特許拒絶査定不服審判
2017-007145
有機電子素子用基板
- 審判番号
- 2017-007145
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-501592
- 請求日
- 2017年05月17日
- 審決日
- 2018年09月20日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
- 【請求人代理人】園田・小林特許業務法人
- 審判長/審判官
- 審判長 樋口 信宏
- 審判官 関根 洋之
- 審判官 川村 大輔
- 分類
- P18 .113-WY (H05B) / P18 .121-WY (H05B) / P18 .536-WY (H05B) / P18 .537-WY (H05B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015-501592「有機電子素子用基板」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 9月26日国際公開、WO2013/141677、平成27年 6月25日国内公表、特表2015-518234、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続等の経緯
特願2015-501592号(以下、「本件出願」という。)は、2013年(平成25年)3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年3月23日 韓国、2012年7月31日 韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続等の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成27年10月15日付け:拒絶理由通知書
平成28年 2月22日 :意見書
平成28年 2月22日 :手続補正書
平成28年 7月27日付け:拒絶理由通知書
平成28年11月 1日 :意見書
平成28年11月 1日 :手続補正書
平成29年 1月12日付け:拒絶査定
平成29年 5月17日 :審判請求書
平成29年 5月17日 :手続補正書
平成30年 4月20日付け:拒絶理由通知書
平成30年 7月18日 :意見書
平成30年 7月18日 :手続補正書
第2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年7月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層と;
上記基材層上に形成されていて、上記基材層に比べて小さい投映面積を有する光学機能性層と;
上記光学機能性層に比べて広い投映面積を有し、上記光学機能性層の上部及び上記光学機能性層が形成されていない基材層の上部の両方に形成されている電極層と;を含み、
上記光学機能性層上に形成された電極層と上記光学機能性層が形成されていない基材層上に形成された電極層との境界で測定した単位幅当たり抵抗R1と上記電極層と同一素材で形成された電極層に対して同一の方式で測定した単位幅当たり抵抗R2の差R1-R2は、10Ω・cm-1以下であり、
上記光学機能性層は、光散乱層と当該光散乱層の上部に形成される平坦層を含む、
基板。
【請求項2】
基材層と;
上記基材層上に形成されていて、上記基材層に比べて小さい投映面積を有する光学機能性層と;
上記光学機能性層に比べて広い投映面積を有し、上記光学機能性層の上部及び上記光学機能性層が形成されていない基材層の上部の両方に形成されている電極層と;を含み、
上記光学機能性層上に形成された電極層と上記光学機能性層が形成されていない基材層上に形成された電極層との境界で測定した単位幅当たり抵抗R1と上記電極層と同一素材で形成された電極層に対して同一の方式で測定した単位幅当たり抵抗R2の差R1-R2は、10Ω・cm-1以下であり、
上記光学機能性層の厚さT1及び上記光学機能性層が形成されていない基材上に形成された電極層の厚さT2の比率T1/T2が3~15であり、
上記光学機能性層は、光散乱層と当該光散乱層の上部に形成される平坦層を含む、
基板。
【請求項3】
上記電極層の投映面積Aと上記光学機能性層の投映面積Bの比率A/Bが1.04以上である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の基板。
【請求項4】
上記基材層は、透光性である、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板。
【請求項5】
上記電極層は、正孔注入性電極層または電子注入性電極層である、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
上記光散乱層は、マトリックス物質と、当該マトリックス物質と異なる屈折率を有する散乱性粒子を含む、請求項1又は2に記載の基板。
【請求項7】
上記散乱性粒子の屈折率が1.0~3.5である、請求項6に記載の基板。
