特許拒絶査定不服審判
2016-012574
発光ダイオード装置の製造方法
- 審判番号
- 2016-012574
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-029579外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月20日
- 審決日
- 2017年07月31日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ニホンハンダ株式会社
- 【請求人代理人】久保田 芳譽
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 29579「発光ダイオード装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 72595、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月18日(優先権主張平成26年9月30日)の出願であって、同年6月9日付けで手続補正がされ、同年7月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月11日付けで手続補正がされ、同年12月14日付けで拒絶理由通知(最後)がされ、平成28年2月10日付けで手続補正がされ、同年4月20日付けで同年2月10日の手続補正についての補正却下の決定がなされるとともに拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年8月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成28年4月20日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
(進歩性)本願請求項1、2に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
引用文献1:特開2014-111800号公報
引用文献2:特開2011-216475号公報
引用文献3:特開2013-69475号公報
引用文献4:国際公開第2009/090915号
引用文献5:特開2014-63995号公報
第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年8月20日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子とリードフレームもしくは配線基板間に、(A)平均粒径が0.01~10μmであり、表面が、(c)炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類で被覆されてなる、銀塩の還元により製造された球状または粒状の銀粒子と、(B)揮発性分散媒とからなるペースト状物であり,200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱することにより該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子(A)同士が焼結して,波長315nmにおける紫外線全反射率が1~5%であり、体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上の焼結物となるペースト状銀粒子組成物を介在させ、100℃以上400℃以下で加熱することにより該銀粒子(A)同士を焼結することを特徴とする、発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子とリードフレームもしくは配線基板とが該銀粒子焼結物により接合されてなる発光ダイオード装置の製造方法。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与したものである。以下、同様。
「【0010】
本発明の目的は、加熱すると加熱焼結性金属微粒子同士または加熱焼結性金属微粒子と加熱焼結性金属粒子が比較的低温度で容易に焼結して接着強さ、硬さ、電気伝導性および熱伝導性が優れた固形状金属または固形状金属合金となるペースト状金属微粒子組成物;ペースト状金属微粒子組成物から強度と電気伝導性と熱伝導性が優れた固形状金属または固形状金属合金を製造する方法;該ペースト状金属微粒子組成物を使用して金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合する方法;基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた金属配線を有するプリント配線板を製造する方法;および、電気伝導性と熱伝導性が優れた電気回路接続用バンプを製造する方法を提供することにある。」
「【0033】
加熱焼結性金属微粒子(A)の表面を予め被覆している極性基を有する有機物の炭素原子数は3~24であり、好ましくは炭素原子数が4~16であり、より好ましくは炭素原子数が5~12である。炭素原子数3~24の有機物における極性基は、炭素原子と水素原子と酸素原子からなるものが好ましく、カルボキシル基がより好ましい。該有機物は脂肪族カルボン酸である脂肪酸であることが好ましい。」
