特許拒絶査定不服審判
2016-017185
感情可視化装置、感情可視化方法および感情可視化プログラム
- 審判番号
- 2016-017185
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-557200外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月17日
- 審決日
- 2017年07月19日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】NECソリューションイノベータ株式会社
- 【請求人代理人】岩壁 冬樹
- 【請求人代理人】塩川 誠人
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-557200「感情可視化装置、感情可視化方法および感情可視化プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日国際公開、WO2014/112024、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2013年12月25日(優先権主張2013年1月21日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成28年3月31日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月18日付けで手続補正がされ、同年9月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に、手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年9月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1-8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1-3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2005-216311号公報
2.特開2012-155616号公報(周知技術を示す文献)
3.特開平9-81632号公報(周知技術を示す文献)
第3 本願発明
本願請求項1-8に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明8」という。)は、平成28年11月17日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
操作画面に対する操作内容を含む操作ログを種類毎に整理する操作ログ整理部と、
前記操作ログに対応するユーザの感情および当該感情の大きさを表す感情指数を記憶する感情記憶部と、
整理された前記操作ログに、前記感情記憶部に記憶されたユーザの感情および感情指数を割り当てる感情割り当て部と、
前記操作ログの感情への影響度を記憶する影響度記憶部と、
前記操作ログに前記影響度を割り当てる影響度割り当て部と、
前記感情指数および前記影響度に基づいて、影響度を考慮した感情指数を計算する感情指数計算部と、
前記操作ログに割り当てられた前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する表示部とを備え、
前記感情指数計算部は、
予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、各感情の感情指数を、前記各感情とは異なる感情であるネガティブの感情の感情指数または前記各感情とは異なる感情であるポジティブの感情の感情指数に置き換える
ことを特徴とする感情可視化装置。
【請求項2】
表示部は、ユーザの感情および感情指数を示す情報を色の違いにより表す
請求項1に記載の感情可視化装置。
【請求項3】
表示部は、
操作画面における特定の座標毎のユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する
請求項1または請求項2に記載の感情可視化装置。
【請求項4】
表示部は、
操作画面毎のユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する
請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の感情可視化装置。
【請求項5】
表示部は、
ユーザの感情および感情指数を示す情報を時間割上に表示する
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の感情可視化装置。
【請求項6】
操作ログは、画面遷移に関する操作内容を含む
請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の感情可視化装置。
【請求項7】
操作画面に対する操作内容を含む操作ログを種類毎に整理し、
前記操作ログに対応するユーザの感情および当該感情の大きさを表す感情指数を記憶し、
整理された前記操作ログに、記憶された前記ユーザの感情および感情指数を割り当て、
前記操作ログの感情への影響度を記憶し、
