特許無効審判
2021-800095
車両ドアのベルトラインモール
- 審判番号
- 2021-800095
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2013-008466
- 登録番号
- 6062746
- 請求日
- 2021年11月04日
- 審決日
- 2024年08月06日
- 公報発行日
- 2024年12月27日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ファルテック
- 【請求人代理人】黒瀬 雅一
- 【請求人代理人】寺本 光生
- 【請求人代理人】丹野 拓人
- 【被請求人】片山工業 株式会社
- 【被請求人代理人】大谷 嘉一
- 審判長/審判官
- 審判長 山本 信平
- 審判官 青木 良憲
- 審判官 北村 亮
- 分類
- P1113.121-ZAA(B60J) / P1113.537-ZAA(B60J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第123条第1項第2号、特許法第36条第6項第2号、特許法第135条、特許法第169条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6062746号「車両ドアのベルトラインモール」の特許無効審判事件についてされた令和4年9月13日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和04年(行ケ)第10111号、令和5年7月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6062746号の特許請求の範囲を、令和6年4月18日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について、訂正することを認める。
特許第6062746号の請求項2に係る発明についての本件審判の請求を却下する。
特許第6062746号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6062746号の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。
2 答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
第2 手続の経緯
本件特許第6062746号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての特許出願は、平成25年1月21日にされ、平成28年12月22日にその特許権が設定登録された。
これに対しなされた本件無効審判請求に係る手続の経緯は、以下のとおりである。
1 第1次審決までの経緯
令和3年11月 4日 本件無効審判請求
令和4年 1月28日付け 被請求人より訂正請求書の提出
令和4年 1月28日付け 被請求人より審判事件答弁書の提出
令和4年 3月17日付け 審理事項通知書
令和4年 4月20日付け 請求人より口頭審理陳述要領書の提出
令和4年 5月17日付け 被請求人より口頭審理陳述要領書の提出
令和4年 6月 2日 口頭審理
令和4年 6月 3日付け 被請求人より上申書の提出
令和4年 6月15日付け 請求人より上申書の提出
令和4年 6月15日付け 被請求人より上申書の提出
令和4年 7月 6日付け 請求人より上申書の提出
令和4年 7月 6日付け 被請求人より上申書の提出
令和4年 9月13日 審決(請求不成立)(以下「第1次審
決」という。)
2 第1次審決後の経緯
令和4年 第1次審決に対する訴えの提起(令和4 年(行ケ)第10111号)
令和5年 7月25日 判決言渡(審決取消)(以下、この判決
を「確定判決」という。)
令和5年10月30日付け 被請求人より訂正請求書の提出
令和5年11月29日付け 被請求人より訂正請求書の手続補正書(
方式)の提出
令和6年 1月19日付け 請求人より審判事件弁駁書の提出
令和6年 2月15日 審決の予告
令和6年 4月18日付け 被請求人より訂正請求書の提出(以下、
この訂正を「本件訂正」という。)
令和6年 6月 7日付け 請求人より審判事件弁駁書の提出
第3 訂正請求について
1 訂正請求の趣旨
特許第6062746号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める。
2 訂正の内容
(1) 本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
ア 本件訂正前の特許請求の範囲
「【請求項1】
車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールはドアガラス昇降部からドアフレームの表面にわたって延在するモール本体部と、
当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
前記ステップ断面形状部は、ドアガラスに摺接する水切りリップを有するとともに前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、
前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され、
前記ドアフレームの表面に位置する部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあることを特徴とするベルトラインモール。
【請求項2】
車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールは意匠面を形成するモール本体部と、当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
ステップ断面形状部は前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、
ベルトラインモールは前記モール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着されるものであり、
前記ステップ断面形状部は引掛けフランジ部からドアガラスに摺接するように立設した水切りリップと、縦フランジ部から前記水切りリップの外側に当接するサブリップを立設させたことを特徴とするベルトラインモール。」
イ 本件訂正後の特許請求の範囲(下線は訂正箇所を示す。)
「【請求項1】
車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールはドアガラス昇降部からドアフレームの表面にわたって延在するモール本体部と、
当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
前記ステップ断面形状部は、ドアガラスに摺接する水切りリップを有するとともに前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部を有し、
前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され、
前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、 前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し、
前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあり、前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有していることを特徴とするベルトラインモール。
【請求項2】 (削除)」
(2) 本件訂正の内容
本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1に、「前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され、」の後に「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し、」との特定事項を追加する訂正をするとともに、「前記ドアフレームの表面に位置する部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してある」と記載されているのを、「前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあり、前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」に訂正する。
イ 訂正事項2(請求項2に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
3 訂正の適否についての判断
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的
(ア)訂正前の請求項1に「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し、」との特定事項を追加する訂正は、モール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着される態様をさらに限定したものである。
(イ)訂正前の請求項1に「前記ドアフレームの表面に位置する部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してある」と記載されていたのを、訂正後の請求項1として「前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあり、前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」と訂正したのは、ドアフレームの表面に位置する部分がベルトラインモールの端部側に位置するものであることを特定するとともに、ベルトラインモールが、さらに「前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」ことを特定し、限定したものである。
(ウ)したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
(ア)「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し、」の訂正について
[図:0001416891000001.jpg]
a 上に示す本件図面の図1において、左側が車内側であり、右側が車外側であることから、図1(a)には、引掛けフランジ部13がアウタパネル1の上縁部の内側面に当接する当接部13bを有することが図示されている。また、本件特許明細書【0013】には「ここで、水切りリップ及びサブリップ17は、軟質樹脂又はエラストマー等にて成形されていて、ドアガラス4の室内外方向のバラツキを吸収しながらドアガラス4との間をシールするので、ベルトラインモール10は当接部13bを支点にして外側に向けて、図1(a)では右側に向けて転ぶように力が作用するが、・・・」と記載されていることからも、当接部13bはアウタパネル1の上縁部の内側面に当接することが理解できる。
b 上記図1(a)をみると、縦フランジ部12は当接部13bよりも車両の外側方向に位置することが図示されているといえる。
c 仮に、図面に表示された寸法等は必ずしも正確ではないため、図1からは、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置するとはいえないとしても、次の理由で、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置することは、本件特許明細書に記載されていたことといえる。
