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特許拒絶査定不服審判

2016-013464

電波吸収体

審判番号
2016-013464
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2013-247808外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年09月08日
審決日
2017年06月19日
公報発行日
2017年08月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H05K) / P18 .575-WY (H05K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2013-247808「電波吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日出願公開、特開2014- 39074、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成20年1月22日(優先権主張 平成19年1月24日)に出願した特願2008-11318号の一部を平成25年11月29日に新たな特許出願としたものであって、平成25年12月26日付けで手続補正がなされ、平成27年2月5日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年4月10日付けで手続補正がなされ、同年9月25日付け最後の拒絶理由通知に対する応答時、同年12月2日付けで意見書のみ提出されたが、平成28年6月1日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対して、同年9月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年6月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし3に係る発明は、以下の引用文献1~3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2006-310353号公報 2.特開2004-193460号公報 3.特開2006-205524号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「抵抗膜層」について、「紙である」との限定を追加する(なおこれに伴って、請求項2における、引用する請求項1との重複する記載が形式的に省かれた)ものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、「抵抗膜層」について、「紙である」という事項は、当初明細書等(例えば段落【0018】)に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。 そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし3に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。 第4 本願発明 本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年9月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 平均繊維長2~11mmの導電性繊維を0.4~3質量%含有する紙である抵抗膜層とスペーサーと反射材層とを電波の入射方向から順に一層ずつ積層してなり、 前記抵抗膜層は1層のみであり、 前記導電性繊維が炭素繊維であり、 垂直入射に対し最大の電波吸収量を示す周波数において、当該最大電波吸収量、および当該最大電波吸収量を示す測定方向に直交する測定方向における電波吸収量がいずれも10dB以上であることを特徴とする電波吸収体。 【請求項2】 前記抵抗膜層が繊維長2~10mmのガラス繊維を含有してなる、請求項1記載の電波吸収体。 【請求項3】 保護層を表面の少なくとも一部に有してなる請求項1または2に記載の電波吸収体。」 第5 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、「電波吸収体」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 抵抗膜を誘電体層の片面側に設けると共に、誘電体層の反対面側に電波反射体を設けた電波吸収体であって、抵抗膜を水分を含む外気から封止したことを特徴とする電波吸収体。」 イ.「【請求項10】 抵抗膜が極細導電繊維を含んだ膜であって、極細導電繊維が凝集することなく分散して互いに接触していることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の電波吸収体。」 ウ.「【0001】 本発明は、例えば高速道路のETC料金所などのITS分野で電波障害や誤動作をなくすために利用される電波吸収体、特に透視性を有する電波吸収体であって、良好な電波吸収性能を長期間維持できる耐久性に優れた電波吸収体に関する。