前記操作ログに前記影響度を割り当て、
前記感情指数および前記影響度に基づいて、影響度を考慮した感情指数を計算し、
予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、各感情の感情指数を、前記各感情とは異なる感情であるネガティブの感情の感情指数または前記各感情とは異なる感情であるポジティブの感情の感情指数に置き換え、
前記操作ログに割り当てられた前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する
ことを特徴とする感情可視化方法。
【請求項8】
コンピュータに、
操作画面に対する操作内容を含む操作ログを種類毎に整理する操作ログ整理処理と、
前記操作ログに対応するユーザの感情および当該感情の大きさを表す感情指数を記憶する感情記憶処理と、
整理された前記操作ログに、前記感情記憶処理で記憶されたユーザの感情および感情指数を割り当てる感情割り当て処理と、
前記操作ログの感情への影響度を記憶する影響度記憶処理と、
前記操作ログに前記影響度を割り当てる影響度割り当て処理と、
前記感情指数および前記影響度に基づいて、影響度を考慮した感情指数を計算する感情指数計算処理と、
前記操作ログに割り当てられた前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する表示処理とを実行させ、
前記感情指数計算処理で、
予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、各感情の感情指数を、前記各感情とは異なる感情であるネガティブの感情の感情指数または前記各感情とは異なる感情であるポジティブの感情の感情指数に置き換えさせる
ための感情可視化プログラム。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るユーザビリティ評価支援装置1は、図1に示すように、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14と、ネットワークインタフェース15とを含んで構成される、一般的なコンピュータである。また、このユーザビリティ評価支援装置1は、利用者の生体情報を検出する生体情報検出装置2と、操作履歴情報検出装置3と、利用者により利用される、表示装置を備えた機器4とにそれぞれ接続されている。この機器4は、制御部41と、記憶部42と、表示部43と、操作部44と、ネットワークインタフェース45とを含んで構成されている。
【0025】
ユーザビリティ評価支援装置1の制御部11は、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作し、ユーザビリティの評価支援処理を実行する。このユーザビリティの評価支援処理については、後に詳しく述べる。
【0026】
記憶部12は、コンピュータ可読な記録媒体であるハードディスクやCD-ROM等や、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)といった記憶素子を含み、コンピュータ可読な記録媒体には制御部11によって処理されるべきプログラムが格納されている。また、この記憶部12は、制御部11のワークメモリとしても動作する。
【0027】
表示部13は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示する。操作部14は、キーボードやマウス(ポインティングデバイス)等であり、利用者の操作の内容を制御部11に出力する。ネットワークインタフェース15は、ネットワークに接続されており、制御部11から入力される指示に従って、データをネットワークを介して送信する。また、このネットワークインタフェース15は、ネットワークを介して到来するデータを受信して、制御部11に出力する。
【0028】
生体情報検出装置2は、利用者の生体の状態に関する情報を取得して、当該情報を生体情報として制御部11に出力する。ここで取得される生体の状態とは、例えば利用者の視線の方向や移動距離、移動の早さ、滞留時間、注視した順番、さらには瞳孔の大きさ、発汗量、脈拍数、心拍数、脳波等がある。以下の説明では、生体情報検出装置2は、一例として利用者の視線方向を検出する装置であるとし、例えば利用者の頭部又はその近傍に装着し、利用者の目の部分を撮像して、当該撮像された影像から視線の方向を検出するといった、広く知られた装置であるとする。
【0029】
操作履歴情報検出装置3は、機器4の操作部44に接続されており、機器4の操作部44において利用者が行った操作の内容を操作履歴のデータとして記録し、指示により、当該記録したデータをユーザビリティ評価支援装置1に出力する。」(【0024】~【0029】の記載。下線は当審で付与。以下、同様。)
b)「【0033】
[ユーザビリティの評価支援処理]
ここで、制御部11のユーザビリティの評価支援処理について説明する。本実施の形態においては、ユーザビリティの評価は利用者の操作内容の記録と、利用者の生体情報の記録と、利用者に対するアンケート調査とを利用して行われる。具体的に記憶部12に格納されているユーザビリティの評価処理のためのプログラムは、図2に示すように、操作履歴記録部21と、生体情報記録部22と、アンケート処理部23と、イベント記録部24と、統計処理部25と、統計ルール設定部26とを含んで構成されている。
