特許拒絶査定不服審判
2016-006370
車両の制御装置及び制御方法
- 審判番号
- 2016-006370
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-268734外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月28日
- 審決日
- 2017年01月05日
- 公報発行日
- 2017年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (B60W) / P18 .575-Z (B60W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第1号、特許法第17条の2第5項、特許法第159条第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-268734「車両の制御装置及び制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月 6日出願公開、特開2015-123831〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月26日の出願であって、平成27年10月13日付けで拒絶理由が通知され、平成27年12月17日に意見書が提出されるとともに明細書、特許請求の範囲及び図面について補正する手続補正書が提出されたが、平成28年2月4日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成28年4月28日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書及び特許請求の範囲について補正する手続補正書が提出されものである。
第2 平成28年4月28日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年4月28日付けの手続補正を却下する。
[理由1](目的外:請求項6に係る補正について)
1 補正の内容
平成28年4月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関しては、本件補正により補正される前の(すなわち,平成27年12月17日に提出された手続補正書により補正された)下記の(1)に示す請求項1ないし18を下記の(2)に示す請求項1ないし18に補正するものである。
(1) 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし18
「【請求項1】
車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能な車両の制御装置において、
自車両の進行方向の情報を監視する前方監視部と、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両の前方の信号機の点灯色、前記先行車両の前方の障害物の有無、及び前記先行車両のブレーキ操作のうちの少なくとも一つの情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、前記追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行する追従制御部と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記自車両が、内燃機関を動力源として備える場合に、前記追従制御部は、前記内燃機関への燃料噴射量を制限する制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記自車両が、回生ブレーキ制御を実行可能な電動機を動力源として備える場合に、前記追従制御部は、前記回生ブレーキ制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記追従制御部は、動力源と駆動軸との間に介在する変速機の変速比を大きくする制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記追従制御部は、前記自車両から、前記先行車両の前方の前記信号機又は前記障害物の存在位置までの距離が所定の閾値以上の場合に、前記減速動作を実行開始することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機又は前記障害物が検知されておらず、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合に、前記車速目標の現在の設定値を解除することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知された場合には、前記先行車両のブレーキ操作の実行の有無にかかわらず前記車速目標の現在の設定値を解除又は変更することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記車速追従モードにおいて、前記先行車両のブレーキ操作が実行されている場合には前記車速目標の設定値を小さくし、前記先行車両のブレーキ操作が実行されていない場合には前記車速目標の設定値を解除することを特徴とする請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知され、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに前記回生ブレーキ制御を実行し、かつ、前記車速目標の設定値を変更するとともに変更された前記車速目標の設定値と前記自車両の実車速とに基づいて目標減速度を決定し、前記燃料噴射量の制限及び前記回生ブレーキ制御では前記目標減速度を実現不可能と予測される場合に、前記回生ブレーキ制御の回生量を増大することを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知され、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合には、内燃機関への燃料噴射量の制限及び前記変速機の変速比の増大を実行し、かつ、前記車速目標の設定値を変更するとともに変更された前記車速目標の設定値と前記自車両の実車速とに基づいて目標減速度を決定し、前記燃料噴射量の制限のみでは前記目標減速度を実現不可能と予測される場合に、前記変速機の変速比を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