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0004】 そこで、本出願人は、上記の問題を解決すべく、極細導電繊維を含んだ透明な抵抗膜と光を透過する電波反射体との間に透明な誘電体層を備え、抵抗膜の外側に透明な保護層を備えた透明電波吸収体を提案した(特願2004-081939)。この透明電波吸収体は、極細導電繊維を含んだ抵抗膜がITO抵抗薄膜と遜色のない良好な透明性を有し、しかも、極細導電繊維を含んだ抵抗膜の基材を自由に選択できるため、耐候性の良好な基材を選択することで、ITO抵抗薄膜の基材に用いるPETに比べて耐候性を向上させることができ、短期間のうちに劣化して透明性の著しい低下を招く心配を解消できるものである。 【0005】 しかしながら、この透明電波吸収体は、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が変化するため、長期間にわたって良好な電波吸収性能を維持することが難しいという問題があり、この問題は前記特許文献1の透明電波吸収体においても見られた。その原因は明らかでないが、空気中の水分(湿気)が大きく影響しているものと推測される。 【特許文献1】特開平5-335832号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は上記の問題に対処するためになされたもので、抵抗膜の電気抵抗(表面抵抗率)が長期間に亘ってほぼ一定し、初期の良好な電波吸収性能を長期間に亘って維持できる、耐久性に優れた電波吸収体を提供することを、解決課題としている。」 エ.「【0023】 図1は本発明の一実施形態に係る電波吸収体の断面図、図13の(a)(b)(c)は同電波吸収体の抵抗膜を示す概略断面図、図14は同抵抗膜のカーボンナノチューブを正面から見た分散状態を示す模式図である。 【0024】 この電波吸収体Aは、透視性の誘電体層1とその片面側(表面側:電波の入射する面側)に配置された透視性の表面被覆層4との間に透視性の抵抗膜3が設けられている。そして、この抵抗膜3の周囲には透視性或は透光性又は不透明な封止層6が形成され、この封止層6によって表面被覆層4と誘電体層1との周縁部同士が接合されている。また、誘電体層1の反対面側(裏面側)には光を透過する電波反射体2が設けられ、この電波反射体2の裏面側には透視性の裏面被覆層5が設けられ、これら誘電体層1と電波反射体2と裏面被覆層5とが接着剤などで一体化されている。」 オ.「【0030】 上記の抵抗膜3は、周波数帯域1~18GHzの電波吸収に適するように、自由空間の電波特性インピーダンスに合致する377Ω/□を目標値とする表面抵抗率を備えた透視性、好ましくは透明な薄膜であって、具体的には377±30Ω/□の表面抵抗率を備えたITO等の金属酸化物の蒸着膜や、極細導電繊維を含んだ同様の表面抵抗率を有する薄膜からなるものが好ましく用いられ、図1に示す実施形態の電波吸収体Aでは、後者の極細導電繊維を含んだ抵抗膜3が採用されている。 【0031】 この極細導電繊維を含んだ抵抗膜3は、極細導電繊維を分散させた塗液を塗布して形成した薄膜であって、極細導電繊維の含有量、塗膜厚み、分散状態などの諸条件を調節することにより、377±30Ω/□の表面抵抗率が得られるようにしたものである。この実施形態では、極細導電繊維としてカーボンナノチューブを使用し、カーボンナノチューブの目付け量が30~450mg/m2、好ましくは30~250mg/m2となるように、塗液のカーボンナノチューブの含有量や塗膜の厚みなどを調節して塗布することで、377±30Ω/□の表面抵抗率を備えた抵抗膜3を形成している。このような抵抗膜3は、カーボンナノチューブの目付け量(含有量、濃度)等に対応して抵抗膜3の表面抵抗率がほぼ定まり、表面抵抗率の大きいバラツキが生じにくい。尚、上記の目付け量は、抵抗膜3を電子顕微鏡で観察し、その平面面積に占めるカーボンナノチューブの面積割合を測定し、これに電子顕微鏡で観察した厚みとカーボンナノチューブの比重(グラファイトの文献値2.1~2.3の平均値2.2を採用)を乗算して算出した値である。 【0032】 極細導電繊維としては、上記のカーボンナノチューブが最も好ましく用いられるが、その他の繊維であっても抵抗膜3の表面抵抗率を377±30Ω/□にすることができるものであれば制限なく使用可能である。例えば、カーボンナノホーン、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバー、グラファイトフィブリルなどの極細長炭素繊維、白金、金、銀、ニッケル、シリコンなどの金属ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属繊維、酸化亜鉛などの金属酸化物ナノチューブ、ナノワイヤーなどの極細長金属酸化物繊維などの、直径が0.3~100nmで長さが0.1~20μm、好ましくは0.1~10μmのものが用いられる。」 カ.「【0040】 抵抗膜3は、バインダーのないカーボンナノチューブのみからなる薄膜であってもよいが、カーボンナノチューブの脱落防止性、表面抵抗率の安定性、透明性などのために、バインダーを使用することが好ましい。