本件特許明細書には、図1(a)におけるアウタパネル1の上縁部と図1(b)におけるフレーム部3aとの左右方向(内外方向)の位置関係については一切記載されていないことから、アウタパネル1の上縁部とフレーム部3aのどちらが内側にありどちらが外側にあるかは特定されていない。また、下記エ(イ)bで詳述するとおり、技術常識を考慮しても、アウタパネル1の上縁部がフレーム部3aの外側にあると断言することはできない。そうすると、本件特許明細書には、アウタパネル1の上縁部がフレーム部3aの内側にあるもの、アウタパネル1の上縁部とフレーム部3aが略同じ位置にあるもの、及び、アウタパネル1の上縁部がフレーム部3aの外側にあるものの全てが記載されているといえる。そして、図1(b)より縦フランジ部12はフレーム部3aの外側にあり、図1(a)より当接部13bはアウタパネル1の上縁部の内側にあることから、アウタパネル1の上縁部がフレーム部3aの内側にある場合や、アウタパネル1の上縁部とフレーム部3aが略同じ位置にある場合には、縦フランジ部12は当接部13bよりも車両の外側方向に位置することになる。
すなわち、本件特許明細書には、縦フランジ部12が当接部13bよりも車両の外側方向に位置するものと、縦フランジ部12が当接部13bよりも車両の内側方向に位置するものの両方が記載されているところ、訂正事項1により請求項1は前者に限定されたといえる。
(イ)「前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除してあり、前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」の訂正について
本件特許明細書【0002】には「従来はベルトラインモールの端部において意匠部を残すように水切りリップ等を切除すると剛性不足であったり、別部材のエンドキャップを取り付けることができないためにエンド部材を射出成形にてモール本体部に一体化していたが、射出成形による一体化には専用設備が必要となるだけでなく、射出成形されるエンド部材とモール本体との間にラップ代が必要となるために外観意匠性に劣る問題があった。」と記載され、射出成形を用いることなくエンドキャップをモール本体側に取り付けることが目的であることが開示されており、さらに【0006】には「本発明はベルトラインモールの水切りリップ及び引掛けフランジを切除してもドアの外面意匠部を形成するモール本体部とステップ断面形状部を構成する縦フランジ部にて、端末に後からエンドキャップを取り付けることができるだけの断面剛性を有するようにした点に特徴がある。」と記載され、【0013】には「端部にエンドキャップ部品を挿入、装着できる。」と記載されている。
(ウ)そうすると、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アで説明したとおり、発明特定事項を具体化し限定したものであるとともに、上記イで説明したとおり、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 請求人の主張について
(ア)請求人の主張
a 本件の願書に添付した図面である図1(b)をみると、アウタパネル1から立ち上がるフレーム部3aが、その下部において車両の内側方向(ドアガラス4側)に湾曲して直線状に上方に延び、当該直線状に上方に延びた部分で縦フランジ部12と当接していることが示されており、上記のとおり、フレーム部3aは、その下部において車両の内側方向(ドアガラス4側)に湾曲して直線状に上方に延びているから、本件の願書に添付した図面である図1(a)の縦フランジ部12は、引掛けフランジ部の内側に設けたアウタパネル1の上縁部の内側面に当接する当接部13bよりも車両の内側方向に位置することになる。(令和6年6月7日付け審判事件弁駁書の4~5頁)
b 一般に車両のドアフレームにおいて、車両のドアフレームの前後方向からみて、アウタパネル上縁部の位置とピラー部(本件特許発明の「フレーム部3a」に相当する。)の位置とは左右方向にずれて形成されているものは技術常識(例えば、甲第17号証の1~甲第19号証の4参照)である。
してみると、「「特許公報図1の説明」の図」に示されたドアフレーム表面部位置とフレーム部3Aの位置とは異なるものであり、対応するものではない。
また、上記のとおり、本件の願書に添付した図面である図1(a)の縦フランジ部12は、引掛けフランジ部の内側に設けたアウタパネル1の上縁部の内側面に当接する当接部13bよりも車両の内側方向に位置することになるから、「縦フランジ部は当接部よりも車両の内側方向に位置する」ことになる。(令和6年6月7日付け審判事件弁駁書の6~7頁)
c エンドキャップに関して、本件の願書に最初に添付した明細書には、「・・・端末に後からエンドキャップを取り付けることができる・・・」(段落【0006】)、及び「・・・端部にエンドキャップ部品を挿入,装着できる。」(段落【0013】)とのみ記載されており、エンドキャップとして、「モール本体部とは別部材のエンドキャップ部品」のみ開示されているものである。
上記訂正事項1の「エンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し」との訂正は、「モール本体部とは別部材のエンドキャップ部品」以外の「射出成形を用いることなく形成されたエンドキャップ」をも当然包含するものであるが、「モール本体部とは別部材のエンドキャップ部品」以外の「射出成形を用いることなく形成されたエンドキャップ」は、本件の願書に最初に添付した明細書等には記載や示唆されていない。
したがって、上記訂正事項1の「エンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し」との訂正は、本件の願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。(令和6年1月19日付け審判事件弁駁書の3~4頁)
(イ)当審の見解
a 上記(ア)aの主張について
本件図面の図1(b)で示されるベルトラインモールの断面は、図1(a)で示される断面から、水切りリップ、段差部及び引掛けフランジ部を切除したもので、縦フランジ部12はそのまま残っていることから、縦フランジ部12の位置は、図1(a)と図1(b)とで同じ位置であるはずである。そして、図1(a)をみると、アウタパネル1はアウタパネル上縁部1aにおいてリインフォース2の内側と外側にあるところ、当該内側のアウタパネル1の外側面と縦フランジ部12の内側面とが略面一となっていることがみて取れる。一方、図1(b)をみると、フレーム部3aの上部の外側面が縦フランジ部12の内側面に略接していることがみて取れる。
そうすると、フレーム部3aの上部と内側のアウタパネル1とは、左右方向(内外方向)において略同じ位置にあるといえ、図1からは、フレーム部3aの上部が内側のアウタパネル1よりも内側に位置するとはいえないことから、フレーム部3aの上部の外側面に当接する縦フランジ部12が内側のアウタパネル1の内側面に当接する当接部13bの内側に位置することになるともいえない。
b 上記(ア)bの主張について
甲第17号証の1~甲第19号証の4で示されるように、アウタパネル上縁部の位置とピラー部(本件特許発明の「フレーム部3a」に相当する。)の位置とが左右方向に大きくずれて形成されている(フレーム部3aがアウタパネル上縁部よりも大きく内側に位置する)場合、フレーム部3aの外側面に当接する縦フランジ部は、アウタパネル上縁部よりも内側に位置することになるから、その結果、アウタパネル上縁部の内側面に当接する当接部よりも内側に位置することになる。これは、被請求人が令和6年4月18日付け訂正請求書の5~6頁で説明している、甲第16号証の図6の態様と略整合しているといえる。
これに対して、本件特許明細書及び図面に記載されたベルトラインモールは、上記訂正請求書の6~7頁に記載されるように、縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部を設けることにより、アウタパネルの上縁部とフレーム部の表面部との水平方向の位置関係において生じる段差(左右方向の大きなずれ)を抑えることができたものである。つまり、本件特許明細書及び図面に記載されたアウタパネル上縁部1aの位置とフレーム部3aの位置との位置関係は甲第17号証の1~甲第19号証の4で示されるものとは異なるものであるといえる。
そうすると、たとえ、アウタパネル上縁部の位置とピラー部(本件特許発明の「フレーム部3a」に相当する。)の位置とが左右方向にずれて形成されているものが周知であったとしても、本件特許明細書に記載されたアウタパネル上縁部1aの位置とフレーム部3aの位置も同様に左右方向にずれて形成されている(フレーム部3aがアウタパネル上縁部1aよりも内側に位置する)とはいえない。その結果、フレーム部3aの外側面に当接する縦フランジ部12がアウタパネル上縁部1aの内側面に当接する当接部13bの内側に位置することになるともいえない。
c 上記(ア)cの主張について
上記訂正事項1の「エンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し」との訂正は、エンドキャップを(モール本体部の端部に)挿入装着する際に射出成形を用いることがないことを特定するものであり、エンドキャップを形成する際に射出成形を用いることがないことを特定するものではないから、「モール本体部とは別部材のエンドキャップ部品」以外の「射出成形を用いることなく形成されたエンドキャップ」は、本件の願書に最初に添付した明細書等には記載や示唆されていない、という請求人の主張は当を得ないものである。
そして、上記イ(イ)で説明したとおり、本件特許明細書【0002】には「従来は・・・別部材のエンドキャップを取り付けることができないためにエンド部材を射出成形にてモール本体部に一体化していたが、射出成形による一体化には専用設備が必要となるだけでなく、射出成形されるエンド部材とモール本体との間にラップ代が必要となるために外観意匠性に劣る問題があった。」と記載され、【0006】には「・・・端末に後からエンドキャップを取り付けることができるだけの断面剛性を有するようにした点に特徴がある。」と記載され、【0013】には「端部にエンドキャップ部品を挿入、装着できる。」と記載されていることから、本件の願書に添付した明細書には、エンドキャップを射出成形を用いることなくモール本体側に取り付けることが開示されていると認められる。
d よって、請求人の上記主張を採用することはできない。
オ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、当該訂正事項2は特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
エ 小括
以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たしている。
なお、本件特許無効審判事件においては、訂正前の請求項1及び2が無効審判の請求の対象とされているので、訂正前の請求項1及び2に係る訂正事項1及び2に関して、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 訂正請求についてのむすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するのであるから、訂正後の請求項1及び2について訂正を認める。
第4 本件発明
前記第3のとおり本件訂正の請求による請求項1及び2の訂正は認められるから、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本件発明1」などという。また、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ訂正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項(上記第3の2(1)イ参照)により特定されるとおりのものである。
