特許異議申立
2016-701043
フッ化物蛍光体及びその製造方法並びに発光装置
- 審判番号
- 2016-701043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2014-202266外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月10日
- 審決日
- 2017年08月31日
- 公報発行日
- 2017年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日亜化学工業株式会社
- 【権利者代理人】鮫島 睦
- 【権利者代理人】言上 惠一
- 【権利者代理人】膝舘 祥治
- 【異議申立人】荒井 健之
- 分類
- P1652.161-YAA(C09K) / P1652.537-YAA(C09K) / P1652.536-YAA(C09K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条の2、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5915713号発明「フッ化物蛍光体及びその製造方法並びに発光装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5915713号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9、10〕について訂正することを認める。
特許第5915713号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
特許第5915713号の請求項1~10に係る特許についての出願は、平成26年9月30日に特許出願され、平成28年4月15日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人荒井健之により特許異議の申立てがされたものである。
本件特許異議の申立てに係る手続きの経緯は以下のとおりである。
平成28年11月10日 :特許異議の申立て
(請求項1~8に対して)
平成29年 1月16日付け:取消理由通知
平成29年 3月21日 :意見書の提出(乙第1号証添付)
平成29年 3月28日付け:取消理由通知(決定の予告)
平成29年 5月26日 :訂正請求書、意見書の提出
(乙第2号証添付)
平成29年 7月 6日 :意見書の提出(特許異議申立人)
2.訂正請求について
(1)訂正の内容
平成29年5月26日に提出された訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正事項は、以下のとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「0.04<a<0.10」とあるのを、「0.048≦a<0.10」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用して記載されている請求項2~8も、請求項1に連動して訂正される。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「蛍光の内部量子効率」とあるのを、「455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率」に訂正する。
請求項1を直接又は間接的に引用して記載されている請求項2~8も、請求項1に連動して訂正される。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2に、「0.04<a<0.08」とあるのを、「0.059≦a<0.08」に訂正する。
請求項2を直接又は間接的に引用して記載されている請求項3~8も、請求項2に連動して訂正される。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に、「蛍光の内部量子効率」とあるのを、「455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率」に訂正する。
請求項9を引用して記載されている請求項10も、請求項9に連動して訂正される。
(2)訂正の適否についての判断
ア 訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、フッ化物蛍光体の一般式(I)
A2[M1-aMn4+aF6] (I)
に含まれるMn4+の量比aの範囲である「0.04<a<0.10」を、本件特許明細書の段落[0057]の表1における実施例2の「分析Mn濃度(mol%)」の記載(4.8mol%)に基づいて、「0.048≦a<0.10」に減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項を追加するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。さらに、訂正事項1に係る訂正前の請求項1~8のうち請求項2~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、いずれも訂正事項1による請求項1の訂正に連動して訂正され、訂正後の請求項2~8となるから、訂正事項1は、訂正事項1により訂正される一群の請求項である請求項1~8に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
蛍光の内部量子効率は、励起光の波長によっても変化することが技術常識であるところ、訂正前の請求項1には、励起光の波長については特定がされておらず、請求項1に記載された「蛍光の内部量子効率が80%以上」は、どのような励起光の波長によるものなのかが明らかとはいえなかった。
一方、本件特許明細書の[0055]によれば、本件の請求項1に係る特許の蛍光の内部量子効率は、455nm励起で測定されたものであるから、訂正前の請求項1における励起光の波長は、455nmであるといえる。
そうすると、訂正事項2は、励起光の波長を明らかにする訂正であって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合し、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当するものである。
さらに、訂正事項2は、蛍光の内部量子効率の数値範囲や、請求項1に包含される蛍光体の範囲を拡張するものではなく、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
加えて、訂正事項2に係る訂正前の請求項1~8のうち請求項2~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、いずれも訂正事項2による請求項1の訂正に連動して訂正され、訂正後の請求項2~8となるから、訂正事項2は、訂正事項2により訂正される一群の請求項である請求項1~8に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項2における、「aが0.04<a<0.08を満たす数である」という記載を、本件特許明細書の段落[0057]の表1における実施例3の「分析Mn濃度(mol%)」の記載(5.9mol%)に基づいて、「aが0.059≦a<0.08である」に減縮する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であって、新規事項を追加するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第5項の規定に適合するものである。また、訂正事項3は、訂正前の請求項3に記載されていた一般式(I)中のaの数値範囲を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。さらに、訂正事項3に係る訂正前の請求項1~8のうち請求項2~8は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、いずれも訂正事項3による請求項1の訂正に連動して訂正され、訂正後の請求項2~8となるから、訂正事項3は、訂正事項3により訂正される一群の請求項である請求項1~8に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
