特許拒絶査定不服審判
2022-020043
タイヤ
- 審判番号
- 2022-020043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-235203
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2024年01月29日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ブリヂストン
- 【請求人代理人】三好 秀和
- 審判長/審判官
- 審判長 磯貝 香苗
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P18 .113-Z (B60C) / P18 .121-Z (B60C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-235203「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日出願公開、特開2020- 97261〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月17日を出願日とする出願であって、令和4年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月7日付けで拒絶査定がされ、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし8に係る発明は、令和4年7月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次の事項により特定されるものである。
「【請求項1】
路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有し、
前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下であるタイヤ。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由はおおむね次の理由を含むものである。
1 理由1(新規性)
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献1ないし5及び7(以下、順に「引用文献1」のようにいう。)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
2 理由2(進歩性)
本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1ないし5及び7に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2008-195148号公報
2.国際公開第2011/065018号
3.特開2003-11614号公報
4.特開平9-207516号公報
5.特開2008-80993号公報
7.国際公開第03/061991号
第4 当審の判断
1 引用文献1ないし5及び7に記載された事項等
(1)引用文献1に記載された事項等
ア 引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付したものである。他の文献についても同様。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するもので、特に、高速走行時におけるタイヤの耐久性能及び偏摩耗特性に優れた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能乗用車用タイヤではタイヤの回転速度が高速となるため、遠心力の影響が大きく、タイヤのトレッド部分が外側に膨張してしまい、そのため、操縦安定性能が低下してしまう場合がある。
そこで、上記膨張を抑制するため、図7に示すような、タイヤトレッド部51の内側に配置された2つのベルト層52a,52bから成る交錯ベルト52の外側に、その全幅に亘って、有機繊維やスチールから成る補強部材(スパイラル部材)を、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層53を備えた構成の空気入りタイヤ50が開発されている。なお、同図において、符号54は、タイヤの骨格部材であるボディプライで、一般の空気入りタイヤにおいては、上記交錯ベルト52は上記ボディプライ54のタイヤ径方向外側に配置される(例えば、特許文献1参照)。
また、トラックバス用のタイヤや自動二輪車用のタイヤにおいても、近年は、同様の構造のタイヤが見られるようになってきている。
上記タイヤ赤道面に沿ってスパイラル状に巻き付けられる補強部材としては、ナイロン繊維や芳香族ポリアミド、スチールなどが用いられているが、中でも、芳香族ポリアミドやスチールは、高温時においても伸長せず、トレッド部分の膨張を効果的に抑制することができるため、注目されている。更に、芳香族ポリアミドはスチールに比べて軽量であるため、タイヤ重量を小さくすることができるので、操縦安定性能の向上の点から注目度が高い。
また、これらの補強部材をタイヤクラウン部に巻き付けた場合には、いわゆる「たが」効果により、補強部材がタイヤクラウン部を押さえつけるので、タイヤが高速で回転した場合でも、タイヤが遠心力で膨らむことがない。したがって、操縦安定性能と耐久性能とをともに高めることができる。」
・「【実施例】
【0017】
タイヤサイズ225/50R16の乗用車用の高性能タイヤにつき、図1~図3に示した、ボディプライがタイヤクラウン部において最外層となる構成の本発明によるタイヤ(本発明1~3)と、ボディプライが最内層となる従来のタイヤ(従来例)とをそれぞれ準備した。なお、従来のタイヤについては、図7のものではなく、図6に示すように、本発明1~3と同様に、ボディプライをビードコア中で係止する構造のものを用いた。
これらのタイヤは、いずれも、1対のビードコアにトロイド状をなして跨るボディプライが1枚存在する。このボディプライは直径0.6mmの撚ったナイロンコードを使用している。打込み間隔はタイヤトレッドセンター部で50本/50mmであり、コード角はラジアル(赤道方向に対する角度が90度)である。このボディプライはビードコア内部で係止されており、ビードコアがボディプライの両側からボディプライを固定する。