「【0109】
本発明のペースト状金属微粒子組成物(I)、ペースト状金属微粒子組成物(II)、ペースト状金属微粒子組成物(III)は、70℃以上300℃以下で加熱すると揮発性分散媒(C)が揮散し加熱焼結性金属微粒子(A)同士,または加熱焼結性金属微粒子(A)と加熱焼結性金属粒子(D)が焼結することにより、強度と電気伝導性、熱伝導性が優れ、接触していた金属製部材、例えば金基板、金メッキ基板、銀基板、銀メッキ金属基板、銅基板、パラジウム基板、パラジウムメッキ金属基板、プラチナ基板、プラチナメッキ金属基板、アルミニウム基板、ニッケルメッキ基板、スズメッキ金属基板等の金属系基板ないし金属製基板、電気絶縁性基板上の電極等金属部分への接着性を有する固形状金属または固形状金属合金となるので、金属系基板や金属部分を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の接合に有用である。そのような接合として、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;ダイオード、トランジスタ、メモリ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合;高発熱の半導体チップと冷却板との接合が例示される。」
「【0125】
[体積抵抗率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ1.0mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する500μm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状金属微粒子組成物を塗布し、225℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱してフィルム状の金属とした。なお、加熱焼結性金属微粒子が銅微粒子または加熱焼結性金属粒子が銅粒子である場合は、更に、水素ガスと窒素ガスが体積比で10:90であるフォーミングガス中にて225℃で1時間加熱した。フィルム状の金属についてJIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
【0126】
[熱伝導率]
幅50mm×長さ50mm×厚さ1.0mmのポリテトラフルオロエチレン樹脂板上に、幅10mm×長さ10mmの開口部を有する2mm厚のメタルマスクを用いて、ペースト状金属微粒子組成物を塗布し、225℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱して板状の金属とした。なお、加熱焼結性金属微粒子が銅微粒子または加熱焼結性金属粒子が銅粒子である場合は、更に、水素ガスと窒素ガスが体積比で10:90であるフォーミングガス中にて225℃で1時間加熱した。板状の金属について熱定数測定装置を用いたレーザーフラッシュ法により熱伝導率(単位;W/mK)を測定した。」
「【0129】
[実施例1]
市販の還元法で製造され、表面が極性基を有する炭素原子数6の有機物であるヘキサン酸で被覆された粒状の加熱焼結性銀微粒子(A)(平均粒径が0.02μm、有機物量(注:ヘキサン酸と微量の有機系還元剤の合計量である)が2.7質量%である)100部、アミノ基と酸性リン酸エステル基を有する両性高分子分散剤であるビックケミー・ジャパン株式会社販売のDISPERBYK-2020(B)(酸価37mgKOH/g、アミン価36mgKOH/g)4部、および、揮発性分散媒である市販のターピネオール(C)(沸点219℃)15部を均一に混合し、混合物を-50℃で100時間エージングして、本発明のペースト状銀微粒子組成物(I)を調製した。エージング前後でペーストの状態には変化がなかった。
【0130】
このペースト状銀微粒子組成物(I)は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく良好な形状に塗布できた。
また、このペースト状銀微粒子組成物(I)について、加熱して焼結することにより生成した固形状銀の硬さ、接着強さ、体積抵抗率および熱伝導率を測定して表1にまとめて示した。ペースト状銀粒子組成物(I)の焼結物は、硬さ、接着強さ、体積抵抗率および熱伝導率が優れていた。
以上の結果より、このペースト状銀微粒子組成物(I)が、強固な固形状銀を製造するのに有用なこと、金属製部材を電気伝導性と熱伝導性よく強固に接合するのに有用なこと、耐摩耗性と基板への接着性と電気伝導性と熱伝導性が優れた銀配線を形成するのに有用なこと、および半導体素子上または基板上に銀バンプを形成するのに有用なことがわかった。」
「【0212】
【表1】
」
