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特許異議申立

2016-700467

電極、リチウム電池及び電極製造方法

審判番号
2016-700467
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2008-303095
登録番号
特許第5822424号(P5822424)
請求日
2016年05月23日
審決日
2017年11月14日
公報発行日
2018年02月23日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】三星電子株式会社
  • 【権利者代理人】阿部 達彦
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【権利者代理人】崔 允辰
  • 【権利者代理人】木内 敬二
  • 【異議申立人】磯 瑠里子
審判長/審判官
  • 審判長 板谷 一弘
  • 審判官 池渕 立
  • 審判官 河本 充雄
分類
P1652.55 -YAA(H01M) / P1652.536-YAA(H01M) / P1652.537-YAA(H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5、特許法第126条第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5822424号発明「電極、リチウム電池及び電極製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5822424号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。 特許第5822424号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5822424号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~17に係る特許についての出願(特願2008-303095)は、平成20年11月27日(パリ条約による優先権主張2008年 1月15日、韓国)に出願され、平成27年10月16日に特許権の設定の登録がされたものである。 その後、本件特許について、特許異議申立人磯瑠里子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、平成28年 9月30日付けで当審より取消理由(以下「取消理由」という。)が通知され、同年12月28日に特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、平成29年 3月 7日付けで当審より訂正拒絶理由が通知され、同年 5月 1日に特許権者より意見書が提出され、さらに、同年 5月19日付けで当審より取消理由(以下「決定の予告」という。)が通知され、同年 8月22日に特許権者より意見書及び訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。また、当該請求書による訂正請求を以下「本件訂正請求」という。)が提出され、本件訂正請求に対して申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はなされなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 請求の趣旨・本件訂正の内容 本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第5822424号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求めるというものである。 ここで、本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「集電体と、 前記集電体上に配された導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層と、 前記導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層上に配された活物質組成物を含む活物質層と、 前記導電層と活物質層が部分的だけで混合した混合活物質層と、を含んで、 前記混合活物質層が、活物質組成物及び網目構造体を含み、 前記網目構造体がカーボンナノチューブと水溶性結着剤とを含んで、 前記網目構造体で前記カーボンナノチューブの重量割合が結着剤より高い電極。」とあるのを、 「集電体と、 前記集電体上に配された導電性網目構造体を含む導電層と、 前記導電性網目構造体を含む導電層上に配され、活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層と、 前記導電層と活物質層が部分的だけで混合した混合活物質層と、を含んで、 前記混合活物質層が、活物質組成物及び網目構造体を含み、 前記網目構造体がカーボンナノチューブと水溶性結着剤とを含んで、 前記網目構造体で前記カーボンナノチューブの重量割合が結着剤より高い電極。」に訂正する。 また、請求項1を引用する請求項2~9も同様に訂正する。 2 訂正の可否について (1) 訂正の目的の適否 ア 訂正事項1は、請求項1に記載された「集電体上に配された導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層」を「集電体上に配された導電性網目構造体を含む導電層」と訂正するとともに、「導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層上に配された活物質組成物を含む活物質層」を「導電性網目構造体を含む導電層上に配され、活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層」と訂正するもの、つまり、「補湿剤」が含まれる電極内の層が、「導電層」であることに代えて「活物質層」であることに訂正しようとするものであり、最初に、当該訂正の目的について検討する。 