特許拒絶査定不服審判
2016-008851
魚由来のコラーゲン及びその誘導体を含有する飲食品
- 審判番号
- 2016-008851
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-276500外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月14日
- 審決日
- 2017年08月21日
- 公報発行日
- 2017年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】共栄化学工業株式会社
- 分類
- P18 .121-WZ (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第49条第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-276500号「魚由来のコラーゲン及びその誘導体を含有する飲食品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月27日出願公開、特開2013-126391号〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年12月16日の出願であって、平成28年2月23日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において平成29年3月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月9日付けで審判請求人から意見書及び手続補正書が提出された。
第2 当審で通知した拒絶理由の概要
当審において平成29年3月21日付けで通知した拒絶理由は、少なくとも特許法第29条第2項を根拠とするものであり、その概要は、以下のとおりである。
(特許法第29条第2項)
本願の請求項1ないし3に係る発明は、下記の刊行物に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
刊行物1:特開2011-111434号公報
刊行物2:特開2009-102311号公報
第3 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年6月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める(下線は、補正箇所。)。
「ハモ科及びアナゴ科から選ばれた魚のコラーゲンを有効成分とすることを特徴とする美肌用飲食品。」
第4 判断
1 引用文献
1)引用文献1
当審の拒絶理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開2011-111434号公報(以下「引用文献1」という。)には、表及び図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与。以下同じ。)。
a)「【請求項1】
コラーゲンを有効成分として含む、肌のアクアポリン遺伝子(AQP)の発現量を調節する皮膚機能改善剤。
(中略)
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の改善剤を含む飲食品。」
b)「【0001】
本発明は、皮膚アクアポリン(水チャネル)発現と角化細胞の分化増殖に作用する皮膚機能改善剤及びそれを含む飲食品に関する。」
c)「【0007】
皮膚細胞からの水分の損失が増大すると乾燥肌となり細胞が角質化・剥離し、炎症を起こして掻痒感を引き起こす。また、角化細胞が異常増殖して皮膚表面に皺を形成する。
乾燥肌に悩む人は老若男女問わず多く、症状も軽度なものから重度なものまで個人差がある。脂質の減少が乾燥肌の原因の一つともされているが、最近では、皮脂は足りているのに水分量が少ないため乾燥するといった肌質を持つ人も少なくない。乾燥肌では、皮膚細胞からの水分損失が増加し、細胞が角質化・剥離し、炎症を起こして掻痒感を引き起こす。また、角化細胞が異常増殖して皮膚表面に皺を形成する。皮膚機能がこのように細胞の水分損失により悪化するのを防ぐために、日常において誰でも無理なく、皮膚機能改善効果を享受できる方法や物質が強く求められている。
したがって、本発明は、乾燥肌における皮膚細胞の水分損失と異常増殖を防ぐ皮膚機能改善手段を提供することを目的とする。」
d)「【0008】
本発明者らは、乾燥肌を実験的に誘発させたマウスにおける皮膚の遺伝子発現をDNAマイクロアレイ法によって研究し、乾燥肌ではアクアポリン遺伝子AQP3、AQP5、AQP8、AQP9の発現が亢進されていること、アクアポリンの発現を抑えることにより細胞からの水分損失を抑えられることを見出した。そして、コラーゲンを経口投与することにより皮膚においてアクアポリンの発現が低下すること、その発現低下により細胞からの水分損失を抑え、乾燥肌にかかわる皮膚機能が改善されることを見出した。