このバインダーとしては、熱可塑性樹脂、例えばポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデンなどのフッ素樹脂などの透明な樹脂が使用され、また、熱や紫外線や電子線や放射線で硬化する硬化性樹脂、例えばメラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケートなどのシリコーン樹脂などの透明な樹脂も使用される。なお、このバインダーとしては透光性樹脂を使用してもよく、このような樹脂を使用しても抵抗膜3を薄くすることで透視性を有する抵抗膜3とすることができる。また、このバインダーにはコロイダルシリカのような無機材を添加してもよく、その場合は表面硬度や耐摩耗性に優れた抵抗膜3が形成される。」 ・上記引用文献1に記載の「電波吸収体」は、上記「ア.」、「エ.」の記載事項、及び図1によれば、誘電体層1と、誘電体層1の片面側(電波の入射する面側)に設けられた抵抗膜3と、誘電体層1の反対面側(裏面側)に設けられた電波反射体2と、が一体化されている電波吸収体である。 ・上記「ウ.」、「エ.」の記載事項によれば、電波吸収体は、透明(透視性を有する)電波吸収体であり、抵抗膜3についても、透明な(透視性を有する)抵抗膜であることを前提とするものであるといえる。 ・図1から明らかなように、抵抗膜3は一層のみである。 ・上記「イ.」「オ.」の記載事項によれば、抵抗膜3は、極細導電繊維を含んだ膜であり、極細導電繊維としては、カーボンナノチューブの他に、カーボンナノワイヤー、カーボンナノファイバーなどの極細長炭素繊維が用いられ、その長さは0.1~20μm(好ましくは0.1~10μm)である。 ・上記「カ.」の記載事項によれば、抵抗膜3には必要に応じて透明な樹脂であるバインダーが使用される。 したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、上記引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「誘電体層と、前記誘電体層の片面側(電波の入射する面側)に設けられた抵抗膜と、前記誘電体層の反対面側(裏面側)に設けられた電波反射体と、が一体化されている電波吸収体であって、 前記抵抗膜は、極細導電繊維を含んだ透明な(透視性を有する)膜からなる一層のみであって、当該極細導電繊維としては、極細長炭素繊維が用いられ、その長さは0.1~20μm(好ましくは0.1~10μm)であり、 前記抵抗膜には、必要に応じて透明な樹脂であるバインダーが使用される、電波吸収体。」 2.引用文献2について 同じく原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、「電波吸収体」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 電気的損失および/または磁気的損失を呈するシートを、複数枚、かつ、吸収したい電波の周波数および/または入射角度に応じた間隔で層状に配置してなる電波吸収層を有する電波吸収体。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【請求項3】 シートが導電性繊維と非導電性繊維とを含む混抄紙である、請求項1または2に記載の電波吸収体。 【請求項4】 導電性繊維が炭素繊維である、請求項3に記載の電波吸収体。 【請求項5】 炭素繊維は、平均繊維長が1~60mmの範囲内にあり、かつ、混抄紙中に0.08~5重量%の範囲内で含まれている、請求項4に記載の電波吸収体。」 イ.「【0014】 【発明の実施の形態】 図1において、電波吸収体は、電波の到来側から順に、インピーダンス整合層1と、電波吸収層2と、電波反射層3との層状構成を有する。電波吸収層2は、電気的損失および/または磁気的損失を呈するシート2a、2bを、吸収したい電波の周波数および/または入射角度に応じてスペーサ2c、2d、2eによって間隔をおいて層状に配置してなる。 【0015】 上記において、電気的損失を呈するシートは、電気的損失を担う材料、すなわち、電気的損失材を内包するシートである。電気的損失材は、それに流れる微少な電流によって電波エネルギーを熱エネルギーに変換するもので、たとえば、カーボンブラック粉、カーボンマイクロコイル粉、グラファイト粉等の導電性粉体や、炭素繊維、金属繊維、金属メッキ繊維等の導電性繊維のようなものである。炭素繊維や炭化ケイ素繊維を製造する際の焼成温度を制御することによって得られる半導体繊維であってもよい。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0017】 そのような電気的損失、磁気的損失を呈するシートは、いろいろな方法によって製造することができるが、製造の容易さから、導電性繊維と非導電性繊維とを含む混抄紙を用いるのが好ましい。導電性繊維としては、炭素繊維、金属繊維、金属メッキ繊維等を用いることができる。また、非導電性繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキザゾール繊維、ポリ乳酸繊維等を用いることができる。非導電性繊維は、なかでも、体積抵抗率が用いる導電性繊維のそれよりも2桁以上大きいものを選択するのが好ましい。 