また、タイヤクラウン部分(トレッド部分)を補強する2枚の交錯ベルト層は、それぞれ、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、赤道面に対して40度傾けて、互いに交錯させて配置したもので、打込み間隔は35本/50mmである。
これらのタイヤのトレッド幅は225mmであり、交錯ベルトの径方向内側にある交錯ベルト層の幅は220mm、径方向外側にあるベルト層の幅は210mmである。
【0018】
従来例のタイヤでは、スパイラル補強層は、直径が0.7mmの撚った芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)コードを、打込み間隔50本/50mmで配置している。幅は230mmであり、交錯ベルトの外側に、交錯ベルトの全幅について1層の補強層で覆うように配置されている。つまり、最内層にボディプライ、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層がスパイラル補強層である。スパイラル補強層の製造は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし、これをタイヤ成型時に交錯ベルト上に巻き付けて製造した。
また、トレッド層は厚みが8mmのゴムであり、所定の溝が配置されている。
本発明1のタイヤは、図1に示すように、最内層に2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、次にスパイラル補強層、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
一方、本発明2のタイヤでは、図2に示すように、最内層にスパイラル補強層、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
また、本発明3のタイヤは、図3に示すように、スパイラル補強層と最外層のボディプライとの間に、厚みが0.7mmの緩衝ゴム層を配置したもので、この緩衝ゴム層の材質はボディプライのコーティングゴムと同種のゴムである。また、上記緩衝ゴム層の幅は200mmである。」
・「【図6】
[図:0001408590000001.jpg]
」
・「【図7】
[図:0001408590000002.jpg]
」
イ 引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を、特に従来例に関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
<引用発明1>
「タイヤトレッド部51の内側に配置された2つのベルト層52a,52bから成る交錯ベルト52の外側に、その全幅に亘って、芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材を、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層53を備えた構成の空気入りタイヤ50。」
(2)引用文献2に記載された事項等
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0011] 更に、本発明の空気入りタイヤは、前記スパイラルコードが芳香族ポリアミド、ポリケトン、ポリエチレンナフタレートまたはポリエチレンテレフタレート製のコードであることが好ましい。芳香族ポリアミド(例えば、ケブラー(商標))、ポリケトン、ポリエチレンナフタレートまたはポリエチレンテレフタレート製のコードは、強度が比較的高いからである。また、軽量であるため、タイヤの重量を低減して操縦安定性を向上させることができるからである。」
・「[0015] 以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤの一例の空気入りタイヤ10は、その幅方向断面を図1に示すように、トレッド部1と、トレッド部1の側部からタイヤ径方向内方に延びる一対のサイドウォール部2と、サイドウォール部2のタイヤ径方向内方にそれぞれ連なる一対のビード部3とを備えている。」
・「[0021] 周方向ベルト層8のスパイラルコード81としては、例えば、スチールコードの他に、芳香族ポリアミド、ポリケトン、ポリエチレンナフタレートまたはポリエチレンテレフタレート等からなる有機繊維を撚った有機繊維コードを用いることができる。
[0022] スパイラルコード81は、周方向ベルト層8内に、タイヤ赤道面Eに対して略平行な傾斜角度A3(0°超5°以下)で配列するように螺旋状に巻かれて埋設されている。ここで、傾斜角度A3は、例えば0.1~0.4°とすることができる。」
・「[0038]
[図:0001408590000003.jpg]
」
・「[請求項1] トロイド状に延びる少なくとも1プライからなるカーカスと、
前記カーカスのクラウン部外周側に、コードがタイヤ赤道面を挟んで相互に交差する方向に傾斜して延びる2層の傾斜ベルト層からなる交差ベルトと、
前記交差ベルトのタイヤ径方向内方および外方のいずれかに、スパイラルコードが、タイヤ赤道面に対し、5°以下の傾斜角度で螺旋巻回することにより配列された周方向ベルト層と、
を備え、
前記交差ベルトを構成する2層の傾斜ベルト層のうち、第1の傾斜ベルト層のコードの傾斜角度が、タイヤ赤道面に対し、鋭角側から測定して45°以上90°以下の範囲であり、
前記交差ベルトを構成する2層の傾斜ベルト層のうち、第2の傾斜ベルト層のコードの傾斜角度が、タイヤ赤道面に対し、前記第1の傾斜ベルト層のコードの傾斜角度とは反対向きに測定して15°以上45°以下の範囲であり、且つ、絶対値で見て、前記第1の傾斜ベルト層のコードの傾斜角度よりも小さいことを特徴とする、空気入りタイヤ。」
・「[図1]
[図:0001408590000004.jpg]
」
・「[図2]
[図:0001408590000005.jpg]
」
イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2に記載された事項を、特に[請求項1]、[0011]、[0015]、[0021]及び[0038]の[表1]の実施例11に関して整理すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
<引用発明2>
「トレッド部と、
トロイド状に延びる少なくとも1プライからなるカーカスと、
前記カーカスのクラウン部外周側に、コードがタイヤ赤道面を挟んで相互に交差する方向に傾斜して延びる2層の傾斜ベルト層からなる交差ベルトと、
前記交差ベルトのタイヤ径方向内方および外方のいずれかに、ケブラー(商標)からなる有機繊維を撚ったスパイラルコードが、タイヤ赤道面に対し、5°以下の傾斜角度で螺旋巻回することにより配列された周方向ベルト層と、 を備えた、空気入りタイヤ。」
(3)引用文献3に記載された事項等
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「二輪車用タイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に、1本乃至並列した複数本のコ-ドを被覆ゴム中に埋設した帯状体を、略タイヤ赤道方向に向かう角度をなして螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き回し、コードがカーカス層円弧上に沿ってタイヤ幅方向に並列して配設されてなるスパイラルベルト層を有する二輪車用タイヤであって、該スパイラルベルト層が、
タイヤ回転軸を含むタイヤ断面上で、中央区域(AからD)では1層で、両肩区域(AからB及びCからD)では2層構造をなし、且つ、
一方のベルト端(B)とタイヤ赤道との間のある位置(A)から上記帯状体を巻き始めて、まずタイヤ赤道から離れる方向に順次巻き付け、該ベルト端(B)で折り返して、次いで該ベルト端(B)から他方のベルト端(C)まで巻き付け、このベルト端(C)で折り返して再び赤道に向かって巻き付け、最後にこのベルト端(C)とタイヤ赤道との間のある位置(D)で巻き終わるように構成されている、
ことを特徴とする二輪車用タイヤ。」
・「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前記公報の発明技術を本願の対象とする所謂スパイラルベルト構造のラジアルタイヤに適応した場合は、タイヤ接地面に於いて、接地面に平行するトレッド、ベルト、プライカ-カス等を積層したタイヤ部材をその面内で曲げる変形に対する剛性(即ち、接地面で遠心力に対抗する摩擦力を受ける時、タイヤはこの様な面内での曲げ変形を受ける。以後面内曲げ剛性と呼称する。)が十分に大きくならずスパイラルベルト構造の欠点である旋回時の操縦性能低下を挽回し得ないこと、更には前記両側区域のトレッドの一部を内層ゴムと外層ゴムの2層に形成するため、タイヤ製造上の煩雑さが免れないという問題点があった。」
・「【0014】本発明で上記帯状体に埋設されるコードとしては、特に制限はなく二輪車両及びその使用条件に応じて適宜選択されるが、周方向剛性を特に高く設定することが重要な二輪車タイヤ用には、スチール繊維からなるコードを用いるのが好ましい。一方、周方向剛性よりもタイヤ重量を軽量化することが重要視される二輪車タイヤ用には、有機繊維からなるコードを用いるのが好ましい。又、両性能とも重要視する二輪車タイヤには、スチール繊維と有機繊維とを(帯状体の内で)組み合わせたコードを用いるのが好ましい。」
・「【0016】前記有機繊維からなるコードとしては、例えば、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、レイヨン繊維等のタイヤ部材補強用に通常用いられる有機繊維コードを挙げることができ、これらの中でも特に、芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラー」)やポリエチレン-2,6-ナフタレート及び高弾性率ポリエステル繊維からなるコードが、その引張り弾性率の高さ故に好ましい。」
・「【0018】
【実施例】以下に、本発明を実施例を用いて具体的に説明する。第4図の10は、本発明に従うスパイラルベルト層を有する二輪車用タイヤのタイヤ回転軸を含む子午線断面図を示し、本タイヤのサイズは180/55ZR17である。1対のビードコア-14にトロイド状をなして跨るタイヤカーカス層12を補強する本発明の前記スパイラルベルト層は、カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に、2本の並列したコ?ドを被覆ゴム中に埋設した帯状体を、略タイヤ赤道方向に向かう角度をなして螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き回し、コードがカーカス円弧上に沿ってタイヤ幅方向に並列して配置され、中央区域(AからD)では1層で、両肩区域(AからB及びCからD)では2層構造をなして配設されている。
【0019】実施例1の上記帯状体内のコードは、1500dの芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラ-」)の2本撚りコードであり、実施例2の帯状体内コードは、0.21φのスチール繊維の1×5撚りコードである。また、実施例1の各層内のコード打ち込み本数は、中央領域も両肩領域も32本/50mmであり、実施例2の層内コード打ち込み本数は、中央領域も両肩領域も20本/50mmである。」
・「【0024】
【表1】
[図:0001408590000006.jpg]
」
・「
[図:0001408590000007.jpg]
」
イ 引用文献3に記載された発明
引用文献3に記載された事項を、特に【請求項1】、【0005】、【0014】、【0016】、【0019】及び【0024】の実施例1に関して整理すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。
<引用発明3>
「タイヤ接地面に於いて、接地面に平行するトレッドと、カーカス層のクラウン部のタイヤ径方向外側に、芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラ-」)の2本撚りコードを被覆ゴム中に埋設した帯状体を、略タイヤ赤道方向に向かう角度をなして螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き回し、コードがカーカス層円弧上に沿ってタイヤ幅方向に並列して配設されてなるスパイラルベルト層を有する二輪車用タイヤ。」