【請求項8】
上記平坦層は、屈折率が1.7以上である、請求項1又は2のいずれか一項に記載の基板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板と;上記基板の電極層上に形成されていて、発光層を含む有機層と;上記有機層上に形成されている第2電極層と;を含む有機電子装置。
【請求項10】
上記基板の光学機能性層の形成領域の長さBと上記発光層の発光領域の長さCの差BCは、10μm~2mmである、請求項9に記載の有機電子装置。
【請求項11】
上記有機層と上記第2電極層を保護する封止構造をさらに含み、上記封止構造は、下部に光学機能性層が形成されていない基板の電極層の上部に付着されている、請求項9または10に記載の有機電子装置。
【請求項12】
上記封止構造は、ガラスカンまたは金属カンである、請求項11に記載の有機電子装置。
【請求項13】
上記封止構造は、上記有機層と上記第2電極層の全面を覆っているフィルムである、請求項11または12に記載の有機電子装置。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載の有機電子装置を含む照明。」
第3 引用文献・引用発明等
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開平7-98446号公報)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は反射型液晶表示装置に適用される観察者側電極板に係り、特に、製造工程が簡単でその生産性と収率が高く、しかも外光光源の位置に関わりなく視野角の広い画面表示を可能にする液晶表示装置の観察者側電極板の改良に関するものである。
・・・(中略)・・・
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この液晶表示装置においては、その製造に際して上記絶縁性樹脂層a7を形成する工程とその表面に凹凸を付与する工程が必要で、かつ、ドレイン電極a63と上記金属金属反射膜a2とを導通させるため絶縁性樹脂層a7をドライエッチングしてコンタクトホールを形成する工程等が必要となるため、その生産性と収率とが極めて低いという問題点があった。
【0011】また、この液晶表示装置においては、表面凹凸の絶縁性樹脂層a7上に真空蒸着やスパッタリング等の方法で上記金属反射膜a2を直接設ける必要があり、この形成段階において上記金属反射膜a2が酸化若しくは水酸化され易いため、金属反射膜a2本来の反射性能が損なわれる問題点があった。
【0012】本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、反射型液晶表示装置の利点を維持したまま、製造工程が簡単でその生産性と収率が高く、しかも外光光源の位置に関わりなく視野角の広い画面表示を可能にする反射型アクティブマトリクス液晶表示装置の観察者側電極板を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1に係る発明は、矩形状の各画素に対応した複数の電極が基板の画面表示領域内にパターン状に設けられた光反射性背面電極板と、この背面電極板に対向して配置されかつ透明基板の上記画面表示領域に対応する部位に一様に設けられた透明電極を有する観察者側電極板と、これ等の電極板間に封入された液晶物質とを備え、この液晶物質に対し画素毎に電圧を印加して画面表示する液晶表示装置用の上記観察者側電極板を前提とし、上記透明基板に、透明樹脂とこの透明樹脂中に分散されかつこの透明樹脂と屈折率が異なる微粒子とを主成分とする光散乱層を設けたことを特徴とするものである。」
イ 「【0028】
【作用】請求項1~4記載の発明に係る観察者側電極板によれば、透明基板に、透明樹脂とこの透明樹脂中に分散されかつこの透明樹脂と屈折率が異なる微粒子とを主成分とする光散乱層を設けており、この観察者側電極板に入射した外光は上記光散乱層で散乱され、かつ、観察者側電極板に対向して配置された光反射性背面電極板で反射された後、再度光散乱層で散乱されて出射されることになるため、外光光源の位置に関わりなく表示画面の視野角を増大させることが可能になる。
【0029】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例について詳細に説明する。
【0030】[実施例1]この実施例に係る液晶表示装置用観察者側電極板は、図1に示すように厚さ0.7mmのガラス基板11と、このガラス基板11上の画面表示領域に一様に設けられた厚さ0.9μmの四角形状の光散乱層12と、この光散乱層12を被覆して一様に設けられた厚さ0.14μmのITO薄膜から成る略四角形状の透明電極13とでその主要部が構成されている。尚、上記光散乱層12は熱硬化型アクリル-エポキシ樹脂に固形比で約15重量%のシリカアエロジル(粒径0.1μm)を均一に分散させたもので構成されており、その表面は深さ0.1~0.5μmの微細な凹凸を備えている。
