特許拒絶査定不服審判
2017-007752
放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法
- 審判番号
- 2017-007752
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-176545
- 請求日
- 2017年05月30日
- 審決日
- 2018年03月26日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】日立造船株式会社
- 【請求人代理人】岡本 寛之
- 審判長/審判官
- 審判長 森 竜介
- 審判官 松川 直樹
- 審判官 野村 伸雄
- 分類
- P18 .121-WY (G21F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-176545「放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月 5日出願公開、特開2013-242291、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年8月8日(優先権主張 特願2012-51025号(平成24年3月7日)、特願2012-99298号(平成24年4月24日))を出願日とする出願であって、平成28年6月22日付け(発送 同年同月28日)で拒絶理由が通知され、同年8月26日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成29年2月21日付け(送達 同年同月28日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年5月30日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成28年8月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であるところ、本願発明1は以下のとおりである。
「【請求項1】
放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法であって、
放射性セシウムを含有する排水の中で、水可溶性のフェロシアン化物と水可溶性の第二鉄化合物とを反応させてフェロシアン化鉄、すなわちヘキサシアン化鉄(II)酸鉄(III)を生成させ、その際、フェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な量よりも過剰に存在させ、生成したフェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させるとともに、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の微細な粒子を、第二鉄化合物から生成した水酸化第二鉄Fe(OH)3の作用によって凝集沈殿させ、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄を固液分離によって排水から分離することからなり、
フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上として実施する除去方法。」
なお、本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。
第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開昭58-182596号公報)には、次の事項が記載されている(下線は、当審が付した。以下同じ。)。
ア 「1、放射性廃液中の放射性物質を可溶性の非放射性物質から分離し安定に貯蔵する処理方法において、前記放射性廃液を濃縮処理した後、この濃縮廃液中に溶解している少量の放射性核種を不溶化する処理を施すことを特徴とする放射性廃液の処理方法。
2、不溶化する処理は、濃縮廃液中にセシウムが存在する場合、前記濃縮廃液に遷移金属塩を添加し、弱酸性に調整した後、過剰の黄血塩を添加してセシウムと遷移金属のベルリン酸塩とのコロイド状の反応生成物を生ぜしめ、ついで金属もしくは金属酸化物の粉末を添加し、つづいて黄血塩に対して、過剰の第2鉄塩またはアルミニウム塩を添加した後、弱アルカリ性に調整してセシウム及びその他の放射性核種を共沈せしめて成る特許請求の範囲第1項記載の放射性廃液の処理方法。」
(特許請求の範囲、1頁左下欄5~20行)
イ 「〔発明の技術分野〕
本発明は放射性廃液の処理方法に係り、特に放射性廃液中の可溶性の非放射性物質を分離除去し放射性物質を含む沈殿を脱水して放射性廃棄物を減容せしめる放射性廃液の処理方法に関する。」(2頁右上欄4~8行)
ウ 「〔発明の実施例〕
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。
