特許拒絶査定不服審判
2016-017602
研磨用組成物、及び半導体基板の製造方法
- 審判番号
- 2016-017602
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-027495外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月25日
- 審決日
- 2018年05月21日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社フジミインコーポレーテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 27495「研磨用組成物、及び半導体基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月22日出願公開、特開2013-165173、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年2月10日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 3月 4日付け:拒絶理由通知書
平成28年 4月18日 :意見書、手続補正書の提出
平成28年 9月 1日付け:拒絶査定
平成28年11月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成29年 3月24日 :上申書の提出
第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-5に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献一覧
1.特開2008-53415号公報
第3 審判請求時の補正について(下線は、当審において付与した。以下同じ。)
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1を「B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下であること」とする補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるか、また、「B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下であること」という事項は、当初明細書【表1】に記載されているから、当該補正は新規事項を追加するものではないかについて検討すると、当該補正は補正前の請求項1の「B/Aの値が1以上かつ7000未満であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ1500000未満であること」を、より範囲の狭い「B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下であること」とする補正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、当初明細書【表1】の「実施例A3」の欄に「B/A」および「C/A」として「447」および「109000」が記載されているから、「B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下であること」という事項は、当初明細書に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-5に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明5」という。)は、平成28年11月25日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
半導体基板の両面を研磨する用途に用いられる研磨用組成物であって、
二酸化ケイ素、含窒素水溶性高分子、及び塩基性化合物を含有し、
前記二酸化ケイ素は、BET法で測定される比表面積から求められる平均一次粒子径が40nm以上であり、
研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数をAとし、
含窒素水溶性高分子の単量体単位数をBとし、
塩基性化合物の分子数をCとしたとき、
B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下であることを特徴とする研磨用組成物。
【請求項2】
前記含窒素水溶性高分子の重量平均分子量が1500000未満である請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記二酸化ケイ素の真比重が1.7以上である請求項1又は請求項2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記塩基性化合物としてカリウム化合物及び第四級アンモニウム化合物を含む請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いて研磨対象物としての半導体基板を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする半導体基板の製造方法。」
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、半導体ウエハを研磨する用途で主に使用される研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いた研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウエハ等の半導体ウエハの研磨は予備研磨と仕上げ研磨の少なくとも二段階に分けて行われる。そのうち予備研磨は、更なる高品位化及び効率化を目的としてさらに二段階以上に分けて行われることがある。仕上げ研磨で使用可能な研磨用組成物として、例えば特許文献1に記載の研磨用組成物が知られている。特許文献1の研磨用組成物は、水、コロイダルシリカ、ポリアクリルアミドやシゾフィランのような水溶性高分子、及び塩化カリウムのような水溶性塩類を含有している。