また、コラーゲンペプチド投与マウスの皮膚では、角化細胞分化に関わるスモールプロリンリッチタンパク質(Sprr1b、Sprr2a、Sprr2d、Sprr2h)や角化細胞の増殖に関わる上皮細胞成長因子であるエピレグリン(EREG)やサイクリン依存性キナーゼCDK2の発現が抑制されることを確認し、コラーゲンを経口投与することにより角化細胞の分化増殖が正常化し、それにより肌水分を保持し、皺形成を抑制することを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成し得たものである。
すなわち、本発明は以下の構成からなる。」
e)「【0012】
本発明で用いられるコラーゲンとしては、コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれでも良いが、コラーゲンペプチドが好ましい。なお、本明細書でコラーゲンは、未変性のコラーゲン、可溶化コラーゲン、ゼラチン、コラーゲンペプチドのいずれをも含む。
本発明で用いられるコラーゲンの原料由来は陸上動物性及び水生動物性のいずれでも構わない。陸上動物性としては、豚、鶏、牛等由来のものが挙げられる。水性動物性としては、海水性(海洋性)、淡水性のいずれでもよく、例えば、鮭、カツオ、マグロ、カジキ、タラ、アジ、サバ、マス、サンマ、ウナギ、テラピア、サメ、エイ、フグ、ブリ、カサゴ、メバル等が挙げられ、鮭等が好ましい。」
f)「【0013】
本発明では、上記水生動物性コラーゲンのアミノ酸配列に由来する化学的特徴やBSE等の安全に関する低リスク性を考慮すると、水生動物性、特に魚類のコラーゲンを利用することが好ましい。さらに好ましくは、昨今の消費者の食に対する安全性に対する要求に鑑み、由来(トレーサビリティ)の確かな天然の食用魚の食用部分を利用したものであり、製品安全性の観点から本発明の食品には、天然可食魚の可食部分、例えば、天然鮭真皮から製造したコラーゲンペプチドを用いることが特に好ましい。
魚類コラーゲンのアミノ酸配列は特徴的なグリシンやプロリンを除いて、高等脊椎動物のものと異なることが知られ、魚類コラーゲンを用いて調製したペプチドは、高等脊椎動物と異なった分解物が得られ、さらなる機能性が存在すると考えられる。
【0014】
天然鮭真皮から本発明で使用できるコラーゲンペプチドを製造する方法としては、例えば、鮭の身と皮を分別し、皮からコラーゲンをゼラチンとして抽出し、固形分を分離した後、精製及び濃縮し、得られた濃縮液をタンパク質加水分解酵素を用いて分解することによりコラーゲンペプチドを得ることができる。」
g)「【0016】
本発明で用いるコラーゲンは、後述する実施例からも明らかなように、乾燥肌における皮膚の水分損失を抑制し、皺形成を抑制する効果を有することから、乾燥肌に基づく疾病、症状、病態を予防、改善する飲食品、特定保健用飲食品、健康飲料、健康食品、栄養食品、機能性食品として用いることができる。
有効成分としてのコラーゲンの配合量は、使用目的、摂取者の年齢、摂取方法などに応じて適宜定めればよいが、通常、1回あたりのコラーゲンの摂取量は、体重1kgあたり1~250mgが好ましく、20~150mgがさらに好ましい。また、一日あたりのコラーゲンの摂取量については体重1kgあたり250mg以下が好ましく、20~150mgがさらに好ましい。本発明の有効成分であるコラーゲンペプチドの一日あたりの摂取量は、多すぎても効果が得にくく、適切な量の範囲内で摂取することが好ましい。」
h)そうすると、上記記載事項a)~g)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「ウナギ由来のコラーゲンを有効成分として含み、皮膚アクアポリン遺伝子の発現量を調節し、角化細胞の分化増殖に作用する皮膚機能改善剤を含む飲食品。」
2)引用文献2
当審の拒絶理由に引用された本願出願日前に頒布された刊行物である特開2009-102311号公報(以下「引用文献2」という。)には、表及び図面とともに以下の事項が記載されている。
a)「【0001】
本発明は、化粧料に関するものであって、ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られるコラーゲンを含有し、優れた保湿効果を有し、皮膚や毛髪に対して潤いを与え、皮膚や毛髪を生き生きとした健全な状態に維持、改善する上で有用な化粧料を提供するものである。すなわち、本発明は皮膚に対して、乾燥、肌荒れ、ヒビ、アカギレ、炎症性疾患等を予防、軽減又は改善し、さらに肌に艶や滑らかさを与える効果を奏し、毛髪に対しては、乾燥、パサツキ等に有効な化粧料に関する。」
