特許異議申立
2022-700259
識別子を有するポーションカプセル
- 審判番号
- 2022-700259
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-094562
- 登録番号
- 6941640
- 請求日
- 2022年03月28日
- 審決日
- 2024年12月19日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ケイ‐フィー システム ゲーエムベーハー
- 【権利者代理人】津野 孝
- 【権利者代理人】弁理士法人 東和国際特許事務所
- 【権利者代理人】小椋 正幸
- 【権利者代理人】津野 洋明
- 【権利者代理人】鈴木 公明
- 【権利者代理人】平林 岳治
- 【異議申立人】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
- 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
- 【異議申立人代理人】阿部 寛
- 【異議申立人代理人】戸津 洋介
- 【異議申立人代理人】石塚 淳一
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 水野 治彦
- 審判官 村山 美保
- 分類
- P1651.121-ZAA(A47J) / P1651.537-ZAA(A47J) / P1651.03 -ZAA(A47J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法36条6項1号特許法113条2号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第49条第1項第1号、特許法第50条、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6941640号発明「識別子を有するポーションカプセル」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6941640号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし12〕について訂正することを認める。
特許第6941640号の請求項1、2、9ないし12に係る特許を取り消す。
特許第6941640号の請求項3ないし8に係る特許についての特許異議の申立を却下する。
理由
理 由
1.手続の経緯
(1)出願の経緯
特許第6941640号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項12の特許についての出願の経緯は、大略以下のとおりである。
2011年(平成23年)7月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年7月22日、2010年9月2日、2011年2月7日 いずれもドイツ連邦共和国)を国際出願日として特願2013-520009号を出願
平成28年2月23日 新たに特願2016-32427号として出願
平成29年2月27日 新たに特願2017-34769号として出願
平成31年4月17日 新たに特願2019-78235号として出願
令和元年5月20日 新たに特願2019-94562号として出願(本件特許に係る出願)
(2)特許異議の申立ての経緯
令和3年9月8日に特許権の設定登録がなされ、令和3年9月29日に特許掲載公報が発行された本件特許の特許異議の申立ての経緯は以下のとおりである。
令和4年3月28日 特許異議申立人 ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー(以下、「特許異議申立人」という。)による特許異議の申立て
令和4年6月17日付け 取消理由通知書
令和4年9月16日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年11月21日 特許異議申立人による意見書の提出
令和4年12月16日 特許権者による上申書の提出
令和5年4月17日付け 取消理由通知書(決定の予告)
令和5年7月20日 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和5年9月15日 特許異議申立人による意見書の提出
令和5年11月20日 特許権者による上申書の提出
令和6年3月8日付け 取消理由通知書(以下、「決定の予告2」という。)
令和6年6月10日 特許権者による意見書の提出
なお、令和4年9月16日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和5年7月20日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1及び訂正事項2のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7及び請求項8を削除する。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え、
前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの全周にわたり延長し、
前記フランジの底側が、前記膜を張り付ける前記フランジの上側と反対側である」とあるのを
「前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え、
前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間であり、
前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの全周にわたり延長し、
前記フランジの底側が、前記膜を張り付ける前記フランジの上側と反対側であり、
前記基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備え、
前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成するとともに、
前記カプセルが、フィルタなしである」に訂正する(下線部は訂正箇所である。)。請求項1の記載を引用する請求項2、請求項9ないし請求項12も同様に訂正する。
(2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1及び訂正事項2について、訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び一群の請求項を検討する。
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7及び請求項8を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)新規事項の有無
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7及び請求項8を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7及び請求項8を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記基本要素」が備える「フランジと底部領域との間で延長する壁領域」について、「前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間である」との限定を付加し、「前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備え」との限定を付加し、さらに、「前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成する」との限定を付加するものである。また訂正前の請求項1の「ポーションカプセル」について、「前記カプセルが、フィルタなしである」との限定を付加するものであるから、訂正前の請求項1に記載された「基本要素」及び「ポーションカプセル」に係る事項を減縮するものといえる。したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。
(イ)新規事項の有無
訂正事項2の、「前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間であ」ることは、訂正前の特許請求の範囲の請求項8に記載されている。また、「基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備」え、「前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成する」ことは、訂正前の特許請求の範囲の請求項4及び請求項5に記載されている。そして、「前記カプセルが、フィルタなしである」ことは、訂正前の特許請求の範囲の請求項7に記載されている。そうすると、訂正事項2による訂正後の請求項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合すると認める。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「基本要素」が備える「フランジと底部領域との間で延長する壁領域」について、「前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間である」との限定を付加し、「前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備え」との限定を付加し、さらに、「前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成する」との限定を付加することで、訂正前の請求項1の「基本要素」を限定するものである。また訂正前の請求項1の「ポーションカプセル」について、「前記カプセルが、フィルタなしである」との限定を付加することで「ポーションカプセル」限定するものである。そうすると、訂正事項2による訂正後の請求項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合すると認める。
ウ 一群の請求項についての検討
訂正前の請求項1ないし請求項12に係る発明において、請求項2ないし請求項12に係る発明は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用した請求項に係る発明である。そして、本件訂正請求による訂正後の請求項1、請求項2及び請求項9ないし請求項12に係る発明は、訂正前の請求項1、請求項2及び請求項9ないし請求項12に対応し、訂正事項2によって訂正される請求項1に連動して請求項2及び請求項9ないし請求項12も訂正されるものである。したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものと認める。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし12]について訂正することを認める。
3.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし請求項12に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
飲料を製造するためのポーションカプセルであって、
空洞を有して飲料原料を備える基本要素と、前記基本要素から水平に延長したフランジと、前記空洞を閉鎖するように前記フランジの上側に張り付けた膜と、それぞれのポーションカプセルを区別可能にする識別子と、を備え、
前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え、
