特許拒絶査定不服審判
2024-010410
情報処理装置および情報処理方法
- 審判番号
- 2024-010410
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-565666
- 請求日
- 2024年06月24日
- 審決日
- 2025年10月20日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】サターン ライセンシング エルエルシー
- 【請求人代理人】宮田 正昭
- 【請求人代理人】山田 英治
- 【請求人代理人】佐々木 榮二
- 【請求人代理人】澤田 俊夫
- 【請求人代理人】弁理士法人大同特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 篠塚 隆
- 審判官 野崎 大進
- 審判官 米倉 明日香
- 分類
- P18 .113-WY (G06F) / P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-565666「情報処理装置および情報処理方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月16日国際公開、WO2020/145071、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2019年(令和元年)12月19日(優先権主張 平成31年1月7日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年10月31日付け 拒絶理由通知書
令和 6年 1月25日 意見書、手続補正書の提出
令和 6年 4月22日付け 拒絶査定
令和 6年 6月24日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 7年 5月20日付け 拒絶理由通知書
令和 7年 8月22日 意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和6年4月22日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特表2015-501022号公報
第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願請求項1、3、6-10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特表2015-501022号公報(拒絶査定時の引用文献A)
第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和7年8月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
状況を判断する処理と、ユーザの操作に基づくことなく、上記判断された状況に適した音声コマンドを受け付け可能にする処理と、ユーザによる音声コマンドの入力前に上記受け付け可能とされた音声コマンドを上記ユーザに通知する処理とを制御する制御部を備える
情報処理装置。
【請求項2】
上記制御部は、上記状況を判断する処理を、上記ユーザの事前の設定または上記ユーザの行動履歴に基づいて制御する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
上記制御部は、ユーザの操作に基づいて、上記受け付け可能とされた音声コマンドとは異なる音声コマンドを受け付け可能とする処理をさらに制御する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
上記状況は、上記情報処理装置を含む音声操作対応機器が持つアプリケーション機能部の状況を含む
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
上記音声操作対応機器は、スマートテレビまたはスマートスピーカを含む
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
センサ部をさらに備え、
上記状況は、上記センサ部で取得される状況を含む
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
上記状況は、上記ユーザの状況を含む
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
外部機器と通信を行う通信部をさらに備え、
上記状況は、上記外部機器で取得される状況である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
上記制御部は、入力された音声コマンドが上記受け付け可能とされた音声コマンドであるとき、該音声コマンドを実行する処理をさらに制御する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
状況を判断する手順と、
ユーザの操作に基づくことなく、上記判断された状況に適した音声コマンドを受け付け可能にする手順と、
ユーザによる音声コマンドの入力前に上記受け付け可能とされた音声コマンドを上記ユーザに通知する手順とを有する
情報処理方法。」
第5 引用文献、引用発明
1 引用文献1、引用発明
(1)引用文献1
令和7年5月20日付けの拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項の記載がある(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア 「【0095】