【0034】
操作履歴記録部21は、操作部44における操作に関連して操作履歴情報検出装置3に記録された操作履歴のデータを取得して記憶部12に逐次的に格納する。これらのデータとしては、マウスに連動して表示部43上に表示されていたポインタ(例えば矢印)の移動位置の座標情報や、クリックの回数、キーボードのタイプの回数等である。これら操作履歴のデータを総合したものをここでは「操作履歴情報」と呼ぶ。
【0035】
生体情報記録部22は、生体情報検出装置2から入力される視線方向のデータに基づいて、利用者がタスクの遂行中に表示部43上のどの位置を見ているか(視点はどの位置か)を表すデータを逐次、記憶部12に格納している。ここで格納される視点の位置のデータは、例えば表示部43上の座標情報として記録される。
【0036】
アンケート処理部23は、例えば図3に示すように、態度の認知的傾向としての「良い-悪い」や、行動的傾向としての「使いたい-使いたくない」、感情的傾向としての「好き-嫌い」といったイメージを段階評価によって利用者に採点させ、その採点結果の入力を操作部14を介して受けて、当該採点結果を満足度データとして記憶部12に格納する。また、このアンケート処理部23は、生体情報検出装置2から瞳孔径の時間変化を調べ、標準時の瞳孔径(タスクを遂行する環境と同じ程度の明るさのものを参照している場合の径)に対する比として瞳孔径の大きさを満足度データとして記憶部12に格納するのも好ましい。一般に人間は快いと感じると瞳孔径が大きくなり、不快であると感じると瞳孔径が小さくなる傾向にあるので、この比較の結果により利用者がタスク遂行中に快いと感じているか否かを測定できるのである。このように、利用者の満足度は、アンケートやインタビューだけでなく、タスク遂行中の利用者から得られる生体情報を用いて推定できる。これら少なくとも一つの満足度データを含んでなる満足度情報は、後に統計的に処理されて、利用者の満足度の指標の演算に用いられる。具体的に、「好き-嫌い」等のイメージの段階評価はいわゆるSD法(Semantic Differential 法)の考え方で処理される。
【0037】
イベント記録部24は、制御部11が利用者のタスク遂行に関連して行った処理、例えば表示部13へのヘルプ情報の表示や、どのWebページを表示するかを表すURL(Uniform Resource Locator)情報、画面の移動があったことを表す情報、エラー発生に伴って取得される情報、さらには利用者によりタスク(又はその一部)が達成されたか否か等のイベント情報(表示や発生の回数や処理にかかった時間等)を記憶部12に格納する。」(【0033】~【0037】の記載。)
c)「【0039】
統計処理部25は、記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれる少なくとも一つの操作履歴のデータ、生体情報に含まれる少なくとも一つのデータ、満足度情報に含まれる少なくとも一つの満足度のデータ、イベントの記録、のうち、少なくとも一つを用いて、統計ルール設定部26によって設定された指標演算用の統計ルールに従って、有効さ、効率、満足度の各指標の少なくとも一つを生成する。また、統計処理部25は、統計ルール設定部26によって設定された評価結果用の統計ルールに従って、生成した指標に対する統計処理を行い、生成した指標に対応する有効さ、効率、満足度の各評価結果を演算して出力する。具体的に、この統計処理部25にて生成される指標は、次の表1に示すように、有効さの指標と、効率の指標と、満足度の指標であって、有効さについては利用者が所与の目標を達成する上での正確さ若しくは完全さを表す指標が、効率については、利用者が目標を達成する際に、正確さや完全さに関係して費やした資源の量に関する指標が、満足度については、利用者の満足度に関する指標がそれぞれ生成されて利用される。なお、指標は、例えば数値や文字列で表現される。
【0040】
【表1】
【0041】
また、この統計処理部25が利用する統計ルールには、上述のように指標演算用の統計ルール(第1ルール)と、評価結果用の統計ルール(第2ルール)とがある。第1ルールは、記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれるデータ、生体情報に含まれるデータ、満足度情報に含まれるデータの各々を、各指標の演算にどの程度寄与させるかを表すものである。例えば有効さの指標に関する各データの値Ei(i=1,2,…)に対応する重みwiのセットを第1ルールとして用い、統計処理部25は、有効さの指標Veffを例えば、
[数1]
Veff=Σwi・Ei
のように演算する。また、効率性、満足度の指標についても同様の処理によって演算をする。なお、Σwi=1となるよう正規化しておいてもよい。
【0042】
さらに、この統計処理部25が利用する第2ルールは、生成された有効さ、効率、満足度の指標の少なくとも一つを、各指標に対応する評価結果にどの程度寄与させるかを表すものである。例えば、有効さの評価結果に関する各指標Ni(i=1,2,…)に対応する重みviのセットを第2ルールとして設定し、統計処理部25は、例えば有効さの評価結果Seffを、