前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間であり、
前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの全周にわたり延長し、
前記フランジの底側が、前記膜を張り付ける前記フランジの上側と反対側であり、
前記基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備え、
前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成するとともに、
前記カプセルが、フィルタなしであることを特徴とする、ポーションカプセル。
【請求項2】
前記バーコードが、除去可能な材質で印刷されていることを特徴とする、請求項1に記載のポーションカプセル。
【請求項3】 (削除)
【請求項4】 (削除)
【請求項5】 (削除)
【請求項6】 (削除)
【請求項7】 (削除)
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
前記バーコードが、光学的性質が異なる2つの領域を有していることを特徴とする、請求項1に記載のポーションカプセル。
【請求項10】
前記識別子が、導電性であることを特徴とする、請求項1に記載のポーションカプセル。
【請求項11】
前記カプセルをコーヒーマシンに挿入すると、前記コーヒーマシンのセンサまたは検出システムが、前記識別子を記録し、前記識別子を保存された基準と比較することを特徴とする、請求項1に記載のポーションカプセル。
【請求項12】
前記識別子が、機械判読可能なインプリントであることを特徴とする、請求項1に記載のポーションカプセル。」
4.本件特許の出願日の認定に係る当審の判断
訂正後の本件発明1ないし本件発明12に基づいて、本件特許の出願日の認定を行うこととする。
(1)本件特許は、特願2019-78235号(以下、「分割出願3」という。)の一部を新たな特許出願としたものかの検討。
訂正前の本件特許の請求項3及び請求項6は、本件訂正請求により削除された。したがって、本件特許は、分割出願3の一部を新たな特許出願としたものである。
(2)分割出願3は、特願2017-34769号(以下、「分割出願2」という。)の一部を新たな特許出願としたものかの検討
次に、分割出願3が分割出願2の一部を新たな特許出願としたものといえるかについて検討する。なお、分割出願3は本件特許に係る出願と異なる出願であり、さらに、分割出願3の出願に係る手続は確定しているのであるから、本件訂正請求により分割出願3の出願に係る手続或いはその内容が変わるものではない。この点を踏まえて分割出願3の出願に係る手続を確認し、分割出願3が分割出願2の一部を新たな特許出願としたものといえるかを検討する。
ア 分割出願3の手続の概要
はじめに分割出願3の手続を確認する。分割出願3は令和2年6月25日付けで拒絶理由が通知された(乙第8号証)。そして、この指定期間内に、意見書及び手続補正書は提出されず、令和3年2月16日付けで拒絶査定がなされたものである(乙第10号証)。
その後、当該拒絶査定に対する拒絶査定不服審判が請求されることはなく、拒絶査定が確定したものと認められる。
してみると、分割出願3は、令和2年6月25日付けで通知した拒絶理由により拒絶査定がなされ、その査定が確定したものである。
イ 分割出願3の拒絶査定における拒絶理由の概要
次に、確定した拒絶査定における拒絶理由を確認する。
乙第10号証から、分割出願3の拒絶査定の理由は、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由によるものと認められる。
また、乙第8号証は、その記載の内容から、分割出願3に係る令和2年6月25日付けの拒絶理由通知書と認められる。
そして、乙第8号証には、「この出願は、次の理由によって拒絶すべきものです。」との記載がある。そして、その「理由」の欄に、
(ア)「1.(新規事項)令和1年5月15日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」との記載(以下、「新規事項」という。)
(イ)「2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」との記載(以下、「サポート要件」という。)
(ウ)「3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」との記載(以下、「進歩性」という。)
がある。
これら「理由」欄の記載は、特許法第49条第1項第1号、第2号及び第4号に規定される拒絶すべき旨の査定をしなければならないものに該当し、特許法第50条に規定により拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えなければならないものと認められるから、分割出願3の拒絶査定における拒絶の理由と理解できる。
さらに、「理由」の欄を確認すると、上記(ア)には、「下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから」と記載されている。同様に、(イ)には、「特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」と記載され、(ウ)には、「下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて」と記載されている。そして、乙第8号証には、「記(引用文献等については引用文献等一覧)」と記載された欄があり、当該欄には、
(エ)「●理由1(新規事項)について」と記載された欄(以下、「理由1」という。)
(オ)「●理由2(サポート要件)について」と記載された欄(以下、「理由2
」という。)
(カ)「●理由3(進歩性)について」と記載された欄(以下、「理由3」という。)
がある。そうすると、令和2年6月25日付けの拒絶理由通知書における拒絶理由は、「理由」欄に記載された事項と「記(引用文献等については引用文献等一覧)」と記載された欄に記載された事項とを合わせて理解することで、拒絶理由が理解できるといえる。
ここで、乙第8号証の「記(引用文献等については引用文献等一覧)」と記載された欄には、
(キ)「●分割要件について」と記載された欄(以下、「分割要件」という。)があり、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」と記載されている。
この記載から、令和2年6月25日付けの拒絶理由通知書において、少なくとも分割出願3が「適法な分割出願とは認められない」ことが記載され、通知されたことは明らかといえる。
ウ 当審の判断
ア及びイを踏まえた当審の判断は、次のとおりである。
「分割要件」には、「新規事項」、「サポート要件」及び「進歩性」と「分割要件」との関係について明記されておらず、「理由1」、「理由2」及び「理由3」と「分割要件」との関係についても明記されていない。
しかしながら、「理由3」には、「・引用文献等1」と記載され、「引用文献等一覧」には、「1.特表2013-530798号公報」と記載されている。
ここで、特表2013-530798号公報(甲第13号証)は、公表日が平成25年8月1日であるから、仮に分割出願3が分割出願2の一部を新たな特許出願としたものであれば、進歩性の判断において採用される証拠とはなり得ないものである。
そうすると、「理由3」に記載された進歩性に係る拒絶の理由は、「分割要件」に記載された「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」ことを踏まえ、分割出願3の出願日は、その現実の出願日であることを前提とした拒絶理由といえる。
すなわち、令和2年6月25日付けの拒絶理由通知書における「理由」欄に記載された事項と「記(引用文献等については引用文献等一覧)」と記載された欄に記載された事項とを合わせて理解すると、少なくとも、「理由3」に記載された「進歩性」に係る拒絶理由は、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」ことを前提とした理由であると解さざるを得ない。
そして、このように解さざるを得ない令和2年6月25日付けの拒絶理由通知書に記載された拒絶理由に対し、意見書及び手続補正書の提出がなく、拒絶査定がなされ、さらに当該拒絶査定についての拒絶査定不服審判の請求もなされることもなく拒絶査定が確定したのであるから、分割出願3は、特許法第44条第1項の規定に基づき、分割出願2の一部を新たな特許出願としたものではないことも確定したと理解する他ない。
そうすると、分割出願3は、分割要件を満たさないとの判断の下で拒絶の理由が通知された後、拒絶査定がなされ、確定したものといえる。
したがって、分割出願3の出願日は、分割出願3の現実の出願日である平成31年4月17日と認める。
(3)(1)及び(2)に基づく本件特許に係る出願の出願日の判断
(1)及び(2)から、本件特許に係る出願の出願日は、分割出願3の現実の出願日である平成31年4月17日であると認める。
(4)令和6年6月10日の意見書(6、(3)、「ウ」)に係る特許権者の主張について
ア 特許権者の、令和6年6月10日の意見書の6、(3)、「ウ」における主張は、大略次のとおりである。
(ア) 拒絶査定においては「この出願については、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶をすべきものです。」とあるだけで、分割要件と関連した理由の記載は何ら明記されておらず、理由1(新規事項)、理由2(サポート要件)、理由3(進歩性)のどの理由によって拒絶査定されたのかを特定できない。特に分割要件の判断と直接関係しない理由1(新規事項)乃至理由2(サポート要件)によって拒絶査定が確定したのであれば、分割要件を満たさないとの判断が確定したとはいえない。したがって、分割要件を満たさないとする判断に基づく拒絶査定が確定したとすることはできず、本件特許出願の出願日の認定も、変更もないと判断するのが自然である。
(イ) 審査基準(第VI部 第1章 第1節 特許出願の分割の要件 4.2 実体的要件について判断するために必要な説明資料の提出の求め)から、審査官からの求めに対し出願人から実質的な説明がない場合であって審査官が実体的要件が満たされていないとして審査することができるのは、「実体的要件が満たされていると判断することが相当に困難である場合」であって、実体的要件が満たされていると判断することが相当に困難でない場合には、審査官は、実体的要件が満たされていると判断することもできる。したがって、意見書、補正書を提出しなかったとしても、その不明な拒絶理由により自動的に分割要件を満たさないと言うことにはならないのであり、そのまま確定しない。
(ウ) 審査ハンドブック「1213 拒絶査定起案時の注意」にあるように、審査官は「出願日(遡及日)」を変更すべきところ、分割出願3の「出願日(遡及日)」(公開基準日(20100722)は、変更されていないだけでなく、乙第13号証の1乃至乙第13号証の5の本件一連の分割出願において全て同一の公開基準日となっており、審査官は本件一連の分割出願が分割要件を満たしていると判断していることは明らかである。
(エ) 審査官は、前記審査基準(第VI部 第1章 愛1部 特許出願の分割の要件 5.分割要件についての判断に係る留意事項)の「5.1 分割出願を原出願とする分割出願」で示された(i)から(iii)迄の全ての条件を満たすことを判断することになっており、分割要件の判断が明確に示された場合に分割要件の判断に基づく拒絶査定が確定するのであり、分割要件以外の理由により拒絶査定が確定すれば自動的に分割要件が満たさなくなるとの記載は審査基準にない。
イ 当審の判断
(ア)特許権者の主張ア、(ア)について
ア、(ア)に係る特許権者の主張を検討する。
