特許異議申立
2016-700582
くし付きヘアアイロン
- 審判番号
- 2016-700582
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-038951
- 登録番号
- 特許第5883406号(P5883406)
- 請求日
- 2016年06月28日
- 審決日
- 2017年04月19日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ヤーマン株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人サクラ国際特許事務所
- 【異議申立人】テスコム電機 株式会社
- 【異議申立人代理人】中里 浩一
- 【異議申立人代理人】川崎 仁
- 【異議申立人代理人】三嶋 景治
- 【異議申立人代理人】中里 卓夫
- 審判長/審判官
- 審判長 鳥居 稔
- 審判官 中村 則夫
- 審判官 窪田 治彦
- 分類
- P1651.121-YAA(A45D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5883406号発明「くし付きヘアアイロン」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5883406号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-11〕について,訂正することを認める。
特許第5883406号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第5883406号の請求項1~11に係る特許についての手続の経緯は,以下のとおりである。
平成25年 2月28日 特許出願(優先日平成24年2月28日)
平成28年 2月12日 特許権の設定登録
平成28年 6月28日 特許異議の申立て
平成28年11月 7日 取消理由通知
平成29年 1月10日 意見書提出(特許権者),訂正請求書提出
平成29年 2月24日 意見書提出(異議申立人)
第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容(以下「訂正事項」という。)は,以下のとおりである。
<訂正事項>
請求項1の「前記第1の支持部材に回転可能に設けられた棒状の第2の支持部材と,」を,「前記第1の支持部材に回転可能に設けられ,互いに拡開するように付勢され,かつ必要以上に拡開しないように拡開方向への回動が規制された棒状の第2の支持部材と,」に訂正する。
2 新規事項の有無,訂正の目的の適否,特許請求の範囲の拡張・変更の存否,及び一群の請求項
上記訂正事項に関連する事項として,本件明細書の【0024】には,
「(本体210について)
本体210は,回動連結部210aを介して略V字状に拡開可能にそれぞれ連結された上側及び下側アーム部211a,211bから構成された挟持体である。
上側及び下側アーム部211a,211bは,回動連結部210a内に配置された図示はしないコイルスプリング及びストッパーによって互いに拡開するように通常は付勢され,かつ必要以上に拡開しないように拡開方向への回動が規制されている。」
と記載されている。
よって,上記訂正事項は,新規事項の追加には該当しない。
また,上記訂正事項は,訂正前の請求項1の「第2の支持部材」に係る構成を限定したものといえるから,特許請求の減縮を目的とするものであるし,実質上特許請求の範囲を拡張し,又変更するものでもない。
そして,これら訂正は,請求項1~11からなる一群の請求項に対してなされたものである。
3 小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び同条第9項において準用する第126条第5項ないし第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-11〕について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1~11」という。また,それらをまとめて「本件発明」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。(下線部は訂正箇所を示す。)
「【請求項1】
棒状の第1の支持部材と,
前記第1の支持部材に回転可能に設けられ,互いに拡開するように付勢され,かつ必要以上に拡開しないように拡開方向への回動が規制された棒状の第2の支持部材と,
電気を供給されて発熱する発熱部と,
前記第1の支持部材に設けられ前記発熱部と熱的に接続される第1の熱部と,
前記第1の熱部と対向して前記第2の支持部材に設けられかつ前記発熱部と熱的に接続される第2の熱部と
前記第1の支持部材に設けられ前記第1の熱部の反対側に位置しかつ前記発熱部と熱的に接続され,互いに間隔をあけて配置された複数の第3の熱部と,
前記第2の支持部材に設けられ前記第2の熱部の反対側に位置しかつ前記発熱部と熱的に接続され,互いに間隔をあけて配置された複数の第4の熱部と,