【0018】 混抄紙は、これらの導電性繊維と非導電性繊維とのそれぞれ少なくとも1種と水とを混合し、スラリーにして抄きあげる湿式抄紙法や、これらの導電性繊維と非導電性繊維とのそれぞれ少なくとも1種を空気中で攪拌、混合し、シート状に捕集する乾式抄紙法によって得ることができる。必要に応じて、水酸化アルミニウム等の無機結合材や、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、パラフィン、アクリル繊維等の有機結合材を添加してもよい。湿式抄紙法による場合、導電性繊維としては、低比重であるために混抄しやすく、また、アスペクト比を大きくとれるために使用量が少なくてすむ炭素繊維を用いるのが好ましい。その場合、炭素繊維は、あまり短いと繊維同士が重なりにくくなって接点の数が減少するようになり、接点の減少を補おうとして使用量を増やすと製造コストが高くなる。また、平均繊維長が長くなると、一見、繊維同士の重なり合いが多くなって使用量が少なくてすむように思えるが、逆に折れやすくなるのでそれほど少量化できるわけでもないので、平均繊維長が1~60mmの範囲内にあるものを使用するのが好ましい。また、混抄紙中における炭素繊維の量は、電波吸収層の電気的損失に影響を与える。極端に少ないと電気的損失が低くなって電波吸収性能が低下するようになるし、極端に多いと電気的損失は高くなるものの反射される電波も増えるようになるので、0.08~5重量%の範囲内とするのが好ましい。」 ・上記引用文献2に記載の「電波吸収体」は、上記「ア.」の【請求項1】、「イ.」の記載事項、及び図1によれば、電気的損失を呈するシート2a、2bを複数枚、吸収したい電波の周波数および/または入射角度に応じた間隔でスペーサ2dを介して層状に配置してなる電波吸収層2を有する電波吸収体に関するものである。 ・上記「ア.」の【請求項3】~【請求項4】、「イ.」の段落【0015】、【0017】の記載事項によれば、電気的損失を呈するシート2a、2bは、導電性繊維としての炭素繊維と非導電性繊維とを含む混抄紙が用いられる。 ・上記「ア.」の【請求項5】、「イ.」の段落【0018】の記載事項によれば、炭素繊維は、平均繊維長が1~60mmの範囲内にあり、混抄紙中に0.08~5重量%の範囲内で含まれてなるものである。 したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、上記引用文献2には、次の技術事項が記載されている。 「電気的損失を呈するシートを複数枚、吸収したい電波の周波数および/または入射角度に応じた間隔でスペーサを介して層状に配置してなる電波吸収層を有する電波吸収体において、 前記電気的損失を呈するシートとして、導電性繊維である炭素繊維と非導電性繊維とを含む混抄紙を用い、 前記炭素繊維が、平均繊維長が1~60mmの範囲内にあり、前記混抄紙中に0.08~5重量%の範囲内で含まれるようにしたこと。」 3.引用文献3について 同じく原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、「電波吸収体」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 複数層の導電紙とその各導電紙間に配されたスペーサとを有する電波吸収部を備え、上記各導電紙は、和紙に炭素繊維が混入され、その炭素繊維が方向性を有するように並んでいるものであり、各導電紙が互いに炭素繊維の方向を異ならせて配置された状態でスペーサを介して積層されていることを特徴とする電波吸収体。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【請求項3】 請求項1又は2に記載の電波吸収体において、各導電紙に混入されている炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系で、太さ0.5~3デニール、長さ2~8mmの短繊維であり、各導電紙の厚さは0.4~1.0mmであって、2層式湿式抄法により連続的に製造されたものであることを特徴とする電波吸収体。」 イ.「【0011】 本発明の電波吸収体によると、一定方向に並んだ炭素繊維を含む導電紙を用いながら、全体として電波吸収の異方性を解消して、各種方向の入射波に対して良好な吸収性能を発揮させることができ、しかも、導電紙の素材として和紙を用いているので、充分に強靭性及び耐久性を持たせつつ薄くて軽量にすることができ、持ち運びや取り扱いが容易になる。」 ウ.「【0013】 図1は本実施形態に係る電波吸収体を示す分解斜視図であり、図2は上記電波吸収体の断面図である。これらの図に示すように、電波吸収体1は、2枚の導電紙3、5の間に第1スペーサ4が配された電波吸収部2を有し、この電波吸収部2の片側、図示例では導電紙5の下側に、第2スペーサ6を介して反射板7が設けられた構造となっている。なお、各導電紙3、5と第1、第2スペーサ4、6との間、及び第2スペーサ6と反射板7との間は、バインダーにより接着されている。また、この電波吸収体1は、反射板7が電波入射側とは反対側になるように用いられる。 