特許拒絶査定不服審判
2022-020045
タイヤ
- 審判番号
- 2022-020045
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-235261
- 請求日
- 2022年12月09日
- 審決日
- 2024年07月18日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ブリヂストン
- 【請求人代理人】三好 秀和
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 淺野 美奈
- 分類
- P18 .113-WZ (B60C) / P18 .121-WZ (B60C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-235261「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月25日出願公開、特開2020- 97263〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年12月17日を出願日とする出願であって、令和4年4月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月5日付けで拒絶査定がされ、同年12月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、令和6年4月5日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、令和6年6月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記トレッドには、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が形成され、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向において巻き回された補強コードを有し、
前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、
前記補強コードの破断時伸びは、13%以下であり、
前記補強ベルトは、2条の前記補強コードがタイヤ幅方向に沿って配置されたコードユニットがタイヤ周方向に沿って巻き回されることによって構成され、
タイヤ幅方向における前記コードユニットの幅は、タイヤ幅方向における前記周方向溝の幅よりも狭く、
前記コードユニットのユニット幅Wと、前記周方向溝の幅GWとの比率(GW/W)は、2.5以上、20.0以下であり、
前記補強ベルトのタイヤ径方向内側には、一対の交錯ベルトによって構成される交錯ベルト層が設けられ、
前記交錯ベルト層は、タイヤ幅方向に対して傾斜したベルトコードを有し、
前記ベルトコードは、有機繊維またはスチールによって形成されるタイヤ。」
第3 拒絶の理由
令和6年4月5日付けで当審から通知された拒絶の理由は、おおむね次の理由を含むものである。
1 (新規性)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
2 (進歩性)
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.特開2008-195148号公報
2.特開2016-147655号公報
3.特開2018-108753号公報
4.特開2018-164967号公報
5.国際公開第2015/045728号
6.東レ・デュポン株式会社のホームページのウェブアーカイブ(https://web.archive.org/web/20180815223702/https://www.td-net.co.jp/kevlar/data/、「Wayback Machine」に2018年8月15日に保存。)
(以下、順に「引用文献1」のようにいう。)
第4 引用文献に記載された事項等
1 引用文献1に記載された事項等
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するもので、特に、高速走行時におけるタイヤの耐久性能及び偏摩耗特性に優れた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能乗用車用タイヤではタイヤの回転速度が高速となるため、遠心力の影響が大きく、タイヤのトレッド部分が外側に膨張してしまい、そのため、操縦安定性能が低下してしまう場合がある。
そこで、上記膨張を抑制するため、図7に示すような、タイヤトレッド部51の内側に配置された2つのベルト層52a,52bから成る交錯ベルト52の外側に、その全幅に亘って、有機繊維やスチールから成る補強部材(スパイラル部材)を、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層53を備えた構成の空気入りタイヤ50が開発されている。なお、同図において、符号54は、タイヤの骨格部材であるボディプライで、一般の空気入りタイヤにおいては、上記交錯ベルト52は上記ボディプライ54のタイヤ径方向外側に配置される(例えば、特許文献1参照)。」
・「【実施例】
【0017】
タイヤサイズ225/50R16の乗用車用の高性能タイヤにつき、図1~図3に示した、ボディプライがタイヤクラウン部において最外層となる構成の本発明によるタイヤ(本発明1~3)と、ボディプライが最内層となる従来のタイヤ(従来例)とをそれぞれ準備した。なお、従来のタイヤについては、図7のものではなく、図6に示すように、本発明1~3と同様に、ボディプライをビードコア中で係止する構造のものを用いた。
