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特許拒絶査定不服審判

2016-006335

タービンエンジン表面を腐食から保護するシステム

審判番号
2016-006335
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2011-110892外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2016年04月28日
審決日
2017年10月23日
公報発行日
2017年12月28日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (F02C)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2011-110892「タービンエンジン表面を腐食から保護するシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日出願公開、特開2011-247255、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成23年5月18日(パリ条約による優先権主張 2010年5月21日 アメリカ合衆国)の出願であって、平成27年3月20日付けで拒絶理由が通知され、同年6月30日に意見書及び手続補正書が提出され、同年12月28日付け(発送日:平成28年1月5日)で拒絶査定(以下、「原審拒絶査定」という。)がなされ、これに対し、平成28年4月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その審判請求と同時に手続補正書が提出され、その後、当審において平成29年2月20日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年8月21日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 原審拒絶査定の概要 原審拒絶査定の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1ないし10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物Aに記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A 特表2008-537581号公報(以下、「引用文献A」という。) 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶査定の概要は、次のとおりである。 本願の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1 特開2000-204902号公報(当審において新たに引用した文献。以下、「引用文献1」という。) 2 特開昭59-63301号公報(当審において新たに引用した文献。以下、「引用文献2」という。) 第4 本願発明 本願の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成29年8月21日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項によって特定されるとおりのものと認めるところ、本願発明1は次のとおりの発明である。 「【請求項1】 タービンエンジン内に配置された流体流経路に曝される表面(215)を有する第1の材料を含むタービンエンジン部品(212)と、 前記表面(215)上に配置された犠牲アノード層(214)と、 前記犠牲アノード層(214)に結合した変圧整流器(404)と、該変圧整流器(404)に電流を供給する電源(402)と を備えるシステムであって、前記犠牲アノード層(214)が、第1の材料よりも電気化学的活性の高い第2の材料からなり、第2の材料が、優先的に腐食して第1の材料を腐食から保護するよう構成されており、前記犠牲アノード層(214)が、第2の材料のパターン形成された層であって互いに接続された複数の犠牲アノード部分を含む層を含んでおり、前記変圧整流器(404)が、前記犠牲アノード層(214)に電流を印加して、第1の材料を腐食から能動的に保護するように構成されている、システム。」 本願の請求項2ないし9は、請求項1を直接又は間接的に引用することにより、請求項1の発明特定事項のすべてを発明特定事項とするものであるから、本願発明2ないし9は、本願発明1を減縮した発明である。 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1 (1) 引用文献1の記載事項 本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開2000-204902号公報(引用文献1)には、「タ―ビン、タ―ビンロ―タ、及びタ―ビン動翼」に関し、図面とともに次の記載がある。 (ア)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はタービン、タービンロータ、及びタービン動翼に係り、特に、タービンを構成する金属の腐食防止を図ったタービン、タービンロータ、及びタービン動翼に関する。」(段落【0001】) (イ)「【0035】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の態様を図面に従って説明する。 (実施の形態1)図1はディスク2と動翼3との接合部を拡大して示した斜視図、図2はその断面図である。図に示すように、ディスク2の周縁部には嵌合凸部2Aが、動翼3には翼溝3Aがそれぞれ形成され、嵌合凸部2Aを翼溝3Aに嵌合させることにより、各動翼3がディスク2に接合されている。