特許拒絶査定不服審判
2016-011683
電力効率の優れたプロセッサアーキテクチャ
- 審判番号
- 2016-011683
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2014-528345外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年08月04日
- 審決日
- 2017年07月11日
- 公報発行日
- 2017年08月25日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】インテル・コーポレーション
- 【請求人代理人】龍華国際特許業務法人
- 分類
- P18 .121-WY (G06F) / P18 .537-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2014-528345「電力効率の優れたプロセッサアーキテクチャ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月14日国際公開,WO2013/036222,平成26年10月23日国内公表,特表2014-528115,請求項の数(13)〕について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1.手続の経緯
本願は,平成23年9月6日を国際出願日とする出願であって,平成27年4月28日付けで拒絶理由が通知され,平成27年9月10日付けで意見書と共に手続補正がされ,平成28年3月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年8月4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成29年2月28日付けで当審から拒絶理由が通知され,平成29年5月24日付けで意見書が提出されると共に手続補正がされたものである。
第2.本願発明
本願請求項1~13に係る発明は,平成29年5月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定された発明であり,請求項1~13に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明13」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
マルチコアプロセッサを備え,前記マルチコアプロセッサは,
命令を実行する第1コアと,
前記第1コアとはヘテロジニアスであり,前記第1コアよりも小さく,オペレーティングシステムに対してトランスペアレントである,命令を実行する第2コアと,
割込みを受け取り,前記第1コア又は前記第2コアを前記割込みに応答してウェイクアップさせるロジックを含むとともに,システム動作の際に発生した割込みと前記割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかとを示すエントリを有する電力制御ユニット(PCU)と,を有し,
前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みの受け取りに応じて前記エントリに基づいて同一タイプの以前の割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第2コアによって正常に処理されたと判断した場合,前記割込みを前記第2コアに割り当て,
前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コアは,前記第2コアが前記割込みを処理することができるかどうかを判断し,前記割込みを処理することができないと判断した場合,信号を前記PCUに送信し,
前記信号を受信した前記PCUは,ウェイクアップ信号を前記第1コアへ送信する,プロセッサ。
【請求項2】
前記ロジックは,前記割込みに応答して,前記第1コアの実行状態のサブセットを前記第2コアに提供する,請求項1に記載のプロセッサ。
【請求項3】
前記第2コアが前記割込みを処理することができないという前記判断に応答して,前記ロジックは,前記第2コアから前記第1コアの前記実行状態の前記サブセットを取得し,前記実行状態の前記サブセットを,一時的記憶領域内に保存されている前記第1コアの前記実行状態の残りの部分とマージする,請求項2に記載のプロセッサ。
【請求項4】
前記ロジックは,
ウェイクアップロジックと,
状態転送ロジックと,
前記第2コアにより発行される未定義障害を受信および処理する未定義処理ロジックと,
前記第2コアにより先の割込みが正常に処理されたかどうかを示す前記エントリを格納する割込み履歴記憶領域と
を含む,請求項1から3のいずれか1項に記載のプロセッサ。
【請求項5】
前記ロジックに結合されたアクセラレータを更に備え,前記アクセラレータは,タスクを実行し,前記タスクの完了に応じて前記割込みを前記ロジックへ送信する,請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセッサ。
【請求項6】
前記第2コアは,前記割込みがデータ移動動作に対する要求を有する際に,前記割込みを処理する,請求項5に記載のプロセッサ。
【請求項7】
前記第2コアは,前記割込みがベクトル演算に対する要求を有する際に,前記第1コアが前記割込みを処理できるようにするために,ウェイクアップ信号を第1コアへ送信させる,請求項5または6に記載のプロセッサ。
【請求項8】
前記ロジックは,前記第2コアから未定義命令障害を受け取り,前記第2コアが前記ベクトル演算を処理することができないと判断し,前記第2コアから実行状態を取得し,前記実行状態を,一時的な記憶領域内に保存されている前記第1コアの実行状態のうち少なくとも一部分とマージし,マージされた前記実行状態を前記第1コアへ送信させる,請求項7に記載のプロセッサ。
【請求項9】
