特許拒絶査定不服審判
2022-020309
作業車両用の目標経路生成システム
- 審判番号
- 2022-020309
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-016874
- 請求日
- 2022年12月15日
- 審決日
- 2024年07月17日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
- 【請求人代理人】種村 一幸
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 貴雄
- 審判官 田々井 正吾
- 審判官 菊地 牧子
- 分類
- P18 .537-WYA(G05D) / P18 .121-WYA(G05D) / P18 .55 -WYA(G05D) / P18 .56 -WYA(G05D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-16874「作業車両用の目標経路生成システム」拒絶査定不服審判事件〔令和2年8月20日出願公開、特開2020-126307、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月1日の出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
・令和3年10月28日付け
拒絶理由を通知
・令和3年12月22日
意見書及び手続補正書の提出
・令和4年5月19日付け
拒絶理由を通知(最後の拒絶理由通知)
・令和4年7月14日
意見書及び手続補正書の提出
・令和4年9月15日付け
補正の却下の決定、及び拒絶をすべき旨の査定
・令和4年12月15日
審判請求書の提出
・令和5年9月21日
電話での応対
・令和5年10月17日付け
拒絶理由を通知(以下、この通知を「当審拒絶理由通知」という。)
・令和5年12月8~13日
電話及び電子メールでの応対
・令和5年12月22日
意見書及び手続補正書の提出
第2 令和4年9月15日付けの補正の却下の決定の適否
1 補正の却下に対する不服の申立
本拒絶査定審判は、請求の趣旨が「特願2019-16874について、令和4年9月15日(起案日)になされた補正却下決定ならびに原査定を取り消す。本願発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」というものであって、請求人は、原査定に加えて、令和4年9月15日付けの補正の却下の決定(以下「本件決定」という。)に対しても不服を申立てているものである。そして、本件審判の請求(令和4年12月15日)と同時に補正がされていないことから、請求人は「却下された補正(令和4年7月14日提出の手続補正書による補正)により補正された特許請求の範囲に基づいて特許性の判断をすることを求める。」との意味に解釈する(審判便覧61-05.1の2.(1))。
2 本件決定の理由の概要
本件決定は、令和4年7月14日に提出された手続補正書による補正(以下「原査定直前補正」という。)を却下したものであって、その理由は、概略、原査定直前補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1の「作業装置が通過する地点」について、新たに追加された「前記作業車両に対する前記作業装のオフセット量に基づいて定まる」との事項は、当該事項の追加により、請求項1の「傾斜情報」に「作業車両に対する作業装置のオフセット量に基づいて定まる作業装置が通過する地点」における傾斜情報であることの意味が含まれることになったものであって、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に、記載も示唆もされていないというものである。
3 本件決定の適否についての当審の判断
本願の当初明細書等の段落【0051】には、「所定区間ごとの高度情報が割り当てられた目標経路Pから所定区間ごとの作業面における車体ロール方向の勾配(傾斜情報)を求める勾配算出処理を行う(ステップ#4)。」と記載され、「作業面」は作業地での地面のことであって、作業装置がその方向に応じてロール方向に揺動するものである(段落【0005】)ことから、傾斜情報は、作業装置3が通過する作業面における勾配であると解されるし、また、段落【0060】には、「(7)作業地情報取得部51Cが取得する作業地Aの所定区間ごとの地形情報(車体ロール方向の傾斜情報)は、例えば、作業車両1が以前に同じ作業地Aにおいて同じ目標経路Pに従って走行したときに、作業装置3に備えられたロール角検出器が検出した作業装置3のロール角に基づくものであってもよい。」とも記載されている。
そして、その「作業装置が通過する地点」は「作業車両に対する作業装置のオフセット量に基づいて定まる」ことも、段落【0033】、【0036】の目標経路Pの生成に際しての作業経路P1とオフセット量Dの関係に関する記載内容から明らかである。
