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特許拒絶査定不服審判

2016-007784

聴覚障害、変形性関節症および細胞の異常増殖に関するatonal関連配列の治療用途のための組成物および方法

審判番号
2016-007784
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2014-048148外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年05月27日
審決日
2017年02月07日
公報発行日
2017年08月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .536-Z (A01K) / P18 .537-Z (A01K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項、特許法第36条第6項第1号、特許法第44条第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2014- 48148「聴覚障害、変形性関節症および細胞の異常増殖に関するatonal関連配列の治療用途のための組成物および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月21日出願公開、特開2014-147387〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成12(2000)年6月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 1999年6月1日 米国(US),2000年1月19日 米国(US))を国際出願日とする特願2001-500839号の一部を、特許法第44条第1項の規定により平成22(2010)年10月22日に特願2010-237516号として分割し、さらに、同法同条同項の規定によりこの出願の一部を平成26(2014)年3月11日に新たな特許出願として分割したものであって、主な経緯は以下のとおりである。 平成27年 6月11日付け 拒絶理由通知書 平成27年12月21日   意見書・手続補正書 平成28年 1月20日付け 拒絶査定 平成28年 5月27日   審判請求書 平成28年 7月20日   手続補正書(方式) 第2 本願発明 本願請求項1~18に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成27年12月21日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~18に記載された発明特定事項により特定されるものであるところ、そのうち請求項6に係る発明(以下、「本願発明6」という)は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項6】 アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸分子を含有する組成物であって、関節疾患の治療のための組成物。」 第3 原査定における拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由は、本願の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、及び、本願発明は、本願の発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない、というものである。 第4 特許法第36条第4項について 1.本願の発明の詳細な説明の記載 本願の発明の詳細な説明には、本願発明に関して以下の事項(1)~(9)が記載されている。 なお、下線は強調するために当審にて付記したものであり、原文にある下線は省略している。以下、同様である。 (1)「本明細書で使用する「atonal関連」なる用語は、ショウジョウバエatonal核酸配列またはアミノ酸配列である任意の核酸配列またはアミノ酸配列、またはそれぞれ上記核酸またはアミノ酸配列と相同である任意の配列または類似性を有する特定の配列として定義する。配列は、哺乳動物および昆虫を含む任意の動物に存在し得る。本明細書で使用する有意な配列類似性は、25%より大きな類似性を意味し、他方の配列の任意の領域で生じ得る。atonal関連には、特に限定されないが、Math1(マウスatonalホモログ1(mouseatonal homolog 1))、Cath1(チキンatonalホモログ (chickenatonal homolog 1))、Hath1(ヒトatonalホモログ(human atonal homolog1))およびXath1(アフリカツメガエルatonalホモログ1(Xenopusatonal homolog 1))が含まれる。さらに多重相同性または類似配列が動物内に存在し得る。」(【0037】) (2)「本発明の別の実施形態は、小脳顆粒ニューロン欠如のために、機械的受容細胞増殖を促進するために、有毛細胞を産出するために、聴覚異常または平衡失調疾病を治療するために、関節疾患を治療するために、細胞の異常増殖を治療するために、および機能性atonal関連核酸またはアミノ酸配列の欠失の結果である疾患の治療のために、ヒトを含む動物を治療する方法である。