オペレーティングシステムに対してトランスペアレントである第1の小さなコアと,第1の大きなコアと,アクセラレータと,電力制御ユニット(PCU)と,を含むプロセッサのロジック内の前記アクセラレータから,前記PCUにより,前記第1の小さなコア及び前記第1の大きなコアが低電力状態にある際に,割込みを受け取る段階と,
前記PCUにより,前記割込みに応答して,前記割込みのタイプに基づいて表のエントリにアクセスし,前記エントリに基づいて,レジューム信号を前記第1の小さなコアと前記第1の大きなコアとのうちどちらに直接的に送信するのかを判断する段階と,
前記PCUにより,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアに対して直接的に送信し,前記第1の大きなコアの実行状態のサブセットを前記第1の小さなコアに対して提供する段階と,
前記第1の小さなコアが前記割込みと関連する要求を処理することができるかどうかを前記レジューム信号を受信した前記第1の小さなコアで判断し,前記要求を処理することができると判断した場合,前記要求に対応する動作を前記第1の小さなコアで実行し,前記要求を処理することができないと判断した場合,前記第1の小さなコアにより信号を前記PCUに送信し,前記信号を受信した前記PCUによりウェイクアップ信号を前記第1の大きなコアに対して送信して,前記要求に対応する動作を前記第1の大きなコアで実行する段階と,
を備え,
前記PCUは,前記エントリに基づいて,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアと前記第1の大きなコアとのうちどちらに直接的に送信するのかを判断する場合に,システム動作の際に発生した割込みと,前記割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかと,を示す前記エントリに基づいて,同一タイプの以前の割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第1の小さなコアによって正常に処理されたと判断した場合,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアに送信することを決定する,方法。
【請求項10】
前記第1の大きなコアで実行する段階は,前記第1の小さなコアから前記実行状態の前記サブセットを取得し,前記実行状態の前記サブセットを前記第1の大きなコアの保存されている実行状態とマージし,マージされた前記実行状態を前記第1の大きなコアに対して送信する段階を含む,請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記割込みを受け取る段階は,前記割込みを前記第1の小さなコアと前記第1の大きなコアとのうちどちらに割り当てるべきかを示すヒントを前記割込みと共に受け取る段階を含む,請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
マルチコアプロセッサと,
前記マルチコアプロセッサに結合されたダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)と
を備え,
前記マルチコアプロセッサは,
第1の複数のコアと,
前記第1の複数のコアよりも低い熱設計電力を有し,オペレーティングシステム(OS)に対してトランスペアレントである第2の複数のコアと,
アクセラレータと,
電力制御ユニット(PCU)と
を有し,
前記PCUは,前記第1の複数のコア及び前記第2の複数のコアが低電力状態にある際に,前記アクセラレータから割込みを受け取り,前記割込みに応答して前記第1の複数のコアの第1のコア又は前記第2の複数のコアの第1のコアにレジューム信号を送るか否かを決定し,該決定に応じて前記レジューム信号を前記第1の複数のコアのうち第1のコアに対して送信する,又は,前記レジューム信号を前記第2の複数のコアのうち第1のコアに対して直接的に送信し,前記第1の複数のコアのうち第1のコアの実行状態のサブセットを前記第2の複数のコアのうち前記第1のコアに提供し,
前記PCUは,前記レジューム信号を送るか否かの決定において,前記割込みを使用して表のエントリにアクセスし,前記エントリが,前記第2の複数のコアのうち1つが前記割込みと同一のタイプの以前の割込みに応答して未定義障害に遭遇したことを示す場合,前記レジューム信号を前記第1の複数のコアの前記第1のコアに対して送信することを決定し,前記エントリが,前記割込みと同一タイプの以前の割込みが前記第2の複数のコアのうちの1つによって正常に処理されたことを示す場合,前記レジューム信号を前記第2の複数のコアの前記第1のコアに対して送信することを決定する,システム
【請求項13】
前記第1の複数のコアは,前記第2の複数のコアとはヘテロジニアスの設計を有する,請求項12に記載のシステム。」
第3.引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の拒絶理由に引用された特開2007-148952号公報(2007年6月14日公開)(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のため当審で付与したものである。)
A.「【0023】
図1には,本発明にかかる半導体集積回路の一例であるマイクロプロセッサが示される。
【0024】
