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特許拒絶査定不服審判

2017-004691

空気入りタイヤ

審判番号
2017-004691
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2015-555325外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年04月04日
審決日
2017年11月24日
公報発行日
2018年03月30日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B60C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2015-555325号「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月21日国際公開、WO2016/060244〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)10月16日(優先権主張 2014年10月17日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年2月29日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年10月7日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年1月5日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がされ、同年4月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、その後、当審において同年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月5日に意見書が提出されたものである。 第2 当審の判断 1 本願発明 本願の請求項1~3に係る発明は、平成29年4月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤであって、 前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されており、 前記らせん状に配置された略紐状形状のシーラント材同士が、幅方向に重ならず、隙間なく配置されており、 前記シーラント層がシーラント材のみによって構成されており、 前記シーラント材の幅が0.8~7.0mmであり、 前記シーラント材の粘度(40℃)が3000~70000Pa・sである空気入りタイヤ。」 2 引用文献の記載事項 (1)引用文献1 当審の拒絶の理由に「引用文献1」として示され、本願の優先日前に頒布された特開昭58-93612号公報には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同様。) 「シール材によるパンク防止層をタイヤのクラウン部の内面に付加することを、そのシール材の帯をタイヤに接着することによつて実現することが提案されて来た。そして、連続して押出された帯を用いる場合は、それは螺旋状にタイヤに付加されていた。」(第3ページ左上欄第9~14行) (2)引用文献2 当審の拒絶の理由に「引用文献2」として示され、本願の優先日前に頒布された特開2002-347418号公報には、次の事項が記載されている。 「【0039】 本発明において、スポンジ層3の形状としては、図2,5に示すように、断面矩形状であってもよいが、好ましくは、図7(a)に示すような断面平行四辺形や、図7(b)に示す断面矩形の対向する1組の角部を矩形状に切欠いた形状などにして、スポンジ層3の幅方向端部3xを、隣接するスポンジ層3の幅方向端部3xとタイヤ放射方向Rに互いに重なり合う形状にするのがよい。これにより、帯状シ-ル層5’をタイヤ周方向に巻回しながらタイヤ内壁面1Xに圧着する際に、隣接する帯状シ-ル層5’間に、シール機能を損なうような隙間が発生するのを防止することができる。」 (3)引用文献3 当審の拒絶の理由に「引用文献3」として示され、本願の優先日前に電気通信回路を通じて利用可能になった国際公開第2009/014082号には、次の事項が記載されている。 「[0018] 遠心力によりシート状に拡散展延に供するときのシーラント材やカバー材の粘度としては100~5000Pa・sにすることが好ましく、さらに好ましくは、500~3000Pa・sにするのがよい。シーラント材やカバー材の粘度が100Pa・sよりも低いと、空気入りタイヤの回転を停止したときシーラント層やカバーシート層が重力により流動して膜厚を維持することができず、シーラント層やカバーシート層の厚さに乱れを生ずるようになる。また、5000Pa・sよりも高くなると、遠心力によるシート状の拡散展延が難しくなる。」 3 引用発明 上記2(1)からみて、引用文献1には次の発明(引用文献1における従来技術に対応。以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「シール材によるパンク防止層をタイヤのクラウン部の内面に付加するタイヤであって、 前記シール材によるパンク防止層は、連続して押出されたシール材の帯を螺旋状にタイヤに付加することによって構成されているタイヤ。」 4 対比・判断 (1)本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「シール材によるパンク防止層」は、前者の「シーラント層」に相当し、同様に、「シール材」は「シーラント材」に相当する。また、後者の「タイヤ」は空気入りであることが技術的に明らかであるので、前者の「空気入りタイヤ」に相当する。 (2)後者の「シール材によるパンク防止層をタイヤのクラウン部の内面に付加するタイヤ」という事項について、クラウン部の内面はタイヤ半径方向内側にあることは技術的に明らかであるから、後者の上記事項と前者の「インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤ」という事項とは、「タイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤ」の限度で一致するといえる。 (3)後者の「前記シール材によるパンク防止層は、連続して押出されたシール材の帯を螺旋状にタイヤに付加することによって構成されている」という事項について、「帯」は「紐」の一形態といえ、当該「帯」はタイヤの内周面に沿って配置されていることは技術的に明らかであるから、後者の上記事項は、前者の「前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されており」という事項に相当するといえる。 (4)後者の「シール材によるパンク防止層」が他の部材を含むことの記載は引用文献1にはなく、「シール材」のみによって構成されていることは技術的に明らかである。したがって、後者の「シール材によるパンク防止層」は、前者の「前記シーラント層がシーラント材のみによって構成されており」という事項を実質的に有しているといえる。 (5)してみると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。 [一致点] 「タイヤ半径方向内側にシーラント層を有する空気入りタイヤであって、 前記シーラント層が、タイヤの内周面に沿って連続的にらせん状に配置された略紐状形状のシーラント材によって構成されており、 前記シーラント層がシーラント材のみによって構成されている空気入りタイヤ。」 [相違点1] 「シーラント層」の配置箇所について、本願発明が「インナーライナーのタイヤ半径方向内側」であるのに対し、引用発明は「タイヤのクラウン部の内面」であるが、当該タイヤがインナーライナーを有しているのかどうか明らかでない点。 [相違点2] 「シーラント材」の配置形態について、本願発明が「前記らせん状に配置された略紐状形状のシーラント材同士が、幅方向に重ならず、隙間なく配置されて」いるのに対し、引用発明は当該事項を有しているのかどうか明らかでない点。 [相違点3] 「シーラント材の幅」について、本願発明が「0.8~7.0mm」であるのに対し、引用発明は具体的な値が明らかでない点。 [相違点4] 「シーラント材の粘度」について、本願発明が「(40℃)」で「3000~70000Pa・s」であるのに対し、引用発明は具体的な値が明らかでない点。 (6)次に、上記相違点について検討する。 [相違点1]について 空気入りタイヤにおいて、タイヤの内面にインナーライナーを設けることは、特段文献を例示するまでもなく、周知・慣用の手段であり、引用発明においてもこのような手段を採用することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得た程度のことである。 したがって、引用発明において、上記相違点1に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 [相違点2]について まず、引用発明の「シール材」においてもその間に隙間があればシール機能を損なう恐れがあることは技術的に明らかといえる。 そして、上記2(2)より、引用文献2には、「帯状シール層」(シーラント材)の間に隙間があるとシール機能を損なうので好ましくないことが示されており、そして、【図2】、【図5】に示される幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても同様に隙間が好ましくないことは技術的に明らかであって、【図1】、【図4】に示される帯状シール層の間にも特段隙間を設けるようには記載されていない。そうすると、【図7】(a)、(b)に示される例ほどの隙間の発生の防止の効果は得られないとしても、「帯状シール層」に本来期待されるシール機能を考慮すれば、【図2】等に示される例の幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても、帯状シール層間に隙間を有さないように配置されていると理解できる。 ここで、引用発明の「連続して押出されたシール材の帯」の縁を、例えば引用文献1における「本発明」の説明に対応する第5ページ左上欄第11~14行に示されるように重ねてプレスすれば、隣り合った帯同士間のシール性の向上等が期待できたとしてもその分余計にシール材の材料増になるし、タイヤ全体として重量増になることは明らかであるから、メリット・デメリットを勘案し、さらに、上記引用文献2に記載された技術的事項の示唆に基いて、引用発明における「シール材」同士を幅方向に重ならず、隙間無く配置するようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。 したがって、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 [相違点3]について シーラント材の具体的な幅に関して、本願明細書の段落【0116】に「シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。」と記載されている。 ここで、シーラント材の幅が細すぎれば巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するのは構成上自明のことであり、当該幅が太すぎれば特段対策を取らない限り重量アンバランスが発生しやすくなるのも構成上自明のことであって、本願明細書全体をみても、上記相違点3に係る当該幅の数値範囲の上限値または下限値に特に臨界的意義があるとも認められず、製造効率と重量アンバランスの兼ね合いから単に好適な範囲を特定したものと認められる。 