル)を備えている。しかし,複数のRFIDタグを重ねあるいは近接して配置すると,近接するRFIDタグのアンテナ同士の影響でアンテナの相互インダクタンスが大きくなる。RFIDタグのアンテナの総合インダクタンスが変化し,タグの共振周波数が変化する。」 (2)技術的事項5 前記(1)より,引用文献5には次の技術的事項(以下,「技術的事項5」という。)」が記載されていると認められる。 「複数のRFIDを近接して配置すると,タグの共振周波数が変化すること。」 第6 対比及び判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明との対比 ア 引用発明における「ICタグ」は「通信することができ」るから「信号通信デバイス」ということができ,すると,引用発明の「円筒形電池」は,「ICタグが装着された」ものであり,さらに「乾電池などの一次電池から二次電池まで」を前提としているから,本願発明1の「信号通信デバイスを有する,円筒形の,使い捨て又は再充電可能なバッテリ」を満たす。 イ 引用発明の「円筒形電池」は,「電池缶の開口部側の周面」を有しこの「周面に凹部が形成され,この凹部にICタグが装着された円筒形電池」であり,さらにこの「ICタグ」は「アクセス電波により通信することができ」るものであるから,本願発明1の「前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは,外側表面を有し,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面上に位置付けられる,少なくとも第1のRFIDタグであって,第1の共振周波数及びアンテナを有する,少なくとも1つの第1のRFIDタグ」とを「更に備える」を満たす。 ウ すると,本願発明1と引用発明とは,下記エの点で一致し,下記オの点で相違する。 エ 一致点 「信号通信デバイスを有する,円筒形の,使い捨て又は再充電可能なバッテリであって, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは,外側表面を有し, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリは, 前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面上に位置付けられる,少なくとも第1のRFIDタグであって,第1の共振周波数及びアンテナを有する,少なくとも1つの第1のRFIDタグと, を更に備える, 使い捨て又は再充電可能なバッテリ。」 オ 相違点 (ア)相違点1 本願発明1は「前記第1のRFIDタグの共振周波数と同様である第2の共振周波数を有する,少なくとも1つの第2のRFIDタグであって,前記第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように,前記第1のRFIDタグに隣接する前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記外側表面上に位置付けられる,前記第2のRFIDタグ」を備えるのに対し,引用発明はこれを備えない点。 (イ)相違点2 本願発明1においては「前記第1のRFIDタグの前記第1の共振周波数は,前記第2のRFIDタグの存在により,シフトするもの」であるのに対し,引用発明においてはこの旨の明示がない点。 (ウ)相違点3 本願発明1においては「前記第1のRFIDタグが,10パーセント超の延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺上に延伸し,前記第2のRFIDタグが,断面において前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺の10パーセント~80パーセントの延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記周辺上に延伸する,」のに対し,引用発明においてはこの旨の明示がない点。 (2)相違点についての判断 ア 相違点1に係る構成である「第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように位置づけられる第2のRFIDタグ」は,いずれの引用文献にも記載も示唆もされていない。ましてや周知技術とは認められない。 なお,技術的事項2にいう「中継器」は,「基地局によって送られるキャリアを用い」「反射エネルギの変化を生成することによって通信を行い,これは,基地局によって検出可能な反射信号を生成するもの」であるから,単なる「応答器」であって,他のRFIDタグと基地局との間の信号結合を増加させる機能を持つ「リピータ」とは認められない。 イ 仮に,RFIDタグを読み取りやすくするために「リピータ」を設けることを思いつき,さらに,他のRFIDタグをこの「リピータ」の目的に流用することを思いついたとしても,RFIDタグを「リピータ」として動作させるには,少なくとも,その共振回路を含むアンテナの給電点を短絡させて閉回路としなくてはならず(技術的事項4参照。),RFIDタグはRFIDタグとしての通信ができなくなるから,このような改変は当業者が容易になしうることではない。 ウ よって,相違点1に係る構成は当業者が容易に想到し得ることではなく,また,相違点2及び3に係る構成は相違点1に係る構成を前提とすることから,相違点2及び3に係る構成についてもまた当業者が容易に想到し得ることではない。 (3)まとめ したがって,本願発明1は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本願発明2ないし7について 本願発明2ないし7は,本願発明1を引用するものであるから,前記1と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本願発明8について (1)本願発明8と引用発明との対比 ア 前記1(1)ア及びイと同様であるから,本願発明8と引用発明とは,下記イの点で一致し,下記ウの点で相違する。 イ 一致点 「少なくとも第1の使い捨て又は再充電可能なバッテリと,を備え,前記第1の使い捨て又は再充電可能なバッテリが第1の外側表面を有し, 前記第1の外側表面上に位置付けられる,第1のRFIDタグであって,第1の共振周波数及び第1のアンテナを有する,第1のRFIDタグと,を備える物。」 ウ 相違点 (ア)相違点4 本願発明8においては「第2の使い捨て又は再充電可能なバッテリと,を備える,システムであって,前記第2の使い捨て又は再充電可能なバッテリが第2の外側表面を有」するのに対し,引用発明はそうではない点。 (イ)相違点5 本願発明8は「前記第2の外側表面上に位置付けられる第2のRFIDタグであって,前記第1の共振周波数と同様である第2の共振周波数を有する,第2のRFIDタグと,を備え,前記第1のRFIDタグ及び前記第2のRFIDタグが,読取器にデータを提供し,前記第2のRFIDタグが,前記第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように,前記第1のRFIDタグに隣接して位置付けられ」るのに対し,引用発明はこれを備えない点。 (ウ)相違点6 本願発明8においては「前記第1のRFIDタグの前記第1の共振周波数は,前記第2のRFIDタグの存在により,シフトするもの」であるのに対し,引用発明においてはこの旨の明示がない点。 (エ)相違点7 本願発明8においては「前記第1のRFIDタグが,10パーセント超の延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺上に延伸し,前記第2のRFIDタグが,断面において前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの周辺の10パーセント~80パーセントの延伸係数で,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの長手方向軸に垂直な断面において見られるように,前記使い捨て又は再充電可能なバッテリの前記周辺上に延伸する,」のに対し,引用発明においてはこの旨の明示がない点。 (2)相違点5ないし7についての判断 前記1(2)と同様の理由により,相違点5ないし7に係る構成は当業者が容易に想到し得ることではない。 (3)まとめ したがって,相違点4について判断するまでもなく,本願発明8は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4 引用発明9及び10について 本願発明9及び10は,本願発明8を引用するものであるから,前記3と同様の理由により,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第7 原査定について 前記「第6 対比及び判断」のとおりであるから,本願発明1ないし10は,引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお,前置報告書で引用された特開2006-139544号公報にも,「第1のRFIDタグと読取器との間の信号結合が増加するように位置づけられる第2のRFIDタグ」について,記載も示唆もない。 したがって,原査定の理由によって,本願を拒絶することはできない。 第8 結言 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2017-008503

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