特許拒絶査定不服審判
2017-003305
磁性キャリア及び二成分系現像剤
- 審判番号
- 2017-003305
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-147144外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年03月06日
- 審決日
- 2018年05月22日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .113-WY (G03G) / P18 .121-WY (G03G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-147144「磁性キャリア及び二成分系現像剤」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月14日出願公開、特開2013- 33243、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年6月29日(優先権主張平成23年6月29日)の出願であって、平成27年6月29日に手続補正がなされ、平成28年5月2日付けで拒絶理由が通知され、同年7月6日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「拒絶査定時手続補正」という。)がなされ、同年12月1日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し平成29年3月6日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「審判請求時補正」という。)がなされたものである。
その後、当審において、平成30年1月31日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、同年4月6日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされた。
第2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりのものである。
理由1(新規性)
拒絶査定時手続補正により補正された本願の請求項1に係る発明は、本件優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2(進歩性)
拒絶査定時手続補正により補正された本願の請求項1~6に係る発明は、本件優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献Aに記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献A.特開2009-244837号公報
引用文献B.特開2009-237525号公報(周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は以下のとおりのものである。
理由1(進歩性)
審判請求時補正により補正された本願の請求項1~5に係る発明は、本件優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2010-256855号公報
引用文献2.特開2009-237525号公報 (周知技術を示す文献)
第4 本件発明
本願の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
多孔質磁性コア粒子及び該多孔質磁性コア粒子の孔に充填されているシリコーン樹脂を有する充填コア粒子と、
該充填コア粒子の表面を被覆しているビニル系樹脂と、
を有する磁性キャリア粒子の集合体である磁性キャリアであって、
下記方法で算出される該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、35.0mm3/g以上95.0mm3/g以下であり、
下記方法で算出される該充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下であり、
該充填コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)が、19.0μm以上69.0μm以下であり、
該磁性キャリアが、該充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部以上3.0質量部以下の該ビニル系樹脂を有することを特徴とする磁性キャリア。
[該多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該多孔質磁性コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。
又、該充填コア粒子の積算細孔容積は、約1.0gの該充填コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される。]
【請求項2】
前記ビニル系樹脂が、
分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマーと、
該分子構造中に環式炭化水素基を有するビニル系モノマー以外のビニル系モノマーと、
の共重合体である請求項1に記載の磁性キャリア。
【請求項3】
前記ビニル系樹脂が、
シクロヘキシルメタクリレートモノマーと、
メチルメタクリレートマクロモノマー及びスチレンマクロモノマーからなる群より選択される少なくとも1種のモノマーとの共重合体である請求項1又は2に記載の磁性キャリア。
【請求項4】
前記ビニル樹脂は、分子中に脂環式炭化水素基を有するビニルモノマーと
片末端にメタクリロイル基を有するメチルメタクリレートマクロモノマーとの共重合体である請求項2に記載の磁性キャリア。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂における、ケイ素原子1個当たりに結合している有機基(R)の平均数(R/Si比)が、1.30以上1.50以下である請求項1~4のいずれか1項に記載の磁性キャリア。
【請求項6】
磁性キャリア及びトナーを含む二成分系現像剤であって、
該トナーが、
結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子と、
無機微粉体と
を有するトナーであり、
該磁性キャリアが、請求項1~5のいずれか1項に記載の磁性キャリアであることを特徴とする二成分系現像剤。」
第5 引用刊行物の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1) 当審拒絶理由に引用され、本件優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2010-256855号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は合議体が付与した。以下同様。)
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質フェライト芯材の空隙に樹脂を充填させて得られる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアであって、該樹脂がフェニル基を有するシリコーン樹脂であることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項2】
上記シリコーン樹脂の核磁気共鳴分光法によって測定されるメチル基に対するフェニル基のモル比が0.3~0.9である請求項1に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項3】