そして、引用発明においても、その実施にあたりシール材の帯の具体的な幅を決定する必要があるところ、本願発明と同様にシール材の帯を螺旋状に配置するものであるから、同様の課題を内包していることは明らかであって、製造効率の低下や重量バランスの低下が生じないように実験等に基づき好適な範囲を設定して、上記相違点3に係る本願発明の数値範囲内のものとすることは、当業者であれば所望により適宜なし得たことである。 したがって、引用発明において、上記相違点3に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 [相違点4]について シーラント材の具体的な粘度に関して、本願明細書の段落【0060】に「シーラント材の粘度(40℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、また、好ましくは70000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、70000Pa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。」との記載がある。 また、本願明細書に「シーラント材の粘度(40℃)」とシーラント材の塗布時の粘度及び温度との関係の記載はなく、その段落【0077】に「連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70~150℃であることが好ましく、90~130℃であることがより好ましい。」、同【0079】に「連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルを接続することが好ましい。」、同【0135】に「シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40~100℃、より好ましくは50~70℃である。」と記載されていること、及び、排出口とノズルの間でさらに温度をコントロールするような事項の記載は本願明細書にも図面にもないことからみても、「40℃」という温度は、タイヤへの塗布時のシーラント材の温度を示すものではないことが理解できる。また、本願明細書には、タイヤの使用時の温度との関係の記載もないことから、使用時の何らかの特定状態の温度を示すものでもないことも理解できる。 そして、物の発明は、物の構造、特性で規定されること、及び、本願明細書の段落【0060】の「なお、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。」との記載からみても、「3000~70000Pa・s」という粘度の数値範囲は、塗布時の粘度を厳密に特定するものでなく、また、タイヤの使用時の何らかの特定状態の温度における粘度でもなく、単に物性として40℃においてそのような粘度を有する程度の意味を特定するにすぎないことが明らかといえる。 また、一般に、シーラント材の粘度が低すぎればシーラント材が流動して膜厚が維持ができなくなることは自明のことであり、当該粘度が高すぎればノズルからシーラント材を吐出させることが困難となることも自明のことであって、本願明細書全体をみても、上記相違点4に係る当該粘度の数値範囲の上限値または下限値に特に臨界的意義があるとも認められず、流動防止と製造容易性との兼ね合いから単に好適な範囲を特定したにすぎないものと認められる。 ここで、上記2(3)より、引用文献3には、シーラント材の粘度を低くすると、シーラント層が流動して膜厚が維持できなくなることが示されており、また、温度の明示はないものの拡散展延に供するときのシーラント材の粘度が、5000Pa・sにおいても遠心力によるシート状の拡散展延が可能な程度の流動をすることが示されているといえる。 そして、引用発明の「シール材」においても、粘度が低ければ流動してしまい膜厚を維持できなくなることは自明のことといえ、上記引用文献3に記載された技術的事項の示唆に基づき、そのようにならない程度の粘度を設定することは、当業者であれば容易に想到し得たことであり、それを40℃における粘度で特定としたことも格別のことではなく、引用発明において、「シール材」の粘度を上記相違点4に係る本願発明の数値範囲内のものとすることは、当業者であれば所望により適宜設定し得たことである。 したがって、引用発明において、上記相違点4に係る本願発明の事項を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 そして、本願発明が奏する作用効果についても、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知・慣用の手段から予測し得る範囲内のものであって、格別でない。 よって、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知・慣用の手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 意見書の主張について 請求人は、平成29年10月5日に提出の意見書において、次の主張をしているので以下検討する。 (1)「(3-2-1)」について ア (3-2-1-1)において、「引用発明と引用文献2に記載の発明は技術分野が異なるため、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する動機付けがないことは明らかです。