【0031】尚、この光散乱層12は、上記シリカアエロジルと熱硬化型アクリル-エポキシ樹脂とを溶剤に添加しかつ混合してインキ化し、フレキソ印刷により印刷して形成されたものである。
・・・(中略)・・・
【0037】
【発明の効果】請求項1~4に係る発明によれば、観察者側基板に設けられた光散乱層によって光を散乱させて表示画面の視野角を増大させることが可能になるため、各画素に対応した複数の電極を設ける背面電極板に光散乱処理を施す必要がない。
【0038】従って、反射型アクティブマトリクス液晶表示装置を製造する際の工程が簡略化されるため、生産効率と収率が著しく向上する効果を有している。」
ウ 「
」
(2)引用発明
上記(1)アないしウ(特にイ)によると、引用文献1には、実施例1(【図1】)として、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「引用発明」という。)。
「厚さ0.7mmのガラス基板11と、このガラス基板11上の画面表示領域に一様に設けられた厚さ0.9μmの四角形状の光散乱層12と、この光散乱層12を被覆して一様に設けられた厚さ0.14μmのITO薄膜からなる略四角形状の透明電極13とで構成されており、上記光散乱層12は、熱硬化型アクリル-エポキシ樹脂に固形比で約15重量%のシリカエアロジル(粒径0.1μm)を均一に分散させたもので構成され、その表面は深さ0.1~0.5μmの微細な凹凸を備えている、液晶表示装置用観察者側電極板。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-48937号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る有機EL発光素子1(以下、発光素子という)の構成を示す。発光素子1は、基板2上に透明導電膜から成る第1電極3、少なくとも1つの有機発光層(図示せず)を含む有機層4、及び第2電極5がこの順に積層されて成る。また、発光素子1は、基板2と第1電極3の間であって基板2側に微細凹凸構造6を、第1電極3側に透明層7をそれぞれ備える。発光素子1は、有機層4で生じた光を基板2側から放出するボトムエミッション型である。
・・・(中略)・・・
【0029】
微細凹凸構造6は、配列周期を入射波長以下としており、凹凸構造パターンの断面形状が放射線状の凹又は凸形状である。なお、凹凸構造パターンの断面形状が矩形状やV字状の凹又は凸形状などであってもよい。微細凹凸構造6の材料は、基板2を構成している物質の屈折率(n1)が微細凹凸構造6を構成している物質の屈折率(n2)以上であればよく、・・・(中略)・・・その他の熱可塑性樹脂や、これらの樹脂を構成する単量体の2種以上の共重合体が挙げられる。
【0030】
微細凹凸構造6は、基板2上に上記の材料をスピンコート、スクリーン印刷、ディップコート、ダイコート、キャスト、スプレーコート、グラビアコート等でレジスト薄膜が形成され、このレジスト薄膜に光や電子線によるリソグラフィやナノインプリントされることで形成される。・・・(中略)・・・微細凹凸構造6の膜圧は、特に限定されないが、0.01~20μmの範囲であることが好ましい。
【0031】
透明層7は、微細凹凸構造6の表面の凹凸を埋めて平坦化するために設けられる。発光素子1は、膜圧の薄い第1電極3が、透明層7の平滑な表面上に形成される。このため、第1電極3の膜圧が不均一とならないので、電気特性に問題が生じたり、ショートが発生したりする虞がない。
【0032】
透明層7の材料は、光透過性を有しているものであればよく、・・・(中略)・・・透明層7は、これら材料が微細凹凸構造6の表面にコーティングされた後、加熱によって硬化して形成される。透明層7の膜圧は、特に限定されないが、1~20μm程度の範囲が好ましい。また、透明層7の表面の平坦性は、・・・(中略)・・・算術平均粗さRa(JIS B0601)が200nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
【0033】
透明層7を形成する物質の屈折率は、第1電極3の屈折率よりも高い。これにより、発光素子1は、透明層7と第1電極3の間の光学的な界面がなくなるので、この界面における全反射が低減して、より多くの光を微細凹凸構造6に導くことができる。なお、透明層7を形成する物質の屈折率は、第1電極3の屈折率よりも低い場合、第1電極3との屈折率の差が小さいことが望ましい。
【0034】
発光素子1は、微細凹凸構造6と透明層7が基板2と第1電極3の間に挿入されると共に、基板2を構成している物質の屈折率(n1)が微細凹凸構造6を構成している物質の屈折率(n2)以上としているので(n1≧n2)、基板2と第1電極3の間の屈折率段差が傾斜して、屈折率段差により生じる界面反射が低減する。これにより、光取り出し効率を向上させることができる。また、外光の界面反射が低減するので、視認性を向上させることができる。」
イ 「
」
3 引用文献3
引用文献3(特開2010-205650号公報)には、以下の記載がある。
「【0122】
(実施例1)