記車速目標の設定値を現在の設定値よりも小さい値に変更することにより前記追従性を緩和することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知され、かつ、前記ブレーキ操作の実行が検知されていない場合に、前記車間目標の設定値を変更することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知され、かつ、前記ブレーキ操作の実行が検知されない場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに前記回生ブレーキ制御を実行し、前記自車両と前記先行車両との車間距離が広がらない場合に、前記回生ブレーキ制御の回生量を増大することを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、あるいは、前記障害物が検知され、かつ、前記ブレーキ操作の実行が検知されない場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに、前記自車両と前記先行車両との車間距離が広がらない場合に、前記変速機の変速比を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項15】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記車間目標の設定値を現在の設定値よりも大きい値に変更することにより、前記追従性を緩和することを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項16】
前記前方監視部は、カメラによる撮像情報に基づき前記進行方向の情報を監視することを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項17】
前記前方監視部は、前記カメラによる撮像情報に基づき前記先行車両のブレーキランプの点灯を識別することを特徴とする請求項16に記載の車両の制御装置。
【請求項18】
車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとにより追従制御を実行する車両の制御方法において、
自車両の進行方向の情報を監視するステップと、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両の前方の信号機の点灯色、前記先行車両の前方の障害物の有無、及び前記先行車両のブレーキ操作のうちの少なくとも一方の情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、前記追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行するステップと、
を備えることを特徴とする車両の制御方法。」
(2) 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし18
「【請求項1】
車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能な車両の制御装置において、
自車両の進行方向の情報を監視する前方監視部と、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、前記追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行する追従制御部と、
を備えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記自車両が、内燃機関を動力源として備える場合に、前記追従制御部は、前記内燃機関への燃料噴射量を制限する制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記自車両が、回生ブレーキ制御を実行可能な電動機を動力源として備える場合に、前記追従制御部は、前記回生ブレーキ制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記追従制御部は、動力源と駆動軸との間に介在する変速機の変速比を大きくする制御を実行することにより前記減速動作を実行することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記追従制御部は、前記自車両から、前記先行車両の前方の前記信号機までの距離が所定の閾値以上の場合に、前記減速動作を実行開始することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄以外であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合に、前記車速目標の現在の設定値を解除することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄である場合には、前記先行車両のブレーキ操作の実行の有無にかかわらず前記車速目標の現在の設定値を解除又は変更することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記車速追従モードにおいて、前記先行車両のブレーキ操作が実行されている場合には前記車速目標の設定値を小さくし、前記先行車両のブレーキ操作が実行されていない場合には前記車速目標の設定値を解除することを特徴とする請求項7に記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに前記回生ブレーキ制御を実行し、かつ、前記車速目標の設定値を変更するとともに変更された前記車速目標の設定値と前記自車両の実車速とに基づいて目標減速度を決定し、前記燃料噴射量の制限及び前記回生ブレーキ制御では前記目標減速度を実現不可能と予測される場合に、前記回生ブレーキ制御の回生量を増大することを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項10】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合には、内燃機関への燃料噴射量の制限及び前記変速機の変速比の増大を実行し、かつ、前記車速目標の設定値を変更するとともに変更された前記車速目標の設定値と前記自車両の実車速とに基づいて目標減速度を決定し、前記燃料噴射量の制限のみでは前記目標減速度を実現不可能と予測される場合に、前記変速機の変速比を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項11】
