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特許拒絶査定不服審判

2016-008512

通信システム

審判番号
2016-008512
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-531479外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年06月08日
審決日
2017年07月05日
公報発行日
2017年08月25日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (H04W) / P18 .537-WY (H04W)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014-531479「通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日国際公開,WO2013/047118,平成26年10月 6日国内公表,特表2014-526851,請求項の数(22)〕について,次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は,2012年(平成24年)8月29日(パリ条約による優先権主張 2011年9月30日 英国)を国際出願日とする出願であって,平成27年7月24日付けで拒絶理由が通知され,同年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され,平成28年3月7日付けで拒絶査定がされたところ,同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後当審において平成29年1月30日付けで拒絶理由が通知され,同年3月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され,当審において同年4月13日付けで拒絶理由が通知され,同年5月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項22に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明22」という。)は,平成29年5月19日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項22に記載された事項により特定されるものであると認められるところ,本願発明1ないし本願発明22は以下のとおりのものである。 「  【請求項1】 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信するトランシーバ回路と、 中継ノード識別子を記憶するメモリと、 前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御する通信コントローラと、 を備え、 前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子が割り当てられており、 前記通信コントローラは、該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能であり、 前記通信コントローラは、関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されており、 前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記固定トラッキングエリア識別子を該移動中継ノードに関連付けられた前記1つ又は複数のユーザデバイスにブロードキャストするように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第1のドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属する第2のドナー基地局に接続するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第2のドナー基地局に接続した後でも、前記1つ又は複数の関連付けられたユーザデバイスへの前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを継続するように構成されている、移動中継ノード。 【請求項2】 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信するトランシーバ回路と、 中継ノード識別子を記憶するメモリと、 前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御する通信コントローラと、 を備え、 前記移動中継ノードには、固定無線セル識別子が割り当てられており、 前記通信コントローラは、該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能であり、 前記通信コントローラは、関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されており、 前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定無線セル識別子を受信するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記固定無線セル識別子を該移動中継ノードに関連付けられた前記1つ又は複数のユーザデバイスにブロードキャストするように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第1のドナー基地局の無線セルと異なる無線セルに属する第2のドナー基地局に接続するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第2のドナー基地局に接続した後でも、前記1つ又は複数の関連付けられたユーザデバイスへの前記固定無線セル識別子のブロードキャストを継続するように構成されている、移動中継ノード。 【請求項3】 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該ドナー中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信するトランシーバ回路と、 中継ノード識別子を記憶するメモリと、 前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御する通信コントローラと、 を備え、 前記通信コントローラは、該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能であり、 前記通信コントローラは、関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されており、 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信するように構成され、 前記通信コントローラは、前記トラッキングエリアのリストを前記関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに通信するように構成されている、移動中継ノード。 【請求項4】 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが接続すると予想されるドナー基地局の所定のリストを受信するように構成され、 第1のドナー基地局から、該第1のドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属する第2のドナー基地局に移動するときに、該第2のドナー基地局が前記所定のリストにあれば、前記移動中継ノードは、トラッキングエリア更新を送信しないように構成されている、請求項3に記載の移動中継ノード。 【請求項5】 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが接続すると予想されるドナー基地局の所定のリストを受信するように構成され、 前記移動中継ノードは、第1のドナー基地局から、該第1のドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属する第2のドナー基地局に移動するときにトラッキングエリア更新を送信するように構成されている、請求項3に記載の移動中継ノード。 【請求項6】 通信システムにおいて用いられるドナー基地局であって、 前記通信システムのネットワークノードに対して信号を送受信するとともに、1つ又は複数のユーザデバイスが請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードを通じて前記ドナー基地局に接続することを可能にする前記移動中継ノードに対して信号を送受信するように構成されるトランシーバ回路と、 前記移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに、前記移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入された接続メッセージを受信するように動作可能である通信コントローラと、 を備え、 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードによって前記中継ノード識別子が挿入された該接続メッセージを前記ネットワークノードに送信するように動作可能である、ドナー基地局。 【請求項7】 前記中継ノード識別子は、該ドナー基地局が前記移動中継ノードから受信する前記ユーザデバイス接続メッセージ内に含まれ、前記通信コントローラは、前記受信したユーザデバイス接続メッセージを前記ネットワークノードに転送するように動作可能である、請求項6に記載のドナー基地局。 【請求項8】 前記通信コントローラは、請求項1に記載の移動中継ノードの前記固定トラッキングエリア識別子をネットワークノードから受信するように動作可能であり、前記受信した固定トラッキングエリア識別子を請求項1に記載の移動中継ノードに転送するように動作可能である、請求項6又は7に記載のドナー基地局。 【請求項9】 前記通信コントローラは、請求項2に記載の移動中継ノードの前記固定無線セル識別子をネットワークノードから受信するように動作可能であり、前記受信した固定無線セル識別子を請求項2に記載の移動中継ノードに転送するように動作可能である、請求項6又は7に記載のドナー基地局。 【請求項10】 前記通信コントローラは、請求項3に記載の移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストをネットワークノードから受信するように動作可能であり、前記所定のリストを請求項3に記載の移動中継ノードに転送するように動作可能である、請求項6又は7に記載のドナー基地局。 【請求項11】 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが接続すると予想されるドナー基地局の所定のリストをネットワークノードから受信するように構成され、前記ドナー基地局の所定のリストを前記移動中継ノードに転送するように構成されている、請求項6~10のいずれか1項に記載のドナー基地局。 【請求項12】 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられるネットワークノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成されるトランシーバ回路と、 請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように動作可能である通信コントローラと、 を備え、これにより、前記トラッキングエリアデータを前記移動中継ノードに関連付け、 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスを前記移動中継ノードに関連付けるデータを記憶するように動作可能である、ネットワークノード。 【請求項13】 第2のドナー基地局の前記トラッキングエリアが前記第1のドナー基地局の前記トラッキングエリアと異なる場合には、前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが前記第2のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を前記第2のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられた前記トラッキングエリアデータと、前記移動中継ノードに関連付けられた任意のユーザデバイスに関連付けられた前記トラッキングエリアデータとを更新するように動作可能である、請求項12に記載のネットワークノード。 【請求項14】 前記通信コントローラは、前記ユーザデバイス接続メッセージを受信したことに応答して、前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを、前記第1のドナー基地局及び前記移動中継ノードを介して前記ユーザデバイスに送信する、請求項12又は13に記載のネットワークノード。 【請求項15】 前記通信コントローラは、請求項1に記載の移動中継ノードによって用いられる前記固定トラッキングエリア識別子を前記第1のドナー基地局を介して請求項1に記載の移動中継ノードに転送するように動作可能である、請求項12又は13に記載のネットワークノード。 【請求項16】 前記通信コントローラは、請求項2に記載の移動中継ノードによって用いられる前記固定無線セル識別子を前記第1のドナー基地局を介して請求項2に記載の移動中継ノードに転送するように動作可能である、請求項12又は13に記載のネットワークノード。 