<微粒子含有層形成液の調製>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA、和光純薬製)とジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA、n=1.54、日本化薬製)とを質量比で17:3の比で混合したDPHA溶液を調製した。このDPHA溶液1質量部に対し、重量平均一次粒子径10nmの酸化チタン微粒子(n=2.4、石原産業製)を0.05質量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(理研ビタミン製)を0.1質量部加え、ディスパーを用い酸化チタン微粒子分散液を調製した。この酸化チタン微粒子分散液1質量部に対し、重量平均一次粒子径300nmの酸化チタン微粒子(n=2.6、石原産業製)を0.05質量部、solsperse36000を0.005質量部加え、超音波分散を行い微粒子含有層形成液を調製した。
【0123】
<微粒子含有層の形成>
厚み300μmのガラス基板上に、調製した微粒子含有層形成液をスピンコート法により製膜し、200℃で乾燥を行った。その結果、600nmの微粒子含有層が形成された。形成された微粒子含有層を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察したところ、粒径が異なる2種類の酸化チタン微粒子のいずれについても、一次粒子として分散していることが分かった。
【0124】
<有機EL表示装置の作製>
ガラス基板上に形成された微粒子含有層上に、ITOを真空蒸着し、厚み100nmのITO電極(陽極)を形成した。
さらに、ITO電極(陽極)の上に、有機化合物層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層)を順次形成した。まず、正孔注入層として、2-TNATA〔4,4´,4´´-トリス(2-ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン〕を、50nmの厚みに真空蒸着にて形成した。さらに、正孔輸送層として、α-NPD〔N,N´-(ジナフチルフェニルアミノ)ピレン〕を、50nmの厚みに真空蒸着にて形成した。さらに、発光層として、Alq3[8-キノリノールアルミニウム錯体]を、50nmの厚みに真空蒸着にて形成した。最後に、電子注入層として、ピリジン誘導体を、25nmの厚みに真空蒸着にて形成した。(有機化合物層平均屈折率:1.80)
その後、反射陰極としてAlを、100nmの厚みに真空蒸着にて成膜した。
さらに、窒素存在下で、ガラス封止を行い、ボトムエミッション型有機EL表示装置を作製した。
・・・(中略)・・・
【0128】
(実施例2)
実施例1において、ガラス基板上に形成された微粒子含有層上に、ITO(屈折率:約1.9)を真空蒸着し、厚み100nmのITO電極(陽極)を形成する代わりに、ガラス基板上に形成された微粒子含有層上に、アクリル樹脂(JSR製)をスピンコートし、厚み600nmのアクリル樹脂平坦化膜を形成し、アクリル樹脂平坦化膜上に、ITO(屈折率:約1.9)を真空蒸着し、厚み100nmのITO電極(陽極)を形成した以外は、実施例1と同様にして、ボトムエミッション型有機EL表示装置を作製し、全光量測定を行った。その結果、相対的な全光量(後述する比較例2の全光量を1とした全光量)は、1.4であった。」
第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「厚さ0.7mmのガラス基板11」は、技術的にみて、ガラスの基材層であるといえる。
そうすると、引用発明の「厚さ0.7mmのガラス基板11」は、本願発明1の「基材層」に相当する。
イ 引用発明に関係する引用文献1の【図1】(上記第3の1(1)ウ)を参照すると、「ガラス基板11」の表面の法線方向からみた「光散乱層12」の面積は、「ガラス基板11」の面積より小さいと認められる。また、引用発明の「厚さ0.9μmの」「光散乱層12」は、技術的にみて、光を散乱させる機能を有する層であるといえる。
そうすると、引用発明の「このガラス基板11上の画面表示領域に一様に設けられた厚さ0.9μmの四角形状の光散乱層12」は、本願発明1の「上記基材層上に形成されていて、上記基材層に比べて小さい投映面積を有する光学機能性層」であり、「上記光学機能性層は、光散乱層」「を含む」という要件を満たしている。
ウ 引用発明に関係する引用文献1の【図1】(上記第3の1(1)ウ)を参照すると、「ガラス基板11」の表面の法線方向からみた「透明電極13」の面積は、「光散乱層12」の面積より大きいと認められ、また、「透明電極13」は、「光散乱層12」の上と「ガラス基板11」の上に形成されていると認められる。
そうすると、引用発明の「この光散乱層12を被覆して一様に設けられた厚さ0.14μmのITO薄膜からなる略四角形状の透明電極13」は、本願発明1の「上記光学機能性層に比べて広い投映面積を有し、上記光学機能性層の上部及び上記光学機能性層が形成されていない基材層の上部の両方に形成されている電極層」という要件を満たしている。