上記方法には、治療的効果的な量のatonal関連核酸またはアミノ酸配列を投与することが含まれる。詳細な実施形態において、上記投与は、ウイルスベクター(バクテリオファージ、動物および植物ウイルスを含む)、プラスミド、コスミド、または任意の他の核酸に基づくベクター、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物および上記ベクターのそれらの組合せからなる群より選択したベクターによる。詳細な実施形態において、上記ベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどを含むアデノ随伴ベクターである。したがって、ベクターはウイルス性または非ウイルス性であってよい。好適な実施形態において、上記ベクターは、サイトメガロウイルスIEプロモーター配列およびSV40初期ポリアデニル化シグナル配列を含むアデノウイルスベクターである。他方の詳細な実施形態において、上記細胞はヒト細胞である。さらに詳細な実施形態において、上記関節疾患は変形関節症である。他の特定の実施様態において、細胞は、atonal関連アミノ酸配列に改変を含有し、上記アミノ酸配列は、配列番号58の約20個の連続アミノ酸残基と、少なくとも約80%の同一性を有する。 詳細な実施形態において、本発明はまた、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴覚障害、平衡失調、関節疾患に対する治療を必要とする、または機械的受容性細胞増殖を促進することが必要である動物の、または機能的atonal関連核酸またはアミノ酸配列の欠失の結果である疾患の治療方法を提供する。この方法には、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに対して少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、および最も好ましくは少なくとも約90%同一であるアミノ酸を有する転写因子を、動物内の細胞に送達することが含まれる。いくつかの実施形態において、動物における細胞は、その動物の内耳に局在する。好ましくは、転写因子はDaughterlessタンパク質への結合に対してatonalと競合し(Jarmanら,1993)、Math-1のE47タンパク質への結合に対して競合する(Akazawaら,1995)。」(【0063】~【0064】) (3)「Math1は、典型的に変形関節症で退化する、非骨化関節軟骨(図6参照)で発現している。これは関節炎の最も多い形態であり、40歳以上の90%のヒトが1つまたはそれ以上の関節で、ある程度の変形関節症を示している。細胞産出および増殖でのMath1の特性を考えると、影響を及ぼす関節でのその人工的な発現は、非骨化軟骨を構成する細胞の再生を可能にすることができる。」(【0151】) (4)「実施例2 変形関節症に関する動物モデル 変形関節症を制御する遺伝子の欠損に関する効果的な動物モデルは、胚発生を通して、1つまたはそれ以上の組織が機能的野生型対立遺伝子に戻ることができないように、安定に不活性化された両対立遺伝子をしばしば持つ可能性がある。遺伝子型を変えた動物の産出の1つの方法は、遺伝子ターゲッティングであり(Mansour et al.,1993)、そこで、新規に導入したDNA配列(すなわち標的化配列または構築物)および染色体に存在する特定の標的化DNA配列が、結果として新規に導入したDNA配列の一部分の標的化染色体DNA配列内への挿入となる。この方法は、任意の望ましい遺伝子型の動物の産出することができ、選択可能マーカーを遺伝子内に挿入するか、または完全に遺伝子を他のヌクレオチド配列に置換することによって、特定の染色体遺伝子配列での、遺伝子破壊(すなわち「ノックアウト」に)に関してとりわけ有用である。」(【0161】) (5)「実施例3 トランスジェニックMath1マウスの作製 RNA insituハイブリッド形成によって同定できないかすかなMath1発現パターンを検出し、したがってさらに胚発生の間の本遺伝子の役割を明らかにするために、Math1ヌル対立遺伝子(Math1β-Gal/ β-Gal)を、Math1コード領域をβ-ガラクトシダーゼ(β-Gal)で置換することで作製した。」(【0166】) (6)「実施例5 トランスジェニックMath1マウスでの発現パターン 予想したように、小脳および背側脊髄でのβ-Gal発現は、Math1のものと同一であり、興味深いことに、β-Galはまた、E12.5にて耳胞上皮hのいたるところで、そしてE14.5およびE15.5にて卵形嚢、球形嚢、半規管および渦巻き管の感覚上皮でも発現した。卵形嚢はC57BL/129SVEVマウスより得た。 全妊娠期間の1日前のE18.5でのMath1β-Gal/ β-Galマウスの内耳の肉眼形態学的解析により、野生型(wt)同腹子と比較して、全構造およびサイズに明らかな欠陥はなにもないことが明らかになった。VIIIth脳神経の分岐が存在し、上皮に達しているが、有毛細胞がないために退化している。 感覚上皮を詳細に試験した。野生型、Math1+/β-Gal、およびMath1β-Gal/ β-Galマウスの卵形嚢、うずまき管をノマルスキー光学器によって感覚上皮が見ることができるように切断した。毛束が野生型およびヘテロ接合体の両方の器官で存在したが、Math1ヌル同腹子では完全になかった。