よって、上記2の請求項1の「作業装置が通過する地点」について、新たに追加された「前記作業車両に対する前記作業装のオフセット量に基づいて定まる」との事項は、当初明細書に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
よって、原査定直前補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反していないから、原査定直前補正が同項の規定に違反することを理由としてこれを却下した本件決定は不適法である。
4 本願の審判請求時における審理対象について
上記3により、本拒絶査定不服審判の審判請求時における審理対象は、請求人が求めるとおり、原査定直前補正により補正をした特許請求の範囲とすべきものである。(審判便覧61-05.1)
第3 当審で通知した拒絶の理由の概要
上記第2により、審理の対象を原査定直前補正により補正をした特許請求の範囲として、当審で令和5年10月17日付けで通知した拒絶の理由の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献1~2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開平9-128045号公報[原査定の引用文献A7。]
2.特開2017-211733号公報[当審で新たに引用した文献。]
第4 本願発明
本願の本願請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は、上記第3の拒絶理由の通知で指定した期間内である令和5年12月22日に提出された手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~4に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。(下線は補正箇所に付した。)
「 【請求項1】
作業地の所定区間ごとの地形情報を含む作業地情報を取得する作業地情報取得部と、
作業車両に揺動可能に装備された作業装置の作業幅に応じて並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路生成部と、
前記地形情報のうち前記作業車両に対する前記作業装置のオフセット量に基づいて定まる前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を前記作業車両の実走行前に補正し、前記作業車両の実走行中に検出される前記作業装置の揺動方向の傾斜に関する検出情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を再補正する目標経路補正部と、を有している作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項2】
前記作業地情報取得部は、前記所定区間ごとの高度情報が内挿された三次元の地形情報を取得し、
前記目標経路補正部は、前記目標経路に前記所定区間ごとの高度情報を割り当てて、前記所定区間ごとの前記作業装置の揺動方向の傾斜情報を取得する請求項1に記載の作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項3】
前記目標経路補正部は、前記目標経路と前記作業装置の揺動方向の傾斜情報とに基づいて、前記作業車両を前記目標経路に従って模擬的に走行させた上で前記作業経路の配置間隔を補正する3次元シミュレータである請求項1又は2に記載の作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項4】
前記目標経路補正部は、前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路における前記所定区間ごとの平面視作業幅を求め、求めた前記平面視作業幅に基づいて、隣接する前記作業経路における前記所定区間ごとの前記平面視作業幅のオーバーラップ量が設定値以上になるように前記作業経路の配置間隔を補正する請求項1~3のいずれか一項に記載の作業車両用の目標経路生成システム。」
第5 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付与した。)
ア 発明の詳細な説明
「【0007】
