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特許拒絶査定不服審判

2016-014835

半導体装置および半導体装置の製造方法

審判番号
2016-014835
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2012-088198外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年10月04日
審決日
2017年06月05日
公報発行日
2017年09月29日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01L) / P18 .561-Z (H01L) / P18 .575-Z (H01L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第4項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2012- 88198「半導体装置および半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日出願公開、特開2013-219161〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,平成24年4月9日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成26年10月 3日 審査請求 平成27年10月29日 拒絶理由通知 平成27年12月25日 意見書・手続補正 平成28年 6月29日 拒絶査定 平成28年10月 4日 審判請求・手続補正 平成29年 4月17日 上申書 第2 補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成28年10月4日に審判請求と同時にされた手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正により,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1は,本件補正後の請求項1へ補正された。 (1)本件補正前 本件補正前の,特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「【請求項1】 炭化珪素半導体基板と, 前記炭化珪素半導体基板上に形成された炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と, 前記ドリフト層の表面部に形成された炭化珪素からなる第2導電型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表面部に形成された第1導電型のソース領域と, 前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成された第2導電型のウェルコンタクト領域と, 前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチと, 前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成された第1導電型のチャネル層と, 前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜と, 前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極と, 前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜と, 前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極と, 前記炭化珪素半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極と, を備え, 前記ゲート電極は,第2導電型の多結晶珪素からなり, 前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されず, 前記チャネル層は前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され,当該チャネル層の前記第1導電型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一であり, 前記第1導電型はn型,前記第2導電型はp型であることを特徴とする,半導体装置。」 (2)本件補正後 本件補正後の,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおりである。(当審注。補正個所に下線を付した。下記(3)も同じ。) 「【請求項1】 炭化珪素半導体基板と, 前記炭化珪素半導体基板上に形成された炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と, 前記ドリフト層の表面部に形成された炭化珪素からなる第2導電型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表面部に形成された第1導電型のソース領域と, 前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成された第2導電型のウェルコンタクト領域と, 前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチと, 前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成された第1導電型のチャネル層と, 前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜と, 前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極と, 前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜と, 前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極と, 前記炭化珪素半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極と, を備え, 前記ゲート電極は,第2導電型の多結晶珪素からなり, 前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されず,第2導電型のボトムウェルが形成されており, 前記チャネル層は前記トレンチの全ての側面の前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され,当該チャネル層の前記第1導電型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一であり, 前記第1導電型はn型,前記第2導電型はp型であることを特徴とする,半導体装置。」 (3)補正事項 本件補正は,本件補正前の請求項1に「前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されず,第2導電型のボトムウェルが形成されており,」という技術的事項(以下,「本件技術的事項」という。)及び「前記チャネル層は前記トレンチの全ての側面」に形成されることを追加する補正を含むものである。 2 補正の適否 (1)新規事項の追加 本件技術的事項は,「前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されない」ことと「前記トレンチの底面には,第2導電型のボトムウェルが形成されている」ことを同時に備えるものであるが,両者を同時に備えることは,出願当初の明細書等には記載されていないし,自明のこととも認められない。 出願当初の明細書段落0058には,「そこで,チャネル層6を形成する際に行うn型不純物の斜めイオン注入後に,同量のp型不純物を垂直イオン注入(炭化珪素半導体基板1に対して垂直方向からイオン注入)を行い,それによって増加したトレンチ40底面のn型不純物を相殺する。また,オフ耐圧が高い(例えば,1.2kVや3.3kV)MOSFETにおいては,図16に示すように,トレンチ40の底面にp型のボトムウェル31が別途設けられている場合が多い。このボトムウェル31のp型不純物濃度は,1×1017~5×1017cm-3と高いため,ボトムウェル31が設けられている場合は,上記のような追加のp型不純物の垂直イオン注入が必要ない。なお,図16に示すボトムウェル31は,図4に示すトレンチ40の形成後,p型不純物を垂直方向(炭化珪素半導体基板1に対して垂直方向,すなわちトレンチ40の底面に対して垂直方向)にイオン注入して形成する。また,チャネル層6の斜めイオン注入後,垂直イオン注入を行ってボトムウェル31を形成してもよい。トレンチ40の底面にn型不純物を注入しない方法については,後に説明する(後述の変形例6を参照)。」と記載されている。 ここで,「チャネル層6を形成する際に行うn型不純物の斜めイオン注入後に,同量のp型不純物を垂直イオン注入を行い,それによって増加したトレンチ40底面のn型不純物を相殺する。」とあるから,n型不純物のイオン注入により形成されたn型不純物(ドナー)が反対の性質を持つp型不純物(アクセプタ)により「相殺」されるものであり,同段落0058の記載は,チャネル層を形成する際のn型不純物の注入によりn型不純物が形成されることを前提としていると解される。 そして,その前提に続いて同段落0058には「また,オフ耐圧が高い(例えば,1.2kVや3.3kV)MOSFETにおいては,図16に示すように,トレンチ40の底面にp型のボトムウェル31が別途設けられている場合が多い。このボトムウェル31のp型不純物濃度は,1×1017~5×1017cm-3と高いため,ボトムウェル31が設けられている場合は,上記のような追加のp型不純物の垂直イオン注入が必要ない。」と記載されており,これは前記前提の下に「ボトムウェル」のp型不純物(アクセプタ)によりn型不純物(ドナー)が相殺されさらにアクセプタ濃度が上回るから,別途追加のp型不純物のイオン注入が必要ないものと解される。そして,図16には,トレンチの底面にボトムウェル31が形成されることが記載されていると認められるが,その底面にn型不純物が形成されるのか又はされないのかを読み取ることはできない。 また,同段落0058には「トレンチ40の底面にn型不純物を注入しない方法については,後に説明する(後述の変形例6を参照)。」と記載されており,トレンチの底面にn型不純物を注入しない,すなわちn型不純物が形成されないことについては,別のものとして記載されている。 してみると,トレンチの底面にn型不純物が形成されないこととトレンチの底面にボトムウェルが形成されることを同時に備えるものは,同段落0058ないし図16から,当業者が読み取ることはできないというべきである。 (2)本願補正発明 前記(1)で検討した新規事項の追加についてはおくとしても,本件補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするから,特許法17条の2第4項の規定に適合し,同条5項2号に掲げるものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項)につき,更に検討する。 本願補正発明は,本件補正後の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。