前記追従制御部は、前記車速追従モードにおいて、前記車速目標の設定値を現在の設定値よりも小さい値に変更することにより前記追従性を緩和することを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項12】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知されていない場合に、前記車間目標の設定値を変更することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項13】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知されない場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに前記回生ブレーキ制御を実行し、前記自車両と前記先行車両との車間距離が広がらない場合に、前記回生ブレーキ制御の回生量を増大することを特徴とする請求項3に記載の車両の制御装置。
【請求項14】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知されない場合には、内燃機関への燃料噴射量を制限するとともに、前記自車両と前記先行車両との車間距離が広がらない場合に、前記変速機の変速比を大きくすることを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項15】
前記追従制御部は、前記車間追従モードにおいて、前記車間目標の設定値を現在の設定値よりも大きい値に変更することにより、前記追従性を緩和することを特徴とする請求項12~14のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項16】
前記前方監視部は、カメラによる撮像情報に基づき前記進行方向の情報を監視することを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載の車両の制御装置。
【請求項17】
前記前方監視部は、前記カメラによる撮像情報に基づき前記先行車両のブレーキランプの点灯を識別することを特徴とする請求項16に記載の車両の制御装置。
【請求項18】
車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとにより追従制御を実行する車両の制御方法において、
自車両の進行方向の情報を監視するステップと、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、前記追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行するステップと、
を備えることを特徴とする車両の制御方法。」(下線は補正箇所を示すために請求人が付したものである。)
2 補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項6に関して、本件補正前の請求項6における「前記先行車両の前方の前記信号機又は前記障害物が検知されておらず、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合に、」の記載を、本件補正後に「前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄以外であり、かつ、前記先行車両のブレーキ操作の実行が検知された場合に、」の記載とすることを含むものである。
そして、この本件補正後の「前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色が赤又は黄以外であり」という発明特定事項は、「前記先行車両の前方の前記信号機の点灯色」が「赤又は黄以外」の色(通常は「青」色。)であることが検知されていることを意味するから、本件補正前の「前記先行車両の前方の前記信号機又は前記障害物が検知されておらず、」という発明特定事項を限定するものではない。
よって、請求項6に関する本件補正は、本件補正前の請求項6に係る発明の発明特定事項を限定するものではないので、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
さらに、請求項6に関する本件補正が、同項1号の請求項の削除、同項3号の誤記の訂正又は同項4号の明瞭でない記載の釈明にも該当しないことは明らかである。
したがって、請求項6に関する本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に規定された何れの事項を目的とするものでもない。
3 むすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反する。
[理由2](独立特許要件:請求項1に係る補正について)
1 補正の内容
本件補正の内容は、上記[理由1]1に記載したとおりである。
2 補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1に関して、本件補正前の請求項1における「先行車両の前方の信号機の点灯色、前記先行車両の前方の障害物の有無、及び前記先行車両のブレーキ操作のうちの少なくとも一つの情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、」の記載を、本件補正後に「先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から前記先行車両の減速が予測されたときに、」の記載とするものであるから、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「少なくとも一つの情報」について、「先行車両の前方の信号機の点灯色」であることを限定するものであるといえる。
よって、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項を限定したものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるので、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
3 独立特許要件について
(1) 刊行物
ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-20551号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(ア) 「【0001】