【0003】
ところで近年、半導体デバイスのデザインルールが細線化するに従って、研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面で観察される欠陥の一種であるLPD(light point defects)について、半導体デバイスの性能に影響するとして、これまで問題とされていなかった小さいサイズのものまで低減が要求されている。具体的には、これまで問題とされていたLPDは0.12μm以上の大きさのものであり、これはウエハ表面に付着したパーティクルが主な原因であるため、洗浄技術の向上によってかなりの低減がなされている。ところが、それよりもサイズの小さいLPD(>0.065μm)は主に予備研磨時にウエハ表面に生じる傷によるもの、つまり研磨加工に起因するものであり、これは仕上げ研磨や洗浄によっては除去できない虞がある。この点、特許文献1の研磨用組成物を用いて仕上げ研磨を行った場合であっても、研磨加工に起因するLPDの数が従来に比べて低減されることはない。
【特許文献1】特開平02-158684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、研磨用組成物を用いて研磨した後の研磨対象物表面における研磨加工に起因するLPDの数を低減することが可能な研磨用組成物及びその研磨用組成物を用いた研磨方法を提供することにある。」
「【0009】
以下、本発明の一実施形態を説明する。
本実施形態の研磨用組成物は、所定量の水溶性高分子とアルカリと砥粒を水と混合することにより製造される。従って、本実施形態の研磨用組成物は、水溶性高分子、アルカリ、砥粒及び水からなる。この研磨用組成物は、シリコンウエハ等の半導体ウエハを研磨する用途で使用されるものであり、特にウエハの予備研磨、予備研磨が二段階以上に分けて行われる場合には最終段階の予備研磨で使用されるものである。
【0010】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミドから選ばれる少なくとも一種類である。これらの水溶性高分子は、ウエハ表面に親水膜を形成する作用を有している。この親水膜は、砥粒をはじめとする粗大粒子からウエハに与えられるウエハ表面に対して垂直方向の力を水平方向に分散する働きをし、その結果、研磨時のウエハ表面における欠陥の発生が抑制され、研磨加工に起因するLPDの数が低減するものと推測される。
【0011】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子がポリビニルピロリドンである場合には、ポリN-ビニルホルムアミドである場合に比べて、研磨加工に起因するLPDの数を低減することができる。従って、研磨用組成物に含まれる水溶性高分子はポリビニルピロリドンであることが好ましい。
【0012】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、0.0003g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.001g/L以上、さらに好ましくは0.003g/L以上、最も好ましくは0.005g/L以上である。水溶性高分子の含有量が多くなるにつれて、欠陥の発生を抑制するのに十分な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために、研磨加工に起因するLPDの数はより大きく低減する。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.0003g/L以上、さらに言えば0.001g/L以上、もっと言えば0.003g/L以上、さらにもっと言えば0.005g/L以上であれば、研磨加工に起因するLPDの数を大きく低減することができる。
【0013】
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量はまた、0.1g/L以下であることが好ましく、より好ましくは0.02g/L以下、さらに好ましくは0.015g/L以下、最も好ましくは0.01g/L以下である。水溶性高分子による親水膜は研磨用組成物によるウエハの研磨速度(除去速度)の低下を招く。そのため、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が少なくなるにつれて、親水膜による研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量が0.1g/L以下、さらに言えば0.02g/L以下、もっと言えば0.015g/L以下、さらにもっと言えば0.01g/L以下であれば、親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。
【0014】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子の重量平均分子量は6,000以上であることが好ましい。水溶性高分子の重量平均分子量が大きくなるにつれて、欠陥の発生を抑制するのに十分な親水膜がウエハ表面に形成されやすくなるために、研磨加工に起因するLPDの数はより大きく低減する。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の重量平均分子量が6,000以上であれば、研磨加工に起因するLPDの数を大きく低減することができる。
【0015】
