特許無効審判
2016-800060
後部窓を完全に日除けするウィンドウシェード
- 審判番号
- 2016-800060
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2006-333299
- 登録番号
- 特許第4617289号(P4617289)
- 請求日
- 2016年05月26日
- 審決日
- 2017年02月21日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】芦森工業 株式会社
- 【請求人代理人】吉竹 英俊
- 【請求人代理人】有田 貴弘
- 【請求人代理人】竹下 明男
- 【被請求人】ベーオーエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト
- 【被請求人代理人】木村 満
- 【被請求人代理人】齋藤 悟郎
- 【被請求人代理人】長野 正
- 【被請求人代理人】宮本 哲也
- 【被請求人代理人】長谷川 陽子
- 【被請求人代理人】大神田 梢
- 【被請求人代理人】後藤 稔
- 審判長/審判官
- 審判長 氏原 康宏
- 審判官 小原 一郎
- 審判官 和田 雄二
- 分類
- P1113.113-YAA(B60J) / P1113.121-YAA(B60J) / P1113.536-YAA(B60J) / P1113.537-YAA(B60J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第123条第1項第2号、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第134条の2第3項、特許法第135条、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
上記当事者間の特許第4617289号発明「後部窓を完全に日除けするウィンドウシェード」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4617289号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1、[2~23]のとおり訂正することを認める。
特許第4617289号の請求項1に係る特許についての本件審判請求を却下する。
特許第4617289号の請求項2~23に係る特許についての本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第4617289号(以下「本件特許」という。)についての特許出願は、平成18年12月11日(パリ条約による優先権主張 2005年12月23日 (DE)ドイツ連邦共和国)になされ、平成22年10月29日にその特許権が設定登録された。
そして、本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
平成28年 5月26日付け 本件無効審判請求
同年 9月28日付け 審判事件答弁書、訂正請求書提出
同年10月21日付け 審理事項通知
同年11月25日付け 請求人より口頭審理陳述要領書提出
同年12月22日付け 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成29年 1月24日 口頭審理
第2 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容
被請求人が平成28年9月28日付け訂正請求書により請求する訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり請求項ごと又は一群の請求項ごとに訂正しようとするものであって、その請求の内容は以下のとおりである(下線部は訂正箇所である。以下同様。)。
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「各案内レール(22,23)に隣接して、前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、導入スロット(57)を有する収容部(53)が存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)と、
前記巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる引出部材(15)と、
前記自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)と、
一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)と、を備え、
前記巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、
2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する、ことを特徴とするウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3において、
「各案内レール(22,23)に隣接して、前記日除け部材(19)が押し進められたとき前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を保持し、導入スロット(57)を有する収容部(53)が存在する、ことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)と、
前記巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる引出部材(15)と、
前記自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)と、
一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)と、を備え、
前記巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、
2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)が押し進められたとき前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する、ことを特徴とするウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4において、
「前記導入スロット(57)は、隣接する前記案内レール(22,23)の下方に延びる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「前記導入スロット(57)は、前記日除け部材(19)によって前記案内レール(22,23)を覆うために、隣接する前記案内レール(22,23)の下方に延びる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5において、
「前記収容部(53)は、前記巻取シャフト(21)で最小で、前記巻取シャフト(21)から離れた端部で最大である変更可能な深さを有する、ことを特徴とする請求項2または3に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「前記収容部(53)は、前記巻取シャフト(21)で最小で、前記巻取シャフト(21)から離れた端部で最大であるように深さが変更されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8において、
「前記日除け部材(19)は、矩形の外形を有する、ことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「前記自動車窓(5)は台形であり、前記日除け部材(19)は、矩形の外形を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9において、請求項9が引用する請求項について、「請求項1」を、「請求項2又は3」に訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項10において、
「日除け部材(19)は、前記引出部材(15)に結合される端部(41)が、張られた日除け部材の表面に平行な方向に堅固で、この表面に垂直な方向に柔軟であるように、補強されている、ことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウシェード。」
との記載を、
「前記日除け部材(19)は、前記日除け部材(19)の折れを防止するために、前記引出部材(15)に結合される前記他端(41)が、張られた日除け部材の表面に平行な方向に堅固で、この表面に垂直な方向に柔軟であるように、補強されており、前記収容部(53)は、前記日除け部材(19)に面する側が前記日除け部材(19)の平面に関して90°と異なる角度で延びるプレート(54)を備える、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項11において、
「前記日除け部材(19)には、それぞれの端部が前記引出部材(15)に結合されるか、または、前記端部の長さにわたって好ましくは連続する管状のループに形成された曲げ部(41)が提供される、ことを特徴とする請求項1に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「前記日除け部材(19)は、前記他端が前記引出部材(15)に結合され、前記他端の長さにわたって連続する管状のループに閉止可能な折り曲げ部(41)を備える、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項12において、
「延伸された前記日除け部材(19)により規定される表面に平行にその平坦な側面が配置される板ばね部材(42)が、少なくとも端部領域が、前記折り曲げ部(41)または前記ループに挿入されている、ことを特徴とする請求項11に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「延伸された前記日除け部材(19)により規定される表面に平行にその平坦な側面が配置される板ばね部材(42)の少なくとも端部領域が、前記折り曲げ部(41)または前記ループに挿入されており、前記収容部(53)は、前記日除け部材(19)に面する側が前記日除け部材(19)の平面に関して90°と異なる角度で延びるプレート(54)を備える、ことを特徴とする請求項11に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項13において、
「前記板ばね(42)の長さは、前記引出部材(15)の中央部材(28)を超えて延びる前記日除け部材(19)の延長部に対応する長さより大きく、好ましくは前記日除け部材(19)の端部の長さにわたって延びる、ことを特徴とする請求項12に記載のウィンドウシェード装置。」
との記載を、
「前記板ばね部材(42)の長さは、前記引出部材(15)の中央部材(28)を超えて延びる前記日除け部材(19)の延長部に対応する長さより大きい、ことを特徴とする請求項12に記載のウィンドウシェード装置。」