図1に示されるマイクロプロセッサ100は,特に制限されないが,公知の半導体集積回路製造技術により,単結晶シリコン基板などの一つの半導体基板に形成される。2つ以上のCPUコアを有することから,マルチコアと呼ばれる。すなわち,高速動作が可能な高速プロセッサコア(HSC)11と,低速ではあるが低電力での動作が可能な低電力プロセッサコア(LPC)12とを内蔵し,この2つのコアにより情報処理が実施される。高速プロセッサコア11は,演算処理のための中央処理装置(CPU)111と,命令やデータをキャッシュするためのキャッシュ(CACHE)112とを含む。また,低速プロセッサコア12は,演算処理のための中央処理装置(CPU)121と,命令やデータをキャッシュするためのキャッシュ(CACHE)122とを含む。このようなプロセッサ11,12に対応して,電力制御のための電力制御回路(PLM)14,15が設けられる。この電力制御回路14,15は,対応するCPU111,121での消費電力を削減する機能を有し,後に詳述するように,クロックゲーティング回路や電源スイッチを含んで構成される。高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12は,それぞれ複数のMISFETを含んで構成される。このとき,高速プロセッサコア11を構成するMISFETと,低電力プロセッサコア12を構成するMISFETとは,特性的に互いに異なる。高速プロセッサコア11には,リーク電流が多くて,高速動作が可能なMISFETが適用され,低電力プロセッサコア12には,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETが適用される。これら2つのコア11,12は,特に制限されないが,共通のバスBSを介して,ランダムアクセス可能な共有メモリ(RAM)13に接続されている。また,コア選択部(CSEL)10により,上記2つのコア11,12の切り換えが可能となっている。このような構成は,いわゆる,完全なマルチコア形式であり,プログラムカウンタ(PC)が,CPU111及びCPU121に内蔵されることにより,高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12との同時動作が可能とされる。もちろん,コア選択部10が仲介するなどし,CPU111と,CPU121とを選択的に動作させることもできる。」
B.「【0065】
図7には,高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12及びコア選択部10の動作タイミングが示される。
【0066】
図7の上から下に向かって時刻の推移が示されており,低電力プロセッサコア12,コア選択部10,高速プロセッサコア11についてのアクティブ状態(実線)及びスタンバイ状態(破線)を示している。
【0067】
2つのコア11,12が同時に動作可能な場合について説明する。
【0068】
時刻T1で割り込み信号Int1が発生すると,それまでスタンバイ状態(例えばクロックゲーティングが実施されている状態)にあった低電力プロセッサコア12が動作を開始し,所定の処理を実施した後,時刻T2で割り込み信号を元に,コア選択部10へ高速プロセッサコア11の起動要請信号(Req1)を伝達する。高速プロセッサコア11はリーク電流が多いので,スタンバイ状態は電源遮断状態である。時刻T2´でコア選択部10はその信号を受けてHSCをアクティブ状態にするための信号(Req1´)をHSCへ伝達し,電源スイッチの投入及びクロックゲーティングを解除してクロック信号を供給し,高速プロセッサコア11をアクティブ状態にさせる。この場合,まず,PLM1へ高速プロセッサコア11起動のための電源スイッチをオンする制御を実施し,その後,高速プロセッサコア11自体を起動させるような制御を実施すればよい。その後,高速プロセッサコア11による高速動作が不要になった場合,高速プロセッサコア11の停止を求める信号(Req22)をコア選択部10に入力し,低電力プロセッサコア12は高速プロセッサコア11の停止信号(Req22')を高速プロセッサコア11へ発行し,クロックゲーティングを実施すると共に電源遮断が必要な場合に電源遮断制御を実施する。この図7では,時刻T3以降に高速プロセッサコア11がしばらく不要な期間が続くため,電源遮断を実施してスタンバイモードに戻っていることを示している。その後,低電力プロセッサコア12も時刻T4で動作不要になったため,スタンバイモードに入って低電力化される。
【0069】
図8には,高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12とが同時に動作しない場合の制御例が示される。
【0070】
時刻T1で割り込み信号Int1が発生すると,それまでスタンバイ状態にあった低電力プロセッサコア12が動作を開始し,所定の処理を実施した後,時刻T2で割り込み信号を元に,コア選択部10へ高速プロセッサコア11の起動要請信号(Req1)を伝達し,低電力プロセッサコア12自身はスタンバイモードに入る。このとき,低電力プロセッサコア12はクロックゲーティングを実施する。時刻T2'でコア選択部10はその信号を受けて高速プロセッサコア11をアクティブ状態にするための信号(Req1´)を高速プロセッサコア11へ伝達し,電源スイッチの投入及びクロックゲーティングを解除してクロック信号の供給を実施し,高速プロセッサコア11をアクティブ状態にさせる。尚,ここで低電力プロセッサコア12はクロックゲーティングが実施されたまま待機状態になろうとしているが,これは,低電力プロセッサコア12のリーク電流が無視できるようなレベルであることを仮定している。もし,低電力プロセッサコア12のリーク電流が
無視できるレベルにない場合は,こちらにも電源スイッチを設けて電源遮断を実施すればよい。その後,高速プロセッサコア11の動作が終了した場合,高速プロセッサコア11はスタンバイモードにて待機すると共に,処理終了信号(End1)をコア選択部10に入力する。図8では,T3以降高速プロセッサコア11がしばらく不要な期間が続くため,電源遮断を実施してスタンバイモードに戻っていることを示している。低電力プロセッサコア12は高速プロセッサコア11の処理終了信号(End1')を低電力プロセッサコア12へ発行し,End1'が入力された低電力プロセッサコア12は,クロックが供給されてスタンバイ状態から復帰する。ここで,高速プロセッサコア11は動作終了後に自動的にスタンバイモードに入り,同時にコア選択部10へ処理終了を通知しているが,このように高速プロセッサコア11が自律的に処理スタンバイモードに入らなくとも,コア選択部10が高速プロセッサコア11からの動作終了信号を受けた後,高速プロセッサコア11を停止させるように制御するようにしても良い。」