第5 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
本件無効審判請求書、令和4年4月20日付け口頭審理陳述要領書、口頭審理、令和4年6月15日付け上申書、令和4年7月6日付け上申書、令和6年1月19日付け審判事件弁駁書及び令和6年6月7日付け審判事件弁駁書における請求人の主張からみて、請求人が主張する無効理由及び証拠方法は以下のとおりである。
(1)無効理由1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証、甲第10号証ないし甲第14号証及び甲第16号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明は、甲第1号証ないし甲第8号証及び甲第10号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、その特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである
(2)無効理由2
本件特許の特許請求の範囲の請求項1及び2の記載は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
2 証拠方法
請求人は、審判請求書に添付して甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、口頭審理陳述要領書に添付して甲第9号証ないし甲第14号証を提出し、令和6年1月19日付け審判事件弁駁書に添付して甲第15号証及び甲第16号証を提出し、令和6年6月7日付け審判事件弁駁書に添付して甲第17号証の1ないし甲第19号証の4を提出している。
甲第1号証ないし甲第19号証の4はそれぞれ以下のとおりである。
甲第1号証 特公平2-11419号公報
甲第2号証 特開2004-114883号公報
甲第3号証 特開2004-224230号公報
甲第4号証 特開2000-71763号公報
甲第5号証 特開2005-119478号公報
甲第6号証 特開2001-138827号公報
甲第7号証 特開2001-301469号公報
甲第8号証 特開2006-88933号公報
甲第9号証 特許・実用新案審査基準 第III部 第2章 第2節 進
歩性
甲第10号証 特開2009-143544号公報
甲第11号証 特開2006-298239号公報
甲第12号証 特開2005-132215号公報
甲第13号証 特開平11-34757号公報
甲第14号証 特開2005-35472号公報
甲第15号証 本件無効審判事件の第1次審決に対する審決取消請求事
件(令和4年(行ケ)第10111号)の判決
甲第16号証 特開2007-131016号公報
甲第17号証の1 マツダ株式会社の車名「CX-90」のフロントド
アの全景を撮影した写真
甲第17号証の2 マツダ株式会社の車名「CX-90」のフロントド
アのアウタパネルの車両後方側の端部付近をアウタ
パネルの斜め上方から撮影した写真
甲第17号証の3 マツダ株式会社の車名「CX-90」のフロントド
アのアウタパネルの車両後方側の端部付近をアウタ
パネルの車両前方側から後方側に向けて斜め上方か
ら撮影した写真
甲第18号証の1 マツダ株式会社の車名「CX-90」のリアドアの
全景を撮影した写真
甲第18号証の2 マツダ株式会社の車名「CX-90」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近を撮影した写
真
甲第18号証の3 マツダ株式会社の車名「CX-90」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近をアウタパネ
ルの車両後方側から前方側に向けて斜め上方から撮
影した写真
甲第18号証の4 マツダ株式会社の車名「CX-90」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近をアウタパネ
ルの車両前方側から後方側に向けて斜め上方から撮
影した写真
甲第19号証の1 マツダ株式会社の車名「CX-60」のリアドアの
全景を撮影した写真
甲第19号証の2 マツダ株式会社の車名「CX-60」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近を撮影した写
真
甲第19号証の3 マツダ株式会社の車名「CX-60」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近をアウタパネ
ルの斜め上方から撮影した写真
甲第19号証の4 マツダ株式会社の車名「CX-60」のリアドアの
アウタパネルの車両前方側の端部付近をアウタパネ
ルの車両後方側から前方側に向けて斜め上方から撮
影した写真
第6 被請求人の主張
1 被請求人の主張の概要
令和4年1月28日付け審判事件答弁書、令和4年5月17日付け口頭審理陳述要領書、口頭審理、令和4年6月3日付け上申書、令和4年6月15日付け上申書、令和4年7月6日付け上申書及び令和6年4月18日付け訂正請求書における被請求人の主張の概要は以下のとおりである。
(1)無効理由1について
訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明は、甲第1号証、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証及び甲第10号証ないし甲第14号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)無効理由2について
訂正後の本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確である。
第7 当審の判断
1 本件発明の概要
本件発明は、車両ドア(乗用車のフロントドア、リアドア、トラックキャビンドア等のドア全般)のドアガラス昇降部に装着されるベルトラインモールに関するものである(【0001】、【0005】)。車両のドアパネルは、ドア外面を形成するアウタパネルとドア内面を形成するインナパネルからなるものであり、アウタパネルの上縁部には、ドアガラスの外面と摺接し、雨水を切るための水切りリップ(シールリップ)を有するベルトラインモール(モールディング)が装着されており、ベルトラインモールは、車両の外面のベルトラインを装飾する意匠モールとしての役割があることから、ドアフレームの表面からドアガラス昇降部(アウタパネル上縁部)まで連続的に配設するデザインモールも採用されているところ、この種のベルトラインモールでは、ドアフレームの表面に位置する部分の水切りリップを切除する必要があるので、従来は、ベルトラインモールの端部において意匠部を残すように水切りリップ等を切除すると剛性不足となり、別部材のエンドキャップを取り付けることができないためにエンド部材を射出成形にてモール本体部に一体化するなどしていたが、射出成形による一体化には専用設備が必要となるだけでなく、射出成形されるエンド部材とモール本体との間にラップ代が必要となるために外観意匠性に劣るという問題があった(【0002】)。そこで、これらの問題を解決するために、本件発明は、端末の剛性に優れるとともに外観デザインの全長にわたった連続性に優れ、ドアガラスとのシール性が高いベルトラインモールの提供を目的とし(【0004】)、ベルトラインモールを、特許請求の範囲記載の構成とすることにより(【0005】)、モール本体部の上部から下に折り返した縦フランジ部を有し、ドアフレームの表面に位置する部分は縦フランジ部を残して、水切りリップや引掛けフランジ部を切除できるようにし、モール本体部と縦フランジ部とで略C断面形状を形成しつつ断面剛性を確保したので、ベルトラインモールの端末部に別物品としてのエンドキャップを取り付けることができるという効果を奏し、また、縦フランジ部の下部側に引掛けフランジ部を有するステップ断面形状に形成したので、水切りリップとこの水切りリップの外側の側面をサブリップで押圧するように二重リップ構造とすることもでき、このように二重リップ構造にすると段差凹部に埃等がたまるのを防止するだけでなく、ドアガラスに対するシール性が向上するという効果を奏するものである(【0009】)。
2 甲号証の記載事項等
(1) 甲第1号証
ア 記載事項
甲第1号証には、「ベルトモールデイング」に関して、次の事項が記載されている(下線は当審が付与した。以下同様。)。
(ア) 「技術分野
本発明は、自動車用ベルトウエザーストリツプモールデイング(以下、「ベルトモールデイング」という。)に係り、詳しくは車体側パネルに取付け固定するモールデイング本体の端末部の改良に関するものである。
背景技術
ベルトモールデイングは、金属ストリツプ材を横断面略U字形に折曲げ成形した芯材の外表面部を合成樹脂で被着し、その片面側にガラス窓に当接するリツプ部を一体に形成したもので、車体のドア上縁辺に沿つて嵌着固定することにより取付けられている。その端末はドアサツシやコーナーピースと干渉するのを防ぐために一部を切欠除去しているが、この切欠を設けることにより車体パネルに嵌着係合する部分がなくなつてしまうところから車体側に位置する装飾面部が車体パネルから浮き上り或いは折れ曲がつてしまう虞れがある。
そのため、従来、モールデイング本体の端末部を一部切欠いで横断面略C字状を呈する装飾面部には別ものに樹脂成形した台座部をC字内側に嵌着固定し、その台座部にねじ孔を形成すると共にナットを埋込み装着して、車体側パネルの背面側から挿入するボルトで台座部を締付け固定することにより、端末部を車体パネルに取付け支持することが行われている。然し、このものでは、台座部を別もの成形して取付け固定しなければならないため、部品点数が多くてコスト高を招くものである。」(1欄16行ないし2欄20行)
(イ) 「このベルトモールデイングMは自動車用のウエザーストリツプベルトモールデイングであり、ステンレス鋼板或いは防錆メツキ鋼板等を断面略鉤状に折曲げ成形した金属部材を芯材10とし、その外表面部11、頂部12及び昇降窓ガラス側に位置する基部13の略全外表面を軟質塩化ビニル樹脂で被覆し、基部13から昇降窓ガラスに向けて斜めに突出する上下のリツプ14,15を被覆樹脂と同じ軟質塩化ビニル樹脂で一体に押し出し成形したものである(第1図a参照)。このモールデイング本体では、端末部の長手方向を所定の長さに亘つて芯材10の頂部側の一部を残すと共に基部13を切断することによりフランジ部16を形成する(第1図b参照)。その切断はプレスの切断金型等を用いることにより行うことができ、フランジ部16は横断面略C字状の形状を呈する装飾面部1aの縁辺に位置しまた後述する車体側パネルPと相対向する個所となる。次に、そのフランジ部16にはプレス金型もしくはドリル等で芯金材10を貫通するビス孔17を形成する(第1図c参照)。その端末部には、インジエクシヨン成形型2のキヤビテイ型21とコア型22内に挿置してエンドキヤツプ3を射出成形する。」(3欄14ないし36行)
(ウ) 「このように構成するモールデイングMは車体側パネルに取付けるには、車体側のドアパネルPにモールデイングの長手方向略全長を押込んだ後に、ドアパネルPの背面側より挿入するワツシヤー付きタツピングスクリユー5をフランジ部16のビス孔17に締付けることにより端末側を確りと車体側パネルにねじ止め固定することができる(第3図a,b参照)。」(4欄11ないし18行)
(エ)「第1図 a.
[図:0001416891000002.jpg]
」
(オ)「第1図 b.
[図:0001416891000003.jpg]
」
(カ)「第3図 a.
