特許異議申立
2016-701160
スープ保温用真空二重容器
- 審判番号
- 2016-701160
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-011742
- 登録番号
- 特許第5982834号(P5982834)
- 請求日
- 2016年12月20日
- 審決日
- 2017年12月14日
- 公報発行日
- 2018年03月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】タイガー魔法瓶株式会社
- 【権利者代理人】北原 宏修
- 【異議申立人】赤松 智信
- 審判長/審判官
- 審判長 千壽 哲郎
- 審判官 莊司 英史
- 審判官 佐々木 正章
- 分類
- P1651.112-YAA(A47J) / P1651.121-YAA(A47J) / P1651.537-YAA(A47J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5982834号発明「スープ保温用真空二重容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5982834号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。
特許第5982834号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許第5982834号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成28年8月12日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人赤松智信より特許異議の申立てがされ、平成29年6月15日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年8月17日付けで意見書の提出及び訂正の請求がされ、特許異議申立人より同年9月28日付けで意見書の提出がされた。
第2 訂正の請求
1 訂正の内容
平成29年8月17日付け訂正請求書による訂正の請求は、「特許第5982834号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである(下線は、訂正箇所を示す)。
ア 請求項1に係る訂正
訂正前の請求項1に
「 開口に向かうに従って拡径する有底の内筒部と、
底部に向かうに従って縮径し、開口端部で前記内筒部の開口端部と接合される有底の外筒部と、
前記外筒部と前記内筒部との間に形成される真空空間と
を備え、
断面視において、前記外筒部の側壁部のテーパ角は、前記内筒部の側壁部のテーパ角より大きい
スープ保温用真空二重容器。」とあるのを、
「 人の手で把持することができると共にスープをスプーンですくい出すことができるスープ保温用鋼製真空二重容器であって、
第1底壁部と、前記第1底壁部の外縁から上側に向かって延びる第1側壁部とを有し、前記第1底壁部に向かうに従って前記第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部と、
第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部と、
前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部と、
前記鋼製外筒部と前記鋼製内筒部との間に形成される真空空間と
を備え、
断面視において、前記鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい
スープ保温用鋼製真空二重容器。」と訂正する。
イ 訂正事項
本件訂正は、以下の訂正事項を含む。
(ア)訂正事項1
訂正前の請求項1の「スープ保温用真空二重容器」について「人の手で把持することができると共にスープをスプーンですくい出すことができるスープ保温用鋼製真空二重容器」との事項を付加する(以下「訂正事項1」という。)。
(イ)訂正事項2
訂正前の請求項1の「スープ保温用真空二重容器」について、「前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部と、」を加入する(以下「訂正事項2」という。)。
(ウ)訂正事項3
訂正前の請求項1の「開口に向かうに従って拡径する有底の内筒部」を「第1底壁部と、前記第1底壁部の外縁から上側に向かって延びる第1側壁部とを有し、前記第1底壁部に向かうに従って前記第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部」に訂正する(以下「訂正事項3」という。)。
(エ)訂正事項4
訂正前の請求項1の「底部に向かうに従って縮径し、開口端部で前記内筒部の開口端部と接合される有底の外筒部」を「第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部」に訂正する(以下「訂正事項4」という。)。
(オ)訂正事項5
訂正前の請求項1の「前記外筒部と前記内筒部との間に形成される真空空間」を「前記鋼製外筒部と前記鋼製内筒部との間に形成される真空空間」に訂正する(以下「訂正事項5」という。)。
(カ)訂正事項6
訂正前の請求項1の「断面視において、前記外筒部の側壁部のテーパ角は、前記内筒部の側壁部のテーパ角より大きいスープ保温用真空二重容器。」を「断面視において、前記鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい
スープ保温用鋼製真空二重容器。」に訂正する(以下「訂正事項6」という。)。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1を「人の手で把持することができると共にスープをスプーンですくい出すことができるスープ保温用鋼製真空二重容器」と特定することで、スープ保温用真空二重容器の機能を特定して特許請求の範囲を減縮するものであるからから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、スープ保温用真空二重容器を「人の手で把持することができると共にスープをスプーンですくい出すことができる」という機能を特定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書の「・・・このため、このスープ保温用真空二重容器は、スープをスプーンですくい出しやすくすることができる。したがって、このスープ保温用の真空二重容器は、スープをスプーンですくい出すことができると共に、手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0008】)という記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「スープ保温用真空二重容器」について「前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部と、」を加入して特許請求の範囲の減縮するものであるからから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項2は、「スープ保温用真空二重容器」について「前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部と、」を加入して構成を特定するものであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2は、願書に添付した明細書の「先端壁部111cは略円筒形状を呈しており、その開口径は内筒側壁部111aの開口径よりも大きくなっている。また、この先端壁部111cは、段部111dを介して内筒側壁部111aに接合されている。段部111dは、逆切頭円錐筒形状(逆円錐台筒形状)の部位であって、上述の通り、内筒側壁部111aと先端壁部111cとの間に位置し、内筒側壁部111aと先端壁部111cとを接合している。」(【0013】)という記載、「 外筒112は、図2に示されるように、主に、外筒側壁部112a、外筒底壁部112bおよび雄ネジ部112cから形成されている。・・・また、この先端壁部111cは、段部111dを介して内筒側壁部111aに接合されている。段部111dは、逆切頭円錐筒形状(逆円錐台筒形状)の部位であって、上述の通り、内筒側壁部111aと先端壁部111cとの間に位置し、内筒側壁部111aと先端壁部111cとを接合している。」(【0014】)という記載及び図2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の「開口に向かうに従って拡径する有底の内筒部」を「第1底壁部と、前記第1底壁部の外縁から上側に向かって延びる第1側壁部とを有し、前記第1底壁部に向かうに従って前記第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部」と内筒状の形状を特定し、また、「内筒部」の材料を「鋼製」と特定して特許請求の範囲を減縮するものであるからから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項3は、「内筒部」を「第1底壁部と、前記第1底壁部の外縁から上側に向かって延びる第1側壁部とを有し、前記第1底壁部に向かうに従って前記第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部」と特定し、また、「内筒部」の材料を「鋼製」と特定するものであるからから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項3は、願書に添付した明細書の「なお、この内筒111は、SUS316L、SUS316、SUS304L等の鋼材から形成されている。内筒111を形成する鋼材としては、外筒112を形成する鋼材よりも耐蝕性に優れるものが採用される。内筒側壁部111aは、逆切頭円錐筒形状(逆円錐台筒形状)を呈している。」(【0013】)という記載及び図2の記載に基づくものであり、「逆切頭円錐筒形状」は全高に亘って直線的に縮径するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(4) 訂正事項4について
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の請求項1に「底部に向かうに従って縮径し、開口端部で前記内筒部の開口端部と接合される有底の外筒部」と記載されているのを「第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部」と特定して特許請求の範囲の減縮するものであるからから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項4は、「外筒部」を「第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部」に特定すると共に、「外筒部」の材料を「鋼製」と特定するものであるからから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項4は、願書に添付した明細書の「なお、この外筒112は、内筒111を形成する鋼材よりも耐蝕性に劣る鋼材から形成されている。例えば、内筒111がSUS306Lから形成されている場合、外筒112は、例えば、SUS306、SUS304L、SUS304、SUS430等の鋼材から形成される。また、例えば、内筒111がSUS306から形成されている場合、外筒112は、例えば、SUS304L、SUS304、SUS430等の鋼材から形成される。また、例えば、内筒111がSUS304Lから形成されている場合、外筒112は、例えば、SUS304、SUS430等の鋼材から形成される。また、例えば、内筒111がSUS304から形成されている場合、外筒112は、例えば、SUS430等の鋼材から形成される。外筒側壁部112aは、内筒側壁部111aと同様に逆切頭円錐筒形状(逆円錐台筒形状)を呈している。」(【0014】)という記載及び図2の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(5) 訂正事項5について
ア 訂正前の目的について