図面は濃縮廃液処理レステムを示すフローシートであり、このような処理システムに基づいて本発明の廃液処理が行われる。1は沈降分離槽で、ここで濃縮廃液Aは沈殿物Bと沈降分離される。沈降分離処理された後の上澄液Cは分析及びジャーテストのためのサンプリング2が行われた後、反応槽兼沈降分離槽3に投入される。ここで上澄液Cに分析及びジャーテスタの結果に基づいて適量の薬剤Dが添加されて放射性核種の不溶化処理がなされ、沈殿物Eが沈降分離される。4は攪拌装置である。不溶化処理後の上澄液Fはろ過機又は遠心清澄機5でさらに処理された後、この処理済水Gは中和兼サンプルタンク6において中和剤Hが添加されて中和され、分析7が行われた後、外部に放出される。8は攪拌装置である。Iはろ過機又は遠心清澄機5で分離された濃縮物で、先の沈殿物を含む濃縮物B、Eと共に回収され、脱水されて貯蔵される。9は貯蔵槽である。
以上の構成の濃縮廃液処理システムを参照しながら、具体的な処理操作を次に説明する。
濃縮廃液Aとしては蒸発濃縮廃液かまたは逆浸透法などで濃縮された高塩濃度の廃液を加熱沸騰処理した濃縮廃液が対象となるが、まず沈降分離処理をした後、放射能分析を行なって廃液C中に存在している放射性核種を調べ、その結果により、次の4つの不溶化処理のいずれかに該当する処理が行われる。」(3頁左下欄10行~右下欄17行)
エ 「(ニ) セシウムを含む場合、
セシウムの沈殿剤としてはサバンナリバー研究所その他でKCFCが発見されている。KCFCとはK Co Ferric Cyanate(カリウムコバルト第2鉄シアン化物)の略で、Kの部分にCsが同形置換して結晶の中に入り、沈殿する物質である。この結晶は一般に遷移金属のベルリン酸塩といわれるもので、コバルトの他、ニッケル、第1鉄、亜鉛等の遷移金属のベルリン酸塩がセシウムと不溶性塩を作ることが知られている。
不溶性のベルリン酸塩を生成させるには一般的に黄血塩(フェロシアン化カリウム K4(Fe(CN)6))を加えておき、これに1.4倍当量程度の大過剰の2価または3価の遷移金属塩Fe3+、Co2+、Mn2+、Cr2+、Ni2+、Fe2+、Zn2+等を加えると結晶性のよい沈殿が得られることがわかっており、この添加順序を逆にしたり、黄血塩が過剰であると、溶解度が大きい複塩を生成したり、コロイド化するので、よくないといわれている。いろいろ実験してみたところ、確かにその通りであるが、最初から沈殿性のよい結晶を作ると、セシウムはよく沈殿するが、コロイドや錯体及び比較的酸性で溶解度の大きくなるマンガンやコバルトの沈殿性が悪くなることがわかった。
むしろ逆に、最初にニッケル、コバルト等(沈殿性のよいのはコバルトが1番で、ついでニッケル、鉄とつづく)の塩をpH2~6の弱酸性で50~1000ppmの範囲で加え、そこへ黄血塩な大過剰に加えてコロイド状の沈殿を生成させ、すぐ第2鉄塩またはアルミニウム塩を加えてよく攪拌し、つづいて弱アルカリ性(pH9~12)に調整し、手早く攪拌しながら熟成してやると、セシウムもよく沈殿するとともに、KCFCの生成条件下で可溶化する核種も共沈させられることが判明した。この操作のポイントは、試薬の添加順序を逆にしてコロイド状のKCFCを生成させ、つづいて遷移金属塩でかつアルカリで沈殿する塩を加えた後、アルカリ性にして晶析させるとともに、吸着共沈させるところにある。
従ってプロセスは次のようになる。
濃縮廃液Aを沈降分離した後、上澄液Cにニッケルまたはコバルトの硫酸塩塩化物または硝酸塩をよく攪拌しながら50~5000ppmの範囲でジャーテストできめた適量を加える。これで通常pH2~6の弱酸性になるが、不足なら鉱酸で酸調整する。ついで銀等の錯体が存在する場合は亜鉛華や鉄粉や銅粉等を10~1000ppm加え、攪拌しながら1.1~2倍当量の黄血塩の水溶液を加える。つづいて、手早く攪拌しながら第2鉄塩またはアルミニウム塩を黄血塩の1.1~2倍当量程度加え、ついですばやくpH9~12の弱アルカリ性に調整し、攪拌しながら熟成させる。反応完了後、沈降分離させ、その上澄液Fを濾過(審決注:引用文献1では戸に三水)または遠心清澄処理して、沈殿物Iをさらに除去した後、分析確認して中和放出する。以上の処理で分離した沈殿物を含む濃縮物B、E,Iは回収脱水し、貯蔵する。」(4頁右上欄19行~5頁左上欄14行)
(2)上記(1)によれば、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「濃縮廃液中にセシウムが存在する場合、濃縮廃液を沈降分離した後、上澄液Cにニッケルまたはコバルトの硫酸塩塩化物または硝酸塩をよく攪拌しながら50~5000ppmの範囲でジャーテストできめた適量を加え、
ついで銀等の錯体が存在する場合は亜鉛華や鉄粉や銅粉等を10~1000ppm加え、攪拌しながら1.1~2倍当量の黄血塩(フェロシアン化カリウム)の水溶液を加え、
つづいて、手早く攪拌しながら第2鉄塩またはアルミニウム塩を黄血塩の1.1~2倍当量程度加え、ついですばやくpH9~12の弱アルカリ性に調整し、攪拌しながら熟成させ、
カリウムコバルト第2鉄シアン化物(ベルリン酸塩)を生成し、
反応完了後、沈降分離させ、その上澄液Fを濾過または遠心清澄処理して、沈殿物をさらに除去した後、分析確認して中和放出し、