(4)引用文献4に記載された事項等
ア 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、「ラジアルタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 タイヤ赤道面に対し実質的に90度をなすコードを含む少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、該カーカスの半径方向外側に配置された、複数本のコードを被覆ゴム中に埋設してなる2枚のゴム被覆コード層を、そのコード方向がタイヤの周方向に対し鋭角の角度でタイヤ赤道線を挟み互いに逆方向になるように積層してなる主ベルトとを具えるラジアルタイヤにおいて、(1)該主ベルトのコード方向がタイヤの周方向に対し42~66度の角度であり、(2)該主ベルトの半径方向外側に、少なくとも1枚の補強ベルト層を設け、該補強ベルト層のコードの方向が周方向に対し0~5度である、ことを特徴とするラジアルタイヤ。」
・「【0016】なお、前記補強ベルト層を形成するコードとしてはスチールコード、スチールフィラメント又は芳香族ポリアミドコードを用いてもよい。」
・「【0017】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施例として試作したタイヤは、図3に示すタイヤで、タイヤサイズは195/65R14であり、このタイヤの主ベルト層に使用されたコードは弾性率16,000kg/mm2のスチールコードで、ベルト層のベルト弾性率は4,800kg/mm2、ベルト層1は幅180mm、ベルト層2は幅170mm、補強ベルト層3の幅は190mmとしてある。そして、実施例の補強ベルト層はベルト弾性率1,000kg/mm2のケブラーベルト及びベルト弾性率4,800kg/mm2の波状スチールベルトを用いてある。表1に示すようにベルトの角度を変えて12種類試作した。」
・「【0020】
【表1】
[図:0001408590000008.jpg]
」
・「
[図:0001408590000009.jpg]
」
イ 引用文献4に記載された発明
引用文献4に記載された事項を、特に【請求項1】、【0016】、【0017】並びに【0020】の【表1】の実施例1、2及び5に関して整理すると、引用文献4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認める。
<引用発明4>
「複数本のコードを被覆ゴム中に埋設してなる2枚のゴム被覆コード層を、そのコード方向がタイヤの周方向に対し鋭角の角度でタイヤ赤道線を挟み互いに逆方向になるように積層してなる主ベルトと、該主ベルトの半径方向外側に、少なくとも1枚の補強ベルト層を設け、該補強ベルト層のコードの方向が周方向に対し0~5度であり、補強ベルト層のコードの材質はケブラーである、ラジアルタイヤ。」
(5)引用文献5に記載された事項等
ア 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
一対のビードコアを跨いで配置されたボディプライと、
該ボディプライのタイヤ径方向外側に配置され、かつベルトコードがタイヤ赤道面に対して所定の傾斜角度を持つ少なくとも1枚のベルト層と、
該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置され、かつタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回された補強コードを有するスパイラル補強層とを備え、
最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分の前記スパイラル補強層は、タイヤ径方向に重なる複数層とされ、
最も幅広の前記ベルト層の端部を覆う部分に対応する複数層のスパイラル補強層の間の少なくとも1つに緩衝ゴム層が介装されていることを特徴とする空気入りタイヤ。」
・「<従来例>
【0039】
図4および図5はそれぞれ従来例のタイヤを示す。従来例のタイヤおよび実施例のタイヤとしては、タイヤサイズ245/45R18(タイヤの外径677mm、リム幅8.5インチ、リム径18インチ)のものを用いた。
タイヤは、カーカス層が2枚あるものを用いた。力一カス14には直径0.5mmのよったナイロンコードを使用した。カーカス14を構成するカーカス層は2枚とし、それらはいずれもラジアル(タイヤ周方向に対する角度が90度)であるものを用いた。
【0040】
クラウン部5(トレッド部)を補強する2枚のベル卜層26,27は、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのベルトコードを、赤道方向に対して45度傾けて、お互いに交錯させて配置したものを用いた。打ち込み間隔は35本/50mmとした。トレッド幅は245mmであり、内側ベルト層26の幅は240mm、外側ベルト層27の幅は220mmとした。
これらのベルト層28の上には内外2枚のスパイラル補強層31、32を配置した。内側スパイラル補強層31はトレッド全面を覆うキャップ構造のものとし、以下この内側スパイラル補強層31をキャップ層とも呼ぶこととする。また、外側スパイラル補強層32は、両ショルダー部を覆うレイヤー構造のもとし、以下この外側スパイラル補強層32をレイヤー層と呼ぶこととする。
【0041】
キャップ層31およびレイヤー層32としては、直径0.7mmの拠った芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コ-ドを、打ち込み間隔50本/50mmで配置したものを用いた。ケブラーの撚り数は30回/100mmとした(コード長さ100mmの中に30回の撚りがあるとの意)。
【0042】
・・・(略)・・・
<実施例1>
【0043】
図1に示す構造であって、図4、5に示す従来例のタイヤに対して、キャップ層31およびレイヤー層32間に、緩衝ゴム層33が配置されている点が異なる。」
