特許拒絶査定不服審判
2016-009080
パラメトリックスピーカおよびその製造方法
- 審判番号
- 2016-009080
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2012-015660外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月20日
- 審決日
- 2017年03月06日
- 公報発行日
- 2017年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本特殊陶業株式会社
- 【請求人代理人】福地 武雄
- 分類
- P18 .121-Z (H04R)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2012- 15660「パラメトリックスピーカおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月15日出願公開、特開2013-157740〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
1.手続の経緯
本願は、平成24年1月27日に特許出願したものであって、平成27年6月5日付け拒絶理由通知に対して同年7月29日付けで手続補正がなされたが、平成28年3月17日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年6月20日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成27年7月29日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の発振源から超音波を放射するパラメトリックスピーカであって、
配線パターンが設けられた平板状の基板と、
シリコンゴムで形成され、前記基板上に直接、設けられた支持部材と、
前記基板からの高さが均一になるように、前記支持部材により振動の節で支持された圧電振動子と、
前記圧電振動子上に設けられ、超音波を発振する共振子と、を備え、
前記支持部材の厚さは、前記圧電振動子の変位量の最大値より大きく、1mm以下であることを特徴とするパラメトリックスピーカ。」
3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-58600号公報(以下、「引用例1」という。)には、「超指向性スピーカ」に関し、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ア.「[発明が解決しようとする課題]
通常のスピーカとは相反した超指向特性を目的とした超指向性スピーカは、音の広がりが約2度と鋭い指向性を有するが、通常のスピーカとくらべ音圧レベルが低いことが問題である。
この超指向性スピーカは、音波パラメトリック効果の原理に基き、超音波の変調信号によりその効果を発生させているため、スピーカは超音波振動子の集合体で構成されている。
この音圧レベルを増大させるためには、振動子の数を増やせばよいが、同時に鋭い指向性を維持するためには、その振動素子の配列形態を同心平面上、かつ、径を小さく集積することが理想とされ、性能を満足するのに困難をきたしている。
本発明の課題は、上記従来の問題点を解消できる超指向性スピーカを提供することである。」(第1頁右欄12行~第2頁左上欄7行)
イ.「[実施例]
第1図は、本発明の一実施例の外形図で、第1図(A)は平面図、第1図(ロ)は第1図(イ)の部分拡大図である。第2図は第1図の部分断面図である。
第1図および第2図において、1は超音波振動子、2は共振板、3は両面プリント基板、4はスルーホール、5,5’はそれぞれリード線、6は裏パターン、7は表パターン、8は筐体を示す。
第1図および第2図において、例えば、7mm角のプラスチック製の共振板2を有する超音波振動子1を952個使用し、第1図の様に、最も集積した配列とするためにリード線5の貫通穴を約2mm間隔にて平面格子状に展開し、外周を円形構成とする。
超音波振動子1の+,-極の2本のリード線5,5’を前記構或を保ち配線可能とするために、スルーホール4付き両面プリント基板3を採用し、超音波振動子1チップは両面プリント基板3表面へ接着し、1本のリード線5は表パターン7へ、もう1本のリード線5’はスルーホール4を通して裏パターン6ヘハンダ付けされている。」(第2頁右上欄1行~同頁左下欄1行)
上記アないしイ、第1図および第2図から、引用例1の「超指向性スピーカ」には以下の事項が記載されている。
・上記アによれば、超指向性スピーカは、音波パラメトリック効果の原理に基づき、超音波振動子の集合体で構成されているものである。
・上記イによれば、両面プリント基板3は、超音波振動子1のリード線5,5’と配線可能となっているものである。
・上記イによれば、952個の平面格子状に展開した超音波振動子1は、それぞれ共振板2を有し、両面プリント基板3に接着したものである。
そうすると、上記摘示事項及び図面の記載を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「超音波振動子1の集合体(952個の平面格子状に展開した超音波振動子1)で構成され、音波パラメトリック効果の原理に基づく超指向性スピーカであって、
超音波振動子1のリード線5,5’と配線可能な両面プリント基板3を備え、
超音波振動子1は共振板2を有し、両面プリント基板3に接着したものである、超指向性スピーカ。」
(2)原査定の拒絶の理由に引用された実願昭57-119467号(実開昭59-25900号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。なお、下線部は当審で付与した。
ウ.「従来この種の空中超音波送・受波器は第1図の例に示すように、円形セラミックバイモルフの振動子1の振動の節にあたる位置にシリコンゴムのリング状の支持物2を接着し、ケース3の底部に固定する。またケース5の上部表面に振動子1の超音波放射面との間に一定の間隔を隔てて円形の反射板4を配設し、端子5より電気信号を振動子1に印加し、超音波を放射させる。したがってこの構造のものでは振動子1は振動の節が支持されているので機械的なQが高く周波数帯域幅の狭い感度の高い送・受波器が得られる。」(第2頁17行~第3頁8行)
上記ウの記載、第1図の記載によれば、引用例2には、「振動子を固定する場合、該振動子の振動の節にあたる位置にシリコンゴムの支持物を接着する」技術事項が記載されている。
4.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「超音波振動子の集合体(952個の平面格子状に展開した超音波振動子1)で構成され、音波パラメトリック効果の原理に基づく超指向性スピーカ」は、超音波振動子が超音波を放射するスピーカであるから、本願発明の「複数の発振源から超音波を放射するパラメトリックスピーカ」に相当する。