[図:0001416891000004.jpg]
」
イ 認定事項
(ア) 上記ア(イ)の記載事項及びア(エ)、(オ)の図示内容から、外表面部11、頂部12及び基部13の軟質塩化ビニル樹脂で被覆された部分は、それぞれ、外表面部被覆部、頂部被覆部及び基部被覆部と表現できる。
(イ) 上記ア(ア)、(イ)の記載事項、ア(エ)、(オ)の図示内容及び(ア)の認定事項から、ベルトモールデイングMは昇降窓ガラスからドアサツシにわたって延在する外表面部被覆部及び頂部被覆部と、前記頂部被覆部から下方に折り返した基部被覆部を有している、といえる。
(ウ) 上記ア(イ)の記載事項、ア(エ)、(オ)の図示内容及び(ア)、(イ)の認定事項から、基部被覆部は、昇降窓ガラスに向けて斜めに突出する上下のリップ14、15を有するとともに前記頂部被覆部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向にやや下方に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた部分を有している、といえる。
(エ) 上記ア(ウ)の記載事項、ア(カ)の図示内容及び(ウ)の認定事項から、前記段差部の端部より下側に延在させた部分はドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分を有している、といえる。
ウ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載事項、イの認定事項及び図面の図示内容を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「車体のドア上縁片に沿って嵌着固定されるベルトモールデイングMであって、
ベルトモールデイングMは昇降窓ガラスからドアサツシにわたって延在する外表面部被覆部及び頂部被覆部と、
前記頂部被覆部から下方に折り返した基部被覆部を有し、
前記基部被覆部は、昇降窓ガラスに向けて斜めに突出しガラス窓に当接する上下のリップ14、15を有するとともに前記頂部被覆部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向にやや下方に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた部分を有し、
前記ベルトモールデイングMは、車体側のドアパネルPに押込んで取付けられ、
前記段差部の端部より下側に延在させた部分はドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分を有し、
前記ドアサツシの表面に位置する端末部の長手方向を所定の長さに亘って前記頂部被覆部側の一部を残すと共に基部被覆部を切断することによりフランジ部16を形成し、その端末部にエンドキャップ3が射出成形されているベルトモールデイングM。」
(2) 甲第2号証
ア 記載事項
甲第2号証には、「自動車ドアのガラスアウタウエザストリップ」に関して、次の事項が記載されている。
(ア) 「【請求項1】
自動車ドアのドアアウタパネルの上縁に沿って取付けられるガラスアウタウエザストリップにおいて、
該ガラスアウタウエザストリップは、上記ドアアウタパネルの上縁に取付ける硬質合成樹脂等からなる硬質部材の取付基部と、ドアガラスの外面に当接しドアガラスとの間をシールする軟質の熱可塑性エラストマー等からなる軟質部材のガラスシールリップから構成され、
上記取付基部は、車外側側壁、上部壁、車内側側壁からなる断面略逆U字状をなし、
上記取付基部の上部壁の上に上記ガラスシールリップを接合せしめたことを特徴とする自動車ドアのガラスアウタウエザストリップ。」
(イ) 「【請求項5】
上記取付基部の上部壁は、車外側において上方に突出する突出部を有し、該突出部にガラスシールリップを接合した請求項1、2、3または4記載の自動車ドアのガラスアウタウエザストリップ。」
(ウ) 「【請求項6】
上記取付基部の上部壁の上記突出部は、内面に凹部を有し、該凹部は、断面略逆U字状の上記取付基部の内部空間に連続している請求項5記載の自動車ドアのガラスアウタウエザストリップ。」
(エ) 「【0043】
図5は本発明の実施の別の態様のガラスアウタウエザストリップの断面を示すものであり、図7のA-A線に沿った位置での断面図である。
図5の実施の態様は、図1の実施の態様と比べて、取付基部4の上部壁43の車外側が上方に突出している突出部43bを有し、その突出部43bの内面に凹部を有し、この凹部は、取付基部4の断面略逆U字状の内部空間に連続しているものである。また、図4の実施の態様と比較した場合には、図4の突出部43bの内部に凹部を設けたものであるということができる。
図5に示すように突出部43bの内部に凹部を設けたため、突出部43bの肉厚の厚い部分がなくなり、均一な肉厚となった。そのため、ガラスアウタウエザストリップ3を所定の寸法に切断するとき、硬質部材からなる取付基部4の厚肉部分が無くなり切断が容易である。
また取付基部4の肉厚が均一となり、押出成形時のバランスがよくなるとともに、成形後の熱収縮等による取付基部4のヒケが生じない。」
(オ)「図5
[図:0001416891000005.jpg]
」
イ 甲第2号証に記載された事項
上記ア(ア)~(エ)の記載事項及びア(オ)の図示内容から、甲第2号証には次の事項(以下「甲2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
〔甲2記載事項〕
「自動車ドアのドアアウタパネルの上縁に沿って取付けられるガラスアウタウエザストリップにおいて、
該ガラスアウタウエザストリップは、上記ドアアウタパネルの上縁に取付ける硬質合成樹脂等からなる硬質部材の取付基部と、ドアガラスの外面に当接しドアガラスとの間をシールする軟質の熱可塑性エラストマー等からなる軟質部材のガラスシールリップから構成され、
上記取付基部は、車外側側壁、上部壁、車内側側壁からなる断面略逆U字状をなし、
上記取付基部の上部壁の上に上記ガラスシールリップを接合せしめた自動車ドアのガラスアウタウエザストリップであって、上記取付基部の上部壁は、車外側において上方に突出する突出部を有し、該突出部にガラスシールリップを接合せしめ、上記取付基部の上部壁の上記突出部は、内面に凹部を有し、該凹部は、断面略逆U字状の上記取付基部の内部空間に連続している自動車ドアのガラスアウタウエザストリップ。」
(3) 甲第3号証
ア 記載事項
甲第3号証には、「自動車ドアベルトラインモール」に関して、次の事項が記載されている。
(ア) 「【請求項1】
自動車ドアのドアガラスの昇降口部に装着されるベルトラインモールのウェザーストリップにおいて、当該ウェザーストリップをドアガラスとの境界のドア端部に装着させているベース部材の上端部付近より、意匠リップをドアガラス側へドアガラスに接しない長さで突出し、ベース部材の意匠リップ付け根から間隔をおいた下方よりドアガラス側へ水切リップを突出させ、取付状態にて水切リップはドアガラスに摺接し屈曲することで意匠リップ先端部に水切リップ腹部を密着させて意匠リップと水切リップとベース部材にて空洞を形成することを特徴とする自動車ドアベルトラインモール。」
(イ) 「【0002】
【従来の技術】
自動車のドアガラスの昇降口部アウター側には、ドアガラスに弾性力を持って摺接し、ドアパネルとドアガラスの間をシールすることにより、雨水や埃の侵入を防止し、風切り音等を低減する為にウェザーストリップを備えたベルトラインモールが取り付けられている。
そのようなベルトラインモールは、その従来例の取付状態の長手方向断面図を図5に示すように、硬質塩化ビニル樹脂等の硬質樹脂からなるベース部材111に弾性を有する軟質塩化ビニル樹脂等の軟質樹脂からなるヒレ状の水切リップ120、121が上段と下段に2重に設けられ、雨水等の水切と遮音が図られていた。
また、ベルトラインモール100には外観意匠性も要求され、ウェザーストリップ表面部からドアガラス側に向けて意匠リップ130が形成されている。
これらのベルトラインモールは、複合押出成形等にて製造されていて、さらなる低コスト化が要求されている。
低コスト化の方策として、使用材料の低減や、製造を容易にするコンパクトで簡単な断面形状の検討が上げられる。
しかしながら、単に水切リップを2枚から1枚にするだけでは遮音性能が低くなるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記技術的課題に鑑みて、ドアガラス昇降口アウター側に装着されるベルトラインモールにおいて、従来と同等以上の遮音性能を確保しながら材料使用量の低減を図るのに効果的で、コンパクトな断面形状にて生産性が高いベルトラインモールを提供することを目的としている。」
(ウ) 「【0008】
図1に、請求項1に記載の発明に対応したベルトラインモール取付状態の図3におけるA-A線断面に対応する例を示す。
ベルトラインモール10aのウェザーストリップは、ドア3端部に装着されているベース部材11より意匠リップ30が、そして意匠リップ30の付け根から下方に所定の間隔を隔てた位置から水切リップ20aがドアガラス4側へ突出している。
意匠リップ30は、ベース部材11の上端付近よりドアガラス側上方へベース部材11とドアガラス4の略中間位置まで突出している。
水切リップ20aも斜め上方に突出し、ベース部材に固着している根元付近より上面は盛り上がり、腹部は上面と下面が略平行に厚みを持って形成されている。
水切リップ20aは、ドアガラス4に水切リップ20aの先端が摺接することで屈曲し、その腹部が上方の意匠リップ先端部31に密着している。
これにより、水切リップ20aと意匠リップ30とベース部材11にて空洞12aが形成されている。
水切リップは、このように上面と下面を略平行にし、全体に厚みを持たせた腹部とすることで、より一層の遮音効果を得ることが出来る。」
(エ) 「図1
[図:0001416891000006.jpg]
」
イ 甲第3号証に記載された事項
上記ア(ア)~(ウ)の記載事項及びア(エ)の図示内容から、甲第3号証には次の事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
〔甲3記載事項〕
「自動車ドアのドアガラスの昇降口部に装着されるベルトラインモール10aのウェザーストリップにおいて、当該ウェザーストリップをドアガラスとの境界のドア端部に装着させているベース部材11の上端部付近より、意匠リップ30をドアガラス側へドアガラスに接しない長さで突出し、ベース部材11の意匠リップ30の付け根から間隔をおいた下方よりドアガラス側へ水切リップ20aを突出させ、取付状態にて水切リップ20aはドアガラスに摺接し屈曲することで意匠リップ先端部31に水切リップ腹部を密着させて意匠リップと水切リップとベース部材にて空洞を形成する自動車ドアベルトラインモール。」