前記第3の熱部の間隙に突設された略円柱状の複数の熱不良導体からなる第1のくし歯部と,
前記第4の熱部の間隙に突設された略円柱状の複数の熱不良導体からなる第2のくし歯部と
を備えることを特徴とするくし付きヘアアイロン。
【請求項2】
前記第1のくし歯部の前記熱不良導体は,前記第1の支持部材の長手方向に沿って配列され,前記第2のくし歯部の前記熱不良導体は,前記第2の支持部材の長手方向に沿って配列されていることを特徴とする請求項1に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項3】
前記第1及び第2の支持部材が,それぞれ半円筒形状を有し,かつ平坦面を対向させて互いに並列しており,
前記第1及び第2の熱部は,前記平坦面側にそれぞれ配置され,
前記第3及び第4の熱部は,前記平坦面の逆側の外周面側にそれぞれ配置されること
を特徴とする請求項1または2に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項4】
前記第3及び第4の熱部は,前記第1及び第2の支持部材の外周面の周方向に沿ってそれぞれ前記間隔をあけて配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項5】
前記第1及び第2のくし歯部の前記熱不良導体がピン体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項6】
前記第1の支持部材に設けられる半円筒状の第1の熱良導体と,
前記第2の支持部材に設けられる半円筒状の第2の熱良導体と
をさらに備え,
前記第1及び第2の熱良導体は,長手方向に沿って外周面に設けられた複数の溝部をそれぞれ有し,
前記第3の熱部は,前記複数の溝部と交互に配置された前記第1の熱良導体の外周面部であり,
前記第4の熱部は,前記複数の溝部と交互に配置された前記第2の熱良導体の外周面部であること
を特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項7】
前記第1及び第2のくし歯部は,前記溝部に挿入される板状の基部をそれぞれ有し,
前記熱不良導体は,前記基部の長手方向に所定の間隔をあけて当該基部の表面から突設されること
を特徴とする請求項6に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項8】
前記第1のくし歯部は,前記第1の熱良導体の外周面の円周方向に沿って2つ以上設けられ,
前記第2のくし歯部は,前記第2の熱良導体の外周面の円周方向に沿って2つ以上設けられる
ことを特徴とする請求項6または7に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項9】
前記発熱部が,前記第1及び第2の支持部材にそれぞれ設けられる第1及び第2の発熱体を備えることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項10】
前記第1の発熱体は,前記第1及び第3の熱部と熱的に接続され,
前記第2の発熱体は,前記第2及び第4の熱部と熱的に接続される
ことを特徴とする請求項9に記載のくし付きヘアアイロン。
【請求項11】
前記第1または第2の支持部材に設けられる放電電極と,
前記放電電極に高電圧を印加する高電圧発生部と,
をさらに備えること
を特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載のくし付きヘアアイロン。」
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~11に係る特許に対して,平成28年11月7日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
<取消理由の要旨>
請求項1~11に係る発明は,次に示す甲第1号証に記載された発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,請求項1~11についての特許は,特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。
甲第1号証 特開2002-345536号公報
引用例2 国際公開2011/078593号(甲第2号証の特表2013-515556号のファミリー)
甲第3号証 特開2009-66022号公報(周知技術例)
3 甲号証等の記載
ア 甲第1号証には,以下の事項が記載されている。
(1-1)「【請求項1】 アイロンパイプとアイロンパイプを加熱する加熱手段を備えたヘアーアイロンであって,外形が略円形となるアイロンパイプを受けパイプと押さえパイプとに二分割し,受けパイプと押さえパイプとを相対回動自在に枢支連結し,受けパイプと押さえパイプとの当接面をストレートアイロン面とし,合わされた受けパイプと押さえパイプの略円形となる外周面をカール付け面とし,受けパイプを押さえパイプより離間させる操作部を備え,受けパイプが押さえパイプに当接するように付勢するバネを設けて成ることを特徴とするヘアーアイロン。」