訂正事項4は、訂正事項2と同様に、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合し、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。訂正の目的が明瞭でない記載の釈明であるので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項において準用する同法126条第7項の独立特許要件は適用されない。
さらに、訂正事項4は、蛍光の内部量子効率の数値範囲や、製造される蛍光体の範囲を拡張するものではなく、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことが明らかであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。
加えて、訂正事項4に係る訂正前の請求項9及び10のうち請求項10は、請求項9を引用するものであって、訂正事項4による請求項9の訂正に連動して訂正され、訂正後の請求項10となるから、訂正事項4は、訂正事項4により訂正される一群の請求項である請求項9及び10に対して請求されたものといえ、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
(3)小括
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1-8〕及び〔9、10〕について訂正を認める。
3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明10」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「[請求項1]
下記一般式(I)で表される組成を有し、455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率が80%以上であるフッ化物蛍光体。
A2[M1-aMn4+aF6] (I)
(式中、Aは、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4+からなる群から選択される少なくとも1種の陽イオンを示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.048≦a<0.10を満たす数を示す)
[請求項2]
一般式(I)におけるaが0.059≦a<0.08を満たす数である請求項1に記載のフッ化物蛍光体。
[請求項3]
内部量子効率が85%以上である請求項1又は2に記載のフッ化物蛍光体。
[請求項4]
一般式(I)におけるAがK+を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体。
[請求項5]
380nm~485nmの波長範囲の光を発する光源と、請求項1~4のいずれか1項に記載のフッ化物蛍光体を含む第一の蛍光体と、380~485nmの波長範囲の光を吸収し、極大発光波長を495nm~590nmの波長範囲に有する第二の蛍光体とを含む発光装置。
[請求項6]
相関色温度(CCT)が4000K未満である請求項5に記載の発光装置。
[請求項7]
第二の蛍光体が、組成式が(Si,Al)6(O,N)8:Euで表されるβサイアロン、組成式が(Ca,Sr,Ba)8MgSi4O16(F,Cl,Br)2:Eu又は(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Euで表されるシリケート系蛍光体、組成式が(Y,Lu,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで表される希土類アルミン酸塩及び組成式がSrGa2S4:Euで表される硫化物系蛍光体からなる群から選択される少なくとも1種の蛍光体を含む、請求項5又は6に記載の発光装置。
[請求項8]
第二の蛍光体の第一の蛍光体に対する質量比率が、5:95~95:5である、請求項5~7のいずれか1項に記載の発光装置。
[請求項9]
マンガンを含む第一の溶液、カリウムを含む第二の溶液、並びに第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む第三の溶液を準備することと、
準備した第一の溶液及び第三の溶液を、準備した液量のそれぞれ0.3体積%以下である1分間当りの滴下量で、準備した第二の溶液にそれぞれ滴下することと、
を含み、
前記第一の溶液のマンガン源濃度が0.01質量%以上50質量%以下であり、前記第二の溶液のカリウムを含む陽イオン源濃度が5質量%以上80質量%以下であり、前記第三の溶液における第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素とフッ素イオンとを含む第二の錯イオン源の濃度が5質量%以上80質量%以下である、下記一般式(Ia)で表される組成を有し、455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率が80%以上であるフッ化物蛍光体の製造方法。
A’2[M1-aMn4+aF6] (Ia)
(式中、A’は、K+、Li+、Na+、Rb+、Cs+及びNH4+からなる群から選択され、K+を含む少なくとも1種の陽イオンを示し、Mは、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を示し、aは0.04<a<0.10を満たす数を示す)
[請求項10]
1分間当りの滴下量がそれぞれ0.1体積%以下である請求項9に記載の製造方法。」
4.取消理由の概要
訂正前の請求項1~8に係る特許に対して平成29年3月28日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
理由I(拡大先願) 本件特許の請求項1~8に係る発明は、本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開された下記1の特許出願の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の出願の発明者が上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許の出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもなく、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、請求項1~8に係る特許は取り消すべきものである。
理由II(明確性) 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1~8において、蛍光の内部量子効率の数値範囲が一意に特定されているとすることができず、当業者が特許を受けようとする発明の範囲を明確に理解することができるように記載されたものとすることができないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
5.引用文献等に記載された事項
<引用文献等一覧>
取消理由において引用した引用文献等1、2は以下のとおりである。
1.特願2013-254437号(特開2015-113362号)(甲第1号証、取消理由(決定の予告)で通知した引用文献等1)
2.一般社団法人日本ファインセラミックス協会, 「経済産業省委託 平成24年度国際標準開発事業 白色LED用蛍光体の光学特性評価方法の標準化 成果報告書」, 平成25年3月, p.1~95(甲第2号証、取消理由(決定の予告)で通知した引用文献2)
また、取消理由の理由IIに対して、被請求人は乙第1号証及び乙第2号証を提出して意見を述べているので、これらをそれぞれ引用文献3及び4として、記載事項を認定する。