表1の記載及び【0125】【0126】の記載から、実施例1のペースト状銀微粒子組成物(I)の225℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱焼結後の特性として、体積抵抗率は5×10-6(Ω・cm)、熱伝導率は115(W/mK)であることが読み取れる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「還元法で製造され、表面が極性基を有する炭素原子数6の有機物であるヘキサン酸で被覆された粒状の加熱焼結性銀微粒子(A)(平均粒径が0.02μm)100部、両性高分子分散剤であるDISPERBYK-2020(B)4部、および、揮発性分散媒である市販のターピネオール(C)15部を均一に混合し、混合物を-50℃で100時間エージングして、ペースト状銀微粒子組成物(I)を調製し、
ペースト状銀微粒子組成物(I)の225℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱焼結後の特性として、体積抵抗率は5×10-6(Ω・cm)、熱伝導率は115(W/mK)であり、
ペースト状金属微粒子組成物(I)を70℃以上300℃以下で加熱し揮発性分散媒(C)を揮散し加熱焼結性金属微粒子(A)同士を焼結させることで、
ペースト状金属微粒子組成物(I)を、ダイオード、トランジスタ、メモリ、IC、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合に用いる方法。」
2 引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、以下の記載がある。
「【0019】
(1-1)導電性金属微粒子(P1)
導電性金属微粒子(P1)は、平均一次粒子径が1~150nmである。
導電性金属微粒子(P1)の平均一次粒子径が1~150nmであることにより、加熱処理して得られる金属多孔質体は、金属微粒子同士が表面で接触して形成される結果、金属多孔質体中の空孔径も小さくなり、ミクロンサイズの金属粒子からなる金属多孔質体と比較して、熱サイクル特性が向上して優れた耐クラック性が得られる。前記導電性金属微粒子(P1)は、導電性、ナノ粒子の焼結性の点から銅、金、銀、ニッケル、コバルトの中から選択される1種又は2種以上であることが好ましい。」
3 引用文献3
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、以下の記載がある。
「【0020】
(1)金属微粒子(P)
金属微粒子(P)として、(i)金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上からなる、平均1次粒子径が1~150nmの金属微粒子(P1)、又は、(ii)前記金属微粒子(P1)及び平均1次粒子径が1~10μmの金属、合金、及び金属酸化物から選択された1種又は2種以上の金属微粒子(P2)からなり、後者の場合その配合割合(P1/P2)(質量%)が80~100/20~0(質量%の合計は100%)である混合物を使用することが好ましい。前記金属として、金、銀、銅、白金、パラジウム、タングステン、ニッケル、鉄、コバルト、及びタンタルの中から選択される1種又は2種以上が挙げられるがこれらの中でも導電性、加熱処理(焼結性)、市場における入手の容易性等から、銅、金、銀、ニッケル、コバルトの中から選択される1種又は2種以上が好ましい。」
4 引用文献2及び3に記載された技術事項
上記引用文献2及び3の記載から、「金属微粒子が2種類以上のものからなる。」ことは、周知技術であると認められる。
5 引用文献4
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、以下の記載がある。
「[0041] また、本発明の第3の発光装置を製造する方法は、0.1μm~15μmの平均粒径(メジアン径)を有する銀粒子と、アルコールとを含む導電性ペーストを、前記配線基板または前記リードフレームに塗布する工程と、前記発光素子を前記導電性ペースト上に配置して発光装置前駆体を得る工程と、前記発光装置前駆体を150℃~300℃で焼成して、発光装置を得る工程とを含む。」
6 引用文献5
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、以下の記載がある。
「【0045】
<実施例1>
実施例1の半導体装置は、図1に示す例の構造を有する、表面実装型のLEDである。実施例1では、本半導体装置を以下のように作製する。
【0046】
半導体素子は、上面視2mm角の略直方体形状のLEDチップである。この半導体素子は、厚さ0.3mmのシリコン基板(熱膨張率3.5ppm/℃)の上面に、厚さ4μmの窒化物半導体の発光素子構造が接合されたものである。接合層は、発光素子構造側に銀の金属反射膜を含み、その他の大部分は金-錫で構成されている。また、基板の下面には、厚さ0.5μmの金の金属膜が設けられている。
【0047】
実装部材は、ガラスエポキシ製の平板状の基体(熱膨張率30ppm/℃)の上面に、表面に金の鍍金が施された銅箔である正負一対の配線が設けられた、配線基板である。
【0048】