訂正事項5は、訂正前の請求項1の「外筒部と前記内筒部との間に形成される真空空間」を「前記鋼製外筒部と前記鋼製内筒部との間に形成される真空空間と」と特定することで特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲を減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項5は、「内筒部」及び「外筒部」の材料を「鋼製」と特定するものであるからから、、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
上記(3)及び(4)に示したのと同様に、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
(6) 訂正事項6について
ア 訂正前の目的について
訂正事項6は、訂正前の請求項1の「断面視において、外筒部の側壁部のテーパ角は、前記内筒部の側壁部のテーパ角より大きいスープ保温用真空二重容器」を「断面視において、前記鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きいスープ保温用鋼製真空二重容器。」と特定することで「外筒部」、「内筒部」及び「スープ保温用真空二重容器」の材料を「鋼製」に特定し特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項6は、「外筒部」、「内筒部」及び「スープ保温用真空二重容器」の材料を「鋼製」に特定するものであるからから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。よって、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
上記(3)及び(4)に示したのと同様に、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する特許法第126条第5項に適合する。
3 まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とし、同法同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項1について訂正を認める。
第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】
人の手で把持することができると共にスープをスプーンですくい出すことができるスープ保温用鋼製真空二重容器であって、
第1底壁部と、前記第1底壁部の外縁から上側に向かって延びる第1側壁部とを有し、前記第1底壁部に向かうに従って前記第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部と、
第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部と、
前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部と、
前記鋼製外筒部と前記鋼製内筒部との間に形成される真空空間と
を備え、
断面視において、前記鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい
スープ保温用鋼製真空二重容器。
第4 取消理由の概要
平成29年6月15日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
理由1
本件発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2
本件発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第9号証に記載された周知技術並びに甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、又は、甲第10号証に記載された発明、甲第3号証ないし甲第9号証に記載された周知技術、並びに甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特表2008-273560号公報
甲第2号証:意匠登録第1382130号公報
甲第3号証:意匠登録第949514号公報
甲第4号証:意匠登録第1032780号公報
甲第5号証:特開平7-95907号公報
甲第6号証:意匠登録第1076868号公報
甲第7号証:特開2007-290760号公報
甲第8号証:特開2000-62753号公報
甲第9号証:特開2006-103733号公報
甲第10号証:THERMOS Product Catalogue 2010、サーモス株式会社、2010年、p22
甲第11号証:THERMOS Autumn 2012 Product Catalogue、サーモス株式会社、2012年、p5
甲第12号証:特開平4-276222号公報
理由3
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本件発明は、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「スープをスプーンですくい出すことができると共に、手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0008】)という課題を解決するために、「断面視において、前記外筒部の側壁部のテーパ角は、前記内筒部の側壁部のテーパ角より大きい」と特定されているが、テーパを備えているだけでは、上記課題を解決できるものとは認められず、また、上記テーパ角の大小を特定することの技術的意義が発明の詳細な説明に記載されていない。
理由4
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
1)内筒部、外筒部の側壁部のテーパ角の構成が不明確である。
2)内筒部の側壁部の構成が不明確である。
3)外筒部の側壁部の構成が不明確である。
4)開口部端の構成が不明確である。
5)内筒部、外筒部、内筒部の側壁部、外筒部の側壁部、開口端部及び底部の関係が不明確である。
なお、上記取消理由通知は、本件特許異議の申立てにおいて申立てられたすべての申立理由を含んでいる。
第5 取消理由についての判断
1 理由3について
事案に鑑み、まず理由3について判断する。
本件発明は、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0008】)という課題を解決するものである。
本件特許明細書には、以下の記載がある。