・「
[図:0001408590000010.jpg]
」
・「
[図:0001408590000011.jpg]
」
・「
[図:0001408590000012.jpg]
」
イ 引用文献5に記載された発明
引用文献5に記載された事項を、特に【請求項1】、【0040】、【0041】及び【0043】(実施例1)に関して整理すると、引用文献5には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されていると認める。
<引用発明5>
「クラウン部(トレッド部)と、
一対のビードコアを跨いで配置されたボディプライと、
該ボディプライのタイヤ径方向外側に配置され、かつベルトコードがタイヤ赤道面に対して所定の傾斜角度を持つ少なくとも1枚のベルト層と、
該ベルト層のタイヤ径方向外側に配置され、かつタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回された芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コードを有するスパイラル補強層とを備えた、空気入りタイヤ。」
(6)引用文献7に記載された事項等
ア 引用文献7に記載された事項
引用文献7には、「空気入りラジアルタイヤ、及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「(主ベルト層)
図3に示すように、主ベルト層26は、複数枚のベルトプライ、本実施形態では、タイヤ径方向内側から第1ベルトプライ26A、第2ベルトプライ26B、第3ベルトプライ26C、第4ベルトプライ26D、第5ベルトプライ26E、第6ベルトプライ26F、第7ベルトプライ26G、及び第8ベルトプライ26Hの8枚のベルトプライから構成されている。
本実施形態では、第1ベルトプライ26Aと第2ベルトプライ26Bは同じ幅に設定され、第3ベルトプライ26Cと第4ベルトプライ26Dは同じ幅に設定され、第5ベルトプライ26Eと第6ベルトプライ26Fは同じ幅に設定され、また、第7ベルトプライ26Gと第8ベルトプライ26Hは同じ幅に設定されている。
さらに、第1ベルトプライ26A及び第2ベルトプライ26Bよりも第3ベルトプライ26C及び第4ベルトプライ26Dのベルト幅が広く、第3ベルトプライ26C及び第4ベルトプライ26Dよりも第5ベルトプライ26E及び第6ベルトプライ26Fのベルト幅が広く、第5ベルトプライ26E及び第6ベルトプライ26Fよりも第7ベルトプライ26G及び第8ベルトプライ26Hのベルト幅が広く設定されている。
したがって、主ベルト層26のタイヤ幅方向端部では、第7ベルトプライ26Gと第8ベルトプライ26Hとの2枚のベルトプライが積層されている。
主ベルト層26を構成するこれら第1ベルトプライ26A~第8ベルトプライ26Hは、複数本の有機繊維コードをゴム被覆することにより形成されている。これら第1ベルトプライ26A~第8ベルトプライ26Hの有機繊維コードは、引張破断強度を6.3cN/dtex以上とすることが好ましく、伸張方向に0.3cN/dteX荷重時の伸び率が0.2~2.0%、伸張方向に2.1cN/dteX荷重時の伸び率が1.5~7.0%、伸張方向に3.2cN/dtex荷重時の伸び率が2.2~9.3%であることが好ましい(図13参照)。本実施形態の有機繊維コードは、芳香族ポリアミド系の繊維から構成されている。
有機繊維コードを芳香族ポリアミド系の繊維から構成した場合、下撚り係数は0.12~0.85、好ましくは0.17~0.51、上撚り係数は0.40~0.80に設定することが好ましい。
本実施形態では、第1ベルトプライ26A~第8ベルトプライ26Gに、芳香族ポリアミド系の繊維、具体的にはデュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。以後、適宜ケプラーと呼ぶ。) からなる有機繊維コードを用いている。」(第26ページ第4行ないし第27ページ第9行)
・「
[図:0001408590000013.jpg]
」(第45ページ)
・「請求の範囲
1. 一対のビードコアと、一方ビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に、有機繊維コードを含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、を備えた空気入りラジアルタイヤであって、
タイヤ赤道面位置P0での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK0、タイヤ赤道面を中心として前記ベルト層の最大幅の1/3の幅位置P2での単位幅当りにおける前記ベルト層のタイヤ周方向の総強力をK2としたときに、K2<K0を満足する、ことを特徴とする空気入りラジアルタイヤ。」(第57ページ第1ないし12行)
・「
[図:0001408590000014.jpg]
」(1/23)
・「
[図:0001408590000015.jpg]
」(2/23)
イ 引用文献7に記載された発明
引用文献7に記載された事項を、特に下線を付した記載及び【表2】の実施例1ないし3に関して整理すると、引用文献7には、次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されていると認める。
<引用発明7>
「一対のビードコアと、一方ビードコアから他方のビードコアに向けてトロイド状に延びる少なくとも1枚以上のカーカスプライからなるカーカス層と、前記カーカス層のタイヤ半径方向外側のクラウン域外周面に、デュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。) からなる有機繊維コードを、コード角度を略0として含む少なくとも1枚以上のベルトプライからなるベルト層と、を備えた空気入りラジアルタイヤ。」
2 引用文献1に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比する。
引用発明1における「タイヤトレッド部51」は本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する。