(4) 甲第4号証
ア 記載事項
甲第4号証には、「自動車ドアウエザストリップ」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項2】 ドアパネルの上縁のフランジに取り付けられるトリム部を備え、前記フランジに下端が側方へ突出した係止爪が形成され、前記トリム部の下端にトリム部の内側へ突出して前記係止爪の下端に掛止するフック部が形成された自動車用ドアウエザストリップにおいて、前記フック部の上面が突出端側ほど低くなる傾斜面となっていることを特徴とする自動車用ドアウエザストリップ。」
(イ)「【0017】ドアウエザストリップ1は、フランジ45に取り付けられる断面略逆U字形のトリム部2と、トリム部2の内側壁3のトリム外面から車室内方向へ突出してドアガラス40に当接する上下二つの舌片状のシール部11,12とを備えている。シール部11,12のガラス接触面には植毛部13が形成されている。このドアウエザストリップ1は、クリップを使用せずにフランジ45に取り付けるタイプであって、トリム部2の内側壁3及び外側壁4は次のような構成(A)(B)(C)となっている。」
(ウ)「【0019】(B)内側壁3の下端には、トリム部2の内側へ突出してフランジ45の係止爪46の下端に掛止するフック部7が形成されている。フック部7の上面は突出端側ほど低くなる傾斜面7aとなっている。なお、図示例のフック部7の上面は付根部で前記傾斜が終わっているが、これは付根部が係止爪46に関わらないためであって、勿論、付根部まで前記傾斜が続いていてもよい。上昇するドアガラス40がシール部11,12に摺接し、ドアウエザストリップ1に上方向の力Fupと車外側へ傾動する方向(図5において時計回り方向)の力Fout とが加わったときに、フック部7は係止爪46に係止してそれらの力Fup,Fout に対抗し、ドアウエザストリップ1の抜け及び傾動を防止して断面姿勢を保持する。」
(5) 甲第5号証
ア 記載事項
甲第5号証には、「自動車用ベルトラインモール断面構造」に関して、次の事項が記載されている。
「【0011】
本発明に係る自動車用ベルトラインモールのドアパネル上縁への装着状態の断面図を図1に示す。
自動車ドア1のドアガラス2が昇降するドアアウタパネル3の上縁4にベルトラインモール10が取り付けられる。
このベルトラインモール10は、ベース部11が断面略逆V字形状に形成され、複合押出成形等によりアウタ側に意匠部材12、インナー側にリップ13が設けられた構造となっている。
なお、リップ13は2枚の他に1枚のものもある。
ベース部11は室外側部分のベルト状のアウタ部21と、室内側のベルト状の縦フランジ部22が首部22aにて一体的に連結されている。
図1に示す例は、首部22aの肉厚t2が縦フランジ部の一般肉厚t1やベース部のアウタ部21の肉厚よりも薄肉に形成され、低剛性となっている。
クリップレスタイプの樹脂モールであるベルトラインモール10は、ベース部のアウタ部21とベース部の縦フランジ部22でドアアウタパネル上縁4を挟み込み、ベース部縦フランジ部22下部の係止部22bがドアアウタパネル上縁4の室内側に設けられた係止片5に係合することでドアアウタパネル上縁4に嵌着される構造が基本である。
従って、首部22aはベルトモールをアウタパネルに組み付ける際には適度に撓み、組み付け後にはアウタパネルに固定されるだけの嵌着力が必要となる。
よって、首部の肉厚部が一般部より薄過ぎると組み付け性が良くても嵌着力が弱くなり、肉厚差が小さいと組み付け時に意匠面12が変形する問題が生じやすい。
このような観点からバランスよくt1とt2の比率を定める必要があり、
t2/t1=1/3~3/4の範囲がよい。」
(6) 甲第6号証
ア 記載事項
甲第6号証には、「自動車用遮音性シール材」に関して、次の事項が記載されている。
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】 解決しようとする課題は、従来の自動車用シール材40は、遮音性を高めるための効果的な手段が施されていないので、遮音性に問題があり、車外騒音が容易に室内に透過してしまうことである。」
(7) 甲第7号証
ア 記載事項
甲第7号証には、「自動車用ウェザーストリップ」に関して、次の事項が記載されている。
「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明ではロードノイズがベルトラインから車室内に侵入するのを防止するウェザーストリップを提供する。」
(8) 甲第8号証
ア 記載事項
甲第8号証には、「ドアインナーシールの取付構造」に関して、次の事項が記載されている。
「【0010】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、ドアトリムのウエストフランジ部に取り付けるドアインナーシールの取付構造であって、ドアトリムに簡単に組み付けることができ、更に、ドアサッシュ・グラスラン等との干渉問題も回避できるとともに、特に、外部騒音の侵入を確実に遮断でき、遮音性に優れたドアインナーシールの取付構造を提供することを目的としている。」
(9) 甲第10号証
ア 記載事項
甲第10号証には、「車両用ベルトモールディング」に関して、次の事項が記載されている。
「【0035】
また、第1係止壁部23の下端にはフランジ部13の補強用折返し部14の下端に係合可能な係止部24が形成され、第2係止壁部25の下端にはフランジ部13の底部12に弾性的に接する車外側シールリップ35が形成されている。
そして、装着体21は、その装着溝30がフランジ部13の上縁に差し込まれて、装着手段としての大小の突出部31、32と挟持リップ33、34とでフランジ部13を両側から挟持すると共に、係止部24が補強用折返し部14の下端に係合して抜け止めされた状態で取り付けられる。
また、第2係止壁部25の車外側面には、硬質のポリマー材料よりなる表皮層26が形成されている。さらに、連結壁部27の頂面の窓板9側の部分には窓板9の表面に向けて突出する遮蔽リップ36が形成されている。」
(10) 甲第11号証
ア 記載事項
甲第11号証には「車両用長尺トリム材とその装着方法」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0025】
図2に示すように、ベルトモール10の本体部をなす装着部11は、所定の間隔を隔てて対向する第1、第2の両側壁13、14と、これら第1、第2の両側壁13、14を一体に連結する頂壁15と、を有して横断面略U字状に形成されている。
そして、突出フランジ部4aの突出端5を装着部11の開口部から受け入れた状態で突出フランジ部4aに押し込まれることによって、突出フランジ部(折返し片6を含む)4aをその両面から狭持し、これによってフランジ4にベルトモール10が装着されるように形成されている。」
(イ)「【0028】
図2に示すように、装着部11の第2側壁14には、第1の弾性保持片20の先端位置よりも奥側に位置する内壁面の部分から第1側壁13の内壁面側に向けて横断面略山形状をなして突出する突条部30が長手方向に連続して形成されている。
そして、突条部30の開口側に向かう面には、第2側壁14との交差角度θが鋭角をなすスライドガイド面31が形成されている。
また、第2側壁14の内壁面には、突条部30よりも開口部側に位置する部分において、突出フランジ部4aの折返し片6の面に当接することでフランジ4に対し装着部11を所定の装着姿勢に位置決めして支持するための位置決め台座部35が、突条部130よりも緩やかな横断面略台形状に突出されて形成されている。
また、第2側壁14の先端には第1側壁13側に向けて略直角状をなして突出する突出片よりなりかつフランジ4の係止部7に係合可能な係合部40が形成されている。この係合部40の先端部には上方に向けて突出する外れ防止突起41が形成されている。」
(11) 甲第12号証
ア 記載事項
甲第12号証には「自動車用ドアのシール構造」に関して、次の事項が記載されている。
「【0021】
上記ウェザーストリップ22は、図5に示すように、上記上辺部6aを挟持する横断面下向きコ字状の本体部23に上記ウインドガラス12に摺接する上下一対の摺接リップ部24,25を一体形成した概略構造のものである。上記本体部23の車外側壁23a及び車内側壁23bの内面にはそれぞれ上辺部6aに当接して水等の進入を防止するシールリップ部23c,23d,23eが一体形成されている。また上記車内側壁23bの下端部にはフック部23fが一体形成されている。
【0022】
そして上記ドアアウタパネル6の上辺部6aの端末部6cには、上記ウェザーストリップ22のフック部23fが係合する爪部6dと、該爪部6dより下方に延長形成され、上記フック部23fの内端面23gが当接する延長部6eとが車両前後方向に交互に形成されている。」
(12) 甲第13号証
ア 記載事項
甲第13号証には「自動車用モール」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0003】ドアベルトモールアウタ81の前端末部(図12のA部)においては、その内側にドアサッシやドアミラー用ブラケットが位置し、シールリップ87が不要になることから、図13及び図14に示すように、車内向壁84に切欠部88が形成され、該車内向壁84ごとシールリップ87が切除されている。エンドキャップ91は、モール本体82の切断前端面を塞ぐ蓋部92と、モール本体82の内側に挿入される挿入部93とからなり、挿入部93はモール本体82の内面に接着剤94で接着されている。
【0004】ドアベルトモールアウタ81の後端末部(図12のB部)においても、その内側にドアサッシが位置し、シールリップ87が不要になることから、図15及び図16に示すように、車内向壁84に切欠部88が切り欠き形成され、該車内向壁84ごとシールリップ87が切除されている。但し、車内向壁84は切欠部88より上側に当接部89が残るように切り欠かれている。エンドキャップ95は、モール本体82の切断後端面を塞ぐ蓋部96と、モール本体82の内側に挿入される挿入部97とからなり、挿入部97の上横辺部は当接部89の内面に内側から当接して掛止される。
【0005】挿入部97にはボス部98が車内向きに突設され、このボス部98にネジ孔99が形成されている。そして、取付ネジ100をドアパネルPの内側からネジ孔99に螺合して締め付けることで、モール本体82の後端末部がエンドキャップ95を介しドアパネルPに取り付けられている。」