「本実施の形態に係るスープ保温用真空二重容器100では、外筒112が底側に向かうに従って縮径する。このため、このスープ保温用真空二重容器100では、内筒111の先端側の内径を比較的大きくしつつ、外筒112の底側の外径を比較的小さく保つことができる。したがって、手が小さい女性や子供等は、外筒112の底側を選択してスープ保温用真空二重容器100を把持すれば、比較的楽にスープ保温用真空二重容器100を把持することができる。また、このスープ保温用真空二重容器100では、内筒111は、開口に向かうに従って拡径する。このため、このスープ保温用真空二重容器100は、スープをスプーンSNですくい出しやすくすることができる。したがって、このスープ保温用真空二重容器100は、スープをスプーンSNですくい出すことができると共に、手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0018】)
そして、本件発明は、「本件発明断面視において、前記鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい」と特定されているから、第1側壁部と第2側壁部がテーパ角を有していれば、上記本件発明の課題を解決することは明らかであり、さらに、第2側壁部のテーパ角を第1側壁部のテーパ角より大きくすることで、2つの課題をバランスよく解決するものである。
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
2 理由4について
理由4の1)ないし5)について検討する。
2-1 1)について
本件訂正により、内筒部及び外壁部が「第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部と第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部」と特定されたので、内筒部の側壁部と外筒部の側壁部のテーパ角はそれぞれ1つであることは明らかである。
2-2 2)及び3)について
本件訂正により、内筒部及び外壁部が「第1側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製内筒部と第2底壁部と、前記第2底壁部の外縁から上側に向かって延びる第2側壁部とを有し、前記第2底壁部に向かうに従って前記第2側壁部が全高に亘って直線的に縮径する有底の鋼製外筒部」と特定されたので、内筒部の側壁及び外筒部の側壁が全高に亘って底に向かって縮径することが明確となった。
2-3 4)について
本件訂正により「前記鋼製内筒部の上端から上方に延び、前期鋼製内筒部の開口径よりも大きい開口径を有する鋼製先端壁部と、
前記鋼製外筒部の上端から上方に延びる鋼製雄ネジ部と、
前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部それぞれの上端から延び、前期鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部の上方で前記鋼製先端壁部および鋼製雄ネジ部を接合する接合部」が特定されたため、開口部端の構成が明確となった。
2-4 5)について
本件訂正により、内筒部、外筒部、内筒部の側壁部、外筒部の側壁部、開口端部及び底部の関係が明確となった。
2-5 まとめ
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。
3 理由1について
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、以下の記載がある。
(ア)「【0014】
上記液状体貯留容器は、例えば、魔法瓶などの保温容器をはじめとする液体を貯留可能な容器を含む。さらに、固形状の物(具材)を混入したスープや粥などの液状体を貯留可能な容器も含む。」
(イ)「【0035】
さらに、上記容器本体13は、外容器15と内容器16とで真空二重構造により保温効果を有して構成している。なお、外容器15と内容器16とは、いずれも薄肉のステンレス鋼で構成している。」
(ウ)「【0036】
容器本体13の胴部13aは、上下方向の中途部から注ぎ口12の手前部分に至るまで上部に進むに従って滑らかに半径方向へ膨出した形態で構成している。」
(エ)図1の記載から、内容器は有底で中途部において開口に向かうに従って拡径し、外容器は有底で中途部において底部に向かうに従って縮径し、開口端部で内容器と外容器が接合されていることが看取できる。
イ 上記(ア)ないし(エ)及び図1の記載から甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「中途部において、開口に向かうに従って拡径する有底の内容器と、
中途部において、底部に向かうに従って縮径し、開口端部で前記内容器の開口端部と接合される有底の外容器と、
前記外容器と前記内容器との間に形成される真空空間とを備えた、
スープや粥などの液状体を貯留可能な容器。」(以下「甲1発明」という)。
(2)本件発明と甲1発明との対比、判断
本件発明と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
ア 相違点
本件発明は、「鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい」とし、「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」のに対して、甲1発明は、外容器の側壁部と内容器の側壁部がテーパ角を有するか不明であり、「内容器」が「中途部において、開口に向かうに従って拡径」し、「外容器」が「中途部において、底部に向かうに従って縮径し」ている点(以下「相違点1」という。)。
イ 判断
上記相違点1について検討すると、本件発明は、「鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大き」くすること及び「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」ことにより、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(段落0008)という課題を解決するものであるから、上記相違点は、実質的な相違点である。
ウ まとめ