(再掲) 「炭化珪素半導体基板と, 前記炭化珪素半導体基板上に形成された炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と, 前記ドリフト層の表面部に形成された炭化珪素からなる第2導電型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表面部に形成された第1導電型のソース領域と, 前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成された第2導電型のウェルコンタクト領域と, 前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチと, 前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成された第1導電型のチャネル層と, 前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜と, 前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極と, 前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜と, 前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極と, 前記炭化珪素半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極と, を備え, 前記ゲート電極は,第2導電型の多結晶珪素からなり, 前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されず,第2導電型のボトムウェルが形成されており, 前記チャネル層は前記トレンチの全ての側面の前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され,当該チャネル層の前記第1導電型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一であり, 前記第1導電型はn型,前記第2導電型はp型であることを特徴とする,半導体装置。」 (3)引用文献1の記載 ア 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された,特開2009-065117号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は,半導体装置およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 VDMOSFET(Vertical Double diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の微細化に有効な構造として,トレンチゲート構造が一般に知られている。 図9は,従来のトレンチゲート型VDMOSFETを備える半導体装置の模式的な断面図である。 ・・・ 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 P-型ボディ領域105は,N-型エピタキシャル層103にその表面からP型不純物(イオン)が注入された後,そのP型不純物をドライブイン拡散させることにより形成される。そのため,P-型ボディ領域105では,N-型領域104との界面付近におけるP型不純物濃度が極めて低い。したがって,空乏層がN+型ソース領域109に向かって延びやすいので,いわゆるパンチスルー効果の発生を防止するために,トレンチ106を深く形成する必要がある。 【0007】 ところが,トレンチ106を深く形成すると,トレンチ106の上端付近および下端付近に,大きなストレスが作用することによる結晶欠陥を生じるおそれがある。 そこで,本発明の目的は,耐圧の向上を図ることができ,トレンチの深さを小さくすることができる構造の半導体装置およびその製造方法を提供することである。」 (イ)「【0018】 以下では,本発明の実施の形態を,添付図面を参照して詳細に説明する。 図1は,本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造を模式的に示す断面図である。 半導体装置1は,トレンチゲート型VDMOSFETを有するユニットセルがマトリクス状に配置されたアレイ構造を有している。 【0019】 半導体装置1の基体をなすN+型基板2上には,N+型基板2よりもN型不純物が低濃度(たとえば,1015/cm3)にドーピングされたシリコンからなる,半導体層としてのN-型のエピタキシャル層3が積層されている。エピタキシャル層3の基層部は,エピタキシャル成長後のままの状態を維持し,第1導電型領域としてのN-型領域4をなしている。また,エピタキシャル層3には,N-型領域4上に,P-型のボディ領域5がN-型領域4に接して形成されている。 【0020】 エピタキシャル層3には,トレンチ6がその表面から掘り下がって形成されている。トレンチ6は,ボディ領域5を貫通し,その最深部がN-型領域4に達している。また,トレンチ6は,図1における左右方向に一定の間隔を空けて複数形成され,それぞれ図1の紙面と直交する方向(ゲート幅に沿う方向)に延びている。トレンチ6内には,その内面全域を覆うように,ゲート絶縁膜7が形成されている。そして,ゲート絶縁膜7の内側をN型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンで埋め尽くすことにより,トレンチ6内にゲート電極8が埋設されている。 【0021】 また,エピタキシャル層3の表層部には,トレンチ6に対してゲート幅と直交する方向(図1における左右方向)の両側に,N-型領域4のN型不純物濃度よりも高いN型不純物濃度(たとえば,1019/cm3)を有するN+型のソース領域9が形成されている。ソース領域9は,トレンチ6に沿ってゲート幅に沿う方向に延び,その底部がボディ領域5に接している。また,ゲート幅と直交する方向におけるソース領域9の中央部には,P+型のソースコンタクト領域10がソース領域9を貫通して形成されている。 【0022】 すなわち,トレンチ6およびソース領域9は,ゲート幅と直交する方向に交互に設けられ,それぞれゲート幅に沿う方向に延びている。そして,ソース領域9上に,そのソース領域9に沿って,ゲート幅と直交する方向に隣接するユニットセル間の境界が設定されている。ソースコンタクト領域10は,ゲート幅と直交する方向に隣接する2つのユニットセル間に跨って少なくとも1つ以上設けられている。また,ゲート幅に沿う方向に隣接するユニットセル間の境界は,各ユニットセルに含まれるゲート電極8が一定のゲート幅を有するように設定されている。 【0023】 各ユニットセルにおいて,ボディ領域5には,トレンチ6に対してゲート幅と直交する方向に間隔を隔てて対向する位置に,その周囲のP型不純物濃度よりも高いP型不純物濃度を有する高濃度領域11が形成されている。