に訂正する。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項14、16~18及び23において、それぞれの請求項が引用する請求項について、「請求項1」を、「請求項2又は3」に訂正する。
2 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ また、上記訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正事項2の「自動車窓(5)の一端部(7)…の間の距離よりも長く、」及び「特徴とするウィンドウシェード装置。」との事項は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2を、請求項1の記載を引用しない形式で記載するものであって、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第4号)。
イ 訂正事項2の「2つの前記案内レール(22,23)に…の背後に存在する」との記載において追加した事項は、案内レール、導入スロット及び収容部の構成を、本件明細書等の段落【0014】、【0046】、【0049】、【0055】及び【0061】の記載を根拠に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。さらに、「2つの」、「前記」、「それぞれ」との事項は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2の発明特定事項を明確化するものともいえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)ともいえる。
ウ また、上記訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(3) 訂正事項3について
ア 訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3について、上記訂正事項2の「ア」、「イ」と同様の訂正をするものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとするもの(特許法第134条の2第1項ただし書き第4号)、特許請求の範囲の減縮を目的とするもの(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)、明瞭でない記載の釈明を目的とするもの(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)に該当する。
イ また、上記訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4について、導入スロットの構成を、本件明細書等の段落【0011】の記載を根拠に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。また、導入スロットの技術的意義を明確化するものともいえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)ともいえる。
イ また、上記訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項5について、収容部の構成を、本件明細書等の段落【0012】の記載を根拠に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。また、「変更可能な深さを有する」という不明確な記載を明確化するものともいえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)ともいえる。
イ また、上記訂正事項5は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正事項6は、訂正前の特許請求の範囲の請求項8について、自動車窓の構成を本件明細書等の段落【0012】及び【0060】の記載を根拠に限定するものであり、また、訂正前の特許請求の範囲の請求項8が請求項1を引用するものであったのを、請求項2又は3を引用するようにしたものであって、請求項8の構成を訂正前の記載よりも限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ また、上記訂正事項6は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(7) 訂正事項7について
ア 訂正事項7は、訂正前の特許請求の範囲の請求項9が請求項1を引用するものであったのを、請求項2又は3を引用するようにしたものであって、それぞれ、訂正前の記載よりも限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ また、上記訂正事項7は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(8) 訂正事項8について
ア 訂正事項8は、訂正前の特許請求の範囲の請求項10について、日除け部材及び収容部の構成を本件明細書等の段落【0041】及び【0057】の記載を根拠に限定するものであり、また、訂正前の特許請求の範囲の請求項10が請求項1を引用するものであったのを、請求項2又は3を引用するようにしたものであって、請求項10の構成を訂正前の記載よりも限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ 訂正事項8のうち、「前記」及び「前記日除け部材(19)の折れを防止するために」との記載は、日除け部材の技術的意義を明確化するものといえるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)ともいえる。
ウ 訂正事項8のうち、ウィンドウシェード「装置」とする事項は、誤記の訂正を目的とするものである(特許法第134条の2第1項ただし書き第2号)。
エ また、上記「ア」及び「イ」は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、上記「ウ」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(9) 訂正事項9について
ア 訂正事項9は、訂正前の特許請求の範囲の請求項11について、日除け部材の構成を本件明細書等の段落【0038】の記載を根拠に限定するものであり、また、訂正前の特許請求の範囲の請求項11が請求項1を引用するものであったのを、請求項2又は3を引用するようにしたものであって、請求項11の構成を訂正前の記載よりも限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ 訂正事項9は、「それぞれの端部」を明確化し、また、「好ましくは…提供される」という不明確な記載を明確化するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)。
ウ また、上記訂正事項9は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(10) 訂正事項10について
ア 訂正事項10は、訂正前の特許請求の範囲の請求項12について、収容部の構成を本件明細書等の段落【0049】及び【0057】の記載を根拠に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。そして、助詞の「が」を「の」とした事項は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)。
イ また、上記訂正事項10は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(11) 訂正事項11について
ア 訂正事項11は、訂正前の特許請求の範囲の請求項13について、「好ましくは」以下の不明確な記載を削除し、また、それが引用する請求項12と用語を統一したものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第3号)。
イ また、上記訂正事項11は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(12) 訂正事項12について
ア 訂正事項12は、訂正前の特許請求の範囲の請求項14、16~18及び23がそれぞれ請求項1を引用するものであったのを、請求項2又は3を引用するようにしたものであって、それぞれ、訂正前の記載よりも限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する(特許法第134条の2第1項ただし書き第1号)。
イ また、上記訂正事項12は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない(特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項及び第6項)。
(13) 一群の請求項について
訂正前の請求項2~23は、請求項1を直接又は間接に引用して記載されているから、訂正前の請求項1~23は一群の請求項である。よって、上記訂正事項1~12に係る本件訂正は、一群の請求項ごとに特許請求の範囲の訂正を請求するものであって、特許法第134条の2第3項の規定に適合する。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号、第2号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合するものである。
よって、訂正を認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正が認められたので、本件特許の請求項2~23に係る発明(以下「本件発明2~23」という。)は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項2~23に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】 (削除)
【請求項2】
自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)と、
前記巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる引出部材(15)と、
前記自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)と、
一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)と、を備え、
前記巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、
2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する、ことを特徴とするウィンドウシェード装置。
【請求項3】
自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)と、
前記巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる引出部材(15)と、