【課題を解決するための手段】本発明が適用される自動走行は、操舵輪と駆動輪を有する車体と、車体に装備される作業ユニットと、車体の姿勢を検知するセンサと、車体の進行速度を検知するセンサと、予め与えられる地図情報に基づいて車体の移動経路をプログラム制御する自律航法装置と、GPSアンテナを有するGPS航法装置とを備える。そして、本発明の経路生成方式は、オフラインのパソコンを用いて、自動走行機械が作業対象エリアを走行することによって得られる測量データに基づいて、地図データを作成する処理と、地図データに基づいて自動走行機械の作業対象エリア内での走行経路と作業の動作データを作成する処理を実行するものである。そして、作業対象エリア内での作業経路は直線経路で生成され、隣接する作業経路幅がオーバーラップ幅を有するように経路が生成される。また、作業対象エリア内に起伏地が存在する場合には、起伏地の傾斜によるオーバーラップ幅の変化を算出し、設定されたオーバーラップ幅を確保する経路間隔が生成される。さらに、作業対象エリアを複数の矩形のブロックに区切って、経路の自動生成を行なうこともできる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明を適用する自動走行機械である移動作業機械の平面図、図2は側面図である。自動走行機械である移動作業機械1は、例えば芝刈り機であって、車体を構成するメインフレーム10と、メインフレーム10を支持する2個の前輪24と2個の後輪22を有する。フレーム10の下部には、芝のカッティングユニット70,72が配設され、フレーム10の上部にはエンジン30が配設される。エンジンは油圧ポンプ100を駆動し、油圧ポンプ100が発生する圧油によって車輪の駆動及び操舵、芝刈りユニットの昇降及びカッターの駆動等が実行される。
・・・
【0023】図5は、本発明の自動走行機械の経路生成方式に使用するオフライン教示システムのハードウェア構成を示し、図6はソフトウェア環境を示す。システムのハードウェアは、パソコン本体800と、ディスプレイ810、キーボード820、マウス840等を備え、本体800はフロッピーディスクドライブ830とハードディスクドライブ832を有する。パソコン本体800内には、ソフトウェアとしてMS?DOS802、MS?ウインドウズ804、自動芝刈り機オフライン教示システムプログラム806等が搭載されている。
【0024】図7は、地形データ作成用パソコン800を用いて自動芝刈り機のオフライン教示プログラムを作成する処理のフローを示す。芝刈り機1は、作業対象となるエリアを有人運転により走行する。この走行にともない、芝刈り機のコントローラ200はGPS受信機510からの現在位置のデータを利用して、走行エリアを測量し、その測量データは、例えば、フロッピーディスクに収容されて、パソコン800に供給される。
【0025】パソコン800は、この測量データに基づいて地図データの作成フェーズに移行し、地形データ850を作成する。この地形データには障害物データ等も含まれる。次に、この地形データ850から地図データ852を作成する。地図データの作成が完了すると、この地図データは作業指示作成のためのフェーズに送られる。このフェーズにおいては、作業機械の経路パス854と作業のための動作データ856が作成される。作成された動作データは、フロッピーディスク等のメディアを介して芝刈り機のコントローラ200へ供給される。芝刈り機は供給された動作データに基づいて、自動走行と自動作業を実行する。
【0026】図8は操作のフロー図である。ステップST10でスタートした処理は、ステップST11でパソコン800の電源をオンして、ステップST12でオフライン教示ソフト806を立ち上げる。ステップST13で芝刈り機が作業エリアを走行して得た測量データ/障害物データをロードし、ステップST14で動作データ作成条件を入力する。ステップST15で動作データ856を作成し、ステップST16で動作データの追加、修正、変更等を行なう。ステップST17で動作データの追加等の完了を確認し、ステップST18で全動作データの作成完了を確認する。ステップST19で動作データ856をメディアに登録し、ステップST20でフロッピーディスク等を介して芝刈り機への動作データのロードを行なう。ステップST21でオフライン教示ソフト806を立ち下げ、ステップST22でパソコン800を立ち下げて、ステップST23で処理を完了する。
【0027】図9は動作データの生成処理のフロー図である。ステップST50でスタートした処理は、地図データ852、芝刈り機の性能データ860、経路生成条件861をとり込んで、ステップST51でスタート点からの直線経路を決定する。ステップST52で直線形路上の最大傾斜角を算出する。ステップST53で傾斜角から刈り幅を算出し、ステップST54で傾斜角から隣接する刈り幅のオーバーラップ幅を算出する。ステップST55で刈り幅とオーバーラップ幅から芝刈り機の経路間隔を算出し、ステップST56で経路間隔に合わせた折り返しパターンを作成する。通常は、直線経路の終点で、芝刈り機は半円弧の経路に沿って走行して折り返す。この円弧の半径は経路間隔に応じて変更される。ステップST57で次の経路の生成の必要性をチェックし、必要であれば、ステップST58で折り返しパターンに継続して、次の直線経路の生成ステップ(ステップST52)へ戻る。全ての経路の生成を確認し、ステップST59で動作データ856の生成を終了する。
【0028】図10は、作業エリアF1内にマウンドMを含むエリア内で、等間隔L1~L4の直線経路P1~P7で芝刈り作業を行なう場合の例を示す。芝刈り機がマウントMの中腹を通る直線経路を走行しつつ刈る場合には、平面上のオーバーラップ幅OLに比べて、傾斜面でのオーバーラップ幅OL10は狭くなる。傾斜の条件によっては、このオーバーラップ幅L10が狭くなりすぎて、芝の刈り残しを発生してしまう。
