特許拒絶査定不服審判
2016-008797
人工水路における汚濁水の浄化工法
- 審判番号
- 2016-008797
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2011-153153外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月14日
- 審決日
- 2017年07月10日
- 公報発行日
- 2017年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】日本ソリッド株式会社
- 分類
- P18 .121-Z (E02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2011-153153「人工水路における汚濁水の浄化工法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月31日出願公開、特開2013- 19165〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月11日の出願であって、平成27年2月10日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、同年4月20日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月24日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに対して、同年10月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年2月29日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年3月29日に請求人に送達された。これに対して、同年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。
第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、平成27年4月20日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「舟の航行が可能な人工水路の水路面の側壁に間隔を設けて突壁部を設け、かつ突壁部は隣接する突壁部との間隔を式
d=ny
(ただし、dは突壁部間の距離を示し、nは2~20の数を示し、yは突壁部の長さを示す)
の条件下に設置し、さらに突壁部が互いに対岸の突壁部の中間部に位置するように設けることを特徴とする、人工水路における汚濁水の浄化工法。」
第3 刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平8-224591号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は審決にて付与)。
1.「【請求項4】 水域環境の岸に沿って、長さが50cm以上の突出部を水域に向けて複数設置することを特徴とする水域環境における水の浄化方法。」
2.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、河川、湖沼、河口、港湾、池、海などの水域環境における水の浄化方法、そのための護岸構築物および護岸用ブロックに関する。より詳細には、本発明は、河川やその他の水域環境における岸の部分、および場合により更に底部において、流速の低減、水の滞留、乱流、渦流、土砂や汚泥などの堆積などを生じさせて、それらの箇所やその近傍に水棲生物を積極的に棲息および/または増殖させて水の浄化を促進させる方法、そのための護岸構築物および護岸用ブロックに関する。」
3.「【0004】
【発明の内容】上記のような状況下に、本発明者は、河川などの水域環境の岸や底部などを例えばコンクリートなどで固めて工事する場合であっても、河川などの水域環境自体に水の浄化機能を持たせることができる方法はないだろうか、更には多大な手間や余分な水浄化設備などを設置することなく河川などの水域環境自体に水の浄化機能を付与することのできる方法はないだろうかという視点に基づいて、鋭意検討を重ねてきた。」
4.「【0027】上記したように、河川などの水域環境1の岸2に沿って凹部3を設けることによって、凹部3内やその近傍で、水の流速の低減、水の滞留、乱流、渦流、土砂や汚泥などの堆積などを生じさせて、更には好気性と嫌気性の両方のバランスのとれた状態を出現させて、生物の棲息や増殖、その他による水の浄化を行うことができるが、例えば図7(上面から見た平面図)に示すように、河川などの水域環境1の岸2に沿って長さ(c)が50cm以上の突出部7を水域に向かって複数設置した場合にも、上記した凹部3と同様に、水の浄化を行うことができる。すなわち、岸2に沿って突出部7が存在することによって、突出部7の裏側(上流側)および表側(下流側)で、水の流速の低減、水の滞留、乱流、渦流、土砂や汚泥の堆積などが生じて、生物の棲息や増殖、更には好気性と嫌気性の両方のバランスのとれた状態の出現が行われて水を浄化を行うことができる。また、上記した水棲生物による浄化作用に加えて、河川などの流れによって運ばれてきたゴミなどが突出部7の裏側に溜まるので、突出部7の裏側に溜まったゴミなどをある程度の期間をおいて除去することができ、かかる点からも河川などの水域環境の浄化を行うことができる。・・・・。
【0028】岸2に沿って突出部7を設ける場合に、突出部7の長さ(c)が50cm未満であると、突出部7の近傍において水の流速の低減、水の滞留、乱流、渦流、土砂や汚泥などの堆積など円滑に行われなくなって、生物の棲息や増殖、好気性と嫌気性の両方のバランスのとれた状態の出現ができなくなり、水の浄化が円滑に行われなくなる。水の流速の低減、滞留、乱流、渦流、土砂の堆積などを円滑に行わせて、生物の棲息や増殖、好気性と嫌気性の両方の状態の出現を促進させるためには、突出部7の長さ(c)が1m以上であるのが好ましい。突出部7の長さ(c)の上限値は岸2を設けてある水域環境の状況など(例えば河川の幅、流速、水量など)に応じて調節することができるが、突出部7の長さ(c)が長すぎる(水域に突出部7が出っ張り過ぎる)と、水が円滑に流れなくなるので、突出部7の長さ(c)は5m以下であるのが好ましい。
【0029】そして、水の浄化という本発明の目的を十分に果たすためには、上記した突出部7の場合も、河川などの水域環境の岸2に沿って、所定の間隔をあけて複数の突出部7を設けることが必要である。隣合う突出部7間の間隔は、特に制限されず、それぞれの水域環境の状態、岸の構造などに応じて適宜決めることができるが、1m以上とするのが工事のやり易さ、経費、河川などの水域環境の流れを過度に乱さないようにするなどの点から望ましく、5m以上の間隔にするのがより望ましい。また、岸に沿って設ける複数の突出部7の間隔は、すべて同じであっても、またはそれぞれの状況に応じて異なっていてもよい。」
