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特許異議申立

2016-700433

半導体デバイス

審判番号
2016-700433
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-223588
登録番号
特許第5818959号(P5818959)
請求日
2016年05月16日
審決日
2018年06月04日
公報発行日
2018年10月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ローム株式会社
  • 【権利者代理人】豊岡 静男
  • 【権利者代理人】稲岡 耕作
  • 【権利者代理人】川崎 実夫
  • 【権利者代理人】香山 秀幸
  • 【権利者代理人】京村 順二
  • 【異議申立人】辰己 雄一
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 浩一
  • 審判官 小田 浩
  • 審判官 梶尾 誠哉
分類
P1651.121-YAA(H03K) / P1651.113-YAA(H03K) / P1651.537-YAA(H03K) / P1651.4 -YAA(H03K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の7第1号、特許法第181条第2項、特許法第120条の5第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条、特許法第39条
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5818959号「半導体デバイス」に関する特許異議の申立てについてされた平成29年 1月30日付け決定に対し,知的財産高等裁判所において請求項1及び3に係る部分の決定取消しの判決(平成29年(行ケ)第10062号,平成30年 3月26日)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5818959号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第5818959号の請求項1及び3に係る特許を維持する。 同請求項2,4及び5に係る特許について特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 1 特許第5818959号(以下,「本件特許」という。)は,平成22年5月27日に出願した特願2010-121375号の一部を平成25年11月15日に新たな特許出願とした特願2013-237035号の一部を平成26年10月31日に新たな特許出願とした特願2014-223588号に係るものであって,平成27年10月9日に特許の設定登録がされた。 2 その特許異議の申立ての期間内である平成28年5月16日に,その請求項1~10に係る発明の特許に対し,辰己雄一(以下,「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされた。 その後の手続は以下のとおりである。 平成28年 5月16日   特許異議申立書の提出 平成28年 7月 8日   取消理由通知 平成28年 9月 9日   意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 平成28年10月21日   意見書の提出(特許異議申立人) 平成28年11月 8日   取消理由通知(決定の予告) 平成29年 1月10日   意見書の提出(特許権者) 3 特許庁は,平成29年1月30日,「特許第5818959号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-5〕,〔6-10〕について訂正することを認める。特許第5818959号の請求項1,3に係る特許を取り消す。同請求項6ないし10に係る特許を維持する。同請求項2,4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。」との決定(以下,「一次決定」という。)をし,その謄本が同年2月9日に特許権者に送達された。 一次決定のうち,訂正の請求がされた一群の請求項である請求項6-10に係る部分(特許維持の部分)については,一次決定の謄本の送達により確定した(特許法第120条の7第1号)。 4 特許権者は,平成29年3月10日,一次決定のうち,請求項1,3に係る特許を取り消すとの部分の決定を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(平成29年(行ケ)第10062号)。 5 知的財産高等裁判所は,平成30年3月26日,「1 特許庁が異議2016-700433号事件について平成29年1月30日にした異議決定中,特許第5818959号の請求項1及び3に係る部分を取り消す。2 訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決(以下,「本件決定取消判決」という。)を言渡した。 その後,本件決定取消判決は確定した。 第2 一群の請求項のうち,本件決定取消判決により確定した請求項以外の請求項についての一次決定の取消について 本件決定取消判決の主文は 「1 特許庁が異議2016-700433号事件について平成29年1月30日にした異議決定中,特許第5818959号の請求項1及び3に係る部分を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。」 というものであるところ,本件決定取消判決が確定したことにより,一次決定のうち請求項1及び3に係る部分についてはその取消しが確定した。