【0029】この問題を解決するために、本発明の経路作成処理では傾斜面の条件を考慮に入れて、図11に示すように不等間隔の直線経路P1~P4を設定する。直線経路P1からP2へ折り返すためには、周回経路R1を通過し、経路P2からP3へ折り返すためには、周回経路R2を通過する。経路P1とP2の間隔L1と経路P2とP3の間隔L2は等しくないので、折り返し経路R1,R2は等しくならない。」
イ 図面
(ア)図1
[図:0001412744000001.jpg]
(イ)図2
[図:0001412744000002.jpg]
(ウ)図5
[図:0001412744000003.jpg]
(エ)図6
[図:0001412744000004.jpg]
(オ)図7
[図:0001412744000005.jpg]
(カ)図9
[図:0001412744000006.jpg]
(キ)図10
[図:0001412744000007.jpg]
(ク)図11
[図:0001412744000008.jpg]
(2)引用文献1の記載事項の整理
ア 段落【0007】、【0024】~【0027】、図7の記載からみて、引用文献1には、作業対象エリアF1の地形データ850を含む地図データ852をとり込むことが記載されている。
イ 段落【0008】、【0025】、【0027】、図1~2、10の記載からみて、引用文献1には、芝刈り機1に配設された芝刈りユニット70の刈り幅に応じて、並列に並ぶ複数の直線経路Pnを含む自動走行用の移動経路パス854を生成することが、記載されている。
ウ 段落【0027】~【0029】、図9~11の記載からみて、上記イの移動経路パス854の生成は、地形データ850のうち芝刈りユニット70が通過する直線経路Pnである作業経路上における芝刈りユニット70のロール方向における最大傾斜角に基づいて、オーバーラップ幅L10が狭くなりすぎて芝の刈り残しを発生することのないよう、前記直線経路Pnである作業経路の経路間隔Lを自動走行を実行する前に算出し、経路間隔Lに合わせた直線経路Pnを含む移動経路パス854を生成するものである。
エ 段落【0023】、図5~6の記載からみて、上記ア~ウの処理内容は、芝刈り機1用の経路生成に使用するオフライン教示システムとなっている。
(3)引用発明1
上記(1)~(2)より、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「作業対象エリアF1の地形データ850を含む地図データ852をとり込む手段と、
芝刈り機1に配設された芝刈りユニット70の刈り幅に応じて、並列に並ぶ複数の直線経路Pnを含む自動走行用の移動経路パス854を生成する手段であって、前記地形データ850のうち前記芝刈りユニット70が通過する直線経路Pnである作業経路上における前記芝刈りユニット70のロール方向における最大傾斜角に基づいて、オーバーラップ幅L10が狭くなりすぎて芝の刈り残しを発生することのないよう、前記直線経路Pnである作業経路の経路間隔Lを自動走行を実行する前に算出し、経路間隔Lに合わせた直線経路Pnを含む移動経路パス854を生成する手段と、を有している芝刈り機1用の経路生成に使用するオフライン教示システム。」
2 引用文献2について
引用文献2[段落【0005】、【0051】、【0087】~【0094】、図3~6、11~14]には、自律走行経路生成システムにおいて、「作業機が走行機体から機体左右方向にオフセットした状態で作業する場合でも、自律走行経路を適切に生成することを目的」とし、「作業車両(走行機体2)に揺動可能に装備された作業装置(作業機3)の作業幅(作業幅L2)に応じて並列に並ぶ複数の作業経路(作業経路83a)を含む自動走行用の目標経路(自律走行経路83)」を生成すること(特に図14の自律走行経路83を参照。)、さらに「作業装置が通過する地点」が「作業車両に対する前記作業装置のオフセット量に基づいて定まる」こと(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)について、記載されている。
第6 当審で通知した拒絶の理由に対しての当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「作業対象エリア」は本願発明1の「作業地」に、以下同様に「地形データ」は「地形情報」に、「地図データ」は「作業地情報」に、「とり込む」は「取得する」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明1の「芝刈り機1」は本願発明1の「作業車両」に、以下同様に「配設された」は「装備された」に、「芝刈りユニット70」は「作業装置」に、「刈り幅」は「作業幅」に、「直線経路Pnである作業経路」は「並列に並ぶ複数の作業経路」に、「移動経路パス854」は「自動走行用の目標経路」に、それぞれ相当する。
