特許拒絶査定不服審判
2016-013708
情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピューター・プログラム
- 審判番号
- 2016-013708
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-005258外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年09月13日
- 審決日
- 2017年07月10日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サターン ライセンシング エルエルシー
- 【請求人代理人】宮田 正昭
- 【請求人代理人】山田 英治
- 【請求人代理人】佐々木 榮二
- 【請求人代理人】澤田 俊夫
- 【請求人代理人】特許業務法人大同特許事務所
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 5258「情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピューター・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日出願公開、特開2013-145451、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月13日の出願であって、平成28年1月25日付けで拒絶理由が通知され、同年3月16日付けで手続補正がなされたが、同年6月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月13日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成29年2月3日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)を通知し、同年4月27日付けで手続補正がなされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年6月23日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1~16に係る発明は、以下の引用文献A~Hに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.特開2008-293419号公報
B.特開2000-222133号公報
C.特開2008-269044号公報
D.特開2005-346353号公報
E.特開平5-100809号公報
F.国際公開第2010/140849号
G.特開2005-346354号公報
H.特開2011-54069号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由1
本願請求項1~14に係る発明は、以下の引用文献1~6に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開2000-222133号公報(拒絶査定時の引用文献B)
2.特開2011-54069号公報(拒絶査定時の引用文献H)
3.綾塚祐二,松下伸行,暦本純一,「HyperPalette:PDAを利用する複合計算機環境」,レクチャーノート/ソフトウェア学 23 インタラクティブシステムとソフトウェアVII,株式会社近代科学社,1999年12月20日発行,pp.109-118 (当審において新たに引用した文献)
4.特開2008-269044号公報(拒絶査定時の引用文献C)
5.特開平5-100809号公報(拒絶査定時の引用文献E)
6.国際公開第2010/140849号(拒絶査定時の引用文献F)
理由2
請求項1の「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー専有領域に接近したことを」「表示部の周辺に存在するユーザーを検出するユーザー検出部」が「検出したことに応じて、前記データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行」うことは、発明の詳細な説明に記載されておらず、請求項1と同様の記載のある請求項14,請求項1を引用して記載した請求項2~12に係る発明についても、同様であるから、請求項1~12,14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではなく、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第4 本願発明
本願請求項1~14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」~「本願発明14」という。)は、平成29年4月27日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
