特許拒絶査定不服審判
2016-019671
ディジタル・ビデオの高速チャンネル切り換えの方法及び装置
- 審判番号
- 2016-019671
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-139730外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月28日
- 審決日
- 2017年12月19日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】トムソン リサーチ ファンディング コーポレイション
- 【請求人代理人】伊東 忠重
- 【請求人代理人】伊東 忠彦
- 【請求人代理人】大貫 進介
- 分類
- P18 .121-Z (H04N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-139730「ディジタル・ビデオの高速チャンネル切り換えの方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年11月 7日出願公開、特開2013-229921〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1 手続の経緯・本願発明
本願は、2007年(平成19年)7月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年7月28日、米国)を国際出願日とする出願である特願2009-521832号の一部を平成25年7月3日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成26年 4月 2日付け:拒絶理由の通知
平成26年10月 7日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年 1月 7日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)の通知
平成27年 7月13日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 2月 4日付け:拒絶理由の通知
平成28年 8月 9日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 8月25日付け:拒絶査定
平成28年12月28日 :審判請求書の提出
平成29年 1月12日付け:手続補正の指令
平成29年 2月15日 :手続補正書(請求の理由)の提出
そして、本願の請求項1乃至20に係る発明は、平成28年8月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至20に記載された事項により特定される発明であり、請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりの発明である。(なお、符号は当審で付したものである。)
「(A)ディジタル・ビデオの高速チャンネル切り換えの方法であって、
(B)通常ビデオ・データ及びチャンネル切り換えビデオ・データを受信する工程と、
(C)通常ビデオ・ストリームとチャンネル切り換えビデオ・ストリームとの間の同期化を行うために共通のシステム・クロックを使用して、前記通常ビデオ・データ及び前記チャンネル切り換えビデオ・データをそれぞれ通常ビデオ・ストリーム及びチャンネル切り換えビデオ・ストリームに符号化する工程とを含み、
(D)前記通常ビデオ・ストリーム及び前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、トランスポート・レベルで伝送するために別個に符号化され、
(E)前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低い解像度、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いフレーム・レート、及び前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いビット・レートのうちの少なくとも1つを有するチャンネル切り替えストリーム符号化ピクチャを含む、
(A)方法。」
2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である国際公開第2005/043784号(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付したものである。)
(ア)「本発明は、複数サービスが多重化された放送波の受信技術に関し、特に、携帯端末向けデジタルデータ放送の受信方法および受信装置に関する。」(段落0001)
(イ)「本発明によれば、高品質なバーストデータ(第1のストリーム)と低品質な連続データ(第2のストリーム)とが多重されて伝送される放送波を受信し再生する。その際、通常視聴時は、第1のストリームを間欠受信することで、消費電力を押さえることができ、ザッピング視聴時は、常時受信可能な連続データ(第2のストリーム)を再生することで、選局時の待ち時間を短縮することができる。」(段落0022)
(ウ)「図1は、本発明の受信装置が受信する放送局からの送信信号の生成方法を説明する図である。」(段落0028)
(エ)「1は、デジタル放送ヘッドエンド、2,3,4,5,6は、サービスS1,S2,S3,S4,S5のコンテンツソースである。それぞれのコンテンツは高品質と低品質、の2種類の品質にエンコードされ、高品質のIP(インターネットプロトコル)パケット7と、低品質のIPパケット7bが生成される。各コンテンツソースには、IPパケット7を生成する高品質用エンコーダと、IPパケット7bを生成する低品質用エンコーダが含まれ、それぞれ独立したリアルタイムエンコーダで構成される。高品質エンコーダには、リアルタイムを示す内部時計CLaを有する一方、低品質エンコーダにも、リアルタイムを示す内部時計CLbを有する。言うまでもなく、内部時計CLaの時刻と、内部時計CLbの時刻は、一致している。」(段落0029)