ウ 引用発明1の「ロール方向」は本願発明1の「揺動方向」に、以下同様に「最大傾斜角」は「傾斜情報」に、「経路間隔L」は「配置間隔」に、「自動走行を実行する前に」は「実走行前に」に、「芝刈り機1用の経路生成に使用するオフライン教示システム」は、「作業車両用の目標経路生成システム」にそれぞれ相当する。
エ 引用発明1の「芝刈り機1に配設された芝刈りユニット70の刈り幅に応じて、並列に並ぶ複数の直線経路Pnを含む自動走行用の移動経路パス854を生成する手段であって、前記地形データ850のうち前記芝刈りユニット70が通過する直線経路Pnである作業経路上における前記芝刈りユニット70のロール方向における最大傾斜角に基づいて、オーバーラップ幅L10が狭くなりすぎて芝の刈り残しを発生することのないよう、前記直線経路Pnである作業経路の経路間隔Lを算出し、経路間隔Lに合わせた直線経路Pnを含む移動経路パス854を生成する手段」と、
本願発明1の「作業車両に揺動可能に装備された作業装置の作業幅に応じて並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路生成部」及び「前記地形情報のうち前記作業車両に対する前記作業装置のオフセット量に基づいて定まる前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を前記作業車両の実走行前に補正し、前記作業車両の実走行中に検出される前記作業装置の揺動方向の傾斜に関する検出情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を再補正する目標経路補正部」を対比すると、
両者は、目標経路を決定するという点では共通であるから、以下、この目標経路を決定する手段を「目標経路決定部」というと、
「作業車両に装備された作業装置の作業幅に応じて、並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路決定部であって、
前記地形情報のうち前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を決定することで、目標経路を生成する目標経路決定部」
という点に限り一致する。
(2)本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点
したがって、本願発明1と引用発明1は、次のアの点で一致し、イの点で相違する。
ア 一致点
作業地の地形情報を含む作業地情報を取得する作業地情報取得部と、
作業車両に装備された作業装置の作業幅に応じて、並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路決定部であって、
前記地形情報のうち前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を決定することで、目標経路を生成する目標経路決定部と、を有している作業車両用の目標経路生成システム。
イ 相違点
(ア)相違点1
作業地の地形情報が、本願発明1では所定区間ごとのものであるのに対して、引用発明1では所定区間ごとのものであるか否か不明である点。
(イ)相違点2
作業車両に装備された作業装置が、本願発明1では作業車両に対して揺動可能であるのに対して、引用発明1では作業車両に対して揺動可能であるか不明である点。
(ウ)相違点3
目標経路決定部に関して、本願発明1では、目標経路生成部にて「作業車両に揺動可能に装備された作業装置の作業幅に応じて並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成」した後に、目標経路補正部にて「作業車両に対する前記作業装置のオフセット量に基づいて定まる前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向」の傾斜情報に基づいて補正するのに対して、
引用発明1では、移動経路パス854を生成する手段にて「作業車両(芝刈り機1)に装備(配設)された作業装置(芝刈りユニット70)の作業幅(刈り幅)に応じて並列に並ぶ複数の作業経路(直線経路Pnである作業経路)を含む目標経路(自動走行用の移動経路パス854)」を、補正することなく、「作業装置(芝刈りユニット70)が通過する地点における作業装置(芝刈りユニット70)の揺動方向(ロール方向)」の傾斜角(最大傾斜角)に基づいて、直接に生成するものであり、また、「作業装置(芝刈りユニット70)が通過する地点」は「作業装置(芝刈りユニット70)のオフセット量に基づいて定まる」ものではない点。
(エ)相違点4
目標経路補正部における作業経路の配置間隔の補正について、本願発明1では、「作業車両の実走行前」に補正し、かつ「作業車両の実走行中に検出される前記作業装置の揺動方向の傾斜に関する検出情報に基づいて」再補正するのに対して、引用発明1では、目標経路(移動経路パス854)を生成する」ことが、作業車両の実走行前に(自動走行を実行する前に)行われるとしても、実走行中に行われることはない点。