高濃度領域11の上端部は,ソース領域9とソースコンタクト領域10との境界部の近傍に配置され,その下端部は,N-型領域4の近傍に配置されている。 【0024】 また,各ユニットセルにおいて,ボディ領域5には,トレンチ6と高濃度領域11との間に,N型不純物が適当にドーピングされたチャネルインプラ領域12が形成されている。 エピタキシャル層3上には,層間絶縁膜13が積層されている。層間絶縁膜13上には,ソース配線14が形成されている。ソース配線14は,接地されている。そして,ソース配線14は,層間絶縁膜13に形成されたコンタクト孔15を介して,ソース領域9およびソースコンタクト領域10にコンタクト(電気接続)されている。また,ゲート電極8には,層間絶縁膜13に形成されたコンタクト孔(図示せず)を介して,ゲート配線16が電気的に接続されている。 【0025】 N+型基板2の裏面には,ドレイン電極17が形成されている。 ドレイン電極17に適当な大きさの正電圧を印加しつつ,ゲート電極8の電位を制御することにより,ボディ領域5におけるゲート絶縁膜7との界面近傍にチャネルを形成して,ソース領域9とドレイン電極17との間に電流を流すことができる。 そして,ボディ領域5には,トレンチ6に対してゲート幅と直交する方向に対向する位置に,その周囲のP型不純物濃度よりも高いP型不純物濃度を有する高濃度領域11が形成されている。この高濃度領域11が形成されていることにより,空乏層がソース領域9に向かって延びるのを抑制することができる。その結果,トレンチ6の深さを小さくすることができる。トレンチ6の深さを小さくすることにより,トレンチ6の上端付近および下端付近に大きなストレスが作用するのを防止でき,ストレスに起因する結晶欠陥の発生を防止することができる。 【0026】 また,この半導体装置1では,トレンチ6と高濃度領域11との間に,N型不純物が適当にドーピングされたチャネルインプラ領域12が形成されている。このチャネルインプラ領域12に含有されるN型不純物の量を調節することにより,スレッショルド電圧を制御することができる。 図2A~図2Lは,半導体装置1の製造方法を工程順に示す模式的な断面図である。 【0027】 まず,図2Aに示すように,エピタキシャル成長法により,N+型基板2上に,エピタキシャル層3が形成される。次いで,熱酸化処理により,エピタキシャル層3の表面に,SiO2(酸化シリコン)からなる犠牲酸化膜21が形成される。その後,P-CVD(Plasma Chemical Vapor Deposition:プラズマ化学気相成長)法またはLP-CVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)により,犠牲酸化膜21上にSiN(窒化シリコン)層が形成され,このSiN層がパターニングされることによって,トレンチ6を形成すべき部分と対向する部分に開口を有するハードマスク22が形成される。そして,ハードマスク22を利用して,犠牲酸化膜21およびエピタキシャル層3がエッチングされることにより,トレンチ6が形成される(トレンチ形成工程)。 【0028】 次に,図2Bに示すように,犠牲酸化膜21上にハードマスク22を残したまま,熱酸化処理が行なわれることにより,トレンチ6の内面に,SiO2からなる犠牲酸化膜23が形成される。 その後,図2Cに示すように,P型不純物(たとえば,ボロン)のイオンが,トレンチ6内に向けてゲート幅と直交する両側から斜めに注入される(第1注入工程)。すなわち,エピタキシャル層3の内部に,犠牲酸化膜23のゲート幅と直交する方向に対向する両側面を介して,P型不純物のイオンが斜め注入される。たとえば,トレンチ6のゲート幅と直交する方向の幅が0.5μmであり,トレンチ6の深さが1.0μmであり,ハードマスク22の厚さが0.5μmである場合,ハードマスク22の表面と直交する方向に対して18°以上の傾斜角度(注入角度)で斜め注入を行なうことにより,犠牲酸化膜23のゲート幅と直交する方向に対向する両側面のみを介して,P型不純物のイオンをエピタキシャル層3の内部(高濃度領域11を形成すべき部分)に良好に注入することができる。高濃度領域11の上端部は,ソース領域9とソースコンタクト領域10との境界部の近傍に配置され,その下端部は,N-型領域4の近傍に配置されている。このときのドーズ量は,たとえば,1011~1013/cm2である。 【0029】 つづいて,図2Dに示すように,エピタキシャル層3の内部(チャネルインプラ領域12を形成すべき部分)に,犠牲酸化膜23のゲート幅と直交する方向に対向する両側面を介して,N型不純物のイオンが斜め注入される。このときのドーズ量は,たとえば,1011~1013/cm2である。 N型不純物のイオンの斜め注入が行なわれた後,図2Eに示すように,ハードマスク22が除去される。さらに,犠牲酸化膜21,23が除去される。これにより,エピタキシャル層3の表面が露出する。 【0030】 その後,図2Fに示すように,熱酸化処理によって,トレンチ6の内面を含むエピタキシャル層3の表面の全域に,SiO2からなる酸化膜24が形成される。 次いで,CVD法により,酸化膜24上に,N型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンの堆積層が形成される。トレンチ6内は,ポリシリコンの堆積層により埋め尽くされる。そして,エッチングによって,ポリシリコンの堆積層のトレンチ6外に存在する部分が除去される。これにより,図2Gに示すように,トレンチ6に埋設されたゲート電極8が得られる(ゲート電極埋設工程)。 【0031】 その後,図2Hに示すように,P型不純物のイオンが,酸化膜24の表面からエピタキシャル層3の内部に向けて注入される(第2注入工程)。 次いで,ドライブイン拡散処理が行なわれる。このドライブイン拡散処理により,先の工程でエピタキシャル層3に注入されたN型不純物およびP型不純物のイオンが拡散し,図2Iに示すように,エピタキシャル層3に,ボディ領域5,高濃度領域11およびチャネルインプラ領域12が形成される(ボディ領域および高濃度領域を形成する工程)。 【0032】 ドライブイン拡散処理の後,図2Jに示すように,酸化膜24上に,ソース領域9を形成すべき部分と対向する部分に開口を有するマスク25が形成される。そして,マスク25の開口を介して,エピタキシャル層3の表層部に,N型不純物のイオンが注入される(第3注入工程)。