引用発明1における「スパイラル補強層53」は「タイヤトレッド部51の内側に配置された2つのベルト層52a,52bから成る交錯ベルト52の外側に」あることから、本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明1における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材」は「タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付け」られ、「スパイラル補強層53」となるものであるから、本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明1における「空気入りタイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明1においては、「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点1について検討する。
本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-164967号公報、国際公開第2015/045728号及び東レ・デュポン株式会社のホームページのウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20180815223702/https://www.td-net.co.jp/kevlar/data、「Wayback Machine」に2018年8月15日に保存。)の下記の記載事項からみて、引用発明1における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
・特開2018-164967号公報の記載事項
「【0017】
前記パラ系アラミド繊維は、特に限定されないが、例えば、帝人社製“テクノーラ”(商品名)、デュポン社製“ケブラー”(商品名)等があげられる。これらのパラ系アラミド繊維は、引張強度が高く(例えば帝人社製“テクノーラ”:24.7cN/dtex、デュポン社製“ケブラー”:20.3~24.7cN/dtex)、熱分解開始温度も高く(前記製品はいずれも約500℃)、限界酸素指数(LOI)は25~29で、耐熱性に優れている。」
・国際公開第2015/045728号の記載事項
「[0023]・・・(略)・・・たとえば、破断伸度4.5%の超高分子量ポリエチレン、破断伸度3.5%のケブラー(登録商標)、破断伸度2.5%のザイロン(登録商標)などを好ましく利用できるが、非金属の素材であることが望ましい。」
・東レ・デュポン株式会社のホームページのウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20180815223702/https://www.td-net.co.jp/kevlar/data)の記載事項
「
[図:0001408590000016.jpg]
」
(3)請求人の主張について
ア 請求人の主張
請求人は、審判請求書において、おおむね次のとおり主張する。
「(3) 原査定では、引用文献1には、スパイラル補強層にケブラーコードを配置することが記載されているところ、ここで先行技術文献1、2等に開示の当業者の技術常識を参酌するに、引用文献1に記載されたケブラーコードが、当業者であれば、20.3~24.7cN/dtexの引張強度であり、破断伸度が3.5%であることを当業者が把握できたものと認められるとの見解が示されています。
しかしながら、当該先行技術文献には、単にコードの引張破断強度や破断時伸びが、本願発明の範囲と重複することが記載されているに過ぎず、タイヤの補強コード、それも、タイヤ周方向において巻き回された補強コードについて、請求項1で規定するような範囲とすることが高速耐久性及びコーナリングフォース向上の観点から効果的であり得ることを示唆するようなものではないと考えます。従いまして、原査定での当該見解には、妥当でない部分があると考えます。
(4) 本願発明では、特に、特徴(c)及び(d)によって、高剛性の補強コード(スパイラルコード)を有する補強ベルト(スパイラルベルト)は、交錯ベルト層(請求項3参照)のパンタグラフ変形を効果的に抑制することができます。さらに、補強ベルトは、タイヤへの横力入力時において、交錯ベルト層のタイヤ周方向における変形、具体的にはトレッドのショルダー部の変形も効果的に抑制し、交錯ベルト層内部におけるせん断剛性を向上させています。これにより、低スリップ角(SA)において大きなコーナリングフォース(CF)を発生させることができ、本願発明に係るタイヤが装着された車両の旋回性能を大幅に向上できます。特に、操舵角が与えられない後輪のコーナリングフォースを効果的に高めることができます([0046]及び[0047]段落)。
また、補強コードの引張破断強度が高く、破断時伸びが低いため、特に、タイヤの高速転動時における補強ベルトの圧縮及び引っ張りの繰り返しによる歪量を効果的に抑制できます。これにより、補強ベルト及び補強ベルト周辺のゴムの発熱に起因する故障を防止しています([0048]及び[0049]段落)。
(5) 原査定に示された引用文献に記載に基づいて、このような効果を奏し得るタイヤを容易に想到することが極めて困難であり、本願発明の新規性及び進歩性は肯定されるべきものと考えます。」(審判請求書第3ページ)
イ 主張の検討
そこで、上記主張について検討する。
先行技術文献1(特開2018-164967号公報)及び先行技術文献2(国際公開第2015/045728号)は、引用文献1に記載されたケブラーコードの引張破断強度及び破断時伸びがどの程度であるかを示すために挙げられたものである。
先行技術文献1及び2に、本願請求項1に規定するような範囲とすることで高速耐久性及びコーナリングフォース向上の観点から効果的であり得ることを示唆するものであるかどうかを示唆する記載がないとしても、先行技術文献1及び2の記載事項から、引用発明1における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材」の引張破断強度及び破断時伸びがどの程度であるかは把握することはできる。