渦巻き管および前庭器官の走査型電子顕微鏡図(SEM)により、ヌルマウスでの毛束がないことを確認した(図2A~図2F)。毛束の欠失が、有毛細胞がないことに関係があるかどうかを決定するために、光学顕微鏡および透過型顕微鏡(それぞれLMおよびTEM)を用いて、すべての内耳器官の感覚上皮の切片を試験した(図3A~図3F)。LMおよびTEMを上述のように(Lysakowskiand Goldberg,1997)実施した。SEMに関する組織調製は、オスミウム酸染色(カコジル酸緩衝液中1%OsO4)、脱水、臨界点乾燥、金によるスパッターコーティング、およびJEOL35S電子顕微鏡での試験からなる。 光学顕微鏡により、ヌルマウスでの感覚上皮は明らかに薄く、細胞核の正常層状構造を欠き、不均一に染まり、これらはすべて有毛細胞がないことと関連する。TEMは、明らかに正常卵形嚢での有毛細胞と支持細胞を見分ける。有毛細胞は毛束、低電子密度細胞質、より先端の核を持ち、分泌顆粒を持たない(図4Aおよび4B)。ヌル変異体の感覚上皮は、有毛細胞を完全に欠き、しかし電子密度細胞質、基底部核および分泌顆粒を含む正常な形の支持細胞は持つ(Rusch,etal.,1998)。しかしながら、ヘテロ接合体Math1+/b-Galマウスは有毛細胞を残している。」(【0173】~【0176】) (7)「実施例6 トランスジェニックMath1マウスでの有毛細胞特異的マーカーの発現 E18.5での有毛細胞の欠失は、POU領域転写因子Brn3cのない状態で観察されたような、(1)感覚細胞先祖の欠失、(2)有毛細胞に分化する先祖の不能性、または(3)分化状態を維持する有毛細胞の不能性のためであり得る。第1の可能性は、先祖が、有毛細胞および支持細胞両方を作り出すから可能性がないようである。残っている可能性を評価するために、有毛細胞特異的マーカー、カルレチニンおよびミオシンVIの発現を試験した。カルレチニンはタンパク質のカルシウム結合ファミリーのメンバーであり、分化有毛細胞(毛束形成の前)および成熟内耳および聴覚有毛細胞で発現しているが、支持細胞には発現していない。Math1β-Gal/ β-Galおよび野生型マウスでのカルレチニン発現を、E15.5、E16.5およびE18.5胚の冠状切片上の免疫蛍光検査にて研究した(図5A~図5F)。 免疫蛍光検査に関して、胚を1.5時間、4%パラホルムアルデヒド/PBS中で、4℃にて固定し、5時間、15%スクロース/PBS、次いで一晩30%スクロース/PBSを介して浸潤させ、2-メチルブタン乾燥氷浴中で素早く凍結させた。14μm切片を、クリオスタット上で切断し、ゼラチンコートスライド上に載置した。切片をスライド上で、ストレック(Streck)組織定着剤(ストレックラボラトリーズ)中に10分間浸し、風乾することで固定化した。切片を、PBS中の30%正常ヒツジ血清および0.3%トライトンX-100中で、室温(RT)にて1時間ブロッキングした。ラビット抗カルレチニンポリクローナル抗体(ケミコンラボラトリーズ)をブロッキング溶液中で1:200に希釈し、4℃にて切片上で一晩インキュベートした。切片をリン酸緩衝食塩水(PBS)中でRTにて3回(それぞれ20分間)洗浄した。二次抗体抗ラビット抗体、アレキサ(Alexa)488(モレキュラープローブス)をブロッキング溶液中で1:400に希釈し、カルレチニンの検出に使用した。切片を覆い、RTにて2時間インキュベートし、DAPI含有ベクタシールド(Vectashield)(ベクター)中で洗浄および載置した。共焦点顕微鏡のために、切片を25μg/mlのRNAseと共に処理し、50μg/mlのヨウ化プロピジウムで対比染色し、DAPIを含まないベクタシールド(Vectashield)中でマウントした。染色した切片をバイオラッド(Bio-Rad)1024共焦点顕微鏡下で観察した。 カルレチニン陽性細胞は、野生型マウスの半規管および卵形嚢の感覚上皮にて明らかに見ることができるが、しかしMath1β-Gal/ β-Gal胚はすべての3つの状態でカルレチニンの発現を欠いている。本明細書で開示したマウスモデルを用いて、本発明者等は、有毛細胞がMath1β-Gal/ β-Galマウスの感覚上皮内では発生しないことを示した。(支持細胞によってところどころで分泌された)蓋膜および平衡砂膜の存在は、TEMの結果と共に、Math1β-Gal/ β-Galマウスの感覚上皮での残っている細胞が機能的な支持細胞であることを示唆している。」(【0177】~【0179】) (8)「実施例10 Math1/lacZは軟骨細胞で発現している(審決注:改行を挿入) Math1+/b-Gal ヘテロ接合体は、関節軟骨中のMath1の発現を提示している(図6Aおよび図6B)。図6Aは、前肢のすべての関節での発現を示している。肘関節のより近い試験において、Math1は、非骨化関節軟骨細胞で独占的に発現していることが示された。 Math1/lacZの発現が、早ければE12.5に、尻および肩のもののような発生近位関節で検出された(図10A)。X-gal陽性染色は、続く発生ステージにて、正常の関節の発生と平行した連続的な近位-遠位パターンで検出された(図10B)。関節において、Math1/lacZ発現は、間葉凝縮の直後に続き、それはE11.5に始まる。凝縮した間葉細胞は軟骨に分化する(Bi et al.,1999、Horton et al.,1993、Karsenty,1998)。 軟骨細胞は、骨形成の間、3つの主要な相、すなわち、静止、増殖および肥大にて分化する。