上記シリコーン樹脂が、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーによる微分分子量曲線において、500~1000及び/又は1000~10000の間に少なくとも1つのピークを有する請求項1又は2に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項4】
上記シリコーン樹脂が、ゲルパーミテーションクロマトグラフィーによる個数平均分子量が1000~2000、重量平均分子量が2000~10000、Z平均分子量が10000~20000である請求項1、2又は3に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項5】
上記シリコーン樹脂の個数平均分子量に対する重量平均分子量の比が1~6である請求項4に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項6】
上記シリコーン樹脂中に、アミノシランカップリング剤をシリコーン樹脂固形分に対して5~30重量%含有する請求項1~5のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項7】
上記多孔質フェライト芯材の組成が、Mn、Mg、Li、Ca、Sr、Cu、Znから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~6のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項8】
上記多孔質フェライト芯材100重量部に対して、上記シリコーン樹脂の充填量が6~30重量部である請求項1~7のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項9】
樹脂により表面が被覆されている請求項1~8のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項10】
上記樹脂の被覆量が、上記樹脂を充填してなる樹脂充填型フェライト100重量部に対して、0.1~5.0重量部である請求項9に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項11】
体積平均粒径が20~50μm、飽和磁化が30~80Am2/kg、真密度が2.5~4.5g/cm3、見掛け密度が1.0~2.2g/cm3である請求項1~10のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の樹脂充填型フェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。
【請求項13】
補給用現像剤として用いられる請求項12に記載の電子写真現像剤。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤に関し、詳しくは現像剤としたときに帯電量を制御することができ、また良好な強度を有し、しかも、経時劣化が少なく耐久性に優れた電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
(中略)
【0042】
このように、上記した樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、現像剤としたときに帯電量を制御することができ、また良好な強度を有し、しかも、経時劣化が少なく耐久性に優れた樹脂充填型キャリアが求められている。
(中略)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
従って、本発明の目的は、樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、現像剤としたときに帯電量を制御することができ、また良好な強度を有し、しかも、経時劣化が少なく耐久性に優れた樹脂充填型フェライトキャリア及び該樹脂充填型フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、充填樹脂として、特定のシリコーン樹脂を用いることによって上記目的が達成されることを知見し、本発明に至った。
【0046】
すなわち、本発明は、多孔質フェライト芯材の空隙に樹脂を充填させて得られる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアであって、該樹脂がフェニル基を有するシリコーン樹脂であることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアを提供するものである。
(中略)
【0057】
また、本発明は、上記樹脂充填型フェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
(中略)
【発明の効果】
【0059】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアは、樹脂充填型フェライトキャリアであるため、真密度が軽くなり長寿命化が達成でき、流動性に優れ、帯電量等の制御が容易にでき、しかも磁性粉分散型キャリアに比して高強度であり、また熱や衝撃による割れ、変形、溶融がない。また、特定のシリコーン樹脂を用いることによって、被覆樹脂との密着性が優れるため、現像剤として使用中に被覆樹脂の剥離による経時劣化が小さいので耐久性に優れる。また、被覆樹脂の選択幅が広がるために、適用し得るトナーも多くなる。さらに、アミノシランカップリング剤等のアミノ基含有物質と併用することができるため、帯電量の制御が可能であり、しかも樹脂が多孔性フェライト芯材の空隙部により完全に浸透するため、フェライトキャリアの強度が高まり、現像剤として使用中に割れや欠けが減少する。」
ウ 「【0074】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、多孔質フェライト芯材に樹脂を充填する。樹脂の充填量は、多孔質フェライト芯材100重量部に対して6~30重量部が望ましく、より望ましくは6~20重量部、更に望ましくは7~18重量部、最も好ましくは8~17重量部である。樹脂の充填量が6重量部未満であると、十分な軽量化が図れない。また、樹脂の充填量が30重量部を超えると、充填しきれずに残った遊離樹脂が多量に発生するため、帯電不良等の不具合の原因となる。」
エ 「【0088】
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアの製造方法>
次に、本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアの製造方法の一例について説明する。
【0089】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアの芯材を製造する場合、原材料を適量秤量した後、ボ-ルミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1~20時間粉砕混合する。このようにして得られた粉砕物を加圧成型機等を用いてペレット化した後、700~1200℃の温度で仮焼成する。加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。仮焼成後さらにボ-ルミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、スプレードラヤーにて粒状化し、酸素濃度を制御し、1000~1500℃の温度で1~24時間保持し、本焼成を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