以上の処理で分離した沈殿物を含む濃縮物は回収脱水し、貯蔵する、
放射性廃液の処理方法であって、
前記濃縮廃液に遷移金属塩を添加し、弱酸性に調整した後、過剰の黄血塩を添加してセシウムと遷移金属のベルリン酸塩とのコロイド状の反応生成物を生ぜしめ、ついで金属もしくは金属酸化物の粉末を添加し、つづいて黄血塩に対して、過剰の第2鉄塩またはアルミニウム塩を添加した後、弱アルカリ性に調整してセシウム及びその他の放射性核種を共沈せしめて成る、
放射性廃液の処理方法。」
2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開昭62-266499号公報)には、次の事項が記載されている。
「[発明の構成]
(問題点を解決するための手段)
本発明は放射性廃液に硫酸ニッケル,フェロシアン化カリウム,硫酸第二鉄および水酸化ナトリウムを順次加えて放射性物質を共沈させて処理する放射性廃液の処理方法において、硫酸第二鉄の添加と同時にまたは添加後に高分子系凝集剤を添加することによって、共沈反応で生じた微粒子を凝集させて粒径の大きい沈澱とし、遠心分離性を向上させることを特徴とするものである。
(作用)
放射性廃液にNiSO4(硫酸ニッケル)とK4Fe(CN)6(フェロシアン化カリウム)を加えることによって、NiFe(CN)6をはじめとする難溶性塩の沈澱が生成し、廃液中に存在するCo-60,Mn-54等の放射性物質もCo2Fe(CN)6等として沈澱する。つづいてFe2(SO4)3(硫酸第二鉄)を加えるとFe4[Fe(CN)6]3(ベルリン青)を主とする難溶性塩が生成し、この沈澱も放射性物質を吸着する能力がある。この時Fe2(SO4)3の過剰分のFe3+が残存するので、これをNaOH(水酸化ナトリウム)でpH7付近まで中和し、Fe(OH)3の沈澱を生成させる。
以上の作用は従来の方法と同じであるが、本発明においては硫酸第二鉄の添加の際に高分子系凝集剤を加えることによって、最後にFe(OH)3の生成と同時に凝集化が起り、水中の微小粒子が殆ど凝集して清澄水に微小粒子が混入することがなくなる。
硫酸第二鉄は酸性域でイオン化しており、この状態でフェロシアン化カリウムと反応して難溶性塩を生成すること、また凝集剤による凝集化は水酸化ナトリウムで中和して水酸化第二鉄の沈澱を生成する際に起ることから、凝集剤は酸性域で安定なものがよい。
また硫酸第二鉄は、過剰のフェロシアンイオンを難溶性塩として沈澱させるために加えるものであるから、該イオンが残存しないような量の硫酸第二鉄が必要である。
(実施例)
本発明の実施例を図面を参照して説明する。
第1図は本発明の一実施例を示す工程図である。また第2図は従来の処理方法の工程図である。
第1図に示すように、本実施例では、被処理水に予め定められた量のNiSO4溶液を投入し、液中のNi濃度が均一になった時点で予め定めた量(Niよりも過剰)のK4Fe(CN)6溶液を投入する。ここでNi2Fe(CN)6等の難溶性塩が沈澱し、前記したように放射性物質をとりこむ。
次にFe2(SO4)3と高分子系凝集剤(例えばポリ塩化アルミニウム)の混合溶液を投入する。ここで前記したようにベルリン青等の沈澱が生成し、放射性物質をとりこむ。さらにこれにNaOHを加えて過剰に存在したFe3+を反応させ、Fe(OH)3の沈澱を生成する。ここでこの沈澱生成と同時に凝集剤による凝集化が起り、微小粒子が殆ど存在しなくなり、これを遠心分離することによって微小粒子が混入していない清澄水が得られる。
上記工程において各試薬の量は、被処理液中での濃度が下記の数値となるような量である。
NiSO4 66ppm
K4Fe(CN)6 169ppm
Fe2(SO4)3 216ppm
NaOH pH7付近とするに必要な量
凝集剤(ポリ塩化アルミニウム)は硫酸第二鉄:凝集剤が80:20になるように加えた。」
(2頁右上欄5行~3頁左上欄10行)
(2)上記(1)によれば、上記引用文献2には次の技術的事項(以下「引用文献2に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「放射性廃液に硫酸ニッケル,フェロシアン化カリウム,硫酸第二鉄および水酸化ナトリウムを順次加えて放射性物質を共沈させて処理する放射性廃液の処理方法において、硫酸第二鉄は、フェロシアンイオンが残存しないような量の硫酸第二鉄が必要であること。」
3 引用文献3について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2002-326003号公報)には、次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、凝集剤の製造方法に関する。」
イ 「【0005】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法では、硫酸第一鉄と硫酸とを含有する水溶液(以下、硫酸第一鉄・硫酸含有水溶液と称する)の撹拌下に、酸化剤水溶液及び水ガラス水溶液を徐々に添加する。前記硫酸第一鉄・硫酸含有水溶液に含有される硫酸第一鉄の含有量は、特に限定されるものではないが、鉄イオン濃度として1~7%であることが好ましく、2~4%であることがより好ましい。また、硫酸第一鉄・硫酸含有水溶液に含有される硫酸の含有量は、特に限定されるものではないが、7~13%であることが好ましく、9~11.5%であることがより好ましい。」
