特許拒絶査定不服審判
2017-003068
ノズル及びノズルを作製する方法
- 審判番号
- 2017-003068
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-254234
- 請求日
- 2017年03月01日
- 審決日
- 2017年10月17日
- 公報発行日
- 2018年04月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】長谷川 芳樹
- 【請求人代理人】清水 義憲
- 【請求人代理人】池田 成人
- 【請求人代理人】酒巻 順一郎
- 【請求人代理人】戸津 洋介
- 【請求人代理人】阿部 寛
- 審判長/審判官
- 審判長 金澤 俊郎
- 審判官 八木 誠
- 審判官 槙原 進
- 分類
- P18 .121-Z (F02M) / P18 .575-Z (F02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-254234「ノズル及びノズルを作製する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年6月18日出願公開、特開2015-110949〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2010年7月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月30日、米国)を国際出願日とする特願2012-523022号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成26年12月16日に新たな特許出願としたものであって、平成27年1月15日に翻訳文提出書により、明細書、特許請求の範囲及び図面の翻訳文が提出されるとともに、同日に特許請求の範囲について補正する手続補正書及び上申書が提出され、平成28年2月17日付けで拒絶理由が通知されたが、その指定期間内に意見書及び手続補正書の提出がなかったので、平成28年10月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成29年3月1日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出され、平成29年4月12日に審判請求書の請求の理由を補正する手続補正書(方式)が提出され、平成29年10月5日に上申書が提出されたものである。
第2 平成29年3月1日の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成29年3月1日の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成27年1月15日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1を下記の(2)に示す請求項1に補正することを含むものである。
(1)本件補正前
「【請求項1】
ノズルの一方の側をノズルの反対側とそれを通して連通させるように形成された複数の穴を備えるノズルであって、前記穴のそれぞれは、
第1の形状を有する、前記ノズルの一方の側にある穴入口と、
第2の形状を有する、前記ノズルの反対側にある穴出口と、
前記穴入口を前記穴出口へ連通させる内部表面とを備え、
前記穴入口と前記穴出口は、連続的に曲がった前記内部表面の少なくとも一部により連通されている、ノズル。」
(2)本件補正後
「【請求項1】
ノズルの一方の側をノズルの反対側と該ノズルを通して連通させるように形成された複数の穴を備える、電気メッキされた金属ノズルであって、前記穴のそれぞれは、
第1の形状を有する、前記ノズルの一方の側にある穴入口と、
第2の形状を有する、前記ノズルの反対側にある穴出口と、
前記穴入口を前記穴出口へ連通させ、且つ、電気メッキされた表面粗さを有する内部表面とを備え、
前記内部表面の少なくとも一部は、前記穴入口から前記穴出口に向かう方向に連続的に曲っている、ノズル。」
(なお、下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1については、本件補正前の請求項1における不明りょうな記載である「それ」を、本件補正後に「該ノズル」に特定し、本件補正前の請求項1における発明特定事項である「ノズル」を「電気メッキされた金属ノズル」と限定し、「内部表面」を「電気メッキされた表面粗さを有する内部表面」と限定するものである。
また、「前記穴入口と前記穴出口は、連続的に曲がった前記内部表面の少なくとも一部により連通されている」を「前記内部表面の少なくとも一部は、前記穴入口から前記穴出口に向かう方向に連続的に曲っている」とする補正は、内部表面の少なくとも一部に連続して曲がっていることについて、曲がる方向を限定するものである。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮及び同第4号の不明りょうな記載の釈明を目的とするものに該当する。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものを含むので、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。
3 独立特許要件の判断
3-1 引用文献
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の優先日前に頒布された特開2007-263114号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(a)「【0024】
図1には、噴射ノズル1の前方区分が示されている。この噴射ノズル1はノズルボディ2を有しており、このノズルボディ2の前方領域はノズルの先端に向かって先細になっている。ノズルの先端領域には、異なる加工成形を施された2つの噴射通路3,4が燃料用に設けられている。ノズルボディ2の内側には、噴射通路3,4を制御するためのノズルニードル5が位置している。・・・中略・・・噴射通路4の長手方向で見て、横断面の輪郭が楕円形の流入開口6から、例えば円形の流出開口7に近づくことも考えられる。」(段落【0024】)
(b)「【0025】
噴射ノズル1は合計3~10本の噴射通路を有しているが、図面を見やすくする理由から2本の噴射通路3,4しか示していない。これらの噴射通路3,4の深さは約1mmである。」(【0025】)
(2)上記(1)及び図面の記載より分かること
上記(1)(a)と図1の記載とあわせてみると、流入開口6は噴射ノズル1の一方の内側にあること、流出開口7は噴射ノズル1の他方の外側にあること、及び、噴射通路4は、噴射ノズル1の一方の内側を噴射ノズル1の他方の外側と噴射ノズル1を通して連通させるように形成され、流入開口6を流出開口7へ連通させる内周面を備えていることが分かる。
(3)引用文献1に記載の発明
したがって、上記(1)及び(2)を総合すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用文献1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