【0090】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。また使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0091】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法など用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0092】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300~700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm~5μmであることが好ましい。0.1nm未満であると、酸化被膜層の効果が小さく、5μmを超えると、磁化が低下したり、高抵抗になりすぎたりするため、所望の特性を得にくくなり好ましくない。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。
【0093】
このようにして得られた電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材に、多孔質フェライト芯材にシリコーン樹脂を充填する方法としては、様々な方法が使用できる。その方法としては、例えば乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリードライ方式、万能撹拌機等による液浸乾燥法等が挙げられる。
【0094】
加熱方式としては、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。温度は、充填する樹脂によって異なるが、充分硬化が進む温度まで上げることにより、衝撃に対して強い樹脂充填型フェライトキャリアを得ることができる。
【0095】
また、上記シリコーン樹脂充填後のフェライトキャリアの表面に樹脂をさらに被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリードライ方式、万能撹拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。被覆率を向上させるためには、流動床による方法が好ましい。被覆樹脂は上述した通りである。
【0096】
シリコーン樹脂を、樹脂充填後のフェライトキャリアの表面に被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。UV硬化樹脂を用いる場合は、UV加熱器を用いる。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。」
オ 「【実施例1】
【0121】
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、湿式のメディアミルで5時間粉砕してスラリーを得た。得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、真球状の粒子を得た。形成する空隙度合いを調整するために、MnO原料としては炭酸マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを用いた。
【0122】
得られた粒子を950℃で2時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、空隙率を高めにしつつ適度な流動性を得るために、1/8インチ径のステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに1/16インチ径のステンレスビーズを用いて4時間粉砕した。このスラリーに分散剤を適量添加し、また造粒される粒子の強度を確保し、空隙度合いを調整する目的で、バインダーとしてPVA(20%水溶液)を固形分に対して1重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥した。得られた粒子を粒度調整した後、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分を除去した。その後、電気炉にて、温度1150℃、酸素濃度0体積%で4時間保持し、本焼成を行った。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。この多孔質フェライト芯材の体積平均粒径は35.1μmであった。また、BET比表面積を測定したところ、4604cm2 /gであった。
【0123】
次に、樹脂溶液を以下のように準備した。
上記多孔質フェライトの空隙に充填する樹脂として、フェニル/メチルのモル比が0.63、微分分子量曲線において630と2400にピークを持ち、数平均分子量が1704、重量平均分子量が5510、Z平均分子量が16190、数平均分子量/重量平均分子量比が3.234であるメチルフェニルシリコーンを準備した。このシリコーン樹脂溶液45重量部(樹脂溶液濃度20重量%のため固形分としては9重量部、希釈溶媒:トルエン)にアミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10重量%添加し樹脂溶液を得た。上記多孔質フェライト芯材100重量部と、樹脂溶液を60℃、2.3kPaの減圧下で混合撹拌し、トルエンを揮発させながら、樹脂を多孔質フェライト芯材の空隙に浸透、充填させた。
【0124】
容器内を常圧に戻し、トルエンが充分揮発したことを確認した後、撹拌機の内部を目視観察したところ、湿った感じもなく非常に流動性が良い状態であった、常圧下で撹拌を続けながら2℃/分の昇温速度で、撹拌機の熱媒温度を220℃まで上げた。この温度で60分間加熱撹拌を行い、樹脂を硬化させた。60分後、樹脂充填後のフェライト粒子そのものの温度を接触温度計で測定したところ、207℃であった。
【0125】
その後、室温まで冷却し、樹脂が充填、硬化されたフェライト粒子を取り出し、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアを得た。
【実施例2】
【0126】
固形のアクリル樹脂(製品名:BR-73、三菱レーヨン社製)を準備した。上記アクリル樹脂10重量部をトルエン90重量部に混合して樹脂溶液を調製した。
【0127】
実施例1と同様の方法で得られた樹脂が充填されたフェライトキャリア1000重量部を万能混合撹拌器に投入し、上記アクリル樹脂溶液を添加して、液浸乾燥法により樹脂被覆を行った。
【0128】
その後、温度を145℃まで上げ、2時間撹拌を行い、樹脂を硬化した。樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子を取り出し、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き、表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライト粒子を得た。」
カ 「【0142】
実施例1~12及び比較例1~2で用いたシリコーン樹脂の各性状(フェニル/メチルモル比、分子量ピーク、個数平均分子量、重量平均分子量、Z平均分子量及び重量平均分子量/個数平均分子量)を表1に示す。また、樹脂の充填量、アミノシランカップリング剤の種類及び添加量、ゲル化の有無、被覆樹脂の種類、被覆量及び被覆方法を表2に示す。
【0143】
また、実施例1~12及び比較例1で得られた樹脂充填型フェライトキャリアの体積平均粒径、見掛け密度、真密度及び飽和磁化を測定して結果を表3に示す。これらの測定方法は、上述の通りである。さらに、帯電量及び電気抵抗値を下記の通り測定し、結果を表4に示す。なお、比較例2は製造時にゲル化してしまったので評価が不可能であった。
【0144】
(帯電量)