b.引用発明の「超音波振動子1のリード線5,5’と配線可能な両面プリント基板3」は、プリント基板3上に超音波振動子1を接着することから該プリント基板3は特に明記がない限り「平板状」と解するのが自然であり、また、引用例1の第2図にも平板状であることが示されているといえるから、本願発明の「配線パターンが設けられた平板状の基板」に相当する。
c.引用発明の「超音波振動子1」は、両面プリント基板3に接着されるものであるが、超音波振動子1の振動源と両面プリント基板3とは直接接触せず、その間に振動が伝わり難い構成を付加していることが技術常識であるから、本願発明の「基板上に直接、設けられた支持部材」に相当するものを当然に備えているといえる。(なお、引用例1の第2図には、超音波振動子1を指す斜線の長方形と両面プリント基板3との間に、該斜線の長方形よりも小さい白の四角形が記載されている。)
ただし、本願発明は「シリコンゴムで形成され」た支持部材を備えているのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
d.引用発明のような「音波パラメトリック効果の原理に基づく超指向性スピーカ」の振動源として、圧電体を用いることは技術常識である。そして、特に明記がない限り、基板と複数の振動子(圧電体)との間隔を一定にするのが自然である。よって、引用発明の「超音波振動子1は・・・両面プリント基板3に接着した」ことは、本願発明の「前記基板からの高さが均一になるように、前記支持部材により・・・支持された圧電振動子」に相当するものを備えているといえる。
ただし、本願発明は、前記支持部材により圧電振動子の「振動の節」で支持しているのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
e.引用発明の「共振板2」は、引用例1の第2図を参照すると、超音波振動子1の上に設けられたものであるから、本願発明の「前記圧電振動子上に設けられ、超音波を発振する共振子」に相当する。
f.本願発明は「前記支持部材の厚さは、前記圧電振動子の変位量の最大値より大きく、1mm以下である」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
上記aないしfから、本願発明と引用発明とは、次の点で一致ないし相違する。
<一致点>
複数の発振源から超音波を放射するパラメトリックスピーカであって、
配線パターンが設けられた平板状の基板と、
前記基板上に直接、設けられた支持部材と、
前記基板からの高さが均一になるように、前記支持部材により支持された圧電振動子と、
前記圧電振動子上に設けられ、超音波を発振する共振子と、を備えた
パラメトリックスピーカ。
<相違点1>
支持部材について、本願発明は「シリコンゴム」で形成されているのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
<相違点2>
支持部材による圧電振動子の支持について、本願発明は「振動の節」で支持しているのに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
<相違点3>
支持部材の厚さについて、本願発明は「圧電振動子の変位量の最大値より大きく、1mm以下である」のに対し、引用発明にはその旨の特定がされていない。
5.判断
そこで、上記相違点について検討する。
(1)<相違点1>および<相違点2>について
引用発明は上記cのとおり支持部材が備えられているといえるところ、支持部材をシリコンゴムで形成し、該支持部材により振動子を振動の節で支持することは、引用例2に従来の技術として記載されているように(上記「3.(2)」を参照。)、周知の技術事項である。
よって、引用発明の支持部材およびその支持を、引用例2に記載された周知の技術事項を適用して相違点1および2の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。
(2)<相違点3>について
はじめに相違点3に係る構成とすることの技術的意義を確認すると、本願明細書の段落【0026】には「支持部材121の厚さは、圧電振動子124の変位量の最大値より大きいことが好ましい。これにより、圧電振動子124が変位時に基板110に接触することがなくなり、異音が生じることがなくなる。なお、支持部材121の各形状例の詳細については後述する。ただし、変位量以上でも厚すぎると圧電振動子124の屈曲振動に釣られて支持部材121も振動してしまいかねないため、1mm以下であることが好ましい。」と記載されていることから、その技術的意義は、圧電振動子が変位時に基板に接触しないようにしつつ、圧電振動子の屈曲振動に釣られて振動してしまわないように、支持部材の厚さを規定したものと認められる。
ここで、圧電振動子を基板上に搭載した場合、該圧電振動子と該基板とが接触しないよう構成することは技術常識であるから、該圧電振動子と該基板との間に設ける支持部材の厚さを少なくとも「圧電振動子の変位量の最大値より大きく」することは、当然に設計されるべき事項である。よって、引用発明の支持部材も、超音波振動子1(の圧電素子)の変位量の最大値より大きな厚みを当然有しているものである。
そして、引用例1および引用例2にも支持部材の厚さを積極的に大きくする理由はなく、支持部材の厚みを大きくすると該支持部材に振動が伝わり易くなることは自明であるから、支持部材の厚みは、最低必要な厚みさえ確保すれば充分であり、圧電振動子の変位量の最大値より大きければ1mm以下程度の厚さにすることも当業者が適宜設計し得る事項である。なお、原査定で引用された特開2009-10940号公報(段落【0020】なしい【0022】、図3ないし図5を参照。)には、PZTからなる振動器(本願発明の「圧電振動子」に相当。)の下側に1mm未満の空洞を設けることが記載されているように、圧電振動子の振動を妨げない空間として「1mm以下」とすることは周知の技術である。
なお、本願明細書には、「シリコンゴム」からなる支持部材の厚さの上限が「1mm以下」であるべき具体的な数値的根拠(実験結果等)は示されておらず、「1mm以下」について臨界的意義を認めることはできない。
よって、引用発明の支持部材として引用例2に記載された周知の技術事項(シリコンゴム)を適用し、その厚みを相違点3の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。
そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用発明と周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用発明および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものである。
6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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