特許拒絶査定不服審判
2017-000948
フラットケーブル用コネクタ
- 審判番号
- 2017-000948
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-207746外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年01月24日
- 審決日
- 2017年11月27日
- 公報発行日
- 2018年01月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012-207746「フラットケーブル用コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月10日出願公開、特開2014- 63629、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年9月21日の出願であって、平成28年5月16日付けで拒絶理由が通知され、同年6月24日に意見書及び手続補正書が提出され、同年11月16日付け(発送日:同年11月22日)で拒絶査定(以下、「原審拒絶査定」という。)がなされ、これに対し、平成29年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、その後、当審において同年8月2日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月28日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 原審拒絶査定の概要
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
A 特開2011-119162号公報
B 特開2005-32509号公報
C 特開2010-267427号公報
第3 当審拒絶理由の概要
本願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1 特開2010-153209号公報(当審において新たに引用した文献)
2 特開2011-119162号公報(拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年9月28日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
フラットケーブルの接続端子部と電子機器とを接続するフラットケーブル用コネクタであって、
前記電子機器に固定され、フラットケーブルが差し込まれる差込部と、この差込部から内部へと続くフラットケーブル収容空間と、が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に配列配置されて、電子機器に設けられた配線端子に接続され、フラットケーブルが差込部を通じてフラットケーブル収容空間に差し込まれた際に、フラットケーブルの接続端子部に接触接続される端子と、
前記ハウジングの電子機器に対接する面の裏面に載置され、フラットケーブルの接続端子部が前記端子に接触接続した際にフラットケーブルの先端側に形成された係止孔に係合する一対のフラットケーブル保持部と、前記一対のフラットケーブル保持部に跨って架設された基部と、が形成され、前記フラットケーブル保持部がフラットケーブルの係止孔に係合することにより前記フラットケーブルを係止し、前記基部を持ち上げることにより前記フラットケーブル保持部が前記フラットケーブルの係止孔より上に移動し、前記フラットケーブルの係止が解除されるロック部材と、
を備え、
前記ハウジングの電子機器に対接する面の裏面は、
前記差込部の挿入側に前記差込部と同一高さに形成されたフラットケーブル載置平面と、
前記ロック部材が収納される中段面と、
前記差込部の挿入側の反対側に形成された上段面と、
で段差状に形成され、
前記中段面は、前記上段面から前記ロック部材の基部と同一寸法の厚みで切り欠かれたことを特徴とするフラットケーブル用コネクタ。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
(1) 引用文献1の記載事項
本願の出願前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2010-153209号公報(引用文献1)には、「電気コネクタ」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付した。
(ア)「【0001】
本発明は、アクチュエータの開閉によって、絶縁ハウジング内に挿入された信号伝送媒体に対して導電コンタクトの接点部を当接又は離間させるように構成された電気コネクタに関する。」(段落【0001】)
(イ)「【0024】