上述したとおり、分割出願3の拒絶査定の理由は、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書の「理由」欄に記載された、「新規事項」、「サポート要件」及び「進歩性」に係る拒絶の理由と理解できる。
ここで、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書には、「この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。」と記載されている。特許法第49条は、特許出願が特許法第49条第1号ないし第7号のいずれかに該当するときは、拒絶すべき旨の査定をしなければならない旨規定するものであるから、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書における拒絶の理由は、「理由」欄に記載された「新規事項」、「サポート要件」及び「進歩性」の全てと解するのが相当である。
これに対し、意見書及び手続補正書は提出されなかったのであるから、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由は、いずれも解消されていない、と解さざるを得ない。
そうすると、令和3年2月16日付け拒絶査定の「令和2年6月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由」における「理由」は、「令和2年6月25日付け拒絶理由通知書」の「理由」欄に記載された、「新規事項」、「サポート要件」及び「進歩性」の全てである。
そして、当該拒絶査定に対し拒絶査定不服審判が請求されることなく確定したのであるから、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」とする判断を前提とした、「進歩性」に係る拒絶理由も含む拒絶査定が確定したといわざるを得ない。
そうすると、ア、(ア)に係る特許権者の主張は、当を得ない。
(イ)特許権者の主張ア、(イ)について
ア、(イ)に係る特許権者の主張を検討する。
上述したとおり、分割出願3は、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」とする判断を前提とした、「進歩性」に係る拒絶理由により拒絶査定が確定したものである。そして、令和2年6月25日付け拒絶理由通知書の「分割要件」には、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」と記載されているから、「実体的要件が満たされていない」と判断していることも明らかである。かかる拒絶理由に対して意見書及び手続補正書の提出はなかったのであるから、分割出願3の手続において、「審査官は、実体的要件が満たされていると判断」したと解される余地はないといわざるを得ない。
そうすると、ア、(イ)に係る特許権者の主張は、当を得ない。
(ウ)特許権者の主張ア、(ウ)について
ア、(ウ)に係る特許権者の主張を検討する。
分割出願3の拒絶査定に係る書面である乙第10号証には、「出願日(遡及日)」あるいは「公開基準日」について記載された箇所、或いは、乙第14号証の1ないし乙第14号証の3に記載される「(分割)」との表記はない。そうすると、乙第10号証の書面からは、乙第12号証において示す「審査ハンドブック「1213 拒絶査定起案時の注意」」に掲載される事項に関わらず、「令和2年6月25日付け拒絶理由通知書に記載した理由」に記載される「分割要件」及び「進歩性」に係る理由に基づき、分割出願3の出願日の認定をすべきものといえる。
また、乙第13号証の1ないし乙第13号証の5は、そもそも、拒絶理由通知書或いは拒絶査定に添付される等、拒絶理由通知或いは拒絶査定に係る手続に関連するものではなく、拒絶理由通知及び拒絶査定の理解に影響を与えるものではない。
そうすると、ア、(ウ)に係る特許権者の主張は、分割出願3の拒絶理由通知書及び拒絶査定の内容に影響を与える主張ではないから、当を得ない。
(エ)特許権者の主張ア、(エ)について
ア、(エ)に係る特許権者の主張を検討する。
上述したとおり、分割出願3は、「本願は原出願の明細書等に記載された事項の範囲内のものではないから分割要件を満たすものではなく、適法な分割出願とは認められない。」とする判断を前提とした、「進歩性」に係る拒絶理由を含む拒絶査定が確定したことが明らかである。そうすると、特許権者が主張する「分割要件の判断が明確に示された場合に分割要件の判断に基づく拒絶理由が確定する」に該当する。
また、本件特許に係る出願を孫出願とした場合、子出願に相当する分割出願3は、審査基準(第VI部 第1章 第1節 特許出願の分割の要件 5.分割要件の判断に係る留意事項)の「5.1」に規定する(i)の条件を満たさないことが明らかであるから、「本件特許に係る出願を親出願の時にしたものとして審査」できないことも明らかといえる。
そうすると、ア、(エ)に係る特許権者の主張は、当を得ない。
ウ 小括
したがって、令和6年6月10日の意見書の6、(3)、「ウ」における特許権者の主張は、当を得ない。
(5)令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張に対する予備的見解
ア 当審の予備的見解
本決定における、令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張に係る当審の予備的見解は、決定の予告2の「3.(4)令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張に対する予備的見解。」で述べたとおりであって、大略、次のとおりである。
(ア) 分割出願3は、本件特許に係る出願とは別の出願であり、(2)で上述したとおり、分割要件を満たさないとの判断の下で拒絶の理由が通知された後拒絶査定がなされ、確定した出願である。
そして、令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張は、分割出願3の手続において主張されたものでもないから、確定された分割出願3の手続に何ら影響を与えるものではない。
そうすると、特許権者のこれら主張を採用できる余地はそもそもない。
(イ) 仮に、令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張が、分割出願3の手続においてなされたものと仮定しても、当該主張は分割出願2の明細書及び特許請求の範囲に基づく主張といえないから、採用することはできない。
イ 令和6年6月10日の意見書(6、(5))における特許権者の主張
特許権者は令和6年6月10日の意見書の6、(5)において、大略次の理由により、決定の予告2における当審の予備的見解は失当である旨主張している。
(ア)分割出願3は、分割要件を満たさないとする判断に基づく拒絶査定が確定したとすることはできない。また、平成15年(行ケ)65号では審判において分割要件の実体的判断がなされ、更にその実体的要件の審決の可否について裁判所は自判しているから、「特許権者のこれら主張を採用する余地はそもそもない。」とは云えない。(12ページ6-14ページ3行)
(イ)図2および図14の符号17は、「バーコード」を示すものと看取できるものであり、明細書の用語の記載は「9 用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて統一して使用する。」(特許法施行規則様式第29の2(第24条の4関係))との定めから、同じ符号には同じ用語が対応すると解するべきであり、図19における符号17は、図2および図14の符号17と同じ「バーコード」をも示すものであると統一して解釈するのが自然である。そうすると、「バーコード」と「フランジ」との技術的な関係は明確であり、「バーコード」が「縁部」を備えることの技術的意義も明らかである、(14ページ4-29ページ23行)
そこで、令和6年6月10日の意見書の6、(5)における特許権者の主張について、検討を行う。
ウ 令和6年6月10日の意見書6、(5)の主張に対する当審の判断
(ア)特許権者の主張イ、(ア)について
(2)で上述したとおり、分割出願3が分割出願2の一部を新たな特許出願としたものといえないことは、令和2年6月25日付けの拒絶理由通知の「●分割要件について」の欄に記載されている。そして、令和2年6月25日付けの拒絶理由通知は、該「●分割要件について」の欄の記載が前提である進歩性に係る拒絶理由(「理由3」)も記載されている。
令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張は、その内容からみて、分割出願3が分割出願2の一部を新たな特許出願としたものといえることを釈明する主張と解される。
しかしながら、分割出願3は、その手続において、該「●分割要件について」において記載される令和2年6月25日付けの拒絶理由通知に対し、その指定期間内に意見書及び手続補正書の提出により当該釈明は行われず、その後、拒絶査定不服審判の請求もなされず、拒絶査定が確定した。
したがって、分割出願3の手続において、分割出願3は、分割要件に係る瑕疵を備える旨の理由が通知され、それを治癒する機会があったにも関わらず、治癒するための手続を行わず、結果、当該瑕疵を治癒する機会が失われたのであるから、当該主張を採用する余地はそもそもない。
また、令和5年7月20日の意見書及び令和5年11月20日の上申書における特許権者の主張は、分割出願3とは異なる出願である、本件特許に係る特許異議の申立ての手続においてなされた主張である。そうすると、本件特許の特許異議の申立てにおける主張により、本件特許に係る出願とは異なる出願である分割出願3の瑕疵を治癒するためには、分割出願3における手続が必要となるところ、特許権者はそのための手続はしておらず、上述のとおり、手続をする機会もないのであるから、当該主張を採用する余地はそもそもない。
特許権者は、平成15年(行ケ)第65号(乙第15号証)は、「審判において分割要件の実体的判断がなされ、更にその実体的要件の審決の可否について裁判所は自判している」ことを判示する旨主張する。
しかしながら、平成15年(行ケ)第65号は、その「第5 当裁判所の判断」、「1」、「(1)」に記載されているように、親出願、子出願及び孫出願に係る本件特許の全てについて特許権の設定登録がされた後、子出願に係る特許及び孫出願に係る本件特許に対し無効審判請求がされ、子出願に係る特許について無効が確定したという経緯に基づく事例の裁判例であり、分割出願3(裁判例における「子出願」)について拒絶査定が確定した、本件特許とは事例が異なる。
また、平成15年(行ケ)第65号の「イ 子出願については,原告は拒絶理由通知を受け、平成5年3月19日付け手続補正書・・・・・ウ 子出願は,平成8年6月17日、原査定取消、特許査定の審決がされ,同年9月19日,上記平成5年10月29日付け補正の内容により特許権(特許2562698号)の設定登録がされた。」との説示は、「第5 当裁判所の判断」、「1」の「(1) ・・・・・・によれば、本件特許の分割出願等に関する経緯について、以下の事実が認められる。」において、事実として説示されたものである。この説示は、本件異議事件の手続における決定の予告2の「4.」「ア 分割出願3の手続の概要」でなされている。