ウ 「【0007】本発明の製造方法で用いる酸化剤は、酸化により硫酸第一鉄をポリ硫酸第二鉄に変換可能な酸化剤である限り、特に限定されるものではなく、例えば、過酸化水素、酸素、硝酸、塩素、又は塩素酸ソーダを挙げることができる。低温での製造が可能であり、操作が簡単であり、しかも、不純物の混入を防ぐことができる点で、過酸化水素を用いることが好ましい。酸化剤水溶液における酸化剤濃度は、用いる酸化剤の種類に応じて適宜決定することができ、特に限定されるものではない。例えば、酸化剤として過酸化水素を用いる場合には、過酸化水素水溶液中の過酸化水素濃度は、1~50%であることが好ましい。」
エ 「【0013】本発明の製造方法により得られる凝集剤に含有されるポリ硫酸第二鉄は、式(I):
[Fe2(OH)n(SO4)3-n/2]m (I)
(式中、nは2より小さい数であり、mは10より大きい数である)で表される化合物であり、その塩基度は、式:
(n/6)×100%
で示される(特公昭51-17516号公報参照)。本発明の製造方法により得られる凝集剤におけるポリ硫酸第二鉄の含有量は、特に限定されるものではないが、鉄イオン濃度として、1~5%であることが好ましい。1%未満であると、満足する凝集効果が得られないことがある。また、この場合、凝集効果が弱いため、多くの添加量が必要となり、その結果、凝集剤輸送コストが高くなることがある。5%を越えると、凝集剤水溶液が製造後、短期間でゲル化し、凝集剤として使用不能となることがある。」
オ 「【0017】
【作用】本発明の製造方法により得られる凝集剤は、後述の実施例における評価例1に示すように、特願2000-202492号に記載の凝集剤、すなわち、ポリ硫酸第二鉄水溶液の撹拌下に、水ガラス水溶液を徐々に添加することにより得られる凝集剤に比べ、高い凝集効果を示す。また、後述の実施例における比較例2に示すように、特願2000-202492号に記載の凝集剤よりも、長期安定性に優れている。
【0018】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】硫酸第一鉄7水和物110gと5.9%硫酸490gとをビーカーに入れ、充分に撹拌することにより、硫酸第一鉄・硫酸含有水溶液を調製した。別のビーカーに、3号水ガラス原液(シリカ濃度=30%)66.67gを入れた後、純水で希釈し、水ガラス水溶液365gを調製した。充分に撹拌した後、更に、34.5%過酸化水素水35gを前記水ガラス水溶液に加え、過酸化水素含有水ガラス水溶液を調製した。先に調製した硫酸第一鉄・硫酸含有水溶液に、撹拌下、前記の過酸化水素含有水ガラス水溶液を徐々に添加することにより、凝集剤[鉄イオン濃度=2.2%(ポリ硫酸第二鉄濃度として20%に相当する),シリカ濃度=2%]1000gを調製した。過酸化水素含有水ガラス水溶液の前記添加は、液温が25℃以上にならないように注意しながら、約30~60分間かけて実施した。添加終了後、得られた凝集剤のpHを、濃硫酸で1.4に調整した。」
カ 「【0030】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、特願2000-202492号明細書に記載の凝集剤よりも更に高い凝集効果と長期安定性とを示す凝集剤を提供することができる。」
(2)上記(1)によれば、引用文献3には次の技術的事項(以下「引用文献3に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる。
「硫酸第一鉄を酸化剤により酸化して、凝集剤に含有されるポリ硫酸第二鉄を生成すること。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における、「濃縮廃液中」、「セシウム」、「黄血塩(フェロシアン化カリウム)」、「第2鉄塩」、「カリウムコバルト第2鉄シアン化物(ベルリン酸塩)」、「沈降分離」及び「放射性廃液の処理方法」は、本願発明1の「排水」、「放射性セシウム」、「水可溶性のフェロシアン化物」、「第二鉄化合物」、「フェロシアン化鉄、すなわちヘキサシアン化鉄(II)酸鉄(III)」、「固液分離」及び「除去方法」にそれぞれ相当し、
また、引用発明の「金属もしくは金属酸化物の粉末を添加し、つづいて黄血塩に対して、過剰の第2鉄塩またはアルミニウム塩を添加した後、弱アルカリ性に調整してセシウム及びその他の放射性核種を共沈せしめて成る」ことは、本願発明1の「フェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な量よりも過剰に存在させ、生成したフェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させるとともに、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の微細な粒子を、第二鉄化合物から生成した水酸化第二鉄Fe(OH)3の作用によって凝集沈殿させ、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄を固液分離によって排水から分離すること」に相当するから、