3.大塚電子株式会社, 「量子効率測定システムQE-2000」カタログ, 2013年10月31日(乙第1号証、平成29年3月21日に提出された意見書に添付)
4.株式会社サイアロン, 「NIMS Standard Red」カタログ, 2013年11月1日(乙第2号証、平成29年5月26日に提出された意見書に添付)
(i)本件特許の出願の日前の特許出願であって、本件特許の出願後に出願公開(特開2015-113362号公報)された特願2013-254437号(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1-1)「[請求項1]
基本組成が下記式(A):
Ka(Si1-x,Mnx)Fb (A)
(式中、1.5≦a≦2.5、5.5≦b≦6.5、かつ0<x≦0.06である)
で表わされる蛍光体であって、この蛍光体のラマンスペクトルを測定した場合に、ラマンシフトが650±10cm-1の範囲に現れる、結晶中のSi-F結合に帰属されるピークの強度(I0)に対する、ラマンシフトが600±10cm-1の範囲に現れる結晶中のMn-F結合に帰属されるピークの強度(I1)の比(I1/I0)が0.09以上0.22以下であることを特徴とする蛍光体。
[請求項2]
前記蛍光体の内部量子効率が80%以上である、請求項1に記載の蛍光体。」
(1-2)「[0014]
実施形態にかかる赤色発光蛍光体は、主としてケイフッ化カリウムからなり、マンガンで付活された蛍光体である。ここで主としてケイフッ化カリウムからなる蛍光体とは、蛍光体の基本的な結晶構造がケイフッ化カリウムであり、結晶を構成する元素の一部が他の元素で置換されたものをいう。実施形態にかかる蛍光体の組成は下記式(A)式で表わされる。
Ka(Si1-x,Mnx)Fb (A)
式中
1.5≦a≦2.5、好ましくは1.8≦a≦2.2、
5.5≦b≦6.5、好ましくは5.7≦b≦6.2かつ
0<x≦0.06、好ましくは0.01≦x≦0.05
である。
[0015]
実施形態にかかる蛍光体は、付活剤としてマンガンを含有するものである。マンガンが含有されていない場合(x=0)には紫外から青色領域に発光ピークを有する光で励起しても発光を確認することはできない。したがって、前記式(A)におけるxは0より大きいことが必要である。また、マンガンの含有量が多くなると発光効率が改良される傾向にあり、0.01以上であることが好ましい。また、赤色発光の蛍光体を得るためにはマンガンの価数は+4価であることが好ましい。
[0016]
しかし、マンガンの含有量が多すぎる場合には、濃度消光現象が生じて、蛍光体の発光強度が弱くなる傾向にある。こうした不都合を避けるために、マンガンの含有量(x)は一般に0.06以下であり、0.05以下であることが好ましい。」
(1-3)「[0024]
本発明者等は、組成が式(A)で表わされる蛍光体のうち、上記ラマンスペクトルで検出されたピークのうち、ラマンシフトが650±10cm-1の範囲に現れるSi-F結合に対応するピークの強度(I0)に対する、ラマンシフトが600±10cm-1の範囲に現れるMn-F結合に対応するピークの強度(I1)の比(I1/I0)が0.09以上0.22以下である蛍光体は外部量子効率及び内部量子効率が高くなることを見出した。具体的には、実施形態による蛍光体においては、内部量子効率は80%以上となる。
[0025]
非特許文献1によると、ラマンシフトが650±10cm-1の範囲、およびに600±10cm-1の範囲現れるピークは、それぞれSi-F結合及びMn-F結合の伸縮振動であるA1gモードに帰属されている。すなわちこれらの2つのピークは同じ振動モードであるため、ピーク強度を比較することによって、Si-F結合とMn-F結合との存在比に対応し、大きいほどF原子と結合したMn原子が多いと考えることができる。以下、このピーク強度比をRA1gという。」
(1-4)「[0030]
外部量子効率、内部量子効率、吸収率は例えばC9920-02G型絶対PL量子収率測定装置(商品名、浜松ホトニクス株式会社製)により測定することができる。上記発光特性を測定する際の励起光としてはピーク波長が440~460nm付近、半値幅5~15nmの青色光を使用することができる。
[0031]
ラマンスペクトルから求められたRA1gと内部量子効率との関係、およびRA1gと外部量子効率との関係は図2および3に示す通りである(詳細後述)。RA1gが0.09以上0.22以下の範囲で、内部量子効率、外部量子効率ともに良好であることが分かる。」
(1-5)「[0032]
実施形態にかかる蛍光体は、任意の方法で製造することができるが、具体的には以下の方法により製造することができる。。
[0033]
まず、反応溶液として過マンガン酸カリウムおよびフッ化水素を含有する水溶液を準備する。そして、この反応溶液をケイ素源に接触させることで、そのケイ素源の表面において反応が進行して蛍光体が形成される。本発明において、この反応溶液は、過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素のモル比(以下rH/Kという)は87以上・・・127以下であり、90以上、および/または120以下であることが好ましい。また、反応溶液中のフッ化水素の濃度[HF]が27質量%以上40質量%以下であることが好ましく、28質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。反応溶液における過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素の比およびフッ化水素の濃度がこの範囲にあることで、内部量子効率の高い蛍光体が得られる。
・・・
[0036]
ここで、KaSiFbの生成速度は反応溶液中のプロトン[H+]濃度と[K+]濃度の比に依存する。つまり、HF濃度が高くなるとシリカの溶解速度が促進され、KaSiFbの生成反応は早くなる。一方、Mnの価数変化の速度は変化しないため、HFの濃度が高すぎるとKaSiFb母体中に取り込まれるMn量が少なくなる。その結果蛍光体中のSi-F結合に対するMn-F結合の割合が減少すると考えられる。また、KMnO4の濃度が高すぎると、Mn-F結合の割合が多いとMn同士が相互作用し、濃度消光と呼ばれる効率低下を引き起こすこともある。このため、反応溶液における過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素の比およびフッ化水素の濃度が特定の範囲にあることが必要となる。」
(1-6)「[0040]
本発明の実施形態にかかる蛍光体は、青色の波長領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせて、実施形態にかかるLED発光装置を得ることができる。実施形態にかかるLED発光装置は、従来のK2SiF6:Mn赤色蛍光体を用いたLED発光装置より、発光強度が高い。
[0041]
実施形態に係る蛍光体は紫外から青色領域に発光ピークを有する励起光源にて励起可能である。この蛍光体を発酵装置に用いる場合には、図5に示された実施形態による蛍光体の励起スペクトルからわかるように、440nm以上470nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光素子を励起光源として利用することが望ましい。上述の波長範囲外に発光ピークを有する発光素子を用いることは、発光効率の観点からは好ましくない。発光素子としては、LEDチップやレーザーダイオードなどの固体光源素子を使用できる。」
(1-7)「[0042]
実施形態にかかる蛍光体は、赤色の発光をする蛍光体である。したがって、緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体と組み合わせて用いることにより、白色発光装置を得ることができる。使用する蛍光体は発光装置の目的に合わせて任意に選択することができる。例えば、色温度が低い白色発光装置を提供する際には、実施形態による蛍光体と黄色発光蛍光体と組み合わせることにより、効率と演色性を両立した発光装置を提供することができる。」
(1-8)「[0043]
緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体は、520nm以上570nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体ということができる。このような蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:Ce等のケイ酸塩蛍光体、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce、(Ca,Sr,Ba)Ga2S4:Eu等の硫化物蛍光体、(Ca,Sr,Ba)Si2O2N2:Eu、(Ca,Sr)-αSiAlON等のアルカリ土類酸窒化物蛍光体などが挙げられる。なお、主発光ピークとは、発光スペクトルのピーク強度が最も大きくなる波長のことであり、例示された蛍光体の発光ピークは、これまで文献などで報告されている。なお、蛍光体作製時の少量の元素添加やわずかな組成変動により、10nm程度の発光ピークの変化が認められることがあるが、そのような蛍光体も前記の例示された蛍光体に包含されるものとする。」
(1-9)「[0053]
[実施例1~3]
原料として、市販のSi単結晶を準備した。また、KMnO4粉末10.8g、HF水溶液(49質量%)250ml、および純水150mlを十分混合し反応溶液とした。この反応溶液における過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素のモル比は103であり、フッ化水素の濃度[HF]は31.5質量%である上記反応溶液中に室温(20℃)でSi単結晶を40分間反応させた。この際、反応溶液が均一になるようにゆっくり撹拌して反応させた。この結果、Si単結晶の表面に蛍光体が形成され、成長して大きくなった蛍光体粒子はSi単結晶表面から剥離して、容器底部に堆積した。
[0054]
得られた蛍光体のラマンスペクトルを測定し、RA1gを算出した。さらに内部量子効率および外部量子効率を、C9920-02G型絶対PL量子収率測定装置(商品名、浜松ホトニクス株式会社製)により測定した。
[0055]
原料の配合比を変更して、実施例2および3、ならびに比較例1および2の蛍光体を調製し、同様にRA1g、内部量子効率、および外部量子効率を求めた。得られた結果は表1、図2および3に示す通りであった。」
(1-10)「[0056]
[表1]
」
(1-11)「[0058]
[表2]
」
(ii)本件特許の出願前に頒布されたことが明らかな引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2-1)「1 序章
1.1 調査研究の目的
白色LEDは液晶テレビのバックライトや照明用途に急速に普及しつつあり、これらに用いられる蛍光体は、LEDの特性を決める重要な材料の一つである。・・・蛍光体開発の基本である特性評価においても、再現性の良い確かな測定方法の確立が必須である。
しかしながら、LED用蛍光体の最も基本的な物性、例えば色度や発光強度、量子効率の測定方法などが標準化されていないため、測定機関が異なる測定値を比較するには、その測定方法や測定条件を確認しなければならず、また、商取引においては、ユーザ、サプライヤ間での個別の取決めに依っているのが現状である。そのような不便さを解消して、今後の蛍光体の研究開発を促進し、企業間取引の円滑化を図るために、蛍光体の光学特性評価に関する共通の物差しを提供する必要性が高まっている。」(第4頁1~15行)
(2-2)「7.白色LED用蛍光体の光学特性評価方法への標準案
ここでは、平成25年度のISO/TC206への新業務項目提案に向けて、これまで検討してきた、積分球を用いる最も普及した光学特性測定方法による内部量子効率と色度の測定方法の骨子をまとめる。但し、来年度も継続する予定の測定値のばらつき要因検討結果を反映して、最終的な標準案をまとめる必要がある。
・・・
7.5 測定装置
・・・
7.6 測定装置の校正
・・・
7.7 試料
・・・
7.8 測定方法
・・・
7.9 計算
・・・
7.10 報告
測定結果は、必要に応じて次の事項を記録する
a)この規格番号
b)測定年月日および測定者
c)試料名
d)測定成分
e)測定装置の名称および形式
f)励起光源部について(光源の種類、波長、半値幅、スリット波長幅など)
g)分光検出部について(測定波長範囲、検出器の種類など)
h)試料容器について(寸法、材質、試料厚さ、励起光入射角度など)
i)積分球について(寸法、材質など)
j)白色拡散板またはブランクセルについて(材質など)
k)励起光スペクトル(エネルギー基準かフォトン数基準か明示すること)
l)蛍光スペクトル(同上、励起波長を明示すること)
m)励起光の散乱成分の除去方法
n)色度座標(励起波長を明示すること)
o)内部量子効率(同上)
p)二次吸収補正及び自己吸収補正の有無
q)気温、湿度」(第88頁1行~第93頁末行)
(iii)引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3-1)「量子効率測定システム
Quantum Efficiency Measurement System | QE-2000
特長
・・・
高精度測定にこだわる
・瞬時に絶対量子効率(絶対量子収率)の測定が可能
・再励起蛍光発光の除去が可能
・積分半球ユニットの採用により、明るい光学系を実現
・低迷光マルチチャンネル分光検出器の採用により、紫外領域での迷光を大きく低減
簡単操作にこだわる
・専用ソフトウェアで簡単操作
・試料測定用セルの着脱が容易
・省スペースでコンパクト設計
・分光器タイプの励起光源を用いることにより、任意波長の選択が可能
・励起波長の波長およびステップの値を、ソフトウェア上で指定することにより自動測定が可能
多機能にこだわる
・粉体、溶液、固体(フィルム)、薄膜試料に対応が可能
・豊富な解析機能
-量子効率(量子収率)測定
-励起波長依存性測定
-発光スペクトル測定
-PL励起スペクトル測定
-EEM(Excitation Emission Matrix)測定」(第1頁)
(3-2)「量子効率測定システム「QE-2000」は、量子効率(量子収率)を測定する装置です。
試料測定用セルをセットし、専用ソフトウェアの指示に従って操作をするだけで、測定から解析まで簡単に短時間でおこなうことができます。
QE-2000は、高精度検出器で、励起光と蛍光の光量子数から量子効率(量子収率)を求める絶対評価により、精度よく評価ができます。」(第2頁)
(3-3)「
」(第2頁右下)
(3-4)「高精度な理由その1 積分半球による理想的な光学系
QE-2000は、積分半球を搭載しています。積分半球は、積分球(全球)に比べて下記のような特長があります。
・非発光部分(ホルダーなど)を外部に出すことができるため自己吸収を小さく抑えることが可能であり、理想的な光学系を実現できる
・ミラーにより同一ポイントの照度が約2倍となり、感度よく測定ができる
・試料測定用セルの脱着が容易であり、積分球内部を傷めるリスクが少ない」(第3頁)
(3-5)「高精度な理由その2 再励起蛍光補正機能により“真の物性値”を観測
再励起蛍光発光を含んだ状態では、材料そのものの物性の観測ではなく、装置の特性を含んだ観測となり、真の物性値を求めることができません。
QE-2000は、積分半球の利点を生かした再励起蛍光補正により、簡便にそして精度の高い測定をおこなうことができます。
再励起蛍光発光とは・・・
蛍光体試料表面で反射した励起光が、積分球内で拡散反射され、再び蛍光試料に入射することにより、さらに発光する現象をいいます。」(第4頁1~7行)
(3-6)「高精度な理由その3 低迷光マルチチャンネル分光検出器により紫外域の迷光を低減
従来の検出器(ポリクロメータ)では、紫外領域の迷光が高く検出されたため、量子効率(量子収率)の測定に向いているとは言えませんでした。大塚電子では、迷光を除去する技術を開発し、この問題を解決しました。
QE-2000に搭載しているマルチチャンネル分光検出器は当社従来品に比べて迷光量 約1/5を実現しており、紫外域においても精度の高い測定を可能としています。」(第4頁下から8行~下から2行)
(3-7)「量子効率測定を、より簡単に!より高精度に!