イ まず、「補湿剤」が「電極」のどの層に含まれるものであるかに関して、本件特許明細書の記載を確認する。なお、下線は当審が付与したものであり、「…」は記載の省略を表す。 「【0020】 本発明の他の具現例によれば、前記網目構造体は、前記集電体と前記活物質組成物を含む層との間に導電層として配されることが望ましい。前記導電層と前記活物質組成物層とは別個の層で存在できる。または、前記導電層は、前記活物質層が前記導電層に適用される前のみに別個の層として存在し、結果的には単一の活物質層を形成できる。すなわち、電極製造が完了した後には、活物質組成物層が導電層に混合されうる。前記導電層が前記活物質層と区分されて別個の層として存在する場合、前記導電層は活物質組成物層と集電体とを結着させる接着層の役割を行える。前記導電層が前記活物質層と混合されて消滅する場合、電極製造過程で前記活物質組成物が導電層の網目構造体内部に広がっている状態で存在する。または、前記活物質組成物は導電層の一部、例えば、導電層の表面部分のみに配されうる。 【0021】 前記導電層の厚さは5~1000nmが望ましい。前記導電層の厚さが1000nmを超過すれば、電極の体積当たり容量密度が小さくなり、5nm未満は実際に具現され難い。 【0022】 活物質組成物に使われる電極活物質、導電材、界面活性剤及び/または溶媒は、当該技術分野で一般的に使われるものならば限定されない。前記活物質組成物は電極インクでありうる。前記電極インクがインクジェット方式で導電層に適用されて電極を形成できる。または、前記電極は、前記活物質組成物が集電体上にドクターブレードなどでコーティングされて製造されうる。」 「【0024】 本発明の他の具現例によれば、前記電極の製造方法は、集電体上にカーボンナノチューブと結着剤とを含む分散液がコーティングされてコーティング層が形成される工程と、前記コーティング層上に電極インクが印刷されて活物質層が形成される工程と、を含む。 【0025】 本発明の他の具現例によれば、前記分散液は分散剤をさらに含むことができる。前記結着剤が分散剤の役割まで行えば分散剤が必要ないが、結着剤の分散性が低い場合には別途の分散剤が追加されることが望ましい。前記分散剤は、当該技術分野で使われるものならば特別に限定されず、陽イオン性分散剤、陰イオン性分散剤及び/または両イオン性分散剤などが使われうる。 【0026】 前記カーボンナノチューブと結着剤とを含む分散液は、前記カーボンナノチューブと結着剤とを溶媒で混合した後、遠心分離させて沈殿物を除去した後で得られた分散液である。前記分散液を集電体上にコーティングしてコーティング層を形成する方法は、スプレーコーティングなどであるが、特別に限定されない。前記コーティング層には、カーボンナノチューブと結着剤とからなる網目構造体が含まれる。前記網目構造体は、分散剤をさらに含むことができる。前記コーティング層上に電極インクが印刷されれば、前記コーティング層に存在するカーボンナノチューブと結着剤とからなる網目構造体が前記電極インクと混合される。すなわち、カーボンナノチューブと結着剤とが電極インクから形成される活物質層の内部に収容されうる。 【0027】 電極インク及び分散液のコーティング回数、電極インク及び分散液の製造に使われる溶媒の種類によって、前記コーティング層と活物質組成物層(電極インク層)とは完全に混合されて、最終的な電極でコーティング層が別個の層としてそれ以上存在せず、すなわち、網目構造体と活物質組成物とが単一の活物質層を形成できる。または、前記コーティング層と活物質層とが部分的のみに混合されてコーティング層と活物質組成物層とが別個の層として存在することもある。」 「【0035】 まず、電極インクが製造される。電極インクは電極活物質、極性媒質、補湿剤を混合し、さらに導電材、結着剤、分散剤、リチウム塩及び/または緩衝剤などを添加して製造されうる。 【0036】 前記電極活物質としては、リチウムが含まれた金属酸化物、リチウムが含まれていない遷移金属酸化物及び/または炭素系材料などが挙げられる。前記リチウムが含まれた金属酸化物は、例えば、…LiFePO4などのLi-Fe系金属酸化物…である。… 【0037】 前記電極活物質が正極活物質であるか、または負極活物質であるかによって、前記電極活物質が含まれるインクジェットプリント用電極インクが正極インクまたは負極インクになる。前記電極活物質の含有量は電極インク総重量の0.1ないし10重量%であるが、必ずしもこれらの範囲に限定されない。前記極性媒質は、主成分として水が含まれ、補助成分としてメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、N-メチル-2-ピロリドンなどの極性有機溶媒が含まれうる。前記主成分という用語の意味は、極性媒質総重量の51%以上を占める成分という意味であり、残量が補助成分である。前記極性媒質の含有量は前記インク総重量の50ないし90重量%が望ましいが、必ずしもこのような範囲に限定されるものではない。 【0038】 前記補湿剤は、極性媒質の揮発性を低めるために使われ、グリコール類が使われうる。例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなどである。前記補湿剤の含有量は、前記電極インク総重量の10ないし40重量%が望ましいが、必ずしもこのような範囲に限定されるものではない。」 「【0049】 (電極インクの製造) 〈製造例1〉 水58.3g、エタノール5.7g、エチレングリコール30.9g、ジエチレングリコール1.9g、トリエタノールアミン0.38g、LiFePO4 1.52g、分散剤(Ciba、スイス、EFKA4580)0.19g及びカルボキシメチルセルロース(CMC)0.05gを混合して混合液を製造した。