特許拒絶査定不服審判
2019-012086
吸気音低減装置
- 審判番号
- 2019-012086
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-206302
- 請求日
- 2019年09月12日
- 審決日
- 2020年04月28日
- 公報発行日
- 2020年08月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】NOK株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人秀和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 金澤 俊郎
- 審判官 北村 英隆
- 審判官 鈴木 充
- 分類
- P18 .121-Z (F02M) / P18 .575-Z (F02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-206302「吸気音低減装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年5月12日出願公開、特開2016-75224〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月7日の出願であって、平成30年5月30日付け(発送日:同年6月5日)で拒絶理由が通知され、平成30年8月3日に意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月18日付け(発送日:同年1月22日)で拒絶理由が通知書され、平成31年3月12日に意見書が提出されたが、令和元年7月31日付け(発送日:同年8月6日)で拒絶査定がされ(以下「原査定」という。)、これに対して令和元年9月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。
第2 令和元年9月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年9月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正発明
(1)本件補正前の平成30年8月3日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された高剛性網目部が設けられていると共に、
前記整流ネット部を空気が通過する位置で、かつ前記整流ネット部が設けられている範囲内で、空気の流量の分布を測定した場合に、流量が最大になる領域を含む領域に、前記高剛性網目部が設けられていることにより、該高剛性網目部が設けられている領域内に、流量が最大になる領域が含まれていることを特徴とする吸気音低減装置。」
(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)。
「【請求項1】
吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音を低減させる、ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製の吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された高剛性網目部が設けられていると共に、
前記整流ネット部を空気が通過する位置で、かつ前記整流ネット部が設けられている範囲内で、空気の流量の分布を測定した場合に、流量が最大になる領域を含む領域に、前記高剛性網目部が設けられていることにより、該高剛性網目部が設けられている領域内に、流量が最大になる領域が含まれていることを特徴とする吸気音低減装置。」
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「弾性体製の吸気音低減装置」において、「ゴム材または樹脂エラストマーからなる」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。
2 引用文献、引用発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった特開2011-127507号(以下「引用文献1」という。)には、「インテークマニホールド」に関して、図面(特に、図4及び5を参照。)と共に次の記載がされている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。
ア 「【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明のインテークマニホールドを実施するための最良の形態の一つとなる第1の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、インテークマニホールド10およびスロットルバルブ装置20の内部について模式的に示す概略模式断面図である。
図1に示すインテークマニホールド10は、吸入空気を不図示のエンジン内部に導入するために設置されるものである。このインテークマニホールド10は、図示左側が吸入空気が流れてくる上流側に設定されており、図示右下側が吸入空気が流れ出す下流側に設定されている。具体的には、インテークマニホールド10の上流側にはスロットルバルブ装置20が設置されており、下流側はインテークマニホールド10の一部分をなす分岐管15,15,15,15にて構成されている。