-測定開始から解析まで自動で実行
直感的にわかる、使い勝手の良い専用ソフトウェアです。
試料測定用セルをセットするだけで、量子効率(量子収率)、励起スペクトルなどを簡単に測定することができます。」(第5頁1~5行)
(3-8)「■粉体試料の測定例
BAMの複数励起の測定例
励起波長が変わると、量子効率(量子収率)が変わります。
右図に、BAM(粉体)の量子効率(量子収率)および反射率の励起波長依存性を示します。(BAM=BaMgAl10O17:Eu)
・青色(左のスケール):再励起補正後の内部量子効率(内部量子収率)
・赤色(右のスケール):各励起波長における反射率
この図より、BAMの場合は、励起光が可視域に近づくと吸収率が低くなり、つまり、反射率が高くなることがわかります。
」(第6頁左欄1~9行及び右欄図表)
(3-9)「仕様
」(裏表紙上欄)
(3-10)「関連製品
量子効率測定システム(分離型)QE2100
・・・(写真省略)・・・
測定部、検出部、光源部が独立した汎用タイプで、標準機能に加えて、用途に応じた拡張が可能
・温度制御機能(50~300℃)により、量子効率(量子収率)の温度依存性測定が可能
・用途に応じた光学系を構築することにより、種々のサンプルに対応可能
・検出器を全光束測定、配光測定にも使用可能
・検出器を他の波長範囲に変更可能
・ブロードバンド(300~1600nm)仕様に対応可能」(裏表紙右下欄)
(iv)引用文献4には、以下の事項が記載されている。なお、記載事項の認定は、特許権者が同時に提出した抄訳文に基づいて行った。
(4-1)「国立研究開発法人物質・材料研究機構 標準 赤
2013年11月1日
ロット番号:NSR1301」(第1~4行)
(4-2)「
株式会社 サイアロン
」(第5行~末行)
6.先願明細書等に記載された発明
先願明細書等には、基本組成が式(A):
Ka(Si1-x,Mnx)Fb (A)
(式中、1.5≦a≦2.5、5.5≦b≦6.5、かつ0<x≦0.06である)
で表わされる蛍光体であって、この蛍光体のラマンスペクトルを測定した場合に、ラマンシフトが650±10cm-1の範囲に現れる、結晶中のSi-F結合に帰属されるピークの強度(I0)に対する、ラマンシフトが600±10cm-1の範囲に現れる結晶中のMn-F結合に帰属されるピークの強度(I1)の比(I1/I0)(以下、「RA1g」という。)が0.09以上0.22以下であり、内部量子効率が80%以上である蛍光体が記載されており(摘記1-1、1-3、1-4)、蛍光体の基本的な結晶構造がケイフッ化カリウムであり、マンガンで付活された蛍光体であること(摘記1-2)、及び蛍光体の基本的な結晶構造がケイフッ化カリウムであり、マンガンで付活された蛍光体であること(摘記1-2)、及び当該蛍光体の具体例の一つとして、蛍光体組成が上記基本組成の式(A)におけるa=2.0、b=6.0、x=0.04であり、内部量子効率が87%であり、RA1g=0.17である実施例2の蛍光体が記載されている(摘記1-9、1-10)。
また、マンガンの含有量(x)について、多くなると発光効率が改良される傾向にあり、0.01以上であることが好ましいが、多すぎる場合には濃度消光現象が生じて、蛍光体の発光強度が弱くなる傾向にあり、こうした不都合を避けるために、マンガンの含有量(x)は一般に0.06以下であり、0.05以下であることが好ましいことが記載されている(摘記1-2)。加えて、蛍光体の製造方法について、KaSiFbの生成速度は反応溶液中のプロトン[H+]濃度と[K+]濃度の比に依存すること、HFの濃度が高すぎるとKaSiFb母体中に取り込まれるMn量が少なくなること、KMnO4の濃度が高すぎると、濃度消光と呼ばれる効率低下を引き起こすこともあること、このため、反応溶液における過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素の比およびフッ化水素の濃度が特定の範囲にあることが必要となることが記載されている(摘記1-5)。これらの記載を参酌すると、実施例2の蛍光体(x=0.04)におけるマンガンの含有量(x)を0.04を超え0.06以下まで増加させた蛍光体についても、当業者が製造できるように記載されているものと認められる。
そうすると、先願明細書等には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「基本組成式がK2(Si1-x,Mnx)F6、(式中0.04≦x≦0.06である)で表わされる蛍光体であって、x=0.04の場合の内部量子効率が87%であるフッ化物蛍光体。」(以下、「先願発明」という。)
さらに、先願明細書等には、「本発明の実施形態にかかる蛍光体は、青色の波長領域に発光ピークを有する発光素子と組み合わせて、実施形態にかかるLED発光装置を得ることができる。」と記載されており(摘記1-6)、実施形態に係る蛍光体は紫外から青色領域に発光ピークを有する励起光源にて励起可能であること、及び440nm以上470nm以下の波長領域に発光ピークを有する発光素子を励起光源として利用することが望ましいこと(摘記1-6)、実施形態にかかる蛍光体は、赤色の発光をする蛍光体であることから、緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体と組み合わせて用いることにより、白色発光装置を得ることができること(摘記1-7)、緑色発光蛍光体および黄色発光蛍光体は、520nm以上570nm以下の波長領域に主発光ピークを有する蛍光体であり(摘記1-8)、具体的には、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu及び(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceを用いることができること(摘記1-8)が記載されている。
そうすると、先願明細書等には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「紫外から青色領域、好ましくは440nm以上470nm以下の波長領域に発光ピークを有する励起光源と、先願発明のフッ化物蛍光体と、520nm以上570nm以下の波長範囲に主発光ピークを有する緑色又は黄色発光蛍光体であって、(Sr,Ca,Ba)2SiO4:Eu又は(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ceで表される蛍光体を含む発光装置。」(以下、「先願発明B」という。)
加えて、先願明細書等には、「使用する蛍光体は発光装置の目的に合わせて任意に選択することができる。例えば、色温度が低い白色発光装置を提供する際には、実施形態による蛍光体と黄色発光蛍光体と組み合わせることにより、効率と演色性を両立した発光装置を提供することができる。」(摘記1-7)と記載されているから、以下の発明も記載されているものと認められる。
「紫外から青色領域、好ましくは440nm以上470nm以下の波長領域に発光ピークを有する励起光源と、先願発明のフッ化物蛍光体と、黄色発光蛍光体とを組み合わせた、色温度が低い白色発光装置。」(以下、「先願発明C」という。)
7.取消理由通知に記載した取消理由についての判断
(1)理由I(拡大先願)特許法第29条の2について