前記混合液を気孔サイズ5μmのメンブレンシリンジフィルターでろ過して電極インクを製造した。 【0050】 (電極コーティング用組成物の製造) 〈実施例1〉 蒸溜水30mlにカルボキシメチルセルロース(CMC)15mgを溶解させた後、多層カーボンナノチューブ(イルジンナノテク、韓国、CM-95)30mgを添加して超音波で5時間分散させた。次いで、前記溶液を10000rpmで10分間遠心分離させて沈殿物を除去し、カーボンナノチューブとカルボキシメチルセルロースとが分散された分散液を得た。 【0051】 (電極の製造) 〈実施例2〉 実施例1で製造された分散液を厚さ15μmのアルミニウム集電体上にスプレーコーティングした。使われた機器は、Fujimori Technology Laboratory Inc.のNVD-600であった。コーティング条件は、基板温度70℃、ノズル移動速度600mm/秒、ノズルと基板との間の距離10cm、塗布ピッチ10mm、塗布範囲15cm×15cm、噴射速度1ml/分であった。前記分散液のコーティング回数は15回であった。前記コーティングにより網目構造体を含むコーティング層が形成され、前記網目構造体の電子顕微鏡写真は図2に示されている。 【0052】 次いで、前記コーティングされたアルミニウム集電体を10cm×8cmサイズに切断して、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に付着した。次いで、前記コーティングされたアルミニウム集電体上に、前記製造例1で製造された電極インクを使用して8cm×6cmサイズのパターンを印刷した。印刷に使われたプリンタは、HP Deskjet 5550インクジェットプリンタであった。」 ウ 段落【0024】~【0026】の記載によれば、分散液は、カーボンナノチューブ、結着剤、分散剤と溶媒を含むものであり、段落【0050】を参照すれば、上記溶媒とは、蒸溜水を意味するものである。 そして、段落【0024】の記載によれば、分散液を集電体上にコーティングすることによって、コーティング層が形成され、段落【0026】によれば、コーティング層には、カーボンナノチューブと結着剤とからなる「網目構造体」が含まれる。 したがって、集電体上に分散液をコーティングすることによって形成されるコーティング層は、「網目構造体」が含まれる層であるところ、段落【0020】によれば、「網目構造体」は、集電体と「活物質組成物」を含む層との間に「導電層」として配されるものであるから、コーティング層は「導電層」とも表現されているものであることが理解できる。 よって、集電体上に分散液をコーティングすることによって形成される「導電層」は、「網目構造体」を含むものであるといえるが、本件特許明細書全体を精査しても、分散液に「補湿剤」が含まれることについて当業者が確認できるような記載は見出せないため、「導電層」に「補湿剤」が含まれているとはいえない。 エ 一方、段落【0035】、【0037】、【0038】、【0049】の記載によれば、電極インクは、電極活物質、極性媒質、「補湿剤」、導電材、結着剤、分散剤を含むものであり、段落【0022】の記載によれば、電極活物質、導電材、溶媒は「活物質組成物」に使われるものであるから、媒質と溶媒は同義であることを勘案して、こららの記載を総合すると、電極インクは、「活物質組成物」と「補湿剤」を含むものである。 そして、段落【0024】の記載によれば、電極インクをコーティング層上に印刷することによって「活物質層」が形成されるから、電極インクによって形成される「活物質層」には、「活物質組成物」と「補湿剤」が含まれているといえる。 なお、「活物質層」を形成するための電極インクに含まれる「補湿剤」が、電極製造後にも「活物質層」に残存している点について、本件特許明細書には明記されていないけれども、平成29年 8月22日付けで特許権者によって提出された意見書の第5頁15~21行に説明されているとおり、「補湿剤」として選択される物質は「エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールなど」(段落【0038】)であり、電極インクの乾燥の条件は「20~200℃の真空雰囲気で1分~8時間」(段落【0045】)であることを踏まえると、かかる乾燥の条件において、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールが蒸発しない条件を選択して「補湿剤」を活物質層に残存させ得るものであることは、当業者にとって自明といえる。 オ 以上から、本件特許明細書には、「活物質層」に「活物質組成物」とともに「補湿剤」が含まれることが記載されているが、「導電層」に「網目構造体」とともに「補湿剤」が含まれることは記載も示唆もされていない。 カ したがって、本件訂正前の請求項1の「導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層」及び「活物質組成物を含む活物質層」なる記載は、「補湿剤」が「活物質層」ではなく「導電層」に含まれるものとなっている点において、本件特許明細書の記載と整合していないところ、本件訂正によって、上記本件訂正前の記載をそれぞれ、「導電性網目構造体を含む導電層」及び「活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層」と訂正することによって、「補湿剤」が「導電層」ではなく「活物質層」に含まれることとなったので、請求項1の記載は、本件特許明細書の記載と整合するものとなった。 