以上述べたように本発明にかかる電気コネクタは、絶縁ハウジングに開閉可能に設けたアクチュエータに、前記絶縁ハウジングの内部に挿入した信号伝送媒体側に向かって突出する案内係止部を設け、アクチュエータが閉塞位置にある状態で絶縁ハウジングの内部に挿入した信号伝送媒体をアクチュエータの案内係止部に当接させ、閉塞位置にあったアクチュエータを開放方向に持ち上げ移動させて信号伝送媒体の挿入を許容するとともに、そのアクチュエータの案内係止部を信号伝送媒体の一部に係合させることによって信号伝送媒体を最終接続位置に保持させるように構成したものであるから、簡易な構成で、アクチュエータの移動操作を不要としつつも小型化及び信頼性の向上を図ることができ、電気コネクタの有用性を低廉かつ大幅に高めることができる。」(段落【0024】)
(ウ)「【0026】
まず、図1~図4に示された実施形態にかかる電気コネクタ10は、コネクタ前端側部分(図3の左端側部分)に配置された媒体固定操作手段としてのアクチュエータ11が、図5~図7に示されているように、図示上方側に向かって開放されるように構成されており、その電気コネクタ10が図示を省略した主配線基板上に固定された状態で、当該電気コネクタ10の前方側(図3の左方側)から、フレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fの挿入が行われるようになっている。
【0027】
その電気コネクタ10は、細長状に延在する絶縁性部材からなる絶縁ハウジング12を備えている。絶縁ハウジング12は、略中空箱状をなすように形成されており、当該絶縁ハウジング12の内部に、略U字形状を横にした側面形状を有する金属製の導電コンタクト(導電端子)13が複数体にわたって装着されている。また、前記絶縁ハウジング12の前方側部分(図3の左方側部分)は上方に開放されるように形成されており、その前方側上方開放部分に、長尺状の板状部材からなるアクチュエータ11が開閉可能となるように取り付けられている。アクチュエータ11は、本発明の要部であるので詳細な構成については後述することとする。
…(中略)…
【0029】
一方、上述した絶縁ハウジング12のコネクタ前端側(図3の左端側)には、上述したフレキシブル・プリンテッド・サーキット(FPC)やフレキシブル・フラット・ケーブル(FFC)等からなる信号伝送媒体Fが挿入される媒体挿入口12aが、横細長の開口形状を有するようにして設けられている。なお、この媒体挿入口12aの上縁部は、アクチュエータ11により形成されている。また、その媒体挿入口12aとは反対側のコネクタ後端側(図3の右端側)には、上述した導電コンタクト13等を装着するための部品取付口12bが設けられている。
【0030】
前記導電コンタクト13の各々は、上述したようにコネクタ後端側に設けられた部品取付口12bから前方側(図3の左方側)に向かって押し込むようにして装着されており、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの表面又は裏面に形成された信号伝送用導電路(信号線)又はグランド用導電路(グランド線)のいずれかに対応した位置に当該導電コンタクト13のそれぞれが配置されている。これらの各導電コンタクト13は、信号伝送媒体Fの挿入方向に沿って延在する一対の細長状ビーム部材からなる可動ビーム13a及び固定ビーム13bをそれぞれ有している。
…(中略)…
【0032】
すなわち、前記各可動ビーム13aは、図3の紙面を含む平面内において揺動可能となるように配置されており、当該可動ビーム13aの延在方向における先端部分が図示上下方向に変位される構成になされている。また、その可動ビーム13aのコネクタ前端側部分(図3の左端側部分)には、上述した信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの図示上面側に形成された信号伝送用又はグランド用の導電路(図示省略)のいずれかに接続される接点部としての端子接触凸部13a1が図示下向きの突形状をなすように設けられている。
…(中略)…
【0035】
一方、前記固定ビーム13bのコネクタ後端側部分(図3の右端側部分)には、上述した主印刷配線基板(図示省略)上に形成された導電路に半田接続される基板接続端子部13b2が形成されている。
…(中略)…
【0037】
ここで、上述した媒体固定操作手段として設けられたアクチュエータ11は、全体が略板状の部材から形成されており、前記絶縁ハウジング12の前方側部分(図3の左方側部分)における上面側部分に開閉自在に取り付けられている。そのアクチュエータ11は、前記絶縁ハウジング12の横幅方向(長手方向)に沿って細長状に延在する本体板11bを有しており、当該本体板11bの横幅方向(長手方向)両端部分には、横幅方向(長手方向)の外方に向かって突出する回動軸部(図示省略)がそれぞれ設けられている。そして、その本体板11bの回動軸部は、前記絶縁ハウジング12の横幅方向(長手方向)両端部分に設けられた軸受部(図示省略)に対して回動自在に支持されており、それによってアクチュエータ11の全体が開閉可能となるように保持されている。
【0038】
なお、前記回動軸部と軸受部は必ずしも必要ではなく、前記回動軸部と軸受部を設けなくてもよい。この場合、後述する閉塞弾性部材11dを設ければ、アクチュエータは、押圧カム部11aが可動ビーム13a及び固定ビーム13bに回動自在に支持されるとともに、前記閉塞弾性部材11dに上方側から圧接されているので、アクチュエータ11の全体が開閉可能となるように保持される。
【0039】