2.引用発明
あ 上記Aの【0024】には「図1に示されるマイクロプロセッサ100は(中略)2つ以上のCPUコアを有することから,マルチコアと呼ばれる。すなわち,高速動作が可能な高速プロセッサコア(HSC)11と,低速ではあるが低電力での動作が可能な低電力プロセッサコア(LPC)12とを内蔵し,この2つのコアにより情報処理が実施される。」と記載されていることから,引用文献1には,“高速プロセッサと低電力プロセッサを内蔵し,マルチコアと呼ばれるマイクロプロセッサ”が記載されているといえる。
い 上記Aの【0024】には「高速プロセッサコア11は,演算処理のための中央処理装置(CPU)111と,命令やデータをキャッシュするためのキャッシュ(CACHE)112とを含む。(中略)高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12は,それぞれ複数のMISFETを含んで構成される。」と記載されていることから,引用文献1には“演算処理のための中央処理装置(CPU111)を備え,MISFETで構成される高速プロセッサ(コア11)”が記載されているといえる。
う 上記Aの【0024】には「低速プロセッサコア12は,演算処理のための中央処理装置(CPU)121と,命令やデータをキャッシュするためのキャッシュ(CACHE)122とを含む。(中略)高速プロセッサコア11を構成するMISFETと,低電力プロセッサコア12を構成するMISFETとは,特性的に互いに異なる。高速プロセッサコア11には,リーク電流が多くて,高速動作が可能なMISFETが適用され,低電力プロセッサコア12には,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETが適用される。」と記載されていることから,引用文献1には,
“演算処理のための中央処理装置(CPU112)を備え,前記高速プロセッサ(コア11)を構成するMISFETと特性的に互いに異なる特性で,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETから構成される低電力プロセッサ(コア12)”が記載されているといえる。
え 上記Aの【0024】には「このようなプロセッサ11,12に対応して,電力制御のための電力制御回路(PLM)14,15が設けられる。この電力制御回路14,15は,対応するCPU111,121での消費電力を削減する機能を有し」と記載されていることと,上記い~うの検討より,CPU111,121の消費電力を削減することは,高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)の消費電力を削減することといえることから,引用文献1には,
“高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)の消費電力を削減する電力制御回路(PLM)”が記載されているといえる。
お 上記Bの【0065】には「図7には,高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12及びコア選択部10の動作タイミングが示される」と記載され、同じく上記Bの【0068】には「時刻T1で割り込み信号Int1が発生すると,それまでスタンバイ状態(例えばクロックゲーティングが実施されている状態)にあった低電力プロセッサコア12が動作を開始(中略)時刻T2´でコア選択部10はその信号を受けてHSCをアクティブ状態にするための信号(Req1´)をHSCへ伝達し,電源スイッチの投入及びクロックゲーティングを解除してクロック信号を供給し,高速プロセッサコア11をアクティブ状態にさせる。」と記載されていることと、図7の記載から,引用文献1には
“割り込み信号を受けて,高速プロセッサ(コア11)又は低電力プロセッサ(コア12)をアクティブ状態にするコア選択部(CSEL10)”が記載されているといえる。
か 上記Bの【0069】には「高速プロセッサコア11と低電力プロセッサコア12とが同時に動作しない場合の制御例が示される」と記載され,同じく上記Cには「時刻T1で割り込み信号Int1が発生すると,それまでスタンバイ状態にあった低電力プロセッサコア12が動作を開始」と記載されていることから,引用文献1には,
“高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)とが同時に動作しない場合,割り込み信号が発生すると,コア選択部(CSEL10)は,それまでスタンバイ状態にあった低電力プロセッサ(コア12)の動作を開始させ”ることが記載されているといえる。
き 上記Bの【0070】には「所定の処理を実施した後,時刻T2で割り込み信号を元に,コア選択部10へ高速プロセッサコア11の起動要請信号(Req1)を伝達し,低電力プロセッサコア12自身はスタンバイモードに入る」と記載されていることから,引用文献1には,
“所定の処理を実施した後,時刻T2での割り込み信号を元に,低電力プロセッサ(コア12)は,コア選択部(CSEL10)へ高速プロセッサ(コア11)への起動要請信号(Req1)を伝達”することが記載されているといえる。
く 上記Bの【0070】には「時刻T2'でコア選択部10はその信号を受けて高速プロセッサコア11をアクティブ状態にするための信号(Req1´)を高速プロセッサコア11へ伝達し,電源スイッチの投入及びクロックゲーティングを解除してクロック信号の供給を実施し,高速プロセッサコア11をアクティブ状態にさせる。」と記載されていることから,引用文献1には,
“コア選択部(CSEL10)は,前記信号を受けて高速プロセッサ(コア11)をアクティブにするための信号を高速プロセッサ(コア11)に伝達し,高速プロセッサ(コア11)をアクティブ状態にさせる”ことが記載されているといえる。