スロットルバルブ装置20は、開閉することにより吸入空気の吸気量を調節するものである。このスロットルバルブ装置20は、概略、略円筒状に形成されるスロットルボデー21と、このスロットルボデー21の内部にてバルブシャフト25により回動軸支されるスロットルバルブ27とを備える。スロットルボデー21は、図示左側の外開口部23が外気取入口(不図示)に連通状態で接続される部分となっており、図示右側の内開口部24がインテークマニホールド10の流入開口部36と連通状態で接続される部分となっている。このため、スロットルボデー21の内部は、不図示の外気取入口から取り入れられた外気を吸入空気としてインテークマニホールド10まで吸気するための吸気通路として構成されており、通気領域となる通気方向断面が略円形状をなすように形成されている。また、内開口部24は、インテークマニホールド10の流入開口部36に連通状態で結合されるように、適宜の外フランジを具備した連結構造を有して形成される。ここで、このスロットルボデー21内部には、所謂バタフライ型のスロットルバルブ27が、バルブシャフト25により回動軸支されて設けられている。このスロットルバルブ27は、広く利用されるスロットルバルブと同様、通気領域を閉塞可能な平板略円形状をなして形成されている。このスロットルバルブ27は、バルブシャフト25に軸支された状態で回動することにより、吸入空気の吸気量を調節するように開け閉めするようになっている。
【0015】
インテークマニホールド10は、概略、分岐管15,15,15,15と、サージタンク30と、導入管35と、ガスケット部材40とを備える。なお、分岐管15,15,15,15と、サージタンク30と、導入管35とは、樹脂の一体成形にて形成されている。
分岐管15,15,15,15は、サージタンク30の下流側にて連通状態で結合されるものである。この分岐管15,15,15,15は、不図示のエンジン(4気筒構成エンジン)の気筒のそれぞれに接続されるように4つ設けられている。
サージタンク30は、上記したスロットルバルブ装置20が開けられて吸気される吸入空気を収容するためのものである。このサージタンク30は、適宜の吸入空気を収容する収容容積を有したタンク状にて形成される。
導入管35は、サージタンク30の上流側に配置され、略管状に形成される。この導入管35の内部は、上記したスロットルバルブ装置20からの吸入空気をサージタンク30に送るにあたって、スロットルバルブ27とサージタンク30との間の吸入空気の吸気通路Pとして形成されるものである。このため、この導入管35は、上記したスロットルボデー21の内部と同様、通気領域となる通気方向断面が略円形状をなすように形成されている。」
イ 「【0017】
次に、上記したように流入開口部36に配設されるガスケット部材40について説明する。図4は、ガスケット部材40を示す側面視図である。
ガスケット部材40は、スロットルバルブ27とサージタンク30との間の吸入空気の吸気通路Pのうち、スロットルバルブ27の下流側の吸気通路Pに配設されるものである。具体的には、ガスケット部材40は、流入開口部36の凹溝部37に支持シール部41を嵌め合わせることにより流入開口部36に取り付けられ、スロットルバルブ27の下流側の吸気通路Pに配設されるものとなっている。
ガスケット部材40は、図4に示すように、概略、略円環状に形成される支持シール部41と、略網状に形成される異音抑止用ネット部45とを備える。支持シール部41は、上記したように流入開口部36に設けられる凹溝部37に嵌め合わされる部分である。この支持シール部41は、広く利用されるOリングのように弾性変形可能なゴム樹脂にて形成されている。この支持シール部41は、次に説明する異音抑止用ネット部45を支持する機能を有するとともに、インテークマニホールド10にスロットルバルブ装置20を連結するに際してのガスケットとしての機能を有している。つまり、ガスケット部材40は、スロットルバルブ装置20の内開口部24と、インテークマニホールド10の流入開口部36とを連通状態で接続するにあたり、これらの間の気密性を高めるように機能する。
なお、支持シール部41の一部周面には、この支持シール部41が凹溝部37に嵌め合わされた場合の留まりを良好とするための適宜の凸部44が複数設けられている。このように形成される支持シール部41内周側には、異音抑止用ネット部45が支持シール部41に一体化されて設けられている。なお、この支持シール部41には、配設されているか否かを外部から確認できるようにする耳42が設けられている。」
ウ 「【0018】
異音抑止用ネット部45は、スロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させつつ異音の音量を低減する機能を有する。この異音抑止用ネット部45は、図1に示すように、上記した吸気通路Pの通気領域のうちスロットルバルブ27の開き状態に合わせられた通気領域半分以内の部分に亘るように形成されている。具体的には、異音抑止用ネット部45は、吸気通路Pの通気領域半分以内の部分に亘る範囲で形成されつつ、さらにスロットルバルブ27が回動することによって開けられていく位置に異音抑止用ネット部45の外周中央が存するように形成される。より具体的に説明すると、図1に示すスロットルバルブ装置20のスロットルバルブ27は、バルブシャフト25を回動軸として図示反時計回り方向に回動して開くようになっている。これに対して、異音抑止用ネット部45は、スロットルバルブ27の上流側に回動する部分(図示上側部分)に対応して設けられている。