表示部と、
前記表示部の周辺に存在するユーザー並びにユーザーが所持する端末を検出するユーザー検出部と、
ユーザーが所持する端末とデータを送受信するデータ送受信部と、
前記ユーザー検出部がユーザーを検出したことに応じて、前記表示部に表示する被操作オブジェクトの処理を行なう演算部と、
を具備し、
前記演算部は、前記ユーザー検出部が2人以上のユーザーを検出したことに応じて、前記表示部の画面内に、前記ユーザー検出部が各ユーザーを検出した場所の近くにユーザー毎の被操作オブジェクトを表示するユーザー占有領域を設定するとともに、前記ユーザー占有領域以外の領域をユーザー間で共有する共通領域に設定し、
ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて、前記データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行ない、
前記演算部は、前記所持端末から受信したデータに対応する被操作オブジェクトを該当するユーザー占有領域に出現させる、
情報処理装置。」
なお、本願発明2~14の概要は以下のとおりである。
本願発明2~12は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明13は、本願発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」として記載した発明である。
本願発明14は、本願発明1の「情報処理装置」を「コンピューター・プログラム」として記載した発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献1には、次のア~ウのとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。以下、同様。
ア
「【0037】ディスプレイ5は、全ての会議出席者が書き込むことができる共通領域と、各出席者用に定められた個人領域とを有する。共通領域及び個人領域には、電子ペン1~4を用いて直接書き込んだり、あるいは電子ペン1~4を用いた操作によってLAN15に接続された他のコンピュータ(不図示)に格納されたファイルをその領域内に呼び出すことができる。電子ペン1~4により入力された情報や他のコンピュータから読み出されたファイルの情報は、記憶部12に一時的に格納され、CPU11の制御によりディスプレイ5に表示される。」
イ
「【0039】各領域に関する情報(座標情報)は、記憶部12内に表形式で格納されており、各電子ペン1~4の識別子と対応付けられている。図4は、記憶部12に表形式で格納されている座標情報の一例を示す図である。座標情報の1レコードは、領域の識別子と、その領域の形状を示す頂点の個数と、その各頂点の座標と、その領域が個人領域であるか共通領域であるかを示すフラグと、その領域が個人領域である場合に当該領域に入力することができる個人すなわち電子ペンを識別するための識別子とから構成されている。
【0040】会議出席者が電子ペン1~4のいずれかをディスプレイ5の表示面上に接触させると、ペン入力検知部13により、その接触された位置の座標が取得される。CPU11は、この座標に基いて記憶部12を検索し、接触された位置の座標を含む領域の座標情報を取得する。取得された座標情報は、CPU11に送られる。CPU11は、その座標情報を参照して、検出された位置の座標が含まれる領域がその電子ペンに割り当てられた領域即ち個人領域であるか、或いは共通領域であるかを判別する。検知された座標が個人領域内又は共通領域内にある場合は、そのペン入力は有効とされ、CPU11は電子ペンが接触している部分に点を描画したりメニューを表示したりする。また、検知された座標が個人領域及び共通領域のいずれにも含まれない場合は、この入力は無効とされる。」
ウ
「【0057】(第3実施形態)次に、本発明の第3実施形態について、図10~図17を参照して説明する。
【0058】図10は、本実施形態に係る電子情報表示装置を構成する表示部の外観斜視図である。同図において、108はその上面が水平となるように配置されているテーブルであり、テーブル108の上面にはディスプレイ107が設けられている。テーブル108の各辺には人検知部109が設けられている。人検知部109は、例えば、赤外線センサを多数並べて構成される。テーブル108上の、ディスプレイ107が存在しない部分には、電源スイッチや後述する領域分割を指示する領域分割指示ボタン等を有する制御パネル110が配置されている。電子情報表示装置は、その入力手段として、複数の電子ペン(図10の例では6本)101~106を有している。
