特許拒絶査定不服審判
2016-017963
脳機能の低下を予防、改善する方法
- 審判番号
- 2016-017963
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-182230外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年12月01日
- 審決日
- 2017年01月30日
- 公報発行日
- 2017年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ノエビア
- 分類
- P18 .14 -Z (A61H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-182230号「脳機能の低下を予防、改善する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年3月16日出願公開、特開2015- 47403号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
I.手続の経緯
本願は、平成25年9月3日の出願であって、平成28年6月6日付け拒絶理由通知に対し、同年8月10日に意見書が提出されたが、同年9月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
II.本願発明
本願の各請求項に係る発明は、願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりものである(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】
顔面を刺激することにより、脳機能の低下を予防、改善する方法。
【請求項2】
脳機能が、高次脳機能である請求項1に記載した方法。
【請求項3】
高次脳機能が、認知、記憶、判断から選択される1種又は2種以上である請求項1又は請求項2に記載した方法。
【請求項4】
顔面の刺激がマッサージである、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した方法。
【請求項5】
顔面の刺激が、リンパ管を刺激するものである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した方法。
【請求項6】
顔面の刺激が、顔筋を刺激するものである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した方法。
【請求項7】
顔面の刺激が、顔筋を刺激した後、リンパ管を刺激するものである、請求項1~6のいずれか1項に記載した方法。」
III.当審の判断
(1)人間を治療する方法に該当するか否かについて
本願発明は、「顔面を刺激すること」、「脳機能の低下を予防、改善する」ことを発明特定事項として含む発明であるところ、上記II.の特許請求の範囲の記載をみても、当該「刺激」や「予防、改善」の対象から人間を排除する旨の特定はないことから、本願発明の「方法」は、人間に対して行われる「方法」を包含する発明である。
また、特許請求の範囲の【請求項2】の記載によれば、本願発明における「脳機能の低下」には、高次脳機能の低下が含まれるものといえ、さらに、明細書段落【0009】の「本発明において、脳機能とは、特に高次脳機能をさす。具体的には、言語や行為、知覚、認知、記憶、注意、判断、情動など脳で営まれる様々な機能であり、記憶や注意・遂行機能・情動の障害や、失語、失認、失行といった症状が現れる。」の記載を参酌すると、高次脳機能の低下に伴い、「記憶や注意・遂行機能・情動の障害や、失語、失認、失行といった症状が現れる」というのであるから、本願発明の「脳機能の低下」は、「記憶や注意・遂行機能・情動の障害や、失語、失認、失行といった症状が現れる」ような病気の一種と解される。
そうすると、本願発明は、人間の「顔面を刺激」し、それにより、当該人間の「脳機能の低下を予防、改善する」ものであるから、「脳機能の低下」という病気の進行を防ぎ、また、該病気を軽減するという点で、人間を治療する方法に該当する。
(2)請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「治療とは通常『病気やけがをなおすこと。また、そのために施す種々のてだて。』(参考資料1、広辞苑第5版1758p)と定義されています。すなわち、治療の対象となるのは、病気やけがをしている人間であり、健常者は含まれません。・・・本出願人は健常者のQOLを向上させるマッサージ方法に関する発明は、29条第1項柱書でいう『人間を治療する行為』に該当するとは考えられません。・・・本願発明は29条第1項柱書きに規程する要件を満たすものであります。」などと主張する。
しかしながら、本願発明において、「刺激」処置の対象者に関し何らの特定はないのであるから、「治療の対象となるのは、病気やけがをしている人間であり、健常者は含まれません。」との主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とはいえない。
また、本願発明は、「脳機能の低下を予防」するのみならず、「改善する」事項をも発明特定事項とする発明であるから、本願発明における「刺激」処置の対象者には、少なくとも、改善前のより悪い状態から、改善後のより良い状態へと、「脳機能の低下」について「改善」を必要とする人間が含まれていることは明らかである。
そして、このような改善前のより悪い状態にある人間を「健常者」と称するか否かは、単なる表現上の差違にすぎず、しかも、斯かる人間に対し改善前のより悪い状態を脱すべく「刺激」処置を施し、「脳機能の低下を」「改善する」ことは、少なくとも病気の軽減といい得るものであるから、本願発明が人間を治療する方法に該当することは、上記(1)で示したとおりである。
よって、「本願発明は29条第1項柱書きに規程する要件を満たすものであります。」という請求人の主張は、「広辞苑」における記載内容にかかわらず、採用できない。
(3)まとめ
したがって、本願発明は、人間を治療する方法に該当するので、特許法第29条第1項柱書きにいう「産業上利用することができる発明」に該当しない。
IV.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当しないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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