本発明は、走行計画生成装置に関するものである。」(段落【0001】)
(イ) 「【0013】
以下、本発明に係る走行計画生成装置の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る走行計画生成装置1は、車両Mの速度制御目標である走行速度パターンを生成し、この走行速度パターンに沿って車両Mを走行制御することで、省燃費運転を実現するものである。なお、走行速度パターンとは、将来走行する道路状況や先行車両の挙動等の周辺状況に基づいて、車両Mの走行予定軌跡上の各地点における速度目標を計画したものである。
【0015】
走行計画生成装置1は、自車両である車両Mを停止させるに際し、車両停止用の走行速度パターンである停止用速度パターンを生成する。この走行計画生成装置1では、燃料カット制御とブレーキ制御とを組み合わせることにより停止用速度パターンが生成される。
【0016】
走行計画生成装置1は、装置を統括的に制御するECU[Electric Control Unit](減速情報取得手段、停止用速度パターン生成手段、停止位置推定手段、先行車両停止判定手段)2を有している。ECU2は、車速センサ3、ナビゲーションシステム4、レーダセンサ5、路車間通信機(表示タイミング情報取得手段)6、及び制御部7と電気的に接続されている。
【0017】
車速センサ3は、車両Mの4つの車輪にそれぞれ設けられ、車輪の回転速度から車両Mの車速を検出するものである。車速センサ3は、検出した車速を車速情報としてECU2に出力する。
【0018】
ナビゲーションシステム4は、現在地から設定された目的地までの経路を案内するものである。ナビゲーションシステム4は、車両Mの現在位置を検出するためのGPS受信部と、地図データベースと、を有している。地図データベースには、道路形状に関する道路形状情報や道路上の停止線の位置に関する停止線情報が記録されている。ナビゲーションシステム4は、車両Mの現在位置の情報及び車両Mの付近の地図データ(停止線情報を含む)をナビゲーション情報としてECU2に検出する。
【0019】
レーダセンサ5は、車両Mの前方を走行する先行車両Nを検出するものである。レーダセンサ5は、車両Mの前方にミリ波信号を送信し、このミリ波信号が物体によって反射された反射波信号を受信することで、先行車両Nの有無を検出する。また、レーダセンサ5は、ミリ波信号送信時間と反射波信号受信時間とから、先行車両Nまでの距離を検出する。さらに、レーダセンサ5は、先行車両Nまでの距離の検出を所定の時間間隔で複数回行うことによって、先行車両Nとの相対速度を検出する。レーダセンサ5は、検出した先行車両Nまでの距離及び先行車両Nとの相対速度を先行車両情報としてECU2に出力する。
【0020】
路車間通信機6は、道路脇に設置された光ビーコンなどのインフラ設備と路車間通信を行うためのものである。このようなインフラ設備は、例えば信号機の200m手前の地点における路車間通信を予定して配置されている。路車間通信機6は、インフラ設備との路車間通信により、車両M前方の信号機の表示タイミング(信号機の色が切り替わるタイミング)に関する表示タイミング情報を取得する。路車間通信機6は、取得した表示タイミング情報をECU2に出力する。
【0021】
制御部7は、車両Mの制御を行うものである。制御部7は、エンジンのスロットル弁を制御するスロットルアクチュエータや、ブレーキシステムを制御するブレーキアクチュエータ、ステアリング機構を制御する操舵アクチュエータなどから構成される。制御部7は、ECU2からの指令により、各アクチュエータを駆動して車両Mの制御を行う。
【0022】
ECU2は、各センサ類3~6から取得した各種情報に基づいて、停止速度パターンを生成し、生成した停止速度パターンに沿って車両Mの走行制御を行う。ECU2は、停止速度パターンを生成するにあたり、取得した各種情報に基づいて、先行車両Nの有無を判定する。また、ECU2は、先行車両Nが存在する場合、信号機の停止線で先行車両Nが停止するか否かを判定する。さらに、ECU2は、車両Mの停止位置を推定する。ECU2は、推定した停止位置で車両Mを停止させるための走行速度パターンである停止用速度パターンを生成する。そして、ECU2は、生成した停止用速度パターンに基づいて、制御部7に指令を出力することで、停止用速度パターンに沿った車両Mの走行制御を行う。
【0023】
次に、ECU2における停止用速度パターン生成処理について図面を参照して詳細に説明する。このような停止用速度パターンの生成処理は、例えば、信号機の手前に設けられたインフラ設備からの表示タイミング情報の受信時T(図4参照)を契機として開始される。
【0024】
まず、図2に示すように、ステップS1において、各センサ類3~6からの出力により各種情報が取得される。具体的には、車速センサ3からの出力により車速情報が取得される。また、ナビゲーションシステム4からの出力によりナビゲーション情報が取得される。さらに、レーダセンサ5からの出力により先行車両情報が取得される。また、路車間通信機6からの出力により表示タイミング情報が取得される。
【0025】
次に、ステップS2において、取得された先行車両情報に基づいて、車両Mの前方で車両Mから所定の距離内(例えば10m)を走行する先行車両Nが存在するか否かが判定される。先行車両Nが存在しないと判定された場合、車速情報、ナビゲーション情報(現在位置情報、停止線情報)、及び表示タイミング情報に基づいて、現在の速度を維持した場合に、青信号で車両Mが停止線を通過できるか否かが判定される(S3)。青信号で車両Mが停止線を通過できないと判定された場合、ステップS9に移行する。一方、青信号で車両Mが停止線を通過できると判定された場合、停止用速度パターンの生成は不要であると判断して、処理を終了する。
【0026】
また、ステップS2において先行車両Nが存在すると判定された場合、車速情報及び先行車両情報に基づいて、先行車両Nの減速に関する減速情報が取得される(S4)。具体的には、先行車両情報から取得した先行車両Nの車両Mに対する相対速度と、車速情報から取得した車両Mの速度と、に基づいて、先行車両Nの車速が算出される。そして、この車速から先行車両Nの平均減速度、平均ジャーク(定常走行速度から平均減速度に達するまでの減速度の微分平均値)、及び速度ごとの平均減速度(例えば10km/hごとの平均減速度)が減速情報として取得される。なお、この減速情報は、先行車両Nが信号機の停止線を通過するか又は停止するまで継続的に取得され、ECU2に記憶される。
【0027】