キ よって、訂正事項1は、本件特許明細書の記載と整合していない請求項1の記載を、本件特許明細書の記載と整合する記載とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 (2) 新規事項の追加と特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 上記(1)で検討したように、訂正事項1は、本件特許明細書の記載と整合していない請求項1の記載を、本件特許明細書の記載と整合する記載とするものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであることは明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 イ したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5条第9項で準用する特許法第126条第5項、第6項の規定に適合するものである。 (3) 一群の請求項について 訂正事項1に係る本件訂正前の請求項2~9は、請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~9に対応する訂正後の請求項1~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 (4) 訂正の適否についての結論 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同条第4項の規定に適合し、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、適法な訂正である。 したがって、請求項〔1~9〕からなる一群の請求項に係る本件訂正を認める。 第3 当審の判断 1 本件発明 上記第2で検討したように、本件訂正は認められたので、本件訂正後の請求項1~9に係る発明(以下、「本件発明1~9」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 集電体と、 前記集電体上に配された導電性網目構造体を含む導電層と、 前記導電性網目構造体を含む導電層上に配され、活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層と、 前記導電層と活物質層が部分的だけで混合した混合活物質層と、を含んで、 前記混合活物質層が、活物質組成物及び網目構造体を含み、 前記網目構造体がカーボンナノチューブと水溶性結着剤とを含んで、 前記網目構造体で前記カーボンナノチューブの重量割合が結着剤より高い電極。 【請求項2】 前記網目構造体が、分散剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の電極。 【請求項3】 前記網目構造体を形成するカーボンナノチューブが、電気的に互いに連結されていることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電極。 【請求項4】 前記網目構造体で3つ以上の他のカーボンナノチューブと電気的に互いに連結されたカーボンナノチューブが一つ以上存在することを特徴とする請求項3に記載の電極。 【請求項5】 前記カーボンナノチューブの縦横比が10以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電極。 【請求項6】 前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層ナノチューブ、束型カーボンナノチューブ及びこれらの組み合わせからなる群から選択された1つ以上であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電極。 【請求項7】 前記カーボンナノチューブの含有量が、前記活物質層総重量の0.01~20重量%であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の電極。 【請求項8】 前記網目構造体の炭素含有量は、前記活物質組成物の炭素含有量に比べて1.3倍以上高いことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電極。 【請求項9】 請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電極が採用されたことを特徴とするリチウム電池。」 2 取消理由通知に記載した取消理由について (1)本件訂正前の請求項1~9に係る特許に対して平成28年 9月30日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 ア 平成26年 9月24日付けの手続補正書による補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるから、請求項1~9に係る本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものであるので、取り消されるべきものである(以下、「取消理由1という。」)。 イ 本件特許の請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、請求項1~9に係る本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるので、取り消されるべきものである(以下、「取消理由2」という。)。 (2)取消理由1、2についての当審の判断 ア 本件訂正前の請求項1に係る発明は、「前記集電体上に配された導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層」と「前記導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層上に配された活物質組成物を含む活物質層」と「前記導電層と活物質層が部分的だけで混合した混合活物質層」の3層からなる構造(以下「3層構造」という。)