帯電量は、キャリアとトナーとの混合物を、吸引式帯電量測定装置(Epping q/m-meter、PES-Laboratoriumu社製)により測定し求めた。トナーはフルカラープリンターに使用されている市販の負極性トナー(シアントナー、富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530用)を用い、トナー濃度を5重量%に調整した。調整した現像剤を50ccのガラス瓶に入れ、100rpmの回転数で撹拌した。
【0145】
ここで、トナーと5分、30分及び240分間撹拌後の帯電量をそれぞれ測定した。その結果に基づいて帯電安定性を下記の通り4段階で評価し、帯電量変化の小さい順に◎、○、△、×とした。
【0146】
(電気抵抗)
上記攪拌後(5分、30分及び240分)の現像剤からトナーを除去し、電気抵抗を測定した。トナーを除去するには、25μmの目開きを持つメッシュの篩を用いてトナーを除去した(その際現像材をメッシュの上に置き、下から掃除機等で吸引してトナーを分離しても構わない)。トナーを除去した後、以下のようにして抵抗を測定した。すなわち、電極間間隔1.0mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対抗させ、その間に、試料200mgを秤量して充填した。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、100Vの電圧を印加し、抵抗を絶縁抵抗計(SM-8210、東亜ディケーケー(株)製)にて測定した。なお、室温25℃、湿度55%に制御された恒温恒湿室内で測定を行った。この値に基づいて最大値、最小値、差、平均及び平均に対する差の割合を併せて示した。
【0147】
また、表4に示される上記帯電量及び電気抵抗値の値に基づいて帯電安定性及び抵抗安定性を下記に基づいて評価し、その結果を表5に示す。また、強度とトナースペントを下記により評価し、その結果を併せて表5に示す。
【0148】
(帯電量安定性)
◎:大変良好で、特に使用に適している(5分値と240分値の差の絶対値が3未満)。
○:良好で、使用に適している(5分値と240分値の差の絶対値が3以上5未満)。
△:使用レベルにある(5分値と240分値の差の絶対値が5以上10未満)。
×:使用レベルにない(5分値と240分値の差の絶対値が10以上)。
【0149】
(抵抗安定性)
上記測定の結果から、抵抗安定性を下記4段階にて評価した。評価は、3回測定したうちの最大値と最小値の差と、最大値と最小値の平均値をもって行った。
◎:大変良好で、特に使用に適している(最大値と最小値の差が、それらの平均の10%未満)。
○:良好で、使用に適している(最大値と最小値の差が、それらの平均の10%以上100%未満)。
△:使用レベルにある(最大値と最小値の差が、それらの平均の100%以上200%未満)。
×:使用レベルにない(最大値と最小値の差が、それらの平均の200%以上であるか、またはブレークダウンを起こしてしまう)。
【0150】
(キャリア強度試験(割れや削れ、微粒子の評価法))
充填キャリア50gを、50ccガラス瓶に入れ、そのガラス瓶を直径130mm、高さ200mmの円柱のホルダーに収納、固定し、ターブラーミキサーで360分攪拌した。攪拌した後のキャリアを、走査型電子顕微鏡(JSM-6100型日本電子株式会社製)を用いて、450倍の倍率で観察を行い、充填キャリアの破砕状況を確認した。攪拌前と変わらないものを「◎」、削れ、及び破砕により発生した浮遊樹脂などの微小粒子が、僅かに観察されるものを「○」とし、「◎」「○」と評価されたものについて合格とした。削れ及び浮遊樹脂などの微粒子が多く観察されるものは「△」とし、削れ及び浮遊樹脂などの微粒子が著しく多く観察され、さらに粒子の割れの発生も観察されたものについては「×」と評価した。
【0151】
(トナースペント)
トナースペントの評価方法は、下記の通りである。すなわち、トナー濃度7%とした現像剤を調製し、36時間攪拌後の現像剤からキャリアのみを抜き取り、トルエンでスペントしたトナーを洗浄した後、上澄み液の、波長560nmの光の透過率(%)を可視光分光光度計(JENWAY社製、MODEL6100)により測定し、透過率95%以上を合格として評価した。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【0154】
【表3】
【0155】
【表4】
【0156】
【表5】
【0157】
表3~5に示した結果から明らかなように、実施例1~12に示した樹脂充填型フェライトキャリアは、耐久試験において初期から安定した帯電性能を保っている。このことは、これらのキャリアは試験期間中にコート膜はがれやトナースペントが生じておらず、耐久性に富んでいることを強く示唆している。これらの中でも、充填樹脂のフェニル/メチル比を0.3~0.9の範囲として、表面にコーティングを施した実施例2~7は、抵抗の安定性に優れていることから、樹脂充填後の粒子とコーティング樹脂との密着性が良好であることが分かる。また、充填樹脂の分子量ピークが500~1000及び/又は1000~10000に持つ実施例1~6及び実施例9~12は、より高い強度を持っている。さらに充填樹脂の個数平均分子量、重量平均分子量及びZ平均分子量をそれぞれ1000~2000、2000~10000、10000~2000とした実施例1~5及び9~12は、粒子の強度、性能の安定性において優れており、重量平均分子量/個数平均分子量が1~6の範囲にある実施例1~4および9~12が特に優れている。また、実施例1、9~12から明らかなように、シリコーン樹脂に添加するアミノシランカップリング剤の量を調整することで、帯電量を広い範囲で調整することができる。」
(2) 上記記載事項オに基づけば、引用文献1には、実施例2として、以下の発明が記載されていると認められる。
「MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、ミルで5時間粉砕して得られたスラリーをスプレードライヤーにて乾燥し、得られた真球状の粒子を950℃で2時間加熱する仮焼成を行い、1/8インチ径のステンレスビーズを用いて湿式ボールミルで1時間粉砕したのち、さらに1/16インチ径のステンレスビーズを用いて4時間粉砕する粉砕を行い、このスラリーに分散剤と、バインダーとしてPVAを添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子を粒度調整した後、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分を除去し、電気炉にて、温度1150℃、酸素濃度0体積%で4時間保持する本焼成を行い、その後、解砕し、さらに分級して粒度調整し、その後磁力選鉱により低磁力品を分別し多孔質フェライト粒子の芯材を得て、
次に、上記多孔質フェライトの空隙に充填する樹脂として、メチルフェニルシリコーンを準備し、このシリコーン樹脂溶液45重量部(樹脂溶液濃度20重量%のため固形分としては9重量部、希釈溶媒:トルエン)にアミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10重量%添加し樹脂溶液を得て、上記多孔質フェライト芯材100重量部と、樹脂溶液を減圧下で混合撹拌し、トルエンを揮発させながら、樹脂を多孔質フェライト芯材の空隙に浸透、充填させて、その後、容器内を常圧に戻し、常圧下で撹拌を続けながら2℃/分の昇温速度で、撹拌機の熱媒温度を220℃まで上げて、この温度で60分間加熱撹拌を行い、樹脂を硬化させ、その後、室温まで冷却し、樹脂が充填、硬化されたフェライト粒子を得て、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除き、その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除いて、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアを得て、