これらのタイヤは、いずれも、1対のビードコアにトロイド状をなして跨るボディプライが1枚存在する。このボディプライは直径0.6mmの撚ったナイロンコードを使用している。打込み間隔はタイヤトレッドセンター部で50本/50mmであり、コード角はラジアル(赤道方向に対する角度が90度)である。このボディプライはビードコア内部で係止されており、ビードコアがボディプライの両側からボディプライを固定する。
また、タイヤクラウン部分(トレッド部分)を補強する2枚の交錯ベルト層は、それぞれ、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、赤道面に対して40度傾けて、互いに交錯させて配置したもので、打込み間隔は35本/50mmである。
これらのタイヤのトレッド幅は225mmであり、交錯ベルトの径方向内側にある交錯ベルト層の幅は220mm、径方向外側にあるベルト層の幅は210mmである。
【0018】
従来例のタイヤでは、スパイラル補強層は、直径が0.7mmの撚った芳香族ポリアミド(商品名ケブラー)コードを、打込み間隔50本/50mmで配置している。幅は230mmであり、交錯ベルトの外側に、交錯ベルトの全幅について1層の補強層で覆うように配置されている。つまり、最内層にボディプライ、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層がスパイラル補強層である。スパイラル補強層の製造は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし、これをタイヤ成型時に交錯ベルト上に巻き付けて製造した。
また、トレッド層は厚みが8mmのゴムであり、所定の溝が配置されている。
本発明1のタイヤは、図1に示すように、最内層に2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、次にスパイラル補強層、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
一方、本発明2のタイヤでは、図2に示すように、最内層にスパイラル補強層、次に、2枚の交錯ベルト層(幅の広い方が内側)、最外層にボディプライが配置されており、その外側がトレッド層である。
また、本発明3のタイヤは、図3に示すように、スパイラル補強層と最外層のボディプライとの間に、厚みが0.7mmの緩衝ゴム層を配置したもので、この緩衝ゴム層の材質はボディプライのコーティングゴムと同種のゴムである。また、上記緩衝ゴム層の幅は200mmである。」
・「【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の最良の形態に係る空気入りタイヤの構成を示す断面図である。
【図2】本発明による空気入りタイヤの他の構成を示す図である。
【図3】緩衝ゴム層を付加した空気入りタイヤの構成を示す図である。
【図4】ボディプライが2枚の場合の空気入りタイヤの一構成例を示す図である。
【図5】本発明による空気入りタイヤの他の構成を示す図である。
【図6】実施例に用いた従来の空気入りタイヤの構成を示す図である。
【図7】従来のベルト補強層を有する空気入りタイヤの構成を示す図である。」
・「
[図:0001414585000001.jpg]
[図:0001414585000002.jpg]
」
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1に記載された事項を、図7に示された空気入りタイヤ及び図1に示された空気入りタイヤに関して整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
<引用発明>
「タイヤトレッド部の内側に配置された2つのベルト層から成る交錯ベルトの外側に、その全幅に亘って、ケブラーコードを、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層を備えた空気入りタイヤであって、2つのベルト層は、それぞれ、直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、赤道面に対して40度傾けて、互いに交錯させて配置したものであり、スパイラル補強層は、直径が0.7mmの撚ったケブラーコードを、打込み間隔50本/50mmで配置したものであり、スパイラル補強層の製造は、ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし、これをタイヤ成型時に交錯ベルト上に巻き付けて製造したものである空気入りタイヤ。」
2 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0018】
周方向主溝とは、摩耗末期を示すウェアインジケータを有する周方向溝であり、一般に、5.0[mm]以上の溝幅および7.5[mm]以上の溝深さを有する。」
3 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、「空気入りタイヤ」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0017】
図3に示されるように、トレッド部14の表面には、タイヤ周方向CDに延びる4本の周方向主溝が、タイヤ幅方向WDに間隔をおいて設けられている。4本の周方向主溝は、タイヤ赤道面CLの両側に位置する一対のセンター主溝32,32と、各センター主溝32のタイヤ幅方向外側に位置する一対のショルダー主溝34,34である。なお、周方向主溝は、一般に5mm以上の溝幅(開口幅)を持つ。」
4 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、「作業ロボット用耐熱性保護カバー」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0017】