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と先願発明との対比
本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の組成式における「K」、「Si」は、それぞれ本件発明1の一般式(I)における「A」、「M」の選択肢の一つに相当し、先願発明におけるMnの量「x」は、本件発明1におけるMn4+の量「a」に相当し、xの範囲(0.04≦x≦0.06)は、aの範囲(0.048≦a<0.10)と0.048≦a≦0.06で一致するから、両者は、
「下記一般式(I)で表される組成を有するフッ化物蛍光体。
K2[Si1-aMn4+aF6] (I)
(式中、aは0.048≦a≦0.06を満たす数を示す)」である点で一致し、
相違点1:本件発明1においては、455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率が80%以上であることが特定されているのに対し、先願発明においては、x=0.04の場合に内部量子効率が87%であるとしても、xが0.048≦x≦0.06のときの内部量子効率は明らかでない点
で相違する。そこで、相違点1について検討する。
(イ)相違点1について
(イ-1)内部量子効率の測定条件について
先願発明において特定される「内部量子効率」の測定条件について、先願明細書等には、「外部量子効率、内部量子効率、吸収率は例えばC9920-02G型絶対PL量子収率測定装置(商品名、浜松ホトニクス株式会社製)により測定することができる。上記発光特性を測定する際の励起光としてはピーク波長が440~460nm付近、半値幅5~15nmの青色光を使用することができる。」(摘記1-4)と記載されている。測定の際の励起光の波長は本件発明1の「455nm」には特定されていないが、先願明細書等に記載された「440~460nm」の中央値付近の励起波長が採用されたものと推測して、その半値幅が5~15nmであるとされていることを勘案すると、励起波長は概ね一致しているとみなすことができる。また、測定に用いられる装置は本件特許明細書に記載された装置とは異なっているが、本件発明1においても先願明細書等においても、可能な限り誤差の少ない測定を志向して行われているものと推測されるから、以下の検討は、内部量子効率の測定条件が本件発明1と先願発明とで同条件であったものと仮定して行うこととする。
(イ-2)内部量子効率について
先願明細書等の表1(摘記1-10)には、実施例2として、蛍光体組成(Ka(Si1-x,Mnx)Fb)がa=2.0、b=6.0、x=0.04であり、内部量子効率が87%である例が記載されている。しかし、本件発明1の上記一致点に係る組成を有する蛍光体(a=2.0、b=6.0で、0.048≦x≦0.06)の具体例は先願明細書等には記載されておらず(摘記1-10、摘記1-11)、このため、上記一致点に係る組成を有する蛍光体(先願発明)の内部量子効率の値も、実測値としては記載されていない。
ここで、上記実施例2(x=0.04)よりもマンガンの含有量(x)が0.008だけ多い場合の蛍光体(x=0.048)の内部量子効率がどのような値となるかについて検討すると、先願明細書等(摘記1-2)には、「マンガンの含有量が多すぎる場合には濃度消光現象が生じて、蛍光体の発光強度が弱くなる傾向にある。こうした不都合を避けるために、マンガンの含有量(x)は一般に0.06以下であり、0.05であることが好ましい。」と記載されていることから、xが増加すると内部量子効率が低下するものと解される。また、上記表1(摘記1-10)に記載された実施例3(a=2.2、b=6.2、x=0.03、内部量子効率88%)と比較例1(a、bは実施例3と同じ。x=0.04、内部量子効率73%)との対比、及び実施例1(a=1.9、b=6.1、x=0.02、内部量子効率92%)と比較例2(a、bは実施例1と同じ。x=0.06、内部量子効率61%)との対比からも、xの増加と内部量子効率の低下との関連が一般的な傾向として読み取れる。ただし、上記実施例3と比較例1との対比からは、xが0.01増加することにより内部量子効率が15%減少する可能性があること、及び上記実施例1と比較例2との対比からは、xが0.04増加することにより内部量子効率が31%減少する可能性があることが一応導き出されるが、両者の減少率に差があることを勘案すると、一般の場合に、xの増加量から内部量子効率の減少量を確実に見積もることはできず、実際に蛍光体を製造してみなければ、先願発明の内部量子効率の値を知ることはできないと考えられる。また、仮に、上記の実施例及び比較例における内部量子効率の減少率に基づいて、xが実施例2よりも0.008以上増加した蛍光体の内部量子効率の値を見積もると、その蛍光体の内部量子効率は12%~6.2%程度、あるいはそれ以上に減少する可能性があり、内部量子効率が80%以上であるとはいえない。
同様な理由から、マンガンの含有量(x)がx=0.048よりさらに多い0.048<x≦0.06の場合についても、内部量子効率が80%以上となるとはいえない。
(イ-3)相違点1についての判断
以上のことから、先願明細書等には、0.048≦x≦0.06の場合に内部量子効率が80%以上のフッ化物蛍光体が記載されているとすることはできないから、相違点1は実質的なものであり、この点において本件発明1と先願発明とは相違するものである。
(ウ)小括
よって、本件発明1は、先願明細書等に記載された発明と同一の発明ではないから、特許法第29条の2の規定には該当しない。
イ 本件発明2~8について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8についても、本件発明1と同じ理由により、特許法第29条の2の規定には該当しない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成29年7月6日に提出した意見書において、「甲第1号証には、内部量子効率がマンガン含有量(x)の増加に伴って低下することは何ら示されていない。
甲第1号証には、ICP組成分析で得られるマンガン含有量(x)は、酸素と結合した形態で存在し発光を阻害するMnをも含むため、内部量子効率に直接関係しないことが明確に記載されている([0020]、[0027])。」(上記意見書の第3頁下から2行~第4頁14行)と主張している。
しかし、特許異議申立人が指摘する甲第1号証(先願明細書等)の[0020]には、「実施形態による蛍光体には、蛍光体内部に存在し、フッ素と結合して発光に寄与するマンガンと、蛍光体表面などで酸素と結合した形態で存在し、発光を阻害するマンガンとが存在することを見出した。」と記載されており、マンガン含有量が「内部量子効率に直接関係しない」ことが記載されているとはいえない。
また、先願明細書等には、「マンガンの含有量が多すぎる場合には濃度消光現象が生じて、蛍光体の発光強度が弱くなる傾向にある。」(摘記1-2)、「KMnO4の濃度が高すぎると、Mn-F結合の割合が多いとMn同士が相互作用し、濃度消光と呼ばれる効率低下を引き起こすこともある。」(摘記1-5)等の記載があるから、蛍光体内部に存在し、フッ素と結合して発光に寄与するマンガンに着目すれば、内部量子効率がマンガン含有量(x)の増加に伴って低下する傾向があると解することができる。さらに、蛍光体表面などで酸素と結合した形態で存在するマンガンが発光に寄与しないことと、蛍光体内部でフッ素と結合して発光に寄与するマンガンの含有量が多くなることにより濃度消光が生じることとは、それぞれ別の要因で生じることであり、互いに技術的に矛盾することでもない。