(イ)「図15
[図:0001416891000007.jpg]
」
(13) 甲第14号証
ア 記載事項
甲第14号証には「モール」に関して、次の事項が記載されている。
(ア)「【0024】
次に、図1,3等に基づいて、ベルトラインモール4の端末部構造について説明する。本実施形態におけるモール本体5の端末縁部分にあっては、車内側側壁部9が切り欠かれた構造となっている。かかる切欠部16の存在によって、モール本体5の端末縁部分には、上部係合凹部17と、下部係合凹部18とが設けられている(図5参照)。より詳しくは、上部係合凹部17は、前記連結部11と車内側側壁部9の一部とによって構成されている。また、下部係合凹部18は、車外側側壁部8と、下側の保持リップ12とによって構成されている。」
(イ)「【0026】
一方、エンドキャップ31は、略角柱状のキャップ本体部32と、該キャップ本体部32に一体形成され、前記モール本体5断面外周とほぼ同等の輪郭(ほぼ釣鐘状)を有する板状のカバー部33と、カバー部33とは反対側に突出形成された凸部34とからなる。前記キャップ本体部32には、前記上部係合凹部17に係合される上部係止部35と、前記下部係合凹部18に係止される下部係止部36とが設けられている。また、前記凸部34には、上記テーパ面22に対応するようにして規制当接部としてのキャップ側テーパ面37が形成されている。なお、本実施形態では、凸部34及びカバー部33間の距離が、上部係合凹部17の長手方向の長さと等しく構成されている。」
(ウ)「【0027】
次に、上記のように構成されてなるエンドキャップ31の装着に際しての手順等について説明する。
【0028】
まず、図1に示す状態から、エンドキャップ31の上部係止部35をモール本体5の上部係合凹部17に係合させる。
【0029】
そして、この状態で、前記上部係止部35を回転中心としてエンドキャップ31を近接方向へ回動させる。この回動に際し(係合状態において)、モール本体5のテーパ面22にエンドキャップ31のキャップ側テーパ面37が当たり、両者間に長手方向の位置ずれがあった場合には、前記テーパ面22に沿ってキャップ側テーパ面37が摺動しつつ適正位置に案内される。そして、上記回動によって、下部係止部36がモール本体5の下部係止部36に係止させられる。これにより、エンドキャップ31がモール本体5の端末部に移動不能に装着される。この装着にあっては、エンドキャップ31の断面方向への移動は勿論のこと、長手方向への移動も規制されることとなる。」
(エ)「図1
[図:0001416891000008.jpg]
」
(オ)「図5
[図:0001416891000009.jpg]
」
(14) 甲第16号証
ア 記載事項
甲第16号証には「ベルトモール取付構造」に関して、次の事項が記載されている。
「【0021】
ベルトモール本体20自体(硬質樹脂材料21、軟質樹脂材料22)の材料、構造は各種が提案されており、図示例は一例である。本発明はベルトモール本体20の構成を問わない。また、以上の実施形態では、エンド部材30をベルトモール本体20の端部に射出成形して一体化したが、別体として形成し、ベルトモール本体20の逆U字状断面内に挿入係止してもよい。」
3 無効理由1(甲1発明に基づく進歩性の欠如)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「車体のドア上縁片に沿って嵌着固定される」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本件発明1の「車両ドアに装着される」に相当し、以下同様に、「ベルトモールデイングM」は「ベルトラインモール」に、「昇降窓ガラス」は「ドアガラス昇降部」に、「ドアサツシ」は「ドアフレームの表面」に、「外表面部被覆部及び頂部被覆部」は「モール本体部」に、「頂部被覆部」は「モール本体部の上部」に、「下方に折り返した」は「内側下方に折り返した」に、「基部被覆部」は「ステップ断面形状部」に、「昇降窓ガラスに向けて斜めに突出しガラス窓に当接する上下のリップ14、15」は「ドアガラスに摺接する水切りリップ」に、「縦フランジ部」は「縦フランジ部」に、それぞれ相当する。
(イ)甲1発明の「前記ドアサツシの表面に位置する端末部の長手方向を所定の長さに亘って前記頂部被覆部側の一部を残すと共に基部被覆部を切断することによりフランジ部16を形成」する態様は、本件発明1の「前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び引掛けフランジ部を切除」する態様に相当する。
(ウ)甲1発明の「縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向にやや下方に延びる段差部」と、本件発明1の「縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部」とは、「縦フランジ部の下部から内側方向に延びる段差部」という限りにおいて一致しており、以下同様に、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分」と「前記段差部の端部より下側に延在させた引掛けフランジ部」とは、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分」という限りにおいて一致しており、「前記ベルトモールデイングMは、車体側のドアパネルPに押込んで取付けられ」と「前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持装着され」とは、「前記ドアガラス昇降部はドアのパネルに装着され」という限りにおいて一致しており、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分はドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分を有し」と「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し」とは、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分はパネルの上縁部の内側面に当接する部分を有し」という限りにおいて一致しており、「その端末部にエンドキャップ3が射出成形されている」と「前記端部はエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」とは、「前記端部はエンドキャップを備え得る」という限りにおいて一致している。
したがって、両者は、次の一致点で一致し相違点1~5で相違する。
〔一致点〕
「車両ドアに装着されるベルトラインモールであって、
ベルトラインモールはドアガラス昇降部からドアフレームの表面にわたって延在するモール本体部と、
当該モール本体部の上部から内側下方に折り返したステップ断面形状部を有し、
前記ステップ断面形状部は、ドアガラスに摺接する水切りリップを有するとともに前記モール本体部の上部から下に向けて折り返した縦フランジ部と、当該縦フランジ部の下部から内側方向に延びる段差部と、前記段差部の端部より下側に延在させた部分を有し、
前記ドアガラス昇降部はドアのパネルに装着され、
前記段差部の端部より下側に延在させた部分はパネルの上縁部の内側面に当接する部分を有し、
前記ドアフレームの表面に位置する端部側の部分は前記縦フランジ部が残るように前記水切りリップ、前記段差部及び前記段差部の端部より下側に延在させた部分を切除してあり、前記端部はエンドキャップを備え得るベルトラインモール。」
〔相違点1〕
「縦フランジ部の下部から内側方向に延びる段差部」に関して、本件発明1においては、縦フランジ部の下部から内側方向に「ほぼ水平に」延びる段差部であるのに対して、甲1発明においては、縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向に「やや下方に」延びる段差部である点。
〔相違点2〕
「前記段差部の端部より下側に延在させた部分」に関して、本件発明1においては、前記段差部の端部より下側に延在させた「引掛けフランジ部」であるのに対して、甲1発明においては、前記段差部の端部より下側に延在させた「部分」である点。
〔相違点3〕
「前記ドアガラス昇降部はドアのパネルに装着され」に関して、本件発明1においては、「前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持」装着されているのに対して、甲1発明においては、「前記ベルトモールデイングMは、車体側のドアパネルPに押込んで取付けられ」ている点。
〔相違点4〕
「パネルの上縁部の内側面に当接する部分」に関して、本件発明1においては、「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、 前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し」ているのに対して、甲1発明においては、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分はドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分を有し」ているものの、「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置しているか不明な点。
〔相違点5〕
「前記端部はエンドキャップを備え得る」に関して、本件発明1においては、前記端部は「エンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」のに対して、甲1発明においては、その端末部に「エンドキャップ3が射出成形」されている点。
イ 判断
上記アの相違点について検討する。
(ア) 相違点1について
a 相違点1は、「縦フランジ部の下部から内側方向に延びる段差部」が、本件発明1においては、縦フランジ部の下部から内側方向に「ほぼ水平に」延びる段差部であるのに対して、甲1発明においては、縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向に「やや下方に」延びる段差部であるというものである。上記確定判決によれば、甲1発明のモールデイングが取り付けられるドアパネルが、アウタパネルであることについては当事者間に争いがなく、甲1発明の「昇降窓ガラス側方向」は、本件発明1の「内側方向」(車内側を指す。)と同じ方向を意味するものと認められるから、相違点1においては、段差部が「ほぼ水平」に延びるか「やや下方」に延びるかという点のみが問題となる。