続いて、取得された減速情報の平均減速度に基づいて、先行車両Nが滑空走行状態であるか否かが判定される(S5)。滑空走行状態とは、運転者が加速も減速も行っていないフリーランの状態であり、エンジンブレーキ等により一定の減速度で車両Mが減速している状態である。先行車両Nの平均減速度が滑空走行状態相当(例えば、-0.03G)である速度区間が存在する場合、先行車両Nが滑空走行状態であると判定される。先行車両Nが滑空走行状態であると判定された場合、減速情報に含まれる全ての平均減速度が滑空走行状態相当の値に修正される(S6)。一方、先行車両Nが滑空走行状態ではないと判定された場合、ステップS7に移行する。
【0028】
ステップS7において、車速情報、ナビゲーション情報、及び表示タイミング情報に基づいて、現在の速度を維持した場合に、青信号で車両Mが停止線を通過できるか否かが判定される。青信号で車両Mが停止線を通過できると判定された場合、停止用速度パターンの生成は不要であると判断して、処理を終了する。
【0029】
一方、青信号で車両Mが停止線を通過できないと判定された場合、ナビゲーション情報、先行車両情報、及び減速情報に基づいて、青信号で先行車両Nが停止線を通過できるか否かが判定される(S8)。青信号で先行車両Nが停止線を通過できると判定された場合、車両Mが先頭車両となり停止線で停止すると判断されて、ステップS9に移行する。ステップS9において、ナビゲーション情報に基づき、停止線の位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される。停止位置Pmが推定された場合、ステップS13に移行する。
【0030】
一方、ステップS8において青信号で先行車両Nが停止線を通過できないと判定された場合、減速情報に基づき、先行車両Nの減速があったか否かが判定される(S10)。このステップS10では、所定の減速閾値(例えば0.05G)以上の減速度が検出された場合に先行車両Nの減速があったと判定される。
【0031】
ステップS10において、先行車両Nの減速があったと判定された場合、ステップS11において、取得されたナビゲーション情報及び減速情報と、ECU2に記憶された過去の減速情報とに基づいて、車両Mの停止位置Pmが推定される。
【0032】
具体的には、まず、取得した現在の減速情報から先行車両Nの速度が認識される。そして、認識された先行車両Nの速度から、過去の減速情報に含まれる速度ごとの平均減速度(例えば10km/hごとの平均減速度)によって順次減速が行われると仮定し、この仮定に基づいて先行車両Nの速度が0となる位置が算出される。その後、算出された先行車両Nの速度が0となる位置が先行車両Nの停止位置Pnとして推定されると共に、この先行車両Nの停止位置Pnから後方に所定の間隔(例えば3m)離れた位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される。
【0033】
なお、過去の減速情報が不足している場合(例えば同一の先行車両Nの減速情報の記録が10回以下の場合)、過去の減速情報に含まれる平均ジャークで減速が開始され、かつ過去の減速情報に含まれる平均減速度で先行車両Nが減速すると仮定されて、先行車両Nの速度が0となる位置が算出される。そして、算出された先行車両Nの速度が0となる位置から後方に所定の間隔離れた位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される。停止位置Pmが推定された場合、ステップS13に移行する。
【0034】
一方、ステップS10において、先行車両Nの減速がないと判断された場合、先行車両Nの停止位置Pnの推定は不能であると判断される。この場合、先行車両Nは停止線の位置に停止すると仮定され、停止線の位置から後方に所定の間隔(例えば8m)離れた位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される(S12)。停止位置Pmが推定された場合、ステップS13に移行する。
【0035】
図3に示すように、ステップS13において、減速パターンが生成される。この減速パターンは、以下の手順で生成される。まず、ステップS9、ステップS11、ステップS12で推定された停止位置Pmと車両Mの現在位置とに基づいて、車両Mが減速を開始する減速開始位置が設定される。また、この減速開始位置における目標速度が設定される。次に、減速開始位置と目標速度とを起点として、燃料カット制御の実施条件(例えばエンジン回転数1000rpm以上で車速が20km/h以上の条件)が維持されるような変速比パターン(シフトパターン)が生成されると共に、この変速比パターンに応じて走行する燃料カット走行を行った場合の走行速度パターン、つまり減速開始位置で目標速度となるような燃料カット制御を用いた減速パターンが生成される。なお、このような燃料カット制御を用いた停止用速度パターンでは、減速度が自動変速機のギア比により変動するため、変速比と速度とに応じたマップにより求めればよく、例えば減速度は0.06G程度が望ましい。
【0036】
ここで説明した燃料カット制御を用いた減速パターンの生成方法は、例えば、特開2008-74337号公報に記載されている技術であり、詳細な説明は省略する。なお、燃料カット制御を用いた減速パターンの生成方法は、この手法に限定されるものではない。
【0037】
続いて、ステップS14において、燃料カット制御を用いた減速パターンによる車両Mの停止までの走行距離をL1、車両Mの現在位置から停止位置Pmまでの走行距離をL2とすると、減速パターンにおける過不足距離L3は、L1とL2との差(L3=L1-L2)として算出される。
【0038】
ステップS15において、燃料カット制御を用いた減速パターンにおける過不足距離L3が0以下であるか否かが判定される。減速パターンにおける過不足距離L3が0以下ではない(L3>0)と判定された場合、つまり減速パターンにおける車両Mの停止までの走行距離L1が車両Mの現在位置から停止位置Pmまでの走行距離L2を超えている場合、ステップS16において、所定の手順により燃料カット制御を用いた減速パターンを追加(減速開始位置側に延長)して、処理を終了する。
【0039】
一方、ステップS15において、燃料カット制御を用いた減速パターンにおける過不足距離L3が0以下である(L3≦0)と判定された場合、つまり減速パターンにおける車両Mの停止までの走行距離L1が車両Mの現在位置から停止位置Pmまでの走行距離L2以下である場合、ステップS17において、燃料カット制御時の減速パターンにおける不可速度Vf(例えば20km/h)以下の部位を、限界域速度の減速パターン(停止時減速パターンB)に変更する(図4参照)。この限界域速度とは、車両Mの性能限界ではなく、乗員の乗り心地を考慮し、例えば、減速度Amaxが0.2G程度になる減速パターンである。