(1-2)「【請求項2】 受けパイプと押さえパイプの外面に毛髪を巻き付けるためのブリスルを設けて成ることを特徴とする請求項1記載のヘアーアイロン。」
(1-3)「【0002】
【従来の技術】従来,ヘアーアイロンにおいては,一対の熱板間に毛髪を挟んで伸ばすストレートアイロンとパイプと円弧状の押さえ板を備えてカール付けをおこなうカーリングアイロンとがあるが,一台のアイロンでストレートとカーリング付けをおこなうことができないものとなっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,外形が円形となるパイプを二分割し,分割パイプを合わせた状態で外部に円弧状の押さえ板を配設することによってストレートとカーリング付けをおこなうことができる構成のものも提案されているが,構造が複雑になるとともに使い勝手がよくないものであった。」
【0004】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり,簡単な構成で使いやすくしながら一台でストレート及びカール付けをおこなうことができるヘアーアイロンを提供することを課題とするものである。」
(1-4)「【0014】ヘアーアイロンAは,アイロンパイプ1とアイロンパイプ1を加熱する加熱手段2を備えている。加熱手段2は電源コード13よりの通電にて加熱される電気ヒータである。」
(1-5)「【0015】外形が略円形となるアイロンパイプ1を受けパイプ3と押さえパイプ4とに二分割して受けパイプ3を把手14に固定している。押さえパイプ4を軸15によって把手14に枢支連結して受けパイプ3に対して回動自在にしている。受けパイプ3に加熱手段2を内蔵し,押さえパイプ4側に操作部5を一体化している。受けパイプ3及び押さえパイプ4は共に外周面が円弧面となり,合わせ面が平坦面となっている。押さえパイプ4の操作部5と把手14との間にはコイル状のバネ6が介装されて操作部5に外力を加えない状態では押さえパイプ4が受けパイプ3に合わされ,又,操作部5をバネ6に抗して指等で押さえることによって押さえパイプ4を軸15の周りに回動させて受けパイプ3から離間させることができるようにしている。」
(1-6)「【0016】これによれば,受けパイプ3と押さえパイプ4との当接面をストレートアイロンS面とし,合わされた受けパイプ3と押さえパイプ4の略円形となる外周面をカール付け面Cとしていて,操作部5を押さえて受けパイプ3を押さえパイプ4より離間し,受けパイプ3と押さえパイプ4との間に毛髪を導入して手を離すことでストレートアイロン面Sにおいてストレートアイロンをおこなうことができ,又,受けパイプ3と押さえパイプ4とを合わせた両パイプの外周面のカール付け面Cに毛髪を巻き付けることでカール付けをおこなうことができるのであり,このように一台でストレートとカール付けをおこなうことができるのである。」
(1-7)「【0017】この場合,片方の受けパイプ3にしか加熱手段2が存在していなくても受けパイプ3と押さえパイプ4とを合わせることから両方の該パイプ3,4を円滑に加熱することができるのであり,構成を簡素化し,使いやすくすることができるのである。」
(1-8)「【0018】受けパイプ3と押さえパイプ4の外周面には毛髪を巻き付けるためのブリスル7…を周方向に,又,パイプ長さ方向に間隔を隔てて設けていて,受けパイプ3と押さえパイプ4とを合わせた両パイプの外周面に毛髪を巻き付けやすくなり,一層,使いやすくなるのである。」
(1-9)「【0019】更に,ブリスル7…は受けパイプ3と押さえパイプ4の周方向に間隔を隔てて設けてあり,周方向のブリスル7…をブリスル7よりも低い連結部8にて連結していて,ブリスル7,7間に連結部8が存在して使用者の指が該パイプ3,4面に直接触れることを防止している。かつ,連結部8はブリスル7よりも低くしていることから,毛髪を巻き付ける場合に低くなった連結部8が邪魔になることがなくてよい。」
(1-10)「【0020】図6乃至図8に示すように,受けパイプ3及び押さえパイプ4にパイプ長さ方向にあり溝11を形成している。パイプ長さ方向に存在するブリスル7もしくは連結部8をパイプ長さ方向に長い帯状の接続部9にてパイプ長さ方向に接続している。接続部9の内面側にあり突部12を形成している。あり突部12をあり溝11に係入し,帯状の接続部9の外面aを受けパイプ3及び押さえパイプ4の外面bに略面一にしている。」
(1-11)「 【0023】更に,ブリスル7…は受けパイプ3と押さえパイプ4の各周方向に間隔を隔てて形成され,受けパイプ3と押さえパイプ4とにブリスル7が各三群形成され,円周方向において合計六群形成されているのであり,このように,六群のブリスル7…を受けパイプ3と押さえパイプ4とに配置することから,毛髪を巻き付けやすく,カール付けの後に引っ掛かり難くてほどきやすくなり,更に,六群のブリスル7…を受けパイプ3と押さえパイプ4の合わせ面の近傍に配置することで,使用中に受けパイプ3と押さえパイプ4との分割面を誤って手で触れるのを防止することができるのである。」