け 上記あ~くの検討より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「高速プロセッサと低電力プロセッサを内蔵し,マルチコアと呼ばれるマイクロプロセッサであって,
演算処理のための中央処理装置(CPU111)を備え,MISFETで構成される高速プロセッサ(コア11)と,
演算処理のための中央処理装置(CPU112)を備え,前記高速プロセッサ(コア11)を構成するMISFETと特性的に互いに異なる特性で,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETから構成される低電力プロセッサ(コア12)と,
高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)での消費電力を削減する電力制御回路(PLM)と,
割り込み信号を受けて,高速プロセッサ(コア11)又は低電力プロセッサ(コア12)をアクティブ状態にするコア選択部(CSEL10)と,
を備え,
高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)とが同時に動作しない場合,割り込み信号が発生すると,コア選択部(CSEL10)は,それまでスタンバイ状態にあった低電力プロセッサ(コア12)の動作を開始させ,
所定の処理を実施した後,時刻T2での割り込み信号を元に,低電力プロセッサ(コア12)は,コア選択部(CSEL10)へ高速プロセッサ(コア11)への起動要請信号(Req1)を伝達し,
コア選択部(CSEL10)は,前記信号を受けて高速プロセッサ(コア11)をアクティブにするための信号を高速プロセッサ(コア11)に伝達し,高速プロセッサ(コア11)をアクティブ状態にさせる,
マイクロプロセッサ」
3.引用文献2
本願出願前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,原査定の拒絶理由で引用された国際公開第2006/013857号(2006年2月9日公開)(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注;下線は,参考のため当審で付与したものである。)
C.「【0041】
(第1の実施形態)
図1は,本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。図1において,情報処理装置100は,メインCPU(M1)と,サブCPU(M2)と,アクセス調停回路(M3)と,割り込みコントローラ(M4)と,周辺装置(M5~M7)と,RAM(M8~M9)とを備える。周辺装置(M5~M7)およびRAM(M8~M9)の数は,図1に示す例に限定されない。
【0042】
メインCPU(M1)は,動作状態および停止状態の2つの状態を取り得るCPUである。サブCPU(M2)は,メインCPU(M1)よりも消費電力が少なく,動作状態および停止状態の2つの状態を取り得るCPUである。アクセス調停回路(M3)は,メインCPU(M1)およびサブCPU(M2)から,バスに対するアクセスが同時に発生した場合,競合調停を管理する。RAM(M8,M9)は,設定によって,メインCPU(M1)およびサブCPU(M2)からのアクセスを制限することができる。周辺装置(M5~M7)は,たとえばHDDやタイマ,キーボード,ボタンスイッチ,液晶ディスプレイ,MPEGデコーダ等であって,メインCPU(M1)およびサブCPU(M2)にバスを介して接続されている。図1では,周辺装置(M5~M7)は,情報処理装置100の内部に設けられた装置であるように示したが,情報処理装置100の外部に設けられた装置であってもよい。
(中略)
【0044】
図2は,本発明の第1の実施形態に係る情報処理装置100の機能的構成を示すブロック図である。図2において,情報処理装置100は,メインCPU1と,サブCPU2と,処理要求判定部3と,周辺装置41~43とを備える。メインCPU1は,図1におけるメインCPU(M1)に対応する。サブCPU2は,図1におけるサブCPU(M2)に対応する。処理要求判定部3は,図1における割り込みコントローラ(M4)に対応する。周辺装置41~43は,図1における周辺装置(M5~M7)に対応する。」
D.「【0051】
図3は,第1の実施形態に係る情報処理装置100の動作を示すフローチャートである。以下,図3を参照しながら,第1の実施形態に係る情報処理装置100の動作について説明する。
【0052】
周辺装置41,42,43のいずれかによって割り込み信号が送出されると,処理要求判定部3は,割り込み信号が発生したことを,割り込み要求レジスタ32における周辺装置41,42,43に対応する箇所にフラグを立てることによって記憶する(ステップS1)。
【0053】
次に,処理要求判定部3は,メインCPU状態判定レジスタ31を参照し,メインCPU1が停止状態であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0054】
メインCPU1が停止状態である場合,処理要求判定部3は,サブCPU状態判定レジスタ33を参照して,サブCPU2が停止状態であるか否かを判断する(ステップS3)。サブCPU2が停止状態である場合,処理要求判定部3は,サブCPU2を動作状態に遷移させ,サブCPU状態判定レジスタ33にサブCPU2が動作状態である旨を記憶させ(ステップS4),ステップS5の動作に進む。一方,サブCPU2が動作状態である場合,処理要求判定部3は,ステップS5の動作に進む。
(中略)
【0059】