まず、金属粒子と有機溶剤を重量比5:0.47で混合して、金属粒子焼結型ペーストを得る。金属粒子は、フレーク状銀粒子(製品名「AgC-239」(福田金属箔粉工業株式会社製)、平均粒径(メジアン径):2.0~3.2μm、比表面積:0.6~0.9m2/g)と、球状銀粒子(製品名「EHD」(三井金属鉱業株式会社製)、平均粒径(メジアン径):0.4~1.2μm、比表面積:1.6m2/g)と、を重量比6:4で混合したものである。有機溶剤は、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールと、ジエチレングリコールモノブチルエーテルと、を重量比8:2で混合したものである。
【0049】
そして、金属粒子焼結型ペーストを、スタンピング法により、実装部材の正極の配線の上面における素子実装予定の9箇所に塗布して、その上に半導体素子を各々載置する。次に、半導体素子が載置された実装部材を、120℃の大気雰囲気下で30分間、さらに175℃で90分加熱し、その後冷却する。これにより、金属粒子焼結型ペーストが焼成されて多孔質の焼結体の接合部材となり、各半導体素子の基板の下面側が配線に接合される。なお、接合部材は、各半導体素子の基板の側面の一部を被覆している。次に、各半導体素子の突起電極と、実装部材の負極の配線と、を金のワイヤによって接続する。次に、全ての半導体素子を囲むように、シリコーン樹脂を実装部材の上面に枠状に塗布して硬化させる。最後に、その枠状の突起内に、YAG:Ceの蛍光体を含有するシリコーン樹脂の封止部材を充填して硬化させ、半導体装置を得る。」
7 引用文献4及び5に記載された技術事項
上記引用文献4及び5の記載から、「発光装置(LED)を製造する方法において、金属粒子ペーストを用いること。」は、周知技術であると認められる。
8 平成28年4月20日付けの補正却下の決定において引用された文献
(1)特開2006-83377号公報(以下、「引用文献6」という。)
平成28年4月20日付けの補正却下の決定において引用された引用文献6には、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、導電性媒体とする金属成分と、接着剤成分とする熱硬化性樹脂とを主要構成成分とする導電性接着剤、ならびに、該導電性接着剤を利用する導電性接合操作を含む組み立て工程を有する物品の製造方法に関する。特に、本発明は、リードフレーム上への半導体チップ部品のマウントなどにおける、導電性接合に好適に利用可能な導電性接着剤、ならびに、リードフレーム上への半導体チップ部品のマウント工程に該導電性接着剤を利用する半導体装置の製造方法に関する。」
「【0032】
すなわち、本発明の第一の形態にかかる導電性接着剤、本発明の第二の形態にかかる導電性接着剤、ともに、導電性媒体として、配合される金属成分は、主成分の(A)平均粒子径が0.5~30μmの範囲に選択されている金属粉に対して、少量の(B)平均粒子径が1~20nmの範囲に選択される金属超微粒子の金属表面に有機化合物による被覆層を有する超微粒子を併用している。
・・・(途中省略)・・・
【0041】
この金属超微粒子の金属表面に存在する、被覆層を構成する有機化合物としては、かかる金属超微粒子に含まれる金属元素と配位的な結合が可能な基として、窒素、酸素、またはイオウ原子を含む基を有する化合物が利用される。例えば、末端アミノ基を1以上有するアミン化合物一種以上により被覆された状態とする。」
「【0061】
(B)超微粒子として利用する、金属表面にポリオキシアルキレンアミンによる被覆層を有する銀超微粒子を、以下の処理によって調製する。」
(2)国際特許公開第2014/024721号(以下、「引用文献7」という。)
平成28年4月20日付けの補正却下の決定において引用された引用文献7には、以下の記載がある。
「[0002] 銀ナノ粒子は、低温でも焼結させることができる。この性質を利用して、種々の電子素子の製造において、基板上に電極や導電回路パターンを形成するために、銀ナノ粒子を含む銀塗料組成物が用いられている。銀ナノ粒子は、通常、有機溶剤中に分散されている。銀ナノ粒子は、数nm~数十nm程度の平均一次粒子径を有しており、通常、その表面は有機安定剤(保護剤)で被覆されている。基板がプラスチックフィルム又はシートの場合には、プラスチック基板の耐熱温度未満の低温(例えば、200℃以下)で銀ナノ粒子を焼結させることが必要である。」
「[0014]本発明者らは、錯形成剤及び/又は保護剤として機能する脂肪族アミン化合物について検討し、安定性に優れ、200℃以下(例えば150℃以下、好ましくは120℃以下)の低温且つ2時間以下(例えば1時間以下、好ましくは30分間以下)の短い時間での焼成によって、例えば1μm以上の比較的厚膜である銀被膜を形成した場合でも優れた導電性(低い抵抗値)が発現する銀ナノ粒子が得られる方法を見出した。
[0015]本発明には、以下の発明が含まれる。
(1)銀ナノ粒子の製造方法であって、