前記パラ系アラミド繊維は、特に限定されないが、例えば、帝人社製“テクノーラ”(商品名)、デュポン社製“ケブラー”(商品名)等があげられる。これらのパラ系アラミド繊維は、引張強度が高く(例えば帝人社製“テクノーラ”:24.7cN/dtex、デュポン社製“ケブラー”:20.3~24.7cN/dtex)、熱分解開始温度も高く(前記製品はいずれも約500℃)、限界酸素指数(LOI)は25~29で、耐熱性に優れている。」
5 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、「レンズユニット及び撮像装置」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0023] 第3レンズ群G3の近傍において、アイドルプーリ216が配置され、駆動プーリ213とアイドルプーリ216との間にライン209が巻き回されている。ライン209は、ループ(無端)状であって、たとえば、破断伸度4.5%の超高分子量ポリエチレン、破断伸度3.5%のケブラー(登録商標)、破断伸度2.5%のザイロン(登録商標)などを好ましく利用できるが、非金属の素材であることが望ましい。」
6 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、おおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001414585000003.jpg]
」
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明における「タイヤトレッド部」は本願発明における「路面に接するトレッド」に相当する。
引用発明における「タイヤトレッド部の内側に配置された2つのベルト層から成る交錯ベルトの外側に、その全幅に亘って、ケブラーコードを、タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付けたスパイラル補強層」は本願発明における「前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルト」に相当する。
引用文献1の図1及び7からみて、引用発明における「タイヤトレッド」に本願発明における「タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝」に相当する溝が設けられていることは明らかである。
引用発明における「タイヤ赤道面に略平行になるように巻き付け」られた「ケブラーコード」は本願発明における「タイヤ周方向において巻き回された補強コード」に相当する。
引用発明における「ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし」たものは本願発明における「2条の前記補強コードがタイヤ幅方向に沿って配置されたコードユニット」に相当する。
引用発明における「2つのベルト層から成る交錯ベルト」は、その外側に「スパイラル補強層」が巻き付けられたものであるから、本願発明における「補強ベルトのタイヤ径方向内側」に設けられた「一対の交錯ベルトによって構成される交錯ベルト層」に相当する。
引用発明における「2つのベルト層から成る交錯ベルト」は、「ベルト層」が「直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコードを、赤道面に対して40度傾けて、互いに交錯させて配置したもの」であるから、本願発明における「タイヤ幅方向に対して傾斜したベルトコード」を有する「交錯ベルト層」に相当する。
引用発明における「直径0.18mmのスチールの単線を3本合わせて撚った、いわゆる1×3タイプのコード」は本願発明における「有機繊維またはスチールによって形成される」「ベルトコード」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「路面に接するトレッドと、
前記トレッドのタイヤ径方向内側に設けられる補強ベルトと
を少なくとも備えたタイヤであって、
前記トレッドには、タイヤ周方向に沿って延びる周方向溝が形成され、
前記補強ベルトは、タイヤ周方向において巻き回された補強コードを有し、
前記補強ベルトは、2条の前記補強コードがタイヤ幅方向に沿って配置されたコードユニットがタイヤ周方向に沿って巻き回されることによって構成され、
前記補強ベルトのタイヤ径方向内側には、一対の交錯ベルトによって構成される交錯ベルト層が設けられ、
前記交錯ベルト層は、タイヤ幅方向に対して傾斜したベルトコードを有し、
前記ベルトコードは、有機繊維またはスチールによって形成されるタイヤ。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1>
本願発明においては、「前記補強コードの引張破断強度は、10cN/dtex以上であり、前記補強コードの破断時伸びは、13%以下であり」と特定されているのに対して、引用発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2>
本願発明においては、「タイヤ幅方向における前記コードユニットの幅は、タイヤ幅方向における前記周方向溝の幅よりも狭く、
前記コードユニットのユニット幅Wと、前記周方向溝の幅GWとの比率(GW/W)は、2.5以上、20.0以下であり」と特定されているのに対して、引用発明においては、そのようには特定されていない点。
2 判断
そこで、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献4ないし6に記載された事項からみて、引用発明における「ケブラーコード」の「引張破断強度」及び「破断時伸び」は、それぞれ、本願発明における「10cN/dtex以上」及び「13%以下」の条件を満たすといえる。