このイオン注入後,マスク25は除去される。 さらに,図2Kに示すように,酸化膜24上に,ソースコンタクト領域10を形成すべき部分と対向する部分に開口を有するマスク26が形成される。そして,マスク26の開口を介して,エピタキシャル層3の表層部に,P型不純物のイオンが注入される(第4注入工程)。このイオン注入後,マスク26は除去される。 【0033】 その後,アニール処理が行なわれる。このアニール処理により,エピタキシャル層3の表層部に注入されたN型不純物およびP型不純物のイオンが活性化され,図2Lに示すように,エピタキシャル層3の表層部に,ソース領域9およびソースコンタクト領域10が形成される。 以上の工程を経た後,酸化膜24のトレンチ6外に存在する部分が除去され,トレンチ6の内面上のみに酸化膜24が残されることにより,ゲート絶縁膜7が得られる(ゲート絶縁膜形成工程)。その後,CVD法により,エピタキシャル層3上に層間絶縁膜13が形成される。そして,エッチングにより,層間絶縁膜13にコンタクト孔15などが形成された後,ソース配線14,ゲート配線16およびドレイン電極17が形成されることにより,図1に示す半導体装置1が得られる。」 (ウ)図1には,ボディ領域5の表層部にソース領域9及びソースコンタクト領域10が形成され,ソースコンタクト領域10はソース領域10とは異なる領域に形成されること,トレンチ6の内面が側面と底面から構成されていること,トレンチ6の側面に沿ってチャネルインプラ領域12が形成されること,層間絶縁膜13がゲート電極8,ゲート絶縁膜7及びソース領域9の一部を覆うこと,チャネルインプラ領域12がN-型領域4とソース領域9との間に形成されること,が記載されていると認められる。 (エ)図2Dには,チャネルインプラ領域の深さ方向に同一角度同一密度でイオンが斜め注入され,トレンチ6の底面には注入されないこと,が記載されていると認められる。 (オ)図2Iには,エピタキシャル層3の表面にボディ領域5が形成されることが記載されていると認められる。 イ 引用発明1 前記アより,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「N+型基板上に積層されたN-型のエピタキシャル層と,エピタキシャル層の表面に形成されるP-型のボディ領域と,エピタキシャル層の表層部に形成されたN+型のソース領域およびP+型のソースコンタクト領域と,エピタキシャル層に形成され最深部がN-型領域に達しているトレンチと,ボディ領域にトレンチの側面に沿って形成されたN型不純物が適当にドーピングされたチャネルインプラ領域と,トレンチの内面全域を覆うように形成されたゲート絶縁膜と,ゲート絶縁膜の内側をN型不純物がドーピングされたポリシリコンで埋め尽くすことによりトレンチ内に埋設されたゲート電極と,エピタキシャル層上に積層された層間絶縁膜と,層間絶縁膜上に形成されたソース配線で,層間絶縁膜に形成されたコンタクト孔を介してソース領域及びソースコンタクト領域にコンタクトされたソース配線と,N+型基板の裏面に形成されたドレイン電極と,を備え,チャネルインプラ領域を形成する部分にゲート幅と直交する方向に対向する両側面を介して,N型不純物のイオンが斜め注入される,半導体装置。」 (4)引用文献2の記載 ア 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された,特開2007-013058号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は,半導体装置に関し,特に,炭化珪素を用いた半導体装置に関する。 【背景技術】 【0002】 電力用スイッチングや高周波スイッチングなどに用いる半導体装置として,シリコンを材料としたMOS型半導体装置が広く使われている。このようなスイッチング用の半導体装置は,絶縁耐圧が高く,オン抵抗が低く,スイッチング速度が早いことが特に必要とされる。炭化珪素(SiC)は,シリコンと比べて,破壊電界が約十倍高く,また,熱伝導率も約3倍高い。このため,高速で低損失かつ高温環境での動作も可能なのスイッチング素子の材料としての大きな可能性を有している。 【0003】 また,炭化珪素は,熱酸化によって二酸化珪素(SiO2)ゲート酸化膜が形成できるので,シリコンと同様に,MOS型半導体装置に適している(例えば,非特許文献1)。また,オン抵抗を低減するトレンチ構造MOSFETの技術開示例がある(特許文献1)。」 (イ)「【0051】 図19は,本発明の第7の具体例にかかるトレンチ型MOSFETとしての炭化珪素半導体装置の模式断面図である。なお,図1~17に関して前述したものと同様な構成要素には,同一番号を付して詳細な説明を省略する。 本具体例においては,n型蓄積チャネル層46が,第6の具体例より浅く形成され,p型層は設けられていない。第6具体例におけるp型層48の代わりに,p型ボディ層32がゲート酸化膜44と界面を形成している。 【0052】 このようにしても,オン状態においては,p型ボディ層32とゲート酸化膜44との界面に反転層チャネル領域が形成され,この領域におけるゲート閾値電圧を,n型蓄積チャネル層におけるよりも高くできる。この構造も,窒素などのイオン注入工程において,斜めイオン注入とすることにより実現できる。本具体例によれば,高濃度層の突出を抑制できるので,より高い耐圧が可能となる。ここで,破線J6は電子流を表す。 【0053】 次に,図9や図19に例示したトレンチの平面形状について説明する。 すなわち,図9や図19などに断面構造として例示した半導体装置のトレンチの平面形状は,例えば,一方向に延在した溝状のものであってもよく,または円形,四角形,六角形の平面形状を有する穴状のものであってもよい。 トレンチが溝状である場合,これら溝状のトレンチを互いにほぼ並行に配置することにより,集積化できる。 また,トレンチが円形の平面形状を有する場合には,これらトレンチを所定のパターンで配置することにより,集積化できる。」 (ウ)「【0064】 また一方,トレンチ底部をp型層で覆うことによっても絶縁膜を保護できる。 図27は,トレンチ底部を覆うようにp型層58を設けた具体例を表す模式断面図である。 このようにp型層58を設けると,トレンチ底部のゲート酸化膜に印加される電界を緩和し,保護することができる。