一実施形態では、機器60にインストールされたバーチャルアシスタント1002は、ハンズフリーコンテキストを自動的に検出する。このような検出は、ユーザが機器60の画面とインタラクトすること、又はGUIを適切に操作することが困難であるか若しくは不可能であるようなシナリオ又は状況を判定するための任意の手段によって行うことができる。
・・・
(中略)
・・・
【0098】
一実施形態では、ハンズフリーコンテキストにある間にテキストメッセージ470を受信すると、マルチモーダルバーチャルアシスタント1002が、テキストメッセージの着信を示すビープ音又はトーンなどの音声指示を機器60に出力させる。上記に述べたように、ユーザは、公知の技術に従ってスライダ472をアクティベートして、メッセージ471に返信するか又は他の方法でメッセージ471とインタラクトすることができる(例えば、ハンズフリーモードが誤って検出された場合、又はユーザが車の運転を停止することを選択するか、若しくは他の方法で機器60とユーザとのハンズオンインタラクションができるようにする場合)。また、ユーザは、アシスタント1002と音声ダイアログを行うことによって、ハンズフリー方式でアシスタント1002とインタラクションを行うこともできる。」
【0099】
一実施形態では、ユーザは、ハンズフリーコンテキストに適した任意の適当な機構によって音声ダイアログを開始する。例えば、ユーザがBlueToothを装備した車を運転しており、機器60が車と通信しているような環境では、アクセスが容易なボタン(例えば、車のハンドルに取り付けられたもの)を設けることができる。このボタンを押すことでアシスタント1002との音声ダイアログが開始され、ユーザが、BlueTooth接続を介して、車内に設置されたマイクロフォン及び/又はスピーカを通じてアシスタント1002と通信することが可能となる。また、ユーザは、機器60自体、若しくはヘッドセット、若しくは他の任意の周辺機器に設けられたボタンを押すことによって、又はユーザが音声ダイアログを開始したいことをアシスタント1002に伝える他の何らかの明確な動作を行うことによって音声ダイアログを開始することもできる。別の例として、ユーザは、アシスタント1002によって理解され、音声ダイアログを開始するコマンドを発語することができる。ユーザにアシスタント1002との音声ダイアログを容易に開始させることができる他の多くの技術を提供することができる点は当業者であれば認識されるところであろう。音声ダイアログを開始させるために使用される機構は、ユーザ側のハンド・アイ・コーディネーションを必要としないことにより、ユーザが車の運転などの主要なタスクに集中することを可能とし、及び/又は、図2、3A、及び3Bに示されるようなGUIとインタラクトする能力を妨害、阻害、規制、又は制限するようなハンディキャップを有する個人が行うことが可能なものであることが好ましい。
【0100】
音声ダイアログがいったん開始すると、アシスタント1002は音声入力を聞き取る。一実施形態では、アシスタント1002は、ハンズフリーコンテキストにある間、ユーザによって容易に検出される特定の出力機構により音声入力を受け取ったことを知らせる。1つの例として、ビープ音又はトーン、及び/又は運転中であってもユーザに見えやすい、車のダッシュボード上の視覚的出力、及び/又は他の特定の機構によるものがある。音声入力は、公知の音声認識技術を使用して処理される。次いでアシスタント1002は、音声入力により支持(当審注:「指示」の誤記として認められる。)された動作を実行する。一実施形態では、アシスタント1002は、スピーカ(機器60又は車内に設置された)、ヘッドホンなどにより出力することができる音声出力を与えることにより、ユーザとの音声ダイアログを続ける。例えば、アシスタント1002はテキストメッセージ、電子メッセージなどの内容を読み上げ、音声でユーザに選択肢を与えることができる。
・・・
(中略)
・・・
【0104】
図5Bに示されるように、着信メッセージをユーザに対して読み上げた後、アシスタント1002は次に、ユーザが「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることをユーザに伝える。この場合もやはり、このような出力は一実施形態では音声で(すなわち、言葉で)与えられる。このようにして、本発明のシステムは、ユーザがテキストフィールド、ボタン、及び/又はリンクを見る必要がなく、タッチによる直接操作又は画面上のオブジェクトとのインタラクションを必要としない点でハンズフリーコンテキストによく適合した方法でユーザに利用可能な動作を知らせるものである。図5Bに示されるように、一実施形態では、音声出力は、画面上にエコーされる(574)が、このような音声出力の表示は必須ではない。一実施形態では、画面上に表示されたエコーメッセージは周知の機構に従って自動的に上方にスクロールする。
【0105】
この例では、ユーザは「『いいよ、6時にいくね』と返信」と言う。図5Bに示されるように、一実施形態では、ユーザの音声入力がエコーされる(575)ことによって、ユーザはそれが正しく理解されたことを確認することができる。更に、一実施形態では、アシスタント1002がユーザの音声入力を聴覚的な形態で繰り返すことにより、ユーザは画面を見ることができない場合であってもユーザのコマンドが理解されたことを確認することができる。したがって、本発明のシステムは、いずれもハンズフリーコンテキストで、ユーザがその時点での操作環境では不可能又は不適当な方法で画面を見るか又は機器60とインタラクトする必要なくして、ユーザが返信コマンドを開始し、返信を作成し、コマンド及び作成した返信が正しく理解されたことを確認することができる機構を提供するものである。」
イ 【図5B】「
[図:0001428754000001.jpg]
」
(2)引用発明