エ 引用発明の「液晶表示装置用観察者側電極板」は「ガラス基板11」を備えるから、「基板」であるともいえる。
そうすると、引用発明の「液晶表示装置用観察者側電極板」は、下記の相違点1及び2を除き、本願発明1の「基板」に相当する。
(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「基材層と;
上記基材層上に形成されていて、上記基材層に比べて小さい投映面積を有する光学機能性層と;
上記光学機能性層に比べて広い投映面積を有し、上記光学機能性層の上部及び上記光学機能性層が形成されていない基材層の上部の両方に形成されている電極層と;を含み、
上記光学機能性層は、光散乱層を含む、
基板。」
イ 相違点
本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「上記光学機能性層上に形成された電極層と上記光学機能性層が形成されていない基材層上に形成された電極層との境界で測定した単位幅当たり抵抗R1と上記電極層と同一素材で形成された電極層に対して同一の方式で測定した単位幅当たり抵抗R2の差R1-R2は、10Ω・cm-1以下であ」るのに対し、引用発明では、差R1-R2に相当する値が明らかでない点。
(相違点2)
本願発明1では、「上記光学機能性層は、光散乱層と当該光散乱層の上部に形成される平坦層を含む」のに対し、引用発明では、「光散乱層12」の上部に平坦層が形成されていない点。
(ウ)判断
事案に鑑み、相違点2について判断する。
引用発明において、透明電極13で被覆される光散乱層12の上部に平坦層を形成することは想定されていない。
また、液晶表示装置用観察者側電極板の、透明電極13で被覆される光散乱層12の上部に平坦層を形成することは、公知又は周知の技術でない。引用文献2及び3に記載されている技術は、いずれも有機EL素子の平坦層に関するものであって、液晶表示装置用観察者側電極板に関するものではなく、引用発明に適用することはできない。
そうすると、 引用発明において、相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(エ)小括
したがって、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということができない。
2 本願発明2-14について
本願発明2-14は、上記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1についてと同様の理由により、当業者が、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということができない。
第5 原査定の理由の概要及び原査定についての判断
1 原査定の拒絶の理由のうち、独立形式の請求項である請求項1及び2に係る発明に対するものは、概略、以下のとおりである。
(1)理由1(新規性)
請求項1及び2に係る発明は、最先の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である上記引用文献1(特開平7-98446号公報)に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)理由2(進歩性)
請求項1及び2に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である上記引用文献1(特開平7-98446号公報)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
2 平成30年7月18日にされた手続補正により補正された請求項1及び2に係る発明である本願発明1及び2は、いずれも上記相違点2(第4の1(2)イ)に係る「上記光学機能性層は、光散乱層と当該光散乱層の上部に形成される平坦層を含む」という構成を備えるものとなっているから、上記第4のとおり、本願発明1及び2は、上記引用文献1に記載された発明であるとはいえないし、また、上記引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由
当合議体は、平成30年4月20日付けで、理由1(実施可能要件:特許法36条4項1号)及び理由2(明確性:特許法36条6項1号)(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知したところ、平成30年7月18日に意見書及び手続補正書が提出された。
そして、当該手続補正書による補正で、特許請求の範囲及び明細書が補正され、また、当該意見書において当審拒絶理由に対する釈明がなされたことにより、当審拒絶理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-14は、当業者が、引用発明、引用文献2及び3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-007145