その結果として,電界による破壊を防止し,信頼性を上げることができる。なお,図9乃至図21及び図23乃至図25に例示したいずれの構造についても,このようにトレンチ底部をp型層で覆うことにより,同様の作用効果が得られる。」 (エ)図19には,トレンチの側面にn型蓄積チャネル層46が形成され,トレンチ底面には形成されないことが,記載されていると認められる。 イ 引用発明2 前記アより,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「炭化珪素を材料とするトレンチ型MOSFETにおいて,トレンチの側面にn型蓄積チャネル層が形成され,トレンチは四角形の平面形状を有する穴状のもので,トレンチ底部を覆うようにp型層を設けて電界による破壊を防止すること。」 (5)引用文献3の記載 ア 引用文献3 原査定の拒絶の理由に引用された,特開2002-261280号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに,次の記載がある。 「【0009】 【発明の実施の形態】まず,本願発明の特徴となる構造は図8に示される構造であるが,薄膜半導体層を有するトランジスタの製造方法として,MOSトランジスタに薄膜半導体層を適用した場合の製造方法を図1乃至図7を用いて説明する。 【0010】図1に基づいて縦型パワーMOSFETの構造について説明する。但し,本例における縦型パワーMOSFETは,上述した図9に示すMOSFETとほぼ同様の構造を有しているため,異なる部分についてのみ説明する。なお,本例における縦型パワーMOSFETのうち,図9に示すMOSFETと同様の部分については同様の符号を付してある。 【0011】図9に示すMOSFETでは,蓄積チャネル形成用の薄膜半導体層80をエピタキシャル成長によって形成していたが,この薄膜半導体層80と同様の役割を果たすものとして,本例では薄膜半導体層8をイオン注入で形成している。この図1に示す縦型パワーMOSFETの製造工程を,図2~図4を用いて説明する。 ・・・ 【0014】〔図2(c)に示す工程〕n+型ソース領域を含むp型エピタキシャル層3上にシリコン窒化膜(Si3N4膜)31を成膜したのち,さらにシリコン窒化膜31上にLTO膜32を成膜する。そして,フォト・エッチングを行って,溝形成予定領域におけるシリコン酸化膜31及びLTO膜32を除去する。このとき,フォト・エッチングでは,後に形成される溝7が[112-0]方向と略平行となるようにマスク合わせしている。この[112-0]方向は界面準位密度が最小であるため,界面準位密度の低減に基づく耐圧の向上を図ることができる。このような条件で溝7を形成しているため,溝7を上面から見ると溝7の側面7aの平面形状は各内角が等しい六角形となる。 ・・・ 【0030】〔図4(a)に示す工程〕そして,溝7の側面を含むウェハ全面にゲート酸化膜(ゲート絶縁膜)9を成膜する。 【0031】〔図4(b)に示す工程〕,さらに,溝7内のゲート酸化膜9の内側に,ゲート電極層10を充填する。このゲート電極層10の構成材料には,p型のポリシリコンあるいはn型のポリシリコンを用いている。 ・・・ 【0034】さらに,溝7の側面7aをテーパ形状にすることによって,上記イオン注入を半導体基板4の法線方向から行えるようにでき,イオン注入の効率化を図ることができる。次に,この縦型パワーMOSFETの作用(動作)を説明する。本MOSFETはノーマリオフ型の蓄積モードで動作するものであって,ゲート電極層10に電圧を印加しない場合は,薄膜半導体層8においてキャリアは,p型エピタキシャル層3と薄膜半導体層8との間の静電ポテンシャルの差,及び薄膜半導体層8とゲート電極層10との間の仕事関数の差により生じた電位によって全域空乏化される。ゲート電極層10に電圧を印加することにより,薄膜半導体層8とゲート電極層10との間の仕事関数の差と外部からの印加電圧の和により生じる電位差を変化させる。このことにより,チャネルの状態を制御することができる。 【0035】つまり,ゲート電極層10の仕事関数を第1の仕事関数とし,p型エピタキシャル層3の仕事関数を第2の仕事関数とし,薄膜半導体層8の仕事関数を第3の仕事関数としたとき,第1~第3の仕事関数の差を利用して,薄膜半導体層8のn型のキャリアを空乏化する様に第1~第3の仕事関数と薄膜半導体層8の不純物濃度及び膜厚を設定することができる。 イ 引用発明3 前記アより,引用文献3には,次の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。 「縦型パワーMOSFETにおいて,溝内のゲート酸化膜の内側にゲート電極層を充填し,このゲート電極層の構成材料にp型のポリシリコンを用いること。」 (6)本願補正発明と引用発明1との対比 ア 本願補正発明において「前記第1導電型はn型,前記第2導電型はp型である」から「第1導電型」は「n型」に,「第2導電型」は「p型」に,それぞれ読み替えられる。 イ 引用発明1の「N+型基板」は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「半導体基板」に相当すると認められる。 ウ 引用発明1の「N+型基板上に積層されたN-型のエピタキシャル層」は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「前記半導体基板上に形成されたn型のドリフト層」に相当すると認められる。 エ 引用発明1の「エピタキシャル層の表面に形成されるP-型のボディ領域」は,下記相違点1を除いて,本願補正発明の「前記ドリフト層の表面部に形成されたp型のウェル領域」に相当すると認められる。 オ 引用発明1の「エピタキシャル層の表層部に形成されたN+型のソース領域」は,前記エ及び前記(3)ア(ウ)を考慮すると,本願補正発明の「前記ウェル領域の表面部に形成されたn型のソース領域」に相当すると認められる。 カ 引用発明1の「P+型のソースコンタクト領域」は,前記エ及び前記(3)ア(ウ)を考慮すると,本願補正発明の「前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成されたp型のウェルコンタクト領域」に相当すると認められる。 