そして、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリア1000重量部を万能混合撹拌器に投入し、固形のアクリル樹脂(製品名:BR-73、三菱レーヨン社製)10重量部をトルエン90重量部に混合して調製した樹脂溶液を添加して、液浸乾燥法により樹脂被覆を行い、その後、温度を145℃まで上げ、2時間撹拌を行い、樹脂を硬化し、樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子を取り出し、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除き、その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除いて得られる、表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリア。」(以下、「引用発明1」という。)
2 引用文献B
当審拒絶理由及び原査定の拒絶の理由に引用され、本件優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2009-237525号公報(以下、「引用文献B」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1) 「【実施例】
【0157】
以下、実施例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0158】
<共重合体1の製造>
下記式(4)で示される構造を有する一方の末端にエチレン性不飽和基(メタクリロイル基)を有する重量平均分子量5,000のメタクリル酸メチルマクロマー(平均値n=50)25質量部と、下記式(5)で示される構造を有するシクロヘキシルをユニットとしてエステル部位を有するメタクリル酸シクロヘキシルモノマー75質量部を、還流冷却器、温度計、窒素吸い込み管、及びすり合わせ方式撹拌装置を有する四つ口フラスコに加えた。さらにトルエン90質量部、メチルエチルケトン110質量部、及びアゾビスイソバレロニトリル2.0質量部を加えた。得られた混合物を、窒素気流下70℃で10時間保持し、重合反応終了後、洗浄を繰り返し、グラフト共重合体溶液(固形分33質量%)を得た。この溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による重量平均分子量は、56,000であった。また、Tgは91℃であった。これを共重合体1とする。得られた共重合体1の物性を表1に示す。
【0159】
【化6】
【0160】
式中、Xは、
【0161】
【化7】
【0162】
を表す。
【0163】
【化8】
(中略)
【0192】
【表1】
」
(2) 「【0199】
[キャリアコア(d)の製造]
モル比で、Fe2O3、MnCO3、Mg(OH)2及びSrCO3を、それぞれ66モル%、28モル%、5モル%、1モル%となるように秤量し、ボールミルを用いて10時間混合を行った。フェライト組成物を湿式混合した後、900℃で2時間仮焼し、仮焼されたフェライト組成物をボールミルで粉砕した。得られた粉砕物の個数平均粒径は0.4μmであった。
【0200】
得られた粉砕物に、水(粉砕物に対して300質量%)と重量平均分子量5,000のポリビニルアルコール(粉砕物に対して2.5質量%)と、空孔形成剤としてNa2CO3(重量平均粒径2μm)(粉砕物に対して5質量%)を加え、スプレードライヤーにより造粒した。電気炉にて、酸素濃度1.0%の窒素雰囲気下、1200℃で12時間焼成した後、解砕し、更に分級して、体積分布基準の50%粒径(D50)38μm、ゆるみ見かけ密度1.62g/cm3のキャリアコア(d)を得た。キャリアコア(d)の比抵抗は、1.3×107Ω・cm、固め見掛け密度1.74g/cm3、真密度4.81g/cm3であった。また、磁化の強さ71Am2/kg、残留磁化1.8Am2/kg、保磁力1.2kA/mであった。得られたキャリアコア(d)の物性を表2に示す。
(中略)
【0203】
【表2】
」
(3) 「【0207】
<磁性キャリアDの製造例>
ストレートシリコーン(信越化学社製KR255) 20.0質量%
γ-アミノプロピルトリエトキシシラン 0.5質量%
トルエン 79.5質量%
上記材料を混合し、樹脂液を得た。得られた樹脂液を用いて、キャリアコア(d)100質量部に対して、13.5質量部となるように樹脂充填を行った。樹脂の充填は、万能混合攪拌機(不二パウダル社製)を用いて、真空度を50kPaにし、70℃に加熱して行った。樹脂液は、3回に分け投入し、その後、1時間攪拌した。その後、真空度を5kPaにし、100℃で2時間加熱してトルエンを除去した。さらに、オーブンを用い、窒素をフローさせた状態で200℃に加熱し、2時間で樹脂を硬化させ、樹脂充填粒子(d’)を得た。
【0208】
キャリアコア(a)に代えて、樹脂充填粒子(d’)を用いる以外は磁性キャリアAの製造例と同様にして、磁性キャリアDを得た。製造条件及び得られた磁性キャリアDの物性を表3に示す。
(中略)
【0223】
【表3】
」
3 引用文献A
原査定の拒絶の理由に引用され、本件優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2009-244837号公報(以下、「引用文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質フェライト芯材の空隙に樹脂を充填させて得られる電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアであって、該多孔質フェライト芯材の細孔容積が0.04~0.16ml/g、ピーク細孔径が0.9~2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア。
(中略)
【請求項3】
上記多孔質フェライト芯材に充填する樹脂の量が、上記多孔質フェライト芯材100重量部に対して、6~30重量部である請求項1又は2記載の電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア。
【請求項4】
平均粒径が20~60μmである請求項1~3のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア。
(中略)
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂充填型キャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。」
(2) 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される樹脂充填型キャリアに関し、詳しくは、真密度が軽くなり、耐久性に優れ長寿命化され、更に帯電の立ち上がり性が速く、かつ耐刷時において帯電変動を引き起こさない電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア及び該樹脂充填型キャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
(中略)
【0031】
このように、上記した樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、帯電立ち上がり性が速く、かつ耐刷時における帯電変動を引き起こさない電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアが求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