【請求項17】 前記通信コントローラは、前記中継ノード識別子を受信したことに応答して、前記移動中継ノードに関連付けられた任意のユーザデバイスに関連付けられたデータを更なるネットワークノードに転送する、請求項12又は13に記載のネットワークノード。 【請求項18】 前記通信コントローラは、トラッキングエリア更新メッセージを前記移動中継ノードから受信するように動作可能である、請求項12に記載のネットワークノード。 【請求項19】 前記通信コントローラは、更なるネットワークエンティティに向けて前記移動中継ノードに関連付けられた任意のユーザデバイスに関連付けられた前記トラッキングエリアを更新するように動作可能である、請求項18に記載のネットワークノード。 【請求項20】 通信システムとともに用いられるユーザデバイスであって、 請求項3乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードに対して信号を送受信するように構成されるトランシーバ回路と、 前記移動中継ノードと連携するとともに、前記移動中継ノードが位置する現在のトラッキングエリアを前記移動中継ノードから受信するように動作可能な通信コントローラと、 前記ユーザデバイスが新たなトラッキングエリアに入ったとき、トラッキングエリア更新メッセージを送信するように動作可能なトラッキングエリアハンドラと、 を備え、 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信するように動作可能であり、前記新たなトラッキングエリアが前記所定のリストにあるとき、前記トラッキングエリアハンドラの動作を抑制するように動作可能である、ユーザデバイス。 【請求項21】 前記トラッキングエリアハンドラは、前記新たなトラッキングエリアを検出するように動作可能であり、前記新たなトラッキングエリアを、前記所定のリストにある前記トラッキングエリアと比較するように動作可能であり、前記新たなトラッキングエリアが前記所定のリストにあるトラッキングエリアと一致する場合、トラッキングエリア更新メッセージを送信しないように動作可能である、請求項20に記載のユーザデバイス。 【請求項22】 通信コントローラは、前記移動中継ノードと連携するとともに、前記中継ノードが位置する現在の無線セルを前記移動中継ノードから受信するように動作可能である、請求項20に記載のユーザデバイス。」 第3 原査定の理由並びに当審拒絶理由の概要 原査定(平成28年3月7日付け拒絶査定)の理由並びに当審において通知した拒絶理由の概要は,以下のとおりである。 1 原査定の理由の概要 この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-3,7-10,13,14,16-20,24-26,29-31,33 ・引用文献等1-8 ・請求項4-6,11,12,15,21-23,27,28,32 ・引用文献等1-3 引用文献等一覧 1.特開2006-157957号公報 2.国際公開第2010/089949号 3.特開2006-67447号公報 4.国際公開第2011/058991号(周知技術を示す文献) 5.国際公開第2011/102772号(周知技術を示す文献) 6.国際公開第2011/113202号(周知技術を示す文献) 7.国際公開第2011/000193号(周知技術を示す文献) 8.国際公開第2010/124458号(周知技術を示す文献) (以下,これら引用文献等1ないし引用文献等8を,「引用文献1」ないし「引用文献8」という。) 2 当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由の概要 この出願の請求項1-3,7-10,13,14,16-20,24-26,29-31,33に係る発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された国際公開第2010/124458号(引用文献8)に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 当審において平成29年4月13日付けで通知した拒絶理由の概要 A.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 B.(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ●理由A(明確性),理由B(サポート要件)について ・請求項1,2,6-19,23 (1)請求項1には,「前記固定トラッキングエリア識別子を受信する」という記載,「前記固定トラッキングエリア識別子を・・・(中略)・・・ブロードキャストする」という記載,及び,「前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを継続する」という記載がある。 そして,これら3つの記載における「前記固定トラッキングエリア識別子」は,いずれも,請求項1に別途存在している「前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子が、事前に構成され又は割り当てられており、」なる記載における「固定トラッキングエリア識別子」を指していることは明らかである。 しかし,この,固定トラッキングエリア識別子「又は」固定無線セル識別子という表現に注目すれば,請求項1に係る発明において,「固定無線セル識別子」のみが事前に構成され又は割り当てられていればそれで足り,固定トラッキングエリア識別子は,事前に構成され又は割り当てられていなくてもよい場合があるところ,そのような場合において,事前に構成されも,割り当てられもしていない「固定トラッキングエリア識別子」を,受信したり,ブロードキャストしたりするとは,一体どういうことを意味するのか理解できず,特許を受けようとする発明を明確に特定できない。 加えて,請求項1に係る発明において,「固定無線セル識別子」が事前に構成され又は割り当てられている場合,その「固定無線セル識別子」はどこでどのように用いられるのかについて請求項1には全く記載がないから,請求項1に係る発明全体の構成及び動作を明確に特定することができない。 請求項1を直接又は間接的に引用している請求項2,6-19,23にも,同旨の不備が存在する。 よって,請求項1,2,6-19,23に係る発明は,明確ではない。 (2)上述した記載不備(1)に関連して,請求項2には,「複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、・・・トランシーバ回路と、・・・メモリと、・・・通信コントローラと、を備え、」という記載がある。 しかし,請求項2が引用している請求項1にも,上記記載と全く同じ記載が存在しているために,請求項2の上記記載は,何を特定しようとしているのかについて多義的で曖昧である。 すなわち,請求項2に係る発明は,トランシーバ回路,メモリ,通信コントローラを,それぞれ,請求項1で特定されている分もあわせて2つずつ備えていると解釈することも,また,トランシーバ回路,メモリ,通信コントローラはたかだか1つずつしか備えていないと解釈することも可能であり,多義的で曖昧である。 加えて,サポート要件に関し,請求項2は請求項1を引用しているから,請求項2に係る発明は,固定無線セル識別子を受信したりブロードキャストしたりするのみならず,固定トラッキングエリア識別子をも受信したりブロードキャストしたりすることになるが,発明の詳細な説明には,「固定トラッキングエリア識別子の代わりに固定無線セル識別子を用いることができる」(明細書の段落【0061】)と記載されているにとどまり,両方を同時に用いるような思想は開示されていない。ゆえに,請求項2に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 請求項2を直接又は間接的に引用している請求項6-19,23にも,同旨の不備が存在する。 よって,請求項2,6-19,23に係る発明は,明確ではない。 また,請求項2,6-19,23に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。 (3)上記記載不備(1)及び(2)に関連して,請求項8には,「前記固定トラッキングエリア識別子」なる記載が存在している。 しかし,請求項8が直接又は間接的に引用している請求項のうち,いくつかの請求項には,そもそも,「固定トラッキングエリア識別子」なる記載が存在しないから,結果として,請求項8に係る発明の「前記固定トラッキングエリア識別子」が何を指しているのか明らかではなく,発明を明確に特定できない。 例えば,請求項8は,請求項6を引用しており,またその請求項6は,請求項3を引用しているけれども,請求項3,6には,いずれも,「固定トラッキングエリア識別子」は記載されていない。 請求項15の「前記固定トラッキングエリア識別子」や,請求項9,16の「前記固定無線セル識別子」についても,同様のことが言える。 請求項8,9,15,16を引用している請求項11,23にも,同旨の不備が存在する。 よって,請求項8,9,11,15,16,23に係る発明は,明確ではない。 (4)請求項1の「前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子が、事前に構成され又は割り当てられており、」という記載のうち,「事前に構成され」の部分は, 請求項1に別途存在している「前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能であり、」という記載と整合していないから,特許を受けようとする発明を明確に特定できない。 これらの記載の整合性について,以下,より詳細に示す。 請求項1の「前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子が、事前に構成され又は割り当てられており、」という記載に関し,本願明細書の段落【0035】には以下の記載がある。なお,下線は当審において付した。 「【0035】 トラッキングエリアハンドリングモジュール87は、移動中継ノードにおいて事前に構成されているか又はコアネットワーク11によって移動中継ノードに割り当てられる固定トラッキングエリア識別子を移動中継ノードに送信させるように動作可能である。トラッキングエリアハンドリングモジュール87は、トラッキングエリア更新メッセージを送信するようにプログラムされているときは、それを行うことも担当する。」 (参考として,該当箇所の原文は,「The tracking area handling module 87 is operable to cause the mobile relay node to transmit a fixed tracking area identifier that has been preconfigured in the mobile relay node or that is assigned to the mobile relay node by the core network 11.」である。) この明細書の段落【0035】によれば,請求項1の「事前に構成され」とは,移動中継ノードにおいて事前に構成されている(preconfigured in the mobile relay node)ことを射程に含む概念といえる。 同様に,この明細書の段落【0035】によれば,請求項1の「割り当てられており」は,「コアネットワーク11によって移動中継ノードに割り当てられる」(assigned to the mobile relay node by the core network 11)ことを射程に含む概念といえる。 一方,請求項1の「前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能であり、」によれば,固定トラッキング識別子は,移動中継ノードにおいて事前に構成されたものではなく,コアネットワークによって移動中継ノードに割り当てられたものと解することができる。(そのように解することができる根拠として,上記明細書の段落【0035】に加えて,段落【0043】のステップS4を挙げることができる。) よって,請求項1に記載されている「第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信する」ことは,請求項1に別途記載されている,固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子が「事前に構成され」ることと,両立し得ないことがあるから,発明を明確に特定できない。 請求項2についても同様である。 請求項1,2を直接又は間接的に引用している請求項6-19,23にも,同旨の不備が存在する。 よって,請求項1,2,6-19,23に係る発明は,明確ではない。 (5)請求項6には,「前記通信コントローラは、前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記移動中継ノードから受信するように動作可能であり、前記受信した接続メッセージを前記中継ノード識別子とともに前記ネットワークノードに送信するように動作可能である」と記載されている。 一方,請求項6が引用している請求項1等には,「前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信する」と記載されている。 そうすると,請求項6にいう(移動中継ノードから受信した)「ユーザデバイスからの接続メッセージ」は,請求項1で特定されているような,移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入された接続メッセージ(請求項1では「該接続メッセージ」と表現されている)を指しているのか,それとも,中継ノード識別子が挿入される前の接続メッセージ(文字通り,ユーザデバイスから送信された接続メッセージそのもの)を指しているのか,明確ではない。 