[数2]
Seff=Σvi・Ni
のように演算する。また、効率、満足度の指標に対応する評価結果についても同様の処理によって演算する。この場合も、Σvi=1となるよう各viを正規化しておいてもよい。
【0043】
統計ルール設定部26は、操作部14から入力される指示に従ってこれらの統計ルールを記憶部12に格納する。このように本実施の形態においては、統計の処理内容を変更可能としたことで、当該機器を設置した場所で行われる業務ごとの事情に応じた評価が可能となる。例えば効率を経済性により測定したい場合には、タスクに要した時間など、コストに関係する記録(データ)に対する重みを大きくし、機器ハードウエアの負荷により測定したい場合には、表示された情報量(テキスト量/ページ構成ピクセル量/色数等)に対する重みを大きくして設定すればよい。
【0044】
本実施の形態のプログラムは、以上のような機能構成を含んでなり、従って本実施の形態のユーザビリティ評価支援装置は、次のように動作する。利用者(被験者)が機器4において所与のタスクを遂行すると、そのタスクの遂行中に操作部44を介して利用者が行った操作の履歴のデータが操作履歴情報検出装置3に格納される。
【0045】
ユーザビリティ評価支援装置1の制御部11は、これを取得して記憶部12に格納する。また、制御部11は、タスクの遂行中に生体情報検出装置2によって検出された利用者の生体情報に関係するデータを逐次的に記憶部12に格納していく。また、制御部11は、利用者のタスク遂行に伴って発生するイベントを記憶部12に逐次的に格納する。これらの記録は、それぞれの時間関係の前後が分かるように記録される。つまり、例えば各操作履歴情報や、生体情報、イベント情報に含まれる各データは、それぞれの取得(発生)時間とともに記録するようにすればよい。
【0046】
また、制御部11は、タスクの遂行が完了した後に、表示部13に図3に示した満足度情報を取得するための表示を行い、利用者からの回答を得て、当該回答の結果を満足度データとして記憶部12に格納する。また、満足度データには、生体情報検出装置2により検出された生体に関係するデータ(例えば瞳孔径)を含んでもよい。
【0047】
制御部11は、統計処理部25の処理として予め統計ルール設定部26によって設定された統計ルール(第1ルール)に従い、記憶部12に格納した操作履歴情報や、生体情報、イベント情報、並びに満足度情報のそれぞれに含まれるデータのうち、少なくとも一つを利用して有効さ、効率、満足度の各指標を演算し、その結果を記憶部12に格納する。
【0048】
さらに、制御部11は、各指標に対応する評価結果を統計ルール(第2ルール)に従って演算して記憶部12に格納する。この各指標の演算結果や評価結果は、評価者の指示に従って、表示部13等に提示され、ISOに規定されているユーザビリティの評価に供される。」(【0039】~【0048】の記載。)
上記下線部及び関連箇所の記載によれば、引用文献1には、ユーザビリティ評価支援装置として、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ユーザビリティ評価支援装置1は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14と、ネットワークインタフェース15とを含んで構成され、利用者の生体情報を検出する生体情報検出装置2と、操作履歴情報検出装置3と、利用者により利用される、表示装置を備えた機器4とにそれぞれ接続され、
制御部11は、記憶部12に格納されているプログラムに従って動作し、ユーザビリティの評価支援処理を実行し、
表示部13は、ディスプレイ等であり、制御部11から入力される指示に従って情報を表示し、
生体情報検出装置2は、利用者の生体の状態に関する情報を取得して、当該情報を生体情報として制御部11に出力し、
操作履歴情報検出装置3は、機器4の操作部44に接続されており、機器4の操作部44において利用者が行った操作の内容を操作履歴のデータとして記録し、指示により、当該記録したデータをユーザビリティ評価支援装置1に出力し、
ユーザビリティの評価処理のためのプログラムは、操作履歴記録部21と、生体情報記録部22と、アンケート処理部23と、イベント記録部24と、統計処理部25と、統計ルール設定部26とを含んで構成され、
操作履歴記録部21は、操作部44における操作に関連して操作履歴情報検出装置3に記録された操作履歴のデータを取得して記憶部12に逐次的に格納し、操作履歴のデータを総合したものをここでは「操作履歴情報」と呼び、
生体情報記録部22は、生体情報検出装置2から入力される視線方向のデータに基づいて、利用者がタスクの遂行中に表示部43上のどの位置を見ているか(視点はどの位置か)を表すデータを逐次、記憶部12に格納し、
アンケート処理部23は、態度の認知的傾向としての「良い-悪い」や、行動的傾向としての「使いたい-使いたくない」、感情的傾向としての「好き-嫌い」といったイメージを段階評価によって利用者に採点させ、その採点結果の入力を操作部14を介して受けて、当該採点結果を満足度データとして記憶部12に格納し、また、このアンケート処理部23は、生体情報検出装置2から瞳孔径の時間変化を調べ、標準時の瞳孔径に対する比として瞳孔径の大きさを満足度データとして記憶部12に格納し、