【0040】
その後、変更後の減速パターンについて、過不足距離L3を再び算出する(S18)。具体的には、ステップS14と同様にして、減速パターンにおける車両Mの停止までの走行距離をL1、車両Mの現在位置から停止位置までの走行距離をL2とし、減速パターンにおける過不足距離L3をL1とL2との差(L3=L1-L2)として算出される。
【0041】
続いて、減速パターンにおける過不足距離L3が0以下であるか否かが判定される(S19)。減速パターンにおける過不足距離L3が0以下である(L3≦0)と判定された場合、ステップS20において、燃料カット制御時の減速パターンにおける不可速度Vf(例えば20km/h)以下の部位が、L3=0となるような減速度Amaxを設定する。そして、ステップS18に戻って処理を繰り返す。
【0042】
なお、この場合、下記の式に、距離として過不足距離L3、初速として不可速度Vf、終速として0を当てはめることで、減速度Amaxを加速度として算出することができる。
距離×加速度=初速2-終速2
【0043】
一方、図4に示すように、ステップS19において、減速パターンにおける過不足距離L3が0以下ではない(L3>0)と判定された場合、ステップS21において、燃料カット制御を用いた減速パターンAと、減速開始位置から車両Mを減速度Amaxで減速する初期減速パターンCと、の交点が算出される。その後、算出された交点を用いて、燃料カット減速パターンAと、停止位置Pmまで車両Mを減速度Amaxで減速する停止減速パターンBと、初期減速パターンCと、から停止用速度パターンを設定する(S22)。
【0044】
ここで、停止用速度パターンについて図4~図6を参照して詳細に説明する。図4は、先行車両が存在しない場合の走行速度パターンを示すグラフである。図5は、先行車両が滑空走行状態である場合の走行速度パターンを示すグラフである。図6は、先行車両が通常走行状態である場合の走行速度パターンを示すグラフである。なお、図4~図6に示すグラフにおいて、横軸に時間を取っているが、0位置は信号機の停止線の位置も示しており、Tは減速開始位置(表示タイミング情報受信位置)を示している。また、Pmは、車両Mの停止位置を示しており、Pnは、先行車両Nの停止位置を示している。
【0045】
図4に示すように、まず、ステップS13の処理により、燃料カット制御を用いた減速パターンAが設定される。次に、ステップS21の処理により、燃料カット制御時の減速パターンにおける不可速度Vfに基づいて停止位置まで車両を減速度Amaxで停止位置Pmまで車両Mを減速度Amaxで減速する停止減速パターンBが設定されて、燃料カット制御を用いた減速パターンAを減速開始位置側に延長した線と、減速開始位置から車両を減速度Amaxで減速する初期減速パターンCとの交点が算出される。最後に、ステップS22において、3つの減速パターンA,B,Cに基づき、減速開始位置から停止位置までの走行速度パターンである停止用速度パターンが生成される。
【0046】
図5に示すように、ステップS5において、先行車両Nが滑空走行状態ではないと判定された場合、ステップS11において、減速情報より認識された先行車両Nの速度から、過去の減速情報に含まれる速度ごとの平均減速度(例えば10km/hごとの平均減速度)によって順次減速が行われると推定し、この推定に基づいて先行車両Nの速度が0となる位置が算出される。その後、算出された先行車両Nの速度が0となる位置が先行車両Nの停止位置Pnとして推定されると共に、この先行車両Nの停止位置Pnから後方に所定の間隔離れた位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される。その後、推定された停止位置Pmを停止目標として、上述した生成処理により停止用速度パターンが生成される。
【0047】
図6に示すように、ステップS5において、先行車両Nが滑空走行状態であると判定された場合、ステップS6において、減速情報に含まれる全ての平均減速度が滑空走行状態相当の値に修正される。その後、ステップS11において、減速情報より認識された先行車両Nの速度から、修正された平均減速度により減速が行われると推定し、この推定に基づいて先行車両Nの速度が0となる位置が算出される。その後、算出された先行車両Nの速度が0となる位置が先行車両Nの停止位置Pnとして推定されると共に、この先行車両Nの停止位置Pnから後方に所定の間隔離れた位置が車両Mの停止位置Pmとして推定される。その後、推定された停止位置Pmを停止目標として、上述した生成処理により停止用速度パターンが生成される。
【0048】
このように、本実施形態にかかる走行計画生成装置1では、先行車両Nの減速情報に基づいて、車両Mを停止させるための走行速度パターンである停止用速度パターンを生成し、この停止用速度パターンに沿って走行制御を行うことで、先行車両Nの有無やその減速傾向に対応した運転が実現される。その結果、先行車両Nの挙動により走行速度パターンに沿った走行制御が妨げられることを防止することができるので、省燃費運転を実現するにあたり、装置の信頼性の向上を図ることができる。しかも、上記生成処理により、燃料カット制御の状態が長時間となるように、停止用速度パターンを生成することが可能となるので、省燃費運転に最適である。
【0049】
また、この走行計画生成装置1によれば、各種情報に基づいて推定した停止位置Pmを停止目標とすることで、状況に応じたより高精度な停止用速度パターンを生成することが可能となる。従って、この停止用速度パターンに沿って高精度な走行制御を行うことで、より効果的に省燃費運転が実現される。
【0050】
さらに、この走行計画生成装置1では、先行車両Nが存在する場合に、その先行車両Nが停止するか否かを判定することで、車両Mの停止位置Pmが信号機の停止線となるのか先行車両Nの後方となるのかを判断することができ、これによって状況に対応した信頼性の高い車両Mの停止位置Pmの推定が可能となる。
【0051】
また、この走行計画生成装置1では、先行車両Nの減速情報に基づいて、停止用速度パターンを構成する3種類の減速パターンA,B,Cの継続期間を変更することで、先行車両Nの有無やその減速傾向に対応した停止用速度パターンを効率良く生成することを可能としている。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、まず従来の方法により、基準となる停止用速度パターンを設定し、その後、先行車両Nの減速情報に基づいて、停止用速度パターン中の各減速パターンの継続期間や停止用速度パターンの停止位置を修正することで、最終的な停止用速度パターンを生成する態様であっても良い。
