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特許拒絶査定不服審判

2023-003779

スピーカー振動板及びヘッドフォン

審判番号
2023-003779
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-228738外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2023年03月06日
審決日
2023年07月31日
公報発行日
2023年10月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H04R)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2018-228738「スピーカー振動板及びヘッドフォン」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月11日出願公開、特開2020- 92339〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成30年12月6日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。 令和4年 8月24日付け:拒絶理由通知書 11月 7日 :意見書、手続補正書の提出 11月28日付け:拒絶査定 令和5年 3月 6日 :審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、令和4年11月7日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 〔本願発明〕 セルロースナノファイバー及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含む混抄層を備え、 前記セルロースナノファイバーの平均径は、0.01μm以上5.0μm以下であるスピーカー振動板。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本件出願の請求項1~7に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2及び引用文献3)に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開平9-107595号公報 引用文献2:田島健次、「バクテリアによるセルロースの合成」、 日本ゴム協会誌、85巻、12号、2012年, 406~411頁 引用文献3:近藤哲男、「セルロース繊維産生微生物をナノビルダー とする3次元構造体の自動構築」、繊維学会誌、 61巻、11号、2005年、290~293頁 第4 引用文献 1 引用文献1 (1)記載事項 上記引用文献1には次の記載がある。なお、以降の下線は説明のために当審で付したものである。 「【0020】 【実施例】次に、本発明にかかる振動板1を製造する方法の好ましい実施例について説明する。この実施例では振動板1は湿式抄造法により製造した。即ち、所定の叩解度に叩解された木材パルプに所定の長さにカットしたポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維を添加し、これを抄紙、脱水、加圧加熱乾燥して振動板1を得るもので、以下にその詳細について述べる。 【0021】(1)木材パルプをカナダ標準3水度500mlに叩解し、この天然セルロース繊維に繊維長3mmにカットしたPBO繊維を20重量%添加し、溶液(スラリー)を作製した。 (2)上記(1)で得られた溶液(スラリー)を金網等の上に所定の形状(この実施例ではコーン型)に抄き上げ、脱水行程において適当な水分量に調整した(この例では80%)。 (3)上記(2)で得られた抄造物を所定の形状(この例ではコーン型)の金型を用いて加圧加熱乾燥した後、所定の形状に打ち抜いて振動板本体1aを得た。ここでの加圧加熱乾燥条件は、2kg/m2 ,180℃,30秒とした。 (4)上記(3)で得られた振動板本体1aに合成ゴムからなるエッジ2を取り付け、図2に示す振動板1を得た。 【0022】この様にして作製した振動板1とPBO繊維の代わりにアラミド繊維を用いて同一工程にて作製した振動板を用いて、それぞれ口径13cmのスピーカを作製し周波数特性を測定した。図3にその音圧-周波数特性を示す。ここでは比較のため500Hz以上の周波数特性を示している。図中aが本発明にかかる振動板を用いたスピーカ、bが従来の天然セルロース繊維80%,P-アラミド繊維20%の振動板を用いたスピーカである。この図から明らかなように本発明にかかる振動板を用いたスピーカは高域に延びがあり高域特性が改善されていることがわかる。」 「【0029】また、セルロース繊維は微生物から得られる微生物セルロース繊維とすることにより、高ヤング率と高い内部損失を有するバイオセルロースの物性とPBZ繊維の物性の両方を併せ持った優れた振動板を得ることができる。」 (2)引用発明 上記(1)の【0021】によれば、「所定の叩解度に叩解された木材パルプ」は「天然セルロース繊維」である。そして、上記(1)の【0029】には「セルロース繊維は微生物から得られる微生物セルロース繊維とすることにより、高ヤング率と高い内部損失を有するバイオセルロースの物性とPBZ繊維の物性の両方を併せ持った優れた振動板を得ることができる」ことが記載されているから、引用文献1には、【0020】の「所定の叩解度に叩解された木材パルプ」(天然セルロース繊維)を「微生物から得られる微生物セルロース繊維」とした次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 なお、各構成の末尾の括弧内に対応する記載箇所を示した。 〔引用発明〕 微生物から得られる微生物セルロース繊維にポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維を添加し、これを抄紙、脱水、加圧加熱乾燥して得られる振動板であって、(【0020】、【0021】、【0029】) スピーカに用いられる(【0022】) 振動板。 2 引用文献2 (1)記載事項 上記引用文献2には次の記載がある。 「2.バクテリアセルロース(BC) 様々なバクテリアがセルロースを合成することが報告されているが、最も古くから研究が行われているのが酢酸菌(Acetobacter=Gluconacetobacter)である。酢酸菌は、絶対好気性・グラム陰性の桿菌で、天然においては果物の表面などに存在している。酢酸菌の大きさは1μm×5μm程度で(Fig.1-C)、1本の繊維(セルロースリボン)を合成・排出し、それに伴って移動する(Fig.1-C)。