請求項6を直接又は間接的に引用している請求項7-11,23も,同旨の不備が存在する。 よって,請求項6-11,23に係る発明は,明確ではない。 (6)請求項12には,「前記中継ノード識別子が受信される前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように」と記載されている。 また,請求項12には,「前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスを前記移動中継ノードに関連付けるデータを記憶する」とも記載されている。 しかし,前者の記載における「前記中継ノード識別子が受信される前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータ」と,後者の記載における「前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータ」とは,一見すると,トラッキングエリアが何に関連付けられたものであるのか(第1のドナー基地局か,移動中継ノードか)が異なっているために,結局のところ,請求項12に係る発明は,何と何とが関連付けられていて,また最終的にどのようなデータを記憶するのかを,明確に特定できない。 また,サポート要件に関し,請求項12の「前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータ」なる記載を文言どおりに解釈すると,このデータは,発明の詳細な説明でいうところの「TA-96」(図1)のようなものとして観念できる一方で,図5には,MMEのメモリ99が,例えば「TA-1」や「TA-2」などといった,基地局(ないしドナー基地局)に関連づけられたトラッキングエリアデータを記憶することが示されているものの,「TA-96」を記憶するという思想は記載されていないから,請求項12に係る発明は,発明の詳細な説明に開示された思想を正確に記載したものではなく,そのような意味において,請求項12に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものとはいえない。 請求項12を直接又は間接的に引用している請求項13-19,23にも,同旨の不備が存在する。 よって,請求項12-19,23に係る発明は,明確ではない。 また,請求項12-19,23に係る発明は,発明の詳細な説明に記載したものではない。 (7)請求項23に係る発明は,「コンピュータプログラム」の発明であるが,極めて不明瞭であり,特許を受けようとしている発明を特定することができない。 すなわち,「請求項1~5のいずれか1項に記載の移動中継ノード、請求項6~11のいずれか1項に記載のドナー基地局、請求項12~19のいずれか1項に記載のネットワークノード、又は請求項20~22のいずれか1項に記載のユーザデバイスとしてプログラマブルコンピュータデバイスを構成させるコンピュータ実施可能命令を含む、コンピュータプログラム。」という記載からでは,特許を受けようとするプログラムがどのような命令列から構成されているのか,またその命令列を構成する各々の命令が,それぞれ,どのような意義をもって,どのようにコンピュータ(プログラマブルコンピュータデバイス)を動作等させる命令であるのかを,把握することができない。 よって,請求項23に係る発明は,明確ではない。 第4 当審において平成29年4月13日付けで通知した拒絶理由についての判断 当審において平成29年4月13日付けで通知した拒絶理由に関し,上記第3の3(1)ないし(7)で示した点について,以下,それぞれ検討する。 (1)上記第3の3(1)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,請求項1の「固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子」が,「固定トラッキングエリア識別子」に補正された。 そのため,本願発明1において,移動中継ノードには,固定トラッキングエリア識別子が割り当てられていることとなり,また,その割り当てられた固定トラッキングエリア識別子を受信したり,ブロードキャストするものとなっているから,本願発明1において,固定トラッキングエリア識別子が,事前に構成されも,割り当てられもしないということはない。 また,上記手続補正により,本願発明1には「固定無線セル識別子」についての発明特定事項は存在していないから,「固定無線セル識別子」が事前に構成され又は割り当てられた場合について発明が明確ではないという指摘も,もはや当てはまらない。 ゆえに,この点について,本願発明1は明確である。 本願請求項1を直接又は間接的に引用することにより特定されている本願発明2,6-19,23についても,本願発明1と同じことがいえる。 よって,この点について,本願発明1,2,6-19,23は,明確ではないとはいえない。 (2)上記第3の3(2)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,請求項2が独立請求項となり,また,請求項2の「固定トラッキングエリア識別子又は固定無線セル識別子」が「固定無線セル識別子」に補正された。 そのため,請求項2の記載と同じ記載が請求項1に存在していたとしても,そのことによって本願発明2が不明確になることはない。 また,本願発明2には,「固定トラッキングエリア識別子」と「固定無線セル識別子」とを同時に用いるようなものとはなっていない。そのため,この点について,本願発明2は,発明の詳細な説明に記載したものである。 本願請求項2を直接又は間接的に引用することにより特定されている本願発明6-19,23についても,本願発明2と同じことがいえる。 よって,この点について,本願発明2,6-19,23は,明確ではないとはいえない。また,この点について,本願発明2,6-19,23は,発明の詳細な説明に記載したものではないともいえない。 (3)上記第3の3(3)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,本願発明8の通信コントローラは「請求項1に記載の移動中継ノードの前記固定トラッキングエリア識別子をネットワークノードから受信するように動作可能」なものとなった。 そのため,本願発明8における「前記固定トラッキングエリア識別子」が,請求項1に記載された,移動中継ノードに割り当てられている「固定トラッキングエリア識別子」を指していることは明確である。 本願発明15の「請求項1に記載の移動中継ノードによって用いられる前記固定トラッキングエリア識別子」,本願発明9,16の「請求項2に記載の移動中継ノードの前記固定無線セル識別子」についても,本願発明8と同様のことがいえる。 また,本願請求項8,9,15,16を引用することにより特定されている本願発明11,23についても,同様である。 よって,この点について,本願発明8,9,11,15,16,23は,明確ではないとはいえない。 (4)上記第3の3(4)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,本願請求項1の「事前に構成され又は割り当てられており、」が,「割り当てられており、」に補正された。 そのため,本願発明1において,移動中継ノードには固定トラッキングエリア識別子が割り当てられていることとなっているが,このことは,本願発明1の「前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能であり、」という点と,不整合を起こしているものではない。 本願発明2も,移動中継ノードには,固定無線セル識別子が割り当てられていることが特定されているから,本願発明1と同様に,不整合を起こしているものではない。 本願請求項1,2を直接又は間接的に引用することにより特定されている本願発明6-19,23についても,同様である。 よって,この点について,本願発明1,2,6-19,23は,明確ではないとはいえない。 (5)上記第3の3(5)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,本願発明6の通信コントローラは,移動中継ノードがドナー基地局に接続するときに,「前記移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入された接続メッセージ」を受信するように動作可能なものとなり,また,前記通信コントローラは,「前記移動中継ノードによって前記中継ノード識別子が挿入された該接続メッセージ」を前記ネットワークノードに送信するように動作可能なものとなった。 そのため,本願発明6において,移動中継ノードから受信し,またネットワークノードに送信する「接続メッセージ」が,いずれも「前記移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入された接続メッセージ」であることは,明確である。 本願請求項6を直接又は間接的に引用することにより特定されている本願発明7-11,23も,本願発明6と同じことがいえる。 よって,この点について,本願発明6-11,23は,明確ではないとはいえない。 (6)上記第3の3(6)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,本願請求項12の 「 ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成されるトランシーバ回路と、 請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記中継ノード識別子が受信される前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように動作可能である通信コントローラと、 を備え、」 が, 「 ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成されるトランシーバ回路と、 請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、 前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように動作可能である通信コントローラと、 を備え、これにより、前記トラッキングエリアデータを前記移動中継ノードに関連付け、」 に補正された。 これにより,本願発明12における「前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータ」は,本願発明の詳細な説明の「TA-96」(図1)を指すものではなく,むしろ,移動中継ノード識別子「RN-1」(図5)とともに記憶することにより,「移動中継ノードに関連付け」られることが可能な,ドナー基地局に関連付けられたトラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータ「TA-1」(図1)のようなものを指していることは明らかである。 ゆえに,この点について,本願発明12は,何と何とが関連付けられていて,最終的にどのようなデータを記憶するのかについて明確であり,また,本願発明12は,発明の詳細な説明に開示された思想を正確に記載したものとなっている。 請求項12を直接又は間接的に引用することにより特定されている本願発明13-19,23についても,本願発明12と同じことがいえる。 よって,この点について,本願発明12-19,23は,明確ではないとはいえない。また,この点について,本願発明12-19,23は,発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。 (7)上記第3の3(7)で示した点について 平成29年5月19日付けの手続補正により,当該手続補正前に存在していた本願の請求項23は,削除された。 そのため,この点についての拒絶の理由は解消した。 (8)小括 上記のとおりであるから,当審において平成29年4月13日付けで通知した拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第5 当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由についての判断 上記第3の2で示した理由について,以下,検討する。 1 引用例 当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由に引用された国際公開第2010/124458号(原査定の理由で引用した引用文献8。当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由では,この文献のみを引用しているので,ここでは,単に「引用例」ということとする。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 (当審訳として,日本語ファミリ文献である特表2012-525737号公報を参照した。また,当審訳の下線は,当審にて付したものである。) (1) (明細書第6頁第4行-第12行) (当審訳:日本語ファミリ文献の段落【0024】参照。 「 図1は、本発明の或る実施形態によるネットワークシナリオの概略図である。図1に示されるとおり、MMEは、ユーザ機器に対してページングを開始することを担うネットワーク上のネットワーク制御要素であり、MMEとeNBの間の既存のインタフェースは、S1-MMEである。