を備えることを特定事項として含む、「電極」についての発明であるところ、「3層構造」を備える「電極」において、「導電層」が「保湿剤」を含むことについては、平成26年9月24日付けの手続補正書(甲第2号証)によって、請求項1に記載されることとなったものであるが、「導電層」が「保湿剤」を含むことは、当初明細書等に記載も示唆もされておらず、上記手続補正書による補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであった。 イ しかしながら、上記第2の2(1)で検討したとおり、本件訂正前の請求項1の「導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層」及び「活物質組成物を含む活物質層」なる記載は、「補湿剤」が「活物質層」ではなく「導電層」に含まれるものとなっている点において、本件特許明細書の記載と整合していないものであったところ、本件訂正によって、上記本件訂正前の記載をそれぞれ、「導電性網目構造体を含む導電層」及び「活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層」と訂正することによって、「補湿剤」が「導電層」ではなく「活物質層」に含まれることとなったので、請求項1と、請求項1を引用する請求項2~9の記載は、本件特許明細書の記載と整合するものとなった。 つまり、本件訂正によって、上記アに記載した、平成26年9月24日付けの手続補正書によって、請求項1に記載されることとなった、「3層構造」を備える「電極」において「導電層」が「保湿剤」を含むことについては、本件訂正後の請求項1と、請求項1を引用する請求項2~9に記載されないものとなった。 ウ したがって、本件訂正後の請求項1~9は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入していないものであり、また、本件訂正後の請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。 エ よって、上記(1)に記載した取消理由1、2は、いずれも、本件訂正によって解消したから、本件訂正後の請求項1~9に係る本件特許は、上記取消理由1、2によって取り消すことはできない。 3 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について (1)特許法第36条第4項第1号について ア 申立人は、特許異議申立書の第8頁10~17行において、本件特許の請求項1に係る、「導電層/混合活物質層/活物質層」の「3層構造」を備える「電極」であって、「導電層」が「導電性網目構造体及び補湿剤を含む」ものについては、実施例において何ら説明されていないから、本件特許明細書等の記載並びに出願時の技術常識を考慮しても、本件請求項1に係る3層構造を含む電極をどのように作るか、当業者といえども理解することはできず、したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない旨主張している。 イ しかしながら、上記第2の2(1)で検討したとおり、本件訂正前の請求項1の「導電性網目構造体及び補湿剤を含む導電層」及び「活物質組成物を含む活物質層」なる記載は、「補湿剤」が「活物質層」ではなく「導電層」に含まれるものとなっている点において、本件特許明細書の記載と整合していないものであったところ、本件訂正によって、上記本件訂正前の記載をそれぞれ、「導電性網目構造体を含む導電層」及び「活物質組成物及び補湿剤を含む活物質層」と訂正することによって、「補湿剤」が「導電層」ではなく「活物質層」に含まれることとなったので、請求項1と、請求項1を引用する請求項2~9の記載は、本件特許明細書の記載と整合するものとなった。 ウ したがって、本件訂正後の請求項1に記載された、3層構造を含む電極は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるから、本件訂正後の請求項1と、請求項1を引用する請求項2~9に係る本件発明に関して、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。 よって、申立人の上記アの主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり、平成29年 8月22日付けの訂正請求書による本件訂正は適法なものである。 また、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件訂正後の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできないし、他に本件訂正後の請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2016-700467

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    共通の審決分類: 536・H01M、537・H01M、55・H01M
  • 2018-700949異議申立 / 2019-11-06 / 訂正認容燃料電池スタック
    共通の審決分類: 536・H01M、537・H01M、55・H01M
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  • 2018-700663異議申立 / 2019-05-27 / 訂正認容電極端子およびその製造方法ならびに電池パック
    共通の審決分類: 536・H01M、537・H01M、55・H01M

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