(1-12)「【0024】しかも,ブリスル7…は受けパイプ3及び押さえパイプ4の各周方向に間隔を隔てて形成されていて,図7に示すように,周方向にブリスル7…が多いもの(複数のブリスル7…群を各二山状にする)イと,図6に示すように,ブリスル7…が少ないものロをパイプ長さ方向に交互に配置していて,毛髪を巻き付けやすく,カール付けの後に引っ掛かり難くてほどきやすくなるのである。図6(b)に示すように,ブリスル7の高さhは約5mm,ブリスル7の幅wは約4mm,連結部8の高さtは約1.5mmであり,又,ブリスル7,7間のピッチpは約5mmであるが,これらの数値に制限されるものではない。」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記(1-1),(1-2),(1-4)~(1-10)によれば,甲第1号証には,次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「アイロンパイプ1と,アイロンパイプ1を電気コード13よりの通電にて加熱する加熱手段2を備えたヘアーアイロンであって,
外形が略円形となるアイロンパイプ1を受けパイプ3と押さえパイプ4とに二分割し,
押さえパイプ4を軸15によって把手14に枢支連結して受けパイプ3に対して回動自在とし,押さえパイプ4の操作部5と把手14との間にはコイル状のバネ6が介装されて操作部5に外力を加えない状態では押さえパイプ4が受けパイプ3に合わされ,又,操作部5をバネ6に抗して指等で押さえることによって押さえパイプ4を軸15の周りに回動させて受けパイプ3から離間させ,
受けパイプ3に加熱手段2を内蔵し,
受けパイプ3と押さえパイプ4との当接面をストレートアイロン面Sとし,受けパイプ3と押さえパイプ4とを合わせた両パイプの外周面をカール付け面Cとし,
受けパイプ3と押さえパイプ4の外面に毛髪を巻き付けるためのブリスル7を,前記外周面の周方向に,また,アイロンパイプ1の長さ方向に間隔を隔てて設け,
周方向のブリスル7は,ブリスル7よりも低い連結部8により連結し,
パイプ長さ方向に存在するブリスル7もしくは連結部8は両パイプの長さ方向に長い帯状の接続部9にて接続され,
接続部9の内面側に形成されるあり突部12を,両パイプの長さ方向に形成されるあり溝11に係入し,帯状の接続部9の外面aを両パイプの外面bに略面一にしている
ヘアーアイロン。」
ウ 引用例2には,以下の事項が記載されている。なお,記載事項の訳文は,パテントファミリーである特表2013-515556号公報の記載を援用した。
(2-1)
([請求項12]高温で加熱され,外周縁に長さ方向に沿って形成される多数の溝を備えたアイロンロールと,
下部が前記アイロンロールの溝に締結され,前記アイロンロールと結合するブラシとを含み,
前記ブラシは,プラスチック材質で下部の直径が上部の直径より大きく形成されて前記下部が前記アイロンロールの溝に締結され,上部が前記アイロンロールの上部に露出する
ことを特徴とするブラシ付アイロン。)
(2-2)
([80] 図8乃至図12を参照すれば,本発明の他の実施形態によるブラシ付アイロン200は取っ手(図示せず),アイロンロール120,加熱ヒーター130,ブラシ240,固定部(図示せず)を含む。)
(2-3)
([81] 前記ブラシ240は前記アイロンロール120の内部に結合される。前記ブラシ240は前記アイロンロール120の第1溝122に結合されて,使用者の毛髪に熱を伝える。また,前記ブラシ240の上部は,使用者の頭皮に接触するようになる。したがって,前記ブラシ240は熱伝導性が低いプラスチック,好ましくは耐熱性が良いナイロンまたはPBTで構成され,前記頭皮を熱から保護する。)
(2-4)
([82] 前記ブラシ240は複数個が一体に形成される一列単位で具備される。つまり,前記ブラシ240は,前記アイロンロール120の第1溝122の1本当たりに一体である一列ずつ結合される。また,前記ブラシ240は前記下部に段差240aを備え,結合時に前記段差240aが前記第1溝122に結合することによって,結合後,前記ブラシ240が離脱しないようにすることができる。そして,前記ブラシ240は前記アイロンロール120の第2溝123が形成される側の端部から,前記第1溝122に前記段差240aが結合されるようにして,一度に結合することができる。したがって,本発明の他の実施形態によるブラシ付アイロン200の生産性を向上することができる。)
エ 引用例2に記載された発明
上記(2-1)~(2-4)によれば,引用例2には,次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「高温で加熱され,外周縁に長さ方向に沿って形成される多数の溝122を備えた円筒形状のアイロンロール120と,
下部が前記アイロンロール120の溝122に締結され,前記アイロンロール120と結合するブラシ240とを含み,