【0059】図11は、本実施形態に係る電子情報表示装置のシステム構成を示すブロック図である。同図において、電子情報表示装置は、上述したディスプレイ107、制御パネル110及び人検知部109と、装置全体の制御を行う中央演算処理装置(CPU)111と、後述する処理を実行するためのプログラムを予め格納する例えばリードオンリーメモリ(ROM)やディスプレイ5に表示する画像データ等を一時的に格納するランダムアクセスメモリ(RAM)等からなる記憶部112と、電子ペン101~106により入力された情報を検知するペン入力検知部113と、電子情報表示装置を他の装置やネットワークに接続するためのネットワークインターフェース114とから構成されている。CPU111、記憶部112、ディスプレイ107、人検知部109、制御パネル110、ペン入力検知部113及びネットワークインターフェース114は、バス111aを介して互いに接続されている。CPU111、記憶部112及びネットワークインターフェース114は、図10には図示していない電子情報表示装置の本体部に設けられている。電子情報表示装置は、ネットワークインターフェース114を介してローカルエリアネットワーク(LAN)115に接続することが可能である。
【0060】ペン入力検知部113は、ディスプレイ107の表示面上に、その表示を阻害しないように設けられている。電子ペン101~106は、無線回線を介してペン入力検知部13に接続されており、各電子ペン101~106はそれぞれ互いに異なる周波数を出力するように構成されている。ペン入力検知部113は、電子ペン101~106から出力された周波数を認識することにより、検知したペン入力がどの電子ペンからの入力であるかを識別することができる。各会議出席者は、各々の電子ペンを操作して、データの入力或いはLAN115に接続されている他のコンピュータ(不図示)に格納されたファイルをディスプレイ107上の後述する共通領域または個人領域内に呼び出すことができる。電子ペン101~106により入力された情報や他のコンピュータから読み出されたファイルの情報は、記憶部112に一時的に格納され、CPU111の制御によりディスプレイ107に表示される。
【0061】人検知部109は、装置の電源がオンされるとともにテーブル108周囲の状態の監視を開始し、テーブル108の周囲のどこに人がいるかを検知する。
【0062】上記構成において、例えば会議の開始に先立って議長が電子情報表示装置の制御パネル110に設けられている領域分割指示ボタンを押下すると、人検知部109により装置の周囲に存在する会議出席者の人数及びその着座位置がCPU111に送られる。CPU111は、送られてきた会議出席者の人数及び着座位置に基いて、ディスプレイ107を共通領域と個人領域とに分割する。
【0063】このディスプレイ107の表示面の領域分割処理について、図12~図14を参照して詳細に説明する。図12は、上述した電子情報表示装置を用いてテーブル会議を行っている状態を示す図であり、図13及び図14は領域分割の手法を示す図である。なお、図13においては、ディスプレイ107以外の部分は説明のため省略して描かれている。また、説明のため、ディスプレイ107の4頂点をA、B、C及びDとし、各辺を辺AB、辺BC、辺CD及び辺DAとする。
【0064】同図に示すように正方形のディスプレイ107の4辺に5人の会議出席者116~120が存在する場合、人検知部109により、辺ABには2人、辺BC、辺CD及び辺DAにはそれぞれ1人の会議出席者が着座していることが検知される。次に、各辺を各辺に着座している会議出席者の人数で等分した線分AE、EB、BC、CD及びDAが求められ、各線分の中点a、b、c、d及びeが求められる。
【0065】領域を分割するための分割点は、2点間の距離を辺上の線分の長さで定義し、その長さを2等分する点として求められる。例えば、点aと点bとの2点間を分割する点は、線分abの中点Eとなる。また、点bと点cとの2点間の距離は線分bBと線分Bcとの合計となるので、点bと点cとの2点間を分割する点は2点からの距離が(bB+Bc)/2となる点、すなわち辺BC上の点Fとなる。
【0066】同様にして分割点を求めていくと、点cと点dの2点間を分割する点は点C、点dと点eとの2点間を分割する点は点D、点eと点aとの2点間を分割する点は点eからの距離が(eA+Aa)/2である点Gとなる。求められた各点E、F、C、D及びGと、ディスプレイ107の中心点Oを結ぶ直線が、各会議出席者のための個人領域を分割する境界線となる。
【0067】ディスプレイ107の中心部には、予め定められた大きさの共通領域が存在する。したがって、この共通領域の境界と、上述した手順により求められた境界線とを重ね合わせてこれらの境界線の交点を求めることにより、最終的な個人領域を構成する多角形の頂点が求められる。例えば図14に示すように、予め共通領域121の領域が正方形HIJKからなる領域として設定されている場合、会議出席者116の個人領域122は多角形AEMHLG、会議出席者117の個人領域123は多角形EBFNIM、会議出席者118の個人領域124は台形FCJN、会議出席者119の個人領域125は台形CDKJ、そして会議出席者120の個人領域126は台形DGLKとなる。