前記自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)と、
一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)と、を備え、
前記巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、
2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)が押し進められたとき前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する、ことを特徴とするウィンドウシェード装置。
【請求項4】
前記導入スロット(57)は、前記日除け部材(19)によって前記案内レール(22,23)を覆うために、隣接する前記案内レール(22,23)の下方に延びる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項5】
前記収容部(53)は、前記巻取シャフト(21)で最小で、前記巻取シャフト(21)から離れた端部で最大であるように深さが変更されている、ことを特徴とする請求項2または3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項6】
前記収容部(53)は、湾曲端部(56)と、前記湾曲端部(56)から離れて位置し、前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22、23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を前記収容部(53)内へ案内するプレート(54)とを有する、ことを特徴とする請求項2または3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項7】
前記プレート(54)は、自動車(1)の隣接する側壁(3)に概略平行に延びる、ことを特徴とする請求項6に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項8】
前記自動車窓(5)は台形であり、前記日除け部材(19)は、矩形の外形を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項9】
前記日除け部材(19)の幅は、どの位置においても、前記巻取シャフト(21)と少なくとも同一の長さである、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項10】
前記日除け部材(19)は、前記日除け部材(19)の折れを防止するために、前記引出部材(15)に結合される前記他端(41)が、張られた日除け部材の表面に平行な方向に堅固で、この表面に垂直な方向に柔軟であるように、補強されており、前記収容部(53)は、前記日除け部材(19)に面する側が前記日除け部材(19)の平面に関して90°と異なる角度で延びるプレート(54)を備える、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項11】
前記日除け部材(19)は、前記他端が前記引出部材(15)に結合され、前記他端の長さにわたって連続する管状のループに閉止可能な折り曲げ部(41)を備える、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項12】
延伸された前記日除け部材(19)により規定される表面に平行にその平坦な側面が配置される板ばね部材(42)の少なくとも端部領域が、前記折り曲げ部(41)または前記ループに挿入されており、前記収容部(53)は、前記日除け部材(19)に面する側が前記日除け部材(19)の平面に関して90°と異なる角度で延びるプレート(54)を備える、ことを特徴とする請求項11に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項13】
前記板ばね部材(42)の長さは、前記引出部材(15)の中央部材(28)を超えて延びる前記日除け部材(19)の延長部に対応する長さより大きい、ことを特徴とする請求項12に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項14】
前記巻取シャフト(21)を前記日除け部材(19)の巻き取り方向に駆動する駆動装置(38)が、前記巻取シャフト(21)に配置される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項15】
前記巻取シャフト(21)の前記駆動装置(38)は、ばねモータにより形成される、ことを特徴とする請求項14に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項16】
前記引出部材(15)は、長さが一定な中央部材(28)と、前記中央部材(28)の長さ方向に前記中央部材(28)に相対的に移動可能で、前記案内レール(22,23)内に案内される2つの端部材(29,31)から組み立てられる、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項17】
前記案内レール(22,23)は、完全に延伸された前記日除け部材(19)に対応する位置より、相対的に大きい前記巻取シャフト(21)近傍のその間の距離を有する、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項18】
各案内レール(22,23)は、その断面が溝空間(26)と溝スロット(27)とから組み立てられる案内溝(25)を有し、前記溝スロット(27)の幅は、前記溝スロット(27)の幅に平行な寸法の前記溝空間(26)の幅より小さい、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項19】
前記溝空間(26)は、円形の断面を有する、ことを特徴とする請求項18に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項20】
前記引出部材(15)は、前記溝空間(26)の断面に合致する滑り部材(33)が配置される、ことを特徴とする請求項18に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項21】
直線状の駆動要素(43)が、前記溝空間(26)内に案内される、ことを特徴とする請求項18に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項22】
前記駆動要素(43)は、ギヤモータ(48)により駆動される、ことを特徴とする請求項21に記載のウィンドウシェード装置。
【請求項23】
前記案内レール(22,23)は、自動車(1)の内側ライニング部材(16)に装着されるか、または、これらの部材に埋設される、ことを特徴とする請求項2又は3に記載のウィンドウシェード装置。」
第4 請求人の主張
請求人は、「本件特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めており、審判請求書、及び、平成28年11月25日付け口頭審理陳述要領書において主張する無効理由と証拠方法は次のとおりである(なお、口頭審理陳述要領書には、「現在の状況では、請求人は新たな内容を述べる予定はありません。」と記載され、請求人は訂正後の本件発明2~23に対しては特段追加の主張をしていない。)。
1 無効理由
(1) 無効理由1
本件特許の請求項1~10、16~21及び23に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証に基づいて、或は、これにさらに甲第2号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2) 無効理由2
本件特許の請求項14、15、21及び22に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第6号証に基づいて、或は、これにさらに甲第2号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3) 無効理由3
本件特許の請求項1、14、15、18及び20に係る発明は、甲第5号証に記載された発明であるか、甲第5号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4) 無効理由4
本件特許の請求項8に係る発明は、甲第5号証、甲第2号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(5) 無効理由5
本件特許の請求項9、19、21及び22に係る発明は、甲第5号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(6) 無効理由6
本件特許の請求項10に係る発明は、甲第5号証、甲第1号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(7) 無効理由7
本件特許の請求項16、17及び23に係る発明は、甲第5号証、甲第1号証、甲第6号証に基づいて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(8) 無効理由8
本件特許の請求項11~13に係る発明は、不明確であり特許法第36条第6項第2号の明確性要件を満たしていないし、発明の詳細な説明に、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件も満たしていない。このため、本件特許は、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。
甲第1号証:特開平9-123752号公報
甲第2号証:特開平8-121050号公報
甲第3号証:特開平11-129899号公報
甲第4号証:特開平8-175172号公報
甲第5号証:実願昭63-1094号(実開平1-106310号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平4-140279号公報
第5 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めており、審判事件答弁書、及び、平成28年12月22日付け口頭審理陳述要領書において概ね以下のとおり主張している。
1 訂正について
平成28年9月28日付け訂正請求による訂正は、全ての訂正要件に適合しており、訂正は認められるものである。
2 無効理由について
訂正後の本件発明2~23は、甲第1号証又は甲第5号証に記載された発明ではない。また、訂正後の本件発明2~23は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。訂正後の本件発明11~13は、不明確ではないし、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない、ということもない。
第6 当審の判断
1 無効理由1及び2についての判断
(1) 甲各号証に記載された事項
ア 甲第1号証
