特許拒絶査定不服審判
2016-016284
特定領域を生成し表示する方法、装置及びプログラム。
- 審判番号
- 2016-016284
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-003995外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年11月01日
- 審決日
- 2017年05月08日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
- 【請求人代理人】上野 剛史
- 【請求人代理人】太佐 種一
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .575-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014- 3995「特定領域を生成し表示する方法、装置及びプログラム。」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月23日出願公開、特開2015-132976、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成26年1月14日の出願であって、平成28年2月10日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年4月20日付けで拒絶理由が通知され、平成28年5月24日付けで意見書が提出され、平成28年7月27日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成28年11月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成28年12月21日に前置報告がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年7月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1-14に係る発明は、以下の引用文献1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2013-109432号公報
2.特開2007-157039号公報
第3 本願発明
本願請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成28年11月1日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
コンピュータの処理により、特定領域を表示する方法であって、
ユーザにより指定された表示領域を特定するステップと、
前記特定された表示領域からなる特定領域を生成するステップであって、
前記特定された表示領域と重なるもしくは包含されるオブジェクトを識別するステップと、
ユーザの指示に応答して、前記特定領域の表示の条件を設定するステップと
前記特定された表示領域内に表示されているオブジェクトを含む前記特定された表示領域と同一情報を有する、同一形状領域を特定領域として新たに生成するステップと、
を含む、前記特定領域を生成するステップと、
前記条件が満たされた時に、前記特定領域を常に前面に表示するステップと、
を有する、方法。
【請求項2】
前記オブジェクトがウィンドウまたはアイコンである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記オブジェクトが複数のオブジェクトであり、当該複数のオブジェクトを含む特定領域を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記特定領域が矩形領域または自由形状領域である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記条件が、前記特定された表示領域内の文字の変化、画像変化、もしくはオブジェクトへのメッセージ送付である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記条件が満たされた場合に、所定のダイアログ・パネルを表示する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の方法の各ステップをコンピュータに実行させる、コンピュータ・プログラム。
【請求項8】
請求項7記載の前記コンピュータ・プログラムをコンピュータ可読記録媒体に記録した記録媒体。
【請求項9】
コンピュータの処理により、特定領域を表示する装置であって、
ユーザにより指定された表示領域を特定する手段と、
前記特定された表示領域からなる特定領域を生成する手段であって、
前記特定された表示領域と重なるもしくは包含されるオブジェクトを識別する手段と、
ユーザの指示に応答して、前記特定領域の表示の条件を設定する手段と、
前記特定された表示領域内に表示されているオブジェクトを含む前記特定された表示領域と同一情報を有する、同一形状領域を特定領域として新たに生成する手段と、
を含む、前記特定領域を生成する手段と、
前記条件が満たされた時に、前記特定領域を常に前面に表示する手段と、
を有する、装置。
【請求項10】
前記オブジェクトがウィンドウまたはアイコンである、請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記オブジェクトが複数のオブジェクトであり、当該複数のオブジェクトを含む特定領域を生成する、請求項9記載の装置。
【請求項12】
前記特定領域が矩形領域または自由形状領域である、請求項9記載の装置。
【請求項13】
前記条件が、前記特定された表示領域内の文字の変化、画像変化、もしくはオブジェクトへのメッセージ送付である、請求項9記載の装置。
【請求項14】
前記条件が満たされた場合に、所定のダイアログ・パネルを表示する、請求項9記載の装置。」
第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0013】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施の形態1によるプラント監視制御装置を示すシステム構成図である。
図1において、プラント監視システムは、次のように構成されている。