LTE(Long Term Evolution、ロングタームエボリューション)ユーザ機器に関する後方互換性を満たすため、eノードBと元のLTEネットワークにおけるユーザ機器の間のインタフェース、すなわち、Uuが、中継局とユーザ機器の間のインタフェースとして再使用されることが可能である。中継局は、固定型であっても、移動型であってもよい。移動中継局は、列車やバスなどの交通車両内に設置されて、乗客に安定した、信頼性のある無線ネットワークを提供する。図1で、中継局_aおよび中継局_bは、2つの固定中継局であり、さらに中継局_cは、移動中継局である。eNBは、eノードBであり、前述の3つの中継局は、eNBを介してコアネットワークにアクセスする。」) (2) (明細書第6頁第23行-第7頁第25行) (当審訳:日本語ファミリ文献の段落【0030】-【0034】参照。 「 ネットワーク側がユーザ機器にページングすると、MMLが、ユーザ機器の現在のTAリストに応じてTAに関連するすべてのeノードBを探し出し、これらのeノードBにページングメッセージを送信する。ユーザ機器のTAリストは、ユーザ機器によって報告されたロケーション情報に従ってMMEによって保持される。したがって、或る実施形態によれば、eノードBがページングメッセージを受信する前に、ページング方法は、以下をさらに含むことが可能である。すなわち、 eノードBが、ユーザ機器のロケーション更新要求メッセージを転送し、ユーザ機器がeノードBのセルにキャンプオンしている場合、そのロケーション更新要求メッセージの中の追跡区域IDは、eノードBの追跡区域IDであり、さらにユーザ機器が中継局のセルにキャンプオンしている場合、そのロケーション更新要求メッセージの中の追跡区域IDは、中継局の追跡区域IDである。 eノードBが、ユーザ機器のロケーション更新要求メッセージをMMEに転送した後、MMEが、そのロケーション更新要求メッセージの中で伝送される追跡区域IDに応じてユーザ機器の追跡区域リストを更新する。MMEが、ページングメッセージを配信する際、そのページングメッセージは、ユーザ機器のIDおよび追跡区域リストを伝送することが可能である。 ユーザ機器が中継局のセルにキャンプオンしている場合、ユーザ機器のロケーション更新要求メッセージは、中継局の追跡区域IDを伝送することが可能であることを前段で述べた。このロケーション更新要求メッセージは、ユーザ機器によって生成され、送信されて、さらに中継局およびeノードBによってMMEに転送される。したがって、中継局の追跡区域IDは、複数のモードでロケーション更新要求メッセージの中で伝送されることが可能である。例えば、中継局の追跡区域IDは、ユーザ機器によって中継局から獲得されて、ロケーション更新要求メッセージに追加される。別の例として、中継局の追跡区域IDは、中継局によってロケーション更新要求メッセージに追加される。さらに別の例として、中継局の追跡区域IDは、eノードBによって中継局から獲得されて、ロケーション更新要求メッセージに追加される。 或る実施形態によれば、ユーザ機器が、中継局から追跡区域IDを獲得することは、ユーザ機器による、中継局のセルにアクセスした際に中継局によってブロードキャストされる中継局の追跡区域IDを受信することである可能性がある。従来技術において、ユーザ機器が中継局のセルにアクセスした際、中継局は、eノードBの追跡区域IDをブロードキャストすることを見て取ることができる。しかし、この実施形態によれば、中継局は、ユーザ機器が中継局のセルにアクセスした際、中継局の追跡区域IDをブロードキャストする。従来技術において、中継局の移動性により、中継局によってブロードキャストされるeノードBの追跡区域IDは、常に変わっており、ユーザ機器は、ロケーション更新要求を絶えず開始する。しかし、この実施形態によれば、中継局が移動しているものの、中継局によってブロードキャストされる中継局の追跡区域IDは、比較的変わらず、ユーザ機器によって開始されるロケーション更新要求の頻度が大幅に低下させられ、このことは、ロケーション更新中にもたらされるシグナリング負荷を効果的に低減する。」) (3) (明細書第9頁第1行-第10頁第18行) (当審訳:日本語ファミリ文献の段落【0043】-【0060】参照。 「 以下に、或る例を用いて、前述の実施形態によるロケーション更新方法に関連するページング方法の特定の実施形態を説明する。図4は、この実施形態によるページング方法の流れ図である。この例において、中継局_cは、移動中継局であり、さらにUE_iが、移動中継局_cの下にある。UE_iに対するページングを完了するのに、プロセス全体は、以下を含む3つの段階に分けられることが可能である。 段階1 ステップ401:中継局_cが、eNBのセルに移動する。 ステップ402:中継局_cが、eNBに制御_メッセージ_1を送信する。制御_メッセージ_1を使用して、中継局_cが、eNBに中継局のID、中継局_ID、および追跡区域ID、TA_cを報告する。 ステップ403a~b:eNBが、追跡区域と中継局の間のマッピングテーブルである、TA-中継局マッピングテーブルを格納する。このマッピングテーブルは、第1のマッピング関係を格納する。制御_メッセージ_1を受信した後、eNBはまず、このメッセージの中の情報に従ってTA-中継局マッピング関係を更新し、次に、S1-MMEインタフェースからMMEに制御メッセージ、例えば、ENB_構成_更新メッセージを送信する。このメッセージは、eNBのID、eNB_ID、および中継局_cの追跡区域ID、TA_cを含む。この制御メッセージを受信した後、MMEは、中継局_cがeNBのセルにキャンプオンしていることを獲得する。 段階2 ステップ404:或る特定のユーザ機器、UE_iが、中継局_cのセルにアクセスする。 ステップ405:中継局_cが、システムメッセージを使用して、中継局_cのセル内で中継局_cのID、中継局_ID、および追跡区域ID、TA_cをブロードキャストする。 ステップ406:中継局_cによってブロードキャストされたシステムメッセージを受信した後、UE_iは、中継局_cに制御メッセージ、追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信して、ロケーション更新を開始する。追跡_区域_更新_要求メッセージは、既存の標準において定義される。これらの標準によれば、このメッセージは、ユーザ機器ID、UE_Id、および追跡区域ID、TA_cを含む。 ステップ407:中継局_cは、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをeNBに直接に転送する。 ステップ408:eNB(当審注:この部分について,日本語ファミリ文献では「中継局_c」とあるが,引用例の該当箇所には,「eNB」と記載されているので,日本語ファミリ文献の記載は誤訳と認める。)は、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをMMEに直接に転送する。 ステップ409:MMEは、各UEに関する追跡区域リストを保持する。UE_iによって送信された追跡_区域_更新_要求メッセージを受信した後、MMEは、追跡区域リスト、UE_i_の_TA_リストにTA_cを追加する。ネットワーク側から送信された追跡_区域_更新_要求メッセージに応答するすべての応答メッセージ、追跡_区域_応答は、図3では省略される。 段階3 ステップ410:MMEが、コアネットワークからUE_iのページングメッセージを受信する。 ステップ411:MMEが、ページングメッセージをeNBに送信し、このページングメッセージは、UE_i IDであるUE_IDと、UE_iの追跡区域リストである、UE_i_のTA_リストとを含む。 ステップ412:ページングメッセージを受信した後、eNBは、UE_i_のTA_リストの中でリストアップされる追跡区域IDに従って、TA-中継局マッピングテーブルにクエリを行う。 ステップ413:UE_i_のTA_リストは、TA_cを含むだけであることが可能であり、eNBの追跡区域ID、およびeNBの中継局の追跡区域IDは含まない。したがって、eNBは、eNBのセル内のUE_iにページングする、またはUE_iにページングするようeNBの中継局をトリガするのではなく、中継局_cにこのページングメッセージを送信して、UE_iにページングするよう中継局cをトリガするだけであることが可能である。 ステップ414:中継局_cが、UE_iにページングする。」) (4) (明細書第11頁第11行-第12頁第5行) (当審訳:日本語ファミリ文献の段落【0065】-【0067】参照。 「 以下に、或る例を用いて、前述の実施形態によるロケーション更新方法に関連するページング方法の実施形態を説明する。図5は、本実施形態によるページング方法の流れ図である。この実施形態において、中継局_aは、固定中継局であり、さらにUE_kが、固定(当審注:この部分について,日本語ファミリ文献では「移動」とあるが,引用例の該当箇所には「固定」と記載されているので,日本語ファミリ文献の記載は誤訳と認める。)中継局_aの下にある。UE_kに対するページングを完了するのに、プロセス全体はやはり、以下を含む異なる3つの段階に分けられることが可能である。以下に、図5に示される流れ図と、図4に示される流れ図の間の違いを主に説明する。 段階1において、ステップ501および502で、中継局_aが、eNBに制御メッセージ、制御_メッセージ_1を自動的に送信し、この制御メッセージの定義および機能は、図4の制御_メッセージ_1の定義および機能と同一である。図4とは異なり、ステップ503aで、eNBは、追跡区域、ならびに追跡区域と、中継局と、ユーザ機器の間のTA-中継局-UEマッピングテーブルを内部に保持する。制御_メッセージ_1を受信した後、eNBは、中継局_aと別の追跡区域TA_aの間のマッピング関係をマッピングテーブルに追加する。この段階で、その後のメッセージ(ステップ503b)およびプロセスは、図4に示されるメッセージおよびプロセスと同一である。 段階2において、ステップ504で、UE_kが、図4の場合と同様に、中継局_aのセルに移動する。ステップ505で、中継局_aが、中継局_aのセル内で中継局_aのIDおよび追跡区域IDをブロードキャストする。ステップ506で、中継局_aから、このブロードキャストされたメッセージを受信した後、UE_kは、制御メッセージ、追跡_区域_更新_要求を中継局_aに送信する。図4に示されるプロセスとは異なり、ステップ507で、中継局_aは、この制御メッセージを処理して、別の制御メッセージ、制御_メッセージ_2を生成する。追跡_区域_更新_要求と比べて、制御_メッセージ_2は、追加の1つのパラメータ、すなわち、中継局_aの中継局_IDを有する。ステップ508および509で、中継局_aが、制御_メッセージ_2を送信する。制御_メッセージ_2を受信した後、eNBは、制御_メッセージ_2の中に含められた情報に従ってTA-中継局-UEマッピングテーブルを更新し、さらにeNBは、UE_kが中継局_aのセルにキャンプオンしていることを獲得する。」) (5)また,図1,図4及び図5は,以下のとおりである。 図1 (当審訳: ) 図4 (当審訳: ) 図5 (当審訳: ) (6)上記(1)から(5)のとおりであるから,図1及び図4も参照すれば,引用例には, 「 MMEは、ユーザ機器に対してページングを開始することを担うネットワーク上のネットワーク制御要素であり、 中継局は、固定型であっても、移動型であってもよいが、中継局_aおよび中継局_bは、2つの固定中継局であり、中継局_cは、移動中継局であり、 eNBは、eノードBであり、 中継局は、eNBを介してコアネットワークにアクセスする ネットワーク」 における移動中継局であって, 「従来技術において、中継局の移動性により、中継局によってブロードキャストされるeノードBの追跡区域IDは、常に変わっており、ユーザ機器は、ロケーション更新要求を絶えず開始する」といった問題を解決するための,以下の発明(以下,「引用発明A」という。)が記載されている。 「 UE_iが、移動中継局_cの下にあり、 中継局_cが、eNBのセルに移動すると、 中継局_cが、eNBに制御_メッセージ_1を送信して、中継局_cが、eNBに中継局のID、中継局_ID、および追跡区域ID、TA_cを報告し、 eNBが、追跡区域と中継局の間のマッピングテーブルである、TA-中継局マッピングテーブルを格納し、 制御_メッセージ_1を受信した後、eNBは、このメッセージの中の情報に従ってTA-中継局マッピング関係を更新し、 UE_iが、中継局_cのセルにアクセスすると、 中継局_cが、中継局_cのセル内で追跡区域ID、TA_cをブロードキャストし、 UE_iは、中継局_cに制御メッセージ、追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信してロケーション更新を開始し、追跡_区域_更新_要求メッセージは、ユーザ機器ID、UE_Id、および追跡区域ID、TA_cを含み、 中継局_cは、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをeNBに直接に転送し、 eNBは、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをMMEに直接に転送し、 UE_iによって送信された追跡_区域_更新_要求メッセージを受信した後、MMEは、追跡区域リスト、UE_i_の_TA_リストにTA_cを追加し、 eNBは、中継局_cにページングメッセージを送信して、UE_iにページングするよう中継局cをトリガすることが可能であり、 中継局_cが、UE_iにページングし、 中継局が移動しているものの、中継局によってブロードキャストされる中継局の追跡区域IDは、比較的変わらず、ユーザ機器によって開始されるロケーション更新要求の頻度が大幅に低下させられ、ロケーション更新中にもたらされるシグナリング負荷を効果的に低減する 移動中継局。」 (7)また,上記(1)から(5)によれば,引用例には,以下の発明(以下,「引用発明B」という。)も記載されている。 「 MMEは、ユーザ機器に対してページングを開始することを担うネットワーク上のネットワーク制御要素であり、 中継局は、固定型であっても、移動型であってもよいが、中継局_aおよび中継局_bは、2つの固定中継局であり、中継局_cは、移動中継局であり、 eNBは、eノードBであり, 中継局は、eNBを介してコアネットワークにアクセスする ネットワーク,におけるMMEであって, ユーザ機器のTAリストは、ユーザ機器によって報告されたロケーション情報に従ってMMEによって保持され、 UE_iが、移動中継局_cの下にあり、 中継局_cが、eNBのセルに移動すると、 中継局_cが、eNBに制御_メッセージ_1を送信して、中継局_cが、eNBに中継局のID、中継局_ID、および追跡区域ID、TA_cを報告し、 eNBが、追跡区域と中継局の間のマッピングテーブルである、TA-中継局マッピングテーブルを格納し、 制御_メッセージ_1を受信した後、eNBは、このメッセージの中の情報に従ってTA-中継局マッピング関係を更新し、MMEに制御メッセージ、例えば、ENB_構成_更新メッセージを送信し、このメッセージは、eNBのID、eNB_ID、および中継局_cの追跡区域ID、TA_cを含み、 この制御メッセージを受信した後、MMEは、中継局_cがeNBのセルにキャンプオンしていることを獲得し、 UE_iが、中継局_cのセルにアクセスすると、 UE_iは、中継局_cに制御メッセージ、追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信してロケーション更新を開始し、追跡_区域_更新_要求メッセージは、ユーザ機器ID、UE_Id、および追跡区域ID、TA_cを含み、 中継局_cは、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをeNBに直接に転送し、 eNBは、このメッセージを受信した後、このメッセージを処理するのではなく、このメッセージをMMEに直接に転送し、 UE_iによって送信された追跡_区域_更新_要求メッセージを受信した後、MMEは、追跡区域リスト、UE_i_の_TA_リストにTA_cを追加し、 MMEが、ページングメッセージをeNBに送信する MME。」 2 対比・判断 (1)本願発明1について ア 対比 本願発明1と,引用発明Aとを対比する。 (ア)引用発明Aの「追跡区域」,「中継局」,「ID」は,それぞれ,本願発明1の「トラッキングエリア」,「中継ノード」,「識別子」に相当する。 引用発明Aの「移動中継局」,「中継局_c」ないし「移動中継局_c」は,本願発明1の「移動中継ノード」に相当する。 引用発明Aの「eノードB」ないし「eNB」は,中継局の親局として機能し,中継局に通信サービスを提供しているといえるから,本願発明1の「ドナー基地局」に相当する。 引用発明Aの「UE_i」は,移動中継ノード(移動中継局_c)の下にあるから,本願発明1の「移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス」に相当する。 (イ)引用発明Aは,ドナー基地局(eNB)を有するネットワークにおける移動中継ノード(移動中継局)であって,ユーザデバイス(UE_i)が,制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を,前記移動中継ノードに送信して,ロケーション更新を開始するものである。 ここで,移動体通信のネットワークにおいて,移動体通信のネットワークが通常カバーするエリアの広さを鑑みれば,トラッキングエリアと,当該トラッキングエリアに配置された基地局とが,それぞれ,1つずつしか存在しないということは,およそあり得ることではないから,引用発明Aのネットワークにおいても,トラッキングエリアと基地局がそれぞれ複数存在していることは,当然のことである。 してみれば,引用発明Aは,「複数の」トラッキングエリアに配置された「複数の」基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノード(移動中継局)といえる。 (ウ)引用発明Aにおいて,移動中継ノード(中継局_c)は,ドナー基地局(eNB)に制御_メッセージ_1を「送信」するものである。 また,引用発明Aにおいて,移動中継ノード(中継局_c)に関連付けられたユーザデバイス(UE_i)が,移動中継ノードに制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信しているから,当該移動中継ノードは,前記関連付けられたユーザデバイスから信号を「受信」するものである。 さらに,引用発明Aにおいて,ドナー基地局(eNB)は,移動中継ノード(中継局_c)にページングメッセージを送信しているから,当該移動中継ノードは,ドナー基地局から,ページングメッセージの信号を「受信」するものである。 また,引用発明Aにおいて,移動中継ノード(中継局_c)は,該移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス(UE_i)にページングしているから,該ユーザデバイスに信号を「送信」するものである。 してみれば,引用発明Aが「トランシーバ回路」を備えるかどうかという点は別として,本願発明1と,引用発明Aとは,「ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに,該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信する」という点で共通している。 (エ)引用発明Aは,ユーザデバイス(UE_i)から制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を受信し,このメッセージを受信した後,このメッセージをドナー基地局(eNB)に転送するものであるから,ユーザデバイスとドナー基地局との間の「通信」を「制御」しているといえる。 してみれば,引用発明Aが「通信コントローラ」を備えるかどうかは別として,本願発明1と,引用発明Aとは,「前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御する」という点で共通している。 (オ)引用発明Aでは,中継ノード(中継局)が移動しているものの,中継ノードによってブロードキャストされる中継ノードのトラッキングエリア識別子(追跡区域ID)は,比較的変わらないものである。 ここで,「比較的変わらない」とは,常に変わり続けることを意味するというよりはむしろ,中継ノードによってブロードキャストされるeノードBのトラッキングエリア識別子が常に変わっていた従来技術と比べれば,中継ノードのトラッキングエリア識別子は,従来技術ほどには,変わらない,すなわち「固定」されている,ことを意味しているといえる。 また,引用発明Aにおいて,中継ノードのトラッキングエリア識別子が何らかの方法で「割り当てられて」いることは,当然のことである。 してみれば,引用発明Aにおいて,「前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子が割り当てられて」いるといえる。 (カ)引用発明Aにおいて,移動中継ノード(中継局_c)は,ドナー基地局(eNB)のセルに移動すると,該ドナー基地局に制御_メッセージ_1を送信して,中継ノード識別子(中継局_ID)を報告するものである。 してみれば,引用発明Aにおいて,前記制御_メッセージ_1の送信ないし前記中継ノード識別子の報告が,「通信コントローラ」により行われているかどうかという点は別として,本願発明1と,引用発明Aとは,「該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能」である,という点で共通している。 (キ)引用発明Aにおいて,関連付けられたユーザデバイス(UE_i)が移動中継ノード(中継局_c)のセルにアクセスすると,当該ユーザデバイスは,制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信するものであるところ,当該制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)は,ネットワークに「接続」するためのメッセージ,すなわち「接続メッセージ」といえる。 してみれば,引用発明Aが,「中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入」するかどうかといったことや,接続メッセージを受信するように動作可能であり,また識別子を挿入して接続メッセージを送信するように構成されているものが「通信コントローラ」であるかどうかといったことは別として,本願発明1と,引用発明Aとは,「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージ受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成」されている,という点で共通する。 (ク)引用発明Aにおいて,移動中継ノード(中継局_c)に関連付けられたユーザデバイス(UE_i)が,移動中継ノードのセルにアクセスすると,前記移動中継ノードは,前記移動中継ノードのセル内で前記固定トラッキングエリア識別子(追跡区域ID,TA_c)をブロードキャストするものである。 してみれば,引用発明Aは,「前記固定トラッキングエリア識別子を該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスにブロードキャストするように動作可能」であるといえる。 (ケ)引用発明Aは,従来技術において,中継ノード(中継局)の移動性により,中継ノードによってブロードキャストされるドナー基地局(eノードB)のトラッキングエリア識別子(追跡区域ID)は,常に変わっており,ユーザ機器は,ロケーション更新要求を絶えず開始する,という問題を解決するために,中継ノードが,中継ノードのトラッキングエリア識別子をブロードキャストするものであるが,引用発明Aにおいて,従来技術と異なるトラッキングエリア識別子を中継ノードがブロードキャストする構成を採用したからといって,中継ノードが移動すれば,その中継ノードからみて,ドナー基地局(eノードB)のトラッキングエリア又はトラッキングエリア識別子が常に変化する,という状況に変わりはない。 またそのような状況において,引用発明Aは,ドナー基地局(eノードB)のトラッキングエリアないしトラッキングエリア識別子が変化する前でも,変化した後でも,そのトラッキングエリアをカバーしているドナー基地局(eノードB)と「接続するように動作可能」でなければならないことは,当然のことである。(もし,反対に,中継ノードの移動にともない,中継ノードがドナー基地局と接続するように動作可能でないとすれば,ネットワークへの接続が維持できなくなるから,そもそも移動中継ノードとして機能し得ない。) さらに,引用発明Aにおいて,中継ノードが移動しているものの,中継ノードによってブロードキャストされる中継局のトラッキングエリア識別子は,「比較的変わらない」ものであるから,引用発明Aは,トラッキングエリア識別子が変化した後のトラッキングエリアをカバーしているドナー基地局(eノードB)に接続した後でも,前記関連付けられたユーザデバイスへの前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを「継続するよう」に構成されていることは当然のことである。 ところで,移動体通信システムにおいて,隣接する2つの異なるトラッキングエリアが,それぞれ異なる基地局によってカバーされる場合も,同じ基地局によってカバーされる場合も,一般的に想定されていることである。 そうすると,引用発明Aにおいて,トラッキングエリア識別子が変化する前に接続されていたであろう「ドナー基地局」と,該識別子が変化した後に接続可能な「ドナー基地局」とが,「第1のドナー基地局」と,「第2のドナー基地局」とである,という関係になっているかどうかは明らかではないものの,本願発明1と,引用発明Aとは,「ドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属するドナー基地局に接続するように動作可能」であり,「前記ドナー基地局に接続した後でも、前記1つ又は複数の関連付けられたユーザデバイスへの前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを継続するように構成されている」という点で,共通する。 (コ)上記(ア)から(ケ)のとおりであるから,本願発明1と,引用発明Aとの一致点及び相違点は,以下のとおりである。 [一致点] 「 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信し、 前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御し、 前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子が割り当てられており、 該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能であり、 関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されており、 前記移動中継ノードは、前記固定トラッキングエリア識別子を該移動中継ノードに関連付けられた前記1つ又は複数のユーザデバイスにブロードキャストするように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、ドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属するドナー基地局に接続するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記ドナー基地局に接続した後でも、前記1つ又は複数の関連付けられたユーザデバイスへの前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを継続するように構成されている、移動中継ノード。」 [相違点] (相違点1) 「ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信」するのが, 本願発明1では,移動中継ノードが備える「トランシーバ回路」であるのに対し, 引用発明Aでは,そのようなものであるとは特定されていない点。 (相違点2) 本願発明1は,「中継ノード識別子を記憶するメモリ」を備えるのに対し, 引用発明Aは,そのようなものを備えることの特定が無い点。 (相違点3) 「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されて」いることに関し, 本願発明1では,「前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して」いるのに対し, 引用発明Aでは,中継ノード識別子を接続メッセージに挿入していない点。 (相違点4) 本願発明1は,「第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能である」のに対し, 引用発明Aは,そのようなことが特定されていない点。 (相違点5) 「ドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属するドナー基地局に接続するように動作可能」である点に関し, 本願発明1では,前者の「ドナー基地局」と,後者の「ドナー基地局」とが,それぞれ,「前記第1のドナー基地局」と,「第2のドナー基地局」とであるのに対し, 引用発明Aでは,前者の「ドナー基地局」と,後者の「ドナー基地局」とが,それぞれ,どのようなドナー基地局であるのかについて特定されていない点。 (相違点6) 本願発明1は, 「前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御」し, 「該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能」であり, 「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成」されており, 「第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能」である 「通信コントローラ」を備えるのに対し, 引用発明Aは,そのような「通信コントローラ」を備えることについて特定が無い点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み,相違点3から検討する。 引用例には,別の実施形態として,ネットワークの中継局_a(固定中継局)についてのロケーション更新方法が記載されている(上記1の(4),及び(5)の図5を参照。以下,この別の実施形態におけるロケーション更新方法を,「ロケーション更新方法a」という。)。 このロケーション更新方法aでは,引用例に記載された中継局_aは,当該中継局_aの下にあるUE_kが中継局_aのセルに移動すると,当該UE_kによって送信された制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求を処理して,追加のパラメータとして中継局_aの中継局_IDを有する別の制御メッセージ,制御_メッセージ_2を生成して,制御_メッセージ_2を送信する。 すなわち,ロケーション更新方法aにおいて,中継局_aは,「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり,前記接続メッセージに応答して,中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して,該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成」されているという点で,本願発明1と共通している。 しかし,引用例に記載された中継局_aは,固定中継局であるから,「移動中継ノード」ではない。 また,ロケーション更新方法aでは,ドナー基地局は,「TA-中継局-UEマッピングテーブル」を管理しており,中継局_aによって挿入され送信される中継ノード識別子は,この「TA-中継局-UEマッピングテーブル」を更新するために用いられている,ということができる。 そのために,ロケーション更新方法aにおける前記中継局_aは,ユーザデバイス(UE_k)から受信した接続メッセージに応答して,中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して,該接続メッセージ(制御_メッセージ_2)をドナー基地局(eNB)に送信しているといえる。 他方で,引用発明A(移動中継ノード)が前提とするロケーション更新方法(以下,「ロケーション更新方法b」という。)では, ドナー基地局は,「TA-中継局マッピングテーブル」を管理し,中継局_cから受信した接続メッセージを処理することなく直接MMEに転送するものであり, MMEは,トラッキングエリアとユーザデバイスとの対応関係を,追跡区域リスト,UE_iのTA_リストによって管理している。 上述のとおり,ロケーション管理方法aとロケーション管理方法bとでは,接続メッセージを利用したテーブルやリストの管理形態に違いがあるから,ロケーション更新方法bを前提とする引用発明A(移動中継ノード)において,ロケーション更新方法aを前提とした構成(中継ノードがユーザデバイスからの接続メッセージに中継ノード識別子を挿入してドナー基地局に送信する構成)を組み合わせて,上記相違点3に係る構成とする動機があるとはいえない。 また,引用発明A(移動中継ノード)において,引用発明Aが前提とするロケーション更新方法b全体を,中継局_a(固定中継局)が前提とするロケーション更新方法aに置き換えて,上記相違点3に係る構成とする動機があるともいえない。 ゆえに,引用例に記載された事項に基づいて,上記相違点3に係る構成に至ることは,当業者といえども容易になし得ることとはいえない。 上記のとおりであるから,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本願発明2について 本願発明2は,本願発明1と, 「前記通信コントローラは、関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されており」 という発明特定事項が共通しているから,本願発明2は,上記(1)ア(コ)の相違点3に係る構成と同じ構成を備えたものである。 とすれば,上記(1)イと同様の理由により,本願発明2は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本願発明3について ア 対比 本願発明3は,本願発明1から, 「 前記移動中継ノードには、固定トラッキングエリア識別子が割り当てられており、」という発明特定事項と, 「 前記通信コントローラは、第1のドナー基地局から前記固定トラッキングエリア識別子を受信するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記固定トラッキングエリア識別子を該移動中継ノードに関連付けられた前記1つ又は複数のユーザデバイスにブロードキャストするように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第1のドナー基地局のトラッキングエリアと異なるトラッキングエリアに属する第2のドナー基地局に接続するように動作可能であり、 前記移動中継ノードは、前記第2のドナー基地局に接続した後でも、前記1つ又は複数の関連付けられたユーザデバイスへの前記固定トラッキングエリア識別子のブロードキャストを継続するように構成されている、」 という発明特定事項と,を削除し,かつ, 「 前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信するように構成され、 前記通信コントローラは、前記トラッキングエリアのリストを前記関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに通信するように構成されている、」 という発明特定事項を追加したものに相当する。 そのことを踏まえた上で,本願発明3と,引用発明Aとを対比すると,上記(1)(本願発明1について)のア(ア)から(エ),(カ)及び(キ)でした検討が当てはまるものである。 また,引用発明Aには,上記追加した発明特定事項に相当するものは特定されていない。 これらのことから,本願発明3と,引用発明Aとは, 「 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられる移動中継ノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するとともに、該移動中継ノードに関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに対して信号を送受信し、 前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御し、 該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能であり、 関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成されている、移動中継ノード。」 の点で一致し,また,両者の相違点として,上記(1)ア(コ)で示した相違点1ないし相違点3と同じ相違点(以下,これらの相違点を「相違点1」ないし「相違点3」という。)に加えて,以下の相違点4及び相違点5が存在する。 (相違点4) 本願発明3は, 「前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信すように構成」され, 「前記トラッキングエリアのリストを前記関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに通信するように構成」されているのに対し, 引用発明Aは,そのように構成されていない点。 (相違点5) 本願発明3は, 「前記関連付けられたユーザデバイスと前記ドナー基地局との間の通信を制御」し, 「該移動中継ノードが前記ドナー基地局に接続するときに該ドナー基地局に前記中継ノード識別子を送信するように動作可能」であり, 「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、前記中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージを前記ドナー基地局に送信するように構成され」, 「前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信するように構成され」, 「前記トラッキングエリアのリストを前記関連付けられた1つ又は複数のユーザデバイスに通信するように構成され」ている 「通信コントローラ」を備えるのに対し, 引用発明Aは,そのような「通信コントローラ」を備えることについて特定が無い点。 イ 相違点についての判断 事案に鑑み,相違点3と相違点4を検討する。 (ア)相違点3について 相違点3は,上記(1)ア(コ)で示した相違点3と同じものであるから,上記(1)イと同様の理由により,引用例に記載された事項に基づいて,相違点3に係る構成に至ることは,当業者にとって容易になし得ることとはいえない。 (イ)相違点4について 移動中継ノードが,該移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信して,前記トラッキングエリアのリストをユーザデバイスに通信することについて,引用例には,記載も示唆もない。 そして,本願発明3は,少なくとも上記相違点4に係る構成を有することで,「中継器が、予想パスに沿って通過する限り、NAS TA更新メッセージをコアネットワーク11に送信する必要はない」(本願明細書の段落【0052】)という効果を奏するものである。 よって,引用例に記載された事項に基づいて,相違点4に係る構成に至ることは,当業者が容易になし得ることとはいえない。 (ウ)上記のとおりであるから,上記相違点3及び上記相違点4以外の相違点について検討するまでもなく,本願発明3は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)本願発明4,5について 本願発明4,5は,いずれも,本願発明3をさらに限定したものであるから,本願発明3と同様,本願発明4,5は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)本願発明6について 本願発明6には,「前記移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入された接続メッセージを受信する」ように動作可能である通信コントローラを備える事項,及び,前記通信コントローラは,「前記移動中継ノードによって前記中継ノード識別子が挿入された該接続メッセージを前記ネットワークノードに送信する」よう動作可能である事項が特定されている。 