また、本願発明がどのような効果を奏するとしても、引用発明1における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強部材」の引張破断強度及び破断時伸びが本願請求項1に規定するような範囲にある以上、両者に構成上の差異はないから、本願発明は引用発明1であるといえる。
なお、請求人が主張する効果は、本願の発明の詳細な説明で具体的に実証されている訳ではないし、引用文献1ないし5及び7や上記(2)の東レ・デュポン株式会社のホームページのウェブアーカイブの記載事項を考慮すれば、当業者が予測できる範囲のものでもある。
したがって、請求人の主張は採用できない。
(4)まとめ
したがって、本願発明は引用発明1、すなわち引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 引用文献2に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明2を対比する。
引用発明2における「トレッド部」は本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する。
引用発明2における「周方向ベルト層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明2における「ケブラー(商標)からなる有機繊維を撚ったスパイラルコード」は「タイヤ赤道面に対し、5°以下の傾斜角度で螺旋巻回することにより配列され」、「周方向ベルト層」となるものであるから、本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明2における「空気入りタイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点2>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明2においては、「ケブラー(商標)からなる有機繊維を撚ったスパイラルコード」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点2について検討する。
相違点2は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、引用発明2における「ケブラー(商標)からなる有機繊維を撚ったスパイラルコード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点2は実質的な相違点とはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明2、すなわち引用文献2に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 引用文献3に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明3を対比する。
引用発明3における「タイヤ接地面に於いて、接地面に平行するトレッド」は本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する。
引用発明3における「スパイラルベルト層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明3における「芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラ-」)の2本撚りコード」は、「被覆ゴム中に埋設」され「帯状体」となり、「略タイヤ赤道方向に向かう角度をなして螺旋状にタイヤ回転軸方向に巻き回し」て「スパイラルベルト層」となるものであるから、本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明3における「二輪車用タイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点3>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明3においては、「芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラ-」)の2本撚りコード」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点3について検討する。
相違点3は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、引用発明3における「芳香族ポリアミド繊維(商品名「ケブラ-」)の2本撚りコード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点3は実質的な相違点とはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明3、すなわち引用文献3に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 引用文献4に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明4を対比する。
引用発明4は「ラジアルタイヤ」であるから、本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する部材を有していることは明らかである。
引用発明4における「補強ベルト層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明4における「補強ベルト層」は「該補強ベルト層のコードの方向が周方向に対し0~5度」であるから、引用発明4における「材質はケブラー」である「補強ベルト層のコード」は本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明4における「ラジアルタイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点4>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明4においては、「補強ベルト層のコードの材質はケブラーである」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点4について検討する。