キ 引用発明1の「エピタキシャル層に形成され最深部がN-型領域に達しているトレンチ」は,その両端にソース領域が形成されている(前記(3)ア(イ)【0021】)から,本願補正発明の「前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチ」に相当すると認められる。 ク 引用発明1の「ボディ領域にトレンチの側面に沿って形成されたN型不純物が適当にドーピングされたチャネルインプラ領域」は,前記エを考慮すると,本願補正発明の「前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成されたn型のチャネル層」に相当すると認められる。 ケ 引用発明1の「トレンチの内面全域を覆うように形成されたゲート絶縁膜」は,トレンチの内面が側面と底面から構成されていること(前記(3)ア(ウ))から,本願補正発明の「前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜」に相当すると認められる。 コ 引用発明1の「ゲート絶縁膜の内側をN型不純物がドーピングされたポリシリコンで埋め尽くすことによりトレンチ内に埋設されたゲート電極」は,下記相違点2を除いて,本願補正発明の「前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極」に相当すると認められる。 サ 引用発明1の「エピタキシャル層上に積層された層間絶縁膜」は,前記(3)ア(ウ)を考慮すると,本願補正発明の「前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜」に相当すると認められる。 シ 引用発明1の「層間絶縁膜上に形成されたソース配線で,層間絶縁膜に形成されたコンタクト孔を介してソース領域及びソースコンタクト領域にコンタクトされたソース配線」は,本願補正発明の「前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極」に相当すると認められる。 ス 引用発明1の「N+型基板の裏面に形成されたドレイン電極」は,前記ウを考慮すると,本願補正発明の「前記半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極」に相当すると認められる。 セ 引用発明1においては「チャネルインプラ領域を形成する部分にゲート幅と直交する方向に対向する両側面を介して,N型不純物のイオンが斜め注入される」が,より詳細には,チャネルインプラ領域の深さ方向に同一角度同一密度でイオンが斜め注入され,トレンチの底面には注入されないこと(前記(3)ア(エ))から,本願補正発明における「前記トレンチの底面には,前記チャネル層のn型の不純物が形成されず」および「当該チャネル層の前記n型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一である」を満たすと認められる。 ソ 引用発明1の「チャネルインプラ領域」はトレンチの側面に沿って形成され,N-型領域とソース領域との間に形成されるものである(前記(3)ア(ウ))から,下記相違点4を除いて,本願補正発明の「前記チャネル層は前記トレンチの側面の前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され」を満たすと認められる。 タ すると,本願補正発明と引用発明1とは,下記チの点で一致するが,下記ツの点で相違すると認められる。 チ 一致点 「半導体基板と, 前記半導体基板上に形成されたn型のドリフト層と, 前記ドリフト層の表面部に形成されたp型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表面部に形成されたn型のソース領域と, 前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成されたp型のウェルコンタクト領域と, 前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチと, 前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成されたn型のチャネル層と, 前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜と, 前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極と, 前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜と, 前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極と, 前記半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極と, を備え, 前記トレンチの底面には,前記チャネル層のn型の不純物が形成されず, 前記チャネル層は前記トレンチの側面の前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され,当該チャネル層の前記n型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一である, 半導体装置。」 ツ 相違点 (ア)相違点1 本願補正発明においては半導体材料が「炭化珪素」であるのに対し,引用発明1においてはそうではない点。 (イ)相違点2 本願補正発明においては「前記ゲート電極は,p型の多結晶珪素からなる」のに対し,引用発明1においては「ゲート電極」はn型である点。 (ウ)相違点3 本願補正発明においては「前記トレンチの底面には,p型のボトムウェルが形成されて」いるのに対し,引用発明1においてはそうではない点。 (エ)相違点4 本願補正発明においては「チャネル層」はトレンチの全ての側面に形成されるのに対して,引用発明1においてはそうではない点。 (7)相違点についての検討 ア 相違点1について 引用文献2には,炭化珪素を半導体材料としたトレンチ型MOSFETが開示されており,炭化珪素は破壊電界や熱伝導率の点で有利であること(前記(4)ア(ア))から,トレンチを有する半導体装置である引用発明1において半導体材料として炭化珪素をもちいることが動機付けられるというべきであり,引用発明1において相違点1に係る構成を採用することは,当業者が容易になし得ることである。 