【0014】 上記各導電紙3,5は、和紙を素材とし、これに炭素繊維を混入したもので、和紙に対する炭素繊維の混入割合は0.1~0.5w%(w%は重量百分率)とされており、とくに好ましい例として、電波入射側の導電紙3は炭素繊維が0.3w%程度混入され、他の導電紙5は炭素繊維が0.2w%程度混入されている。これら導電紙3,5は、和紙に対して、炭素繊維(短繊維)を、炭素繊維の長手方向を1方向に揃えて混合させたもので、導電紙3における炭素繊維の長手方向をAとし、導電紙5における炭素繊維の長手方向をBとすると、AとBとがほほ直交するように導電紙3と5が配される。図3は、導電紙3と5の配置状態(AとBとがほほ直交する状態)を示す図である。」 エ.「【0020】 電波吸収体1は、反射板7が電波入射側とは反対側になるように配され、電波吸収部2の導電紙3,5で入射した電波を吸収し、更に反射板7で反射した電波を再度電波吸収部2の導電紙3,5で吸収する。このとき、導電紙3、5のそれぞれによる電波吸収特性は、上述したように炭素繊維11の長手方向と振幅方向とを平行にして入射する電波を高い効率で吸収する特性である。そして、炭素繊維11が一定方向に並んだ導電紙が1層だけであれば、電波吸収に異方性(方向による吸収性能の相違)を生じるが、当実施形態では2層の導電紙3,5を有して、それぞれの炭素繊維11の長手方向をほぼ直交するように異ならせているため、電波吸収の等方性(吸収性能が方向により違わないこと)が高められ、つまり入射電波の方向を選ばない状態で電波吸収特性を向上させ得る。」 ・上記引用文献3に記載の「電波吸収体」は、上記「ア.」の【請求項1】、「ウ.」の記載事項、及び図1、図2によれば、複数層の導電紙3、5とその各導電紙3、5間に配されたスペーサ4とを有する電波吸収部2を備え、上記各導電紙3、5は、和紙に炭素繊維が混入され、その炭素繊維が方向性を有するように並んでいるものであり、各導電紙3、5が互いに炭素繊維の方向を異ならせて配置された状態でスペーサ4を介して積層されている電波吸収体である。 ・上記「イ.」、「エ.」の記載事項によれば、複数層の導電紙3、5を、互いに炭素繊維の方向が異なるように配置することによって、全体として電波吸収の異方性を解消し、電波吸収の等方性を高めるようにしたものである。 ・上記「ア.」の【請求項3】、「ウ.」の段落【0014】の記載事項によれば、各導電紙に混入されている炭素繊維は、その長さが2~8mmであり、混入割合は0.1~0.5w%である。 したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、上記引用文献3には、次の技術事項が記載されている。 「複数層の導電紙とその各導電紙間に配されたスペーサとを有する電波吸収部を備え、前記各導電紙は、和紙に炭素繊維が混入され、その炭素繊維が方向性を有するように並んでいるものであり、全体として電波吸収の異方性を解消し、電波吸収の等方性を高めるために、各導電紙が互いに炭素繊維の方向を異ならせて配置された状態でスペーサを介して積層されている電波吸収体において、 前記各導電紙に混入されている前記炭素繊維は、その長さが2~8mmであり、混入割合を0.1~0.5w%としたこと。」 第6 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、 ア.引用発明における「誘電体層と、前記誘電体層の片面側(電波の入射する面側)に設けられた抵抗膜と、前記誘電体層の反対面側(裏面側)に設けられた電波反射体と、が一体化されている電波吸収体であって、前記抵抗膜は、極細導電繊維を含んだ透明な(透視性を有する)膜からなる一層のみであって、当該極細導電繊維としては、極細長炭素繊維が用いられ、その長さは0.1~20μm(好ましくは0.1~10μm)であり、前記抵抗膜には、必要に応じて透明な樹脂であるバインダーが使用される」によれば、 (a)引用発明における「抵抗膜」、「誘電体層」、「電波反射体」は、それぞれ本願発明1でいう「抵抗膜層」、「スペーサー」、「反射材層」に相当する。 (b) また、引用発明における、抵抗膜が含む「極細導電繊維」は、本願発明1でいう、抵抗膜層が含有する「導電性繊維」に相当し、 さらに、引用発明における、極細導電繊維として用いられる「極細長炭素繊維」は、本願発明1でいう「炭素繊維」に相当する。 (c)そして、引用発明にあっても、誘電体層の片面側(電波の入射する面側)に抵抗膜が設けられ、その反対側に電波反射体が設けられていることから、抵抗膜、誘電体層、電波反射体の各層が電波の入射方向から順に一層ずつ積層されてなるものである(引用例の図1も参照)といえ、また、抵抗膜は本願発明1と同様、一層のみである。 したがって、本願発明1と引用発明とは、「導電性繊維を含有する抵抗膜層とスペーサーと反射材層とを電波の入射方向から順に一層ずつ積層してなり、前記抵抗膜層は1層のみであり、前記導電性繊維が炭素繊維」である点で共通する。 ただし、抵抗膜層について、本願発明1では、導電性繊維を含有する「紙」であり、導電性繊維の平均繊維長が「2~11mm」、その含有量が「0.4~3質量%」である旨特定するのに対し、引用発明では、極細導電繊維の長さが0.1~20μm(好ましくは0.1~10μm)であり、その含有量についての特定はなく、必要に応じて透明な樹脂であるバインダーが使用されるものである点で相違している。 イ.