また仮に技術分野が同じと判断される場合であっても、スポンジ層に含浸される粘着材は、スポンジ層に含浸されることのない粘着材よりも粘度が低く、両者で使用される粘着材の粘度は大きく異なり、すなわち、両者で使用される粘着材の作用・機能は全く異なるため、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する動機付けがないことも明らかです。また、引用文献1、2のいずれにも、本願発明の構成を示唆する記載はなく、引用文献中に、本願発明の構成に想到する示唆がないため、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する動機付けがないことも明らかです。」と主張する。 しかしながら、上記4(6)における「[相違点2]について」で述べたように、当審が指摘するのは、引用発明に引用文献2の特許請求の範囲に係る発明ないし実施例そのものを適用するという趣旨のものではなく、引用文献2には「帯状シール層」(シーラント材)の間に隙間があるとシール機能を損なうので好ましくないこと及び幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても帯状シール層間に隙間を有さないように配置されていることが示唆されているということであり、当業者であれば、引用文献2の記載からそのような示唆を把握できることは明らかであるので、上記主張は採用できない。 イ (3-2-1-2-1)において、引用文献1における「本発明」に関する各記載を挙げて「引用文献1には、シーラント材同士を幅方向に重ならせることを必須の構成とした発明が記載されているにすぎません。」とし「仮に、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する動機付けがあると判断される場合であっても、本願発明には容易に想到しないことは明らかです。」と主張する。 しかしながら、上記2(1)において引用文献1の参照箇所として「第3ページ左上欄第9~14行」と記載し、上記3における引用発明の認定に際し「引用文献1における従来技術に対応」と記載しているように、当審が「引用発明」として指摘するのは、引用文献1の特許請求の範囲に係る発明ないし実施例に基づくものではなく、従来技術から把握される発明であって、当業者であれば、引用文献1の記載からそのような「引用発明」を把握できることは明らかであるので、上記主張は採用できない。 ウ (3-2-1-2-2)において、「このような引用文献2に接した当業者であれば、動的バランスを改善することを課題とする引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する際に、動的バランスを改善することを目的として、シーラント材をスポンジ層に含浸させたものとすることは明らかであり、本願発明のように「シーラント層がシーラント材のみによって構成」することは到底考えられません。このように、仮に、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する動機付けがあると判断される場合であっても、本願発明には容易に想到しないことは明らかです。」と主張する。 しかしながら、上記イで述べたように、当審が「引用発明」と認定しているのは、引用文献1の従来技術から把握される発明であり、上記アで述べたように、引用文献2から把握するのは、「帯状シール層」(シーラント材)の間に隙間があるとシール機能を損なうので好ましくないこと及び幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても帯状シール層間に隙間を有さないように配置されていることが示唆されているということであるので、上記主張は採用できない。 (2)「(3-2-2)」について 「相違点3、4の構成を具備することにより顕著な効果が得られ、相違点3、4の構成が適宜設計しえた程度のものではない」として、表2、3に記載される比較実験例、実験例を示し、「特定の粘度及び幅を有するシーラント材を用いることにより、特定の粘度のみを有するシーラント材、特定の幅のみを有するシーラント材をそれぞれ用いた場合の性能の改善効果を足し合わせた以上の効果が得られており、シーラント材の粘度及び幅を共に特定範囲内とすることにより、相乗効果が生じている(特に、シール性の改善において相乗効果が生じている)ことが分かります。」と主張している。 しかしながら、上記4(6)「[相違点3]について」及び「[相違点4]について」で述べたように、本願明細書には、シーラント材の具体的な「幅」及び「粘度」について、それぞれの作用効果が記載されているだけであって、相乗効果なるものについては記載がないばかりか、数値範囲については単に「好ましい」ものとして記載されており、具体的な値に基づく実験結果については何ら記載がない。 そうすると、本願明細書は、請求人が主張するシール性についての「相乗効果」を認識できる程度に記載されたものとはいえず、また、それを推認できるような記載があるともいえず、当該実験結果に係る主張は、本願明細書に基づくものではなく、参酌することはできない。 したがって、上記主張は採用できない。 なお、一応、当該実験結果を検討してみると、<用いた各種薬品>、<シーラントタイヤの製造>に示される特定条件のものにおいて、表2では、「幅」と「粘度(40℃)」の両者がそれぞれの数値範囲の下限値ではなく、それに近い領域において実験を行っており、表3では、同上限値そのものではなく、それに近い領域において実験を行っている。 そして、「粘度(40℃)」が2000Pa・sの比較実験例1と4000Pa・sの比較実験例2をみると、「シール性」がいずれも100となっており、さらに、「粘度(40℃)」が2000Pa・sの比較実験例3をみると「シール性」が150となっているが、本願明細書の段落【0060】の「3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。」