ところで、図4に示すように、異音抑止用ネット部45の外周側部分45aは、支持シール部41に対して一体化するように結合されている。この異音抑止用ネット部45の外周側部分45aには、略等間隔幅で形成される3つの切欠き形状(図示符号47,47,48にて示す部分)が形成されている。なお、この異音抑止用ネット部45は、金属板を打ち抜き加工することによって適宜の略網状(図示符号46にて示す部分)および切欠き形状(図示符号47,47,48にて示す部分)が形成される。
この異音抑止用ネット部45に設けられる3つの切欠き形状のうち、図示左側および図示右側にあっては、嵌挿溝47,47として形成されている。この嵌挿溝47,47は、上記したように、流入開口部36にガスケット部材40を配設した場合に、流入開口部36の内周側の一部分となる嵌挿部38,38が嵌挿される部分として形成される。このため、この嵌挿溝47,47は、上記した嵌挿部38,38の形状に対応した形状を有して形成される。
これに対し、この異音抑止用ネット部45に設けられる3つの切欠き形状のうち、図示中央にあっては、吸気通路Pの外周に沿うように設けられる通気用切欠き部48として形成されている。すなわち、通気用切欠き部48は、流入開口部36にガスケット部材40を配設した場合にスロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させ易くするために設けられるものである。この通気用切欠き部48は、異音抑止用ネット部45のうち吸気通路Pの外周近傍部分となる、流入開口部36内の外周に沿う位置にて配設される。具体的には、通気用切欠き部48は、スロットルバルブ27の開き開始位置に対応する異音抑止用ネット部45の外周部分を切り欠くようにして形成されている。また、この通気用切欠き部48は、上記した嵌挿部38に比して、その切欠き量が吸気通路Pとなる流入開口部36の中心に向けて拡大したように形成される。つまり、この通気用切欠き部48には、流入開口部36にガスケット部材40を配設した場合に、上記した嵌挿溝47,47と同様、流入開口部36の内周側の一部分となる嵌挿部38が嵌挿されることとなるが、この通気用切欠き部48に嵌挿部38が嵌挿されても、この通気用切欠き部48が形成される個所は、嵌挿部38に比して切欠き量が吸気通路Pとなる流入開口部36の中心に向けて拡大しているので、スロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させ易くする通気用切欠き形状を有した状態とすることができる。なお、嵌挿溝47,47は、嵌挿部38,38が嵌挿された場合には、スロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させ易くする通気用切欠き形状は有した状態とならず、異音抑止用ネット部45は流入開口部36の内周に面して存するようになる。」
エ 「【0019】
なお、異音抑止用ネット部45の略網状(図示符号46にて示す部分)にて形成される部分は、通気可能な適宜の格子形状を有して形成されており、スロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させつつ、この吸入空気を分断する。これによって、吸入空気により発生する異音の音量を低減する機能を発揮するようになっている。
また、異音抑止用ネット部45には、開いた状態のスロットルバルブ27の干渉を避けるためのバルブ逃げ部49が円弧状に切り欠かれることにより形成されている。具体的には、図4に示すように、異音抑止用ネット部45の内周側部分45bには、外周側に向かって円弧状に切り欠かれるバルブ逃げ部49が形成されている。このバルブ逃げ部49は、異音抑止用ネット部45のうち、図1に示す符号27Aのように全開状態のスロットルバルブ27が当たりそうになる部分に形成されるようになっている。これによって、異音抑止用ネット部45は、全開状態とスロットルバルブ27に対して干渉しない構造となる。」
オ 「【0021】
[第2の実施の形態]
次に、上記した第1の実施の形態のインテークマニホールド10とは異なるように構成される、第2の実施の形態のインテークマニホールドについて図面を参照しながら説明する。なお、この第2の実施の形態となるインテークマニホールドは、上記した第1の実施の形態となるインテークマニホールド10に比し、ガスケット部材40の構成のみが相違するものとなっている。このため、以下においては、第2の実施の形態となるインテークマニホールド(不図示)を構成するガスケット部材60についてのみを取り上げて説明することとする。なお、上記した第1の実施の形態のガスケット部材40と同一に構成される個所については同一の符号を付して説明を省略する。