b そこで検討するに、本件明細書には、段差部が縦フランジ部の下部から内側方向に「ほぼ水平に」延びることの技術的意義についての記載はない。また、前記1のとおり、本件発明は、端末の剛性に優れるベルトラインモールを提供するために、ドアフレームの表面に位置する部分は縦フランジ部を残して、水切りリップや引掛けフランジ部を切除できるようにし、モール本体部と縦フランジ部とで略C断面形状を形成しつつ断面剛性を確保したというものであり、ベルトラインモールの端末では、ドアフレームの表面に位置する部分は縦フランジ部を残して切除されるものであって、段差部も切除されるのであるから、段差部が「ほぼ水平に」に延びても「やや下方」に延びても、本件発明の作用効果に何ら影響するものではない。そうすると、段差部が「ほぼ水平に」延びるものとすることについて何らかの技術的意義があるとは認められない。
そして、甲1発明においても、段差部が縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向(内側方向)に「やや下方に」延びることに何らかの技術的意義があるとは認められず、甲1発明において「やや下方に」延びる段差部を「ほぼ水平に」延びるように構成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないというべきである。
c そうすると、甲2記載事項について検討するまでもなく、甲1発明において段差部に設計的変更を加え、これを「ほぼ水平に」することは、当業者が容易に想到できたものと認めるのが相当である。
(イ) 相違点2について
a 相違点2は、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分」が、本件発明1では前記段差部の端部より下側に延在させた「引掛けフランジ部」であるのに対して、甲1発明では前記段差部の端部より下側に延在させた「部分」であるというものである。
b 本件発明1に係る特許請求の範囲の記載によると、「引掛けフランジ部」は、ベルトラインモールのドアガラス昇降部(端部以外の部分)において、「モール本体部と引掛けフランジ部とでアウタパネルの上縁部に挟持装着され」るものであるから、本件発明1における「引掛けフランジ部」とは、モール本体部(下向きのU字状のベルトラインモールの外側部分)とアウタパネルを挟んで相対する場所に位置し、モール本体部とともにアウタパネルの上縁部を挟むようにして取り付けられる部分を指すものと認められる。このように解釈することは、本件明細書の記載とも整合する。
c 次に、甲第1号証には、アウタパネルとモールデイング(ベルトラインモール)の位置関係について直接的に説明する図面は記載されていないものの、モールデイングが、「金属ストリツプ材を横断面略U字形に折曲げ成形した芯材の外表面部を合成樹脂で被着し」(甲第1号証の1欄23~25行目)たもので、「車体のドアの上縁辺に沿って嵌着固定」(同2欄1~2行目)されるものであるとの記載があること、甲1発明のモールデイングの形状(甲第1号証の第1図a参照)及び、甲1発明が、車体ドア(アウタパネル)の上縁辺に沿って嵌着固定することにより取り付けられるベルトラインモールの端末を一部切除し除去することで、浮き上がったりすることを回避することを目的とするものであって、一部切除がされていない部分ではベルトラインモール自体が車体ドアに嵌着固定されているものであることからすると、甲1発明において、アウタパネルは、ベルトラインモールの下向きの略U字状に折り曲げられた芯材の外側(車外側。第1図aにおいて11と示されている部分)と、内側(車内側。同13と示されている部分)の間に挟み込まれて固定されているものと容易に理解できる。このように理解することは、本件発明1や甲1発明と同じくベルトラインモールに係る発明である甲第2号証及び甲第4号証に記載されたベルトラインモールの形状が、下向きの略U字状に折り曲げられた部材の外側と内側の間にアウタパネルを挟むようにして取り付けられるものであること(前記2(2)、(4))に照らしても、自然といえる。
d また、本件発明1においては、ベルトラインモールの「ドアフレームの表面に位置する部分」すなわち端部において、段差部から先の車内側の部分(段差部及び引掛けフランジ部)を切除するものであるところ、甲第1号証には、「芯材10の頂部側の一部を残すとともに基部13を切除することにより、フランジ部16を形成する(第1図b参照)」(甲第1号証の3欄25~27行目)とあり、甲第1号証の第1図a~c及び本件明細書の【図1】~【図4】も考慮すると、その切除の位置及び切除される部位の形状は本件発明1と甲1発明において、ほぼ同じである。
e 以上のとおりであるから、甲1発明の段差部の端部より下側に延在させた「部分」(甲第1号証の第1図aにおいて13で示される部分)は、本件発明1の「引掛けフランジ部」に相当する部分であると認めるのが相当であり、甲1発明においては単に特段の名称が付されていないにすぎないというべきであって、実質的に相違するものであるとはいえない。
(ウ) 相違点3について
a 相違点3は、「前記ドアガラス昇降部はドアのパネルに装着され」に関して、本件発明1においては、「前記ドアガラス昇降部はモール本体部と引掛けフランジ部とでドアのアウタパネルの上縁部に挟持」装着されているのに対して、甲1発明においては、「前記ベルトモールデイングMは、車体側のドアパネルPに押込んで取付けられ」ている点というものであるが、甲1発明の「ドアパネルP」はアウタパネルであり、モールデイングが取り付けられている場所については本件発明1と甲1発明において相違しないから、相違点3については、甲1発明の「押込んで取り付けられ」が、本件発明1の「挟持」装着と相違するか否かが問題となる。なお、本件発明1における「挟持」について、本件明細書には特段の定義の記載はないものの、その字義から、挟んだ状態で支持することを意味するものと理解され、「挟持装着」は、挟むように取り付けることを意味するものと理解される。
b そこで検討するに、甲第1号証の発明の詳細な説明には、「ベルトモールデイングは、金属ストリツプ材を横断面略U字形に折曲げ成形した芯材の外表面部を合成樹脂で被着し、その片面側にガラス窓に当接するリップ部を一体に形成したもので、車体のドア上縁辺に沿って嵌着固定することにより取付けられている。その端末はドアサツシやコーナーピースと干渉するのを防ぐために一部を切欠除去しているが、この切欠を設けることにより車体パネルに嵌着係合する部分がなくなってしまうところから車体側に位置する装飾面部が車体パネルから浮き上り或いは折れ曲がつてしまう虞れがある。」(甲第1号証の1欄23行目~2欄9行目)とあるので、モールデイングは、アウタパネルの上辺に嵌着係合されているものであるが、一部を切除した端末部(端部)についてはそのままでは嵌着係合することができないものであると認められる。そして、甲第1号証には、「本発明に係るベルトモールデイングにおいては、モールデイング本体の端末部長手方向を一部切欠いたフランジ部に芯金材を貫通するビス孔を形成し、そのビス孔を残存させてモールデイング本体の端末部にエンドキャップを形成する合成樹脂でビス孔周辺のフランジ部も被覆することにより、タッピングスクリュー等でモールデイング端末を車体側パネルにねじ止め固定できるよう構成されている。」(3欄2~10行目)、「このように構成するモールデイングMは車体側パネルに取付けるには、車体側のドアパネルPにモールデイングの長手方向略全長を押込んだ後に、ドアパネルPの背面側より挿入するワッシャー付きタッピングスクリュー5をフランジ部16のビス孔17に締付けることにより端末側を確りと車体側パネルにねじ止め固定することができる(第3図a、b参照)。」(4欄11~18行目)との記載があり、これらの記載からは、甲1発明においては、端部についてはモールデイング本体の一部を切欠くが、当該部分についてはアウタパネル(甲第1号証の「車体のドア」「車体パネル」「車体側パネル」「ドアパネルP」)の上縁辺と嵌着係合することができないので、切欠いた部分のフランジ部にビス孔を形成して、アウタパネルにねじ止めにより固定するものとされているものと認められる。
そうすると、甲1発明においては、モールデイングは、端部以外の部分においては、アウタパネルの上辺に「嵌着係合」されているものであるが、前記(イ)で認定したとおり、モールデイングがアウタパネルを挟むようにして取り付けられるものと容易に理解できるから、甲1発明の「押込んで取り付けられ」は、本件発明1の「挟持」装着と実質的に同じように、モールデイングがアウタパネルの上縁辺を挟むようにして取り付けられた状態を指すものと認めるのが相当である。
c そうすると、相違点3は実質的な相違点ではない。
(エ) 相違点4について
a 相違点4は、本件発明1においては、「前記引掛けフランジ部はアウタパネルの上縁部の内側面に当接する当接部を有し、 前記縦フランジ部は前記当接部よりも車両の外側方向に位置し」ているのに対して、甲1発明においては、「前記段差部の端部より下側に延在させた部分はドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分を有し」ているものの、「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置しているか不明な点というものであるが、甲1発明の「段差部の端部より下側に延在させた部分」は本件発明1の「引掛けフランジ部」のことであり、以下同様に、「ドアパネルP」は「アウタパネル」のことであり、ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する「部分」は「当接部」のことであるから、相違点4については、甲1発明において「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置するか否かという点のみが問題となる。