そして,訂正の請求がされた一群の請求項である請求項1~5のうち(なお,請求項1~5が一群の請求項であることは下記「第3の2(1)」で述べるとおりである。),請求項1及び3に係る部分の取消しが確定したから,特許法第181条第2項の規定により,一群の請求項のうち,その他の請求項2,4及び5に係る部分について,一次決定を取り消すこととする。 以下,本件特許の請求項1~5に係る発明についての特許に対する本件特許異議の申立てについて判断することとする。 第3 訂正の請求について 特許権者は,特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である平成28年9月9日に訂正請求書を提出し,本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項1~5について訂正することを求めた(以下,「本件訂正」という。)。 1 訂正の内容 本件訂正による訂正の内容は以下のとおりである。 ・訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「PN接合ダイオードを含むMOSFETと、 前記MOSFETに並列に接続され、前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く、2つの端子を有するユニポーラデバイスと、 前記MOSFETおよび前記ユニポーラデバイスに接続された出力線と、 前記PN接合ダイオードのアノードを前記ユニポーラデバイスの一方の端子に接続する第1のワイヤと、 前記ユニポーラデバイスの前記一方の端子を前記出力線に接続する第2のワイヤとを含み、 前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており、かつ両ワイヤのなす角度が鈍角である、半導体デバイス。」とあるのを, 「SiCを主とする半導体材料で作成され,PN接合ダイオードを含むSiCMOSFETと, 前記SiCMOSFETに並列に接続され,前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く,2つの端子を有するショットキーバリアダイオードと, 前記SiCMOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードに接続された出力線と, 前記PN接合ダイオードのアノードを前記ショットキーバリアダイオードのアノードに接続する第1のワイヤと, 前記ショットキーバリアダイオードの前記アノードを前記出力線に接続する第2のワイヤとを含み, 前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており,かつ平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である,半導体デバイス。」 と訂正する。 ・訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 ・訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「前記ユニポーラデバイスと前記出力線との間のインダクタンスにより生じる逆起電力が2.0V以上である、請求項1または2に記載の半導体デバイス。」とあるのを, 「前記ショットキーバリアダイオードと前記出力線との間のインダクタンスにより生じる逆起電力が2.0V以上である,請求項1に記載の半導体デバイス。」 と訂正する。 ・訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4を削除する。 ・訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 2 訂正の適否 (1)訂正事項1ないし5について 訂正事項1ないし5は,特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,訂正前の請求項1~5については,請求項2~5が請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから,請求項2~5は,訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであって,当該請求項1~5は特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項であるといえ,本件訂正は一群の請求項である請求項1~5について請求されているから,特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 3 小括 以上のとおりであるから,本件訂正による訂正事項1ないし5は,特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項1ないし5について訂正を認める。 第4 特許異議の申立てについて 1 本件訂正により訂正された訂正後の請求項1及び3に係る発明(以下,請求項1に記載された発明を「本件発明1」,請求項3に記載された発明を「本件発明3」といい,本件発明1及び本件発明3を併せて「本件発明」という。また,その明細書を,図面を含めて「本件明細書」という。)