そして、平成15年(行ケ)第65号の「本件において,本件特許出願(孫出願)は,親出願からの分割出願である・・・・しかしながら,子出願に係る発明は、平成5年10月29日付け手続補正書(甲17)により補正され,親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなり,いったん特許権の設定登録がされた後,当該補正がされた発明のまま,その無効審決が確定し,子出願に係る特許権は,初めから存在しなかったものとみなされた。・・・・遡及する余地はないと言うべきである。」との説示は、「子出願に係る発明は、平成5年10月29日付け手続補正書(甲17)により補正され,親出願の当初明細書等に記載した事項の範囲内のものでないこととなり,いったん特許権の設定登録がされた後,当該補正がされた発明のまま,その無効審決が確定し,子出願に係る特許権は,初めから存在しなかったものとみなされた。」との子出願の経緯に係る事実に基づき、特許法旧第44条第1項に定める分割の実態要件を満たさないことを指摘するものである。この指摘は、本件異議事件の手続において、決定の予告2の「4.」「ウ 当審の判断」でなされている。
すなわち、仮に、平成15年(行ケ)第65号が、本件特許の分割の判断に係る手続に影響を与える裁判例としても、本件異議事件の手続における決定の予告2は、平成15年(行ケ)第65号の説示に沿ったものである。
したがって、イ、(ア)に係る特許権者の主張は当を得ない。
(イ)特許権者の主張イ、(イ)についての予備的見解
上述したとおり、イ、(ア)に係る特許権者の主張は当を得たものでないから、イ、(イ)について検討するまでもない。
しかしながら、令和6年6月10日の意見書6、(5)における釈明であることを踏まえ、決定の予告2と同様に予備的に当審の見解を示す。
あ イ、(イ)に係る特許権者の主張の概要
イ、(イ)に係る特許権者の主張は、令和6年6月10日付け意見書の14ページ4-29ページ23行の記載を総合すると、大略、以下のとおりと理解できる。
(あ) 分割出願2の図2には膜4の上面に符号「17」が図示され、符号「17」の引き出し線の先端に「バーコード」が配置され、その「バーコード」はポーションカプセルの基本要素2の端部領域に位置していることが看取できる。
(い) 分割出願2の図14には、符号「17」の引き出し線の先端が膜(4)の面側に延びており、そこに環状の三重線が図示されており、その三重線が「バーコード」を示すものと看取できる。
(う) (あ)及び(い)から、分割出願2の図2及び図14の実施例においては、符号「17」は「バーコード」であることは明らかである。
((あ)ないし(う)については、16ページ25-17ページ24行)
(え) 分割出願2のポーションカプセルは「識別子」を必須とし、図19ないし図22のポーションカプセルも識別子が必須である。そうすると、図19の符号「17」は、図2及び図14の符号「17」と同様に識別子としての「バーコード」である。図19の「バーコード」は、「環状装着フランジ17」の表面に印刷されたか付着されたものであるから、「環状装着フランジ」であるとともに「バーコード」である。このことは、段落【0063】中の「17・・・バーコード、環状装着フランジ」の記載とも符合する。さらに、明細書の用語の記載は、特許法施行規則様式第29の2(第24条の4関係))からみて、同じ符号には同じ用語が対応すると解するべきであるから、図19における符号「17」は、図2及び図14の符号「17」と同じ「バーコード」をも示すものと統一的に解釈するのが自然である。
(20ページ20-21ページ16行)
(お) (あ)ないし(え)から、「バーコード」と「フランジ」の技術的な関係は明確であり、「バーコード」が縁部を備えることも、その技術的意味も明確である。
(あ)ないし(お)からみて、特許権者の主張は、まず、分割出願2の図2の符号「17」の引き出し線の先端に図示されるもの及び図14の符号「17」の引き出し線の先端に環状の三重線として図示されるものは「バーコード」であることを前提として、特許法施行規則様式第29の2(第24条の4関係))により図19の符号「17」で示されるものは「バーコード」であると理解し、次に、当該理解を踏まえ、図19の符号「17」で示されるものは「環状装着フランジ」であると共に「バーコード」であると解し、その上で、「バーコード」と「フランジ」の関係を主張し、さらに、バーコードが縁部を備えること及びその技術的意義を主張するものと理解できる。
い 特許権者の主張に対する当審の見解
はじめに、特許法施行規則様式第29の2(第24条の4関係)第9項には「用語は、その有する普通の意味で使用し、かつ、明細書及び特許請求の範囲全体を通して統一して使用する。」と規定する。ここで、「用語」は、一般に「使用する言語・語句」を意味する(広辞苑第6版)ものである。
そして、分割出願2における「バーコード」との用語は、「バーコード」に係る技術事項を意味し、「17」との符号は、図面において図示されるものについて、それぞれの図において共通する事項を指すための符号を意味するものとして統一して使用されているものといえる。
次に、分割出願2において、符号を意味する「17」に対応する表現をみると、分割出願2の発明の詳細な説明の段落【0058】、【0060】及び【0061】には「環状装着フランジ17」と記載され、段落【0063】には「17 ・・・ バーコード、環状装着フランジ」と記載されているとおり、段落【0058】、【0060】及び【0061】と段落【0063】とでは、符号「17」に対応する表現は異なる。
すなわち、分割出願2の発明の詳細な説明は、符号「17」に係る事項は、表現が統一されていないといえる。
ここで、段落【0058】、【0060】及び【0061】の「環状装着フランジ17」との表現は、符号「17」に係る事項が「環状装着フランジ」を意味すると理解でき、段落【0063】の「17 ・・・ バーコード、環状装着フランジ」との表現は、符号「17」に係る事項が「バーコード、環状装着フランジ」を意味すると理解できる。また、「環状装着フランジ17」と「17 ・・・ バーコード、環状装着フランジ」とは、技術的に同じ意味内容を持つ表現と理解することはできない。さらに、「環状装着フランジ17」と「17 ・・・ バーコード、環状装着フランジ」が同じ意味内容を有する表現である旨、分割出願2の発明の詳細な説明には明記されていない。
そうすると、分割出願2において、符号「17」に係る事項のその技術的な意味内容は、その発明の詳細な説明の記載事項及び図面の図示事項に基づき、理解せざるを得ない。
してみると、「同じ符号には同じ用語が対応すると解するべきである」との特許権者の主張は、分割出願2の明細書において、符号「17」に係る事項は、同じ意味内容を持つ表現で記載されていないのであるから、当を得ない主張といえる。
決定の予告2の3.(4)、イは、符号「17」及び「バーコード」に係る事項について、分割出願2の発明の詳細な説明の記載事項及び図面の図示事項から理解できることに基づき、「バーコード」と「フランジ」の技術的な関係及び「バーコード」が縁部を備えること、について検討した結果を、当審の予備的見解として示したものである。
そして、特許権者の(あ)ないし(お)に係る主張に対する当審の見解は、次のとおりである。
(あ)特許権者の(あ)に係る主張について
分割出願2の発明の詳細な説明には、図2の符号「17」の引き出し線の先端にあるものが「バーコード」であることは記載されていない。また、段落【0011】の記載及び段落【0040】の「バーコードは、材料を除去することによって印刷されるか、またはホイル内に一体化される媒体によって生成され」及び「矢印15で示すように、バーコードは、代替的に、膜を避けて基本要素2の端部領域に付着される」との記載から、符号「17」の引き出し線の先端にあるものが「バーコード」であることを導き出すこともできない。
そして、特許権者の「符号『17』の引き出し線の先端に『バーコード』が配置されることが看て取れるといえる」との主張について、特許権者は、当該主張の根拠となる分割出願2の発明の詳細な説明、図面或いは技術常識は示していない。
そうすると、分割出願2の図2において「符号「17」の引き出し線の先端」に図示されるものが「バーコード」であるとはいえない。
したがって、特許権者の(あ)に係る主張は当を得ない。
(い)特許権者の(い)に係る主張について
分割出願2の発明の詳細な説明には、図14の符号「17」の引き出し線の先端に伸びている環状の三重線が「バーコード」であることは記載されていない。また、段落【0011】の記載及び段落【0052】の「カバーホイルの領域内に配置されるバーコードの別の実施例」との記載から、図14の符号「17」の引き出し線の先端にあるものが「バーコード」であることを導き出すこともできない。
そして、特許権者の、「符号『17』の引き出し線の先端」に図示される「環状の三重線」が「バーコード」を示すものと看取できる、とする主張について、特許権者は、当該主張の根拠となる分割出願2の発明の詳細な説明、図面或いは技術常識は示していない。
そうすると、分割出願2の図14において「符号『17』の引き出し線の先端」に図示される「環状の三重線」は、「バーコード」とはいえない。
したがって、特許権者の(い)に係る主張は当を得ない。
(う)特許権者の(う)ないし(お)に係る主張について
(あ)及び(い)に係る主張を前提として、「分割出願2の図2及び図14の実施例においては、符号「17」は「バーコード」であることは明らかである」とする特許権者の(う)に係る主張は、(あ)及び(い)に係る主張が当を得ない以上、当を得ない主張といわざるを得ない。
また、特許権者の(え)に係る主張は、「図19の符号『17』は、図2及び図14の符号『17』と同様に識別子としての『バーコード』である」ことを前提としている。しかしながら、(あ)及び(い)で述べたとおり、分割出願2の図2において「符号「17」の引き出し線の先端」に図示されるものが「バーコード」であるとはいえず、分割出願2の図14において「符号『17』の引き出し線の先端」に図示される「環状の三重線」は、「バーコード」とはいえない。
そうすると、図19の符号『17』は、図2及び図14の符号『17』と同様に、識別子としての『バーコード』であること、を前提とした、特許権者の(え)に係る主張は、当を得ない主張といわざるを得ない。
そして、特許権者の(あ)ないし(え)を前提に、「バーコード」と「フランジ」の技術的な関係は明確であり、「バーコード」が縁部を備えることも、その技術的意味も明確である、とする特許権者の(お)に係る主張も、(あ)ないし(え)に係る主張が当を得ない以上、当を得ない主張といわざるを得ない。
う まとめ
したがって、イ(イ)に係る特許権者の主張は、当を得ない。
(ウ)小括
以上のとおり、令和6年6月10日の意見書6、(5)における特許権者の主張は当を得ない。
5.決定の予告2における取消理由
決定の予告2における、本件発明1、本件発明2及び本件発明9ないし本件発明12に対する取消理由は、大略以下のとおりである。
(1)取消理由1(サポート要件)
本件の請求項1、請求項2及び請求項9ないし請求項12に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、その特許は取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明1、本件発明2及び本件発明9ないし本件発明12は、その出願前日本国内または外国において頒布された甲第13号証及び甲第3号証に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
甲第3号証 :米国特許出願公開第2010/0078480号明細書
甲第13号証:特表2013-530798号公報
6.取消理由についての当審の判断
(1)取消理由1(サポート要件)に係る判断
ア 当審の判断
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについては、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載またはその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものと解される(平成17年(行ケ)第10042号)。当該規範に則り審理を行う。