甲第1号証には、以下の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、駐車中の自動車において使用する自動車窓用カーテンに関する。」
(1b) 「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】図1は実施例を示す斜視図、図2,図3は図1のA-A線における垂直断面図である。
【0017】図1は自動車窓用カーテン1を自動車2に装着した状態を示しており、3はフロントガラス、4は幕状体、5は幕状体4に付設した水平バー、6は幕状体4を巻き取って収容する収納部である。
【0018】図1,2は駐車中の自動車2において、幕状体4を上昇させてフロントガラス3を内面から遮蔽した状態を示し、図3は幕状体4を下降させ収納部6に巻き取って収容した状態を示している。幕状体4をフロントガラス3の内面に沿って昇降させる手段として、幕状体4に付設した水平バー5の端部を係止し、ピラー7,8に沿って昇降するベルト体30をピラー7,8内に設けている。ベルト体30は後述するようにモータ20で駆動する。
【0019】図4は図1のピラー7,8に沿った断面図である。図4の部分拡大図に示すように、水平バー5の端部にはスプリング9で外向きに付勢した突起10を内挿した構造にしているため、水平バー5の端部に対して何の拘束もない状態で幕状体4を収納部6から引き出すと、図5に示すように突起10全体が突出した形になるが、自動車2に装着した状態で幕状体4を収納部6から引き出した場合は、図4に示すように突起10はピラー7,8間の距離に応じて水平バー5内に引っ込んだ形状となるため、ピラー7,8と幕状体4の側部との隙間は一定に保たれる。なお、突起10が水平バー5から円滑に突出する場合はスプリング9が要らないのは勿論のことである。
【0020】図6は図1の水平断面図である。幕状体4に布設した水平バー5は弾性を有する材料で作製しているため、使用時はフロントガラス3の湾曲に沿って曲がることが可能であり、フロントガラス3への適合性に優れ、密着性も良好である。
【0021】このように、幕状体4でフロントガラス3の内面を遮蔽することにより、直射日光が自動車2の内部に射し込むことを防止できるため、夏場において駐車中の車内あるいはハンドル、シート表面等の温度の上昇を効果的に防止することができる。
【0022】幕状体4を昇降させるベルト体30は、後述する図7に示すように、自動車2のバッテリ21を電源とするモータ20で駆動し、スイッチ22により上昇、下降、停止の切替えを行う。このため、幕状体4をセットしたり、収納する操作は極めて簡単である。また、不使用時、幕状体4は収納部6の内部に収容されてしまうので邪魔にならず、収納部6はフロントガラス3の下方の自動車2の内部に設けているため車内スペースを無駄に占有することがない。なお、収納部6はこれ以外の場所でもよく、例えば、自動車2の下方内部等に設けてもよい。」
(1c) 「【0027】このように、安全回路23を設けているため、幕状体4がフロントガラス3を遮蔽したままの状態で誤って自動車2を発車させたり、あるいは自動車2の走行中に誤ってスイッチ22をONして幕状体4がフロントガラス3を遮蔽する危険性がない。なお、幕状体4の昇降は手動で行うことも可能であるが、手動の場合でも自動車2の走行中に幕状体4の上昇はできない構造としているため、走行中にフロントガラス3を遮蔽する危険性はない。なお、幕状体4の昇降を行う手段としては、ベルト体30以外の手段でもよく、例えば、ピラー内にレールを設置して周辺部を回転体に係止したもの等を採用することができる。
…
【0032】なお、ここでは、自動車窓用カーテン1を自動車2のフロントガラス3部分に使用した場合について説明したが、勿論これに限定するものではなく、例えば、リアウィンドウ部分に使用することもできる。自動車窓用カーテン1をリアウィンドウ部分に使用することにより、リアウィンドウに装備されている熱線が不要になるため後部視界が向上するというメリットがある。」
(1d) 甲第1号証の図1~図4には、それぞれ以下の図が記載されている。
イ 甲第2号証
甲第2号証には、以下の記載がある。
(2a) 「【0018】次に、本発明の巻取式シェード装置をワゴンタイプの車両に組み込んだ状態を図8A及び図8Bに基づいて説明する。図8A及び図8Bは、ワゴン車の車窓を車両内部から一部透かし図で表したものであって、ワゴン車の前部から車両の後方側部を斜視している。そして、図8Aは運転席側後方の車窓を示したものであって、図8Bは助手席側後方の車窓を示すものである。巻取式シェード装置の収納部11及びガイドレール26は窓枠に沿って配置され、インナーパネル40で覆われるため窓枠内に一体的に収納され、車内には遮光シート14しか露出しない。図8Bでは図8Aとガイドレール26及びモータ31が上下逆に配置されているが、これはガイドレール26が乗員の車両乗降のための通路を塞がないためである。」
(2b) 甲第2号証の図8A及び図8Bには、それぞれ以下の図が記載されている。
ウ 甲第3号証
甲第3号証には、以下の記載がある。
(3a) 「【0012】図1および図2は、新幹線用車両1の運転室2における天井面3に形成された採光用窓4の日除けに使用されるスクリーン装置Aを示す。
【0013】ここで、採用用窓4は天井面3の左右に設けられ、いずれの採光用窓4も左右方向および前後方向の2方向において曲面をなしている。また、外側縁は後方向に向けて傾斜し、後端縁が丸みを有している、スクリーン装置Aは、2枚の採光用窓4を個別に開閉し得るようになっており、各個のスクリーン装置Aは同一の構成であるため、一方のスクリーン装置Aのみを以下に説明する。
【0014】上記スクリーン装置Aは天井面3に形成された採光用窓4の前後に取付けられる2本のガイドレール10a、10bを有する。ガイドレール10a、10bのそれぞれは、天井面3の面形状に沿う曲線状とされ、前側ガイドレール10aは後側ガイドレール10bより長くなっている。
【0015】図6に示すように、ガイドレール10a、10bには長さ方向に延びるガイド溝11が形成され、そのガイド溝11の開口部に内向きに一対のフランジ12が設けられている。
【0016】各ガイドレール10a、10bは天井面3にねじ込まれるビス13の締付けにより固定される。
【0017】前側ガイドレール10aと後側ガイドレール10bのそれぞれに交差するように設けられた複数のバー材14は、図7に示すように円柱状をなし、その外周には長さ方向に延びるガイド溝15が設けられ、そのガイド溝15の開口部に一対のフランジ16が形成されている。
【0018】バー材14のそれぞれには窓開閉用の柔軟性および遮光性を有する幕体17が着脱自在に連結されている。その連結に際し、ここでは、バー材14の外周に上記ガイド溝15と180°の間隔をおいて取付溝18を形成し、その取付溝18に幕体17に設けられたU字形の折曲部17aを挿入し、この折曲部17aの内側に連結バー19を挿入して折曲部17aを抜け止めし、上記連結バー19の引き抜きによってバー材14に対する連結を解除し得るようにしている。
【0019】バー材14のそれぞれは、図6乃至図8に示すランナー20を介してガイドレール10a、10bの長さ方向に移動自在に支持されている。」
(3b) 「【0023】幕体17は、ガイドレール10a、10bに沿ってバー材14を移動させることにより開閉し、その閉鎖状態では台形状に展開して採光用窓4の全体を覆うようになっている。
【0024】図3(I)に示すように、幕体17の車両中央側に位置する一側部には操作バー26が取付けられ、その操作バー26の外周に設けられた面ファスナ27は、天井面3の頂部に固定された面ファスナ28及び並列された複数のバー材14の一側に位置するバー材14の外周に固定された面ファスナ29に対して係脱自在とされている。
【0025】また、幕体17の他側面には図3(II)に示すように面ファスナ30が取付けられ、その面ファスナ30は天井面3の側部に固定された面ファスナ31に係合されている。
【0026】いま、操作バー26を持ち、その操作バー26を天井面3の中央に向けて引くと、バー材14のそれぞれがガイドレール10a、10bに沿って移動して幕体17が展開する。
【0027】このときガイドレール10a、10bは天井面3の曲面に沿う形状であるため、幕体17は採光用窓4の面形状に沿って展開する。」
(3c) 甲第3号証の図4及び図7には、それぞれ以下の図が記載されている。
エ 甲第4号証
甲第4号証には、以下の記載がある。
(4a) 「【0004】本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両走行時の遮光効果が損なわれないと共に、異音を発生することもなく、台形状を呈する窓に使用しても遮光シートと窓枠との間に隙間が生ずることのない車両用サンシェード装置を提供しようとするものである。」
(4b) 「【0014】車両の窓を覆う遮光シート18は、横幅が窓の最大幅(図示例では最下端部の横幅)と略同等の長さまで伸長可能な伸縮性を有している。この遮光シート18は、テンションがかかると伸びる生地のもの、例えばニット地のものを使用する。そして、生地を上下方向(巻取装置17から下の方向)にも伸縮可能にすると、比較的皺がよらず外観上好ましいものとなる。
【0015】19は、遮光シート18を案内支持するステイである。ステイ19は、遮光シート18の先端部にクリップ等の取着手段により取り付けられている。ステイ19は、巻取装置17から下方向に移動するにしたがってガイドレールの左右両側部11,12間の間隔が漸次大きくなるので、伸縮可能に構成する。それには、例えば図3に詳示するように、ステイ19を小径部20と小径部20に移動可能に套嵌した大径部21とで構成し、小径部20に套嵌したばね22の伸縮により、大径部21が移動するように構成すればよい。」
(4c) 「【0020】遮光シート18をガイド部材24の保持部26に介装させるには、例えば、図5及び図6に示すように、遮光シート18の側縁部32を、全長に亘って折り返して縫着して中空としたヘム部33を形成し、ボール31がヘム部33内に位置するようにすればよい。また、遮光シート18の側縁部32に取付片(図示せず)を設け、この取付片をガイド部材24の保持部26に介装させてもよい。かくして、遮光シート18は、所望数設けたガイド部材24により、幅方向の位置が規制されつつガイドレールに沿って移動して展張し、側縁部32とガイドレール左右両側部11,12との間に隙間が生じないようにすることができる。」
(4d) 甲第4号証の図1及び図6には、それぞれ以下の図が記載されている。
オ 甲第5号証
甲第5号証には、以下の記載がある。
(5a) 「前述した目的を達成するため本考案は、柔軟なシート状のシェード本体を車体に固定した巻取軸に巻回し、ウインドの両側にそれぞれガイドレールを設け、シェード本体の両側に突設した被ガイド部材をガイドレールに嵌合し、ガイドレールに沿って被ガイド部材を走行してシェード本体を移動するようにした自動車用サンシェード装置において、それぞれの被ガイド部材に前記ガイドレール内を走行し得る駆動部材を結合するとともに、スイッチにより正逆両方向に回転可能とされた少なくとも1台のモータを配設し、モータの回転を両駆動部材に伝達して両駆動部材を等速で走行するようにしたことを特徴としている。」(明細書第6ページ第4行~第16行)