は,その訂正特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件発明1 「SiCを主とする半導体材料で作成され,PN接合ダイオードを含むSiCMOSFETと, 前記SiCMOSFETに並列に接続され,前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く,2つの端子を有するショットキーバリアダイオードと, 前記SiCMOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードに接続された出力線と, 前記PN接合ダイオードのアノードを前記ショットキーバリアダイオードのアノードに接続する第1のワイヤと, 前記ショットキーバリアダイオードの前記アノードを前記出力線に接続する第2のワイヤとを含み, 前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており,かつ平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である,半導体デバイス。」 本件発明3 「前記ショットキーバリアダイオードと前記出力線との間のインダクタンスにより生じる逆起電力が2.0V以上である,請求項1に記載の半導体デバイス。」 2 取消理由の概要 訂正後の請求項1及び3に係る特許に対して平成28年11月8日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。 (1)請求項1及び3に係る発明は,甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に記載された発明並びに周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,請求項1及び3に係る特許は取り消されるべきものである。 3 甲号証の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証(特開2010-027814号公報)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付与した。以下同じ。) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、生産性に優れたトランスファーモールドによる樹脂封止型の電力用半導体装置に関し、特に、小型で大電流化を実現するとともに、信頼性に優れたトランスファーモールドによる樹脂封止型の電力用半導体装置に関する。 【背景技術】 【0002】 大電流、高電圧で動作するとともに、動作に伴う発熱を外部に効率良く逃がす電力用半導体装置として、放熱板となる金属板に絶縁層としてのセラミック板を介して配線パターンが形成された基板に電力用半導体素子を搭載し、シリコーンゲルを介して熱硬化性樹脂で注型された電力用半導体装置がある(例えば、特許文献1参照)。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 実施の形態1. 図1は、本発明の実施の形態1に係る電力用半導体装置における回路基板上のトランスファーモールド樹脂を除いた状態の平面模式図である。 図2は、図1に示す電力用半導体装置において回路基板上にトランスファーモールド樹脂がある状態でのA-A断面の模式図である。 図1と図2とに示すように、本実施の形態の電力用半導体装置100は、金属放熱板1の一方の面に樹脂絶縁層2を設け、この樹脂絶縁層2における金属放熱板1が接合された面と対向する面に配線パターンを設けて形成した金属回路基板が用いられている。配線パターン上には、電力用半導体素子である、IGBT4とIGBT4に逆並列に接続されたダイオード5とが搭載され、配線パターンとはんだ6等により電気的に接続されている。また、IGBT4とダイオード5との上面電極は、配線手段であるワイヤーボンド7により、対応する配線パターンと電気的に接続されている。 【0014】 配線パターンには筒状外部端子連通部が、配線パターンに対して略垂直に接合されている。 具体的には、主回路であるIGBT4のコレクタ電極とダイオード5のアノード電極とに電気的に接続された第1の配線パターン3aには、第1の筒状外部端子連通部8aが接合され、主回路であるIGBT4のエミッタ電極とダイオード5のカソード電極とに電気的に接続された第2の配線パターン3bには、第2の筒状外部端子連通部8bが接続され、制御回路であるIGBT4のゲート電極に電気的に接続された第3の配線パターン3cには、第3の筒状外部端子連通部8cが接合され、制御回路であるIGBT4のエミッタ電極のみと電気的に接続された第4の配線パターン3dには、第4の筒状外部端子連通部8dが接合されている。」 「【0024】 次に、配線パターン上の所定の場所に設けられた素子搭載部に電力用半導体素子であるIGBT4およびダイオード5を、そして、配線パターン上の所定の場所に設けられる筒状外部端子連通部接合部に筒状外部端子連通部を、各々はんだ6を用いて接合する。具体的には、IGBT4とダイオード5と第1の筒状外部端子連通部8aとは第1の配線パターン3aに、第2の筒状外部端子連通部8bは第2の配線パターン3bに、各々接合する。そして、制御回路につながる第3の筒状外部端子連通部8cと第4の筒状外部端子連通部8dとは、各々第3の配線パターン3cと第4の配線パターン3dとに接合する。 【0025】 そして、配線パターンとIGBT4との間、IGBT4とダイオード5との間、ダイオード5と配線パターンとの間、の各間の導通が必要な箇所をアルミニウムのワイヤーボンド7で接続する。 次に、ワイヤーボンディングされた電力用半導体素子と筒状外部端子連通部とを搭載した金属回路基板は、金型にセットされ、トランスファーモールド法により、例えば、シリカ粉末が充填されたエポキシ樹脂系トランスファーモールド樹脂9で封止して、電力用半導体装置を完成する。」 「【0032】 本実施の形態では、電力用半導体素子に、IGBT4とダイオード5が用いられているが、電力用半導体素子は、これに限定されるものではなく、例えば、MOSFETやショットキーダイオードでもよく、またMOSFETの場合は、ダイオードが逆並列に接続されていなくても良い。