研磨用組成物に含まれる水溶性高分子の重量平均分子量はまた、4,000,000以下であることが好ましく、より好ましくは3,000,000以下である。水溶性高分子の重量平均分子量が小さくなるにつれて、親水膜によるウエハの研磨速度の低下はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物中の水溶性高分子の重量平均分子量が4,000,000以下、さらに言えば3,000,000以下であれば、親水膜による研磨速度の低下を強く抑制することができる。
【0016】
本実施形態の研磨用組成物に含まれるアルカリは、例えば、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミン、第4級アンモニウム塩のいずれであってもよい。これらのアルカリは、ウエハを化学的に研磨する作用を有し、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。
【0017】
研磨用組成物に含まれるアルカリがアルカリ金属水酸化物又は第4級アンモニウム塩である場合には、その他のアルカリを用いた場合に比べて、研磨用組成物によるウエハの研磨速度が大きく向上するとともに、研磨後のウエハの表面粗さの増大が抑制される。従って、研磨用組成物に含まれるアルカリは、アルカリ金属水酸化物又は第4級アンモニウム塩であることが好ましい。
【0018】
研磨用組成物中のアルカリの含有量は、0.1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.25g/L以上、さらに好ましくは0.5g/L以上である。アルカリの含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において、研磨用組成物中のアルカリの含有量が0.1g/L以上、さらに言えば0.25g/L以上、もっと言えば0.5g/L以上であれば、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0019】
研磨用組成物中のアルカリの含有量はまた、5g/L以下であることが好ましく、より好ましくは4g/L以下、さらに好ましくは3g/L以下である。アルカリは、研磨後のウエハの表面粗さの増大を招く虞がある。そのため、研磨用組成物中のアルカリの含有量が少なくなるにつれて、研磨後のウエハの表面粗さの増大はより強く抑制される。この点において、研磨用組成物中のアルカリの含有量が5g/L以下、さらに言えば4g/L以下、もっと言えば3g/L以下であれば、研磨後のウエハの表面粗さの増大を強く抑制することができる。
【0020】
本実施形態の研磨用組成物に含まれる砥粒は、例えば、コロイダルシリカ及びフュームドシリカのいずれであってもよい。これらの砥粒は、ウエハを機械的に研磨する作用を有し、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を向上させる働きをする。
【0021】
研磨用組成物に含まれる砥粒がコロイダルシリカである場合には、その他の砥粒を用いた場合に比べて、研磨用組成物の安定性が向上し、その結果、研磨後のウエハの表面のスクラッチが低減する。従って、研磨用組成物に含まれる砥粒はコロイダルシリカであることが好ましい。
【0022】
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、1g/L以上であることが好ましく、より好ましくは3g/L以上、さらに好ましくは5g/L以上である。砥粒の含有量が多くなるにつれて、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において、研磨用組成物中の砥粒の含有量が1g/L以上、さらに言えば3g/L以上、もっと言えば5g/L以上であれば、研磨速度を大きく向上させることができる。
【0023】
研磨用組成物中の砥粒の含有量はまた、45g/L以下であることが好ましく、より好ましくは35g/L以下、さらに好ましくは25g/L以下である。砥粒の含有量が少なくなるにつれて、研磨用組成物のコロイド安定性はより大きく向上する。この点において、研磨用組成物中の砥粒の含有量が45g/L以下、さらに言えば35g/L以下、もっと言えば25g/L以下であれば、研磨用組成物のコロイド安定性を大きく向上させることができる。
【0024】
研磨用組成物に含まれる砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは15nm以上である。砥粒の平均一次粒子径が大きくなるにつれて、ウエハを機械的に研磨する砥粒の作用がより強まるため、研磨用組成物によるウエハの研磨速度はより大きく向上する。この点において、砥粒の平均一次粒子径が5nm以上、さらに言えば10nm以上、もっと言えば15nm以上であれば、研磨用組成物によるウエハの研磨速度を大きく向上させることができる。
【0025】
研磨用組成物に含まれる砥粒の平均一次粒子径はまた、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは150nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。平均一次粒子径の大きい砥粒は、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加を招く虞がある。そのため、砥粒の平均一次粒子径が小さくなるにつれて、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加はより強く抑制される。この点において、砥粒の平均一次粒子径が200nm以下、さらに言えば150nm以下、もっと言えば100nm以下であれば、研磨後のウエハ表面のスクラッチの増加をより強く抑制することができる。
【0026】
本実施形態によれば以下の利点が得られる。
