意匠拒絶査定不服審判
2016-007333
吸入器
- 審判番号
- 2016-007333
- 法域
- 意匠
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 意願2014-016236外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年05月19日
- 審決日
- 2017年05月08日
- 公報発行日
- 2017年07月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- D18 .113-WY (J7-4)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 意匠法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 意匠法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
意願2014- 16236「吸入器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 本願意匠
本願は,平成26年(2014年)7月25日に意匠登録出願されたものであり,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「吸入器」とし,その形態を,願書の記載,願書に添付した図面の記載及び写真に現したとおりとしたものである。(別紙第1参照)
第2 当審における拒絶の理由及び引用意匠
当審における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(本願の出願前発行の刊行物に掲載された意匠に類似するため,同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとしたものであって,拒絶の理由に引用された意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願の出願前に欧州共同体商標意匠庁が発行した欧州共同体意匠公報(2013年6月20日公表)に記載された「吸入器」(登録番号001373658-0006)の意匠(特許庁意匠課公知資料番号第HH25203646号)であり,その形態は,同公報に記載されたとおりとしたものである。(別紙第2参照)。
第3 当審の判断
以下,本願意匠と引用意匠(以下,「両意匠」という。)を対比することにより,両意匠の共通点及び相違点の認定,評価を行い,本願意匠が,引用意匠に類似するか否かについて判断する。
1.両意匠の共通点及び相違点の認定
(1)両意匠の共通点の認定
意匠に係る物品は,両意匠ともに「吸入器」であるから共通する。
形態は,以下の(A)ないし(D)の点が共通している。(なお,引用意匠には,蓋部等を開けた状態の図しか表されていないが,使用時以外は蓋部を閉じておくものと認められるから,蓋部を閉じた状態についても対比する。)
(A)全体は,本体部の上部に水平に吸入器として口にくわえるマウスピース(以下「マウスピース部」という。)及びマウスピース部を覆う蓋(以下「蓋部」という。)を備え,本体部の内部に薬剤を入れるカートリッジ(以下「カートリッジ部」という。)を備えた,幅,奥行き及び高さの比率を約3対8対10とする側面視略半楕円形状の扁平体とし,本体部の高さと蓋部の高さの比率を約3対2とし,蓋部は,本体部の上部背面側に設けたヒンジ部「以下「大ヒンジ部」という。」を介して回動可能とし,
(B)本体部は,正面側を側面視緩やかな凸弧状,背面側を上端寄りは除いて側面視略倒ヘの字形状,底部を水平状とし,正面と左右両側面とが接する稜線部及び背面と左右両側面が接する稜線部に丸みをつけ,左右両側面を極僅かに膨らませ,(B-1)正面側の上端から約5分の3までの位置に,正面視略縦長長方形状の操作部を面一状に設け,その左右両側面が本体部の左右両側面に少し入り込んだ状態で配設し,操作部の正面には多数の小突起を縦横に整列して形成し,(B-2)左右両側面の上方中央部に,略縦長長円形状のインジケータ部を配し,(B-3)左右両側面の背面寄り上部に,端部が円形状の大ヒンジ部を設け,(B-4)カートリッジ部の上面略中央に略円形状の開口部を設け,
(C)マウスピース部は,前記操作部の上端部に被らずに本体部上部に垂設し,蓋部を開けた状態の側面視において,上端の口部に向けてすぼまり,口部は水平に表れているものであり,
(D)蓋部は,前記操作部の上端部を含めた本体部の上部全体に被さるものであり,やや先の尖った側面視略半円形状とし,上面と左右両側面とが接する稜線部に丸みをつけ,左右両側面を極僅かに膨らませ,正面の下半部には,12個の小突起を3列4段で整列させて形成したものである,と認められる。
(2)両意匠の相違点の認定
両意匠の形態について,主に,以下の(ア)ないし(コ)の点が相違する。
(ア)本願意匠は,マウスピース部の形態を,側面視において,下端部から垂直部を経て,口部へ向けて凹弧状に切り欠いたようにすぼめた略左右対称形とし,正面視おいて,【蓋等を回転させた状態の背面図】及び【蓋等を回転させた状態の平面図】によれば,略上半部をすぼめたものであるのに対して,引用意匠は,側面視において,正面側は下端部から垂直状の立ち上がり部とその上部の略凹弧状の反り返り部とからなる切り欠いたような形状の部分を経て,口部へ向けて凸弧状にすぼめた形状とし,他方の背面側の形態は明確ではないが,斜視図によれば,下端部から凹弧状の立ち上がり部を経て,口部へ向けて凸弧状にすぼめた形状としたものであり,正面視において,下端から上端へ向けて一続きの凸弧状面によりすぼめた左右対称形としたものである。
(イ)本願意匠は,マウスピース部の左右両側面の正面寄りに楕円形状の浅い凹部を設け,その凹部内に小突起を複数形成したものであるのに対して,引用意匠は,マウスピース部の正面側の垂直状の立ち上がり部に小突起を複数形成したものである。
(ウ)本願意匠は,カートリッジ部が回動可能なものであるのに対して,引用意匠は,カートリッジ部が回動可能なものであるのか定かでないものである。
(エ)本願意匠は,操作部やヒンジ部の端部など,物品の一部を異なる色彩としたものであるのに対して,引用意匠は,色彩を施していないものである。
(オ)本願意匠は,側面視において操作部の上辺の位置が本体部の上辺の位置よりも少し低く,段差が生じたものであるのに対して,引用意匠は,操作部の上辺と本体部の上辺(マウスピース部が載置される領域を除いた側面側縁部の上辺)の位置が一致したものである。