関節軟骨を構成する静止している軟骨細胞は、関節軟骨細胞として呼ばれる(Buckwaklterand Mankin,1998、Poole,1997)。誕生より前、静止軟骨細胞は、関節において全軟骨細胞集団を構成している。どの細胞がMath1/lacZを発現しているか確立するために、E18.5~P7のMath1+/b-gal マウスからの切片をX-galで染色した。Math1/lacZは、E18.5にて解析したすべての関節の静止軟骨細胞で発現しており、肘関節中の静止軟骨細胞を図10Cで示し、図10DはP7マウスの静止している、増殖しているそして関節軟骨細胞を示している。 E18.5胚の関節を、以下の方法で調製した抗MATH1抗体で試験した。Math1オープンリーディングフレームのN末端156アミノ酸をコードしているEcoI-HindIII断片(Math1D)をpET28a+発現ベクター(ノバジェン)内にクローン化した。Math1D断片は、Hisタグ融合タンパク質として発現した。可溶性MATH1Dタンパク質を、Hisタグキット説明書(ノバジェン)に従って精製し、2mgのタンパク質をチキンズ(Chickens)(コカリコバイオロジカルズ社)を免疫するのに使用した。 発現は、静止軟骨細胞で見ることができ、一方ヌル胚では何の発現も観察されなかった。すべての関節軟骨細胞がMath1/lacZを発現していないことに気づくべきである(図10E)。Math1ヌル変異体でのMath1/lacZ発現は、E18.5でのヘテロ相同体マウスのそれと同一であり、このことはMath1が静止軟骨細胞発生に必要ではないことを示している。」(【0188】~【0192】) (9)「実施例12 Math1は、atoが検出されたハエで、チャイニーズハムスター卵巣細胞を部分的に救出する(審決注:改行を挿入) 本実施例は、atonal関連遺伝子が、自然のatonal関連遺伝子または遺伝子産物を欠失している動物中のCNSの発生を誘導できることを示している。本実施例はまた、atonal関連遺伝子が、それらはもともと発現していない種において、治療的に機能できることを示している。 atoとMath1、およびその同一の塩基領域の発現パターンの明らかな類似性を考えると、Math1を、以下の方法にて記載したように、正常ではない位置での弦音器官を産出することでのato過剰発現の効果を模倣するかどうかを見るために試験した。ywハエとしても知られる野生型を、記載したような(Brand and Perrimon,1993)UAS-Math1構築物で形質転換した。野生型ハエywでMath1を過剰発現させるために、UAS-Math1ハエをHS-Gal4ハエと交配した。子孫を上述のように(Jarmanet al.,1993)ヒートショックにかけた。ato変異体ハエ、w;UAS-Math1/UAS-Math1中の弦音器官の欠失を回復させるために、atol/TM6ハエを、w;HS-Gal4/CyO;ato1/TM6ハエと交配した。胚を3時間で回収し、3時間加齢させ、30分間、37℃でヒートショックにかけ、ついで12~15時間発生させた。胚を50%ヘプタンを含むPBS中の4%ホルムアミド中で固定した。胚を100%エタノールで洗浄し、PBTに移し、上述したように(Kaniaet al.,1995)、mAb22C10で染色し、PNSニューロンを検出した。弦音器官ニューロンをその異なる形態および位置より同定した。 UAS-Gal4系(Brand and Perrimon,1993)を用いたヒートショックによるさなぎ発生の間のMath1の発現は、結果として、ato(Jarmanet al.,1993)およびAchaete-Scutecomplex(AS-C)遺伝子(Brand and Perrimon,1993、Rodriguez et al.,1990)に関して報告されたように、胸背板(図14A、図14B)および羽根上の不必要な外部感覚器官となる。atoと同じように、ハエでのMath1発現は、効率はよくないが、正常ではない場所での弦音器官を産出する(図8G)。しかしながら、AS-C遺伝子の過剰発現は、結果として正常ではない場所での弦音器官とはならない(Jarmanet al.,1993)。したがって、Math1はatoと同一の機能的特異性を持っている。 いくつかのatoエンハンサーが、ato依存的であるので(Sun et al.,1998)、これらはMath1によって活性化され得、次いで正常ではない場所のCHO特定化を導く。Math1が、ハエでのato機能を置換できるかどうかを決定するため、およびMath1によるCHOの産出がato活性化によるものである可能性を明らかにするために、Math1をato変異体胚に発現させた。変異体はすべての弦音ニューロンを欠いたが(図14C)、Math1の過剰発現は、atoと同様の様式で、これらのニューロンの欠失を部分的に回復させた。」(【0200】~【0203】) 2.当審の判断 (1)「関節疾患の治療のための組成物」に関して 上記記載事項(1),(5)~(7),(9)より、本願の発明の詳細な説明には、Math1(マウスatonalホモログ1)ホモ欠失マウスは、感覚上皮内では有毛細胞は発生しないこと(実施例5,6)、ハエのさなぎ発生の間にMath1を発現させたトランスジェニックハエは、正常ではない場所に弦音器官を産出したこと(実施例12)が具体的に記載されているものの、出願時の技術常識を考慮しても、有毛細胞の発生及び弦音器官の産出に関するこれらの結果を根拠に関節疾患が治療できるとは認められない。 