このアクチュエータ11は、図1~図4のように絶縁ハウジング12の一部をなすように略水平に倒された状態の「閉塞位置」と、図5~図7のように信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの厚さ分に相当する高さ分だけ上方側に持ち上げられた状態の「開放位置」との間で回動されるようになっている。
…(中略)…
【0043】
一方、上述したアクチュエータ11の本体板11bの前端縁部分(図3の左端縁部分)には、当該本体板11bの下面側から図示下方側、すなわち前記絶縁ハウジング12の内部に挿入された前記信号伝送媒体(FPC又はFFC)F側に向かって突出する案内係止部11cが設けられている。この案内係止部11cは、前記絶縁ハウジング12の横幅方向(長手方向)の両端部分に一対設けられており、それらの各案内係止部11cが、下端側に頂点を有する横断面略三角形状をなすようにそれぞれ形成されている。すなわち、それらの各案内係止部11cの前端面(図3及び図4の左端面)は、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの挿入方向に対して傾斜するガイド面になされており、信号伝送媒体Fの挿入が許容されるようになっている。
【0044】
より具体的には、まず図1~図4に示されているようにアクチュエータ11が「閉塞位置」にある状態で、絶縁ハウジング12の内部に信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fが挿入されてくると、当該信号伝送媒体Fの挿入側先端部(図3の右端部)における幅方向両端部分が、上述した案内係止部11cに当接する配置関係になされている。そして、そのようにして信号伝送媒体Fの挿入側先端部が案内係止部11cの傾斜ガイド面に当接すると、「閉塞位置」にあるアクチュエータ11を開放方向である上方向に持ち上げる作用力が発生し、アクチュエータ11の全体が、図5~図7に示された「開放位置」まで移動させられるようになっている。このときのアクチュエータ11の持ち上げ量は、信号伝送媒体Fの厚さ分に等しくなり、そのようなアクチュエータ11の持ち上げによって、信号伝送媒体Fの挿入が許容される構成になされている。
【0045】
また、上述したようにアクチュエータ11が「閉塞位置」(図1~図4参照)から「開放位置」(図5~図7参照)に向かって開放される際には、前述した押圧カム部11aの作用によって可動ビーム13aが上方に持ち上げられ、固定ビーム13bとの間隔が増大させられることから、可動ビーム13aの端子接触凸部13a1と固定ビーム13bの端子接触凸部13b1どうしの間に、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fが支障なく挿入されることとなる。
【0046】
一方、前記信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの幅方向の両端部分には、前記案内係止部11cが係合する位置規制部F1が設けられている。この位置規制部F1は、信号伝送媒体Fの幅方向両側縁部を切り欠くようにして設けられた穴部又は凹部から形成されており、信号伝送媒体Fが絶縁ハウジング12の内部に最も押し込まれた最終接続位置(図8~図10参照)において、上述したアクチュエータ11の案内係止部11cが、位置規制部F1に落ち込むようにして係合される位置関係になされている。
【0047】
この案内係止部11cが位置規制部F1に落ち込んで係合されるとき、アクチュエータ11が「開放位置」から「閉塞位置」に閉塞され、前述のように押圧カム部11aの径変化に従って、前記可動ビーム13aの略中央部分に設けられた被作動部13a2が下方側に変位し、それに伴ってコネクタ前端側に設けられた端子接触凸部13a1が元の下方位置に復元され、可動ビーム13aの端子接触凸部13a1及び固定ビーム13bの端子接触凸部13b1が信号伝送媒体Fに接触することとなる。また、このように信号伝送媒体Fの位置規制部F1に対してアクチュエータ11の案内係止部11cが係合されることによって、最終接続位置まで挿入された信号伝送媒体Fが、絶縁ハウジング12から抜け出すことなく保持される構成になされている。そして、そのような案内係止部11cの係止作用によって、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fに不測の外力等が作用した場合においても当該信号伝送媒体Fが電気コネクタから抜け出ることが良好に防止されるようになっている。
…(中略)…
【0049】
さらに、前記アクチュエータ11には、当該アクチュエータ11を「閉塞位置」に向かって付勢する閉塞弾性部材11dが付設されている。この閉塞弾性部材11dは、アクチュエータ11の幅方向における両側外方部分にそれぞれ配置された固定部材14,14に一体的に形成されている。それらの各固定部材14は、コネクタ全体を主配線基板(図示省略)に固定する金属製の板状部材から形成されており、当該各固定部材14の上端部分に片持ちバネ状をなすようにして閉塞弾性部材11dが一体的に形成されている。
…(中略)…
【0057】