・ 本実施形態の研磨用組成物は、ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミドから選ばれる少なくとも一種類の水溶性高分子を含有しており、この水溶性高分子によりウエハ表面に形成される親水膜は、研磨加工に起因するLPDの数を低減する働きをする。そのため、本実施形態の研磨用組成物によれば、研磨用組成物を用いて研磨した後のウエハ表面における研磨加工に起因するLPDの数を低減することができる。」
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体ウエハを研磨する用途で使用されるLPDの数を低減する研磨用組成物であって、
水溶性高分子、アルカリ、砥粒及び水からなり、
水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミドから選ばれる少なくとも一種類であり、
研磨用組成物中の水溶性高分子の含有量は、0.0003g/L以上、0.1g/L以下、重量平均分子量は6,000以上、4,000,000以下であることが好ましく、
アルカリは、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミン、第4級アンモニウム塩のいずれであり、
研磨用組成物中のアルカリの含有量は、0.1g/L以上、5g/L以下であることが好ましく、
砥粒は、コロイダルシリカ及びフュームドシリカのいずれであり、
研磨用組成物中の砥粒の含有量は、1g/L以上、45g/L以下、砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上、200nm以下であることが好ましい、
ことを特徴とする研磨用組成物。」
2 引用文献2について
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2011/135949号(以下、「引用文献2」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。
「[0009] また、近年、シリコンウェーハの表面側だけでなく裏面側も鏡面研磨したシリコンウェーハの提供が求められ、粗研磨工程において、遊離砥粒を含む研磨液を用いて、ウェーハ表裏面を同時に研磨する両面研磨が実施されるようになってきた。
両面研磨装置としては、近年、キャリアプレート内にシリコンウェーハを収容した状態で、研磨布を貼張した上定盤および下定盤によりキャリアプレートを挟み込み、この状態でシリコンウェーハの表裏面を同時に研磨する両面研磨が採用されつつある。
このようなキャリアプレートを用いた両面研磨装置を使用した場合、シリコンウェーハの厚みをキャリアプレートの厚みと同等あるいはそれ以下の厚みとなるまでシリコンウェーハの表裏面を研磨すれば、キャリアプレートによって、研磨布によるウェーハ外周部の研磨そのものが抑制されるため、ロールオフの低減を図ることができる。
しかしながら、キャリアプレートそのものも研磨してしまうため、キャリアプレートの交換頻度が増加し、生産コストの上昇を招く問題が懸念される。」
3 引用文献3について
本願出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/005289号(以下、「引用文献3」という。)には図面とともに次の事項が記載されている。
「[0048] 以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、表面と裏面とが研磨された両面研磨シリコンウェーハの製造方法およびその研磨液について説明する。
実施例1
[0049] この発明の実施例1に係るシリコンウェーハの研磨方法およびその研磨液を説明する。この実施例1では、粗研磨工程である1次研磨後に仕上げ研磨を行う構成とし、1次研磨工程では、1次研磨布と、遊離砥粒および水溶性高分子を含有した研磨液とを用いて粗研磨を行い、仕上げ研磨工程では、シリコンウェーハの平坦化を達成するために、仕上げ研磨布と、仕上げ研磨用の遊離砥粒を含有した研磨液とを用いて仕上げ研磨を行った。 表面および裏面が鏡面研磨された両面研磨シリコンウェーハは、以下の各工程を経て作製される。
すなわち、坩堝内でボロンが所定量ドープされたシリコンの溶融液から、チョクラルスキー法により直径306mm、直胴部の長さが2500mm、比抵抗が0.01Ω・cm、初期酸素濃度1.0×1018atoms/cm3の単結晶シリコンインゴットが引き上げられる。
[0050] 次に、1本の単結晶シリコンインゴットが、複数の結晶ブロックに切断された後、各結晶ブロックの外周研削が行われる。次いで、三角配置された3本のグルーブローラにワイヤによりシリコン単結晶から、直径300mm、厚さ775μmの多数枚のシリコンウェーハがスライスされる。
その後、回転中の面取り用砥石をシリコンウェーハの外周部に押し付けて面取りし、次に両面ラッピング装置によりシリコンウェーハの両面を同時にラッピングする。次いで、エッチング槽内の酸性エッチング液に、ラッピング後のシリコンウェーハを浸漬してエッチングし、面取りおよびラッピングによるダメージを除去する。その後、シリコンウェーハの表裏面に対して、上述した1次研磨および仕上げ研磨が順次施される。
[0051] 1次研磨工程では、無サンギヤ方式の両面研磨装置を用い、1次研磨液を使用してシリコンウェーハの表裏面を同時に1次研磨する。1次研磨液には、コロイダルシリカ中の平均粒径70nmのシリカ粒子(遊離砥粒)を5重量%と、ヒドロキシエチルセルロース(HEC;水溶性高分子)を10ppmとが添加されたピペリジン水溶液(ピペリジン;0.08重量%)を使用した。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「半導体ウエハを研磨する用途で使用されるLPDの数を低減する研磨用組成物」と、本願発明1の「半導体基板の両面を研磨する用途に用いられる研磨用組成物」は、半導体基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物である点で共通する。