訂正後の請求項1には、「前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの全周にわたり延長し」との記載事項がある。当該事項は、「識別子」が「フランジの底側に設けられたバーコード」であること、及び「識別子」が「フランジの全周にわたり延長」することを含むものといえる。
しかしながら、フランジの底側にバーコードを設け、加えて当該バーコードをフランジの全周にわたり延長するという技術事項は、本件特許の発明の詳細な説明及び図面に記載されておらず、示唆もない。
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0011】、【0040】、【0042】、【0052】には「バーコード」について記載されている。しかしながら、段落【0040】、【0042】及び【0052】には、「バーコードをフランジの全周にわたり延長する」ことは記載されていない。また、段落【0040】、【0042】及び【0052】に記載されている図2、図4及び図14にも「バーコードをフランジの全周にわたり延長する」ことが図示されているともいえない。
また、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0041】には、識別子である「陥凹7」及び「隆起8」が記載され、図3の図示事項から、これら陥凹7及び隆起8はポーションカプセルの壁領域2.1の全周にわたって延長すると解することもできる。しかしながら、陥凹7及び隆起8は「バーコード」ではなく、フランジに設けられるものでもない。仮に、段落【0041】の記載から、識別子である「バーコード」をポーションカプセルの壁領域2.1の全周にわたって延長することが示唆されるとしても、フランジの底側に「バーコード」を設けることまで示唆されているとはいえない。
さらに、段落【0047】には、導電性コートを有するポーションカプセルが記載されている。そして、段落【0047】のポーションカプセルを示す図9をみると、フランジの底側には符号10で示されるものがあると看て取れる。仮に、符号10で示されるものが導電性コートであって、該導電性コートが本件特許の発明の詳細な説明の段落【0012】に記載される「識別子」である「導電性区画」に対応するものであれば、識別子をフランジの底側に設けているといえる。しかしながら、導電性コートは「バーコード」ではなく、導電性コートをフランジの全周にわたり延長しているものともいえない。仮に、段落【0047】から、識別子である「バーコード」をフランジの底側に設けることが示唆されるとしても、「バーコード」をフランジの全周にわたって延長することまで示唆されているとはいえない。
そうすると、訂正後の請求項1の「前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの全周にわたり延長し」との記載事項は、本件特許の発明の詳細な説明等に記載されていない。
したがって、本件発明1は、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
同様に、本件発明1を引用する本件発明2及び本件発明9ないし本件発明12もまた、本件特許の発明の詳細な説明に記載されたものではない。
イ 令和6年6月10日の意見書における特許権者の主張
令和6年6月10日の意見書の6、(6)、「ア」における特許権者の主張は、大略、以下のとおりである。
(ア)本件明細書の段落【0003】、【0004】及び【0006】の記載から、全てのポーションカプセルが識別子を有することが必須である。そして、段落【0011】には識別子は「バーコード」とすることが例示され、段落【0012】には「識別子」は、「ポーションカプセル上のどこにでも配置されるが、好ましくは、側壁、端部、および/または、底部に配置する。」と記載されているから、本件明細書には、「識別子」はすべてのポーションカプセルの実施例に必須の構成であり、識別子を「バーコード」としポーションカプセルの「端部」の領域に設けることが記載されている。
(イ)特に図2の実施例においては、「ポーションカプセル」の「基本要素2」のフランジにバーコードが設けられ、フランジの全周にわたりバーコード17が設けられている。また、図14の実施例においてもフランジにバーコード17が設けられ、フランジの全周にわたりバーコードが設けられていることが看て取れる。
(ウ)そして、図19のポーションカプセル1の基本要素2のフランジの下側、すなわち「フランジの底側」には符号「17」が示されており、図2の実施例や図14の実施例において符号「17」が「バーコード」を示していることからすると、この符号「17」が「バーコード」を示すことは、当業者にとって自明である。そして、段落【0063】には「17 ・・・バーコード、環状装着フランジ」と記載されている。
(エ)したがって、「フランジの底側にバーコードを設け、加えて当該バーコードをフランジの全周にわたり延長する」との技術事項は、段落【0058】、【0059】、【0060】、【0061】及び図19に示されている。
ウ 特許権者の主張についての当審の判断
(ア)特許権者のイ、(イ)に係る主張について
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の段落【0040】には、「図2は、本発明によるポーションカプセルの別の実施例を示している。」と記載する。そうすると、図2の図示事項は、図2に図示されるものと段落【0040】の記載から導くものといえる。
段落【0040】には、「このポーションカプセルは膜の上面の領域に配置されたバーコードを示している。」と記載され、さらに「矢印15で示すように、バーコードは、代替的に、膜を避けて基本要素2の端部領域に付着されることができる。」と記載され、この記載から、図2に図示される別の実施例における「バーコード」は、「膜の上面に配置される」か、「矢印15で示す、膜を避けて、基本要素2の端部領域に付着される」ものといえる。ここで、「膜」は、段落【0038】に「膜4」と記載されるとおり、符号「4」により示されるものである。
また、段落【0040】には、符号「17」が「バーコード」であることを含め、符号「17」についての記載はない。
段落【0040】を踏まえて図2に図示される別の実施例をみると、「バーコード」は、膜を示す符号「4」の上面の領域に配置されているか、矢印15で示す「基本要素2の端部領域」に付着されていると理解するのが自然である。そうすると、図2の符号「17」は、膜を示す符号4の上面の領域を示すものではなく、基本要素2の端部領域を示すものでもないから、「バーコード」を示しているとはいえない。
段落【0052】には、「図14は、カバーホイルの領域内に配置されるバーコードを含む別の実施例を示している。」と記載する。そうすると、図14の図示事項は、図14に図示されるものと段落【0052】の記載から導くものといえる。
そして、段落【0052】には、符号「17」が「バーコード」であることを含め、符号「17」についての記載はない。
段落【0052】を踏まえて図14に図示される別の実施例をみると、「バーコード」はカバーホイルの領域内に配置されていると理解するのが自然である。そうすると、図14の符号「17」は、カバーホイルの領域内を示すものではないから、「バーコード」を示しているとはいえない。
したがって、イ、(イ)に係る特許権者の主張は当を得ない。
(イ)特許権者のイ、(ウ)に係る主張について
本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の段落【0058】には、「図19は、本発明の実施例による別のポーションカプセルの形態を概略的に示す。図20は、同じポーションカプセルを異なる視点から概略的に示す。」と記載する。また、段落【0060】には、「図19に表されているポーションカプセルの形態」と記載し、段落【0061】には、「図19に示す本発明の実施例によれば」と記載する。そうすると、図19の図示事項は、図19及び図20に図示されるもの、並びに段落【0058】、【0060】及び【0061】の記載から導くものといえる。なお、段落【0059】は、「ここでは図示されていない抽出チャンバまたは飲料製造装置」に関する事項が記載されるのみである。
ここで、段落【0058】は、「基本要素2は、膜4の領域内に環状装着フランジ17を有し、膜4と環状装着フランジ17とは、溶着または接着により強く接合される。」と記載される。また、段落【0060】には、「基本要素2は、壁領域12及び底部領域11を有する。壁領域は、環状装着フランジ17から底部領域11までに及ぶ。」と記載される。そして、段落【0061】には、「溝15は、全部で、たとえば、環状装着フランジ17から底部領域11までに及ぶ壁領域12の広がりの約50%を被覆し」と記載される。段落【0058】、【0060】及び【0061】におけるこれら記載をみると、図19に図示されるものにおいて、符号「17」で示されるものは、図2及び図14を参照するまでもなく「環状装着フランジ17」と解される。
そうすると、イ、(ウ)に係る特許権者の主張は当を得ない。
(ウ)特許権者のイ、(エ)に係る主張について
図19に図示されるものにおいて、符号「17」で示されるものは、「環状装着フランジ17」である。そして、【0058】、【0060】及び【0061】及び図19の別のポーションカプセルの形態に、「識別子」に係る事項は記載されておらず、図示もない。したがって、「フランジの底側にバーコードを設け、加えて当該バーコードをフランジの全周にわたり延長する」との技術事項は、【0058】、【0060】及び【0061】の記載事項並びに図19の図示事項には明示的に示されていない。
ここで、段落【0011】、【0012】に記載された「識別子」に係る事項を踏まえると、図19に示される別のポーションカプセルの形態において、基本要素2の壁領域12、底部領域11或いは環状フランジ17に「識別子」である「バーコード」を配置することは示唆されているといえる。
同様に、段落【0040】の記載事項及び図2の図示事項を踏まえると、図19に示される別のポーションカプセルの形態において、「バーコード」を、環状装着フランジ17を有する基本要素2の「膜4の領域内」に配置する、或いは「基本要素2の端部領域」に付着することは示唆されているといえる。
さらに、段落【0052】の記載事項及び図14の図示事項を踏まえると、図19に示される別のポーションカプセルの形態において、バーコードをカバーホイルの領域内に配置することは示唆されているといえる。
しかしながら、いずれも、「フランジの底側にバーコードを設け、加えて当該バーコードをフランジの全周にわたり延長する」との技術事項を示唆するものではない。
ここで、段落【0063】には、「17 ・・・バーコード、環状装着フランジ」との記載がある。しかしながら「バーコード」との表現は、上述したとおり、段落【0058】、【0060】及び【0061】の「環状フランジ17」にはない。
仮に、「図19に表されているポーションカプセルの形態」の符号「17」で示される部材が段落【0063】に基づき「バーコード、環状装着フランジ」とすると、当該部材は、「バーコードを備えた環状フランジ」と解することとなる。しかしながら、段落【0063】は、「バーコード、環状装着フランジ」と記載されるのみで、バーコードと環状装着フランジの関連は明らかでない。そこで、本件特許に係る明細書の発明の詳細な説明の【0058】の記載事項及び図19の図示事項をみると、「図19に表されているポーションカプセルの形態」は、膜4と環状装着フランジ17が強く接合される形態であり、環状装着フランジ17における膜4が接合される面には、膜4が接合される面の外側に環状装着フランジ17の端があることが看て取れる。そして、段落【0040】の記載事項を合わせ読むと、膜4と環状装着フランジ17が接合される部位の膜の上面の領域或いは膜4を避けた環状装着フランジ17の端部領域に「バーコード」が設けられることが類推される。そして、このように類推される形態が、「図19に表されているポーションカプセルの形態」における「バーコード、環状装着フランジ」と解される。したがって、この仮定においても、、「フランジの底側にバーコードを設け、加えて当該バーコードをフランジの全周にわたり延長する」との技術事項を導くことはできない。
