特許異議申立
2016-701050
筋量増加剤
- 審判番号
- 2016-701050
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-138458
- 登録番号
- 特許第5917450号(P5917450)
- 請求日
- 2016年11月11日
- 審決日
- 2017年06月08日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日本タブレット株式会社
- 【権利者代理人】志村 尚司
- 【権利者】公立大学法人大阪府立大学
- 【権利者代理人】志村 尚司
- 【異議申立人】天笠 勝
- 審判長/審判官
- 審判長 關 政立
- 審判官 清野 千秋
- 審判官 福井 美穂
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.16 -YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5917450号発明「筋量増加剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5917450号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを認める。
特許第5917450号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5917450号の請求項1及び2に係る特許についての出願は、平成25年 7月 1日に特許出願され、平成28年 4月15日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 天笠 勝(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成29年 1月30日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成29年 3月 7日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して申立人から平成29年 5月15日付けで意見書が提出されたものである。
第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下の(1)~(5)のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1に「メトキシフラボン」と記載されているのを、「メトキシフラボン(但し、R1、R3、R4がいずれも-OMeであるメトキシフラボンを除く。)」に訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項2に「5-ヒドロキシ-3,7,3',4'-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンからなる群」と記載されているのを、「5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンからなる群」に訂正する。
(3)明細書の段落【0012】に記載されている「黒ショウガ及び/は黒ショウガに含まれる化学式1で示される化合物」を、「化学式1(但し、R1、R3、R4はいずれも-H又は-OMe、R3は-OHである。)で示されるメトキシフラボン(但し、R1、R3、R4がいずれも-OMeであるメトキシフラボンを除く。)」に訂正する。
(4)明細書の段落【0021】に記載されている「次の化学式1(但し、R1、R3、R4はいずれも-H又は-OMe、R3は-OHである。)で示されるメトキシフラボン」を、「次の化学式1(但し、R1、R3、R4はいずれも-H又は-OMe、R3は-OHである。)で示されるメトキシフラボン(但し、R1、R3、R4がいずれも-OMeであるメトキシフラボンを除く。)」に訂正する。
(なお、訂正請求書では、下線部分が省かれた記載となっているが、当該記載が誤記であり、上記の記載が正しいものであることは、本件特許明細書の段落【0021】の記載から明らかである。)
(5)明細書の段落【0021】に記載されている「さらに好ましくは5-ヒドロキシ-3,7,3',4'-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンである。」を、「さらに好ましくは5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンである。」に訂正する。
2.訂正の目的、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(1)、(2)の訂正は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内において、本件発明の有効成分となる化合物群から、化学式1における「R1、R3、R4がいずれも-OMeであるメトキシフラボン」、すなわち「5-ヒドロキシ-3,7,3',4'-テトラメトキシフラボン」(以下、「化合物g」という。)を除外することにより、当該化合物群を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記(3)、(4)の訂正は、上記(1)の訂正(請求項1の訂正)に伴い、また、上記(5)の訂正は、上記(2)の訂正(請求項2の訂正)に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であり、これらは、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、これを認める。