(カ)本願意匠は,蓋部の正面側の下辺を,前記(イ)で述べた段差部と噛み合うように,下方に少し突出させたものであるのに対して,引用意匠は,水平な直線状としたものである。
(キ)本願意匠は,左右両側面において大ヒンジ部の端部の脇に,当該ヒンジ部より小さなヒンジ部(以下「小ヒンジ部」とい。)の端部が小円形状に表れたものであるのに対して,引用意匠は,小ヒンジ部の端部は表れていないものである。
(ク)本願意匠は,インジケータ部の縦の長さが操作部の縦の長さよりも短いものであるのに対して,引用意匠は,インジケータの縦の長さが操作部の縦の長さと同程度のものである。
(ケ)本願意匠は,操作部の正面に縦横に整列させて形成した小突起の段数を5段としたものであるのに対して,引用意匠は,6段としたものである。
(コ)本願意匠は,本体部の底面に模様あるいは凹凸を設けていないものであるのに対して,引用意匠は,本体部の底面中央に円形状の模様あるいは凹部を設けたものである。
2.両意匠の共通点及び相違点の評価
(1)両意匠の共通点の評価
共通点(A)ないし(D)を備えた両意匠は,全体の基本的な構成態様が共通するとともに,蓋を閉じた状態の形状が極めて共通しているといえるが,全体の基本的な外形状は,本体部背面側をへの字状に切り欠いた点に特徴があるとしても,本願意匠の他にも見られる側面視略半楕円形状の扁平体といえる程度のものであり,また,その他の態様の共通点は,概括したものや細部にかかるものであるから,これらの共通点をもって,ただちに両意匠の類否判断を決するとまではいえない。
(2)両意匠の相違点の評価
相違点(ア)は,マウスピース部の具体的な形態についての相違であるが,マウスピース部は吸入器の使用時において需要者が注視する部分であり,特に口部先端へ向けてすぼまる態様を,本願意匠のように側面視凹弧状としたか,それとも引用意匠のように凸弧状としたかの相違は,本願意匠が,強く吸引しやすいシャープな印象を与えるのに対して,引用意匠が幅広で丸味のある印象を与えるものであり,また,立ち上がり部の態様の相違と正面視形状の相違も加わり,マウスピース部の具体的な態様は大きく異なり,これらの相違は両意匠について需要者に異なる印象を与えるから,相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,大きい。
相違点(イ)は,マウスピース部における小突起の配置態様についての相違であるが,この小突起は,特にマウスピース部を回転させる際に,指を当てる部分として需要者が気に留めるものであるとしても,付加的で部分的なものであるから,相違点(イ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度に止まる。
相違点(ウ)は,カートリッジ部が回動可能なものであるか否かの相違であるが,カートリッジ部が回動する本願意匠のその態様は,操作部が一体となって上方へ45度以上回転するものであり,一方,本願意匠に見られるカートリッジ用のヒンジ部が見当たらず,仮に何らかの方法によりカートリッジが可動するものであったとしても,その可動した態様が表れていない引用意匠とは,使用時において大きく異なる態様であるといわざるを得ず,需要者に異なる印象を与えるから,カートリッジを可動した状態の相違であるとしても,相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を軽視することはできない。
相違点(エ)は,操作部やヒンジ部の端部を異なる色彩としているか否かの相違であって,需要者が一見して気付きやすい相違ではあるが,吸入器の分野に限らず物品の可動部等の一部を異なる色彩とすることは本願出願前から極普通に行われているところであり,吸入器の分野においても,本願意匠のように操作部やヒンジ部の端部など,吸入器の一部を異なる色彩としたものは本願出願前に既に見られる態様であって,本願意匠のみが有する特徴とはいえないから,相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きく評価することはできない。
相違点(オ)及び(カ)は,本体部の上辺と操作部の上辺の高さ位置の相違による段差の有無,その相違に伴う蓋部正面側の下辺の態様の相違であるが,いずれも僅かな相違であるから,相違点(オ)及び(カ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
相違点(キ)は,左右両側面において大ヒンジ部の端部の脇に,小ヒンジ部の端部が小円形状に表れているか否かの相違であるが,意匠全体から見てとても小さく,目立たないものといえるから,相違点(キ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
相違点(ク)は,インジケータ部の縦の長さを操作部の縦の長さと比べた場合の相違であるが,その相違は,指摘されてみて気付く程度の僅かな相違に過ぎず,相違点(ク)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
相違点(ケ)は,操作部の正面に縦横に整列させて形成した小突起の段数の相違であるが,その相違は5段としたか,それとも6段としたかという相違であって,縦横に整列させて形成した小突起を複数段設けた共通態様における僅かな相違といえるから,相違点(ケ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
相違点(コ)は,本体部の底面の態様の相違であるが,通常目に触れにくい底面における僅かな相違であり,需要者が注意を引く部分ともいえず,相違点(コ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
そうすると,使用時において需要者が特に注視する部分であるマウスピース部の具体的な態様の相違点(ア)は,両意匠について需要者に異なる印象を与え,その他の相違点も加わって,これらの相違点は両意匠の類否判断を決するものといえる。
3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について共通するものの,その形態において,相違点が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕するものであって,意匠全体として異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。
第4 むすび
以上のとおりであり,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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