という記載と整合していない。仮に「幅」と「粘度(40℃)」の何らかの相関関係によりシール性が向上するというのであれば、そのようなことは本願の請求項1にも本願明細書にも何ら裏付けとなる記載はない。 さらに、上述したように、「幅」と「粘度(40℃)」の両者の下限値付近、上限値付近のみが示されているが、「幅」の下限値(ないしその付近)と「粘度(40℃)」の上限値(ないしその付近)、あるいは、その逆の組み合わせも含めた範囲において、「相乗効果」なるものが生じていることは示されていない。 加えて、「粘度(40℃)」は、当該実験結果においても塗布される時点での粘度ではない(タイヤの予熱温度40℃、順次調整されるシーラント材の温度100℃)ものであるところ、同じ組成のシーラント材であっても、塗布時の温度によって粘度が変化することは明らかであるし、また、組成の異なるシーラント材同士で40℃における粘度が同じであっても、実際の塗布時の温度が40℃でない時、その組成の違いにより粘度が異なる場合があることも想定され、そのような場合では、段落【0060】に記載の膜厚の維持等の作用に影響を及ぼすものと解されるが、それらの具体的な塗布時の温度や具体的な組成の条件については、請求項1には特定がないし、本願明細書においても、「粘度(40℃)」の値については、単に好ましい、もしくは、超えると悪化するおそれがある程度の記載しかない。 以上のことを総合すると、シーラント材の塗布時の温度や具体的な組成の特定がなく、かつ、「幅」と「粘度(40℃)」の数値範囲がそれぞれ別個に特定されているだけの本願発明において、当該数値範囲の全範囲で「相乗効果」なるものが発揮されることが示されているとはいえず、仮に当該実験結果を参酌したとしても、本願発明が当業者が予測できないような格別な作用効果を奏することが示されているとはいえない。 (3)「(3-3)」について ア (3-3-1)において、「すなわち、引用文献2には、「らせん状に配置された略紐状形状のシーラント材同士を、幅方向に重ならず、隙間なく配置」するよりも、シーラント材同士を幅方向に重ならせて隙間なく配置することが好ましいことが記載されています。このような引用文献2に接した当業者であれば、引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する際に、シール機能を損なうような隙間が発生するのを防止することを目的として、シーラント材同士を幅方向に重ならせて隙間なく配置することは明らかであり、本願発明のように「らせん状に配置された略紐状形状のシーラント材同士を、幅方向に重ならず、隙間なく配置」することは到底考えられません。このように、引用発明において、上記構造とすることに阻害要因が存在することは明らかです。」と主張している。 しかしながら、上記(1)アで述べたように、当審が指摘するのは、引用発明に引用文献2の特許請求の範囲に係る発明ないし実施例そのものを適用するという趣旨のものではなく、引用文献2から把握するのは、「帯状シール層」(シーラント材)の間に隙間があるとシール機能を損なうので好ましくないこと及び幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても帯状シール層間に隙間を有さないように配置されていることが示唆されているということである。そして、引用文献2に記載された実施例を検討しても、「スポンジ層3の幅方向端部3xを、隣接するスポンジ層3の幅方向端部3xとタイヤ放射方向Rに互いに重なり合う形状にする」(段落【0039】)ものとした【図7】(a)、(b)に係る実施例が記載されているとしても、そのように重なり合う形状にしていないものも【図1】、【図2】、【図4】、【図5】に係る実施例として記載されていることからみても、阻害要因が存在するとはいえない。 したがって、上記主張は採用できない。 イ (3-3-2)において、「引用文献1には、シーラント材同士を幅方向に重ならせることを必須の構成とした発明が記載されているにすぎず、引用文献1に記載の発明では、シーラント材同士の重なりにより、タイヤのバランスを改善するという引用文献1の課題を解決しています。してみると、引用文献1に接した当業者が、動的バランスを改善することを課題とする引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する際に、動的バランスを改善することを目的として、シーラント材同士を幅方向に重ならせて隙間なく配置することは明らかであり、本願発明のように「らせん状に配置された略紐状形状のシーラント材同士を、幅方向に重ならず、隙間なく配置」することは到底考えられません。このように、引用発明において、上記構造とすることに阻害要因が存在することは明らかです。」と主張している。 しかしながら、上記(1)イで述べたように、当審が「引用発明」として指摘するのは、引用文献1の特許請求の範囲に係る発明ないし実施例に基づくものではなく、従来技術から把握される発明である。 したがって、上記主張は採用できない。 (4)「(3-4)」について 「引用文献2に記載の発明では、シーラント材をスポンジ層に含浸させることにより、動的バランスを改善しています。このような引用文献2に接した当業者であれば、動的バランスを改善することを課題とする引用発明において、引用文献2に記載されている技術を採用する際に、動的バランスを改善することを目的として、シーラント材をスポンジ層に含浸させたものとすることは明らかであり、本願発明のように「シーラント層がシーラント材のみによって構成」することは到底考えられません。このように、引用発明において、上記構造とすることに阻害要因が存在することは明らかです。」と主張している。 