(5b) 「第1図ないし第3図は本考案に係る自動車用サンシェード装置の全体を示すものであり、シェード本体1の巻取部2は、角柱の頂部の1隅を削落して開放したケーシング3を有しており、このケーシング3には、ケーシング3を車体に取付けるためのブラケット4が突設されている。前記ケーシング3の両端には軸受5,5が嵌着されており、これらの軸受5,5には、第4図に示す巻取軸6が回転自在に支持されている。この巻取軸6にはシェード本体1の端部が固定されており、また巻取軸6は図示しないコイルばねによりシェード本体1を巻取る方向に回転習性を与えられている。
前記ケーシング3の下部には斜め上方に突出するブラケット7が突設されており、このブラケット7の両端部には断面コ字状のレール保持具8A,8Bがその凹部が相互に対向するように取付けられている。各レール保持具8A,8Bには、それぞれ先端部を下方に弯曲されたガイドレール9A,9Bがシェード本体1の幅より多少小さい間隔をもって突設されている。これらのガイドレール9A,9Bは、車室の内壁に沿うものであり、しかも車室の内壁の寸法は車室の前後において異なっているため本実施例においては、ガイドレール9Bがガイドレール9Aより多少長くされている。」(明細書第7ページ第12行~第8ページ第15行)
(5c) 「前記シェード本体1は、布地の表面に遮熱材としてのアルミニウム皮膜を形成して構成されており、このシェード本体1は、長さの長いガイドレール9B側の先端縁が長さの短いガイドレール9A側の先端縁より前方に突出するように先端縁が巻取軸6の軸線に対し傾斜している。このシェード本体1の先端部には、シェード本体1の両端から突出する骨材19がシェード本体1の先端縁と平行になるように両ガイドレール9A,9Bの長手方向に直交する方向に対し多少傾斜している。さらに、前記骨材19の両端部には、ガイドレール9A,9B内を移動し得る被ガイド部材20,20が嵌着されている。」(明細書第10ページ第3行~同ページ第16行)
(5d) 甲第5号証の第1図、第4図及び第5図には、それぞれ以下の図が記載されている。
カ 甲第6号証
甲第6号証には、以下の記載がある。
(6a) 「巻取り本体1は第2図に示すように巻取りドラム11と、この巻取りドラム11を回転付勢する捩りばね12とを具備しており、巻取りドラム11は捩りばね12により付勢されて回転軸13回りに回転するようになっている。」(第2ページ左下欄第19行~同ページ右下欄第3行)
(6b) 「長尺部材3はパイプ材からなりその両端は伸縮自在な二重構造になっている。長尺部材3はパイプ31と、このパイプ31の両側開口端からパイプ31内に軸方向に摺動可能に挿入される2個のロッド32,33とを具備している。そしてパイプ31が遮光幕2の引出し先端に固着されることによって長尺部材3が遮光幕2に取着される。ロッド32及び33は挿入端部32a及び33aがパイプ31の内周壁に摺接する程度に大径になっており、かつパイプ31の両端開口を覆うキャップ34を透通して挿入されている。そしてロッド32,33は挿入端部32a,33aとキャップ34の透通孔に案内されてパイプ31に対して摺動自在になっており、このロッド32,33の摺動によって長尺部材3は伸縮可能となっている。このように構成された長尺部材3はその両端にあるロッド32及び33の外側端がそれぞれガイド部材4及び5に連係される。」(第2ページ右下欄第12行~第3ページ左上欄第9行)
(6c) 甲第6号証の第2図には以下の図が記載されている。
(2) 甲第1号証に記載の発明
ア 甲第1号証には、
(ア) 自動車窓用カーテンに関し(摘示(1a))、
(イ)
a 図1は自動車窓用カーテン1を自動車2に装着した状態を示しており、3はフロントガラス、4は幕状体、5は幕状体4に付設した水平バー、6は幕状体4を巻き取って収容する収納部であること(摘示(1b)【0017】)、
b 幕状体4に付設した水平バー5の端部を係止し、ピラー7,8に沿って昇降するベルト体30をピラー7,8内に設けること(摘示(1b)【0018】)、
c 幕状体4でフロントガラス3の内面を遮蔽すること(摘示(1b)【0021】)、
が記載されている。また、
(ウ) 摘示(1d)の図1~図4より、
a 収納部6には、幕状体4を巻き取る巻取部材が回転可能に備えられていること、
b 当該巻取部材は、フロントガラス3の下方に配置されており、ピラー7側とピラー8側とが略同じ高さに位置すること、
c 水平バー5は、ピラー7側とピラー8側とが略同じ高さに位置すること、
d 幕状体4は、一端が巻取部材に固定され(上記「a」)、他端が水平バー5に付設した(上記「(イ)a」)ものといえること、
(エ) 上記「(イ)b」の「ベルト体30をピラー7,8内に設ける」との記載、及び技術常識より、ベルト体30はピラー7、8内に合計2つ設けられていること、
が明らかである。
イ 以上より、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「フロントガラス3の下方に配置され、幕状体4を巻き取る回転可能な巻取部材と、
巻取部材及び水平バー5のそれぞれは、ピラー7側とピラー8側とが略同じ高さに位置し、
一端が巻取部材に固定され、他端が水平バー5に付設した幕状体4とを備え、
水平バー5の端部を係止し、ピラー7、8に沿って昇降する2つのベルト体30をピラー7、8内に設けた、
自動車窓用カーテン1。」
(3) 対比・判断
(3-1) 本件発明2について
ア 本件発明2と甲1発明とを対比する。
(ア)
a 甲1発明の「自動車窓用カーテン1」は本件発明2の「ウィンドウシェード装置」に相当し、以下同様に、「フロントガラス3」は「自動車窓」に、「幕状体4」は「日除け部材(19)」に、「水平バー5」は「引出部材(15)」に、「ピラー7、8」は「自動車(1)の本体」に相当する。
b 甲1発明の「巻取部材」は、本件発明2の「巻取シャフト」と、「巻取部材」の限度で一致する。
(イ) 上記「(ア)」の相当関係より、
a 甲1発明の「フロントガラス3の下方」は本件発明2の「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍」に相当するから、甲1発明の「フロントガラス3の下方に配置され、幕状体4を巻き取る回転可能な巻取部材」は、本件発明2の「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)」と、「自動車窓の一端部の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取部材」の限度で一致する。
b 甲1発明の「巻取部材及び水平バー5のそれぞれは、ピラー7側とピラー8側とが略同じ高さに位置」することは、摘示(1d)の図1~図4より、巻取部材及び水平バー5がピラー7、8の間で直線状をなす部材であることに照らしてみれば、本件発明2の「引出部材(15)」が「巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる」ことと、「引出部材」が「巻取部材に実質的に平行に延びる」限度で一致する。
c 甲1発明の「ピラー7、8内に設けた、」「水平バー5の端部を係止し、ピラー7、8に沿って昇降する2つのベルト体30」は、水平バー5の端部をピラー7、8に沿って昇降するようにするものであるから、本件発明2の「自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」と、「自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に設けられ、その中に前記引出部材(15)の両端部が配置される2つの部材」の限度で一致する。
d 甲1発明の「一端が巻取部材に固定され、他端が水平バー5に付設した幕状体4」は、本件発明2の「一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)」と、「一端が前記巻取部材に固着され、他端が前記引出部材に固定される日除け部材」の限度で一致する。
イ 以上のことから、本件発明2と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「自動車窓の一端部の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取部材と、
前記巻取部材に実質的に平行に延びる引出部材と、
前記自動車窓の互いに対向する側端部にそれぞれ隣接して延びるように自動車の本体に設けられ、その中に前記引出部材の両端部が配置される2つの部材と、
一端が前記巻取部材に固着され、他端が前記引出部材に固定される日除け部材と、
を備えるウィンドウシェード装置。」
[相違点1]
「巻取部材」に関し、本件発明2では「巻取シャフト(21)」であるのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
[相違点2]
「自動車の本体に設けられ、その中に前記引出部材の両端部が配置される2つの部材」に関し、本件発明2では「自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」であるのに対し、甲1発明では、「ピラー7、8内に設けた、」「水平バー5の端部を係止し、ピラー7、8に沿って昇降する2つのベルト体30」である点。
[相違点3]
本件発2では、「巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長」いという構成を有するのに対し、甲1発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点4]
本件発明2では、「2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する」という構成を有するのに対し、甲1発明ではそのような構成を備えていない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点4について判断する。
(ア) 本件発明2は、上記「第2 2(2)ア」で述べたとおり、訂正前の特許請求の範囲の請求項2を請求項1の記載を引用しない形式とすることをその訂正事項に含むものである。
そして、請求人は審判請求書において、訂正前の請求項2に係る発明と甲1発明とについて、「『各案内レール(22,23)に隣接して、前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、導入スロット(57)を有する収容部(53)が存在する』構成を備えていないという点で両者は相違する。しかしながら、甲第3号証には、バー材14が開示され、このバー材14が収容部であると考えると、『バー材14は、ガイドレール10a、10bに隣接している。バー材14に幕体17のうちガイドレール10a、10bを越えて延びる部分が保持されている。バー材14には、取付溝等のみぞ穴が形成されている。バー材14は、幕体17を蛇腹状の折畳み状態に収容する。』構成2Aが開示されている。このため、本件特許発明2の文言上、甲第3号証との間に差異は見いだせない。」(第44ページ第24行~第45ページ第6行)と主張しているので、この点について検討する。
(イ)
a 甲第3号証には、
(a) 新幹線用車両1の運転室2における天井面3に形成された採光用窓4の日除けに使用されるスクリーン装置Aに関し(摘示(3a)【0012】)、
(b) ガイドレール10a、10bに交差するように複数のバー材14が設けられること(摘示(3a)【0017】)、