【0068】このように領域分割処理を行うことによって各会議出席者に割り当てられた個人領域は、たとえば第1実施形態の図4に示した座標情報と同様の形式で、記憶部112に登録される。
【0069】領域が分割されると、各会議出席者が使用する電子ペンを各個人領域に登録する作業を行う必要がある。この登録は、上述した第1実施形態の図5に示したフローチャートに従って行うことができるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0070】次に、会議中に会議出席者の人数が増減する場合について説明する。図15は、会議出席者の人数が増加した場合の領域分割手順を示すフローチャートであり、図16は会議出席者が増加した状態を示す説明図であり、図17は図16に示したように会議出席者が増加した場合の領域分割手順を示す説明図である。
【0071】人検知部109は、常にテーブル108周囲の人の状態を監視している(ステップS21)。この状態で、領域分割ボタンが押下されたか否かが判別される(ステップS22)。新たな会議出席者が座席についた時点で領域分割ボタンが押下されると、ステップS22の答は肯定となり、人検知部109から新たな会議出席者の着座位置が取得される(ステップS23)。図16に示した例では、新たな参加者127は辺BCに着座したことが人検知部109により検出され、その着座位置がCPU111に送られる。
【0072】CPU111では、送られてきた会議出席者の着座位置に基いて、ディスプレイ107の領域再分割処理が行われる(ステップS24)。
【0073】この再分割処理は上述した領域分割処理と同様の手法により行われる。そして、求められた結果を用いて、再分割前から存在していた領域即ち共通領域121及び個人領域122~126については座標情報の更新が行われ(ステップS25)、新たな会議出席者のための個人領域128については新たな座標情報が作成され、記憶部112に登録される(ステップS26)。この結果、図17に示すように、会議出席者117の個人領域123の座標情報は多角形EBFNIMから台形EBIMに更新され、会議出席者118の個人領域124は台形FCJNから台形BCPIに更新され、会議出席者119の個人領域125は台形CDKJから台形C’DKJ’に更新される。また、新たな会議出席者127の個人領域128は多角形cCC’J’JPとして登録される。新たな会議出席者127の個人領域128については、上述した手法によって電子ペンの登録が行われる。
【0074】なお、会議出席者の人数が減少する場合は、会議出席者がテーブルを離れた時点で領域分割ボタンが押下されると、人検知部109によりどの会議出席者が退席したかが検知され、その会議出席者が着席していた辺の人数を1減少させて再分割が行われる。そして、再分割の後に、退席した会議参加者の領域を示す座標情報が記憶部112から削除され、これに伴い境界の座標が変更された個人領域の座標情報が更新される。
【0075】以上説明したように、本実施形態によれば、会議出席者の座席位置に応じて個人領域を適切に自動で分割することができ、また、会議出席者の人数が会議中に増減した場合であっても領域の再分割を容易に行うことができる。」
上記下線部の記載によれば、引用文献1には、
「ディスプレイ107がその上面に設けられたテーブル108と、
テーブル108の各辺に設けられ、赤外線センサを多数並べて構成された人検知部109と、
入力手段としての複数の電子ペン101~106と、
装置全体の制御を行う中央演算処理装置(CPU)111と、
を有する電子情報表示装置であって、
人検知部109は、装置の電源がオンされるとともにテーブル108周囲の状態の監視を開始し、テーブル108の周囲のどこに人がいるかを検知し、
電子情報表示装置の制御パネル110に設けられている領域分割指示ボタンを押下すると、人検知部109により装置の周囲に存在する会議出席者の人数及びその着座位置がCPU111に送られ、CPU111は、送られてきた会議出席者の人数及び着座位置に基いて、ディスプレイ107を予め定められた大きさのディスプレイ107の中心部にある共通領域と、個人領域とに分割し、
共通領域は、全ての会議出席者が書き込むことができる領域であり、個人領域は、各出席者に定められた領域であり、
電子ペン101~106によるペン操作入力により、会議出席者は、他のコンピュータに格納されたファイルをディスプレイの共通領域または個人領域内に呼び出すことができ、
他のコンピュータから読み出されたファイルは、CPU111の制御によりディスプレイ107に表示される、
電子情報表示装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
2.引用文献2について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献2には、次のア~ウのとおりの記載がある。
ア
「【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、人の存在を検知する検知手段を備え、前記検知手段によって検知された情報に基づいて画面を分割し、各分割画面の表示方向を異ならせて表示し、前記分割画面の表示状態を決定することを特徴とする表示装置を提供する。