そうすると、イ、(エ)に係る特許権者の主張は当を得ない。
(エ)小括
したがって、令和6年6月10日の意見書の6、(6)、「イ」におけるにおける特許権者の主張は当を得ない。
(2)取消理由2(進歩性)に係る判断
ア 当審の判断
(ア)甲第13号証及び甲第3号証
4.で述べたとおり、本件特許に係る出願の出願日は、平成31年4月17日であるから、甲第13号証及び甲第3号証は、いずれも本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になったものである。
(イ)甲第13号証の記載事項、図示事項及び認定事項
甲第13号証には、次の記載事項、図示事項及び認定事項がある(下線は当審が付与した。以下同様。)。
あ「【0005】
本発明は、飲料または食料品を製造するためのポーションカプセルであって、飲料原料が提供される空洞を有する基本要素を備えたポーションカプセルに関する。
そのようなポーションカプセルは、たとえば、プラスチック、天然材料、および/または、生分解性材料から成り、基本要素、特に深絞り基本要素を有し、すなわち、円錐台形状にまたは円筒形状に設計されている。
飲料原料は、ポーションカプセルの空洞内に配置され、抽出され、かつ/または、液体、特に水に溶解される。
飲料原料が空洞内に充填された後、基本要素は、通常、膜によって密封される。
特に、膜は、基本要素の底部の反対側に配置されている。
この膜は、基本要素と同じか、異なる材料から成り、シーリングや接着により基本要素に付着される。
加えて、空洞は、たとえば、フィルタ、不織布、フェルト、遮蔽装置、および/または、それらに類似のもののような、1つ、または、いくつかの内蔵要素を含む。
不織布およびフェルトが空洞内に配置される事例について、それらは、相互接続されることが好ましい。
不織布および/またはフェルトは、いくつかの層が、その出発原料、および/または、その調製品の種類が異なるように、作成される。
その上、膜および/または底部には、複数の陥凹部(穴)を設けられている。」
い「【0006】
本発明によれば、ポーションカプセルは、それぞれのポーションカプセルを区別できる識別子を有している。
本発明における区別とは、それぞれのポーションカプセルがそのコーヒーメーカーに適切なポーションカプセルのグループに割り当てられることを意味する。
コーヒーメーカーが、ポーションカプセルを指定、および/または、特定する必要はない。
事実、コーヒーメーカーがポーションカプセルをコーヒーメーカーに適したポーションカプセルのグループに関連付けることの方が、重要である。
特に、区別することは、コーヒーメーカーにとって適切でないポーションカプセルが、コーヒーメーカー内の、ポーションカプセルのために設計されるホルダ内に挿入されたり直接落とし込まれることができないこと、ならびに/または、コーヒーメーカーが、対応するポーションカプセルによってのみ動作することを意味する。
センサ/検出システムが、識別子をハンドリングし、それを記憶されている基準と比較するのが好ましい。
特に、コーヒーメーカーの水供給圧力ポンプは、検出された識別子が基準と一致する場合に起動されるのが好ましい。
そうでない場合、コーヒーメーカーは、動作を開始しない。
そして、検出システムは、ポーションカプセルのために設計されたコーヒーメーカーの媒体シュートの領域内に配置されるのが良い。
本発明の別の実施例によれば、検出システムは、抽出チャンバ(brewing chamber)の領域内に配置されてもよい。
本発明の別の実施例は、識別子が、ポーションカプセルがコーヒーメーカー内に挿入されることを妨げるように設けられる。
特に、機械的手段、より好ましくは、1つまたは複数の歯車が、誤ったポーションカプセルが媒体シュートを通過することによってコーヒーメーカー内に挿入されることができないことを保証するために、媒体シュート内に追加されてもよい。
【0007】
そして、識別子は、異なる光学的特質、たとえば、反射を有する表面領域から成るのが良い。
これらの表面は、ポーションカプセルの膜、側壁、および/または、底部上に配置される。
そして、ポーションカプセルは、それらの光学的特質、たとえば、反射特性が異なる少なくとも2つの領域を有するのが良い。」
う「【0011】
また、識別子は、機械可読インプリントであるのが好ましい。
これは、食品承認着色料(food approved color)のプリントによって実現される。
紙またはプリント材料のような蛍光材料であって、その光学的特質が温度の影響下で変化するものが良い。
そして、プリントは、バーコード、ロゴ、または、繰り返し柄(rapport)であるのが好ましい。
【0012】
さらに、識別子は、導電性区画であり、これは、ポーションカプセル上のどこにでも配置されるが、好ましくは、側壁、端部、および/または、底部に位置する。
コーヒーメーカー内に挿入される導電性区画は、電気回路の一部になり、測定可能な変化を引き起こすことによってそれぞれのポーションカプセルが識別される。
さらなる実施例では、識別子は、強磁性材料から成る区画である。」
え「【0027】
本発明の好ましい形態では、膜を基本要素に固定するために、フランジ/端部領域が底部領域から避けられるように設けられ、フランジ/端部領域と底部領域との間の壁領域が好ましくは境界領域を有し、溝が好ましくはこの境界領域まで延在している。」
お「【0033】
本発明の他の好ましい形態は、フランジに隣接する、基本要素の壁領域の直径とフランジの直径との比が0.85~0.89であり、特に、0.87であるように製造されるポーションカプセルに関する。」
か「【0038】
図1の右側は、壁領域2.1と底部領域2.2とを有する基本要素2を備えたポーションカプセル1を示している。
壁領域2.1と底部領域2.2とは、空洞3を画定し、この空洞3は、原料と場合によっては内蔵要素とを含んでいる。
充填後、この空洞3は、膜4によってシールされ、この膜4は、シールまたは接着材を用いて基本要素2の端部領域2.4に付着されている。
このようなポーションカプセル1は、液体、特に、水が流れる抽出チャンバ内に挿入される。
この工程で原料が、抽出または溶解されて、飲料が生成される。
本発明によれば、ポーションカプセル1は、それぞれのポーションカプセルがコーヒーメーカーの抽出チャンバと組になるか否か、および、処理するためのパラメータが適切に選択されるか否かを判定する1つの識別子を有している。
そうでない場合、重大な安全上の問題が生じる。
たとえば、誤ったポーションカプセルを挿入することは、抽出チャンバの気密性を危険にさらす。
この場合、熱水が高圧下で放出され、ユーザの安全が損なわれる可能性がある。
他の面では、誤ったポーションカプセルを挿入することが、コーヒーメーカーに損傷を与える可能性もある。
この例において、識別子は、いくつかの隆起した領域8によって表され、この隆起した領域8は、隆起した領域8の間の区画と反射特性が異なっている。
矢印で示すように、たとえば、反射のような光学的特質を有する不均一な区画5、6を区別可能な検出手段(ここでは、光学検出器)が、隆起を通過する。
異なる区画の間の切り替え、または、隆起8の数が、識別子を表す。
識別子が読み出された後、識別子は、記憶されている基準と比較される。
識別子が基準と一致する場合、コーヒーメーカーは、動作を開始する。
特に、熱水を抽出チャンバを通じて押し出すポンプは、識別子が基準と一致しない場合には、動作を開始しない。」
き「【0040】
図2は、本発明によるポーションカプセルの別の実施例を示している。
このポーションカプセルは、膜の上面の領域に配置されたバーコードを有している。
そして、このバーコードは、材料を除去することによって印刷されるか、または、ホイル内に一体化される媒体によって生成され、蛍光剤などによって光学的に検出される。
代替的には、金属リングが、ホイルの一部であってよく、または、ホイルに付着されてもよい。
バーコードの区画は、強磁性材料から成ってもよい。
矢印15で示すように、バーコードは、代替的に、膜を避けて基本要素2の端部領域に付着されることができる。
そのようなバーコードは、媒体シュート内に配置される検出手段13によって読み出される。
バーコードは、本発明による識別子を表す。
【0041】
図3は、本発明によるポーションカプセルの別の実施例を示している。 本事例においては、識別子は、陥凹7および隆起8を含み、これらは、ポーションカプセルの壁領域2.1の例に示されるように、材料除去、または、ポーションカプセルの再形成からもたらされる。本実施例では、陥凹7および隆起8は、検出手段13と相互作用し、これは鍵のように動作し、コーヒーメーカーの動作は、すべての要素13がそれぞれの陥凹7内に配置される場合にのみ、開始する。
それゆえ、電気回路が、変化または閉じられることができる。
【0042】
図4は、図1に示す実施例と同様なポーションカプセルの実施例を示している。 本発明の代替的な形態として、この図は、光学的特質の異なっている区画が、バーコードの形態のカバーホイルに付着されていることを示している。」
く「【0047】
図9は、本発明によるポーションカプセルの別の実施例を示している。
本事例においては、導電性コートが、端部領域2.4の裏に堆積され、媒体シュート内に配置されるとともに、ポーションカプセルが挿入されている間に、電気回路の電気接点を形成するスライド電気接点によってスキャンされる。」
け「【0053】
図15に示す実施例によれば、金属リングが、壁内に一体化され、抽出チャンバの領域内に配置されている電気回路を閉じる。
【0054】
図16は、本発明によるポーションカプセル1の別の実施例を示している。
このポーションカプセルは、円錐形状であり、底部領域2.2と壁領域2.1とを有する基本要素2を特徴とする。
この基本要素2が、原料、および、必要な場合には、フィルタのような内蔵要素を収容するように設けられている。
当業者には、内蔵要素が他の内蔵要素を含んでもよいことは既知である。
カバーホイルをシールするために使用される円形のフランジ/端部領域2.4が、底部の反対側に配置される基本要素の末端に付着されている。
フランジ/端部領域2.4は、外側領域(外周)において、かみ合い固定や摩擦固定やや検出のための手段2.4.2を有している。
図17aから図17cに示すように、本実施例では、かみ合い固定や摩擦固定や検出のための手段2.4.2は、端部領域2.4に均等に配置されるいくつかの陥凹/隆起によって形成される歯車である。
そして、この端部領域2.4が、歯車の内側で抽出チャンバ27に付着されるシーリング21とシールするように相互作用するシール面2.4.1を有するように設けられている。
シーリング21は、水口28から来る水がマンドレル29によって作成された開口を通過することによって、ポーションカプセルの周りではなく、ポーションカプセルを通じて流れることを確実にする。」
こ「【0060】
本発明によれば、基本要素2は、壁領域12、および、底部領域11を有する。
壁領域12は、環状装着フランジ17から底部領域11までに及ぶ。
いくつかの溝15が、壁領域内に配置される。
特に、これらの溝は、壁領域12内に一体化され、空洞3の方を向き、環状装着フランジ17から底部領域11までに及ぶ(すなわち、図19にしたがって垂直に走る)キー溝である。
本発明によれば、溝15が、壁領域にわたって垂直に延在しており、すなわち、環状装着フランジ17から底部領域11まで真っ直ぐに走っているが、溝15は、全体の長さにわたって延在する必要はない。
溝15は、この溝15によって壁領域が補強され、または、硬化されるように形成される。」
さ「【0062】