前記ブラシ240は複数個が一体に形成される一列単位で具備され,
前記ブラシ240は,熱伝導性の低いプラスチックで,下部の直径が上部の直径より大きく形成されて前記下部が前記アイロンロール120の溝122に締結され,上部が前記アイロンロール120の上部に露出する
ブラシ付アイロン。」
4 判断
ア 本件発明1と引用発明1とを対比すると,引用発明1の「受けパイプ3」,「押さえパイプ4」,「電気コード13よりの通電にて加熱する加熱手段2」はそれぞれ,本件発明1の「棒状の第1の支持部材」,「棒状の第2の支持部材」,「電気を供給されて発熱する発熱部」に相当する。
また,引用発明1の受けパイプ3の「ストレートアイロン面S」は,本件発明1の「第1の支持部材に設けられ発熱部と熱的に接続される第1の熱部」に相当する。
また,引用発明1の「ブリスル7」及び「連結部8」は,上記(1-11)のブリスル7は「受けパイプ3と押さえパイプ4の合わせ面の近傍に配置することで,使用中に受けパイプ3と押さえパイプ4との分割面を誤って手で触れるのを防止することができるのである」という記載や,上記(1-9)の連結部8は「使用者の指が該パイプ3,4面に直接触れることを防止している」という記載からみて,熱不良導体であることは明らかである。
さらに,図6ないし図8及び関連する記載からみて,「接続部9」は「ブリスル7」及び「連結部8」と一体に構成されていると解されるから,同様に熱不良導体であると認められる。そうすると,受けパイプ3の「カール付け面C」には,「ブリスル7」,「連結部8」及び「接続部9」によって複数面が画定されていることになる。よって,上記「カール付け面C」の当該複数面は,本件発明1の「第1の支持部材に設けられ第1の熱部の反対側に位置しかつ発熱部と熱的に接続され,互いに間隔をあけて配置された複数の第3の熱部」に相当する。
イ そうすると,本件発明1と引用発明1とは少なくとも次の2点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では,第3の熱部の間隙に突設された略円柱状の複数の熱不良導体からなる第1のくし歯部と,第4の熱部の間隙に突設された略円柱状の複数の熱不良導体からなる第2のくし歯部とを備えるのに対して,
引用発明1では,受けパイプ3及び押さえパイプ4のカール付け面Cに設けた複数の熱不良導体からなるブリスル7を備える点。
<相違点2>
本件発明1では,第2の支持部材は,第1の支持部材に回転可能に設けられ,互いに拡開するように付勢され,かつ必要以上に拡開しないように拡開方向への回動が規制される(以下「常開構造」という。)とともに,第1の熱部と対向して発熱部と熱的に接続される第2の熱部と,第2の熱部の反対側に位置しかつ発熱部と熱的に接続され,互いに間隔をあけて配置された複数の第4の熱部を備えるのに対し,
引用発明1では,押さえパイプ4は,軸15によって把手14に枢支連結して受けパイプ3に対して回動自在であり,押さえパイプ4の操作部5と把手14との間にはコイル状のバネ6が介装されて操作部5に外力を加えない状態では受けパイプ3に合わされ,又,操作部5をバネ6に抗して指等で押さえることによって軸15の周りに回動させて受けパイプ3から離間させるもの(以下「常閉構造」という。)であり,加熱手段と熱的に接続される二つの熱部を備えず,加熱手段を内蔵する受けパイプ3と合わせることによって加熱されるものである点。
ウ 上記相違点について検討する。
まず,相違点1について検討するに,引用発明2のブラシ240は,熱部の間隙に突設された略円柱状の複数の熱不良導体からなるくし歯に相当するものであって,引用発明2は,上記相違点2に係る本件発明1の構成に対応する構成を備えるものである。
しかしながら,引用発明2のブラシ付アイロンは,毛髪を挟む二部材を備えないものであり,毛髪を挟むことなく,アイロンロール120の外周面に毛髪を当接させ,回転させながら,髪の長手方向に向かってヘアアイロンを下していくことでカール付けをおこなうものであるのに対して,引用発明1のヘアーアイロンは,受けパイプ3のストレートアイロン面S及び押さえパイプ4のストレートアイロン面Sの間に毛髪を挟み,その後,両パイプで毛髪を挟んだまま外周面のカール付け面Cに毛髪を巻き付けることで,カール付けを行うものであり,両者は,カール付けに係る使用形態が異なるものと認められる。
そうすると,引用発明1のブリスル7と引用発明2のブラシ240とは,カール付けに際し求められる機能が異なるものであるから,引用発明1に引用発明2のブラシ240に係る上記事項を適用する動機付けはないといえる。
実際のところ,引用発明1のブリスル7は,上記(1-12),図6,図7等に示されるように,高さ約5mm,幅7mmの山状の平板であって,パイプ周方向に間隔を隔てて六ないし十群配設されるものであり,毛髪を両パイプで挟むことなく,アイロンパイプ1の外周面にカール付けできる程度の力で当接させるには不十分な構造であることは明らかである。