そうすると、マンガン含有量が「内部量子効率に直接関係しないことが明確に記載されている」とまではいえないから、特許異議申立人の主張は採用できない。
また、特許異議申立人は、上記意見書において、「内部量子効率を左右するのはフッ素と結合して発光に寄与するMn量であるとの知見に基づいて、ラマンスペクトル測定により検出したMn-F結合とSi-F結合のピーク強度比(RA1g又はI1/I0)を一定の範囲に制御すべきであるとしている([0024]、[0025]、[0031]、図2)。実際に、甲第1号証表1の実施例2と比較例1はマンガン含有量(x)の値が0.04で同一であっても、RA1gは0.17と0.26で相違しており、その違いは内部量子効率にも現れている。また、マンガン含有量(x)の増加に伴って内部量子効率が低下するという関係が成立しないことは、表2の実施例6と比較例5、実施例6と比較例6の対比からも明らかである。従って、内部量子効率がマンガン含有量(x)の増加に伴って低下するとの認識は事実に反するものであり、甲第1号証に接した当業者ならば、マンガン含有量(x)に依らず内部量子効率の高い蛍光体を実現できることを十分に理解できるはずである。」(上記意見書の第4頁3~14行)と主張している。
しかし、特許異議申立人が指摘する実施例2(a=2.0、b=6.0、x=0.04、内部量子効率87%)と、比較例1(a=2.2、b=6.2、x=0.04、内部量子効率73%)とは、RA1gが相違するというだけでなく、蛍光体の組成(a、bの値)が異なり、結晶構造が異なると解されるから、マンガン含有量(x)だけに由来する効果を適切に評価できるとはいえない。実施例6と比較例5、及び実施例6と比較例6との組合せも同様である。そうすると、「内部量子効率がマンガン含有量(x)の増加に伴って低下するとの認識は事実に反する」とまではいえないし、まして、「マンガン含有量(x)に依らず内部量子効率の高い蛍光体を実現できる」という結論を導き出すこともできないから、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
さらに、特許異議申立人は、上記意見書において、甲第1号証(先願明細書等)の[0024](摘記1-3)、[0031](摘記1-4)、図2、[0033](摘記1-5)、[0036](摘記1-5)を引用し、「これらの記載によれば、反応液のHF濃度を上記範囲で小さくすること、又は、rH/Kを上記範囲で小さくすること、あるいは、これらの両方を組み合わせることにより、KaSiFb母体中に取り込まれるMn量が増加し、マンガン含有量(x)の高い蛍光体を得ることができると考えられる。例えば、実施例2において、過マンガン酸カリウムの配合量を増やしてrH/Kを許容範囲内で下げることなどにより、高い内部量子効率を維持しながら、マンガン含有量(x)を0.04より大きくできるはずである。」(上記意見書の第4頁下から11行~第5頁2行)と主張している。
しかし、先願明細書等には、「KMnO4の濃度が高すぎると、Mn-F結合の割合が多いとMn同士が相互作用し、濃度消光と呼ばれる効率低下を引き起こすこともある。このため、反応溶液における過マンガン酸カリウムに対するフッ化水素の比およびフッ化水素の濃度が特定の範囲にあることが必要となる。」(摘記1-5)等の記載があるから、反応溶液のKMnO4の濃度を高める等の方法により、先願発明の蛍光体(0.04≦x≦0.06)を製造することまではできるとしても、濃度消光による効率低下を引き起こし、必ずしも内部量子効率が80%以上という性質を兼ね備えた蛍光体を製造できるとはいえない。また、特許異議申立人は、実際に本件発明1に相当する組成を有する蛍光体(0.048≦x≦0.06)を先願明細書等に記載された方法に従って製造し、その内部量子効率を実測することにより、主張を直接裏付けている訳でもない。そうすると、特許異議申立人の主張は十分な根拠のあるものとはいえないから、採用することはできない。
よって、特許異議申立人の主張は、いずれも採用することができない。
エ 理由I(拡大先願)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、いずれも先願明細書等に記載された発明と同一であるとすることはできず、特許法第29条の2の規定には該当しないから、当審が通知した理由I(拡大先願)の取消理由によって、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
(2)理由II(明確性)特許法第36条第6項第2号について
ア 本件発明1について
特許異議申立人の、特許法第36条第6項第2号についての特許異議申立理由の概要は、内部量子効率について、内部量子効率は、測定方法や測定条件によってばらつきがあることがよく知られており、測定方法及び測定条件を特定しない本件発明1は、技術的に十分に特定されておらず、明確に把握できない、というものである。
しかしながら、蛍光体の内部量子効率は、特定の励起波長に対して、(発光光量子数)及び(吸収光量子数)を測定し、その比((発光光量子数)/(吸収光量子数))を算出することで求められることは技術常識であるところ(摘記3-3、3-8)、励起波長が455nmと特定された本件発明1においては、内部量子効率は一意的に定めることができるものであって、異議申立人の上記主張は採用できない。
よって、本件発明1は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
イ 本件発明2~8について
本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8についても、本件発明1と同じ理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、平成29年7月6日に提出した意見書において、「内部量子効率の測定には、試料の保管条件、測定温度、励起光の半値幅、試料径、試料深さ、試料のタッピング状況等の種々の条件が影響を与えるのであり、カタログや技術常識を考慮したところでこれら一切を特定することなどできない。また、甲第2号証(当審注:引用文献2)・・・には、同一の測定装置を使用したとしても測定機関によってバラツキが大きいことが示されている(第50頁第1~3行目、第54頁第4~5行目)。さらに、同一サンプルについて測定した内部量子効率のバラツキは約10%にも及ぶことが示されており(第47頁図3.2.3-1)、特に赤色発光蛍光体ではバラツキが大きいことが示されている(第50頁第3~7行目、第53頁3.4.1)。