上記(1)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「機器60にインストールされたバーチャルアシスタント1002は、ハンズフリーコンテキストを自動的に検出し、
このような検出は、GUIを適切に操作することが困難であるか若しくは不可能であるようなシナリオ又は状況を判定するための任意の手段によって行うことができ、
ハンズフリーコンテキストにある間にテキストメッセージ470を受信すると、マルチモーダルバーチャルアシスタンス1002が、テキストメッセージの着信を示すビープ音又はトーンなどの音声指示を機器60に出力させ、
ユーザはアシスタント1002によって理解され、音声ダイアログを開始するコマンドを発話することができ、
音声ダイアログがいったん開始すると、アシスタンスと1002は音声入力を聞き取り、
次いでアシスタント1002は、音声入力により指示された動作を実行し、
着信メッセージをユーザに対して読み上げた後、アシスタント1002は次に、ユーザが「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることをユーザに伝え、
このような出力は音声で与えられ、
ユーザは「『いいよ、6時にいくね』と返信」と言い、
アシスタント1002がユーザの音声入力を聴覚的な形態で繰り返す
機器60。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「機器60」は、「インストールされたバーチャルアシスタンス1002」によって、ユーザの音声入力により指示された動作を実行するものであるから、本願発明1の「情報処理装置」に相当する。
イ 引用発明の「ハンズフリーコンテキスト」の「検出」は、「GUIを適切に操作することが困難であるか若しくは不可能であるような」「状況を判断する」から、本願発明1の「状況を判断する処理」に相当する。
ウ 引用発明の「音声ダイアログがいったん開始すると、アシスタンスと1002は音声入力を聞き取」ることは、本願発明1の「音声コマンドを受け付け可能にする処理」に相当する。
エ 引用発明において「着信メッセージをユーザに対して読み上げた後、ユーザが「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることをユーザに音声で伝え」るが、その後、「ユーザは「『いいよ、6時にいくね』と返信」と言」うから、引用発明の「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることをユーザに伝えることは、受け付け可能な音声コマンドを通知しているといえる。
オ 引用発明の「ユーザは「『いいよ、6時にいくね』と返信」と言」うタイミングは、ユーザが「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることを伝えられたあとであるから、ユーザが「返信」という前に、「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることがユーザに通知されることは明らかである。よって、上記ウ及びエを踏まえれば、引用発明の「着信メッセージをユーザに対して読み上げた後、ユーザが「返信するか、もう一度読む」(574)ことができることをユーザに音声で伝え」ることは、本願発明1の「ユーザによる音声コマンドの入力前に上記受け付け可能とされた音声コマンドを上記ユーザに通知する処理」に一致する。
カ 引用発明は、上記ウからオで検討した処理をしているから、引用発明の「機器60」がそのような処理を制御する制御部を備えることは明らかである。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「状況を判断する処理と、音声コマンドを受け付け可能にする処理と、ユーザによる音声コマンドの入力前に上記受け付け可能とされた音声コマンドを上記ユーザに通知する処理とを制御する制御部を備える
情報処理装置。」
(相違点)
本願発明1では、ユーザの操作に基づくことなく、判断された状況に適した音声コマンドを受け付け可能にするものであるのに対し、引用発明は、音声コマンドを受け付け可能にしているものの、受け付け可能にする音声コマンドが、状況の判断の結果、ユーザの操作に基づくことなく、上記判断された状況に適した音声コマンドであることが特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
「判断された状況に応じた音声コマンド」を、「ユーザの操作に基づくことなく」、「受け付け可能にする」ことについて、このような構成が本願の優先日前において周知技術であったとはいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明に記載された技術的事項から、上記相違点に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2-9について
本願発明2-9は、本願発明1を減縮した発明である。したがって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明10について
本願発明10は、本願発明1に対応する「情報処理方法」の発明であって、上記1(2)で検討した相違点に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明できたとはいえない。
第7 原査定について
上記第6で説示したとおり、本願発明1-10は、当業者であっても、引用発明に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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