ここで,本願発明6における,ドナー基地局が受信し,かつネットワークノードに送信する接続メッセージが,移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入されたメッセージであるという事項は,上記(1)ア(コ)で示した,本願発明1と引用発明1との間の相違点3に係る構成と,移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入されるという点で,対応している。 そして,上記(1)イで示したとおり,引用例に記載された事項に基づいて,上記相違点3に係る構成に至ることは,当業者が容易になし得ることとはいえないから,上記相違点3に係る構成と対応する事項が特定されている本願発明6も,同様の理由により,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (6)本願発明7ないし11について 本願発明7ないし11は,本願発明6をさらに限定したものであるから,本願発明6と同様に,本願発明7ないし11は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (7)本願発明12について ア 対比 本願発明12と,引用発明Bとを対比する。 (ア)上記(1)(本願発明1について)ア(ア)でした検討と同様に, 引用発明Bの「追跡区域」,「中継局」,「ID」は,それぞれ,本願発明12の「トラッキングエリア」,「中継ノード」,「識別子」に相当し, 引用発明Bの「移動中継局」,「中継局_c」ないし「移動中継局_c」は,本願発明12の「移動中継ノード」に相当し, 引用発明Bの「eノードB」ないし「eNB」は,本願発明12の「ドナー基地局」に相当し, 引用発明Bの「UE_i」は,本願発明12の「移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス」に相当する。 (イ)一般にMMEとは,移動体通信システムにおけるコアネットワークを構成するノードであるから,引用発明Bの「MME」は,本願発明12の「ネットワークノード」に相当する。 また,上記(1)ア(イ)でした検討と同様に,引用発明Bのネットワークノード(MME)は,「複数の」トラッキングエリアに配置された「複数の」基地局を有する通信システムにおいて用いられるネットワークノードといえる。 (ウ)引用発明Bにおいて,ネットワークノード(MME)は,ドナー基地局(eNB)から転送されるロケーション更新要求メッセージを受信するものであり,また,ドナー基地局(eNB)は、ネットワークノード(MME)に制御メッセージ,例えば,ENB_構成_更新メッセージを送信するものであるから,ネットワークノードは,ドナー基地局から,ロケーション更新要求メッセージやENB_構成_更新メッセージを「受信」しているといえる。 また,引用発明Bは,前記ドナー基地局(eNB)に,ページングメッセージを「送信」するものである。 してみれば,引用発明Bが「トランシーバ回路」を備えるかどうかは別として,本願発明12と,引用発明Bとは,「ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成される」点で共通している。 (エ)本願発明12には,「第1のドナー基地局」というものが特定されているけれども,本願発明12には,例えば「第2のドナー基地局」のようなものは特定されていないことも考慮すると,当該「第1のドナー基地局」とは,移動体通信システムが有するドナー基地局のうち,ある特定のドナー基地局を,序数詞を用いることによって指し示したもの,という程度の意味と解される。 とすれば,引用発明Bの「eNB」も,移動体通信システムが有するドナー基地局のうちの,ある特定のドナー基地局であるから,そのような意味において,引用発明Bの「eNB」は,「第1のドナー基地局」であるといえる。 また,本願発明12において,第1のドナー基地局に接続するものは,「請求項1乃至5の何れかに記載の移動中継ノード」であるが,上記(1)から(3)で検討したとおり,本願発明1ないし5と,引用例に記載された移動中継局(引用発明A)との間には,相違点が存在している。 してみれば、引用発明Bにおける移動中継ノード(移動中継局)は,「請求項1乃至5のいずれかに記載の」移動中継ノードとはいえない。 また,引用発明Bにおいて,移動中継ノード(中継局_c)が第1のドナー基地局(eNB)のセルに移動すると, 第1のドナー基地局は,ネットワークノード(MME)に,第1のドナー基地局の識別子(eNB_ID),及び,移動中継ノードのトラッキングエリア識別子(TA_c)を含む制御メッセージを送信し, ネットワークノードは,この制御メッセージを受信した後,移動中継ノードが第1のドナー基地局のセルにキャンプオンしていることを獲得する ものである。 ここで,引用発明Bにおいて,前記制御メッセージには,「第1のドナー基地局の識別子(eNB_ID)」,及び,「移動中継ノードのトラッキングエリア識別子(TA_c)」を含む点に注目すれば,ネットワークノード(MME)が行う「この制御メッセージを受信した後,移動中継ノードが第1のドナー基地局のセルにキャンプオンしていることを獲得する」とは, 「移動中継ノード(中継局_c)に関連付けられたトラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータ(TA_c)」とともに,「第1のドナー基地局の識別子(eNB_ID)」を記憶するように動作可能であること,また,これにより,「移動中継ノードに関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータ(TA_c)」を,「第1のドナー基地局(eNB)」に関連付けていることを意味しているといえる。 そのため,本願発明12と,引用発明Bとは, 受信し,記憶する「識別子」が,「中継ノード識別子」か,それとも「第1のドナー基地局の識別子」かという点で異なっており,また, 記憶し,関連付けられるトラッキングエリアデータと対応するとされている「トラッキングエリア」が,「中継ノード識別子を受信した第1のドナー基地局に関連付けられたトラッキングエリア」であるのか,それとも「移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリア」であるのか,という点で異なっている。 また,本願発明12と,引用発明Bとは,いずれも,前記記憶した「トラッキングエリアデータを別のものに関連付ける」という点では共通しているが,当該「別のもの」が,「移動中継ノード」であるのか,「第1のドナー基地局」であるのかという点で,異なっている。 これらのことから,引用発明Bは,上述した点で本願発明12と異なる点があるものの,本願発明12と,引用発明Bとは, 「移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり,トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに,前記識別子を記憶するように動作可能であり」,「これにより,前記トラッキングエリアデータを別のものに関連付ける」という点で,共通している。 (オ)上記(エ)で指摘した引用発明Bの動作に続いて,引用発明Bにおいて,移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス(UE_i)が,移動中継ノード(中継局_c)のセルにアクセスすると, ユーザデバイスは,移動中継ノードに,ユーザ機器ID,UE_Id,及びトラッキングエリア識別子(追跡区域ID),TA_cを含む制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)を送信し, 移動中継ノードは,このメッセージを受信した後,このメッセージを第1のドナー基地局(eNB)に転送し, 第1のドナー基地局は,このメッセージを受信した後,このメッセージをネットワークノード(MME)に転送する ものである。 ここで,上記(1)(本願発明1について)のア(キ)でも検討したとおり,前記「制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request)」は,「接続メッセージ」といえる。 してみれば,引用発明Bは,移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス(UE_i)からの接続メッセージ(制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request))を,第1のドナー基地局(eNB)から受信するように動作可能であるといえる。 さらに,引用発明Bは,移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイス(UE_i)によって送信された接続メッセージ(制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request))を受信した後,「追跡区域リスト,UE_i_の_TA_リスト」にTA_cを追加するものである。 そして,引用発明Bにおいて,接続メッセージ(制御メッセージ,追跡_区域_更新_要求(Tracking_Area_Update_Request))には,「ユーザ機器ID,UE_Id」,及び,「トラッキングエリア識別子(追跡区域ID),TA_c」を含むものであることを鑑みれば, 引用発明Bは,「移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータ(TA_c)」が,「ユーザデバイス(UE_i)」にも関連付けられるように,前記「ユーザデバイス」を「移動中継ノードのトラッキングエリア」に関連付けるデータ(TA_c)を記憶するように動作可能であるといえる。 とすれば,本願発明12と,引用発明Bとは,「移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが,ユーザデバイスにも関連付けられるように,ユーザデバイスをさらに別のものに関連付けるデータを記憶するように動作可能である」という点で共通している。 してみれば,引用発明Bは,接続メッセージを受信し,またデータを記憶するように動作可能であるのが「通信コントローラ」であるかどうかは別として, 本願発明12と,引用発明Bとは,「前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスをさらに別のものに関連付けるデータを記憶するように動作可能である」点で,共通している。 (カ)上記(ア)から(オ)のとおりであるから,本願発明12と,引用発明Bとの一致点及び相違点は,以下のとおりである。 [一致点] 「 複数のトラッキングエリアに配置された複数の基地局を有する通信システムにおいて用いられるネットワークノードであって、 ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成され、 移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり,トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記識別子を記憶するように動作可能であり、これにより、前記トラッキングエリアデータを別のものに関連付け、 前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスをさらに別のものに関連付けるデータを記憶するように動作可能である、ネットワークノード。」 [相違点] (相違点1) 「ドナー基地局に対して信号を送受信するように構成される」のが, 本願発明12では,ネットワークノードが備える「トランシーバ回路」であるのに対し, 引用発明Bでは,そのようなものであるかどうかについて特定が無い点。 (相違点2) 「移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するとき」に関し,第1のドナー基地局に接続する当該「移動中継ノード」が, 本願発明12では,「請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノード」であるのに対して, 引用発明Bでは,そのような移動中継ノードではない点。 (相違点3) 「識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり,トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記識別子を記憶するように動作可能であり、これにより、前記トラッキングエリアデータを別のものに関連付け」る点に関し, 本願発明12では, 受信され,記憶される前記「識別子」が,「中継ノード識別子」であり, 記憶され,関連付けられるトラッキングエリアデータと対応されるとしている前記「トラッキングエリア」が,「前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリア」であり, 前記トラッキングエリアデータを前記「別のもの」に関連付けることが,「前記移動中継ノード」に関連付けることであり, 引用発明Bでは, 受信され,記憶される前記「識別子」が,「第1のドナー基地局の識別子」であり, 記憶され,関連付けられるトラッキングエリアデータと対応されるとしている前記「トラッキングエリア」が,「移動中継ノードに関連付けられた前記トラッキングエリア」であり, 前記トラッキングエリアデータを前記「別のもの」に関連付けることが,「第1のドナー基地局」に関連付けることである点。 (相違点4) 「前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスをさらに別のものに関連付けるデータを記憶する」点に関し,当該「さらに別のもの」が, 本願発明12では,「前記移動中継ノード」であるのに対し, 引用発明Bでは,「移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリア」である点。 (相違点5) 本願発明12は, 「請求項1乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能」であり、 「前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように動作可能」であり,また, 「前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスを前記移動中継ノードに関連付けるデータを記憶するように動作可能」である 「通信コントローラ」を備えるのに対し, 引用発明Bは,そのような「通信コントローラ」を備えることについて特定が無い点。 イ 相違点に対する判断 事案に鑑み,相違点3から検討する。 引用発明Bは,移動中継ノード(中継局_c)が第1のドナー基地局(eNB)に接続するときに,第1のドナー基地局から「中継ノード識別子」を受信するものではない。 また,引用発明Bは,eNB_ID及びTA_cを含む制御メッセージを受信し,その制御メッセージを受信した後,移動中継ノード(中継局_c)が第1のドナー基地局(eNB)のセルにキャンプオンしていることを獲得するものであるが,この「移動中継ノード(中継局_c)が第1のドナー基地局(eNB)のセルにキャンプオンしていることを獲得する」ということを実現するために,「第1のドナー基地局(eNB)に関連付けられたトラッキングエリア」についての情報は,必須の情報とはいえない。 そのため,引用発明Bにおいて,「中継ノード識別子を受信した第1のドナー基地局に関連付けられたトラッキングエリア」に対応するトラッキングエリアのデータとともに,「中継ノード識別子」とを記憶し,これにより,前記トラッキングエリアデータを前記「移動中継ノード」に関連付けようとする動機があるとはいえない。 これらのことから,引用発明Bを, 移動中継ノードが第1のドナー基地局に接続するときに中継ノード識別子を受信するように構成し, 「前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局」に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに,前記「中継ノード識別子」を記憶するように構成し,これにより,前記トラッキングエリアデータを前記「移動中継ノード」に関連付けること とすることは,当業者が容易に想到し得るものとはいえない。 よって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明12は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (8)本願発明13ないし19について 本願発明13ないし19は,本願発明12をさらに限定したものであるから,本願発明12と同様に,本願発明13ないし19は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (9)本願発明20について 本願発明20には,「前記通信コントローラは、前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信するように動作可能であり、前記新たなトラッキングエリアが前記所定のリストにあるとき、前記トラッキングエリアハンドラの動作を抑制するように動作可能である」ことが特定されている。 ここで,本願発明20における「前記移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを受信する」という事項については,上記(3)(本願発明3について)アで示した,本願発明3と引用発明Bとの間の相違点4に係る構成と,移動中継ノードが通過すると予想されるトラッキングエリアの所定のリストを通信するという点で,対応している。 そして,上記(3)イ(イ)で示したとおり,引用例に記載された事項に基づいて,上記相違点4に係る構成に至ることは,当業者が容易になし得ることとはいえないから,上記相違点4に係る構成と対応する事項が特定されている本願発明20もまた,本願発明3と同様の理由により,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (10)本願発明21,22について 本願発明21,22は,本願発明20をさらに限定したものであるから,本願発明20と同様に,本願発明21,22は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 小括 以上のとおり,本願発明1ないし22は,当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 よって,上記第3の2において示した理由によっては,本願を拒絶することはできない。 第6 上記第3の1についての当審の判断 続いて,上記第3の1において示した原査定の理由について,判断する。 1 本願発明1について 引用文献1には, 中継装置21が,電車やバスなどの移動体2(第0048段落)を識別するために用いられる「移動体識別番号」を移動体通信端末に報知すること(第0051段落,第0060段落,図7のステップS1),並びに, 中継装置21が,端末識別番号が含まれている階層化位置登録要求を受信し(第0061段落,図7のステップS4,S5),位置登録エリアに変更があったことを検知した後,端末識別番号,「移動体識別番号」,基地局の位置登録エリア情報が含まれている階層化位置登録要求を基地局へと送信すること(第0061段落,図7のステップS11) が記載されている。 ここで,仮に,引用文献1に記載されている,ステップS1で報知され,またステップS11で送信する階層化位置登録要求に含まれる「移動体識別番号」が,本願発明1において接続メッセージに挿入される「中継ノード識別子」に相当するものであったとしても,この「移動体識別番号」は,ユーザデバイスにブロードキャストされる「固定トラッキング識別子」と呼べるものではない。 ゆえに,引用文献1には,「固定トラッキング識別子」をユーザデバイスにブロードキャストすることは記載も示唆もされていない。 また仮に,引用文献1に記載された「移動体識別番号」を,「固定トラッキング識別子」に置き換えて,固定トラッキング識別子をユーザデバイスにブロードキャストするよう構成することが当業者にとって容易であったとしても,そのような置き換えを行えば,ステップS1でブロードキャストする情報だけではなく,ステップS11で送信(挿入)される情報も「固定トラッキング識別子」に置き換えられてしまうため,「中継ノード識別子」を挿入する構成とはならない。 また,引用文献1に加えて,引用文献2-8の記載を考慮しても,引用文献1-8に記載された発明から,本願発明1のごとく構成することが容易になし得るとすることはできない。 以上のとおりであるから,本願発明1は,引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は,本願発明1の「固定トラッキングエリア識別子」を,「固定無線セル識別子」に置き換えたものに相当するから,上記1でした検討と同様に,本願発明2も,引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3 本願発明3について 引用文献3には,UE10とNodeB11との間のムービングネットワーク装置12(段落【0034】,図2,3)に関し, 1つのムービングネットワークに対するロケーションエリアLAMNが,例えば鉄道のレールに沿った複数のLAの集合として定義されること(段落【0040】), 集合内のLAiを列挙した情報を,ムービングネットワーク装置12が追加して報知すること(段落【0058】,図8), UE10は,ムービングネットワークの位置情報を使用した位置登録,すなわちムービングネットワークへの加入を行った後には,ムービングネットワークとして定義されている範囲,例えば電車に乗って移動中には位置登録を実行しないこと(段落【0060】), ムービングネットワーク装置は,オプションの機能としてノードB11側から送信される物理チャネルを透過させる機能を備えること(第0037段落) が記載されている。 しかし,引用文献3に記載されたムービングネットワーク装置12は,原則としてUE10からNodeB11への上り信号を受信するものではなかったり(段落【0033】,【0036】,図3),論理的なものでもよく例えばノードB11としての無線基地局装置の一部として実現することも可能であったりするもの(段落【0034】)である。 そのため,引用文献3に記載されたムービングネットワーク装置12は,電車などの経路のロケーションエリアのリストをユーザデバイスに通信しているものの,当該ムービングネットワーク装置12は,ユーザデバイスから信号を「受信」する「移動中継ノード」であるとはいえないから,当該ムービングネットワーク装置12から,「関連付けられたユーザデバイスから接続メッセージを受信するように動作可能であり、前記接続メッセージに応答して、中継ノード識別子を前記接続メッセージに挿入して、該接続メッセージをドナー基地局に送信する」ような構成に至ることが当業者にとって容易であるとはいえない。 また,引用文献1,2の記載,並びに引用文献4-8で例示された周知技術の存在を考慮しても,引用文献3に記載されたムービングネットワーク装置12を,本願発明3に特定されているような移動中継ノードの構成とすることが,当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。 よって,本願発明3は,引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 4 本願発明4,5について 本願発明4,5は,本願発明3をさらに限定したものであるから,本願発明3と同様,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5 本願発明6について 本願発明6における,ドナー基地局が受信し,かつネットワークノードに送信する接続メッセージが,移動中継ノードによって中継ノード識別子が挿入されたメッセージであるという点については,上記1ないし3でした検討を鑑みれば,当業者にとって容易に想到し得るものとはいえない。 よって,本願発明6も,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 6 本願発明7ないし11について 本願発明7ないし11は,本願発明6を限定するものであるから,上記5でした検討と同様,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 7 本願発明12について 引用文献1ないし引用文献8のいずれにおいても,本願発明12における 「前記中継ノード識別子を受信した前記第1のドナー基地局に関連付けられた前記トラッキングエリアに対応するトラッキングエリアデータとともに、前記中継ノード識別子を記憶するように動作可能である通信コントローラ」を備え,「これにより、前記トラッキングエリアデータを前記移動中継ノードに関連付け」, 「前記通信コントローラは、前記移動中継ノードに関連付けられたユーザデバイスからの接続メッセージを前記第1のドナー基地局から受信するように動作可能であり、前記移動中継ノードに関連付けられたトラッキングエリアデータが前記ユーザデバイスにも関連付けられるように、前記ユーザデバイスを前記移動中継ノードに関連付けるデータを記憶するように動作可能である」 構成は,記載も示唆もされておらず,また引用文献1ないし引用文献8に記載された事項に基づいてそのような構成に至ることは,当業者が容易になし得ることとはいえない。 よって,本願発明12は,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 8 本願発明13ないし19について 本願発明13ないし19は,本願発明12を更に限定したものであるから,上記7でした検討と同様,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 9 本願発明20について 上記3(本願発明3について)で検討したとおり,引用文献3に記載されたムービングネットワーク装置12は,ユーザデバイスから信号を受信するものではないから,当該ユーザデバイスは,本願発明20でいうところの「請求項3乃至5の何れか1つに記載の移動中継ノード」に,制御メッセージなどの信号を「送信」するように構成されたものとはいえないし,また,引用文献1,2,4-8の記載を考慮しても,本願発明20で特定されているようなユーザデバイスの構成に至ることが当業者にとって容易になし得ることとはいえない。 よって,本願発明20は,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 10 本願発明21ないし22について 本願発明21ないし22は,本願発明20を限定するものであるから,上記9でした検討と同様,当業者が引用文献1ないし引用文献8に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから,原査定の理由,並びに,当審において平成29年1月30日付けで通知した拒絶理由,及び,当審において同年5月19日付けで通知した拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。

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2016-008512

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