また、変形関節症に関する記載事項(3)~(4),(8)について、記載事項(3)及び(8)には、変形関節症で退化する非骨化関節軟骨においてMath1が発現することが示されているものの、出願時の技術常識を考慮しても、Math1を人工的に発現させることにより、非骨化軟骨を構成する細胞が再生し、さらに関節疾患を治療できるかまでは不明である。また、記載事項(4)の変形関節症を制御する遺伝子の欠損に関する効果的な動物モデルの記載も一般的なものでしかない。 そうすると、本願の発明の詳細な説明には、関節疾患を治療できるという薬理作用を裏付けるに足る記載があるとは認められないので、当業者が本願発明6の関節疾患の治療のための組成物を作り、使用することができるように記載されているものとは認められない。 (2)「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチド」に関して 上記記載事項(2)、及び配列表の配列番号46,58で示されるアミノ酸配列より、「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLR」は、配列番号58(Hath1)の21個の連続アミノ酸残基であって、具体的には配列番号58のアミノ酸配列の163~183位に相当するものであると同時に、上記アミノ酸配列は、配列番号46(Math1)の21個の連続アミノ酸残基である160~180位とも完全に一致している。 一方、本願の実施例で用いられているMath1について、本願の発明の詳細な説明には、配列番号46で示される351アミノ酸からなる全長のアミノ酸配列の特定の部分を含むポリペプチドを用いたことは何も記載がない。そして、単に「Math1」と記載されていれば、特段の断りがなければ全長のアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味すると解するのが自然である。 さらに、上記21アミノ酸が、Atonal関連ポリペプチドとしての機能、活性に重要な役割を果たしているという技術常識も出願時において存在しないことから、単にヒトやマウスのホモログ間で類似又は一致する部分アミノ酸配列に過ぎないといえる。 そうすると、本願の発明の詳細な説明は、何ら機能、活性も明らかでない「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチド」を用いて、当業者が本願発明6の関節疾患の治療のための組成物を作り、使用することができるように記載されているとは到底いえない。 上記(1)及び(2)の検討より、本願の発明の詳細な説明は、本願発明6を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 3.小括 したがって、本願の発明の詳細な説明の記載は、本願発明6について、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 第5 特許法第36条第6項第1号について 1.本願の発明の詳細な説明の記載 「第4 1.本願の発明の詳細な説明の記載」のとおりである。 2.当審の判断 本願発明6の解決しようとする課題は、「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸分子を含有する組成物であって、関節疾患の治療のための組成物」を提供することであると認められる。 (1)「関節疾患の治療のための組成物」に関して 「第4 2.(1)」で述べたとおり、出願時の技術常識を考慮しても、本願の発明の詳細な説明には、関節疾患を治療できるという薬理作用を裏付けるに足る記載があるとは認められないことから、関節疾患の治療のための組成物を提供するという課題を解決できると当業者が認識することはできないものと認められる。 (2)「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチド」に関して 「第4 2.(2)」で述べたとおり、出願時の技術常識を考慮しても、Math1の全長のアミノ酸配列を有するポリペプチドの開示のみをもって、何ら機能、活性も明らかでない部分である「アミノ酸配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%相同な配列を有するAtonal関連ポリペプチド」についてまで、本願発明6の範囲を拡張ないし一般化できるとはいえない。 上記(1)及び(2)の検討より、本願発明6には、本願の発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超える発明が記載されていることになる。 3.小括 したがって、本願発明6は、本願の発明の詳細な説明に記載されているとはいえず、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第6 結び 以上のとおりであるから、本願は、特許法第36条第4項及び同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、他の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-007784

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