【0053】
その他、先行車両Nの減速情報に基づいて、各時刻における車両Mと先行車両Nとの車間距離及び相対車速を算出し、各時刻における追突及びその危険性を見積もる機能を有していても良い。この場合において、追突の危険性があると判断されたときには、走行制御の中断(ACC[Adaptive Cruise Control]制御の停止)、若しくは追突の危険性を考慮した停止用速度パターンの再生成を実施する。
【0054】
また、上述した実施形態では、レーダセンサにより先行車両情報を取得しているが、例えば車々間通信により取得しても良く、車々間通信とレーダセンサとを併用しても良い。」(段落【0013】ないし【0054】)
イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(ア) 段落【0001】(上記ア(ア)参照。)には、「本発明は、走行計画生成装置に関するものである。」と記載されているが、段落【0014】(上記ア(イ)参照。)には、「図1に示すように、本実施形態に係る走行計画生成装置1は、車両Mの速度制御目標である走行速度パターンを生成し、この走行速度パターンに沿って車両Mを走行制御することで、省燃費運転を実現するものである。」と記載されていることからみて、刊行物には、車両の制御装置に関する発明が開示されていることが分かる。
(イ) 段落【0053】(上記ア(イ)参照。)等をみると、刊行物に開示されている発明は、所定の車間距離及び車速を目標とする制御、すなわち、車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能であることが分かる。
(ウ) 段落【0016】ないし【0021】(上記ア(イ)参照。)等をみると、ナビゲーションシステム4、レーザセンサ5及び路車間通信機6等は、自車両(車両M)の進行方向の情報を監視する前方監視部であることが分かる。
(エ) 段落【0020】及び【0028】(上記ア(イ)参照。)等には、自車両(車両M)前方の信号機の表示タイミングに関する表示タイミング情報について記載されており、該表示タイミング情報は、先行車両の前方の信号機の点灯色の情報であることが分かる。
(オ) 段落【0028】ないし【0030】、【0035】、【0036】、【0044】、【0053】(上記ア(イ)参照。)等をみると、青信号で先行車両Nが停止線を通過できないと判定されたとき、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する追従制御部を備えることが分かる。
ウ 刊行物発明
上記ア、イ及び図面の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されていると認める。
<刊行物発明>
「車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能な車両の制御装置において、
自車両の進行方向の情報を監視する前方監視部と、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から青信号で先行車両が停止線を通過できないと判定されたときに、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する追従制御部と、
を備える車両の制御装置。」
(2) 対比・判断
刊行物発明における追従制御部は、青信号で先行車両Nが停止線を通過できないと判定されたときに、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行するものである。
ここで、本願補正発明における「追従制御の追従性を緩和して」に関して、本願明細書には、「【0054】追従性の緩和は、車間追従制御においては、設定されている車間目標値Dtrgを解除するか、又は、より大きな値である緩和目標車間Dtrg’に変更することにより実現される。緩和目標車間Dtrg’は、先行車両との車間距離D1や信号機等の障害物までの距離D2、自車両の車速Vに応じて決定される値とすることができる。【0055】また、車速追従制御においては、設定されている車速目標値Vtrgを解除するか、又は、より小さな値である緩和目標車速Vtrg’に変更することにより、追従性の緩和が実現される。緩和目標車速Vtrg’は、現在の自車両の車速Vに応じて、あらかじめ設定可能な範囲が決められている。」と記載されている。すなわち、設定されている車間目標値Dtrgを解除すること、及び設定されている車速目標値Vtrgを解除することは追従性の緩和であるから、刊行物発明における「追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する」は、本願補正発明における「追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行する」に相当する。
また、青信号で先行車両が停止線を通過できないと判定されたときには、該先行車両が信号機通過前に減速して停止することも当然に予想されるのであって、刊行物発明がそのときに自車両の減速動作を実行するのは、先行車両のこのような減速を予想した上で追突ないしその危険を回避するためであることは当業者に明らかであるから、刊行物発明において、「先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から青信号で先行車両が停止線を通過できないと判定されたときに」、「自車両の減速動作を実行する」ことは、本願補正発明において、「先行車両の前方の信号機の点灯色の情報から先行車両の減速が予測されたときに」、「自車両の減速動作を実行する」ことに相当するといえる。
以上からすると、刊行物発明は本願補正発明の発明特定事項をすべて具備しており、刊行物発明と本願補正発明とを対比して相違するところはない。
(3) むすび
以上より、本願補正発明は、刊行物発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許出願の際に独立して特許を受けることができないので、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反する。
[補正却下の決定についてのまとめ]