イベント記録部24は、制御部11が利用者のタスク遂行に関連して行った処理のイベント情報(表示や発生の回数や処理にかかった時間等)を記憶部12に格納し、
統計処理部25は、記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれる少なくとも一つの操作履歴のデータ、生体情報に含まれる少なくとも一つのデータ、満足度情報に含まれる少なくとも一つの満足度のデータ、イベントの記録、のうち、少なくとも一つを用いて、統計ルール設定部26によって設定された指標演算用の統計ルールに従って、有効さ、効率、満足度の各指標の少なくとも一つを生成し、また、統計処理部25は、統計ルール設定部26によって設定された評価結果用の統計ルールに従って、生成した指標に対する統計処理を行い、生成した指標に対応する有効さ、効率、満足度の各評価結果を演算して出力するものであり、
この統計処理部25が利用する統計ルールには、指標演算用の統計ルール(第1ルール)と、評価結果用の統計ルール(第2ルール)とがあり、
第1ルールは、記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれるデータ、生体情報に含まれるデータ、満足度情報に含まれるデータの各々を、各指標の演算にどの程度寄与させるかを表すものであり、例えば有効さの指標に関する各データの値Ei(i=1,2,…)に対応する重みwiのセットを第1ルールとして用い、統計処理部25は、有効さの指標Veffを、
Veff=Σwi・Ei
のように演算し、
この統計処理部25が利用する第2ルールは、生成された有効さ、効率、満足度の指標の少なくとも一つを、各指標に対応する評価結果にどの程度寄与させるかを表すものであり、例えば、有効さの評価結果に関する各指標Ni(i=1,2,…)に対応する重みviのセットを第2ルールとして設定し、統計処理部25は、例えば有効さの評価結果Seffを、
Seff=Σvi・Ni
のように演算し、
統計ルール設定部26は、操作部14から入力される指示に従ってこれらの統計ルールを記憶部12に格納し、
この各指標の演算結果や評価結果は、評価者の指示に従って、表示部13等に提示される
ユーザビリティ評価支援装置1。」
2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0036】-【0037】、【0048】-【0054】、【0090】-【0091】及び図1-3、8D、9の記載からみて、当該引用文献2には、ユーザの接触やユーザによる画面上の指示動作がユーザ挙動のどの種類に合致するかを判別し、その種類に基づいてユーザの感情を判定するという技術的事項が記載されていると認められる。
3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落【0015】-【0059】、及び図1-14の記載からみて、当該引用文献3には、テキスト、画像および音などといったユーザのデータを受け付け、テキスト分あるいは音声に含まれた感情語を形態素解析により抽出し、入力で用いられた感情語からユーザの感情を推定するという技術的事項が記載されていると認められる。
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア.上記摘記事項a)の段落【0040】の表1中に「タスク達成までに要したヘルプ利用回数」、「タスク達成に要したポインティングデバイスによるクリック回数」等の記載があることを考慮すれば、引用発明の「操作履歴記録部21」により「記憶部12に逐次的に格納」される「操作部44における操作に関連して操作履歴情報検出装置3に記録された操作履歴のデータ」は、操作の種類毎に整理され用いられるのは明らかであり、引用発明の「ユーザビリティ評価支援装置1」は、本願発明1の「操作画面に対する操作内容を含む操作ログを種類毎に整理する操作ログ整理部」に相当する構成を有するといえる。
イ.引用発明の「統計処理部25」は、「操作履歴情報に含まれる少なくとも一つの操作履歴のデータ、生体情報に含まれる少なくとも一つのデータ、満足度情報に含まれる少なくとも一つの満足度のデータ、イベントの記録、のうち、少なくとも一つを用いて、統計ルール設定部26によって設定された指標演算用の統計ルールに従って、有効さ、効率、満足度の各指標の少なくとも一つを生成」するものであり、「統計処理部25が利用する統計ルールには、指標演算用の統計ルール(第1ルール)」があり、「第1ルールは、記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれるデータ、生体情報に含まれるデータ、満足度情報に含まれるデータの各々を、各指標の演算にどの程度寄与させるかを表すものであり、」「統計ルール」は「記憶部12に格納」されるものである。
引用発明の指標のうち「満足度」は、「感情」といい得るものであり、「どの程度寄与させるかを表すもの」は「影響度」といい得るものである。