また、甲第2号証によれば、蛍光体のような粉体の場合には、相対方法そのものが信頼性の高い標準法として認識されていないこと、十分な耐候性を持つ均一な試料を安定に供給することが容易でないこと、参照標準試料の蛍光量子効率値を決定するための絶対測定法が確立されていないことから、蛍光体において相対法は確立されていないとされている(第77頁下から3行目~第78頁第2行目)。さらに、特許権者が標準サンプルとして示している乙第2号証(当審注:引用文献4)はCASN蛍光体(窒化物蛍光体)に関するものと推測されるが、蛍光体種(材質)の異なる標準を使用してもフッ化物蛍光体の内部量子効率をバラツキ無く測定することは難しい。また、乙第2号証によれば、標準サンプルでさえ内部量子効率に±3%もの誤差を含んでおり、そのようなサンプルを元に補正したところで、内部量子効率を一意に決定することは難しい。
以上の通り、測定に用いる測定装置や励起波長を特定したところで、当業者が特定の蛍光体の内部量子効率をバラツキ無く一意に決定することなど到底不可能であり、あるフッ化物蛍光体が特許発明の技術的範囲に属するか否かを明確に把握することができない。」(上記意見書の第5頁19行~第6頁6行)と主張している。
しかしながら、上記7.(2)ア「本件発明1について」に記載したとおり、本件発明における「455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率」は、励起波長が455nmと特定され、当該特定の励起波長に対して、(発光光量子数)及び(吸収光量子数)を測定し、その比((発光光量子数)/(吸収光量子数))を算出することで求められるものであり、そうすると、本件発明1~8はいずれも明確に把握することができるといえるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。
エ 理由II(明確性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1~8は、いずれも特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものであるから、当審が通知した理由II(明確性)の取消理由によって、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
8.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、平成29年7月6日に提出した意見書において、「訂正によって生じ得る新たな取消理由」として、以下のように主張しているので、念のため検討する。
「訂正によって生じ得る新たな取消理由
以上の通り、異議申立書において主張した取消理由1及び2は、訂正によって解消するものではないが、仮にこの度の訂正が「内部量子効率」の明確性の判断に影響を与えるものであっても、本件訂正発明1~8には以下の取消理由3が新たに生じる。
・取消理由3
特許法第36条第4項第1号違反(同法第113条第4号)
特許権者によれば、測定に用いる装置と励起波長を特定しさえすれば、装置のカタログや技術常識から、蛍光体の内部量子効率を一意に特定できるとしている。
しかし、いくら同一の装置を使用し、セルへの充填方法などの条件を揃えたとしても、取得した内部量子効率のバラツキを避けられないことは甲第2号証に示されるとおりであり、如何なる条件設定にすれば内部量子効率を一意に特定できるのか、当業者といえども明らかではない。
従って、本件特許の明細書や出願時の技術常識から、内部量子効率を一意に特定するに必要な条件を当業者が設定できない以上、本件訂正発明1の『455nm励起で測定される蛍光の内部量子効率が80%以上』であるフッ化物蛍光体をどのように製造するか理解できない。
以上より、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明が記載されていないことは明らかであるから、本件訂正発明1~8は特許法第36条第4項第1号の取消理由を有する。」(上記意見書の第6頁9~27行)
しかし、本件発明1における「蛍光の内部量子効率」は、測定条件の一つである励起波長が「455nm」であることが特定され、さらに、発明の詳細な説明の[0055]等の記載を参酌すると、測定に用いる装置は「大塚電子製の量子効率測定装置(型番QE-2100)」に相当する装置であると解され、具体的には、大塚電子株式会社のカタログ(引用文献3)によると、同社の量子効率測定システム(型番QE-2000)の関連製品であって、「測定部、検出部、光源部が独立した汎用タイプで、標準機能に加えて、用途に応じた拡張が可能」(摘記3-10)なものであるから、内部量子効率を測定する光源、積分球、サンプルホルダ、ソフトウエア等の個別の仕様はQE-2000とQE-2100とで共通であると推測され、具体的には、励起光源は150W Xeランプであり、励起波長は250~800nmであり(摘記3-9)、「励起波長の波長およびステップの値を、ソフトウェア上で指定することにより自動測定が可能」(摘記3-1)なものであると解される。
また、引用文献3には、「試料測定用セルをセットし、専用ソフトウェアの指示に従って操作をするだけで、測定から解析まで簡単に短時間でおこなうことができます。
QE-2000は、高精度検出器で、励起光と蛍光の光量子数から量子効率(量子収率)を求める絶対評価により、精度よく評価ができます。」(摘記3-2)、「試料測定用セルをセットするだけで、量子効率(量子収率)、励起スペクトルなどを簡単に測定することができます。」(摘記3-7)等と記載されており、試料測定用セルをセットした後は、人手を介することなく測定を行うことができるものと解されるから、測定時のバラツキは最小限に抑えられると考えられる。
さらに、引用文献3には、高精度な量子測定を実現できる技術的な要因として、「積分半球による理想的な光学系」(摘記3-4)、「再励起蛍光補正機能により“真の物性値”を観測」(摘記3-5)、「低迷光マルチチャンネル分光検出器により紫外域の迷光を低減」(摘記3-6)等が記載されているから、これらの記載からも、測定値のバラツキは低減されるものと考えられる。
加えて、例えば引用文献4に記載されているように、本件特許に係る出願の出願時において、内部量子効率が明示された標準サンプルである赤色発光蛍光体が入手可能であり(摘記4-1)、内部量子効率の測定値としては±3%の精度の測定値が記載されているから(摘記4-2)、当業者であれば、標準サンプルを基準にして測定装置の性能を一定の状態に維持することができたものと認められるし、科学的な研究を実施する上で、測定装置の性能を一定の状態に維持したり、サンプルの調製方法や保管方法を可能な限り同じ条件に揃え、比較、再現実験を適切に行えるように配慮することは、当業者にとって普通のことである。
そうすると、「蛍光の内部量子効率」の測定値が不当にばらつくとまではいえず、内部量子効率を一意に特定することができないとはいえないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものということができ、特許異議申立人の主張は採用することができない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから、特許異議申立人が主張する「取消理由3」によって、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
9.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-701043