従って、本発明の目的は、樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、帯電立ち上がり性が速く、かつ耐刷時における帯電変動を引き起こさない電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア及び該樹脂充填型キャリアを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明者らは、上述のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、帯電の立ち上がり性の悪化と、耐刷時における帯電変動の発生する一因として、ピーク細孔径が適切な範囲になっていないことを知見した。即ち、充填樹脂が含浸可能な容積を表している細孔容積は、低比重化の達成のためには、当然ある一定の範囲になっている事が必要である。また充填樹脂が含浸される芯材表面の孔の大きさを表している細孔径は、一方では、芯材粒子表面の凹凸度合いを表している。細孔径が小さいとこの表面の凹凸度合いは小さくなり、細孔径が大きいと、表面の凹凸度合いは大きくなる。粒子表面の凹凸度合いは、トナーとの摩擦帯電においてストレスを生じさせるため、キャリア粒子の帯電付与能力即ち帯電立ち上がり性と密接な関係にある。従って、細孔径が大きくなるほど、粒子表面の凹凸度合いは大きくなり、キャリア粒子の帯電立ち上がり性は向上する。しかしながら、ある一定の範囲を超えて、細孔径が大きくなりすぎると、樹脂を充填する際に粒子間の凝集が発生し易く、凝集粒子や異形粒子が多く発生する。また細孔径が大きくなる事は、粒子そのものの形状が悪化している事を表し、またこの様な粒子は強度自体も悪い。そのため、細孔径の大きさに起因した、凝集粒子、異形粒子の存在は、耐刷時における帯電変動の原因となる。この様に、多孔質フェライト芯材の細孔容積とピーク細孔径とをある特定の範囲にすることによって、上述の様な課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
【0034】
すなわち、本発明は、多孔質フェライト芯材の空隙に樹脂を充填させて得られる電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアであって、該多孔質フェライト芯材の細孔容積が0.04~0.16ml/g、ピーク細孔径が0.9~2.0μmであることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアを提供するものである。
(中略)
【発明の効果】
【0043】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、低比重で軽量化が図れるため、耐久性に優れ長寿命化が達成でき、しかも磁性粉分散型キャリアに比して高強度であり、かつ熱や衝撃による割れ、変形、溶融がない。また、特定の細孔径及び細孔容積を持つので、帯電立ち上がり性が速く、耐刷時における帯電変動を防止する事ができる。」
(3) 「【0044】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリア>
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、多孔質フェライト芯材の空隙に樹脂を充填させて得られるものである。この多孔質フェライト芯材は、Mn、Mg、Li、Ca、Sr、Cu、Znから選ばれる少なくとも1種を含むことが望ましい。近年の廃棄物規制を始めとする環境負荷低減の流れを考慮すると、Cu、Zn、Niの重金属を、不可避不純物(随伴不純物)の範囲を超えて含まないことが好ましい。
【0045】
この多孔質フェライト芯材の細孔容積は0.04~0.16ml/g、ピーク細孔径は0.9~2.0μmであることが必要である。
【0046】
多孔質フェライト芯材の細孔容積が0.04ml/g未満であると、十分な量の樹脂を充填することができないため軽量化が図れない。また、多孔質フェライト芯材の細孔容積が0.16ml/gを超えると、樹脂を充填してもキャリアの強度を保つことができない。更に、多孔質フェライト芯材の細孔容積の好ましい範囲は0.05~0.14ml/gであり、より好ましくは0.06~0.12ml/gである。
【0047】
多孔質フェライト芯材のピーク細孔径が0.9μm以上であると、芯材表面の凹凸の大きさが適度な大きさとなるため、トナーの接触面積が増加し、トナーとの摩擦帯電が効率よく行われるため、低比重でありながら、帯電の立ち上がり特性が良好化する。多孔質フェライト芯材のピーク細孔径が0.9μm未満では、このような効果が得られず、充填後のキャリア表面は平滑となるため、低比重であるキャリアにとっては、トナーとの十分なストレスが与えられず、帯電の立ち上がりが悪化する。また、多孔質フェライト芯材のピーク細孔径が2.0μmを超えると、粒子の表面積に対して、樹脂が存在する面積が大きくなるため、樹脂を充填する際に、粒子間の凝集が発生し易く、樹脂を充填したあとのキャリア粒子中に、凝集粒子や異形粒子が多く存在する。このため、耐刷におけるストレスで凝集粒子が解れ、帯電変動を引き起こす原因となる。更に、ピーク細孔径が2.0μmを超える様な多孔質芯材は、芯材表面の凹凸が大きい事を表し、この事は、粒子そのものの形状が悪いという事であり、また強度的にも劣るため、耐刷におけるストレスにより、キャリア粒子自体の割れが生じ、帯電変動を引き起こす原因となる。また、多孔質フェライト芯材のピーク細孔径の好ましい範囲は1.0~1.6μmである。
【0048】
このように、細孔容積とピーク細孔径が上記範囲にあることで、上記した各不具合がなく、適度に軽量化された樹脂充填型キャリアを得ることができる。
【0049】
〔多孔質フェライト芯材の細孔径及び細孔容積〕
この多孔質フェライト芯材の細孔径及び細孔容積の測定は、次のようにして行われる。すなわち、水銀ポロシメーターPascal140とPascal240(ThermoFisher Scientific社製)を用いて測定した。ディラトメータはCD3P(粉体用)を使用し、サンプルは複数の穴を開けた市販のゼラチン製カプセルに入れて、ディラトメータ内に入れた。Pascal140で脱気後、水銀を充填し低圧領域(0~400Kpa)を測定し、1st Runとした。次に再び脱気と低圧領域(0~400Kpa)の測定を行い、2nd Runとした。2nd Runの後、ディラトメーターと水銀とカプセルとサンプルを合わせた重量を測定した。次にPascal240で高圧領域(0.1Mpa~200Mpa)を測定した。この高圧部の測定で得られた水銀圧入量をもって、多孔質フェライト芯材の細孔容積、細孔径分布及びピーク細孔径を求めた。また、細孔径を求める際には水銀の表面張力を480dyn/cm、接触角を141.3°として計算した。
(中略)
【0052】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、多孔質フェライト芯材に樹脂を充填する。樹脂の充填量は、多孔質フェライト芯材100重量部に対して6~30重量部が望ましく、より望ましくは、6~20重量部であり、更に望ましくは、7~18重量部である。最も好ましい充填量は、8~17重量部である。樹脂の充填量が6重量部未満であると、十分な軽量化が図れない。また、樹脂の充填量が30重量部を超えると、充填時に凝集粒子が発生しやすくなり、帯電変動の原因となる。
【0053】
充填する樹脂は、特に制限されず、組み合わせるトナー、使用される環境等によって適宜選択できる。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。使用中の機械的ストレスによる樹脂の脱離を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。具体的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂が挙げられる。