イ 引用発明の「砥粒は、コロイダルシリカ及びフュームドシリカのいずれか」であり、「水溶性高分子は、ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミドから選ばれる少なくとも一種類」であり、「アルカリは、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミン、第4級アンモニウム塩のいずれかで」あるから、引用発明の「砥粒」,「水溶性高分子」および「アルカリ」は、それぞれ本願発明1の「二酸化ケイ素」,「含窒素水溶性高分子」および「塩基性化合物」に相当する。
[一致点]
「半導体基板を研磨する用途に用いられる研磨用組成物であって、
二酸化ケイ素、含窒素水溶性高分子、及び塩基性化合物を含有する、
ことを特徴とする研磨用組成物。」
[相違点]
[相違点1]
本願発明1は、「半導体基板の両面を研磨する用途に用いられる研磨用組成物」であるのに対して、引用発明の「研磨用組成物」は、半導体基板の両面を研磨する用途に用いられるか不明である点。
[相違点2]
本願発明1の「二酸化ケイ素」は、「BET法で測定される比表面積から求められる平均一次粒子径が40nm以上」であるのに対して、引用発明は「砥粒の平均一次粒子径は、5nm以上、200nm以下であることが好ましい」とあるものの、その平均一次粒子径がどのようにして求まったものであるのか不明である点。
[相違点3]
本願発明1は、「研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数をAとし、含窒素水溶性高分子の単量体単位数をBとし、塩基性化合物の分子数をCとしたとき、B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下である」のに対して、引用発明はそうでない点。
(2)相違点についての判断
上記[相違点3]について検討すると、[相違点3]に係る本願発明1の「研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数をAとし、含窒素水溶性高分子の単量体単位数をBとし、塩基性化合物の分子数をCとしたとき、B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下である」ことは、引用文献1に記載されておらず、また、「本発明の目的は、研磨対象物の端部の形状を維持するとともに、表面粗さ又は段差を低減することが容易であり、かつ高い研磨速度を得ることが容易な研磨用組成物、及び半導体基板の製造方法を提供することにある。」(本願明細書段落【0006】)点を考慮することも記載されていないので、引用発明において、[相違点3]に係る構成とすることが容易であったとは言えない。
さらに、引用文献2および3には、「研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数をAとし、含窒素水溶性高分子の単量体単位数をBとし、塩基性化合物の分子数をCとしたとき、B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下である」ことは記載されていないから、引用発明に、引用文献2および3の記載を適用し、[相違点3]に係る構成を想起することはできない。
そして、本願発明1は[相違点3]に係る構成を有することにより、「この構成により、半導体基板の端部の形状を維持するとともに、表面粗さ又は段差を低減することが容易であり、かつ高い研磨速度を得ることが容易となる。すなわち、本実施形態の研磨用組成物は、研磨速度が優先される両面研磨であっても、半導体基板の端部の形状を維持することが容易となり、さらに半導体基板の表面粗さ又は段差を低減することが容易となるという優れた効果を発揮する。」(本願明細書段落【0061】)という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点3]に係る構成は、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、[相違点1]および[相違点2]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
2 本願発明2ないし5について
本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て有する「研磨用組成物」の発明であり、本願発明5は、本願発明1ないし4の「研磨用組成物」を用いて研磨対象物としての半導体基板を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする「半導体基板の製造方法」の発明である。
してみれば、本願発明1が引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明2ないし5も、引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
上記「第6」で示したように本願発明1ないし4は、「研磨用組成物1リットル中の二酸化ケイ素の個数をAとし、含窒素水溶性高分子の単量体単位数をBとし、塩基性化合物の分子数をCとしたとき、B/Aの値が1以上かつ447以下であるとともに、C/Aの値が5000以上かつ109000以下である」ことを特徴とする「研磨用組成物」の発明であり、本願発明5は、本願発明1ないし4の「研磨用組成物」を用いて研磨対象物としての半導体基板を研磨する研磨工程を含むことを特徴とする「半導体基板の製造方法」の発明であるから、当業者であっても、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、拒絶査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-017602