したがって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。
(2)相違点2について
引用発明における「スパイラル補強層」は、「ケブラーコード」を「打ち込み間隔50本/50mmで配置したもの」であるから、引用発明における「ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし」たものの幅は、2mmかそれ以下である。
また、引用文献2及び3に記載された事項によると、一般に、タイヤトレッド部に設けられた周方向溝の幅は5mm以上であるから(この点は、審判請求書の第4ページにおいて、請求人も認めている。)、引用発明における「タイヤトレッド部」に設けられた溝の幅は5mm以上である。
そうすると、引用発明における「タイヤトレッド部」に設けられた溝の幅と、引用発明における「ケブラーコードを2本平行に並べて未加硫ゴムで覆いストリップ状とし」たものの幅の比率(本願発明における「前記コードユニットのユニット幅Wと、前記周方向溝の幅GWとの比率(GW/W))」に相当する。)は、2.5(=5mm/2mm)以上であるといえる。
したがって、相違点2も実質的な相違点とはいえない。
3 請求人の主張について
(1)請求人の主張の概要
請求人は、令和6年6月7日に提出された意見書において、おおむね次のとおり主張する。
「2.2 引用文献と本願発明との比較
(1) 補正後の請求項1では、補正前の請求項4において規定されていました交錯ベルト層の特徴(特徴(h)~(j))が追加されています。また、特徴(e)において、補強ベルトが、2条の補強コードがタイヤ幅方向に沿って配置されたコードユニットがタイヤ周方向に沿って巻き回されることによって構成されることが規定されています。
(2) コードユニットに含まれる補強コード(スパイラルコード)の本数が2本より大きくなると、コードユニットのユニット幅Wが大きくなり、コードユニットをタイヤ周方向に沿ってスパイラル状に巻き回すことから、タイヤ周方向に対する補強ベルト(補強コード)の角度が大きくなります。
タイヤ周方向に対する補強ベルト(補強コード)の角度が大きくなると、タイヤ周方向に延びる補強ベルトによって交錯ベルト層のパンタグラフ変形の抑制する効果も限定的となります。この結果、交錯ベルト層内部におけるせん断剛性の向上効果も限定的となり、低スリップ角において発生するコーナリングフォースをさらに高める効果も限定的となります(本願明細書の[0051]及び[0052]段落参照)。
また、コードユニットのユニット幅Wが大きくなると、特徴(f)において規定されているコードユニットの幅をタイヤ幅方向における周方向溝の幅よりも狭くすることが難しくなる可能性もあります。
(3) 補正後の請求項1に係る発明によれば、2条の補強コードがタイヤ幅方向に沿って配置されたコードユニットがタイヤ周方向に沿って巻き回されることによって構成される補強ベルトを用いることによって、交錯ベルト層のパンタグラフ変形を抑制し、交錯ベルト層のせん断剛性向上を図っています。
これにより、低スリップ角(SA)時、具体的には、SAが2度以下の領域において、大きなコーナリングフォース(CF)を発生させることができ、車両の旋回性能を大幅に向上させています。特に、操舵角が与えられない後輪のコーナリングフォースを効果的に高めることができます(本願明細書の[0052]段落)。
また、本願明細書の[0055]段落に記載されていますように、タイヤ幅方向におけるコードユニットの幅を、タイヤ幅方向における周方向溝の幅よりも狭くすることによって、周方向溝の形状に対するコードユニットの追従性が高くなり、周方向溝の溝底部分とコードユニットとのゲージ(ゴム厚さ)が製造後において均一化され易くなります。これにより、周方向溝付近の剛性分布も均一化され、周方向溝付近の偏摩耗も抑制できます。さらに、ゲージ及び剛性分布の均一化は、高速耐久性にも寄与します。
なお、上述しましたような低SA角でのコーナリングフォース発生、及びゲージ及び剛性分布の均一化による高速耐久性の向上は、構造的な特徴に基づいた作用及び効果の発生メカニズムであり、当該効果を奏することを確認した具体的な実施例が必ずしも必要となるものではないと考えます。
(4) 引用文献には、上述しましたような補正後の請求項1に係る発明の特徴、及び効果については、何ら開示も示唆もされておらず、補正後の請求項1に係る発明は、新規性及び進歩性を有すると考えます。」(上記意見書第1及び2ページ)
(2)請求人の主張についての検討
上記主張について検討する。
上記1及び2で検討したとおり、本願発明と引用文献1に記載された発明の間に実質的な相違点はない。
また、引用文献1に記載された発明は本願発明の発明特定事項を全て有するものであり、両者の構造的な特徴に違いはないことから、本願発明の奏する効果は、引用文献1に記載された発明も当然有するものである。
したがって、「引用文献には、上述しましたような補正後の請求項1に係る発明の特徴、及び効果については、何ら開示も示唆もされておらず、補正後の請求項1に係る発明は、新規性及び進歩性を有する」とはいえない。
よって、請求人の上記主張は採用できない。
4 むすび
したがって、本願発明は、依然として、引用発明、すなわち引用文献1に記載された発明である。
また、本願発明は、依然として、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 結語
上記第5のとおりであるから、本願発明、すなわち本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について判断するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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