分枝脂肪族炭化水素基と1つのアミノ基とからなり且つ該分枝脂肪族炭化水素基の炭素数が4以上である分枝脂肪族炭化水素モノアミン(D)を少なくとも含む脂肪族アミンと、銀化合物とを混合して、前記銀化合物及び前記アミンを含む錯化合物を生成させ、
前記錯化合物を加熱して熱分解させて、銀ナノ粒子を形成する、 ことを含む銀ナノ粒子の製造方法。
[0016](2)前記銀化合物は、シュウ酸銀である、上記(1)に記載の銀ナノ粒子の製造方法。」
「[0103]銀ナノ粒子は上記のように構成されているので、このような低温短時間での焼成工程によっても、銀粒子の焼結が十分に進行する。その結果、優れた導電性(低い抵抗値)が発現する。低い抵抗値(例えば15μΩcm以下、範囲としては7~15μΩcm)を有する銀導電層が形成される。バルク銀の抵抗値は1.6μΩcmである。」
(3)引用文献6及び7に記載された技術事項
上記(1)及び(2)の記載から、「金属粒子の表面を被覆する有機化合物として、アミン化合物を用いること。」は、周知技術であると認められる。
第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「ダイオード、トランジスタ、メモリ、IC、CPU等の半導体チップ」と、本願発明における「発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子」とは、ともに「半導体素子」である点で共通する。
引用発明における「還元法で製造され、表面が極性基を有する炭素原子数6の有機物であるヘキサン酸で被覆された粒状の加熱焼結性銀微粒子(A)(平均粒径が0.02μm)」と本願発明における「(A)平均粒径が0.01~10μmであり、表面が、(c)炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類で被覆されてなる、銀塩の還元により製造された球状または粒状の銀粒子」とは、ともに「平均粒径が0.01~10μmであり、表面が、有機物で被覆されてなる、還元により製造された球状または粒状の銀粒子」の点で共通する。
引用発明における「揮発性分散媒である市販のターピネオール」は、本願発明における「揮発性分散媒」に相当する。
引用発明における「ペースト状銀微粒子組成物(I)」は、本願発明における「ペースト状物」に相当する。
引用発明の「ペースト状銀微粒子組成物(I)の225℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱焼結後の特性として、体積抵抗率は5×10-6(Ω・cm)、熱伝導率は115(W/mK)であ」ることにおいて、加熱によって「揮発性分散媒(C)を揮散し加熱焼結性金属微粒子(A)同士を焼結させること」になるから、引用発明の「引用発明の「ペースト状銀微粒子組成物(I)」と、本願発明の「200℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱することにより該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子(A)同士が焼結して,波長315nmにおける紫外線全反射率が1~5%であり、体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上の焼結物となるペースト状銀粒子組成物」とは、ともに「強制循環式オーブン内で1時間加熱することにより該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結して体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上の焼結物となるペースト状銀粒子組成物」である点で共通する。
引用発明における「ペースト状金属微粒子組成物(I)を70℃以上300℃以下で加熱し揮発性分散媒(C)を揮散し加熱焼結性金属微粒子(A)同士を焼結させることで、ペースト状金属微粒子組成物(I)を、半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合に用いる方法」は、半導体チップを製造する方法であるともいえるから、引用発明の該方法と、本願発明における「発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子とリードフレームもしくは配線基板間に、」「ペースト状銀粒子組成物を介在させ、100℃以上400℃以下で加熱することにより該銀粒子(A)同士を焼結する」「発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子とリードフレームもしくは配線基板とが該銀粒子焼結物により接合されてなる発光ダイオード装置の製造方法」とは、ともに「半導体素子とリードフレームもしくは配線基板間に、」「ペースト状銀粒子組成物を介在させ、100℃以上300℃以下で加熱することにより該銀粒子同士を焼結する」、「半導体素子とリードフレームもしくは配線基板とが該銀粒子焼結物により接合されてなる半導体素子の製造方法」である点で共通する。
したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点1ないし6があるといえる。