第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正後の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、平成29年3月7日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
次の化学式1(但し、R1、R3、R4はいずれも-H又は-OMe、R2は-OHである。)で示されるメトキシフラボン(但し、R1、R3、R4がいずれも-OMeであるメトキシフラボンを除く。)を有効成分とする筋量増加剤。
【化1】
【請求項2】
5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンからなる群から選ばれる1又は2以上の化合物を有効成分とする筋量増加剤。」
2.取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成29年 1月30日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
訂正前の請求項1及び2に係る特許は、化合物gを単独で有効成分とする筋量増加剤の発明を含むものであったが、本件特許の発明の詳細な説明の記載をみても、化合物gを単独で有効成分とする場合に、筋量増加剤としての使用が可能であることを当業者が理解し、その実施ができる程度に明確かつ十分に記載されていると認めることができず、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさない。
同様に、化合物gを単独で有効成分とする筋量増加剤の発明は、発明の詳細な説明の記載から、筋量を増加させるとの課題を解決できるものと当業者が認識しうる範囲のものではないから、発明の詳細な説明に発明として記載されたものとは認められず、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。
3.判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由について
訂正請求による訂正が認められ、本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、前述のとおり化合物gを有効成分とするものではなくなったから、上記の取消理由を有しない。
よって、本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第4号に該当しない。
なお、申立人は、平成29年 5月15日付け意見書において、本件訂正に付随して生じた取消理由として、化学式1において、R1及びR3が-OMeであり、R4が-Hである化合物、R1が-Hであり、R3及びR4が-OMeである化合物、R1及びR4が-Hであり、R3が-OMeである化合物、又は、R1及びR3が-Hであり、R4が-OMeである化合物を有効成分とする発明が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号の規定に違反して特許されたものであることを主張する。
しかしながら、上記化合物を有効成分とする発明が、特許法第36条第4項第1号及び第6項第1号に規定する要件を満たすか否かは、本件特許明細書の記載及び本件特許の出願時の技術常識によるのであって、本件訂正によって化合物gに係る記載が削除されたことによって何ら影響されるものではないから、申立人の上記主張には理由がなく、これを採用することはできない。
(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア.特許法第29条第1項第3号違反
申立人は、本件特許発明1、及び、本件特許発明2は、甲第1号証(Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2012年, Vol.2012, Article ID 732816)に記載されたものである旨主張する。
甲第1号証には、ケンペリアパルウィフローラの根茎の抽出物を含有するカプセルを投与することにより、被験者の筋力が増強する等の効果が得られた旨記載されており、前記抽出物が5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4'-トリメトキシフラボン、及び、3,5,7,3',4'-ペンタメトキシフラボンを含有することも記載されている一方(2.2、5.、Table.2参照)、請求項1及び2に記載の化合物(以下、「本件特許発明化合物」という。)を含有することは記載されていない。
この点に関し、申立人は、上記抽出物が本件特許発明化合物を含むことは、本件明細書の段落【0028】~【0029】の記載から明らかであり、実質的な相違点ではないと主張する。
そこで検討するに、本件特許明細書の段落【0028】~【0029】の記載によれば、黒ショウガ(Kaempferia Parviflora、以下、「ケンペリアパルウィフローラ」という。)の根茎を粉砕した粉砕物を、70%メタノールにより2時間加熱抽出し、全ろ液を減圧濃縮して得られる抽出物に、5,7,3',4'-テトラメトキシフラボン、3,5,7,3',4'-ペンタメトキシフラボン、5,7-ジメトキシフラボン、5,7,4'-トリメトキシフラボン、3,5,7-トリメトキシフラボン、3,5,7,4'-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,3',4'-テトラメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-7-メトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7-ジメトキシフラボン、5-ヒドロキシ-3,7,4'-トリメトキシフラボンの10種類のメトキシフラボンが含まれることが認められる。