よって、本件発明は、甲1発明でないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、特許を受けることができないとすることはできない。
4 理由2について
(1)甲第1号証を主引用例とした場合
ア 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記3(1)イのとおりの甲1発明が記載されている。
イ 本件発明と甲1発明との対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、両者は少なくとも上記3(2)アのとおりの相違点1において相違する。
ウ 判断
上記相違点1について検討すると、本件発明は、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(段落0008)という課題を解決するために、鋼製内筒部の第1側壁部及び鋼製外筒部の第2側壁部にそれぞれテーパ角を設け、さらに「鋼製外筒部の第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大き」くし、さらに、「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」ものである。
しかしながら、甲第1号証ないし甲第12号証を参照しても、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」ために内筒部の側壁にテーパを設けること及び「手が小さい女性や子供等であっても把持しやす」くするために、外筒部の側壁にテーパを設けることは記載されていないし、示唆する記載も見当たらない。
また、甲第2号証ないし甲第12号証のいずれにも、「外筒部の側壁部のテーパ角は、内筒部側壁部のテーパ角より大きい」とした点は記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、上記課題を解決するために、「鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい」とし、「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」とする動機付けはない。
そして、本件発明は、上記相違点1に係る構成を備えることにより、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「スープをスプーンですくい出すことができると共に、手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0008】)という効果を奏するものである。
エ まとめ
よって、本件発明は、甲1発明、甲第3号証ないし甲第9号証に記載された周知技術並びに甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。
(2)甲第10号証を主引用例とした場合
ア 甲第10号証に記載された発明
甲第10号証の第22ページには、真空断熱マグカップ「JCV-270」のステンレスマグカップについて、以下の点が記載されている。
(ア)真空断熱マグ
(イ)指になじむソフトなハンドル
(ウ)ステンレス魔法びん構造の写真からみて、「内筒部と、底部に向かって縮径し、開口端部で前記内筒部の開口端部と接合される外筒部と、前記外筒部と前記内筒部との間に真空空間が形成されている。」ことが看取できる。
(エ)マグカップとして機能するためには、マグカップの内筒部と外筒部は有底である。
(オ)上記(ア)ないし(エ)を総合すると、甲第10号証には、以下の発明が記載されている。
「有底の内筒部と、底部に向かって縮径し、開口端部で前記内筒部の開口端部と接合される有底の外筒部と、前記外筒部と前記内筒部との間に形成される真空空間とを備えた真空断熱マグカップ。」(以下「甲10発明」という。)
イ 本件発明と甲10発明との対比・判断
本件発明と甲10発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点において相違する。
(ア)相違点
本件発明は、「鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい」とし、「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」のに対して、甲10発明は、そのような構成を備えているか不明な点(以下「相違点2」という。)。
ウ 判断
上記相違点2について検討すると、上記「(1)ウ 判断」で示したのと同様の理由により、甲10発明において、本件発明の上記課題を解決するために、「鋼製外筒部の前記第2側壁部のテーパ角は、前記鋼製内筒部の前記第1側壁部のテーパ角より大きい」とし、「鋼製内筒部」の「第1側壁部」が「第1底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径」し、また、「鋼製外筒部」の「第2底壁部」が「第2底壁部に向かうに従って」「全高に亘って直線的に縮径する」とする動機付けはない。
そして、本件発明は、上記相違点2に係る構成を備えることにより、「スープをスプーンですくい出しやすくすることができる」及び「スープをスプーンですくい出すことができると共に、手が小さい女性や子供等であっても把持しやすい。」(【0008】)という効果を奏するものである。
エ まとめ
よって、本件発明は、甲10発明、甲第3号証ないし甲第9号証に記載された周知技術並びに甲第1号証、甲第2号証、甲第7号証及び甲第8号証に記載された周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとすることはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
また、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号及び2号に規定する要件を満たしているから、本件発明に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消されるべきものとすることはできない。
したがって、上記取消理由1ないし4によっては、本件発明に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2016-701160