本発明によるポーションカプセルが、図21においてポーションカプセル1の高さに関してポーションカプセル1の広がりに沿った断面図として示されており、すなわち、断面の平面が膜4の主面に垂直である。
図22も、膜4の主面に平行な断面を描いた、本発明によるポーションカプセルの断面図を図示している。
ポーションカプセルの空洞の内部が、図21において示されている。
ポーションカプセルの材料または基本要素の材料は、図19に示すように、外側において溝を実装することによって内部において対応する凸状部およびへこみがもたらされるほどに、薄い。
図22は、ポーションカプセルの壁領域内に溝を挿入してもたらされる歯車形状の輪郭を示している。
【符号の説明】
【0063】
1 ・・・カプセル
2 ・・・基本要素
2.1 ・・・壁領域
2.2 ・・・底部領域
2.3 ・・・包囲リング
2.4 ・・・ 端部領域(フランジ)
2.4.1 ・・・シール面
2.4.2 ・・・かみ合い固定や摩擦固定や検出のための手段
3 ・・・空洞
4 ・・・膜
5 ・・・反射面
6 ・・・マット面
7 ・・・陥凹
8 ・・・隆起
9 ・・・インプリント
10 ・・・導電性領域
11 ・・・底部領域
12 ・・・壁領域
13 ・・・検出手段(センサ、スキャナ)
14 ・・・光線
15 ・・・溝
16 ・・・円周境界
17 ・・・バーコード、環状装着フランジ
18 ・・・カプセルの広がり
19 ・・・内蔵要素(ろ過器)
20 ・・・強磁性材料から成る区画
21 ・・・シーリング
22 ・・・媒体シュートのポート
23 ・・・媒体シュートのハウジング
24 ・・・かみ合い固定手段(小歯車)
25 ・・・媒体シュートの内壁
26 ・・・媒体シュート
27 ・・・抽出チャンバ
28 ・・・水口
29 ・・・マンドレル
30 ・・・支持するための手段」
し「【図1】
[図:0001424536000001.jpg]
」
す「【図2】
[図:0001424536000002.jpg]
」
せ「【図9】
[図:0001424536000003.jpg]
」
そ「【図19】
[図:0001424536000004.jpg]
」
た「【図22】
[図:0001424536000005.jpg]
」
ち 「え」の記載事項、「か」の記載事項及び「し」の図示事項から、ポーションカプセル1の基本要素2の端部領域2.4は、水平に延長したフランジを備え、膜4は、フランジの上側に付着されているといえる。そして膜を付着するフランジの上側と反対側は、フランジの底側といえる。
つ 「う」の記載事項、「く」の記載事項、「せ」の図示事項及び「ち」の認定事項から、ポーションカプセル1の端部領域2.4のフランジの裏側には、識別子である導電性コートが堆積されているといえる。
て 「え」の記載事項、「さ」の記載事項及び「ち」の認定事項から、基本要素2は、底部領域2.2と、フランジと底部領域2.2との間で延長する壁領域2.1を備えるといえる。また、空洞3は、壁領域2.1と底部領域2.2により確定されるものであるから、基本要素2は空洞3を有するといえる。
と 「こ」の記載事項、「そ」の図示事項及び「た」の図示事項から、溝15は壁領域12の外側に備えられ、空洞に面する壁領域12内側に対応する隆起を形成するといえる。
これらの記載を総合すると、甲第13号証には、以下の発明(以下、「甲13発明」という。)が記載されている。
[甲13発明]
「飲料を製造するためのポーションカプセルであって、
空洞を有して飲料原料を備える基本要素と、前記基本要素から水平に延長したフランジと、前記空洞を閉鎖するように前記フランジの上側に付着した膜と、それぞれのポーションカプセルを区別できる識別子と、を備え、
前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え、
前記壁領域の直径とフランジの直径との比が0.85~0.89であり、
前記識別子が、膜を避けて基本要素の端部領域に付着されるバーコードであり、
前記フランジの底側が、前記膜を付着する前記フランジの上側と反対側であり、
前記基本要素の前記壁領域の外側に垂直に延在するいくつかの溝が配置され、
前記いくつかの溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側にいくつかの対応する隆起を形成するとともに、
必要な場合にはフィルタを収容するポーションカプセル。」
(ウ)甲第3号証の記載事項、図示事項及び認定事項
甲第3号証には、次の記載事項、図示事項がある。なお、日本語訳は特許異議申立人が提出した甲第3号証抄訳文を援用した。
あ 「[0002] Many beverage pods have generally cylindrical shapes and can be rotationally symmetric. Some times, these beverage pods are physically keyed to break the rotational symmetry so that these beverage pods can be placed in a brewer in only one orientation. FIG.1A-FIG.1B illustrate a keyed beverage pod 40 with a barcode 50 printed on the surface of a round ending section 45. The keyed beverage pod 40 is keyed with some physical extension 48 to break the generally rotational symmetry of the beverage pod. When a keyed beverage pod is placed in a multi-beverage brewer with a fixed orientation, a barcode reader in the multi-beverage brewer can repeatedly find the barcode and decode the information in the barcode to allow the multi-beverage brewer to handle the keyed beverage pod accordingly. Many beverage pods, however, are not keyed and it is still desirable for a barcode reader in a brewer to find the barcode on the beverage repeatedly and reliably.」
(日本語訳:[0002]多くの飲料ポッドは一般的に円筒形であり、回転対称であることがある。時には、これらの飲料ポッドは、これらの飲料ポッドが1方向のみで淹出機に配置され得るように、回転対称性を破るために物理的にキーが付けられる。図1A-図1Bは、円形端部45の表面にバーコード50が印刷されたキー付き飲料ポッド40を示す。キー付き飲料ポッド40は、飲料ポッドの概ね回転対称性を破るために、いくつかの物理的な突出部48によってキーを付けられている。キー付き飲料ポッドが一定の向きでマルチ飲料淹出機に入れられると、マルチ飲料淹出機のバーコードリーダーがバーコードを繰り返し見つけ、バーコード内の情報を復号して、マルチ飲料淹出機がキー付き飲料ポッドをしかるべく取り扱うことを可能にする。しかし、多くの飲料ポッドはキーを付けられておらず、淹出機のバーコードリーダーが飲料に関するバーコードを繰り返し確実に見つけられることが依然として望ましい。)
い 「[0004] In one aspect, the invention is directed to a product. The product includes a product body with a round ending section, and a barcode repetitively positioned along a circle sharing a common center with an outer-ring of the round ending section.」
(日本語訳:[0004]一態様において、本発明は製品に向けられる。製品は、円形端部を備えた製品本体と、円形端部の外輪と同一中心を共有する円に沿って繰り返し配置されたバーコードとを含む。)
う 「[0017] FIG.2A-FIG.2B illustrate a product with a product body 40 that is somewhat cylindrically symmetric and some information of the product is coded with barcodes in accordance with some embodiments. In FIG.2A, the product body 40 is generally in the shape of a conic cylinder. The product body 40 is terminated with a round ending section 45. FIG.2B is a top view of the product body 40. In FIG.2B, a barcode is repetitively positioned along an out-ring 46 of the round ending section 45. Multiple instances of the same barcode, 50A-50H, are printed on the surface of the round ending section 45. In other implementations, the barcode can be repetitively positioned along a circle sharing a common center with an outer-ring of the round ending section, and the diameter of such circle can be smaller than the diameter of the outer-ring. In general, the product body 40 can be in the shape of a conic cylinder as shown in FIG.3A, in the shape of a cylinder as shown in FIG.3B, or in any other shape that is somewhat cylindrically symmetric as shown in FIG.3C.」
(日本語訳:[0017]図2A―図2Bは、幾分円筒対称である製品本体40を備える製品を示しており、いくつかの実施形態に従って何らかの情報がバーコードによってコード化されている。図2Aにおいて、製品本体40は、概して円錐筒形状である。製品本体40は円形端部45で終端している。図2Bは製品本体40の上面図である。図2Bでは、バーコードが、円形端部45の外輪46に沿って繰り返し配置されている。円形端部45の表面には、同じバーコード50A-50Hが数回印刷されている。他の実装態様では、バーコードは、円形端部の外輪と同一中心を共有する円に沿って繰り返し配置することができ、そのような円の直径は、外輪の直径よりも小さくてもよい。一般に、製品本体40は、図3Aに示すような円錐筒の形状、図3Bに示すような円筒形状、または図3Cに示すような概ね円筒対称である任意の他の形状であることができる。)