(3)相違点についての検討
事案に鑑みて、上記相違点4から検討する。
上記目標経路補正部における作業経路の配置間隔の補正に関する相違点4に関し、本願発明1の「作業車両の実走行前」に補正し、かつ「作業車両の実走行中に検出される前記作業装置の揺動方向の傾斜に関する検出情報に基づいて」再補正するという点については、上記第5の2の引用文献2記載の技術的事項も、作業経路(作業経路83a)の生成を行った後にデータを作業車両に転送してから、作業車両が自律走行し、自律作業を行うものであるものの、自律走行、自律作業中に作業経路を補正するものではない。
したがって、上記の相違点4に係る本願発明1の構成については、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項のいずれも備えておらず、また、引用文献1~2の全体をみても見出すことはできず、本願出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1~2に記載された発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2 本願発明2~4について
本願発明2~4も、相違点4に係る本願発明1の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1~2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 原査定の概要
原査定(令和4年9月15日付けの拒絶をすべき旨の査定)の概要は次のとおりである。
A.(進歩性)本願の請求項1~4に係る発明は、以下の引用文献A1~A7に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
B.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が不備であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
<引用文献等一覧>
A1.特開平10-243708号公報
A2.特開2018-169826号公報
A3.特開2003-308121号公報
A4.特開2017-182373号公報
A5.特開2018-120491号公報
A6.国際公開第2016/009688号
A7.特開平09-128045号公報
第8 原査定の理由に対しての当審の判断
1 理由Aについて
令和5年12月22日提出の手続補正書による補正により、補正後の請求項1~4は、相違点4に係る本願発明1の構成を有するものとなり、当該構成は、原査定における引用文献A1~A7には記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1~4は、当業者であっても、原査定における引用文献A1~A7に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
2 理由Bについて
理由Bの具体的な概要は、以下のB1及びB2であるので、以下それぞれ検討する。
(1)理由B1
理由B1は、令和3年12月22日提出の手続補正書により補正をした請求項1に記載した「作業装置が通過する地点」と、前出する「複数の作業経路」との関係が不明であって、また、当該地点が複数の作業経路のそれぞれにおいていくつ存在しているのか定かでないため適否が疑問というものである。
これに対して、令和5年12月22日提出の手続補正書により補正をした請求項1においては、「複数の作業経路」は作業装置が通過する経路であるから、「作業装置」が通過する地点を含むことが明らかであるし、当該地点は複数の作業経路に当然に複数存在して、この地点における作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて作業経路の配置間隔を補正するのであるから、不適切であるとはいえない。
よって、理由B1により、特許請求の範囲に不備があるとはいえない。
(2)理由B2
理由B2は、令和3年12月22日提出の手続補正書により補正をした請求項1を引用する請求項2、4に記載した「前記車体ロール方向の傾斜情報」の事項が、「車体ロール方向の傾斜情報」の用語が前出しないことから、意味が不明であるというものである。
これに対して、令和5年12月22日提出の手続補正書により補正をした請求項2、4においては、いずれも「前記作業装置の揺動方向の傾斜情報」と記載されており、前出する「作業装置の揺動方向の傾斜情報」の用語と対応しているから、理由B2は解消した。
3 小括
上記1、2より、理由A(進歩性)及び理由B(明確性)によって原査定を維持することはできない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した拒絶の理由、及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-020309