被監視制御機器であるプラント機器は、モータ、ポンプ、弁、計装機器などである。画面1は、プラント機器の状態を表示する。プラント監視制御装置2は、プラント機器の状態を監視及び制御する。プラント情報処理装置100は、このプラント機器のデータを収集し、プラント監視制御装置2に送信すると共に、プラント監視制御装置2からの制御指令に基づいて、プラント機器を制御する。プラント制御バス3は、プラント情報処理装置100とプラント監視制御装置2との双方向で情報及び制御指令の伝達を実現する。
【0014】
図2は、この発明の実施の形態1によるプラント監視制御装置を示す詳細構成図である。
図2において、1~3、100は図1におけるものと同一のものである。プラント監視制御装置2は、画面1によるプラント状態の表示を制御する表示制御部2aと、プラント機器にて計測したデータの処理や表示制御部2aからの指令を処理するデータ処理部2bと、プラント機器から収集したデータを格納するデータ格納部2cとを有している。なお、データ格納部2cは記憶装置に形成される。
【0015】
図3は、この発明の実施の形態1によるプラント監視制御装置のグラフィック画面のウインドウ化機能を示す図である。
図3において、グラフィク画面選択範囲4は、マウスで選択した範囲である。マウスカーソル位置5でのマウスの右クリックにより表示されるメニューに「ウインドウ化」6がある。「ウインドウ化」6を選択することにより、ウインドウ7が表示される。
【0016】
次に、グラフィック画面のウインドウ化機能(ウインドウを形成する手段)の処理について、図4のフローチャートに基づいて、図3を参照して説明する。
マウスでグラフィック画面上の監視対象設備、または設備の状態値を選択する(Step1)。表示制御部2aは、図3のグラフィク画面選択範囲4の座標値(ドラッグの開始点、終了点)を取得する(Step2)。
表示制御部2aは、取得した座標値からグラフィック画面選択範囲4内に設備または状態値が存在するかどうかを判断する(Step3)。存在しない場合は処理を終了する。
存在する場合は、監視対象設備を選択した状態で、マウスの右クリックを押下し、「ウインドウ化」6を選択する(Step4)。
【0017】
表示制御部2aは、選択した画面表示内容に状態値が含まれているかどうかを判断する(Step5)。状態値が含まれていない場合、処理を終了する。状態値が含まれている場合はデータ処理部2bを介し、データ格納部2cからリアルタイムに状態値を取得し、ウインドウ7に値を表示する(Step6)。
【0018】
実施の形態1によれば、グラフィック画面上で選択した範囲内の監視対象設備及び状態値を、画面から切り離してウインドウ化することができる。」(段落【0013】-【0018】。下線は当審で付した。)
上記下線部の記載によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「画面1によるプラント状態の表示を制御する表示制御部2aを有するプラント監視制御装置2において、
マウスでグラフィック画面上の監視対象設備、または設備の状態値を選択し(Step1)、
表示制御部2aは、マウスで選択した範囲であるグラフィック画面選択範囲4の座標値(ドラッグの開始点、終了点)を取得し(Step2)、
表示制御部2aは、取得した座標値からグラフィック画面選択範囲4内に設備または状態値が存在するかどうかを判断し(Step3)、存在する場合は、監視対象設備を選択した状態で、マウスの右クリックを押下し、「ウインドウ化」6を選択(Step4)すると、ウインドウ7が表示され、
表示制御部2aは、選択した画面表示内容に状態値が含まれているかどうかを判断し(Step5)、状態値が含まれている場合はデータ処理部2bを介し、データ格納部2cからリアルタイムに状態値を取得し、ウインドウ7に値を表示する(Step6)、方法。」
2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0013】-【0024】及び図1-3の記載からみて、当該引用文献2には、プラントの監視制御システムにおいて、例えば、プラントに設置した機器の圧力、電圧、電流等の監視データが、設定した所定値を超える異常値になったときなどの条件が成立した際、監視制御画面表示装置の表示装置上に表示されるメイン画面1上に配置される子ウィンドウ画面の表示形態を、プラントからの監視データをより詳細な形態で表示するよう変更するという技術的事項が記載されていると認められる。
3.その他の文献について
前置報告書において周知技術を示す文献として引用された引用文献3(特開2013-92908号公報)の段落【0014】及び図6の記載からみて、当該引用文献3には、プラント監視システムにおいて、緊急事態発生時に、緊急モードであることを示すダイアログをグラフィック画面上に表示するという技術的事項が記載されていると認められる。
さらに、平成28年2月10日付け拒絶理由通知書で引用文献2として引用された特開2008-305138号公報(以下、便宜的に「引用文献4」という。)の段落【0010】-【0016】、【0023】-【0032】及び図3-8の記載からみて、当該引用文献4には、プラント監視装置20の表示部10に複数のウィンドウからなるプラント監視画面を重ね合わせて表示した状態において、プラントの状態変化を検出すると、ウィンドウ毎の優先度を演算し、その結果に応じて前面に位置するウィンドウの透過率を決定するという技術的事項が記載されていると認められる。
第5 当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア.引用発明の「グラフィック画面」は、本願発明1の「表示領域」に相当し、引用発明の「マウスでグラフィック画面上の監視対象設備、または設備の状態値を選択」することは、マウスでグラフィック画面選択範囲4を選択することであるのは明らかであるから、本願発明1の「ユーザにより指定された表示領域を特定するステップ」に相当する。
イ.引用発明の「監視対象設備」及び「設備の状態値」は、本願発明1の「オブジェクト」に相当し、引用発明の「グラフィック画面選択範囲4」は、本願発明1の「前記特定された表示領域」に相当するといえる。そして、引用発明において、表示制御部2aは、「グラフィック画面選択範囲4の座標値(ドラッグの開始点、終了点)を取得」するとともに、「取得した座標値からグラフィック画面選択範囲4内に設備または状態値が存在するかどうかを判断し」ているから、引用発明の当該構成は、本願発明1の「前記特定された表示領域と重なるもしくは包含されるオブジェクトを識別するステップ」に相当する。