5.上記4.で摘記した事項から、突出部7は「水の流速の低減、滞留、乱流、渦流、土砂の堆積などを円滑に行わせ」、「ゴミなどが突出部7の裏側に溜まる」ものであるので、水深方向にも一定のサイズがあることは明らかであり、壁状であると認められる。
6.上記4.で摘記した事項を踏まえると、図7から、突出部7は岸2に設けられており、突出部7を互いに対岸の突出部7の中間部に位置するように設けていることが看て取れる。
7.上記4.で摘記されているように、「突出部の長さ」に関して、「【0027】・・・図7(上面から見た平面図)に示すように、河川などの水域環境1の岸2に沿って長さ(c)が50cm以上の突出部7を水域に向かって複数設置した場合にも、上記した凹部3と同様に、水の浄化を行うことができる。」、「【0028】岸2に沿って突出部7を設ける場合に、突出部7の長さ(c)が50cm未満であると、・・・水の浄化が円滑に行われなくなる。水の流速の低減、滞留、乱流、渦流、土砂の堆積などを円滑に行わせ・・・るためには、突出部7の長さ(c)が1m以上であるのが好ましい。・・・突出部7の長さ(c)が長すぎる(水域に突出部7が出っ張り過ぎる)と、水が円滑に流れなくなるので、突出部7の長さ(c)は5m以下であるのが好ましい。」と記載されており、「隣合う突出部7間の間隔」に関して、「【0029】・・・1m以上とするのが工事のやり易さ、経費、河川などの水域環境の流れを過度に乱さないようにするなどの点から望ましく、5m以上の間隔にするのがより望ましい。」 と記載されている。
これらの記載内容から、「突出部の長さは少なくとも50cm、好ましくは1m以上5m以下、突出部間の間隔は少なくとも1m、好ましくは5m以上とすること」が示されていると認められる。
8.上記1.~7.の事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下「刊1発明」という。)が開示されていると認められる。
「河川などの水域環境において、岸や底部などをコンクリートなどで固めて工事する場合に、岸に沿って、岸に壁状の突出部を水域に向けて間隔をあけて複数設置し、突出部の長さは少なくとも50cm、好ましくは1m以上5m以下とし、突出部間の間隔は少なくとも1m、好ましくは5m以上とし、さらに突出部が互いに対岸の突出部の中間部に位置するように設ける水域環境における水の浄化方法。」
第4 対比
本願発明と刊1発明とを対比する。
1.刊1発明の「水の浄化方法」は、本願発明の「汚濁水の浄化工法」に相当する。
2.刊1発明の「河川などの水域環境において、岸や底部などをコンクリートなどで固め」たものは水路であることは明らかであるので、本願発明の「人工水路」と、「水路」という点で共通している。したがって、刊1発明の「岸」は、本願発明の「水路面の側壁」に相当する。
3.刊1発明の「突出部」は壁状であるので、本願発明の「突壁部」に相当する。また、刊1発明の「突出部」の「長さ」は本願発明の「突壁部の長さ」「y」に、同様に「突出部」の「間隔」は「突壁部間の距離」「d」に相当する。
4.上記1.~3.から、本願発明と刊1発明とは、 以下の点で一致・相違する。
(一致点)
「水路の水路面の側壁に間隔を設けて突壁部を設け、かつ突壁部は隣接する突壁部と間隔を有し、さらに突壁部が互いに対岸の突壁部の中間部に位置するように設ける、水路における汚濁水の浄化工法。」
(相違点1)
水路について、本願発明は、舟の航行が可能な人工水路であるのに対し、刊1発明はそのような特定がなされていない点。
(相違点2)
突壁部に関して、本願発明は、隣接する突壁部との間隔を式d=ny(ただし、dは突壁部間の距離を示し、nは2~20の数を示し、yは突壁部の長さを示す)の条件下に設置しているのに対し、刊1発明は、突出部(突壁部)の長さは少なくとも50cm、好ましくは1m以上5m以下とし、突出部(突壁部)間の間隔は少なくとも1m、好ましくは5m以上とされている点。
第5 判断
1.相違点1について
刊1発明は、「河川などの水域環境において、岸や底部などをコンクリートなどで固めて」工事するものであり、水路を人工的に加工しているものであること、また、河川において「舟の航行が可能」であるものは一般的であることから、刊1発明を採用する対象を「舟の航行が可能な人工水路」に特定することは、当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。
2.相違点2について
刊1発明において、例えば、刊行物1の請求項4にも記載されているように突出部の長さを最低ラインの50cmとした場合に、突出部間の間隔として同じく最低ラインとして示された1mを採用すると、本願発明におけるn(以下単に「n」という。)は2となる。同様に、突出部間の間隔を好ましいとされた5m以上とした場合にはnは10以上となり、いずれの場合もnに関する本願発明の数値限定2~20を充足しうる。また、好ましい値としてそれぞれ示された突出部の長さ1m、突出部間の間隔5mを採用した場合にはnは5となり、この場合も本願発明の数値限定2~20を充足する。
そして、水域環境の流れを過度に乱さないようにすることや技術常識から鑑みて、突出部の長さに比較して突出部間の間隔を同等あるいは短くすることは想定できず、突出部間の間隔が突出部の長さよりも比較的大きく設定されることが通常であり、さらに、最低ラインや好ましいとされる数値に着目して、その値を採用することは当業者にとって普通のことであり、上記に例示した組み合わせは、技術常識から見ても、通常採用されうるものである。
このように刊1発明において、突出部の長さ、突出部間の間隔の組み合わせとして常識的に取り得る値は本願発明の数値限定を概ね充足するものとなっており、また、nの数値限定2~20について明細書の記載及び技術常識を勘案しても格別の臨界的意義は認められないことから、本願発明の数式d=nyに関する限定は、通常取り得る値の数式化、最適化にすぎず、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことである。
また、本願発明が奏する効果も、当業者が刊行物1の記載から予測できる程度のものであって、格別のものとはいえない。
第6 まとめ
よって、本願発明は、当業者が刊1発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明(本願の請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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