そして、本願発明1の「操作ログ」は操作に関するデータといい得るものであることを考慮すれば、引用発明の「第1ルール」のうち、「操作履歴情報に含まれるデータ、生体情報に含まれるデータ、満足度情報に含まれるデータの各々を」「満足度」の「指標の演算にどの程度寄与させるかを表すもの」を格納する「記憶部12」は、本願発明1の「前記操作ログの感情への影響度を記憶する影響度記憶部」と「データの感情への影響度を記憶する影響度記憶部」である点では共通するといえる。
ウ.引用発明の「統計処理部25」は、「例えば有効さの指標に関する各データの値Ei(i=1,2,…)に対応する重みwiのセットを第1ルールとして用い、統計処理部25は、有効さの指標Veffを、Veff=Σwi・Eiのように演算」するものである。
引用発明の「重みwi」は「どの程度寄与させるかを表すもの」の例で「影響度」といい得るものであり、「統計処理部25」は、「満足度」の指標についても上記の演算と同様の演算を行うものと認められ、当該演算により得られる「満足度」の指標の演算結果は、「感情指数」といい得るものである。
そして、本願発明1の「操作ログ」は操作に関するデータといい得るものであることを考慮すれば、引用発明の「統計処理部25」は、本願発明1の「前記操作ログに前記影響度を割り当てる影響度割り当て部」及び「前記感情指数および前記影響度に基づいて、影響度を考慮した感情指数を計算する感情指数計算部」と「前記データに前記影響度を割り当てる影響度割り当て部」及び「前記影響度に基づいて、感情指数を計算する感情指数計算部」である点では共通するといえる。
エ.引用発明は「各指標の演算結果や評価結果は、評価者の指示に従って、表示部13等に提示される」ものであるから、引用発明の指標のうち「満足度」は、「感情」といい得るものであることを考慮すれば、引用発明の「表示部13」は、本願発明1の「前記操作ログに割り当てられた前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する表示部」と「前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する表示部」である点では共通するといえる。
オ.引用発明は、「統計処理部25が利用する統計ルールには、」「評価結果用の統計ルール(第2ルール)とがあり」、「統計処理部25が利用する第2ルールは、生成された有効さ、効率、満足度の指標の少なくとも一つを、各指標に対応する評価結果にどの程度寄与させるかを表すものであり、例えば、有効さの評価結果に関する各指標Ni(i=1,2,…)に対応する重みviのセットを第2ルールとして設定し、統計処理部25は、例えば有効さの評価結果Seffを、Seff=Σvi・Niのように演算」するものである。
そして、引用発明の「記憶部12」に格納される「第2ルール」は、「生成された有効さ、効率、満足度の指標の少なくとも一つを、各指標に対応する評価結果にどの程度寄与させるかを表すもの」であり、例としては「重みvi」であるから、「第2ルール」のうち「満足度」の指標に関する「第2ルール」は、「予め定められた感情の相関を示す数値」ともいい得るものである。
また、「満足度」は、ポジティブの感情であることは明らかである。
したがって、引用発明の「統計処理部25」は、本願発明1の「前記感情指数計算部は、予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、各感情の感情指数を、前記各感情とは異なる感情であるネガティブの感情の感情指数または前記各感情とは異なる感情であるポジティブの感情の感情指数に置き換える」ものと、「前記感情指数計算部は、予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、感情の感情指数を、ポジティブの感情の感情指数に置き換える」ものである点では共通するといえる。
カ.引用発明の「ユーザビリティ評価支援装置1」は、「各指標の演算結果や評価結果は、評価者の指示に従って、表示部13等に提示される」ものであるから、「満足度」の指標が表示されることは明らかであり、本願発明1の「感情可視化装置」に相当する。
したがって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。
〈一致点〉
「操作画面に対する操作内容を含む操作ログを種類毎に整理する操作ログ整理部と、
データの感情への影響度を記憶する影響度記憶部と、
前記データに前記影響度を割り当てる影響度割り当て部と、
前記影響度に基づいて、感情指数を計算する感情指数計算部と、
前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する表示部とを備え、
前記感情指数計算部は、
予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、感情の感情指数を、ポジティブの感情の感情指数に置き換える
感情可視化装置。」
〈相違点1〉
本願発明1は、「前記操作ログに対応するユーザの感情および当該感情の大きさを表す感情指数を記憶する感情記憶部」と、「整理された前記操作ログに、前記感情記憶部に記憶されたユーザの感情および感情指数を割り当てる感情割り当て部」を備えるものであるのに対し、引用発明はそのような構成を有するものではない点。
〈相違点2〉