例えば、上述した実施形態においては、信号伝送媒体(FPC又はFFC)Fの位置規制部F1を、信号伝送媒体Fの幅方向両側縁部を切り欠いて外方側に連通する穴部又は凹部から形成しているが、そのような切り欠き形成によるものではなく、外方側に連通しない独立した形状の穴部又は凹部として位置規制部F1を設けることも可能である。」(段落【0026】ないし【0057】)
(エ)上記(ウ)の段落【0044】の記載及び図3から、絶縁ハウジング12には信号伝送媒体Fを収容する空間(以下、「信号伝送媒体F収容空間」という。)が形成されていることが分かる。
(オ)図4から、絶縁ハウジング12の主配線基板に対設する面の裏面は、媒体挿入口側に案内係止部11cと同一高さに形成され、アクチュエータ11を取り付ける面と、媒体挿入口の反対側に形成された上側の面と、で段差状に形成された構成を有することが看取される。
(2) 引用発明
上記(1)の記載事項及び図1ないし10の図示事項を総合し、本願の請求項1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「信号伝送媒体Fの信号伝送用導電路又はグランド用導電路と主配線基板とを接続する電気コネクタ10であって、
前記主配線基板に固定され、信号伝送媒体Fが挿入される媒体挿入口12aと、この媒体挿入口12aから内部へと続く信号伝送媒体F収容空間と、が形成された絶縁ハウジング12と、
前記絶縁ハウジング12内に配列配置されて、主配線基板上に形成された導電路に接続され、信号伝送媒体Fが媒体挿入口12aを通じて信号伝送媒体F収容空間に挿入された際に、信号伝送媒体Fの信号伝送用導電路又はグランド用導電路に接触接続される導電コンタクト13と、
前記絶縁ハウジング12の主配線基板に対接する面の裏面に載置され、信号伝送媒体Fの信号伝送用導電路又はグランド用導電路が前記導電コンタクト13に接触接続した際に信号伝送媒体Fの先端側に形成された位置規制部F1に係合する一対の案内係止部11cと、前記一対の案内係止部11cに跨って架設された本体板11bと、が形成され、前記案内係止部11cが信号伝送媒体Fの位置規制部F1に係合することにより前記信号伝送媒体Fを係止するアクチュエータ11と、
を備え、
絶縁ハウジング12の主配線基板に対設する面の裏面は、媒体挿入口側に案内係止部11cと同一高さに形成され、アクチュエータ11を取り付ける面と、媒体挿入口の反対側に形成された上側の面と、で段差状に形成された電気コネクタ10。」
2 引用文献2
(1) 引用文献2の記載事項
本願の出願前に頒布され、原審拒絶査定及び当審拒絶理由で引用された特開2011-119162号公報(引用文献2)には、「コネクタ装置」に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「【0030】
…(中略)…
【図4】図3におけるIV-IV線断面を示す断面図である。
…(中略)…
【図6】図3におけるVI-VI線断面を示す断面図である。
…(中略)…
【図14】本発明に係るコネクタ装置の一例に対してフレキシブル平板状ケーブルが差込み途中にある状態を示す一部断面を含んだ部分斜視図である。
【図15】本発明に係るコネクタ装置の一例に対するフレキシブル平板状ケーブルの差込みが完了し、当該一例に備えられたロック部の係止部によってフレキシブル平板状ケーブルが係止された状態を示す一部断面を含んだ部分斜視図である。
…(後略)…」(段落【0030】)
(イ)「【0033】
図1,図2及び図3において、本発明に係るコネクタ装置の一例を成すコネクタ装置10は、合成樹脂等の絶縁材料によって形成されたハウジング11を備えている。ハウジング11には、図1及び図3に示されるように、その正面側部分に板状部材差込み部12が設けられており、板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと板状部材収容空間が伸びている。ハウジング11の内部に形成される板状部材収容空間には、配線板状部材を成す、例えば、後述されるフレキシブル平板状ケーブルが、板状部材差込み部12を通じて差し込まれる。」(段落【0033】)
(ウ)図4、6、14及び15から、ハウジング11のケーブル挿入側に、板状部材差込み部12と同一高さのフレキシブル平板状ケーブル40を載置する平面が形成されていることが看守される。
(2) 引用文献2記載技術
上記(1)の記載事項並びに図示事項を総合すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載技術」という。)が記載されている。
「コネクタ装置10において、ハウジング11のケーブル挿入側に、板状部材差込み部12と同一高さのフレキシブル平板状ケーブル40を載置する平面を形成するという技術。」
第6 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「信号伝送媒体F」は、その技術的意義、機能又は構造からみて、本願発明1における「フラットケーブル」に相当し、以下同様に、「主配線基板」は「電子機器」に、「信号伝送用導電路又はグランド導電路」は「接続端子部」に、「媒体挿入口12a」は「差込部」に、「信号伝送媒体F収容空間」は「フラットケーブル収容空間」に、「絶縁ハウジング12」は「ハウジング」に、「導電路」は「配線端子」に、「導線コンタクト13」は「端子」に、「位置規制部F1」は「係止孔」に、「案内係止部11c」は「フラットケーブル保持部」に、「本体板11b」は「基部」に、「アクチュエータ11」は「ロック部材」に、「電気コネクタ10」は「フラットケーブル用コネクタ」に、それぞれ相当する。