相違点4は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、引用発明4における「材質はケブラー」である「補強ベルト層のコード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点4は実質的な相違点とはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明4、すなわち引用文献4に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 引用文献5に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明5を対比する。
引用発明5における「クラウン部(トレッド部)」は本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する。
引用発明5における「スパイラル補強層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明5における「スパイラル補強層」は「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コード」を「タイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻回」したものであるから、引用発明5における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コード」は本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明5における「空気入りタイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点5>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明5においては、「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コード」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点5について検討する。
相違点5は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、引用発明5における「芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)からなる補強コード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点5は実質的な相違点とはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明5、すなわち引用文献5に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
7 引用文献7に基づく新規性・進歩性について
(1)対比
本願発明と引用発明7を対比する。
引用発明7は「空気入りラジアルタイヤ」であるから、本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する部材を有していることは明らかである。
引用発明7における「ベルト層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用発明7における「ベルト層」は「デュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。)からなる有機繊維コード」を「コード角度を略0」としたものであるから、引用発明7における「デュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。)からなる有機繊維コード」は本願発明における「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明7における「空気入りラジアルタイヤ」は本願発明における「タイヤ」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向と略平行になるように巻き回された補強コードを有するタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点7>
「補強ベルト」が有する「タイヤ周方向と略平行となるように巻き回された補強コード」に関して、本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下である」と特定されているのに対し、引用発明7においては、「デュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。)からなる有機繊維コード」と特定されているものの、その「引張破断強度」及び「破断時伸び」は特定されていない点。
(2)判断
そこで、相違点7について検討する。
相違点7は相違点1と実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、引用発明7における「デュポン社製ポリアミド繊維(商品タイプ名:KEVLAR(R)29、公称繊度3000デニール。)からなる有機繊維コード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点7は実質的な相違点とはいえない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は引用発明7、すなわち引用文献7に記載された発明である。
また、本願発明は引用文献7に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 結語
上記第4のとおりであるから、本願発明、すなわち本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020043