図5は、第2の実施の形態のガスケット部材60を示す側面視図である。すなわち、図5に示す第2の実施の形態のガスケット部材60は、上記した第1の実施の形態のガスケット部材40に比して通気用切欠き部48の構成についてのみが相違するものとなっている。具体的には、この第2の実施の形態のガスケット部材60は、上記した第1の実施の形態のガスケット部材40の嵌挿溝47,47の構成を、隣接する通気用切欠き部48のように構成した例である。具体的には、第2の実施の形態のガスケット部材60には、上記した第1の実施の形態のガスケット部材40の通気用切欠き部48を3つ並べるかのように、通気用切欠き部68,68,68が3つ並べられて設けられることとなっている。この3つ通気用切欠き部68,68,68は、異音抑止用ネット部45の外周部分を切り欠くようにして形成され、上記した第1の実施の形態の嵌挿部38に比して切欠き量が吸気通路Pとなる流入開口部36の中心に向けて拡大したように形成される。このため、この第2の実施の形態の通気用切欠き部68,68,68は、流入開口部36にガスケット部材60を配設した場合に、図2に示すように流入開口部36の内周側の一部分となる嵌挿部38,38,38が嵌挿されることとなるが、この通気用切欠き部68,68,68に嵌挿部38,38,38が嵌挿されても、この通気用切欠き部68,68,68が形成される個所は、嵌挿部38,38,38に比して切欠き量が吸気通路Pとなる流入開口部36の中心に向けて拡大しているので、スロットルバルブ27から吸気される吸入空気を通気させ易くする通気用切欠き形状を有した状態とすることができる。
上記した第2の実施の形態のインテークマニホールドによれば、上記した第1の実施の形態のインテークマニホールド10に比して、通気用切欠き部68,68,68の設けられている範囲が周方向に亘って拡大しているので、より効果的にスロットルバルブ装置20から吸気された吸入空気の吸気抵抗を小さくすることができる。もって、サージタンク30への吸入空気の流入を、さらに向上させることができる。」
カ 上記アの記載事項及び【図1】からみて、スロットルボデー21及び導入管35は、吸気管を構成するといえる。
上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「吸気管を構成するスロットルボデー21及び導入管35のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間を封止する環状の支持シール部41と、
該支持シール部41の内周側に一体化されて設けられ、かつ略網状にて形成される部分は格子形状により構成され、吸入空気を通気させつつ異音の音量を低減する異音抑止用ネット部45と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブ27の下流側に配置されて異音の音量を低減させる、ゴム樹脂にて形成される支持シール部材41及び金属板からなる異音抑止用ネット部45を備えるガスケット部材40であって、
前記異音抑止用ネット部45には、通気用切欠き部68及び略網状にて形成される部分(46)が設けられている、
ガスケット部材40。」
(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2014/136666号(以下「引用文献2」という。)には、「吸気音低減装置」に関して、図面(特に図1、2及び10を参照。)とともに次の記載がある。
ア 「[0024]本実施例に係る吸気音低減装置100は、吸気管内においてスロットルバルブ300の下流側に配置される。また、本実施例においては、吸気管を構成するインテークマニホールド210とスロットルボディ220との接続部付近に、吸気音低減装置100が配置される。なお、本実施例においては、スロットルバルブ300の回転軸は水平方向に伸びるように設置される。また、このスロットルバルブ300は、図2中矢印方向に回転することで、弁を開くように構成されている。以上の構成により、スロットルバルブ300の開き始めの状態においては、吸気管内の上部側の空気の流れと、下部側の空気の流れが生じる。この点については、背景技術の中で、図10を参照して説明した通りである。
[0025]本実施例に係る吸気音低減装置100は、整流ネット110と、ガスケット部120とから構成される。また、吸気音低減装置100は、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性体により構成されている。そして、整流ネット110とガスケット部120とは一体となっている。ただし、整流ネット110に関しては、金属などの剛体で構成しても良い。この場合には、整流ネット110とガスケット部120とは別部材で構成される。しかしながら、例えば、整流ネット110をインサート部品として、インサート成形を行うことによって、整流ネット110とガスケット部120を一体的にさせることが可能となる。」
イ 上記アの記載事項及び[図1]の図示内容からみて、ガスケット部120は環状の構成を備えており、また前記ガスケット部120の内側に整流ネット110が一体となって設けられた構成が示されているといえる。
上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献2記載事項]
「環状のガスケット部120と、該ガスケット部120の内側に一体となって設けられた整流ネット110と、を備え、各種ゴム材や樹脂エラストマーなどの弾性材により構成されている吸気音低減装置100。」
(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-14279号公報(以下「引用文献3」という。)には、「ガスケット」に関して、図面(特に、【図1】及び【図2】を参照。)とともに次の記載がある。
ア 「【0006】しかしながら、従来知られている吸気音低減板は、アルミニウムや合成樹脂等の剛体により構成されている。そのため、吸気音低減板自体は変形しないため、脈動の発生を十分抑制することができず、吸気音の低減効果が不十分である。