(c) バー材14のそれぞれには窓開閉用の柔軟性および遮光性を有する幕体17が着脱自在に連結されること(摘示(3a)【0018】)、
(d) バー材14の取付溝18に幕体17に設けられたU字形の折曲部17aを挿入し、この折曲部17aの内側に連結バー19を挿入して折曲部17aを抜け止めすること(摘示(3a)【0018】)、
(e) バー材14のそれぞれは、ガイドレール10a、10bの長さ方向に移動自在に支持されていること(摘示(3a)【0019】)、
(f) 幕体17は、ガイドレール10a、10bに沿ってバー材14を移動させることにより開閉し(摘示(3b)【0023】)、
(g) 操作バー26を引くと、バー材14のそれぞれがガイドレール10a、10bに沿って移動して幕体17が展開すること(摘示(3b)【0026】)、
が記載されている。
b 以上より、甲第3号証には、次の技術(以下「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。
「新幹線用車両1の運転室2における天井面3に形成された採光用窓4の日除けに使用されるスクリーン装置Aにおいて、ガイドレール10a、10bに交差するように複数のバー材14を設け、バー材14のそれぞれには窓開閉用の柔軟性および遮光性を有する幕体17が着脱自在に連結されるものであって、
バー材14の取付溝18に幕体17に設けられたU字形の折曲部17aを挿入し、この折曲部17aの内側に連結バー19を挿入して折曲部17aを抜け止めし、
バー材14のそれぞれは、ガイドレール10a、10bの長さ方向に移動自在に支持され、幕体17は、ガイドレール10a、10bに沿ってバー材14を移動させることにより開閉し、操作バー26を引くと、バー材14のそれぞれがガイドレール10a、10bに沿って移動して幕体17が展開する技術。」
c 甲3技術と本件発明2を対比する。
(a) 甲3技術の「スクリーン装置A」は「ウィンドウシェード装置」に相当し、以下同様に、「幕体17」は「日除け部材(19)」に、
「ガイドレール10a、10b」は「案内レール(22,23)」に、「バー材14」は「引出部材(15)」に相当する。また、甲3技術の「新幹線用車両1の運転室2における天井面3に形成された採光用窓4」は本件発明2の「自動車窓」と「車両の窓」の限度で一致する。
(b) 上記「(a)」の対応関係より、甲3技術において「バー材14の取付溝18に幕体17に設けられたU字形の折曲部17aを挿入し、この折曲部17aの内側に連結バー19を挿入して折曲部17aを抜け止め」することは、本件発明2の「日除け部材」が「引出部材に固定される」ことに相当する。
d 以上のとおりであるから、請求人が主張する甲3技術は、上記相違点4に係る本件発明2の「収容部」の構成を何ら示すものではない。よって、仮に甲3技術の当該取付溝18を甲1発明に適用しても、相違点4に係る本件発明2の構成に至らないことは明らかである。
(ウ) よって、上記請求人の主張は採用できない。さらに、念のため請求人が提出した他の証拠についても検討する。
a 甲第2号証について
(a) 甲第2号証には、「巻取式シェード装置の収納部11及びガイドレール26は窓枠に沿って配置され、インナーパネル40で覆われるため窓枠内に一体的に収納され、車内には遮光シート14しか露出しない」(摘示(2a))という技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
(b) 甲2技術と本件発明2を対比すると、甲2技術の「巻取式シェード装置」は「ウィンドウシェード装置」に相当し、以下同様に、「遮光シート14」は「日除け部材(19)」に、「ガイドレール26」は「案内レール(22,23)」に相当する。また、甲2技術の「窓」は「ワゴン車の車窓」(摘示(2a))であるから、本件発明2の「自動車窓」に相当する。
(c) しかしながら、甲2技術は、上記相違点4に係る本件発明2の「収容部」の構成を何ら示すものではない。よって、仮に甲2技術を甲1発明に適用しても、相違点4に係る本件発明2の構成に至らないことは明らかである。
b 甲第4号証について
(a) 甲第4号証には、「台形状を呈する窓に使用しても遮光シートと窓枠との間に隙間が生ずることのない車両用サンシェード装置において、車両の窓を覆う遮光シート18は、横幅が窓の最大幅と略同等の長さまで伸長可能な伸縮性を有し、遮光シート18の側縁部32を、全長に亘って折り返して縫着して中空としたヘム部33を形成する」(摘示(4a)、4(b)【0014】及び4(c))という技術(以下「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。
(b) 甲4技術と本件発明2を対比すると、甲4技術の「車両用サンシェード装置」は「ウィンドウシェード装置」に相当し、以下同様に、「遮光シート18」は「日除け部材(19)」に相当する。また、甲4技術は「車両用」のサンシェード装置であるから、「窓」は本件発明2の「自動車窓」に相当する。
(c) しかしながら、甲4技術は、上記相違点4に係る本件発明2の「収容部」の構成を何ら示すものではない。よって、仮に甲4技術を甲1発明に適用しても、相違点4に係る本件発明2の構成に至らないことは明らかである。
c 甲第5号証について
下記「2」において実質的に本件発明2との対比を行っているので省略するが、甲第5号証にも、上記相違点4に係る本件発明2の「収容部」に関する構成は何ら記載されていない。よって、仮に甲第5号証に記載された事項を甲1発明に適用しても、相違点4に係る本件発明2の構成に至らないことは明らかである。
(エ) そして、相違点4に係る本件発明2の構成により、本件特許の明細書【0061】に記載される「日除け部材の延長部分は、露出した車体と内側ライニングの内側の間に配置されたスロット形状の収容部またはポケットに保持される。このように、日除け部材の側端部が常に内側ライニング背後に保持されるので、内側ライニングと日除け部材の側部の間のいかなる採光隙間は、防止される。」という効果を奏するものといえるから、当該相違点4に係る本件発明2の構成が当業者が適宜なし得る設計変更である、ということもできない。
よって、相違点4に係る本件発明2の構成は、甲1発明及び甲第2~5号証の記載事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
エ まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲第2~5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(3-2) 本件発明3について
ア 本件発明3と甲1発明とを対比する。
本件発明3の「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、…前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、」との構成は、本件発明2と同じであるから、本件発明3と甲1発明との対比においても、上記「(3-1)ア」の相当関係が同様に成り立つ。
イ 以上のことから、本件発明3と甲1発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「自動車窓の一端部の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取部材と、
前記巻取部材に実質的に平行に延びる引出部材と、
前記自動車窓の互いに対向する側端部にそれぞれ隣接して延びるように自動車の本体に設けられ、その中に前記引出部材の両端部が配置される2つの部材と、
一端が前記巻取部材に固着され、他端が前記引出部材に固定される日除け部材と、
を備えるウィンドウシェード装置。」
[相違点5]
「巻取部材」に関し、本件発明3では「巻取シャフト(21)」であるのに対し、甲1発明ではそのように特定されていない点。
[相違点6]
「自動車の本体に設けられ、その中に前記引出部材の両端部が配置される2つの部材」に関し、本件発明3では「自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」であるのに対し、甲1発明では、「ピラー7、8内に設けた、」「水平バー5の端部を係止し、ピラー7、8に沿って昇降する2つのベルト体30」である点。
[相違点7]
本件発明3では、「巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長」いという構成を有するのに対し、甲1発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点8]
本件発明3では、「2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)が押し進められたとき前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する」という構成を有するのに対し、甲1発明ではそのような構成を備えていない点。
ウ 判断
事案に鑑み、相違点8について判断する。
(ア) 請求人は審判請求書の第45ページ第13行~第25行において、上記「(3-1)ウ(ア)」と同様の主張をしているところ、上記「(3-1)ウ(イ)」で述べたとおり、甲3技術は、相違点8に係る本件発明3の「収容部」とは明らかに異なるものである。また、上記「(3-1)ウ(ウ)」のとおり、甲第2号証、甲第4号証、及び甲第5号証においても、相違点8に係る本件発明3の構成は記載又は示唆されていない。
(イ) そして、相違点8に係る本件発明3の構成により、上記「(3-1)ウ(エ)」で述べた効果を奏するものといえるから、当該相違点8に係る本件発明3の構成が当業者が適宜なし得る設計変更である、ということもできない。
よって、相違点8に係る本件発明3の構成は、甲1発明及び甲第2~5号証の記載事項に基いて当業者が容易になし得たものではない。
エ まとめ
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明3は、甲1発明及び甲第2~5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(3-3) 本件発明4~10、16~21及び23について
本件発明4~10、16~21及び23は、いずれも本件発明2又は3の発明特定事項をすべて含み、本件発明2又は3をさらに限定した発明であるから、本件発明2又は3と同様に、甲1発明及び甲第2~5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(3-4) 本件発明14、15、21及び22について
ア 本件発明14、15、21及び22は、いずれも本件発明2又は3の発明特定事項をすべて含み、本件発明2又は3をさらに限定した発明であるから、本件発明2又は3と同様に、甲1発明及び甲第2~5号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ さらに、甲第6号証にも、相違点3に係る本件発明2の構成、及び、相違点6に係る本件発明3の構成は記載又は示唆されていないから、本件発明14、15、21及び22は、本件発明2又は3と同様に、甲1発明及び甲第2~6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ よって、本件発明14、15、21及び22は、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