イ 相違点2について 引用発明3には,溝内のゲート電極層の構成材料にp型のポリシリコンを用いることが開示されており,ゲート電極層としてp型のポリシリコンを用いるか,n型のポリシリコンを用いるかは,チャネルが空乏化するように仕事関数を調整するために当業者が適宜選択すべきことであり(前記(5)ア【0031】,【0034】,【0035】),引用発明1においてゲート電極にN型ポリシリコンを用いているところ,これをp型のポリシリコンとすることは,当業者が容易に設計できることである。 ウ 相違点3について 引用発明2では,トレンチ型MOSFETにおいてトレンチ底部を覆うようにp型層を設けて電界による破壊を防止することが開示されており,引用発明1において耐圧向上が課題とされている(前記(3)ア(ア)【0007】)ことから,引用発明1において,耐圧向上を図って,引用発明2のトレンチ底部のp型層を採用することで相違点3に係る構成を得ることは,当業者が容易になし得ることである。 エ 相違点4について 引用発明2では,トレンチ型MOSFETにおいてトレンチは四角形の平面形状を有する穴状のものとすることが開示されており,引用発明1においてトレンチを集積度高く配置するために,引用発明2の四角形の平面形状を有するトレンチを採用して,その結果生じたトレンチの4つの側面全てにチャネル層を形成することは,当業者が容易になし得ることである。その際にトレンチ内のゲート電極の電位を外部から制御するために外部に接続することは当然のことであり,引用発明1において具体的にはゲート電極は層間絶縁膜に形成されたコンタクト穴を介してゲート配線が電気的に接続されているものである(前記(3)ア(イ)【0024】)から,引用発明1に引用発明2の四角形のトレンチを採用する際に,前記ゲート配線を用いてトレンチ内のゲート電極と電気的に接続を図ることは,当業者が適宜なしうる設計変更にすぎない。 (8)本願補正発明の効果について 本願補正発明の効果は,引用発明1ないし3の構成から当業者が予測できる程度のもので,格別なものではない。 なお,請求人は,本願補正発明について,「補償用のp型不純物分の濃度を高める必要がなく,p型のボトムウェル31形成のために要するイオン注入時間が短縮される。」という,格別な効果を主張している。引用発明1においてはイオンが斜め注入されトレンチの底面にイオンが注入されない(前記(3)ア(エ))から,引用発明2のトレンチ底部を覆うp型層を設ける際には,補償用のp型不純物分の濃度を高める必要がないものであって,請求人の主張する効果は当業者が予測できる程度のものである。 (9)まとめ 本願補正発明は,引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび したがって,前記2(1)又は(9)より,本件補正は,特許法第17条の2第3項又は同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明の特許性の有無について 1 本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成27年12月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。 「炭化珪素半導体基板と, 前記炭化珪素半導体基板上に形成された炭化珪素からなる第1導電型のドリフト層と, 前記ドリフト層の表面部に形成された炭化珪素からなる第2導電型のウェル領域と, 前記ウェル領域の表面部に形成された第1導電型のソース領域と, 前記ウェル領域の表面部であって前記ソース領域とは異なる領域に形成された第2導電型のウェルコンタクト領域と, 前記ソース領域の所定の領域に,少なくとも底面が前記ドリフト層で露出されるように形成されたトレンチと, 前記ウェル領域であって前記トレンチの側面に沿って形成された第1導電型のチャネル層と, 前記トレンチの前記底面および側面を覆うように形成されたゲート絶縁膜と, 前記ゲート絶縁膜上であって前記トレンチを充填するように形成されたゲート電極と, 前記ゲート電極,前記ゲート絶縁膜,および一部の前記ソース領域を覆うように形成された層間絶縁膜と, 前記層間絶縁膜と,当該層間絶縁膜に覆われていない前記ウェルコンタクト領域および前記ソース領域とを覆うように形成されたソース電極と, 前記炭化珪素半導体基板の前記ドリフト層が形成された側とは反対側に形成されたドレイン電極と, を備え, 前記ゲート電極は,第2導電型の多結晶珪素からなり, 前記トレンチの底面には,前記チャネル層の第1導電型の不純物が形成されず, 前記チャネル層は前記ドリフト層と前記ソース領域との間にのみ形成され,当該チャネル層の前記第1導電型の不純物濃度は前記チャネル層の深さ方向に均一であり, 前記第1導電型はn型,前記第2導電型はp型であることを特徴とする,半導体装置。」 2 引用発明1ないし3 引用発明1ないし3は,それぞれ,前記第2の2(3)ないし(5)のとおりである。 3 判断 本願発明は,本願補正発明から「第2導電型のボトムウェルが形成されており,」及び「前記トレンチの全ての側面の」という発明特定事項を削除したものである。 そうすると,本願発明にさらに前記発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の2(2)ないし(9)のとおり,引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様に,引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用文献1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 第4 結言 したがって,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないから,その余の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-014835

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