両者は、
「放射性セシウムを含有する排水から放射性セシウムを除去する方法であって、
放射性セシウムを含有する排水の中で、水可溶性のフェロシアン化物と水可溶性の第二鉄化合物とを反応させてフェロシアン化鉄、すなわちヘキサシアン化鉄(II)酸鉄(III)を生成させ、その際、フェロシアン化物に対する第二鉄化合物の割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な量よりも過剰に存在させ、生成したフェロシアン化鉄に放射性セシウムを吸着させるとともに、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄の微細な粒子を、第二鉄化合物から生成した水酸化第二鉄Fe(OH)3の作用によって凝集沈殿させ、放射性セシウムを吸着したフェロシアン化鉄を固液分離によって排水から分離することからなる除去方法。」の点で一致し、下記の点で相違する。
・「フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合」が、本願発明1は、「フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上」であるのに対して、引用発明は「第2鉄塩またはアルミニウム塩を黄血塩の1.1~2倍当量程度」である点(以下「相違点」という。)
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明は、「不溶性のベルリン酸塩を生成させ」、「結晶性のよい沈殿が得られることがわかっており、この添加順序を逆にしたり、黄血塩が過剰であると、溶解度が大きい複塩を生成したり、コロイド化するので、よくない」との課題を解決するために、「第2鉄塩またはアルミニウム塩を黄血塩の1.1~2倍当量程度加え」るものであるのに対して、本願発明1は、「放流する排水中に、放射性セシウムだけでなく、シアン化合物も検出されない、きわめて安全度の高い処理を実現した処理方法を提供する」(本願明細書の発明の詳細な説明【0008】)、「フェロシアン化物もPBも、化合物名に『シアン』が含まれているので、シアン化合物であることは否定できない。どちらも無害であり、安定な物質であるから、微量が排水中に混入しても、通常は、とりたてて問題が生じる懸念はないはずである。しかし、何らかの原因でこれらの物質の分解が起こったりすることを予防し、または『シアン』の名を担った化合物の存在そのものが忌避されるときは、フェロシアン化物もPBも排水中に入ることを完全に防止したい。」(本願明細書の発明の詳細な説明【0010】)との課題を解決するために、「フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上として実施する」ものである。
したがって、発明の解決すべき課題が本願発明1と相違する引用発明においては、「第2鉄塩またはアルミニウム塩を黄血塩の5倍当量以上」加える必要性はなく、このような量となすことを示唆する記載はなく、動機も見当たらない。
そして、上記相違点に係る本願発明1の構成は、上記引用文献2及び3にも記載されていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明、及び、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし9について
本願発明2ないし9も、本願発明1の上記相違点に係る「フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上として実施する」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明、及び、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1、3~8に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、また、請求項2、9に係る発明は、引用発明、及び、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成28年8月26日付け手続補正により補正された請求項1ないし9は、それぞれ「フェロシアン化物に対して第二鉄化合物が過剰な割合を、フェロシアン化鉄の生成に必要な当量関係の5倍以上として実施する」という構成を有するものとなっており、上記第4で検討したとおり、本願発明1ないし9は、引用発明、及び、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は引用発明、及び、引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2017-007752