しかし、一般的に、抽出物にどのような成分がどの程度含まれるかは、その抽出条件によって相違するのが当該技術分野における技術常識であるから、抽出物の抽出条件を開示しない甲第1号証の記載では、そこに記載の抽出物に本件特許発明化合物が当然に含まれているとはいえないし、仮に含まれているとしても、それが筋量増加剤たり得る量であるとする根拠もない。
なお、申立人は、平成29年 5月15日付け意見書において、甲第7号証(特願2009-537529号の審査書類の一部)、甲第8号証(特願2012-530785号の審査書類の一部)、及び、甲第9号証(特願2014-544675号の審査書類の一部)を提示し、上記同様の主張をするが、これらの審査書類は本件と何ら関連性が無いものであり、上記主張の根拠とはなり得ない。
よって、申立人の主張は採用できず、本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反したものではなく、同法第113条第2号に該当しない。
イ.特許法第29条第2項違反
申立人は、本件特許発明1、及び、本件特許発明2は、甲第1号証、甲第2号証(FOOD STYLE 21, 2012年, Vol.16, No.11, pp.52-55)及び甲第3号証(FITOTERAPIA, 2004年, Vol.75, pp.89-92)の記載から、当業者が容易になし得たものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証に記載されたケンペリアパルウィフローラの根茎の抽出物が、本件特許発明化合物を含有するものといえないことは上述のとおりであるし、甲第2、3号証には、本件特許発明化合物を含む各種フラボンがケンペリアパルウィフローラに含まれることが記載されるにすぎず、筋量増加作用に関する記載や、甲第1号証に記載の抽出物に本件特許発明化合物が含まれることを推認させる記載などは全くない。
してみると、甲第2、3号証の記載から、甲第1号証に記載の抽出物に本件特許発明化合物が含まれることを推認し、それらが筋量増加作用を有することを確認することは、当業者が容易になし得ることではない。
よって、申立人の主張は採用できず、本件特許発明1及び本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反したものではなく、同法第113条第2号に該当しない。
ウ.特許法第29条の2違反
(ア)甲第5号証について
申立人は、本件特許発明1、及び、本件特許発明2は、甲第5号証(国際公開第2013/172681号、特願2015-512583号に対応)に記載された発明と同一である旨主張する。
甲第5号証には、ケンペリアパルウィフローラの根茎の粉砕物を95%エタノールで48時間常温で冷浸して抽出して濃縮した抽出物について、筋肉細胞分化の増加効果を有すること、筋肉細胞のたんぱく質同化作用の増加効果を有すること、及び、ラットの筋肉量増加効果を有することが記載され、さらに、前記抽出物に含まれる5,7-ジメトキシフラボン等のフラボノイドが有効成分であることも記載されている一方(実施例1、実験例2、実験例3、図4、図5、表1参照)、本件特許発明化合物については記載されていない。
この点に関し、申立人は、上記抽出物が本件特許発明1、及び、本件特許発明2の化合物を含むことは、本件明細書の段落【0028】~【0029】の記載から明らかであり、実質的な相違点ではないと主張する。しかし、本件明細書の段落【0028】に記載された抽出条件と、甲第5号証の実施例1に記載された抽出条件とは異なるから、甲第5号証に記載の抽出物が本件特許発明化合物を当然に含むとまではいえないし、仮にそれらの化合物が上記抽出物に含まれていたとしても、それが筋量増加剤たり得る量であるとする根拠もない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(イ)甲第6号証について
申立人は、本件特許発明1、及び、本件特許発明2は、甲第6号証(国際公開第2013/099982号、特願2013-551756号に対応)に記載された発明と同一である旨主張する。
甲第6号証には、シークワーシャー抽出物、及び、それに含まれるポリメトキシフラボノイド、ノビレチン、又はタンゲレチンが筋萎縮抑制効果を有することが記載されており(実施例1~4参照)、前記ポリメトキシフラボノイドは、下記化学式で示されるものであると記載されている。
確かに、上記化学式は、本件特許発明化合物をはじめ、数多くの化合物を記載上含みうるものであるが、シークワーシャー抽出物に含まれるポリメトキシフラボノイドとして、甲第6号証に、その筋萎縮抑制効果とともに開示されているものと認められるのは、多くとも、ノビレチン、タンゲレチン、5-デメチルノビレチン、8-デメトキシノビレチン(シネンセチン)、6-デメトキシタンゲレチン、6-デメトキシノビレチン、シトロミチン、5,6,7,8,4-ペンタメトキシフラバノンまでであり(段落[0021]参照)、本件特許発明化合物については記載も示唆もない。
してみると、甲第6号証に記載のシークワーシャー抽出物に、本件特許発明化合物が含まれているとは認められない。
よって、申立人の主張は採用できない。
(ウ)小括
以上検討したとおり、本件特許発明1、及び、本件特許発明2に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものではなく、同法第113条第2号に該当しない。
第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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