(中略)
【0056】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、被覆樹脂により表面被覆することが望ましい。キャリア特性、特に帯電特性を初めとする電気特性はキャリア表面に存在する材料や性状に影響されることが多い。従って、適当な樹脂を表面被覆することによって、所望とするキャリア特性を、精度良く調整することができる。
【0057】
被覆樹脂は特に制限されない。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル-スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。使用中の機械的ストレスによる樹脂の脱離を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。具体的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂等が挙げられる。樹脂の被覆量は、充填型キャリア(樹脂被覆前)100重量部に対して、0.5~5.0重量部が好ましい。」
(4) 「【実施例1】
【0116】
MnO:35mol%、MgO:14.5mol%、Fe2O3:50mol%及びSrO:0.5mol%になるように原料を秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。MnO原料としては四酸化三マンガンを、MgO原料としては水酸化マグネシウムを、SrO原料としては炭酸ストロンチウムをそれぞれ用いた。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉で、1050℃で3時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて平均粒径が4.1μmまで粉砕した後、水を加え、さらに湿式のメディアミル(縦型ビーズミル、1/16インチ径のステンレスビーズ)を用いて5時間粉砕した。このスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をマイクロトラックにて測定した結果、D50は1.8μmであった。このスラリーに分散剤を適量添加し、適度な細孔容積を得るために、バインダーとしてPVA(20%溶液)を固形分に対して0.4重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行い、その後、ロータリー式電気炉で、700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行った。
【0117】
その後、トンネル式電気炉にて、焼成温度1125℃、窒素ガス雰囲気下にて、5時間保持した。この時、昇温速度を150℃/時、冷却速度を110℃/時とした。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別し、多孔質フェライト粒子の芯材を得た。このフェライト芯材の細孔容積は0.095ml/g、ピーク細孔径は1.41μm、細孔径のばらつきdvは0.68であった。
【0118】
次に、上記多孔質フェライト粒子100重量部と、T単位とD単位を主成分とする縮合架橋型シリコーン樹脂(重量平均分子量:約8000)を準備し、このシリコーン樹脂溶液60重量部(樹脂溶液濃度20%のため固形分としては12重量部、希釈溶媒:トルエン)にアミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10重量%添加し、60℃、2.3kPaの減圧下で混合撹拌し、トルエンを揮発させながら、樹脂を多孔質フェライト芯材内部に浸透、充填させた。
【0119】
トルエンが充分揮発したことを確認した後、さらに30分撹拌を続け、トルエンをほぼ完全に除去したのち、充填装置内から取り出し、容器に入れ、熱風加熱式のオーブンに入れ、220℃で2時間、加熱処理を行った。
【0120】
その後、室温まで冷却し、樹脂が硬化されたフェライト粒子を取り出し、200Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き樹脂が充填された樹脂充填粒子を得た。
【0121】
得られた粒子の表面に、充填した樹脂と同じシリコーン樹脂を充填後粒子の重量に対して0.2重量%、流動床コート装置を用いてコーティングを行った。この際、被覆した樹脂中に帯電制御剤として、アミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を被覆樹脂固形分に対して10重量%添加した。被覆した後、220℃で2時間加熱を行い、その後、室温まで冷却し、樹脂が硬化されたフェライト粒子を取り出し、200Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き、表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例2】
【0122】
充填するシリコーン樹脂溶液90重量部(樹脂溶液濃度20%のため固形分としては15重量部)にした以外は、実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例3】
【0123】
トンネル式電気炉での焼成温度を1100℃に変えた以外は実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例4】
【0124】
トンネル式電気炉での焼成温度を1150℃に変えた以外は実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例5】
【0125】
トンネル式電気炉での焼成温度を1100℃にし、充填するシリコーン樹脂溶液90重量部(樹脂溶液濃度20%のため固形分としては18重量部)にした以外は、実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例6】
【0126】
トンネル式電気炉での焼成温度を1150℃にし、充填するシリコーン樹脂溶液35重量部(樹脂溶液濃度20%のため固形分としては7重量部)にした以外は、実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
【実施例7】
【0127】
トンネル式電気炉での焼成温度を1170℃にし、充填するシリコーン樹脂溶液30重量部(樹脂溶液濃度20%のため固形分としては6重量部)にした以外は、実施例1と同様にして表面に樹脂被覆を施した樹脂充填型キャリアを得た。
(中略)
【0133】
実施例1~7及び比較例1~3の細孔容積、ピーク細孔径、細孔径のばらつきdv及び樹脂充填量を表1に示す。また、得られた樹脂充填型キャリアの各特性及び評価結果を表2に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
(評価)
表2に示した結果から明らかなように、実施例1~7に示した樹脂充填型キャリアは、適切な細孔容積と、ピーク細孔径及び細孔径のばらつきdvを保持している芯材を使用しているため、充填樹脂も過不足無く十分に行われた結果、帯電量の立ち上がり速度が速く、また、異形粒子や凝集粒子も多くないため、帯電変動の抑えられた良好な結果が得られた。
【0137】
これらのことから、実施例1~7に示した樹脂充填型キャリアは、低比重化が実現されており、同時に良好な帯電特性を持っているが示された。従って、これらのキャリアを現像剤に実際に使用した場合、トナー補給時にも帯電量が速やかに立ち上がり、耐刷においても帯電変動が少なく、経時においても、トナー飛散やカブリといった画像欠陥のない良好な画像品質が得られることが容易に想像される。また、補給用現像剤としても好適に使用できることが推察できる。」