<引用文献1に記載の発明>
「噴射ノズル1の一方の内側から噴射ノズル1の他方の外側に噴射ノズル1を通して連通させるように形成された噴射通路4が設けられた、噴射ノズル1であって、噴射通路4は、
横断面の輪郭が楕円形の、噴射ノズル1の一方の内側にある流入開口6と
円形の、噴射ノズル1の他方の外側にある流出開口7と
流入開口6を流出開口7へ連通させる内周面を備える、噴射ノズル1。」
3-2 対比・判断
本件補正発明と引用文献1に記載の発明とを対比すると、その機能及び構造又は技術的意義からみて、引用文献1に記載の発明における「噴射ノズル1の一方の内側」は、本件補正発明における「ノズルの一方の側」に相当し、以下同様に、「噴射ノズル1の他方の外側」は「ノズルの反対側」に、「噴射通路4」は「穴」に、「噴射通路4が設けられた」は「穴を備える」に、「横断面の輪郭が楕円形の」は「第1の形状を有する」に、「流入開口6」は「穴入口」に、「円形の」は「第2の形状を有する」に、「流出開口7」は「穴出口」に、「内周面」は「内部表面」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1に記載の発明における「噴射ノズル1」は、「ノズル」という限りにおいて、本件補正発明における「金属ノズル」と共通する。
してみると、本件補正発明と刊行物に記載された発明とは、
「ノズルの一方の側をノズルの反対側と該ノズルを通して連通させるように形成された穴を備える、ノズルであって、前記穴は、
第1の形状を有する、前記ノズルの一方の側にある穴入口と、
第2の形状を有する、前記ノズルの反対側にある穴出口と、
前記穴入口を前記穴出口へ連通させる内部表面とを備える、ノズル。」の点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
本件補正発明は、穴を「複数」備えるのに対し、引用文献1に記載の発明は、穴を複数備えるのか不明な点(以下、「相違点1」という。)。
(相違点2)
本件補正発明は、ノズルが「電気メッキされた金属ノズル」であり、穴の内部表面は「電気メッキされた表面粗さを有する」のに対し、引用文献1に記載の発明は、ノズルは電気メッキされておらず、その材料が金属であるのか不明であり、穴の内部表面は電気メッキされていない点(以下、「相違点2」という。)。
(相違点3)
本件補正発明は、穴の「内部表面の少なくとも一部は、穴入口から穴出口に向かう方向に連続的に曲っている」のに対し、引用文献1に記載の発明は、かかる構成となっているのか不明である点(以下、「相違点3」という。)。
まず、上記相違点1について検討する。
引用文献1に記載の発明は、上記(1)(b)で示されるように、3~10本の噴射通路を有するものであり、そのうちの複数を噴射通路4とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎないから、引用文献1に記載の発明において、本件補正発明の相違点1に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
次に、上記相違点2について検討する。
燃料噴射ノズルにおいて、その材料を金属とすることは、原出願の優先日前の周知技術(例えば、特開平11-117833号公報の段落【0018】、及び、特開2000-146800号公報の段落【0010】等参照。以下、「周知技術1」という。)にすぎないことから、引用文献1に記載の発明において、周知技術1を適用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項である。
また、燃料噴射ノズルにおいて、穴を所望の形状とするために、穴の内部表面等に電気メッキをすることも、原出願の優先日前の周知技術(例えば、特許第3307722号公報の段落【0011】ないし【0013】、図1、特開2006-348846号公報の段落【0015】ないし【0017】及び図2等参照。以下、「周知技術2」という。)にすぎない。引用文献1に記載の発明は、噴射通路4を所定の形状にするものであるから、噴射通路4を形成するために、周知技術2を適用することは、当業者が容易になし得たことである。
よって、引用文献1に記載の発明において、周知技術1及び2を適用して、本件補正発明の相違点2に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
最後に、上記相違点3について検討する。
燃料噴射ノズルの穴において、穴の内部表面の少なくとも一部を、穴入口から穴出口に向かう方向に連続的に曲げることも、原出願の優先日前の周知技術(例えば、特開平11-117833号公報の段落【0017】及び図7、並びに、特開2009-8087号公報の段落【0006】等参照。以下、「周知技術3」という。)にすぎないことから、引用文献1に記載の発明において、周知技術3を適用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計的事項であり、本件補正発明の相違点3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用文献1に記載の発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成29年3月1日の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし12に係る発明は、平成27年1月15日の手続補正書により補正された特許請求の範囲、出願当初の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)示した請求項1に記載されたとおりのものである。
2 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1(特開2007-263114号公報)には、上記第2[理由]3-1(1)ないし(3)のとおりのものが記載されている。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2[理由]2で検討した本件補正発明の発明特定事項の限定を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が、上記第2[理由]3に記載したとおり、引用文献1に記載の発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1に記載の発明及び周知技術3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
そして、本願発明は、全体としてみても、引用文献1に記載の発明及び周知技術3から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。
4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
上記第3で述べたとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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