(オ)「高品質エンコーダは、映像信号及び/または音声信号を含むコンテンツを、平均伝送レート350kbpsでMPEG4圧縮することができるものである。低品質エンコーダは、同じコンテンツを、平均伝送レート64kbpsでMPEG4圧縮することができるものである。」(段落0031)
(カ)「処理部PP1では、図21に示すように、IPパケット7をDSM-CC(デジタルストーレッジメディアコマンドアンドコントロール)セクションに変換し、更にTS(トランスポートストリーム)パケットに変換する。」(段落0036)
(キ)「送られてきたIPパケット7bは、処理部PP2に送られ、処理部PP1と同様にして、IPパケットからTSパケットに変換される。」(段落0042)
(ク)「マルチプレクサ12は、処理装置8からの高品質のTSパケット、処理装置9からの低品質のTSパケット、PSI生成器18からのPSIのTSパケットの3種類の入力を受け、これらを一本のストリームに組み込む。」(段落0047)
(ケ)「マルチプレクサされたストリームは、伝送チャンネル14として、送信機13に渡され、送信機13を介して伝送路に送出される。」(段落0047)
(コ)図1には、コンテンツソース2乃至6からの各出力として、高品質のIPパケット7の列及び低品質のIPパケット7bの列が記載されている。
上記摘記事項に基づき、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)上記摘記事項(ア)乃至(ウ)によれば、
(a)デジタルデータ放送の受信装置が受信する放送局からの送信信号の生成方法であって、通常視聴時は、高品質なデータ(第1のストリーム)を受信し、ザッピング視聴時は、低品質なデータ(第2のストリーム)を再生することで、選局時の待ち時間を短縮することができるもの
が記載されているものと認められる。
(2)上記摘記事項(エ)及び(コ)によれば、
(b)各サービスのコンテンツソースには、高品質のIPパケットの列を生成する高品質用エンコーダと、低品質のIPパケットの列を生成する低品質用エンコーダが含まれ、それぞれ独立したリアルタイムエンコーダで構成され、前記高品質エンコーダ及び低品質エンコーダは、リアルタイムを示す内部時計CLa及びCLbをそれぞれ有し、前記CLaとCLbは時刻が一致していること
が記載されているものと認められる。
(3)上記摘記事項(オ)によれば、
(c)高品質エンコーダは映像信号等を含むコンテンツを平均伝送レート350kbpsでMPEG4圧縮することができるものであり、低品質エンコーダは同じコンテンツを平均伝送レート64kbpsでMPEG4圧縮することができるものであること
が記載されているものと認められる。
(4)上記摘記事項(カ)乃至(ケ)によれば、高品質のIPパケット及び低品質のIPパケットがTSパケットに変換され、当該高品質のTSパケット及び低品質のTSパケットが一本のストリームに組み込まれ、前記ストリームが送信機に渡され、送信機を介して伝送路に送出されるものであるから、
(d)上記高品質のIPパケット及び低品質のIPパケットはTSパケットに変換され、送信機を介して伝送路に送出されること
が記載されているものと認められる。
以上(1)乃至(4)に基づき、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「(a)デジタルデータ放送の受信装置が受信する放送局からの送信信号の生成方法であって、通常視聴時は、高品質なデータ(第1のストリーム)を受信し、ザッピング視聴時は、低品質なデータ(第2のストリーム)を再生することで、選局時の待ち時間を短縮することができ、
(b)各サービスのコンテンツソースには、高品質のIPパケットの列を生成する高品質用エンコーダと、低品質のIPパケットの列を生成する低品質用エンコーダが含まれ、それぞれ独立したリアルタイムエンコーダで構成され、前記高品質エンコーダ及び低品質エンコーダは、リアルタイムを示す内部時計CLa及びCLbをそれぞれ有し、前記CLaとCLbは時刻が一致しており、
(c)高品質エンコーダは映像信号等を含むコンテンツを平均伝送レート350kbpsでMPEG4圧縮することができるものであり、低品質エンコーダは同じコンテンツを平均伝送レート64kbpsでMPEG4圧縮することができるものであり、
(d)上記高品質のIPパケット及び低品質のIPパケットはTSパケットに変換され、送信機を介して伝送路に送出される、
(a)方法。」
3 対比
本願発明と引用発明を対比する。
(1)本願発明の構成(A)について
引用発明の構成(a)における「デジタルデータ放送の受信装置が受信する放送局からの送信信号の生成方法であって、」「ザッピング視聴時」の「選局時の待ち時間を短縮することができる方法」は、前記ザッピング視聴とはチャンネルを次々と切り換えることであるから、本願発明の構成(A)である「ディジタル・ビデオの高速チャンネル切り換えの方法」に相当する。
(2)本願発明の「通常ビデオ・ストリーム」及び「チャンネル切り換えビデオ・ストリーム」について
引用発明の構成(a)において、「高品質なデータ(第1のストリーム)」は、通常視聴時に受信するものであり、「低品質なデータ(第2のストリーム)」は、ザッピング視聴時に再生するものであるから、引用発明の「高品質」及び「低品質」が、それぞれ本願発明の「通常」及び「チャンネル切り換え」の場合に対応し、引用発明の構成(b)における「高品質のIPパケットの列」及び「低品質のIPパケットの列」は、それぞれ本願発明の構成(C)における「通常ビデオ・ストリーム」及び「チャンネル切り換えビデオ・ストリーム」に相当する。
(3)本願発明の構成(C)について
引用発明の構成(b)は、「各サービスのコンテンツソースには、高品質のIPパケットを生成する高品質用エンコーダと、低品質のIPパケットを生成する低品質用エンコーダが含まれ、それぞれ独立したリアルタイムエンコーダで構成され」ているから、本願発明の構成(C)における「通常ビデオ・データ及び前記チャンネル切り換えビデオ・データをそれぞれ通常ビデオ・ストリーム及びチャンネル切り換えビデオ・ストリームに符号化する工程」に相当する工程を備えている。
ただし、本願発明では、「通常ビデオ・ストリームとチャンネル切り換えビデオ・ストリームとの間の同期化を行うために共通のシステム・クロックを使用」する構成をとるものであるのに対し、引用発明では、「高品質エンコーダ及び低品質エンコーダは、リアルタイムを示す内部時計CLa及びCLbをそれぞれ有し、前記CLaとCLbは時刻が一致して」いる構成をとるものである点で、両者は相違する。