したがって、両者は、次の点で一致する。
「 フラットケーブルの接続端子部と電子機器とを接続するフラットケーブル用コネクタであって、
前記電子機器に固定され、フラットケーブルが差し込まれる差込部と、この差込部から内部へと続くフラットケーブル収容空間と、が形成されたハウジングと、
前記ハウジング内に配列配置されて、電子機器に設けられた配線端子に接続され、フラットケーブルが差込部を通じてフラットケーブル収容空間に差し込まれた際に、フラットケーブルの接続端子部に接触接続される端子と、
前記ハウジングの電子機器に対接する面の裏面に載置され、フラットケーブルの接続端子部が前記端子に接触接続した際にフラットケーブルの先端側に形成された係止孔に係合する一対のフラットケーブル保持部と、前記一対のフラットケーブル保持部に跨って架設された基部と、が形成され、前記フラットケーブル保持部がフラットケーブルの係止孔に係合することにより前記フラットケーブルを係止するロック部材と、
を備えるフラットケーブル用コネクタ。」
そして、両者は、次の点で相違する。
(a)本願発明においては、ロック部材が「基部を持ち上げることによりフラットケーブル保持部がフラットケーブルの係止孔より上に移動し、前記フラットケーブルの係止が解除される」ものであるのに対して、引用発明においては、アクチュエータの解除については定かでない点(以下、「相違点1」という。)。
(b)本願発明においては、「ハウジングの電子機器に対接する面の裏面は、差込部の挿入側に前記差込部と同一高さに形成されたフラットケーブル載置平面と、ロック部材が収納される中段面と、前記差込部の挿入側の反対側に形成された上段面と、で段差状に形成され、前記中段面は、前記上段面から前記ロック部材の基部と同一寸法の厚みで切り欠かれた」構成を有するのに対し、引用発明においては、「絶縁ハウジング12の主配線基板に対設する面の裏面は、媒体挿入口側に案内係止部11cと同一高さに形成され、アクチュエータ11を取り付ける面と、媒体挿入口の反対側に形成された上側の面と、で段差状に形成された」構成を有する点(以下、「相違点2」という。)。
上記相違点について検討する。
まず、相違点1について検討すれば、コネクタに対するフラットケーブルの挿脱は普通に行われることであり、引用発明の信号伝送媒体Fも電気コネクタ10から外す必要があることは自明であるところ、引用発明に接した当業者であれば、アクチュエータ11の本体板11bを持ち上げて案内係止部11cを、フラットケーブルの位置規制部F1から外せばよいことは普通に想定できることである。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
次に、相違点2について検討する。
引用文献2記載技術は、絶縁ハウジング12の主配線基板に対設する面の裏面に、案内係止部11cと同一高さに形成された面と、上側の面とを二段の段差状に形成した構成を有するものではあるが、本願発明のように、「上段面から前記ロック部材の基部と同一寸法の厚みで切り欠かれ」、「ロック部材が収納される中段面」を有するものではない。
そして、本願発明は、上記相違点2に係る発明特定事項を有することにより、フラットケーブル1が、ハウジング5内の収容空間における保持規定位置まで達していない半挿入状態の時、および、ロック部材7が持ち上がりフラットケーブル1の係止が解除されているときは、ハウジング5の上段面5cに対して基部7aのハウジング5に対接する面の裏面が高くなり、段差が形成され、半挿入状態が検知しやすくなるとの特有の作用効果を奏するものと認められる。
したがって、引用発明に引用文献2記載技術を適用することによって、上記相違点2に係る本願発明の特定事項を想到することが容易であったとすることはできない。
以上から、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
第7 原審拒絶査定についての判断
平成29年9月28日の手続補正によって、補正後の請求項1は、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を有するものとなった。そして、当該発明特定事項は、原審拒絶査定で引用された引用文献B及びCには記載されておらず、本願の出願前における周知技術でもないので、本願発明は、当業者であっても、引用文献2(引用文献A)並びに引用文献B及びCに基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原審拒絶査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原審拒絶査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
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