このように,第1の実施形態によれば,情報処理装置100は,周辺装置によって割り込み信号が送出されると,メインCPU1が停止状態であるか否かを判断する。メインCPU1が停止状態である場合,情報処理装置100は,サブCPU2に割り込み処理を実行させることができると判断して,サブCPU2に割り込み処理を実行させる。したがって,メインCPU1が停止状態であれば,情報処理装置100は,メインCPU1を立ち上げることなく割り込み処理を実行することができるので,メインCPU1を長時間停止状態にしておくことができ,消費電力を低減することができる。一方,メインCPU1が動作状態である場合,情報処理装置100は,メインCPU1に割り込み処理を実行させることができると判断して,メインCPU1に割り込み処理を実行させる。したがって,割り込み処理の応答速度が向上することとなる。このように,本実施形態では,メインCPU1の動作状態に応じて,使用されるCPUが選択されるので,消費電力の低減を実現しつつ,周辺機器からの要求を処理するCPUが固定的に割り当てられていない情報処理装置100が提供されることとなる。本実施形態では,周辺装置からの処理要求をどちらのCPUで処理するかをCPUの動作状態に応じて判断すればよいので,従来のように,各CPUと周辺装置とを直接結線して,対応関係を明確にしておく必要がない。よって,ハードウェア構成が異なる情報処理装置においても,本実施形態に係る処理要求判定部3を用いれば,低消費電力化を実現しつつ,周辺装置からの処理要求をメインCPUまたはサブCPUのどちらに実行させるかが固定的でない情報処理装置を提供することができる。
E.「【0090】
図7Bは,図7AのステップS100における情報処理装置300の動作を示すフローチャートである。以下,図7Bを参照しながら,図7AのステップS100における情報処理装置300の動作について説明する。
【0091】
サブCPU2bは,割り込み信号の検出によってサブCPU割り込みルーチンを開始し(ステップS101),サブCPU処理要求完了判定レジスタ34に割り込み禁止フラグを書き込み(ステップS102),割り込み処理を実行する(ステップS103)。次に,処理要求判定部3bは,サブCPU2bによる割り込み処理の実行中,メインCPU1bの起動要求がなされたか否かを判断する(ステップS104)。メインCPU1bの起動要求がなされた場合,処理要求判定部3bは,処理交代ルーチンを実行し(ステップS300),ステップS106の動作に進む。一方,メインCPU1bの起動要求がなされていない場合,処理要求判定部3bは,当該割り込み処理終了後,サブCPU処理要求完了判定レジスタ34に割り込み許可フラグを書き込み(ステップS105),ステップS106の動作に進む。」
上記C~Eの記載より,引用文献2には以下の技術的事項が記載されているといえる。
「メインCPUとメインCPUよりも消費電力が少ないサブCPUと,処理要求判定部と周辺機器とを備える情報処理装置であって,
周辺装置から割り込み信号が送出されると,メインCPUが停止状態であり,サブCPUが停止状態である場合,サブCPUを動作状態に遷移させる処理要求判定部と,
割り込み処理を実行中に,メインCPUの起動要求がなされた場合,メインCPUを起動させ処理を交代するサブCPUとを備え,
周辺機器からの要求を処理するCPUを固定的に割り当てない情報処理装置」
第4.対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
引用発明と本願発明1とを対比すると,
ア 引用発明の「高速プロセッサと低電力プロセッサを内蔵し,マルチコアと呼ばれるマイクロプロセッサ」は,本願発明1の「マルチコアプロセッサ」に相当する。
イ 引用発明の「演算処理のための中央処理装置(CPU111)を備え,MISFETで構成される高速プロセッサ(コア11)」は,命令を実行することが明らかなので,本願発明1の「命令を実行する第1コア」に相当する。
ウ 引用発明の「演算処理のための中央処理装置(CPU112)を備え,前記高速プロセッサ(コア11)を構成するMISFETと特性的に互いに異なる特性で,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETから構成される低電力プロセッサ(コア12)」と,本願発明1の「前記第1コアとはヘテロジニアスであり,前記第1コアよりも小さく,オペレーティングシステムに対してトランスペアレントである,命令を実行する第2コア」と対比すると,引用発明の「低電力プロセッサ(コア12)」は「前記高速プロセッサ11を構成するMISFETと特性的に互いに異なる特性で,リーク電流が少なく,低速動作しかできないMISFETから構成され」ていることから,「高速プロセッサ」と「低電力プロセッサ」とはヘテロジニアスといえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“前記第1コアとはヘテロジニアスであり,前記第1コアよりも小さく,命令を実行する第2コア”という点で一致する。
エ 引用発明の「高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)の消費電力を削減する電力制御回路(PLM)と,割り込み信号を受けて,高速プロセッサ(コア11)又は低電力プロセッサ(コア12)をアクティブ状態にするコア選択部(CSEL10)」と,本願発明1の「割込みを受け取り,前記第1コア又は前記第2コアを前記割込みに応答してウェイクアップさせるロジックを含むとともに,システム動作の際に発生した割込みと前記割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかとを示すエントリを有する電力制御ユニット(PCU)」とを対比すると,引用発明の「電力制御回路(PLM)」と「コア選択部(CSEL10)」は,本願発明1の「電力制御ユニット(PCU)」に対応し,アクティブ状態にすることはウェイクアップさせるロジックを含んでいるといえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“割込みを受け取り,前記第1コア又は前記第2コアを前記割込みに応答してウェイクアップさせるロジックを含む電力制御ユニット(PCU)”の点で一致する。