【0007】また、吸気音低減板を専用部品として設けているために、部品点数が増加してしまい、コストアップの原因にもなっている。」
イ 「【0011】すなわち、本発明のガスケットは、
吸気管を構成する2つの管同士の結合部分に備えられると共に、ゴム状弾性体によって構成されるガスケットにおいて、
2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面に挟み込まれることによって、管同士の隙間を封止する封止部と、
吸気通路を遮るように配されて、吸気音を低減する吸気音低減部と、を備え、
前記吸気音低減部は気体の流れに応じて弾性的に撓み変形自在に構成されており、かつ、該吸気音低減部は上流側から流れてくる気体の流れを下流側に向けて分散させる複数の貫通孔を備えていることを特徴とする。」
ウ 「【0021】また、ガスケット10はゴム状弾性体で構成されている。そして、このガスケット10の全体形状は円板形状であり、周縁には周縁に沿った円形の突出部11aが設けられている。この突出部11aを含む外周部分が上記の封止部11に相当し、円板形状部の中央の大部分が上記の吸気音低減部12に相当する。」
エ 上記ウの記載事項及び【図2】の図示内容からみて、封止部11は環状の構成を備えており、また前記封止部の内側には吸気音低減部が一体に設けられた構成が示されているといえる。
上記記載事項及び図示内容を総合すると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献3記載事項]
「吸気管を構成する2つの管同士の隙間を封止する環状の封止部11と、該封止部の内側に一体に設けられた吸気音低減部12とを備えたゴム状弾性体によって構成されるガスケット10。」
3 対比・判断
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「スロットルボデー21及び導入管35」はその機能、構成及び技術的意義からみて前者の「2つの管」に相当し、以下同様に、「支持シール部41」は「ガスケット部」に、「内周側」は「内側」に、「略網状にて形成される部分は格子形状」は「網目状に設けられた線状部」に、「吸入空気を通気させつつ異音の音量を低減する」は「空気の流れを整流することで吸気音を低減させる」に、「異音の音量」は「吸気音8」に、「ガスケット部材40」は「吸気音低減装置」にそれぞれ相当する。
また、後者の「異音抑止用ネット部45」は支持シール部41と一体化されて設けられていることから、後者の「支持シール部41の内周側に一体化されて設けられ」と、前者の「ガスケット部の内側に一体に設けられ」とは、「ガスケット部の内側に一体的に設けられ」という限りで一致する。
また、後者の「ゴム樹脂にて形成される支持シール部材41及び金属板からなる異音抑止用ネット部45を備えるガスケット部材40」と、前者の「ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製の吸気音低減装置」とは、「ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製のガスケット部を備えた吸気音低減装置」という限りで一致する。
また、後者の「異音抑止用ネット部45には、通気用切欠き部68及び略網状にて形成される部分(46)が設けられている、ガスケット部材40」と、前者の「整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された高剛性網目部が設けられていると共に、前記整流ネット部を空気が通過する位置で、かつ前記整流ネット部が設けられている範囲内で、空気の流量の分布を測定した場合に、流量が最大になる領域を含む領域に、前記高剛性網目部が設けられていることにより、該高剛性網目部が設けられている領域内に、流量が最大になる領域が含まれていることを特徴とする吸気音低減装置」とは、「整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された網目部が設けられている吸気音低減装置」という限りで一致する。
よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「吸気管を構成する2つの管のうち一方の管の端面と他方の管の端面との間の隙間を封止する環状のガスケット部と、
該ガスケット部の内側に一体的に設けられ、かつ網目状に設けられた線状部により構成され、空気の流れを整流することで吸気音を低減させる整流ネット部と、
を備え、吸気管内においてスロットルバルブの下流側に配置されて吸気音8を低減させる、ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製のガスケット部を備えた吸気音低減装置であって、
前記整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された網目部が設けられている吸気音低減装置。」
[相違点1]
「ガスケット部の内側に一体的に設けられる整流ネット部」に関して、本件補正発明の整流ネット部は、ガスケット部の内側に「一体」に設けられている構成であるのに対し、引用発明の異音抑止用ネット部45は、支持シール部41の内周側に一体化されて設けられている点。
[相違点2]
「ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製のガスケット部を備えた吸気音低減装置」に関して、本件補正発明は、ガスケット部及びガスケット部の内側に一体に設けられる整流ネット部からなる「吸気音低減装置」がゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体製であるのに対して、引用発明のガスケット部材40は、ゴム樹脂にて形成される支持シール部材41及び金属板からなる異音抑止用ネット部45から構成されている点。
[相違点3]
「整流ネット部には、局所的に網目が細かく構成された網目部が設けられている吸気音低減装置」に関して、本件補正発明の整流ネット部には、「局所的に網目が細かく構成された高剛性網目部」が設けられていると共に、「整流ネット部を空気が通過する位置で、かつ前記整流ネット部が設けられている範囲内で、空気の流量の分布を測定した場合に、流量が最大になる領域を含む領域に、前記高剛性網目部が設けられている」のに対して、引用発明の「異音抑止用ネット部45」はそのような構成を備えているか不明である点。
上記相違点1及び2について検討する。
引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項からみて、ガスケット部及び整流ネット部を、ゴム材または樹脂エラストマーからなる弾性体で一体とすることは、本願の出願日前に周知の技術である(以下「周知技術」という。)。
したがって、上記相違点1及び2に係る本件補正発明の特定事項は、引用発明において周知技術を参酌することにより、当業者が容易になし得たものである。
上記相違点3について検討する。
本件補正発明は「整流ネット部を空気が通過する位置で、かつ前記整流ネット部が設けられている範囲内で、空気の流量の分布を測定した場合に、流量が最大になる領域を含む領域に、前記高剛性網目部が設けられている」構成を備えているが、「流量が最大になる領域」はスロットルバルブの位置等により変化するものと考えられる。
一方、引用文献1においても「流量が最大になる領域」は、スロットルバルブ27の位置等により変化するものと考えられるが、導入管35の内壁付近においては、空気と管壁との間で摩擦が生じることにより相対的に流量が小さくなることは技術常識であり、また、導入管35の中心付近ではスロットルバルブ27が障害となるために。相対的に流量が小さくなることは、当業者が容易に理解できることである。
そうすると、引用文献1において「流量が最大になる領域」は導入管35の内壁付近と導入管35の中心付近の間に存在するといえる。
そして、引用発明の「異音抑止用ネット部45の略網目状にて形成される部分(46)」は導入管35の内壁付近と導入管35の中心付近の間に存在する(例えば図5を参照。)から、引用発明における「異音抑止用ネット部45の略網状にて形成される部分(46)」が設けられている領域は、流量が最大になる領域を含むといえる。
また、「高剛性網目部」について、本願の明細書の段落【0024】を参照すると「高剛性網目部122においては、網目が細かいため、整流ネット本体部121に比べて剛性が高くなっている。」と記載されており、一方、引用発明における「異音抑止用ネット部45の略網状にて形成される部分(46)」も、「通路用切り欠き部68」と比較して網目が細かい構成を備えていることから、局所的に網目が細かく構成されているということができ、本件補正発明における「高剛性網目部」に相当するといえる。
そうすると、引用発明における異音抑止用ネット部45は、「流量が最大になる領域を含む領域に、高剛性網目部が設けられている」といえるので、上記相違点3は実質的な相違点とはいえない。
そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。
4 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年9月12日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成30年8月3日の手続補正により補正された請求項1及び2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、第2[理由]1(1)に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由の概要
原査定における拒絶の理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明基いて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1に対して: 引用文献1ないし3
<引用文献等一覧>
1.特開2011-127507号公報
2.国際公開第2014/136666号
3.特開2008-14279号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1ないし3の記載事項及び認定事項は、前記「第2[理由]2(1)ないし(3)」に記載したとおりである。
4 当審の判断
本件補正発明は、前記「第2[理由]」で検討したとおり、本願発明に発明特定事項を付加して限定したものであるから、本願発明は、本件補正発明の発明特定事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]に記載したとおり、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2019-012086