2 無効理由3についての判断
(1) 甲第5号証に記載の発明
ア 甲第5号証には、
(ア) 自動車用サンシェード装置に関し(摘示(5b))、
(イ)
a シェード本体1の巻取部2は、ケーシング3を有していること(摘示(5b))、
b ケーシング3の両端には軸受5,5が嵌着されており、軸受5,5には巻取軸6が回転自在に支持されていること(摘示(5b))、
c シェード本体1の先端部には、シェード本体1の両端から突出する骨材19が設けられること(摘示(5c))、
d ウインドの両側にそれぞれガイドレールを設けること(摘示(5a))、
e 各レール保持具8A,8Bには、ガイドレール9A,9Bがシェード本体1の幅より多少小さい間隔をもって突設されていること(摘示(5b))、
f 骨材19の両端部には、ガイドレール9A,9B内を移動し得る被ガイド部材20,20が嵌着されていること(摘示(5c))、
g 巻取軸6にはシェード本体1の端部が固定されていること(摘示(5b))、
h 巻取軸6は図示しないコイルばねによりシェード本体1を巻取る方向に回転習性を与えられていること(摘示(5b))、
が記載されている。また、
(ウ)
a 摘示(5a)の「シェード本体を車体に固定した巻取軸に巻回し、ウインドの両側にそれぞれガイドレールを設け」との記載、及び、技術常識に照らして、上記「(イ)a」の巻取部2は、ウインドの一端部の近傍に配置されているといえること、
b 摘示(5d)の第1図より、上記「(イ)c」の骨材19は巻取部2と略平行に延びているといえること、
c 摘示(5b)は摘示(5a)の自動車用サンシェード装置を具体的に説明する記載であるから、上記「(イ)d」の「ガイドレール」は、上記「(イ)e」、「(イ)f」の「ガイドレール9A,9B」を意味すること、
d 摘示(5d)の第1図及び第5図より、シェード本体1の、上記「(イ)g」の端部の反対側の端部は、骨材19に固定されていること、
e 摘示(5d)の第5図、及び、上記「(イ)e」より、ガイドレール9A,9Bの間隔は、シェード本体1の幅より多少小さいものであること、
が明らかである。
イ 以上より、甲第5号証には次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されていると認められる。
「ウインドの一端部の近傍に配置され、回転自在に支持された巻取軸6と、
巻取軸6と略平行に延びる、シェード本体1の両端から突出する骨材19と、
ウインドの両側に設けられ、骨材19の両端部に嵌着された被ガイド部材20、20がガイドレール9A、9B内を移動し得るガイドレール9A、9Bと、
端部が巻取軸6に固定され、反対側の端部は、骨材19に固定されたシェード本体1と、を備え、
ガイドレール9A、9Bの間隔は、シェード本体1の幅より多少小さく、
巻取軸6はコイルばねによりシェード本体1を巻取る方向に回転習性を与えられている、
自動車用サンシェード装置。」
(2) 対比・判断
(2-1) 本件発明14について
本件発明14は、請求項2又は3を引用して発明を特定するものであるから、以下、本件発明14を、請求項2を引用するものと、請求項3を引用するものとのそれぞれについて検討する。
(2-1-1) 本件発明14(請求項2を引用するもの)について
ア 本件発明14(請求項2を引用するもの。以下「本件発明14-1」という。)と甲5発明とを対比する。
(ア) 甲5発明の「自動車用サンシェード装置」は本件発明14-1の「ウィンドウシェード装置」に相当し、以下同様に、「ウインド」は「自動車窓(5)」に、「巻取軸6」は「巻取シャフト(21)」に、「骨材19」は「引出部材(15)」に、「ガイドレール9A、9B」は「2つの案内レール(22,23)」に、「シェード本体1」は「日除け部材(19)」に、「コイルばね」は「駆動装置(38)」に相当する。
(イ) 上記「(ア)」の相当関係より、
a 甲5発明の「ウインドの一端部の近傍に配置され、回転自在に支持された巻取軸6」は、本件発明14-1の「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフト(21)」に相当する。
b 甲5発明の「巻取軸6と略平行に延びる、シェード本体1の両端から突出する骨材19」は、本件発明14-1の「巻取シャフト(21)に実質的に平行に延びる引出部材(15)」に相当する。
c 本件発明14-1の「その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」との事項に関し、
(a) 本件明細書等には、「引き出し部材15は、…中央部材28と…2つの端部材29、31とから組み立てられる。」(【0033】)、「棒部材32は、…、端部材31に備えられる。」(【0034】)及び、「棒部材32は、…案内溝25に導かれる。」(【0035】)と記載されており、要するに、「端部材31に備えられた棒部材32が、案内レール22、23の溝スロット27を通って案内溝25に導かれる」ことが記載されているといえる。そうすると、上記事項の「引出部材(15)の両端部」は、引出部材(15)自体の端部のほか、これに備えられた部材も含む概念といえる。
(b) 甲5発明において、骨材19の両端部に嵌着された「被ガイド部材20、20」は骨材19に備えられた部材であるから、甲5発明の「骨材19の両端部に嵌着された被ガイド部材20、20がガイドレール9A、9B内を移動し得る、ガイドレール9A、9B」は、上記事項に相当するといえる。
(c) よって、甲5発明の「ウインドの両側に設けられ、骨材19の両端部に嵌着された被ガイド部材20、20がガイドレール9A、9B内を移動し得る、ガイドレール9A、9B」は、本件発明14-1の「自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延びるように自動車(1)の本体に固定され、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」と、「自動車窓(5)の互いに対向する側端部(8)にそれぞれ隣接して延び、その中に前記引出部材(15)の両端部が案内される2つの案内レール(22,23)」の限度で一致する。
d 甲5発明の「端部が巻取軸6に固定され、反対側の端部は、骨材19に固定されたシェード本体1」は、本件発明14-1の「一端が前記巻取シャフト(21)に固着され、他端(41)が前記引出部材(15)に固定される日除け部材(19)」に相当する。
e 甲5発明の「ガイドレール9A、9Bの間隔は、シェード本体1の幅より多少小さい」ことは、ガイドレール9A、9Bの間隔が略平行である(摘示(5d)の第1図)ことに照らしてみれば、シェード本体1の引き出し具合によらず成り立つから、本件発明14-1の「巻取シャフト(21)に平行に測った前記日除け部材(19)の幅は、前記自動車窓(5)の前面で前記日除け部材(19)を完全に延ばした状態における前記引出部材(15)と隣接する位置において、前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長」いことに相当する。
f 甲5発明の「巻取軸6はコイルばねによりシェード本体1を巻取る方向に回転習性を与えられている」ことは、本件特許14-1の「巻取シャフト(21)を前記日除け部材(19)の巻き取り方向に駆動する駆動装置(38)が、前記巻取シャフト(21)に配置される」ことと、「巻取シャフト(21)を前記日除け部材(19)の巻き取り方向に駆動する駆動装置(38)が配置される」限度で一致する。
イ 以上のことから、本件発明14-1と甲5発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「自動車窓の一端部の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフトと、
前記巻取シャフトに実質的に平行に延びる引出部材と、
前記自動車窓の互いに対向する側端部にそれぞれ隣接して延び、その中に前記引出部材の両端部が案内される2つの案内レールと、
一端が前記巻取シャフトに固着され、他端が前記引出部材に固定される日除け部材と、を備え、
前記巻取シャフトに平行に測った前記日除け部材の幅は、前記自動車窓の前面で前記日除け部材を完全に延ばした状態における前記引出部材と隣接する位置において、前記案内レールの間の距離よりも長く、
前記巻取シャフトを前記日除け部材の巻き取り方向に駆動する駆動装置が配置される、
ウィンドウシェード装置。」
[相違点9]
「案内レール」に関し、本件発明14-1では、「自動車の本体に固定され」るのに対し、甲5発明ではそのように特定されていない点。
[相違点10]
本件発明14-1では、「2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する」という構成を有するのに対し、甲5発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点11]
「巻取シャフトを前記日除け部材の巻き取り方向に駆動する駆動装置」の配置に関し、本件発明14-1では、「巻取シャフト(21)に配置される」のに対し、甲5発明ではそのように特定されていない点。
ウ 判断
(ア) まず、本件発明14-1と甲5発明との間には、相違点9~11が存在するから、本件発明14-1は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明)ではない。
(イ) 次に、相違点10について検討すると、相違点10に係る本件発明14-1の構成により、本件特許の明細書【0061】に記載される「日除け部材の延長部分は、露出した車体と内側ライニングの内側の間に配置されたスロット形状の収容部またはポケットに保持される。このように、日除け部材の側端部が常に内側ライニング背後に保持されるので、内側ライニングと日除け部材の側部の間のいかなる採光隙間は、防止される。」という効果を奏するものといえるから、当該相違点10に係る本件発明14-1の構成が当業者が適宜なし得る設計変更である、とはいえない。また、当該相違点10に係る本件発明14-1の構成が周知又は慣用技術である、ともいえない。
よって、相違点10に係る本件発明14-1の構成は、甲5発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
エ まとめ
よって、本件発明14-1は、甲5発明ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2-1-2) 本件発明14(請求項3を引用するもの)について
ア 本件発明14(請求項3を引用するもの。以下「本件発明14-2」という。)と甲5発明とを対比する。
本件発明3の「自動車窓(5)の一端部(7)の近傍に配置され、…前記案内レール(22,23)の間の距離よりも長く、」との構成は、本件発明2と同じであるから、本件発明14-2と甲5発明との対比においても、上記「(2-1-1)ア」の相当関係が同様に成り立つ。
イ 以上のことから、本件発明14-2と甲5発明との一致点及び相違点は次のとおりである。
[一致点]
「自動車窓の一端部の近傍に配置され、回転可能に装着された巻取シャフトと、