b そこで検討するに、本件明細書には、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置することの技術的意義についての記載はない。また、前記第3の3(1)イ(ア)cのとおり、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置する、という限定は、ドアパネルの形状について、アウタパネル1の上縁部がフレーム部3aの内側にある車両ドアや、アウタパネル1の上縁部とフレーム部3aが略同じ位置にある車両ドアに対応するベルトラインモールであることを意味しているとも認められるが、本件発明において縦フランジ部、当接部の位置はドアパネルの形状にあわせて設計されるものであると認められるから、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置することは単にドアパネルの形状にあうようにベルトラインモールの形状を設計したということに過ぎない。そして、縦フランジ部と当接部の位置関係をどのように設計しても本件特許明細書の段落【0004】に記載された「端末の剛性に優れるとともに外観デザインの全長にわたった連続性に優れ、ドアガラスとのシール性が高いベルトラインモールの提供を目的とする。」という本件発明の作用効果に何ら影響するものではない。そうすると、縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置することについて格別の技術的意義があるとは認められない。
c 甲1発明についても、「ベルトモールデイングM」が嵌着固定される「ドアパネルP」の形状、つまり、「ドアパネルP」の上縁部のうち、「フランジ部16」と対向する部分と「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」と対向する部分の、どちらの部分が外側方向にありどちらの部分が内側方向にあるかに応じて、「フランジ部16」、つまり「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置するか否かを適宜設計できるものであることは明らかであるから、「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置するか否かに格別の技術的意義があるとは認められない。
d そうすると、甲1発明において、「縦フランジ部」が「ドアパネルPの上縁部の内側面に当接する部分」よりも車体の外側方向に位置する態様を選択することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないというべきである。
(オ) 相違点5について
a 相違点5は、「前記端部はエンドキャップを備え得る」に関して、本件発明1においては、前記端部は「エンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有している」のに対して、甲1発明においては、その端末部に「エンドキャップ3が射出成形」されている点である。
b そこで検討するに、上記2(12)~(14)のとおり甲第13号証、甲第14号証及び甲第16号証には、ベルトラインモールにおいて、ドアフレームに位置する端部にエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着して取り付けたものが示されており、エンドキャップが前記端部に取り付けられているのであるから、当然、前記端部は、エンドキャップを取り付けることができる断面剛性を有しているといえる。
してみると、上記のとおりであるから、ベルトラインモールにおいて、ドアフレームに位置する端部がエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着し、取り付けることができる断面剛性を有しているものは、周知の技術(以下、「周知技術」という。)であるといえる。
c また、甲第1号証には、「従来、モールデイング本体の端末部を一部切欠いで横断面略C字状を呈する装飾面部には別ものに樹脂成形した台座部をC字内側に嵌着固定し、その台座部にねじ孔を形成すると共にナットを埋込み装着して、車体側パネルの背面側から挿入するボルトで台座部を締付け固定することにより、端末部を車体パネルに取付け支持することが行われている。」(2欄10~17行目)との記載があり、この記載から、ベルトラインモールにおいて、端部に台座部を兼ねるエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着して取り付けることは、従来行われていたことであると理解できる。このように理解することは、甲1発明と同じくベルトラインモールに係る発明である甲第13号証に記載されたベルトラインモールが、端部に台座部を兼ねるエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着して取り付けるものであること(前記2(12))に照らしても、妥当である。
d 甲1発明は、従来、台座部を別ものに成形して取付け固定しなければならないため、部品点数が多く、コスト高を招くという問題があったことから、この問題を解決するために、別ものに形成する台座部を省略して安価で、かつ、しっかりと車体側パネルに取り付け固定可能なベルトモールデイングを提供することを目的とし、その端末部に、インジエクシヨン成形型2のキヤビテイ型21とコア型22内に挿置してエンドキヤツプ3を射出成形するものである。しかしながら、射出成形をするためには、専用の設備が必要となるだけではなく、ベルトラインモールの端部を成形型に挿置して射出成形しなければならず製造工程が増えることは、当業者にとって自明の事項である。そして、部品点数が多く、コスト高を招くという問題を回避するために射出成形を用いるか、専用の設備が必要となり製造工程が増えるという問題を回避するために射出成形を用いないかは、状況に応じて当業者が適宜選択し得る事項である。
e そうすると、甲1発明において、上記周知技術に基づいて従来行われていたように、端部にエンドキャップを射出成形を用いることなく挿入装着して取り付けることにより、相違点5に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易に想到し得たことである。
(カ) 上記相違点1~相違点5を総合的に勘案しても、本件発明1の奏する作用効果は、甲1発明、甲第2号証及び甲第4号証に記載された事項並びに甲第13号証、甲第14号証及び甲第16号証に記載された周知技術から予測される程度のものにすぎず、格別顕著な効果を認めることはできない。
ウ 以上検討のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証及び甲第4号証に記載された事項並びに甲第13号証、甲第14号証及び甲第16号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明2について
本件発明2は、訂正により存在しないこととなったため、本件発明2についての特許を無効とする請求は却下する。
(3) 被請求人の主張について
ア 被請求人は、令和6年4月18日付け訂正請求書の5~7頁において次の主張をする。
「なお、本発明において「縦フランジ部の下部から内側方向にほぼ水平に延びる段差部」を設けた技術的意義は、次のとおりである。
下記に、甲16号証の図6を引用して説明する。
このようなモールの断面構造は、従来の一般的な構造であり、本発明における縦フランジ部に相当する位置が当接部の位置よりも車両の内側方向に位置している。
このような構造では、アウタパネルの上縁部とドアフレーム表面部位置との間に、大きな水平方向の段差ができてしまう。
甲1号証もこの車両側の段差を解消するために、甲1号証第3図aに示すように、パネル側に段差を設けた構造になっている。
これに対して本発明は、モールにほぼ水平に延びる段差部を設けることで、車両側のアウタパネルの上縁部とフレーム部の表面部との水平方向の位置関係において生じる段差を抑えることができたものである。
このように、アウタパネルの上縁部とフレーム部表面の水平方向(前後方向)の段差を抑えると、車両の走行時に風切音が発生しにくくなる。」
イ 上記主張について検討すると、上記2(1)ウで認定したとおり、甲1発明は「縦フランジ部の下部から昇降窓ガラス側方向にやや下方に延びる段差部」を有しており、「ほぼ水平に」か「やや下方に」かでは異なるものの内側方向に延びる「段差部」を有している点では本件発明1と相違ないことから、甲1発明がパネル側に段差を設けた構造になっているとするならば、本件発明1においても「モールにほぼ水平に延びる段差部を設けること」のみで「車両側のアウタパネルの上縁部とフレーム部の表面部との水平方向の位置関係において生じる段差を抑えることができた」という効果を奏するとはいえない。
ウ 仮に上記主張を「モールにほぼ水平に延びる段差部を設ける」とともに「縦フランジ部は当接部よりも車両の外側方向に位置」することにより「車両側のアウタパネルの上縁部とフレーム部の表面部との水平方向の位置関係において生じる段差を抑えることができた」という効果を奏するというものだとして検討しても、上記(1)イ(エ)bにおいて、「縦フランジ部が当接部よりも車両の外側方向に位置することは単にドアパネルの形状にあうようにベルトラインモールの形状を設計したということに過ぎない。」と述べたように、従来ベルトラインモールの形状の制約によりアウタパネルの上縁部とフレーム部の表面部との水平方向の位置関係において段差が生じていたとは考えられず、逆に、段差のない(あるいは小さい)ドアパネルの形状に適合させるために、「モールにほぼ水平に延びる段差部を設ける」とともに「縦フランジ部は当接部よりも車両の外側方向に位置」するようにしたというべきである。そして、車両の走行時に風切音が発生しにくくなるという効果が仮にあったとしても、それはドアパネルの形状に起因するものであって、ベルトラインモールの形状によるものではない。よって、車両の走行時に風切音が発生しにくくなるという効果が仮にあったとしても、本件発明による効果とはいえない。
エ したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
(4) 小括
よって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証及び甲第4号証に記載された事項並びに甲第13号証、甲第14号証及び甲第16号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第8 むすび
以上のとおりであるから、無効理由1(進歩性欠如)は理由があり、本件発明1についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、同法123条1項2号に該当し無効とするべきものである。
請求項2は、訂正により存在しないこととなったため、請求項2に係る発明についての特許を無効とする請求は、不適法な請求であってその補正をすることができないものとなったから、特許法135条の規定により却下する。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-800095