また、電力用半導体素子の材料としては、一般的なシリコンのほかに、炭化珪素(SiC)等のワイドバンドギャップ半導体でも良い。 また、本実施の形態では、各電力用半導体素子間や電力用半導体素子と配線パターンとの間の接続、すなわち、配線手段にワイヤーボンド7を用いているが、この方法に限定されるものではない。 また、本実施の形態では、金属回路基板を用いているが、例えば、高熱伝導絶縁層であるセラミック板と、セラミック板の一方の面に設けられた銅箔の配線パターンと、セラミック板の他方の面に設けられた銅箔の金属放熱板からなるセラミック基板を用いても良い。」 【図1】及び【図2】には,IGBT4の上面電極及びダイオード5の上面電極が,ワイヤーボンド7を介して,第2の配線パターン3bに電気的に接続されていることが記載されていると認められる。 【図1】には,IGBT4の上面電極とダイオード5の上面電極とを繋ぐワイヤーボンド7の部分と,ダイオード5の上面電極と第2の配線パターン3bとを繋ぐワイヤーボンド7の部分のなす角度が平面視において鈍角であることが記載されていると認められる。 イ 甲第1号証発明について (ア)上記「MOSFETの場合は、ダイオードが逆並列に接続されていなくても良い。」(段落【0032】)との記載から,MOSFETとダイオードが逆並列に接続されている構成が排除されると読むことはできず,甲第1号証にはかかる構成を排除するとの記載や示唆はない。よって,甲第1号証において,MOSFETとダイオードが逆並列に接続されている構成も許容されると解される。 そして,IGBTとSiCMOSFETとは,スイッチングを行う三端子素子である点で共通しており,ダイオードとショットキーバリアダイオードは二端子素子である点で共通していることに照らせば,段落【0032】には,IGBTとダイオードを用いた電力用半導体素子の他に,SiCMOSFETを用いたもの,ショットキーバリアダイオードを用いたもの,SiCMOSFETとショットキーバリアダイオードとを用いたものなどの形態についても,記載されていると認められる。 (イ)もっとも,甲第1号証には,IGBT4とダイオード5との組合せに換えて,SiCMOSFETとショットキーバリアダイオードとの組合せとする際に,IGBTのどの電極とSiCMOSFETのどの電極とを対応付け,ダイオードのどの電極とショットキーバリアダイオードのどの電極とを対応付けて置換するかについては明記されていない。 しかし,甲第1号証におけるIGBT4及びダイオード5の組合せは,「IGBT4のコレクタ電極とダイオード5のアノード電極とに電気的に接続された第1の配線パターン3a」がIGBT4とダイオード5の下面にあり,「IGBT4のエミッタ電極とダイオード5のカソード電極とに電気的に接続された第2の配線パターン3b」が,IGBT4とダイオード5の上面をつなぐワイヤーボンド7と接続していることから(段落【0013】,【0014】,【図1】,【図2】),IGBTの上面に配置される電極がゲート電極とエミッタ電極で,下面に配置される電極がコレクタ電極であり,上面に配置されるダイオードの電極がカソード電極で,下面に配置される電極がアノード電極であると認められる。 また,IGBT4とダイオード5は逆並列に接続され(段落【0014】),ダイオードに流れる順電流の向きは,下面に配置されたアノード電極から上面に配置されたカソード電極への向きであることから,IGBT4に流れる電流の方向は,上面に配置されたエミッタ電極から下面に配置されたコレクタ電極の向きであると認められる。このように,エミッタ電極からコレクタ電極に向かって電流が流れるIGBTは,pチャネル型のIGBTであるから,甲第1号証のIGBT4は,pチャネル型のIGBTであると解される。 甲第1号証では,IGBT4の上面のエミッタ電極とダイオード5のカソード電極とに電気的に接続された第2の配線パターン3bから,ワイヤーボンド7を介して,IGBT4の下面のコレクタ電極とダイオード5のアノード電極とに電気的に接続された第1の配線パターン3aに流れる電流を,制御回路であるIGBT4のゲート電極に電気的に接続された第3の配線パターン3cに入力された信号に基づいてスイッチングする動作が行われる(段落【0014】,【0024】,【0025】)。そして,IGBT4とダイオード5との組合せを,SiCMOSFETとショットキーバリアダイオードとの組合せに置き換える場合に,動作を異ならせる理由はないから,IGBT4については,上面にゲート電極とソース電極が配置され,下面にドレイン電極が配置されるpチャネル型のSiCMOSFETで置き換え,ダイオード5については,上面にカソード電極が配置され,下面にアノード電極が配置されるショットキーバリアダイオードで置き換えるようにすると考えられる。 pチャネル型のSiCMOSFETにおける電流の流れる向きは,ソース電極からドレイン電極への向きであるから,このSiCMOSFETに寄生するpn接合ダイオードとSiCMOSFETとの接続は,SiCMOSFETのソース電極とpn接合ダイオードのカソード電極とが接続され,SiCMOSFETのドレイン電極とpn接合ダイオードのアノード電極とが接続されることになる。 したがって,このような置換えが行われる場合,第1のワイヤが接続されるpn接合ダイオードの一の電極及びショットキーバリアダイオードの一方の電極はいずれもカソード電極となると解される。 (ウ)以上によれば,甲第1号証には,以下の発明(以下,「甲第1号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「SiCを半導体材料とするSiCMOSFETと, SiCMOSFETに並列に接続された2つの電極を有するSiCショットキーダイオードと, SiCMOSFET及びSiCショットキーダイオードに接続された第2の配線パターンと, SiCMOSFETのソース電極とSiCショットキーダイオードのカソード電極と第2の配線パターンとを繋ぐワイヤーボンドとを含み, SiCMOSFETのソース電極とSiCショットキーダイオードのカソード電極とを繋ぐワイヤーボンドの部分と,SiCショットキーダイオードのカソード電極と第2の配線パターンとを繋ぐワイヤーボンドの部分のなす角度が平面視において鈍角である, 電力用半導体装置。」 (2)甲第3号証 ア 甲第3号証(高川,「パワーMOSFETの構造と応用分野」,トランジスタ技術,2004年8月号,p.139-140)には,その図2-1及び図2-2に,「パワーMOSFETにおいて,ソース電極とゲート電極を上面に設けること。」が記載されていると認められる。 イ 甲第3号証周知技術 前記アより,次の技術事項は周知技術と認められる。 「パワーMOSFETにおいて,ソース電極とゲート電極を上面に設けること。」 (3)甲第4号証 ア 甲第4号証(特開2009-183115号公報)には,図面とともに次の記載がある。 「【0019】 [背景技術]でも説明したとおり,SiC MOSFETをスイッチング素子として使用する場合は,図3に示すように,SiC MOSFET(130)に並列にSiC SBD(132)を接続して還流ダイオードとして使用する構成が検討されている。この構成によれば,SiC MOSFET(130)の寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧(約3V)とSiC SBD(132)の立ち上がり電圧(約1V)とが大きく違うため,リカバリ電流の少ないSiC SBD(132)にのみ逆方向電流を流す事ができ,寄生ダイオード(131)に逆方向電流が流れないようにできる。SiC SBDは,リカバリ電流とスイッチング損失を大幅に低減できる事が知られており,このようにSiC MOSFETによれば,Si MOSFETの場合と比べて,リカバリ電流抑制を簡単に実現できる。なお,Si MOSFETでは,並列に接続して還流ダイオードとして使用できるダイオードの立ち上がり電圧は,Si MOSFETの寄生ダイオードと同等であり,寄生ダイオードに逆方向電流が流れないようにする事はできない。」 【図3】には,SiC MOSFET130のソースとSiC SBD132のアノードを接続することが記載されていると認められる。 イ 前記アより,甲第4号証には次の発明(以下,「甲第4号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「SiCMOSFETとSiCショットキーバリアダイオードを並列に接続して還流ダイオードとして使用する場合に,SiCMOSFETのソースとSiCショットキーバリアダイオードのアノードを接続すること。」 (4)技術常識1 ア 甲第4号証には,図面とともに次の記載がある。 「【0016】 インバータ回路(120)は,6個のスイッチング素子(130)によって同期整流を行うように構成されている。上記スイッチング素子(130)は,ワイドバンドギャップ半導体を用いたユニポーラ素子(ここでは,SiC MOSFET)によって構成されている。インバータ回路(120)は,SiC MOSFET(130)の寄生ダイオード(131)を還流ダイオードとして使用し,同期整流を行う。なお,同期整流とは,図2に示すように,還流ダイオード(131)に逆方向電流が流れた際にSiC MOSFET(130)をオンにし,MOSFET側に逆方向電流を流す制御方法である。これにより逆方向電流が流れた際の導通損失を低減できる。」 「【0020】 一方,SiC MOSFET(130)の寄生ダイオード(131)と同じ構造のSiC pnダイオードのリカバリ電流は小さく,Si pnダイオードよりもスイッチング損失が桁違いに小さくなるため,本実施形態ではリカバリ電流,スイッチング損失を大幅に低減できる。」 【図2】には,SiC MOSFET130のソース電極側が寄生ダイオード131のアノードとなることが記載されていると認められる。 イ 甲第6号証(特開2008-017237号公報)には,図面とともに次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 Siに代わるパワー半導体デバイスとして,SiC半導体装置の開発が盛んである。このSiC半導体装置はSi半導体装置に比較して,高温での動作が可能であること,低損失での動作が可能であることなどの利点があり,より小型の半導体装置を実現することができる。しかしながら,SiC-FETをスイッチング素子として例えばモータ等の負荷を駆動制御する電力変換器等に用いる場合,SiC-FETに内在するダイオード(ボディダイオード)を還流ダイオードとして用いると,ボディダイオードによるバイポーラ動作によりSiC半導体装置の結晶劣化が進行すると考えられている(例えば,非特許文献1)。SiC半導体装置の結晶劣化が進行すると,ボディダイオードのON電圧が上昇し,さらにはSiC-FETそのものが破壊する可能性がある。このような問題点に対して,還流ダイオードをSiC-FETと逆並列に接続し,還流モード時にはボディダイオードを用いずに還流ダイオードに電流を流すことが示されている(例えば,特許文献1)。」 「【0011】 ここで,SiC-FET1のボディダイオード2のON開始電圧VBD_thに関して述べる。バイポーラ動作が結晶劣化の進行を進める原因と考えられることから,バイポーラ動作が開始する電流値に対応する電圧値をVBD_thとするのが自然である。そもそもバイポーラ動作とは電子とホールが同時に電気伝導を荷っている状態である。パワーデバイスにおいてはバイポーラ動作で使用するときは,電子濃度neとホール濃度nhがほぼ等しい状態である(例えば,非特許文献2)。 