え 「What is claimed is:・・・5. The product of claim 1, wherein the product body is a beverage pod container.」
(日本語訳:特許請求の範囲 ・・・5.製品本体が飲料ポッド容器である、請求項1に記載の製品。)
お 「FIG.2A、FIG.2B
[図:0001424536000006.jpg]
」
以上の記載からみて、甲第3号証には、以下の技術的事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。
[甲3記載事項]
「飲料ポッドに付されるバーコードが、円形端部45の外輪46に沿って繰り返し配置されていること。」
(エ)本件発明1について
あ 対比
本件発明1と甲13発明とを対比する。
甲13発明の「飲料を製造するためのポーションカプセル」は、本件発明1の「飲料を製造するためのポーションカプセル」に相当する。
甲13発明の「空洞を有して飲料原料を備える基本要素」は、本件発明1の「空洞を有して飲料原料を備える基本要素」に相当する。
甲13発明の「前記基本要素から水平に延長したフランジ」、「前記空洞を閉鎖するように前記フランジの上側に付着した膜」、「それぞれのポーションカプセルを区別できる識別子」は、各々本件発明1の「前記基本要素から水平に延長したフランジ」、「前記空洞を閉鎖するように前記フランジの上側に張り付けた膜」、「それぞれのポーションカプセルを区別可能にする識別子」に相当する。
甲13発明の「前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え」ることは、本願発明1の「前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え」ることに相当する。
甲13発明の「前記壁領域の直径とフランジの直径との比が0.85~0.89であ」ることは、本願発明1の「前記フランジに隣接する壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間であ」ることに相当する。
甲13発明の「前記識別子が、膜を避けて基本要素の端部領域に付着されるバーコードであ」ることと、本件発明1の「前記識別子が、前記フランジの底側に設けられたバーコードであって前記フランジの外周にわたり延長」することとは、「前記識別子が、バーコードであ」ることという限りにおいて一致する。
甲13発明の「前記フランジの底側が、前記膜を付着する前記フランジの上側と反対側であ」ることは、本件発明1の「前記フランジの底側が、前記膜を張り付ける前記フランジの上側と反対側であ」ることに相当する。
甲13発明の「前記基本要素の前記壁領域の外側に垂直に延在するいくつかの溝が配置され」ることと、本件発明1の「前記基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直かつ部分的に延長した少なくとも1本の溝を備え」ることとは、「前記基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直に延長した少なくとも1本の溝を備え」ることという限りで一致する。
甲13発明の「前記いくつかの溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側にいくつかの対応する隆起を形成する」ことは、本件発明1の「前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成する」ことに相当する。
甲13発明の「ポーションカプセル」は、本件発明1の「ポーションカプセル」に相当する。
よって、両者は次の一致点で一致し、以下の3つの相違点で相違する。
[一致点]
飲料を製造するためのポーションカプセルであって、
空洞を有して飲料原料を備える基本要素と、前記基本要素から水平に延長したフランジと、前記空洞を閉鎖するように前記フランジの上側に張り付けた膜と、
それぞれのポーションカプセルを区別可能にする識別子と、を備え、
前記基本要素が、底部領域と、前記フランジと前記底部領域との間で延長する壁領域を備え、
前記フランジに隣接する前記壁領域の直径の、前記フランジの直径に対する割合が、0.85と0.89の間であり、
前記識別子が、バーコードであり、
前記フランジの底側が、前記膜を張り付ける前記フランジの上側と反対側であり、
前記基本要素が、前記壁領域の外側にほぼ垂直に延長した少なくとも1本の溝を備え、
前記少なくとも1本の溝が、前記空洞に面する前記壁領域の内側に少なくとも1本の対応する隆起を形成する、
ポーションカプセル。
[相違点1]
バーコードとされた識別子に関し、本件発明1は「前記フランジの底側に設けられ」、さらに「前記フランジの全周にわたり延長」するものであるのに対し、甲13発明のバーコードとされた識別子は、「膜を避けて基本要素の端部領域に付着される」ものである点。
[相違点2]
溝に関し、本件発明1は「ほぼ垂直かつ部分的に延長した」ものであるのに対し、甲13発明は、「垂直に延在する」ものである点。
[相違点3]
本件発明1は「カプセルが、フィルタなし」であるのに対し、甲13発明は「必要な場合にはフィルタを収容する」ものである点。
い 判断
上記相違点1ないし相違点3について検討する。
相違点1について検討する。ア、(イ)、「つ」のとおり、甲第13号証はフランジの底側に識別子を設けることを開示する。そうすると、端部領域から水平に延長したフランジの上側に付着されている「膜」を避けて、「基本要素の端部領域」である「フランジの底側」に識別子を設けることは、甲第13号証に示唆されているといえる。
ここで、甲3記載事項から、甲第3号証は「バーコードを円形端部の全周にわたり延長すること」を開示するものといえる。そして、甲13発明と甲3記載事項は、飲料の容器である点で共通し、飲料の容器を識別するための技術である点でも共通する。
そうすると、甲13発明において、甲3記載事項を適用し、相違点1に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
相違点2について検討する。
ア、(イ)、「こ」には、「本発明によれば、溝15が、壁領域にわたって垂直に延在しており、すなわち、環状装着フランジ17から底部領域11まで真っ直ぐに走っているが、溝15は、全体の長さにわたって延在する必要はない。」と記載されている。当該記載事項から、甲第13号証は、溝を「垂直かつ部分的に延在」することも示唆されているといえる。
そうすると、甲13発明の溝について、甲第13号証に示唆されることを踏まえて、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことである。
相違点3について検討する。甲13発明は、ポーションカプセルに対し、「必要な場合はフィルタを収容する」ものであるから、必要でない場合はポーションカプセルが「フィルタを収容しない」ものとできることを示唆するといえる。
そうすると、甲13発明において、必要に応じてフィルタを収容しないものとし、相違点3に係る本件発明1の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことである。
したがって、本件発明1は、甲13発明、及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(オ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の全てを備えつつ、その細部である「バーコード」を限定したものである。
しかしながら、本件発明2で新たに限定される事項は、甲第13号証の段落【0040】に記載されている。
したがって、本件発明2は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(カ)本件発明9について
本件発明9は、本件発明1の全てを備えつつ、その細部である「バーコード」を限定したものである。
しかしながら、本件発明9で新たに限定される事項は、甲第13号証の段落【0042】に記載されている。
したがって、本件発明9は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(キ)本件発明10について
本件発明10は、本件発明1の全てを備えつつ、その細部である「識別子」を限定したものである。
しかしながら、本件発明10で新たに限定される事項は、甲第13号証の段落【0047】及び図9に記載及び図示されている。
したがって、本件発明10は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(ク)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1のすべてを備えつつ、本件発明1のポーションカプセルをコーヒーマシンに挿入するとコーヒーマシンのセンサ又は検出システムが識別子を記録し保存された基準と比較することを限定するものである。
しかしながら、本件発明11で新たに限定される事項は、甲第13号証の段落【0006】に記載されている。
したがって、本件発明11は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(ケ)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1の全てを備えつつ、その細部である「識別子」を限定したものである。
しかしながら、本件発明12で新たに限定される事項は、甲第13号証の段落【0011】に記載されている。
したがって、本件発明12は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められる。
(コ)小括
以上により、本件発明1、2、9ないし12は、甲13発明、甲第13号証の記載事項及び甲3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたと認められるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。
イ 令和6年6月10日の意見書における特許権者の主張
令和6年6月10日の意見書の6、(6)、「イ」における特許権者の主張は、大略、以下のとおりである。
決定の予告2における分割要件の判断は誤りであり、出願日の認定も誤りである。したがって、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができないとの判断は失当である。
ウ 特許権者の主張についての当審の判断
4.(3)で述べたとおり、本件特許に係る出願の出願日は、平成31年4月17日である。
したがって、本件発明1、2、9ないし12は、いずれも本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になった、甲第13号証に記載される項13発明及び甲第3号証に記載される項3記載事項に基いて、当業者が容易に発明できたものである。
したがって、令和6年6月10日の意見書における特許権者の主張は当を得ない。
6 むすび
以上のとおり、本件発明1、2、9ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に満たさない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、その特許は取り消されるべきものである。
また、本件発明1、2、9ないし12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、その取り消されるべきものである。
本件発明3ないし本件発明8は、上記のとおり訂正により削除された。これにより、特許異議申立における本件発明3ないし本件発明8に係る特許についての申立は、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700259