引用発明における「電波吸収体」は、本願発明1における「電波吸収体」に相当するものである。 したがって、本願発明1と引用発明とは、 「導電性繊維を含有する抵抗膜層とスペーサーと反射材層とを電波の入射方向から順に一層ずつ積層してなり、 前記抵抗膜層は1層のみであり、 前記導電性繊維が炭素繊維であることを特徴とする電波吸収体。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 抵抗膜層について、本願発明1では、導電性繊維を含有する「紙」であり、導電性繊維の平均繊維長が「2~11mm」、その含有量が「0.4~3質量%」である旨特定するのに対し、引用発明では、極細導電繊維の長さが0.1~20μm(好ましくは0.1~10μm)であり、その含有量についての特定はなく、必要に応じて透明な樹脂であるバインダーが使用されるものである点。 [相違点2] 本願発明1では、「垂直入射に対し最大の電波吸収量を示す周波数において、当該最大電波吸収量、および当該最大電波吸収量を示す測定方向に直交する測定方向における電波吸収量がいずれも10dB以上である」と特定するのに対し、引用発明では、そのような特定を有していない点。 (2)相違点についての判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について 引用発明における抵抗膜は、透明な(透視性を有する)膜であることを前提とするものである(そのため、必要に応じて使用されるバインダーについても透明な樹脂である)。 したがって、たとえ引用文献2に「電気的損失を呈するシートとして、導電性繊維である炭素繊維と非導電性繊維とを含む混抄紙を用い、前記炭素繊維が、平均繊維長が1~60mmの範囲内にあり、前記混抄紙中に0.08~5重量%の範囲内で含まれるようにした」ことが記載(上記「第5 2.」を参照)され、引用文献3に「導電紙は、和紙に炭素繊維が混入され」、「導電紙に混入されている前記炭素繊維は、その長さが2~8mmであり、混入割合を0.1~0.5w%とした」ことが記載(上記「第5 3.」を参照)され、これら引用文献には抵抗膜として、導電性繊維(炭素繊維)を含有する「紙」を用い、本願発明1で特定する範囲を満たす導電性繊維(炭素繊維)の長さ及び含有量とすることが記載されているとしても、引用発明において、あえて透視性が失われかねない「紙」を採用すべき動機付けがなく、むしろ阻害要因があるといえる。 よって本願発明1における、抵抗膜層について、平均繊維長が「2~11mm」の導電性繊維を「0.4~3質量%」含有する「紙」とする発明特定事項については、引用発明及び引用例2、3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものとすることはできない。 [相違点2]について 引用文献2には「電気的損失を呈するシートを複数枚、吸収したい電波の周波数および/または入射角度に応じた間隔でスペーサを介して層状に配置」することが記載(上記「第5 2.」を参照)され、引用文献3には「複数層の導電紙とその各導電紙間に配されたスペーサとを有する電波吸収部を備え、・・・・全体として電波吸収の異方性を解消し、電波吸収の等方性を高めるために、各導電紙が互いに炭素繊維の方向を異ならせて配置」されることが記載(上記「第5 3.」を参照)され、これら引用文献には電波吸収の異方性を解消し、電波吸収の等方性を高めることが記載ないし示唆されているとしても、あくまでも「複数」の抵抗膜(引用文献2の「電気的損失を呈するシート」、引用文献3の「導電紙」)をスペーサを介して積層して設けることを前提とするものである。 よって、たとえ引用発明に対して、引用文献2や引用文献3に記載の技術事項を適用したとしても、抵抗膜が「複数」積層されたものとなり、本願発明における、「抵抗膜層が一層のみ」のものにおいて、「垂直入射に対し最大の電波吸収量を示す周波数において、当該最大電波吸収量、および当該最大電波吸収量を示す測定方向に直交する測定方向における電波吸収量がいずれも10dB以上である」とする発明特定事項を導き出すことはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2、3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 2.本願発明2、3について 請求項2、3は、請求項1に従属する請求項であり、請求項2、3に係る本願発明2、3も、本願発明1における上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2、3に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第7 原査定について 上記「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」で検討したとおりであり、本願請求項1ないし3に係る発明は、拒絶査定において引用された上記引用文献1~3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-013464

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