前記巻取シャフトに実質的に平行に延びる引出部材と、
前記自動車窓の互いに対向する側端部にそれぞれ隣接して延び、その中に前記引出部材の両端部が案内される2つの案内レールと、
一端が前記巻取シャフトに固着され、他端が前記引出部材に固定される日除け部材と、を備え、
前記巻取シャフトに平行に測った前記日除け部材の幅は、前記自動車窓の前面で前記日除け部材を完全に延ばした状態における前記引出部材と隣接する位置において、前記案内レールの間の距離よりも長く、
前記巻取シャフトを前記日除け部材の巻き取り方向に駆動する駆動装置が配置される、
ウィンドウシェード装置。」
[相違点12]
「案内レール」に関し、本件発明14-2では、「自動車の本体に固定され」るのに対し、甲5発明ではそのように特定されていない点。
[相違点13]
本件発明14-2では、「2つの前記案内レール(22,23)にそれぞれ隣接して、それぞれが前記日除け部材(19)が押し進められたとき前記日除け部材(19)の前記自動車窓(5)の幅と前記案内レール(22,23)のうち少なくともいずれか一方を横方向に超えて延びる部分を保持し、当該部分の進入開口である導入スロット(57)を有する、対応する2つの収容部(53)が前記自動車(1)の内側ライニング(16)の背後に存在する」という構成を有するのに対し、甲5発明ではそのような構成を備えていない点。
[相違点14]
「巻取シャフトを前記日除け部材の巻き取り方向に駆動する駆動装置」の配置に関し、本件発明14-2では、「巻取シャフト(21)に配置される」のに対し、甲5発明ではそのように特定されていない点。
ウ 判断
(ア) まず、本件発明14-2と甲5発明との間には、相違点12~14が存在するから、本件発明14-2は、甲第5号証に記載された発明(甲5発明)ではない。
(イ) 次に、相違点13について検討すると、相違点13に係る本件発明14-2の構成により、上記「(2-1-1)ウ(イ)」で述べた効果を奏するものといえるから、当該相違点13に係る本件発明14-2の構成が当業者が適宜なし得る設計変更である、ということもできない。また、当該相違点13に係る本件発明14-2の構成が周知又は慣用技術である、ともいえない。
よって、相違点13に係る本件発明14-2の構成は、甲5発明に基いて当業者が容易になし得たものではない。
エ まとめ
よって、本件発明14-2は、甲5発明ではないし、また、他の相違点について検討するまでもなく、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2-1-3) まとめ
上記「(2-1-1)」及び「(2-1-2)」より、本件発明14は、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法第29条第1項第3号及び同法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(2-2) 本件発明15について
本件発明15は、請求項14を引用して発明を特定するものであるから、本件発明14と同様に、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法第29条第1項第3号及び同法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(2-3) 本件発明18について
ア 本件発明18は、請求項2又は3を引用して発明を特定するものである。ところで、上記「(2-1)」の「相違点10」の本件発明14の構成は、本件発明2の発明特定事項に係る構成であり、「相違点13」の本件発明14の構成は、本件発明3の発明特定事項に係る構成である。
そして、上記「(2-1)」で検討したとおり、「相違点10」及び「相違点13」の構成は、いずれも甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。そうすると、本件発明18と甲5発明を対比すると、少なくとも上記相違点10又は上記相違点13と同様の点で相違し、それらは甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないことが明らかである。
イ まとめ
本件発明18は、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法第29条第1項第3号及び同法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(2-4) 本件発明20について
本件発明20は、請求項18を引用して発明を特定するものであるから、本件発明18と同様に、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法第29条第1項第3号及び同法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
3 無効理由4~7についての判断
(1) 本件発明8について
ア 本件発明8は、請求項2又は3を引用して発明を特定するものである。そして、上記「2(2-3)」と同様に、本件発明8と甲5発明を対比すると、少なくとも上記相違点10又は上記相違点13と同様の点で相違し、それらは甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、甲第2号証には、当該相違点10又は13に係る本件発明8の構成は記載も示唆もされていない。
イ よって、本件発明8は、甲5発明及び甲第2号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(2) 本件発明9について
ア 本件発明9は、請求項2又は3を引用して発明を特定するものである。そして、上記「(1)」と同様、本件発明9と甲5発明を対比すると、少なくとも上記相違点10又は上記相違点13と同様の点で相違し、それらは甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ よって、本件発明9は、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(3) 本件発明19、21及び22について
ア 本件発明19は、請求項18を引用して発明を特定するものであるから、本件発明18と同様に、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明21は、請求項18を引用して発明を特定するものであるから、本件発明18と同様に、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ また、本件発明22は、請求項21を引用して発明を特定するものであるから、本件発明21と同様に、甲第5号証に記載された発明ではないし、また、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
エ よって、本件発明19、21及び22は、特許法第29条第1項第3号及び同法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(4) 本件発明10について
ア 本件発明10は、請求項2又は3を引用して発明を特定するものである。そして、上記「(1)」と同様、本件発明10と甲5発明を対比すると、少なくとも上記相違点10又は上記相違点13と同様の点で相違し、それらは甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、甲第1号証には、当該相違点10又は13に係る本件発明10の構成は記載も示唆もされていない。
イ よって、本件発明10は、甲5発明及び甲第1号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
(5) 本件発明16、17及び23について
ア 本件発明16、17及び23は、それぞれ請求項2又は3を引用して発明を特定するものである。そして、上記「(1)」と同様、本件発明16、17、23と甲5発明を対比すると、少なくとも上記相違点10又は上記相違点13と同様の点で相違し、それらは甲第5号証に記載された事項ではないし、甲5発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。さらに、甲第1号証及び甲第6号証のいずれにも、当該相違点10又は13に係る本件発明16、17及び23の構成は記載も示唆もされていない。
イ よって、本件発明16、17及び23は、甲5発明及び甲第1号証、甲第6号証に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないので、特許法29条第2項の規定に違反するものではなく、特許法第123条第1項第2号に該当しない。
4 無効理由8についての判断
(1) 請求人は、訂正前の本件発明の以下の事項は、明確でなく、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない旨主張している(審判請求書第60ページ第11行~第62ページ第5行)。
ア 訂正前の本件発明11の「前記日除け部材(19)には、それぞれの端部が前記引出部材(15)に結合されるか、または、前記端部の長さにわたって好ましくは連続する管状のループに形成された曲げ部(41)が提供される」との記載。
イ 訂正前の本件発明12の「延伸された前記日除け部材(19)により規定される表面に平行にその平坦な側面が配置される板ばね部材(42)が、少なくとも端部領域が、前記折り曲げ部(41)または前記ループに挿入されている」との記載。
ウ 訂正前の本件発明13の「好ましくは」との記載。
(2) 上記について検討するに、訂正後の本件発明11~13の記載は、いずれも技術常識に照らしてみれば、当業者が発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとなっている。
なお、審理事項通知において「訂正後の請求項11~13の記載は特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、特許法第36条第4項第1号及び同条第6項第2号に関する無効理由(審判請求書の第60ページ第11行~第62ページ第5行)は解消されたと考えられる。かかる無効理由を維持する場合は、具体的に根拠を述べて主張されたい。」と請求人に通知したところ、口頭審理陳述要領書には、「現在の状況では、請求人は新たな内容を述べる予定はありません。」と記載され、請求人は訂正後の本件発明11~13の記載に対しては特段追加の主張をしていない。
(3) よって、本件特許の本件発明11~13は、特許法第36条第6項第2号及び特許法第36条第4項第1号の規定に違反するものではなく、同法第123条第1項第4号に該当しない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明2~23の特許を、無効とすることはできない。
本件発明1は、訂正によって削除されたから、本件発明1についての審判請求は、特許法第135条の規定により却下すべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条により、請求人が負担すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-800060