また仮に,引用発明1に引用発明2のブラシ240に係る事項を適用するとしても,ブリスル7は連結部8と一体の技術手段であるから,上記適用によって,ブリスル7及び連結部8が連結部のないブラシ240に置き換わることになるが,連結部8は,上記(1-9)にも記載されるように,「使用者の指が外パイプ3,4面に直接触れることを防止している」という引用発明1の主要な効果を奏するものであるところ,これを廃するような上記適用には阻害要因があるといわざるを得ない。
よって,引用発明1をして,上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
エ 次に,相違点2について検討する。
特許異議申立人が,平成29年2月24日付け意見書において,以下に示す甲第4号証ないし甲第15号証を挙げて主張するとおり,ヘアアイロンを常開構造とすること,及び,ヘアアイロンにおいて毛髪を挟む二部材の双方に加熱手段と熱的に接続する熱部を備えるようにすることは,いずれも周知技術といえる。
しかしながら,引用発明1が常閉構造であるのは,加熱手段2を受けパイプ3のみに内蔵し,押さえパイプ4については受けパイプ3と合わせることによって,いわば間接的に加熱するからである。そして,これによって,上記(1-8)にも記載されるように,「構成を簡素化し,使いやすくすることができる」という効果を奏する。つまり,引用発明1の常閉構造は,加熱手段2を受けパイプ3のみに内蔵することと技術的に密接に関連する構成である。
そうすると,ヘアアイロンを常開構造とすることが周知技術であったとしても,引用発明1において,加熱手段2を受けパイプ3のみに内蔵する構成はそのままに,単に常開構造を適用することは,押さえパイプ4の加熱を不十分なものとしてしまうから,阻害要因があるといわざるを得ない。
また,常開構造に加えて,ヘアアイロンにおいて毛髪を挟む二部材の双方に加熱手段と熱的に接続する熱部を備えるようにすることが周知技術であっても,引用発明1において上記「構成を簡素化し,使いやすくすることができる」という効果を無視してまで,当該周知技術を適用する動機付けは見出せない。
さらに,甲第6号証ないし甲第15号証には,上述のように,常開構造のヘアアイロンにおいて,毛髪を挟む二部材の双方に,加熱手段と熱的に接続する熱部を備えるものが開示されているものの,これらはいずれも,本件発明1のように毛髪を挟む面と反対側の背面を利用してカール付けを行うものではなく,背面を積極的に加熱する必要がないものであって,その熱部は二部材それぞれに一つずつであり,本件発明1の第2の支持部材のように,第2の熱部に加えて,発熱部に熱的に接続された第4の熱部を備えるものではない。したがって,仮に引用発明1に上記周知技術を適用できたとしても,上記相違点2に係る本件発明1の構成を得ることはできない。
よって,引用発明1をして,上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
甲第4号証 特開平5-309011号公報
甲第5号証 特開平6-90813号公報
甲第6号証 特開2005-87258号公報
甲第7号証 特開2006-158756号公報
甲第8号証 特開2006-167148号公報
甲第9号証 特許第3609064号公報
甲第10号証 再公表特許2005-011434号公報
甲第11号証 米国特許公開第2011/0083695号明細書
甲第12号証 特開平8-214934号公報
甲第13号証 特許第2937499号公報
甲第14号証 特開2003-339422号公報
甲第15号証 特開2000-232911号公報
オ 以上より,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明,引用例2に記載された発明及び上記周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また,本件発明2~11は,本件発明1を更に減縮したものであるから,本件発明1についての判断と同様の理由により, 甲第1号証に記載された発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,平成29年2月24日付け意見書において,本件訂正請求で訂正された請求項1の「互いに拡開するように付勢され,かつ必要以上に拡開しないように拡開方向への回動が規制された」のうち「必要以上に」の記載は,具体的でなく,何が必要なのか不明確であり,特許法第36条第6項第2号の規定に違反している旨主張している。
しかしながら,当該記載の根拠は,本件明細書の【0024】にあり,これに図4,図5等を併せみれば,上記「必要以上に」という記載が,使用者がヘアアイロンを使用するのに差し支えるような広い開度(使用者が上側及び下側アーム部を掴むのに適さないような広い開度)に,ということを意味していることは,当業者にとって明らかである。
よって,特許異議申立人の上記主張には理由がない。
第4 むすび
以上のとおりであるから,上記取消理由通知に記載した取消理由によっては,本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2016-700582