【0009】
このようにすることで、視認者に適した分割画面の表示を自動的にすることが可能となり、視認者による煩雑な操作が必要なくなる。ここで、分割画面とは、同一の表示部に表示され、互いに区別される複数の異なる画面表示であり、その個数は問わない。また、各分割画面に表示される内容は同一でもよく、また異なる内容の表示であってもよく、テレビ画像のような動画であってもよく、また操作によって入力等ができるアプリケーションソフトの表示であってもよい。
【0010】
また検知手段とは圧電変換素子、光電変換素子、熱電素子、加速度センサ、音検知センサなど物理的変化量を検知して電気信号に変換するすべての素子を含むものとする。」
イ
「【0023】
本実施形態では撮像素子400を用いた携帯電話100について説明するが、本発明は図2に示すような撮像素子400と表示部200を備えた机などについても応用することが可能である。」
ウ
「【0028】
次に視認者の操作により撮像素子400が起動され携帯電話100の周囲の撮影を開始し(S103)、得られた画像情報から画像処理を行い、人間の顔を抽出する(S104)。そして抽出された顔の数を判断し(S105)抽出された顔の数が二つ以上であると判断されたときは、抽出された顔の数N個(Nは自然数)に分割画面を表示する設定を行う(S107)。また、S105において顔が一つしか抽出されないときは1画面表示のままテレビ画像の表示を行い(S106)、操作を終了する(S112)。
【0029】
また、S107において分割画面の表示数をNと設定した後に、抽出された顔ごとの座標を検出し(S108)、得られた座標情報から分割画面の表示状態を決定する(S109)。そして表示状態決定後に撮像素子400を終了させ(S110)、S109において決定された表示状態に基づきテレビ画像のN画面表示を行って(S111)、操作を終了する(S112)。
【0030】
以上では画面にテレビ画像が表示される例を説明したが、表示される内容はどんなものでもよく、写真、ゲーム画像、アプリケーションソフトの表示画像のようなものであってもよい。
【0031】
ここで表示画像がアプリケーションソフトの表示画像のようなものであり、視認者の操作によって数値の入力等できるときは、視認者は操作部300等の操作によって入力する分割画面を選択し、選択された分割画面にのみ入力が行えるような構成となっていてもよい。」
以上によれば、引用文献2には、
「撮像素子400と表示部200とを備えた表示装置において、
撮像素子400により、周囲の撮影を開始し、得られた画像情報から画像処理を行い、人間の顔を抽出し、そして抽出された顔の数を判断し、抽出された顔の数が二つ以上であると判断されたときは、抽出された顔の数N個(Nは自然数)に分割画面を表示する設定を行い、顔が一つしか抽出されないときは1画面表示のままの表示を行い、
各分割画面の表示方向を異ならせて表示し、前記分割画面の表示状態を決定し、
各分割画面に表示される内容は、写真、ゲーム画像、アプリケーションソフトの表示画像などどんなものでもよく、
視認者の操作によって数値の入力等できるときは、視認者は操作部300等の操作によって入力する分割画面を選択し、選択された分割画面にのみ入力が行える、
表示装置。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
3.引用文献3について
当審拒絶理由に引用した上記引用文献3には、次のとおりの記載がある。
「2.3 連携の方法(2):PDA-机間のオブジェクトの移動
PDAを机上のオブジェクトに重ねた場合などに選べるメニューの一部として、オブジェクトを机からPDAに移動する、逆にPDAから机に移動する、というものを用意するのが、最も単純なPDAと計算機化された机の連携方法である。これも内部の自由度を利用していることになるが、外部の自由度を利用することにより、より直観的な操作を用いて連携を行うこともできる。例えば、図4のように机に対して傾けるという操作により、PDAから机へとオブジェクトが滑り落ちるというメタファで連携を表現することができる。
これに机からPDAへのオブジェクトの移動の表現も付け加えるために、PDAを机に対して傾け、傾けた方向に動かせば机からPDAへのオブジェクトの移動が起こり、その逆方向に動かせばPDAから机へのデータの移動が起こる、という操作(Scoop-and-Spread)を新たに導入する(図5)。これは”掬う”というメタファに基づいた操作になっている。連続した動作により複数のオブジェクトを掬う/置くことも可能である。」(p.112,第8-21行)
したがって、引用文献3には、
「オブジェクトを表示する机に対して、PDAを机に対して傾けることにより、オブジェクトをPDAから机に移動するオブジェクトの移動装置」の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア
引用発明の「ディスプレイ107」は、本願発明1の「表示部」に相当し、引用発明の「ディスプレイがその上面に設けられた」「テーブル108の各辺に設けられ、赤外線センサを多数並べて構成された人検知部109」と、本願発明1の「表示部の周辺に存在するユーザー並びにユーザーが所持する端末を検出するユーザー検出部」とは、いずれも、「表示部の周辺に存在するユーザーを検出するユーザー検出部」である点で共通する。
イ
引用発明の「中央演算処理装置(CPU)111」は、「領域分割指示ボタンを押下すると、」「人検知部109により装置の周囲に存在する会議出席者の人数及びその着座位置」に基づいて、ディスプレイを制御するから、本願発明1の「前記ユーザ検出部がユーザーを検出したことに応じて、前記表示部に表示する被操作オブジェクトの処理を行なう演算部」とは、「前記ユーザ検出部が検出したユーザーに応じて、前記表示部の表示を制御する演算部」である点で共通する。
ウ
引用発明の「共通領域」、「個人領域」は、それぞれ、本願発明1の「共通領域」、「ユーザー占有領域」に相当するから、引用発明の「電子情報表示装置の制御パネル110に設けられている領域分割指示ボタンを押下すると、人検知部109により装置の周囲に存在する会議出席者の人数及びその着座位置がCPU111に送られ、CPU111は、送られてきた会議出席者の人数及び着座位置に基いて、ディスプレイ107を予め定められた大きさのディスプレイ107の中心部にある共通領域と、個人領域とに分割」し、「共通領域は、全ての会議出席者が書き込むことができる領域であり、個人領域は、各出席者に定めれた領域で」あることと、本願発明1の「前記演算部は、前記ユーザー検出部が2人以上のユーザーを検出したことに応じて、前記表示部の画面内に、前記ユーザー検出部が各ユーザーを検出した場所の近くにユーザー毎の被操作オブジェクトを表示するユーザー占有領域を設定するとともに、前記ユーザー占有領域以外の領域をユーザー間で共有する共通領域に設定」することとは、いずれも、「前記演算部は、前記ユーザー検出部が検出したユーザーに応じて、前記表示部の画面内に、前記ユーザー検出部が各ユーザーを検出した場所の近くにユーザー毎のユーザー占有領域を設定するとともに、前記ユーザー占有領域以外の領域をユーザー間で共有する共通領域に設定」する点で共通する。
エ
引用発明の「電子ペン101~106によるペン操作入力により、会議出席者は、他のコンピュータに格納されたファイルをディスプレイの共通領域または個人領域内に呼び出すことができ」ることと、本願発明1の「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて、前記データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行な」うこととは、いずれも、「他の端末との間でデータの送受信を行な」う点で共通する。
オ
引用発明の「他のコンピュータから読み出されたファイルは、CPU111の制御によりディスプレイ107に表示される」ことと、本願発明1の「前記演算部は、前記所持端末から受信したデータに対応する被操作オブジェクトを該当するユーザー占有領域に出現させる」こととは、いずれも、「前記演算部は、前記他の端末から受信したデータを該当するユーザー占有領域に出現させる」という点で共通する。
カ
引用発明の「電子情報表示装置」は、「情報処理装置」ともいい得るものである。
したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。
[一致点]
「表示部と、
前記表示部の周辺に存在するユーザーを検出するユーザー検出部と、
前記ユーザー検出部が検出したユーザーに応じて、前記表示部の表示を制御する演算部と、
を具備し、
前記演算部は、前記ユーザー検出部が検出したユーザーに応じて、前記表示部の画面内に、前記ユーザー検出部が各ユーザーを検出した場所の近くにユーザー毎のユーザー占有領域を設定するとともに、前記ユーザー占有領域以外の領域をユーザー間で共有する共通領域に設定し、
他の端末との間でデータの送受信を行ない、
前記演算部は、前記他の端末から受信したデータを該当するユーザー占有領域に出現させる、
情報処理装置。」
[相違点1]
「前記表示部の周辺に存在するユーザーを検出するユーザー検出部」が、本願発明1では、「ユーザーが所持する端末」も検出するのに対し、引用発明ではそうではない点。
[相違点2]
演算部による「ユーザー検出部が検出したユーザに応じ」た「表示部の表示」の制御が、本願発明1では、「ユーザー検出部のユーザーの検出に応じ」て制御されるのに対し、引用発明では「領域分割指示ボタンの押下」により制御される点。
[相違点3]
表示部への表示、演算部での表示部の処理が、本願発明1では、「被操作オブジェクトの処理を行なう」、「ユーザ毎の被操作オブジェクトを表示する」、「データに対応する被操作オブジェクト」「を出現させる」と特定されているのに対し、引用発明では、そのような特定のない点。