(一致点)
「半導体素子とリードフレームもしくは配線基板間に、平均粒径が0.01~10μmであり、表面が、有機物で被覆されてなる、還元により製造された球状または粒状の銀粒子と、揮発性分散媒とからなるペースト状物であり、強制循環式オーブン内で1時間加熱することにより該揮発性分散媒が揮散し該銀粒子同士が焼結して体積抵抗率が1×10-5Ω・cm以下であり、かつ、熱伝導率が100W/m・K以上の焼結物となるペースト状銀粒子組成物を介在させ、100℃以上300℃以下で加熱することにより該銀粒子同士を焼結する、半導体素子とリードフレームもしくは配線基板とが該銀粒子焼結物により接合されてなる半導体素子の製造方法。」
(相違点1)
半導体素子について、本願発明は「発光ピーク波長が700nm未満,200nm以上である発光ダイオード素子」であるのに対し、引用発明の「ダイオード、トランジスタ、メモリ、IC、CPU等の半導体チップ」は、発光ダイオード素子ではない点。
(相違点2)
銀粒子の表面を被覆する有機物が、本願発明は、「炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類」であるのに対し、引用発明は、「極性基を有する炭素原子数6の有機物であるヘキサン酸」である点。
(相違点3)
銀粒子の製造について、本願発明は、「銀塩の還元により製造」するのに対し、引用発明は、何を還元することにより製造するのか不明である点。
(相違点4)
強制循環式オーブン内で1時間加熱する温度について、本願発明は、「200℃」であるのに対し、引用発明は、「225℃」である点。
(相違点5)
ペースト状銀粒子組成物の焼結物の特性について、本願発明は、「波長315nmにおける紫外線全反射率が1~5%であ」るのに対し、引用発明は、そのようであるか不明である点。
(相違点6)
半導体素子の製造の際の加熱温度範囲が、本願発明は、「100℃以上400℃以下」であるのに対し、引用発明は、「70℃以上300℃以下」である点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
引用文献1には、加熱焼結性金属微粒子(A)の表面を被覆している極性基を有する有機物について以下の記載がある。
「【0033】
加熱焼結性金属微粒子(A)の表面を予め被覆している極性基を有する有機物の炭素原子数は3~24であり、好ましくは炭素原子数が4~16であり、より好ましくは炭素原子数が5~12である。炭素原子数3~24の有機物における極性基は、炭素原子と水素原子と酸素原子からなるものが好ましく、カルボキシル基がより好ましい。該有機物は脂肪族カルボン酸である脂肪酸であることが好ましい。」
この記載からは、有機物における極性基として炭素原子と水素原子とからなるものが含まれるとしても、窒素原子についての記載がなく、また、引用文献1の記載全体をみても「炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類」を示唆する記載は見当たらない。
また、発光ダイオード素子を対象としていない引用発明には、本願発明の「発光光度が安定している発光ダイオード装置とその製造方法を提供する」という課題(本願明細書段落【0008】参照。)はなく、引用文献2及び3の記載から、「金属微粒子が2種類以上のものからなる。」こと(上記「第4」「4」参照。)、引用文献4及び5の記載から、「発光装置(LED)を製造する方法において、金属粒子ペーストを用いること。」(上記「第4」「7」参照。)、引用文献6及び7の記載から、「金属粒子の表面を被覆する有機化合物として、アミン化合物を用いること。」は、それぞれ周知技術であるといえるとしても(上記「第4」「8」「(3)」参照。)、前記課題を解決するために、引用発明における「ヘキサン酸」に代えて、「炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類」を採用する動機付けは存在しない。
よって、本願発明の相違点2に係る構成は、引用発明及び引用文献1ないし7に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。
したがって、相違点1、3ないし6について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献1ないし7に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
第6 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明は相違点2に係る「表面が、(c)炭素原子数1~54の1級、2級もしくは3級のアルキルアミン類で被覆されてなる」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の特許法第29条第2項についての拒絶の理由を維持することはできない。
第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2016-012574