上記の電子濃度とホール濃度が等しいという条件と,PN接合ダイオードに関するショックレーモデル(例えば,非特許文献3)及び電荷制御モデル(例えば,非特許文献4)からSiC-FET1のボディダイオード2のON開始電圧VBD_thを以下の式で示すことが出来る。」 【図1】には,SiC-FET1のソース電極側がボディダイオード2のアノードとなることが記載されていると認められる。 ウ 技術常識1 前記ア及びイより,次の技術事項は技術常識(以下,「技術常識1」という。)と認められる。 「SiCMOSFETはPN接合ダイオードを寄生ダイオードとして含み,SiCMOSFETのソース電極側が寄生ダイオードのアノードとなること。」 (5)技術常識2 ア 甲第4号証には,図面とともに次の記載がある。 (ア)「【0003】 誘導負荷を駆動するインバータなどでは,スイッチング素子に対して並列にダイオードを接続している。このようなダイオードは還流ダイオードと呼ばれており,逆方向電流を流す働きをする。スイッチング素子としてSiC MOSFETを用いたインバータでは,SiC MOSFETに並列にSiCショットキーバリアダイオード(以下SiC SBD)を接続し,SiC SBDを還流ダイオードとして使用する構成が検討されている。」 「【0023】 (スイッチング素子選定条件) 本実施形態のインバータ回路(120)では同期整流によりSiC MOSFET(130)が通電し,従来の構成(SiC MOSFET(130)に並列にSiC SBD(132)を接続して還流ダイオードとして使用する構成,図3参照)ではSiC SBD(132)が通電する。ここで,SiC MOSFET(130),SiC MOSFET(130)の寄生ダイオード(131),SiC SBD(132)の電圧‐電流特性の概略を図4に示す。SiC MOSFET(130)は定抵抗特性を示す。SiC SBD(132)の立ち上がり電圧は約1V,SiC MOSFET(130)の寄生ダイオード(131)の立ち上がり電圧は約3Vである。なお,立ち上がり電圧は物性値により決まっており任意に設定できない。」 イ 甲第6号証には,図面とともに次の記載がある。 「【0004】 前記特許文献1に示されたSiC半導体装置は,還流ダイオードにSiCのショットキバリアダイオード(SBD)を用いている。SBDはON開始電圧がボディダイオードに比較して低いため,還流電流としてのSBDの通電電流値が小さいときはボディダイオードに還流電流の流れることは無い。」 ウ 技術常識2 前記ア及びイより,次の技術事項は技術常識(以下,「技術常識2」という。)と認められる。 「SiCショットキーバリアダイオードのON開始電圧は,SiCMOSFETの寄生ダイオードのON開始電圧よりも低いこと。」 4 判断 (1)取消理由通知に記載した取消理由について ア 本件発明1と甲第1号証発明との対比 (ア)甲第1号証発明の「SiCを半導体材料とするSiCMOSFET」は,技術常識1より,pn接合ダイオードを含むものであり,これは,本件発明1の「SiCを主とする半導体材料で作成され,PN接合ダイオードを含むSiCMOSFET」に相当すると認められる。 (イ)甲第1号証発明の「SiCMOSFETに並列に接続された2つの電極を有するSiCショットキーダイオード」は,技術常識2より,その動作電圧が寄生ダイオードの動作電圧よりも低いから,本件発明1の「前記SiCMOSFETに並列に接続され,前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く,2つの端子を有するショットキーバリアダイオード」に相当すると認められる。 (ウ)甲第1号証発明の「SiCMOSFET及びSiCショットキーダイオードに接続された第2の配線パターン」は,本件発明1の「前記SiCMOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードに接続された出力線」に相当すると認められる。 (エ)甲第1号証発明の「SiCMOSFETのソース電極とSiCショットキーダイオードのカソード電極とを繋ぐワイヤーボンドの部分」と,本件発明1の「前記PN接合ダイオードのアノードを前記ショットキーバリアダイオードのアノードに接続する第1のワイヤ」とは,前記(ア)より,「前記PN接合ダイオードの一の電極を前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極に接続する第1のワイヤ」である点で共通する。 (オ)甲第1号証発明の「SiCショットキーダイオードのカソード電極と第2の配線パターンとを繋ぐワイヤーボンドの部分」と,本件発明1の「前記ショットキーバリアダイオードの前記アノードを前記出力線に接続する第2のワイヤ」とは,「前記ショットキーバリアダイオードの前記一方の電極を前記出力線に接続する第2のワイヤ」である点で共通する。 (カ)甲第1号証発明の「SiCMOSFETのソース電極とSiCショットキーダイオードのカソード電極とを繋ぐワイヤーボンドの部分と,SiCショットキーダイオードのカソード電極と第2の配線パターンとを繋ぐワイヤーボンドの部分のなす角度が平面視において鈍角である」は,前記(エ)及び(オ)より,本件発明1の「前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており,かつ平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である」に相当すると認められる。 (キ)甲第1号証発明の「電力用半導体装置」は,下記相違点を除いて,本件発明1の「半導体デバイス」に相当すると認められる。 (ク)してみると,本件発明1と甲第1号証発明とは,次の点で一致し,また,相違する。 [一致点] 「SiCを主とする半導体材料で作成され,PN接合ダイオードを含むSiCMOSFETと, 前記SiCMOSFETに並列に接続され,前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く,2つの端子を有するショットキーバリアダイオードと, 前記SiCMOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードに接続された出力線と, 前記PN接合ダイオードの一の電極を前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極に接続する第1のワイヤと, 前記ショットキーバリアダイオードの前記一方の電極を前記出力線に接続する第2のワイヤとを含み, 前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており,かつ平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である,半導体デバイス。」 [相違点] 本件発明1においては,「前記PN接合ダイオードの一の電極」がアノードであり,かつ「前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極」がアノードであるのに対し,甲第1号証発明においては「前記PN接合ダイオードの一の電極」及び「前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極」がカソードである点。 イ 相違点についての判断 (ア)甲第1号証発明では,第1のワイヤが接続されるpn接合ダイオードの一の電極及びショットキーバリアダイオードの一方の電極は,いずれもカソード電極となる。 そして,甲第1号証には,IGBT4とダイオード5との組合せを,SiCMOSFETとショットキーバリアダイオードとの組合せに置き換える場合,置換えの前後で動作を異ならせる旨の記載や示唆はない。 また,甲第2号証ないし甲第8号証にも,甲第1号証発明において,IGBT4とダイオード5との組合せを,SiCMOSFETとショットキーバリアダイオードの組合せに置き換えた場合,置き換えの前後で動作を異ならせる旨の記載や示唆はない。 さらに,甲第1号証発明は,「トランスファーモールド樹脂で封止した電力用半導体装置は,主端子に大電流を流すことができるブスバーの外部配線が,ねじ止めやはんだ付けで固定されるため,電力用半導体装置の組み立て時において,主端子部におおきな応力が働く。この応力により,主端子の外側面とトランスファーモールド樹脂との接着面に隙間が発生したり,トランスファーモールド樹脂本体に微細なクラックが発生する等の不具合を主端子部に生じ,電力用半導体装置の歩留まりが低くなり生産性が低下するとともに,信頼性も低下する」(段落【0007】)ことを課題とし,「トランスファーモールド樹脂により封止された電力用半導体装置であって,主回路に接続される主端子に大電流を流すことのできる外部配線を接続しても,外部配線の接続により主端子部に発生する不良を低減でき,歩留まりが高く生産性に優れるとともに,信頼性の高い電力用半導体装置を提供すること」(段落【0008】)を目的とする発明であって,この目的を達成することと,SiCMOSFETの型や並列接続するショットキーバリアダイオードの接続方向を変更することは,無関係である。 したがって,当業者が,甲第1号証発明において,上記目的を達成するために,「前記PN接合ダイオードの一の電極」及び「前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極」をカソード電極からアノード電極に変更する動機付けがあるとはいえないから,[相違点]に係る本件発明1の構成を当業者が容易に想到できたものであるとは認められない。 (イ)さらに,本件発明は,MOSFETに寄生しているpn接合ダイオードに電流が流れると,MOSFETの結晶欠陥が拡大してデバイス特性が劣化し,特に,SiCMOSFETでは,寄生pn接合ダイオードに電流が流れると,オン抵抗が増大するという課題があったが,ショットキーバリアダイオードを並列接続してもpn接合ダイオードに流れてしまう現象が生じていることから(段落【0002】~【0004】,【0006】),本件発明1の構成を採用し,第2のワイヤに寄生するインダクタンスによって,pn接合ダイオードの順方向立ち上がり電圧以上の逆起電力が発生しても,pn接合ダイオードに電流が流れないようにする(段落【0014】)との作用効果を奏するものである。 しかし,甲第1号証発明の課題及び目的は,前記(ア)のとおりであり,甲第1号証には,ダイオード5やワイヤーボンド7にインダクタンスが寄生することについての記載や示唆はないことから,甲第1号証に接した当業者が,甲第1号証発明に本件発明の作用効果が期待されることを予想できたとはいえない。 (ウ)以上によれば,本件発明1を当業者が容易に想到できたとは認められない。 ウ 本件発明3と甲第1号証発明との対比 本件発明3と甲第1号証発明とは,前記「ア」と同様下記の点で一致し,また,相違する。 [一致点] 「SiCを主とする半導体材料で作成され,PN接合ダイオードを含むSiCMOSFETと, 前記SiCMOSFETに並列に接続され,前記PN接合ダイオードよりも動作電圧が低く,2つの端子を有するショットキーバリアダイオードと, 前記SiCMOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードに接続された出力線と, 前記PN接合ダイオードの一の電極を前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極に接続する第1のワイヤと, 前記ショットキーバリアダイオードの前記一方の電極を前記出力線に接続する第2のワイヤとを含み, 前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとが連続的に繋がっており,かつ平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である,半導体デバイス。」 [相違点1] 本件発明3においては,「前記PN接合ダイオードの一の電極」がアノードであり,かつ「前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極」がアノードであるのに対し,甲第1号証発明においては「前記PN接合ダイオードの一の電極」及び「前記ショットキーバリアダイオードの一方の電極」がカソードである点。 [相違点2] 本件発明3においては「前記ショットキーバリアダイオードと前記出力線との間のインダクタンスにより生じる逆起電力が2.0V以上である」のに対し,甲第1号証発明においては前記逆起電力の値が不明である点。 エ 相違点についての判断 上記[相違点1]は,上記「イ」で検討した[相違点]と同じであるから,[相違点1]に係る構成が容易に想到できるとはいえない。 そして,[相違点1]に係る構成が容易に想到できない以上,[相違点2]について検討するまでもなく,本件発明3を当業者が容易に想到できたとは認められない。 5 その他の特許異議申立ての理由について (1)特許請求の範囲の記載不備について 本件訂正により請求項1に記載された「両ワイヤのなす角度」は「平面視において両ワイヤのなす角度」となりその意味は明確になった。 したがって,特許請求の範囲の記載不備は解消した。 (2)特許法29条1項3号について 本件発明1と甲第1号証発明とを対比すると,前記「4(1)(ク)[相違点]」の点で相違する。 したがって,本件発明1は甲第1号証発明でない。 (3)特許法36条6項1号について 本件発明1及び3の課題は「MOSFETに寄生しているPN接合ダイオードに電流が流れるのを抑制する」というものであり(本件明細書段落【0002】,【0007】),MOSFETの材料がSiCであることと直接の関係はないから,本件発明1及び3が,発明の詳細な説明において「発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲」を超えるものということはできない。 (4)特許法39条2項について ア 甲第9号証発明 甲第9号証に記載された特許第5646034号の請求項1に係る発明(以下,「甲第9号証発明」という。)は,次のとおりである。 「SiCを半導体材料として用いたSiC-MOSFETと,ショットキーバリアダイオードと,前記SiC-MOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードが接合されたダイパッドと,前記SiC-MOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードが接続された外部端子とを含み,前記ダイパッド,前記SiC-MOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードが樹脂封止された半導体装置であって, 前記SiC-MOSFETのドレインが前記ダイパッドに接合され, 前記ショットキーバリアダイオードのカソードが前記ダイパッドに接合され, 前記SiC-MOSFETのソースから前記ショットキーバリアダイオードのアノードを経由して前記外部端子までステッチボンディングされた接続金属部材を含み, 前記接続金属部材における前記ショットキーバリアダイオードから前記外部端子までのインダクタンスが,前記接続金属部材における前記SiC-MOSFETから前記外部端子までのインダクタンスよりも小さいことを特徴とする,半導体装置。」 イ 本件発明1と甲第9号証発明との対比 本件発明1と甲第9号証発明とは次の点で相違する。 (ア)相違点1 本件発明1は「ダイパッド」についての限定がないのに対し,甲第9号証発明は「前記SiC-MOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードが接合されたダイパッド」を含み,「前記SiC-MOSFETのドレインが前記ダイパッドに接合され,前記ショットキーバリアダイオードのカソードが前記ダイパッドに接合され」る点。 (イ)相違点2 本件発明1は「樹脂封止」についての限定がないのに対し,甲第9号証発明は「前記ダイパッド,前記SiC-MOSFETおよび前記ショットキーバリアダイオードが樹脂封止された」点。 (ウ)相違点3 本件発明1は「平面視において両ワイヤのなす角度が鈍角である」のに対し,甲第9号証発明は接続金属部材の角度について限定がない点。 ウ 小括 したがって,本件発明1と甲第9号証発明とは同一であるとはいえない。 エ 本件発明3について 本件発明3についても,甲第9号証発明とは少なくとも上記相違点1ないし3で相違するから,甲第9号証発明と同一であるとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件特許の請求項1及び3に係る特許を取り消すことはできない。さらに,他に本件特許の請求項1及び3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また,本件特許の請求項2,4及び5に係る特許は,本件訂正により,削除されたため,本件特許の請求項2,4及び5に対して,特許異議申立人がした特許異議の申立てについては,対象となる請求項が存在しない。 よって,結論のとおり決定する。

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2016-700433

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