最終的にFig.1-Bに示すようなナノファイバーの緻密なネットワーク構造を有するゲル状の膜が作られる。BCの特徴として以下のような点が挙げられる:(1)リグリン・ヘミセルロースなどを全く含まない、(2)繊維の幅が非常に細い(数十nm程度)、(3)非常に発達したネットワーク構造、(4)高い機械的強度、(5)高い生分解性。BCの応用例として最も古くから知られているのが、“ナタデココ”というデザートである(Fig.1-A)。15年ほど前に日本でもブームとなり、現在でも様々な形態でナタデココを含む食品が売られている。“ナタ”は液上に浮く膜、“ココ”はココナッツの意味で、ココナッツ水の上にできる膜がナタデココである。ナタデココはバクテリアによって作られるが、そのコリコリとした食感はナノオーダーの繊維による緻密なネットワーク構造によるものである(セルロース含有量はナタデココ全体の約0.5%程度)。また、そのユニークな構造と物性を利用したBCの応用例として、スピーカーの音響振動板、人工血管、創傷被覆材、UVカット材、高強度透明材料、表示デバイスなどがあり,デザートから先端材料まで幅広い応用が可能である。」(406頁右欄3行~407頁左欄16行) 3 引用文献3 (1)記載事項 上記引用文献3には次の記載がある。 「酢酸菌(Acetobacter xylinum)は、食品の分野でナタデココとして一般に知られる結晶性セルロースナノ繊維であるバクテリアセルロースを生産する。この菌は、同時に菌体外への繊維分泌の際の噴出エネルギーを駆動力として分泌方向と逆方向に走行する。それぞれの菌が任意の方向に走行するため、結果として、幅40-60nmの分泌ナノ繊維からなるネットワークが形成され、ペリクルと呼ばれるゲル状の膜ができあがる(図1)。」(290頁左欄13行~右欄3行) 「2.バクテリアセルロースとは? 図2は、酢酸菌が、セルロース結晶繊維を産生するまでの工程を模式的に描いたものである。酢酸菌の細胞壁(下部表面)には、セルロース合成顆粒(ターミナルコンプレックス:TC)と呼ばれる酵素の集合体が存在し、特にこの菌の場合にはそれが3個づつのサブユニットで一つのTCを構成し、それらが直線状に配列している。サブユニットは微小結晶性繊維(サブエレメンタリーフィブリル)を合成し、1つのTCは、3.5-4nm程度のミクロフィブリルを形成させる。さらに、この直線配列により、リボン状のさらに高次の結晶構造体が形成され、そのセルロースリボンは酢酸菌の生産時の自己回転運動に起因してねじれる。このように生合成され、階層構造形成されたセルロースナノ繊維をバクテリアセルロースと呼ぶ。 以前から、このバクテリアセルロースから成るペリクルは、ナナデココとして食用に用いられてきたが、そのほかにその強度と特異的な高音響特性を利用した、合板の補強材や高価なステレオヘッドホーンやスピーカーの高感度振動板(スピーカーコーン)としても用いられてきた。また、最近ではバクテリアセルロースペリクルがナノ繊維のネットワークあることで透明性を示すことから、それを生かしたフレキシブルフィルムなども注目されている。」(291頁左欄1~22行) 第5 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明の「スピーカに用いられる振動板」は、本願発明の「スピーカー振動板」に相当する。 本願発明の「セルロースナノファイバー」と引用発明の「微生物から得られる微生物セルロース繊維」は、セルロースファイバーである点で共通する。 本願発明の「混抄層」は、本願明細書の【0022】によれば「CNF及びPBO繊維を含む混抄層11の形成材料を分散媒に分散したスラリーを当該スピーカー振動板1に対応する形状を有する抄き型を用いて混抄することで形成される」ものである。そして、本願明細書の【0021】における「当該スピーカー振動板1は、混抄層11の単層体からなる」との記載によれば、本願発明の「混抄層」は、スピーカーとして振動する板を形成するものであるから、乾燥した状態のものと認められる。 そうすると、引用発明の「微生物から得られる微生物セルロース繊維にポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維を添加し、これを抄紙、脱水、加圧加熱乾燥して得られる振動板」は、セルロースファイバー及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含む混抄層を備えるものといえる。 よって、本願発明と引用発明は「セルロースファイバー及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含む混抄層を備えたスピーカー振動板」である点で共通する。 しかしながら、上記セルロースファイバーが、本願発明では、平均径が0.01μm以上5.0μm以下であるセルロースナノファイバーであるのに対し、引用発明では、微生物から得られる微生物セルロース繊維の平均径が特定されていない点で、両者は相違する。 以上から、本願発明と引用発明の一致点、相違点は次のとおりである。 〔一致点〕 セルロースファイバー及びポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維を含む混抄層を備えたスピーカー振動板。 〔相違点〕 上記セルロースファイバーが、本願発明では、平均径が0.01μm以上5.0μm以下であるセルロースナノファイバーであるのに対し、引用発明では、微生物から得られる微生物セルロース繊維の平均径が特定されていない点。 第6 相違点についての判断 上記相違点について検討する。 スピーカー振動板に用いられる微生物セルロース繊維として、繊維の幅が数十nm程度のものは、通常よく用いられているものである。(例えば、引用文献2には、繊維の幅が数十nm程度のバクテリアセルロースがスピーカの振動板として用いられることが、引用文献3には、幅40~60nmのバクテリアセルロースがスピーカの振動板として用いられることが記載されている。) 引用発明における微生物から得られる微生物セルロース繊維は、その繊維幅が特に特定されているわけではないから、通常よく用いられるものを採用しようとすることは当業者にとって自然なことであり、そのことを阻害する要因も見あたらない。 よって、引用発明において、「微生物から得られる微生物セルロース繊維」として、上述の通常よく用いられる繊維の幅が数十nm程度のものを採用すること、すなわち、引用発明において、「セルロースナノファイバーの平均径は、0.01μm以上5.0μm以下である」ようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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