[相違点4]
ユーザー占有領域と共通領域の設定が、本願発明1では、「前記ユーザー検出部が2人以上のユーザーを検出したことに応じて」行われるのに対し、引用発明では、「領域分割指示ボタンを押下」すると、「人検知部109により装置の周囲に存在する会議出席者の人数及びその着座位置」により行われ、人数が2人以上であることに応じてではない点。
[相違点5]
他の端末との間でのデータの送受信が、本願発明1は、「ユーザが所持する端末とデータを送受信するデータ送受信部」を備え、データの送受信を、「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて、前記データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行な」うのに対し、引用発明では、電子ペンの操作により、他のコンピュータから読み出される点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、先に、上記相違点5について検討する。
引用発明における「電子ペン101~106」は、「他のコンピュータに格納されたファイルをディスプレイの共通領域または個人領域内に呼び出す」ことはできるが、「電子ペン101~106」自体は、ファイルなどのデータを記憶するものではなく、データを送受信するものではない。また、引用発明の「電子ペン101~106」は、その出力する周波数で電子ペンを特定し、座標を指示するものであって、ユーザーが所持している電子ペンをそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを検出するものでもない。
そうすると、引用発明に引用発明3を適用したとしても、相違点5に係る本願発明1の構成である「データの送受信」を「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて」行うことは、当業者が容易に想到し得た事項とすることはできない。
また、相違点5に係る本願発明1の「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて、」「データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行な」うという構成は、上記引用文献1-6には記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、引用発明2,3、引用文献4~6に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)理由2(特許法第36条第6項第1号)について
平成29年4月27日付けの手続補正書による補正により、記載不備は解消した。
2.本願発明2~12について
本願発明2~12は、本願発明1を限定したものであり、本願発明1の相違点5に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用発明2,3、引用文献4~6に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3.本願発明13について
本願発明13は、本願発明1の「情報処理装置」を「情報処理方法」として記載した発明であり、本願発明1の相違点5に係る構成に対応する「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを検出したことに応じて、前記所持端末との間でデータ送受信を行なう」という構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用発明2,3、引用文献4~6に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4.本願発明14について
本願発明14は、本願発明1の「情報処理装置」を「コンピューター・プログラム」として記載した発明であり、本願発明1の相違点5に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用発明2,3、引用文献4~6に記載された技術事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第7 原査定について
上記「第6 対比・判断」のとおり、本願発明1~14は、「ユーザーの所持端末がそのユーザーのユーザー占有領域に接近したことを前記ユーザー検出部が検出したことに応じて、」「データ送受信部は前記所持端末との間でデータ送受信を行う」構成を有しており、拒絶査定において引用された引用文献A~Hに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明1~14は、引用発明及び引用発明2,3、引用文献4~6に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-013708