オ 引用発明の「高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)とが同時に動作しない場合,割り込み信号が発生すると,コア選択部(CSEL10)は,それまでスタンバイ状態にあった低電力プロセッサ(コア12)の動作を開始させ」と,本願発明1の「前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みの受け取りに応じて前記エントリに基づいて同一タイプの以前の割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第2コアによって正常に処理されたと判断した場合,前記割込みを前記第2コアに割り当て」ることとを対比すると,引用発明の「高速プロセッサ(コア11)と低電力プロセッサ(コア12)とが同時に動作しない場合」は,本願発明1の「前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際」に相当し,引用発明の「低電力プロセッサ(コア12)の動作を開始させる」ことは,本願発明1の「割込みを前記第2コアに割り当て」ることに相当するので,両者は後記する点で相違するものの,
“前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みを前記第2コアに割り当て”る点で一致している。
カ 引用発明の「所定の処理を実施した後,時刻T2での割り込み信号を元に,低電力プロセッサ(コア12)は,コア選択部(CSEL10)へ高速プロセッサ(コア11)への起動要請信号(Rep1)を伝達」と,本願発明1の「前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コアは,前記第2コアが前記割込みを処理することができるかどうかを判断し,前記割込みを処理することができないと判断した場合,信号を前記PCUに送信」とを対比すると,
引用発明の「低電力プロセッサ(コア12)」は,割り込み信号を受けて所定の処理を実施しているので,本願発明1の「前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コア」に相当し,引用発明の「コア選択部(CSEL10)へ高速プロセッサ(コア11)への起動要請信号(Req1)を伝達」することは,本願発明1の「信号をPCUに送信」することに対応するので,両者は,後記する点で相違するものの,
“前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コアは,所定の処理を実施した後,信号を前記PCUに送信”という点で一致する。
キ 引用発明の「コア選択部(CSEL10)は,前記信号を受けて高速プロセッサ(コア11)をアクティブにするための信号を高速プロセッサ(コア11)に伝達し,高速プロセッサ(コア11)をアクティブ状態にさせる」と本願発明1の「前記信号を受信した前記PCUは,ウェイクアップ信号を前記第1コアへ送信する」とを対比すると,
引用発明の「高速プロセッサ(コア11)をアクティブにするための信号」は本願発明1の「ウェイクアップ信号」といえるので,両者に実質的な差異はない。
ク 上記ア~キの検討より,引用発明と本願発明1は以下の点で一致し,相違する。
<一致点>
「マルチコアプロセッサを備え,前記マルチコアプロセッサは,
命令を実行する第1コアと,
前記第1コアとはヘテロジニアスであり,前記第1コアよりも小さく,命令を実行する第2コアと,
割込みを受け取り,前記第1コア又は前記第2コアを前記割込みに応答してウェイクアップさせるロジックを含む電力制御ユニット(PCU)と,
を有し,
前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みを前記第2コアに割り当て,
前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コアは,所定の処理を実施した後,信号を前記PCUに送信し,
前記信号を受信した前記PCUは,ウェイクアップ信号を前記第1コアへ送信する,プロセッサ。」
<相違点1>
本願発明1では「第2コア」について「オペレーティングシステムに対してトランスペアレントである」と特定しているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点
<相違点2>
電力制御ユニット(PCU)に関し,本願発明1では「システム動作の際に発生した割込みと前記割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかとを示すエントリ」(以下,「相違点2に係る構成」という。)を有する「電力制御ユニット(PCU)」と特定しているのに対し,引用発明ではそのように特定されていない点。
<相違点3>
本願発明1では「前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みの受け取りに応じて前記エントリに基づいて同一タイプの以前の割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第2コアによって正常に処理されたと判断した場合,前記割込みを前記第2コアに割り当て」(以下,「相違点3に係る構成」という。)と特定しているのに対して,引用発明ではそのように特定されていない点。
<相違点4>
本願発明1では「前記PCUが前記割込みを割り当てた前記第2コアは,前記第2コアが前記割込みを処理することができるかどうかを判断し,前記割込みを処理することができないと判断した場合,信号を前記PCUに送信」と特定しているのに対して,引用発明ではそのように特定していない点。
(2)相違点についての判断
相違点2に係る構成及び相違点3に係る構成は,上記引用文献2には記載されておらず,本願国際出願日前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2.本願発明9について