(4)本願発明の構成(B)について
引用発明の構成(b)における、高品質用エンコーダ及び低品質用エンコーダの各々が、エンコード処理を行うために、その処理対象であるコンテンツのデータ信号を受けるものであることは当然であるから、引用発明は、本願発明の構成(B)である「通常ビデオ・データ及びチャンネル切り換えビデオ・データを受信する工程」に相当する工程を備えているものといえる。
(5)本願発明の構成(E)について
引用発明は、「高品質エンコーダはコンテンツを平均伝送レート350kbpsでMPEG4圧縮することができるものであり、低品質エンコーダは同じコンテンツを平均伝送レート64kbpsでMPEG4圧縮することができるものである」(構成(c))から、本願発明の構成(E)における「前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、」「前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いビット・レート」(以下、「構成要素(α)」という。)「を有するチャンネル切り替えストリーム符号化ピクチャを含む」に相当する構成を備えている。
さらに、同構成(E)における構成要素(α)以外の構成要素である「前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低い解像度」及び「前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いフレーム・レート」についてみても、同構成(E)においては、上記構成要素(α)とあわせた三者のうちの「少なくとも1つを有する」ものとされているため、上記構成(c)は、本願発明の構成(E)である「前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低い解像度、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いフレーム・レート、及び前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いビット・レートのうちの少なくとも1つを有するチャンネル切り替えストリーム符号化ピクチャを含む」に相当するものといえる。
(6)本願発明の構成(D)について
引用発明は、「高品質のIPパケット及び低品質のIPパケットはTSパケットに変換され、送信機を介して伝送路に送出される」もの(構成(d))であり、かつ、前記高品質のIPパケット及び低品質のIPパケットは別個に符号化されているもの(構成(b))であるから、引用発明は、本願発明の構成(D)である「前記通常ビデオ・ストリーム及び前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、トランスポート・レベルで伝送するために別個に符号化され」に相当する構成を備えている。
すると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。
「(A)ディジタル・ビデオの高速チャンネル切り換えの方法であって、
(B)通常ビデオ・データ及びチャンネル切り換えビデオ・データを受信する工程と、
(C’)前記通常ビデオ・データ及び前記チャンネル切り換えビデオ・データをそれぞれ通常ビデオ・ストリーム及びチャンネル切り換えビデオ・ストリームに符号化する工程とを含み、
(D)前記通常ビデオ・ストリーム及び前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、トランスポート・レベルで伝送するために別個に符号化され、
(E)前記チャンネル切り換えビデオ・ストリームは、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低い解像度、前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いフレーム・レート、及び前記通常ビデオ・ストリームにおける通常ストリーム符号化ピクチャよりも低いビット・レートのうちの少なくとも1つを有するチャンネル切り替えストリーム符号化ピクチャを含む、
(A)方法。」
一方で、引用発明は、以下の点(以下、「相違点」という。)で本願発明と相違する。
「通常ビデオ・データ及び前記チャンネル切り換えビデオ・データをそれぞれ通常ビデオ・ストリーム及びチャンネル切り換えビデオ・ストリームに符号化する工程」(構成(C’))において、本願発明では、「通常ビデオ・ストリームとチャンネル切り換えビデオ・ストリームとの間の同期化を行うために共通のシステム・クロックを使用」する構成をとるものであるのに対し、引用発明では、「高品質エンコーダ及び低品質エンコーダは、リアルタイムを示す内部時計CLa及びCLbをそれぞれ有し、前記CLaとCLbは時刻が一致して」いる構成をとるものである点。
4 判断
そこで、上記相違点について検討する。
システム・クロックを装置等における内部時計により生成することは、一般的な周知慣用技術と認められる。
また、引用発明における両エンコーダにおいて時刻が一致している内部時計を用いることが、両者の符号化処理を同期して行うためであることは、当然の事項である。
そして、同じ情報を用いる際にそれらに係る構成を共通化することは技術分野を問わず慣用の技術と認められるから、高品質用エンコーダ及び低品質用エンコーダが、同じコンテンツソースからのコンテンツに対し時刻が一致した内部時計により生成されるシステム・クロックに基づきエンコードを行う、という引用発明の構成において、システム・クロックを共通とすることは、当業者により格別の困難なく想起されうるものである。
そして、本願発明の奏する効果についてみても、引用例及び周知慣用技術から当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、その出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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