ウ.引用発明は、「監視対象設備を選択した状態で、マウスの右クリックを押下し、『ウインドウ化』6を選択(Step4)すると、ウインドウ7が表示され、」「選択した画面表示内容に状態値が含まれているかどうかを判断し、」「状態値が含まれている場合はデータ処理部2bを介し、データ格納部2cからリアルタイムに状態値を取得し、ウインドウ7に値を表示する」ものであって、また、引用文献1の図3を参照すると、グラフィック画面選択範囲4とウインドウ7とは同一形状領域であり、同一情報を有するといえるから、引用発明の当該構成は、本願発明1の「前記特定された表示領域内に表示されているオブジェクトを含む前記特定された表示領域と同一情報を有する、同一形状領域を特定領域として新たに生成するステップ」に相当する。
エ.引用発明において、「ウインドウ7が表示され」る構成は、本願発明1の「前記特定領域を常に前面に表示するステップ」と、「前記特定領域を表示するステップ」である点では共通する。
オ.引用発明における、上記イ.及びウ.に記載の構成は、全体として本願発明1と同様の「前記特定された表示領域からなる特定領域を生成するステップ」ということもできる。
カ.また、引用発明における、上記ウ.の構成、とりわけウインドウ7の表示は、コンピュータの一種である「プラント監視制御装置2」で実行されるものであるから、引用発明の方法は、全体として本願発明1と同様の「コンピュータの処理により、特定領域を表示する方法」ということができる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「コンピュータの処理により、特定領域を表示する方法であって、
ユーザにより指定された表示領域を特定するステップと、
前記特定された表示領域からなる特定領域を生成するステップであって、
前記特定された表示領域と重なるもしくは包含されるオブジェクトを識別するステップと、
前記特定された表示領域内に表示されているオブジェクトを含む前記特定された表示領域と同一情報を有する、同一形状領域を特定領域として新たに生成するステップと、
を含む、前記特定領域を生成するステップと、
前記特定領域を表示するステップと、
を有する、方法。」
(相違点1)
本願発明1が「ユーザの指示に応答して、前記特定領域の表示の条件を設定するステップ」を有するのに対し、引用発明は当該構成を有しない点。
(相違点2)
一致点の「特定領域を表示するステップ」に関し、本願発明1が「前記条件が満たされた時に、前記特定領域を常に前面に表示するステップ」であるのに対し、引用発明は、「条件が満たされた時に」表示するものではない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1及び2についてまとめて検討する。
本願発明1は、上記相違点1、2に係る構成で特徴付けられるとおり、ユーザの指示に応じて特定領域の表示の条件を設定し、その条件が満たされた時に、生成した特定領域を常に前面に表示するものである。
引用発明は、引用文献1の段落【0004】及び【0005】に、「従来のプラント監視制御装置は、以上のように構成されており、設計段階で監視対象設備の画面に関連設備の画面が登録されていない場合、別画面を交互に監視するなどといったムダ作業が発生していた。」及び「この発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、設計段階で監視対象設備の画面に関連設備の画面が登録されていない場合でも、別画面の展開操作をすることなく、関連設備の画面を監視することができるプラント監視制御装置を得ることを目的にする。」と記載されるように、ある監視画面のうちマウスで選択した範囲をウインドウ化し、関連する監視画面上に常に表示することで、複数の画面の切替えを不要とするものである。
また、「第4 引用文献、引用発明等」で述べたとおり、引用文献2には、プラントの監視制御システムにおいて、例えば、プラントに設置した機器の圧力、電圧、電流等の監視データが、設定した所定値を超える異常値になったときなどの条件が成立した際、監視制御画面表示装置の表示装置上に表示されるメイン画面1上に配置される子ウィンドウ画面を表示形態を、プラントからの監視データをより詳細な形態で表示するよう変更するという技術的事項が記載されている。
以上のように、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項は、いずれも監視対象に係るウインドウについて、本願発明1のように「ユーザの指示に応答して、前記特定領域の表示の条件を設定」し、「前記条件が満たされた時に、前記特定領域を常に前面に表示するステップ」を有するものではないから、本願発明1の上記相違点1及び2に係る構成は、引用発明及び引用文献2に記載の技術的事項のいずれからも、又は両者の組合せによっても導くことはできない。
加えて、本願発明1の上記相違点1及び2に係る構成は、引用文献3及び4に記載されたいずれの技術的事項においても特定されておらず、本願出願日前に周知技術であったとも認められない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.請求項2-14について
本願発明9は、本願発明1のカテゴリーを変更したものであって、本願発明2-8及び10-14は、それぞれ本願発明1及び9をさらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、当業者であっても引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
第6 原査定について
本願発明1-14は、上記「第5 当審の判断」で述べた相違点1及び2に係る構成又は当該構成のカテゴリーを変更した構成を含んでおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1及び2に基づいて、容易に発明できたものとは認められない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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