本願発明1では、「影響度」が「操作ログの感情への影響度」であり、「影響度記憶部」は「操作ログの感情への影響度を記憶する」もので、「影響度割り当て部」は「前記操作ログに前記影響度を割り当てる」もので、「感情指数計算部」は「前記感情指数および前記影響度に基づいて、影響度を考慮した感情指数を計算する」ものであるのに対し、引用発明は、「操作履歴情報に含まれるデータ、生体情報に含まれるデータ、満足度情報に含まれるデータの各々を、各指標の演算にどの程度寄与させるかを表すもの」である「重みwi」を用いて「有効さ、効率、満足度の各指標」を生成するものであるが、「操作履歴情報に含まれるデータ」を「満足度の指標」に寄与させることは特定されていない点。
〈相違点3〉
「表示部」が、本願発明1では、「前記操作ログに割り当てられた前記ユーザの感情および感情指数を示す情報を表示する」ものであるのに対し、引用発明では、「満足度」である「ユーザの感情および感情指数を示す情報」を表示するするものではあるが、「ユーザの感情および感情指数を表す情報」は、「操作ログに割り当てられた」ものではない点。
〈相違点4〉
「感情指数計算部」が、本願発明1では、「予め定められた感情の相関を示す数値に基づいて、各感情の感情指数を、前記各感情とは異なる感情であるネガティブの感情の感情指数または前記各感情とは異なる感情であるポジティブの感情の感情指数に置き換える」ものであるのに対して、引用発明では、「予め定められた感情の相関を示す数値」といい得る「第2ルール」に基づいて、「満足度」の指標を「満足度」の指標に対応する評価結果に置き換えるものである点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1について先に検討する。
引用発明は、「記憶部12に格納されている操作履歴情報に含まれる少なくとも一つの操作履歴のデータ、生体情報に含まれる少なくとも一つのデータ、満足度情報に含まれる少なくとも一つの満足度のデータ、イベントの記録、のうち、少なくとも一つを用いて、統計ルール設定部26によって設定された指標演算用の統計ルールに従って、有効さ、効率、満足度の各指標の少なくとも一つを生成」するものであるが、具体的には、上記摘記事項c)の段落【0040】の表1に記載されるように、「感情」といい得る指標である「満足度」の指標は、「SD法により、態度の認知的傾向(良い/悪い)、行動的傾向(使ってみたい/みたくない)、感情的傾向(好き/嫌い)の3つの視点で満足度を評価する。」、「生体情報による、基準値とタスク実行時の値との比率もしくは差分(脳波によるα波量/ESAMによる評価/瞳孔径/発汗量)」により生成される、すなわち、「満足度」の指標は、「生体情報」のデータおよび「満足度」のデータ(アンケートの結果)により生成されるものであり、「操作履歴」のデータ(操作ログ)により生成されるものではない。
そして、引用文献1には、「操作履歴」のデータが「満足度」(感情)の指標に影響を及ぼすことを示唆する記載は無いから、引用発明において、「満足度」の指標を「操作履歴」のデータにより生成する構成とすることに、合理的な理由があるものとは認められず、引用文献2に、ユーザの接触やユーザによる画面上の指示動作がユーザ挙動のどの種類に合致するかを判別し、その種類に基づいてユーザの感情を判定するという技術的事項が記載され、引用文献3に、テキスト、画像および音などといったユーザのデータを受け付け、テキスト分あるいは音声に含まれた感情語を形態素解析により抽出し、入力で用いられた感情語からユーザの感情を推定するという技術的事項が記載されているように、ユーザの入力に基づいてユーザの感情を判定することが周知技術であったとしても、引用発明に基づいて本願発明1の相違点1に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
したがって、相違点2-4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.請求項2-6について
本願発明2-6は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
3.請求項7-8について
本願発明7は、本願発明1を実質的に方法として記載したもの、本願発明8は、本願発明1を実質的にプログラムとして記載したものであり、上記「1.請求項1について」にて述べたのと同様の理由により、引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
相違点1に係る本願発明1の構成に関連して、原査定においては、引用文献1には、操作履歴等から、有効さ、効率、満足度の指標を提示する装置が記載されている旨認定している。
しかしながら、引用文献1には、操作履歴より満足度の指標を提示する装置は記載されておらず、またそのような装置とすることの合理性も認められないから、本願発明1の上記相違点1に係る構成は、引用文献1に記載されているとはいえない。
また、上記「相違点についての判断」で述べたように、相違点1に係る構成は、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-8は、当業者が引用発明及び引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-017185