第6 対比・判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1における「多孔質フェライト粒子の芯材」は、技術的にみて、本件発明1における「多孔質磁性コア粒子」に相当する。
また、引用発明1における「多孔質フェライトの空隙に充填する樹脂」は「メチルフェニルシリコーン」であるから、シリコーン樹脂であるといえる。したがって、引用発明1における「多孔質フェライトの空隙に充填する樹脂」は、本件発明1における「シリコーン樹脂」に相当する。
そして、引用発明1における「樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリア」は、上記シリコーン樹脂が多孔質フェライトの空隙である孔に充填されたフェライト粒子からなるものといえる。したがって、引用発明1における「樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリア」は、本件発明1の「多孔質磁性コア粒子及び該多孔質磁性コア粒子の孔に充填されているシリコーン樹脂を有する充填コア粒子」に相当する。
イ 引用発明1における「アクリル樹脂(製品名:BR-73、三菱レーヨン社製)」は、ビニル化合物であるアクリル酸及びその誘導体を重合して得られる樹脂である。したがって、引用発明1における「アクリル樹脂(製品名:BR-73、三菱レーヨン社製)」は、本件発明1における「ビニル系樹脂」に相当する。
そして、引用発明1の「樹脂を硬化し、樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子」は、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアに「アクリル樹脂(製品名:BR-73、三菱レーヨン社製)」を用いて樹脂被覆を行ったものであるから、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアの表面をビニル系樹脂で被覆しているといえる。したがって、引用発明1の「樹脂を硬化し、樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子」は、本件発明1の「該充填コア粒子の表面を被覆しているビニル系樹脂」を有するという要件を具備しているといえる。
ウ 引用発明1の「表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリア」は、「樹脂を硬化し、樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子」の集合体であるといえる。したがって、引用発明1の「表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリア」は、本件発明1の「磁性キャリア粒子の集合体である磁性キャリア」とする要件を満たしている。
以上より、本件発明1と引用発明1とは、
「多孔質磁性コア粒子及び該多孔質磁性コア粒子の孔に充填されているシリコーン樹脂を有する充填コア粒子と、
該充填コア粒子の表面を被覆しているビニル系樹脂と、
を有する磁性キャリア粒子の集合体である磁性キャリア。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]本件発明1では、約1.0gの該多孔質磁性コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される多孔質磁性コア粒子の積算細孔容積が、35.0mm3/g以上95.0mm3/g以下であるのに対し、引用発明1では、上記方法で算出される多孔質フェライト粒子の積算細孔容積が明らかとされていない点。
[相違点2]本件発明1では、約1.0gの該充填コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下であるのに対し、引用発明1では、上記方法で算出される樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアの積算細孔容積が明らかとされていない点。
[相違点3]本件発明1では、充填コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)が、19.0μm以上69.0μm以下であるのに対し、引用発明1では、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアの体積分布基準50%粒径が明らかとされていない点。
[相違点4]本件発明1では、磁性キャリアが、該充填コア粒子100.0質量部に対して1.2質量部以上3.0質量部以下の該ビニル系樹脂を有するのに対し、引用発明1では、樹脂が充填された樹脂充填型フェライトキャリアのフェライト粒子100重量部に対して1重量部のアクリル樹脂を含有する点。
(2)判断
事案に鑑みて[相違点2]について検討する。
引用文献1の記載事項ウにおける記載からみて、引用発明1の樹脂充填型フェライトキャリアには、充填しきれずに残った遊離樹脂が多量に発生しない範囲内で、十分な軽量化を図ることができる程度の樹脂が充填されていると考えられる。そうしてみると、引用発明1の樹脂充填型フェライトキャリアには、樹脂が十分充填されているはずであるから、その積算細孔容積は、極めて小さいと考えられる。この点は、本願の明細書に記載された充填コア粒子の中で、引用発明1のものと原料組成及び製造方法が最も近い充填コア粒子22の積算細孔容積が2.9mm3/gにすぎない(段落【0147】の表7)ことからも、推定できることである。
そうしてみると、引用発明1の樹脂充填型フェライトキャリアは、相違点2に係る本件発明1の積算細孔容積の数値範囲の要件(7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下)を満たさないものと解するのが相当である。
加えて、引用文献1には、樹脂充填型フェライトキャリアの積算細孔容積に関する記載は一切存在しない。したがって、当業者において、引用発明1の樹脂充填型フェライトキャリアの積算細孔容積を、相違点2に係る本件発明1の積算細孔容積の数値範囲の要件を満たすものとすることが、容易であるということもできない。
(3)むすび
以上のとおり、引用発明1において、本件発明1の[相違点2]に係る構成とすることは当業者が容易になし得たとはいえないものである。したがって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 本件発明2~6について
本件発明2~6は、何れも、約1.0gの該充填コア粒子を対象として水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径0.1μm以上3.0μm以下の範囲におけるLog微分細孔容積を積分して、算出される充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下であるとする構成を具備するものであるから、本件発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
原査定は、引用文献Aに記載の多孔質フェライトは、本願実施例の多孔質磁性コア粒子と組成及び製法が類似しているという判断に基づくものである。しかし、本件補正によって、充填コア粒子の積算細孔容積が、7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下と限定されている。引用文献Aに記載された実施例の何れも、充填後の積算細孔容積が7.8mm3/g以上12.8mm3/g以下の範囲に含まれるとはいえないものである。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-003305