しかしながら、上記(1)イで述べたように、当審が「引用発明」と認定しているのは、引用文献1の従来技術から把握される発明であり、上記(1)アで述べたように、引用文献2から把握するのは、「帯状シール層」(シーラント材)の間に隙間があるとシール機能を損なうので好ましくないこと及び幅方向に重ならない断面矩形状の帯状シール層においても帯状シール層間に隙間を有さないように配置されていることが示唆されているということである。 したがって、上記主張は採用できない。 (5)「(3-5)」について 「上記表2、3において示されている通り、相違点3、4の構成(特定の粘度及び幅を有するシーラント材)を採用することにより、良好なユニフォミティー、流動性、シール性が得られ、特に、シール性を相乗的に向上できるという効果を奏するものです。本願特定の構成について一切記載されていない引用文献1~3をもとに、前記効果を奏することを予測することは当業者でも不可能です。従って、本願発明で当業者の予測を超える顕著な効果を奏していることも明らかです。」と主張している。 しかしながら、当該主張は実質的に上記(2)と同様内容のものであり、当審の判断も上記(2)と同様である。 したがって、上記主張は採用できない。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知・慣用の手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2017-004691

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  • 2024-004841拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)融合タンパク質、物質製造方法、ベクター、形質転換細胞、空気入りタイヤの製造方法及…
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2025-004885拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)バドミントンラケット
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-017650拒絶査定不服審判 / 2026-05-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)重荷重用タイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-015062拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-006279拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 請求不成立空気入りタイヤ及びその製造方法
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
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同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2022-020045拒絶査定不服審判 / 2024-07-18 / 請求不成立タイヤ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2022-020043拒絶査定不服審判 / 2024-01-29 / 請求不成立タイヤ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2018-008713拒絶査定不服審判 / 2019-06-03 / 請求不成立空気入りタイヤ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2018-012747拒絶査定不服審判 / 2019-04-09 / 請求不成立空気入りタイヤ
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2017-006367拒絶査定不服審判 / 2018-05-21 / 請求不成立タイヤ
    共通の条文: 特許法29条2項
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同じ論点・分野の審決(審決分類)191件(121・B60C)
  • 2024-017650拒絶査定不服審判 / 2026-05-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)重荷重用タイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C
  • 2024-004258拒絶査定不服審判 / 2026-03-12 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C
  • 2024-016314拒絶査定不服審判 / 2026-01-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C
  • 2023-018119拒絶査定不服審判 / 2026-01-14 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C
  • 2024-009055拒絶査定不服審判 / 2026-01-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)空気入りタイヤ
    共通の審決分類: 121・B60C

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