b)「【0007】
本発明の化粧料で有効成分として用いる特定の魚種のコラーゲン、即ちハモ科、ウナギ科或いはアナゴ科の魚から得られるコラーゲンが、上記の如き従来の魚コラーゲンに勝るすぐれた保湿作用、水分保持作用を示す要因としては、本発明者らの研究の結果によれば、本発明のコラーゲンに、従来のほ乳類或いは魚のコラーゲンには確認されていない以下の如き化学構造上の特徴が共通して見られることから、かかる化学構造が関与しているものと推察される。
【0008】
即ち、本発明のハモ科、ウナギ科或いはアナゴ科の魚の代表例であるハモ、ウナギ及びマアナゴより得られるI型コラーゲンは、電気泳動によってコラーゲンを構成する3本鎖を分析すると、図1(C)に示すハモの電気泳動図に見られるように、共通してα鎖が従来のウシ、ブタ及びその他魚類などのコラーゲン〔図1(B)〕と異なるバンドを示す。従来のウシ、ブタ及びその他魚類などのI型コラーゲンには、鎖組成が[α1(I)]2 α2(I)およびα1(I)α2(I)α3(I)と表記される2種類の分子形が存在する。しかし、図1(c)に示す電気泳動図の分析結果から、ハモのI型コラーゲンについて、どちらの分子形もあてはまらない。ウナギやハモには、第4のα鎖、α4(I)が存在している。ウナギやハモには、このα4(I)という特有成分があるため、ウシやブタおよびその他魚類などのI型コラーゲンとは鎖組成が異なる。つまりは従来のウシ、ブタ及びその他魚類より得られるI型コラーゲンとは異なり、複数のI型コラーゲンを有しているがために、それらが複合的に働くことによって高い保湿、保水効果を発揮していると考えられる。」
c) そうすると、上記記載事項a)及びb)を総合すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載の事項」という。)が記載されている。
「ハモ科、ウナギ科及びアナゴ科から選ばれた魚から得られるI型コラーゲンは、従来ウシ、ブタ及びその他魚類などと異なり、高い保湿、保水効果を発揮すること。」
2 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、各文言の意味、機能または作用等からみて、後者の「ウナギ由来のコラーゲンを有効成分として含」むことは、前者の「ハモ科及びアナゴ科から選ばれた魚のコラーゲンを有効成分とする」と、「魚のコラーゲンを有効成分とする」ことの限りにおいて一致する。
また、後者の「皮膚アクアポリン遺伝子の発現量を調節し、角化細胞の分化増殖に作用する皮膚機能改善剤を含む飲食品」は、角化細胞の分化増殖が正常化し、それにより肌水分を保持し、皺形成を抑制することから、前者の「美肌用飲食品」に相当する。
したがって、本願発明は、引用発明と次の点で一致する。
(一致点)
「魚のコラーゲンを有効成分とする美肌用飲食品。」
そして、本願発明は、引用発明と、次の点で相違する。
(相違点)
魚について、本願発明は、「ハモ科及びアナゴ科から選ばれた魚」であるのに対して、引用発明は、「ウナギ」である点。
3 相違点についての判断
引用発明は、ウナギ由来のコラーゲンを有効成分としているが、コラーゲンの原料由来は陸上動物性及び水性動物性のいずれでもよく、多種類のものを想定しているといえる(上記、記載事項e))。そして、ハモ科及びアナゴ科から選ばれた魚は、ともにウナギと同じウナギ目に属しており、類似した種類の魚であるといえ、上記引用文献2記載の事項も勘案すると、引用発明において、コラーゲンの原料由来としてウナギに代えてウナギと同様に保湿、保水効果を発揮するハモ科またはアナゴ科から選ばれた魚を用いることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
そして、「ハモ科及びアナゴ科から選ばれた魚のコラーゲン」と特定する本願発明の奏する効果についてみても、本願明細書の[表1]の官能試験の結果及び[表2]のモニターテストの結果からは、ハモコラーゲンまたはアナゴコラーゲンと、ウナギコラーゲンとの間に魚臭の程度及び肌の状態変化において顕著な作用効果の差は認められないことから、格別なものということはできない。
よって、引用発明において、相違点に係る事項を採用して、本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
4 小括
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第5 むすび
本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、特許法第49条第2号の規定に該当し、本願の他の請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-008851