本願発明9は「前記PCUは,前記エントリに基づいて,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアと前記第1の大きなコアとのうちどちらに直接的に送信するのかを判断する場合に,システム動作の際に発生した割込みと,前記割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかと,を示す前記エントリに基づいて,同一タイプの以前の割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第1の小さなコアによって正常に処理されたと判断した場合,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアに送信することを決定する」と特定されており,本願発明9の「前記割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかと,を示す前記エントリ」は,第1の小さなコア(第2コア)によって正常に処理されたことを示すエントリも含むので相違点2に係る構成を備えるものといえる。また,本願発明9の「前記エントリに基づいて,同一タイプの以前の割込みが前記第1の小さなコアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第1の小さなコアによって正常に処理されたと判断した場合,前記レジューム信号を前記第1の小さなコアに送信することを決定する」ことは,相違点2に係る構成のエントリに基づいて,同一タイプの以前の割込みが前記第1の小さなコア(第2コア)によって正常に処理されたと判断した場合に第1の小さなコア(第2コア)に割り当てているといえるので,相違点3に係る構成を備えているといえる。そうすると,本願発明9は,相違点2に係る構成及び相違点3に係る構成を備えるものであり,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
3.本願発明12について
本願発明12は「前記PCUは,前記レジューム信号を送るか否かの決定において,前記割込みを使用して表のエントリにアクセスし,前記エントリが,前記第2の複数のコアのうち1つが前記割込みと同一のタイプの以前の割込みに応答して未定義障害に遭遇したことを示す場合,前記レジューム信号を前記第1の複数のコアの前記第1のコアに対して送信することを決定し,前記エントリが,前記割込みと同一タイプの以前の割込みが前記第2の複数のコアのうちの1つによって正常に処理されたことを示す場合,前記レジューム信号を前記第2の複数のコアの前記第1のコアに対して送信する」と特定されており,本願発明12の「前記エントリが,前記割込みと同一タイプの以前の割込みが前記第2の複数のコアのうちの1つによって正常に処理されたことを示す場合」は第2の複数のコアのうちの1つ(第2コア)によって正常に処理されたことを示すエントリを含むので,相違点2に係る構成を備えているといえ,本願発明12の「前記エントリが,前記割込みと同一タイプの以前の割込みが前記第2の複数のコアのうちの1つによって正常に処理されたことを示す場合,前記レジューム信号を前記第2の複数のコアの前記第1のコアに対して送信する」は,相違点2に係る構成のエントリに基づいて,同一タイプの以前の割込みが第2の複数のコアのうちの1つ(第2コア)によって正常に処理された場合に第2の複数のコアの前記第1のコア(第2コア)に割り当てているといえるので,相違点3に係る構成を備えてるといえる。そうすると,本願発明12は,相違点2に係る構成及び相違点3に係る構成を備えるものであり,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
4.本願発明2~8,10~11,13について
本願発明2~8は,本願発明1を更に限定したものであり,本願発明10~11は,本願発明9を更に限定したものであり,本願発明13は,本願発明12を更に限定したものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものではない。
第5.原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1について,上記引用文献1~2に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,平成29年5月24日付けの手続補正において「システム動作の際に発生した割込みと前記割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかとを示すエントリを有する電力制御ユニット(PCU)」という構成と,「前記PCUは,前記第1コア及び前記第2コアが低電力状態にある際に,前記割込みの受け取りに応じて前記エントリに基づいて同一タイプの以前の割込みが前記第2コアによって正常に処理されたかどうかを判断し,前記第2コアによって正常に処理されたと判断した場合,前記割込みを前記第2コアに割り当て」という構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1~13は,上記引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することができない。
第6.当審拒絶理由について
<特許法第36条第6項第2号について>
当審では,請求項1(本願発明1に対応)の第2コアが割込みを処理できるかどうかの判断に関し,「第2コア」が行うのか「PCU」が行うのかの構成が不明確であり,請求項10(本願発明9に対応)の各動作・段階を実行する主体が不明確であり,請求項13(本願発明12に対応)のPCUの技術的内容が不明確であるとの拒絶の理由を通知したが,平成29年5月24日付けの手続補正により,判断、各動作・段階を実行する主体等が明確になる補正がされた結果,この拒絶理由は解消した。
第7.むすび
以上のとおり,本願発明1~13は,当業者が引用発明および引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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2016-011683