理由1及び理由2に述べたとおりであるので、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、[補正却下の決定の結論]のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年4月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし18に係る発明は、平成27年12月17日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由1]1(1)に示した請求項2に記載したとおりのものである。
2 刊行物
ア 刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物には、図面とともに、上記第2[理由2]3(1)アのとおりの事項が記載されている。
イ 上記ア及び図面の記載から分かること
(ア) 段落【0001】には、「本発明は、走行計画生成装置に関するものである。」と記載されているが、段落【0014】には、「図1に示すように、本実施形態に係る走行計画生成装置1は、車両Mの速度制御目標である走行速度パターンを生成し、この走行速度パターンに沿って車両Mを走行制御することで、省燃費運転を実現するものである。」と記載されており、刊行物には、車両を制御する装置に関する発明が開示されていることが分かる。
(イ) 段落【0053】等をみると、刊行物に開示されている発明は、所定の車間距離及び車速を目標とする制御、すなわち、車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能であることが分かる。
(ウ) 段落【0016】ないし【0021】等をみると、ナビゲーションシステム4、レーザセンサ5及び路車間通信機6等は、自車両(車両M)の進行方向の情報を監視する前方監視部であることが分かる。
(エ) 段落【0027】における減速度「-0.03G」と段落【0030】における減速度「0.05G以上」とを対比すると、図2のS10における減速があったか否かの判定はブレーキ操作の有無を検知していることが分かる。したがって、該減速があったか否かの判定は、先行車両のブレーキ操作の情報であることが分かる。
(オ) 段落【0022】ないし【0035】、【0044】ないし【0050】、【0053】、図2ないし図6等をみると、先行車両Nのブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する追従制御部を備えることが分かる。
ウ 刊行物発明2
上記ア、イ及び図面の記載を総合すると、刊行物には次の発明(以下、「刊行物発明2」という。)が記載されていると認める。
<刊行物発明2>
「車間目標に基づく車間追従モードと車速目標に基づく車速追従モードとを有する追従制御を実行可能な車両の制御装置において、
自車両の進行方向の情報を監視する前方監視部と、
前記進行方向の情報に基づいて、先行車両のブレーキ操作の情報から先行車両のブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する追従制御部と、
を備える車両の制御装置。」
3 対比・判断
刊行物発明2における追従制御部は、先行車両のブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて、追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行するものである。
ここで、本願発明における「追従制御の追従性を緩和して」に関して、本願明細書には、「【0054】追従性の緩和は、車間追従制御においては、設定されている車間目標値Dtrgを解除するか、又は、より大きな値である緩和目標車間Dtrg’に変更することにより実現される。緩和目標車間Dtrg’は、先行車両との車間距離D1や信号機等の障害物までの距離D2、自車両の車速Vに応じて決定される値とすることができる。【0055】また、車速追従制御においては、設定されている車速目標値Vtrgを解除するか、又は、より小さな値である緩和目標車速Vtrg’に変更することにより、追従性の緩和が実現される。緩和目標車速Vtrg’は、現在の自車両の車速Vに応じて、あらかじめ設定可能な範囲が決められている。」と記載されている。すなわち、設定されている車間目標値Dtrgを解除すること、及び設定されている車速目標値Vtrgを解除することは追従性の緩和であるから、刊行物発明2における「追従制御を中断ないし停止して自車両の減速動作を実行する」は、本願発明における「追従制御の追従性を緩和して自車両の減速動作を実行する」に相当する。
また、刊行物の段落【0046】、【0047】、図2ないし図5等をみると、必ずしも、追従制御が実行可能であることを前提とするものではないが、先行車両のブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて、その後に、先行車両の減速が行われると推定して、あるいは先行車両の減速が継続すると推定して、その推定に基づいて自車両の停止用速度パターン(減速パターン)を生成している。このことからも了解されるように、追従制御を実行可能な車両の制御装置に係る刊行物発明2において、先行車両のブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて、追従制御を中断ないし停止するのは、該判定があった後に、先行車両の減速が行われると推定し、あるいは先行車両の減速が継続すると推定しているからにほかならない。してみると、刊行物発明2において、「先行車両のブレーキ操作の情報から先行車両のブレーキ操作による減速があったか否かの判定に基づいて」、「自車両の減速動作を実行する」ことは、本願発明において、「先行車両のブレーキ操作」の「情報」から「先行車両の減速が予測されたときに」、「自車両の減速動作を実行する」ことに相当するといえる。
以上からすると、刊行物発明2は本願発明の特定事項をすべて具備しており、刊行物発明2と本願発明とを対比して相違するところはない。
補足すると、刊行物の図2ないし図5等においては、先行車両のブレーキ操作の情報から先行車両のブレーキ操作による減速があったと判定されたときにも、その後、先行車両の減速が継続すると推定して自車両の減速動作を実行するが、これと略同様のことは、本願発明の実施形態においても行われている(図4の特にS114→S116→S118、段落【0072】。)。
4 むすび
以上より、本願発明は、刊行物発明2であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
第4 結語
上記第3のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2016-006370