そして、高速流体流である蒸気が動翼3に衝突することにより、ディスク2を介して低圧蒸気タービンのロータ1(図5参照)を回転させることができる。 【0036】低圧蒸気タービンで最も腐食が懸念される場所は異材が接触している最終段動翼3とディスク2の接合部である。材料組成が異なれば、腐食電位にも差違が生じ、腐食電位の低い材料側の腐食がより促進される。 【0037】本実施の形態では、動翼3の翼溝3A内面に犠牲陽極としての亜鉛4(図では太線で示してある)がロータ1の軸に対し同心円状に設けられている。なお、亜鉛4はディスク2の嵌合凸部2Aの表面に設けてもよい。亜鉛はタービン材を構成するいずれの材料より電位が低い。例えば、30℃、pH8.5、溶存酸素濃度150ppbのいわゆるCWT(複合水処理)環境下における亜鉛の電位は、-1.0Vvs.SSSC(飽和KCl 銀/塩化銀参照電極)である。通常、動翼材として使用されている12クロム鋼の腐食電位は同環境中で-0.2Vvs.SSSC程度であり、また、ロータ材(ディスク部分を含めて)の3.5NiCrMoV鋼では動翼材と同じで-0.2Vvs.SSSC程度か、あるいはそれより若干低い。 【0038】本実施の形態によれば、薄板の挿入、溶融めっき、電気めっき、Zn粉末を接着剤のペーストに混入して塗布等によって、亜鉛4を動翼3またはディスク2に設けることにより、動翼3やディスク2の腐食電位は-0.2Vvs.SSSCより低くなる。腐食電位が低くなればなるほどタービン材の応力腐食割れや腐食疲労、孔食といった腐食損傷の発生が抑制されるので、タービンの腐食損傷を予防することができる。 【0039】(実施の形態2)本実施の形態では、図3~図5に示すように、ディスク2と最終段動翼3との接合部近傍のディスク2側の外表面に、実施の形態1と同様に、犠牲陽極としての亜鉛5が設けられている。この亜鉛5はディスク2のうちロータ1の軸方向に対して垂直な部位(ディスク2の端面)に設けられている。亜鉛5はディスク2の端面に円形状に設けられている。なお、亜鉛5は上記接合面近傍の動翼3側の外表面に設けても良く、また、接合面近傍のディスク2側と動翼3側の双方の外表面に設けても良い。 【0040】上記のように亜鉛5を設けた場合、その亜鉛5の犠牲陽極としての防食効果は無限の距離まで及ぼすことはないので、防食したい場所になるべく近づける必要がある。 【0041】CWT環境下における犠牲陽極の効果はおおよそ30mm先までであるので、亜鉛5を設ける場所は接合部からの距離aが30mm以内としてある。ただ、最も効果的な場所は、上記実施の形態1で示したようにディスク2と動翼3との接合部内面であるが、この部位に犠牲陽極を設けると、犠牲陽極に隣接する場所で原子状水素が発生し、この水素が材料の脆化を引き起こす可能性がある。脆化が進んだ材料は靭性を失い、強度を落とすため、応力が加わるような場合は脆性破壊を引き起こす。このようなときは、本実施の形態が有効となる。 【0042】本実施の形態によれば、蒸気が直接接触する部分、すなわちディスク2や動翼3の外表面に犠牲陽極として亜鉛5を設けたので、ディスク2と動翼3との接合部内面における材料の水素脆化を防ぎながら、タービン材の腐食を防ぐことができる。 【0043】図6は、30℃における亜鉛(犠牲陽極)からの距離と動翼材(12クロム鋼)の腐食電位との関係を表した図である。環境はそれぞれAVT(All Vollatile Treatment:全揮発性処理、pH8.5、溶存酸素濃度<7ppb、電気伝導度8.0μS/cm)およびCWT(CombinedWater Treatment:複合水処理、pH9.5、溶存酸素濃度150ppb、電気伝導度1.0μS/cm)である。図7は、図6と同じように30℃における犠牲陽極からの距離とロータ材(3.5NiCrMoV鋼)の腐食電位との関係を表した図である。」(段落【0035】ないし【0043】) (ウ)「【0055】なお、上述した実施の形態1~4では犠牲陽極として亜鉛を用いたが、アルミニウムでも良い。また、亜鉛やアルミニウム以外で、タービンを構成する金属の腐食電位より低い金属であれば、単体の金属、合金など、形状、組成はいずれであっても良いし、複数の種類を選んでも良い。犠牲陽極を設ける方法も、金属板であっても良いし、溶着、めっきでも良い。 【0056】また、実施の形態1~3では犠牲陽極がディスク2の全周にわたって設けられていたが、犠牲陽極を円周上に部分的に設けた構成でも良く、さらに犠牲陽極の形状、大きさ、厚さは問わない。 【0057】また、タービンのホイールバランスの調整が困難である、あるいは使用中に、犠牲陽極が剥離・消耗し、ホイールバランスが崩れるおそれがあるときは、その他の薄膜形成手段を用いて犠牲陽極を形成しても良い。また、金属粉末を有機接着剤もしくは無機接着剤で担持し、塗料と同じようにタービンに塗布する手段を用いても良い。この他に、タービン材の不動態化を助ける働きを有する薬品を混在してあっても良い。この場合、粉末の周囲が絶縁層で覆われないよう、粉末間の電子伝導が維持できるような粉末の大きさ及び濃度とする必要がある。 【0058】さらに、上述した各実施の形態では本発明では、ディスク2と動翼3との接合部の構造として、Inverted Fir-Tree型を例にしたが、この他にもAxial Fir-Tree型、Multiple ForK型などいずれの構造であっても応用可能である。 【0059】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、タービン本体を構成する金属の中で最も卑な電位を有する金属より低い電位を有する犠牲陽極用の金属を設けたことにより、犠牲陽極用の金属が優先的に腐食して、ディスクと動翼との接合部等の腐食が生じやすい部位の防食を図ることができる。その結果、SCCや腐食疲労等によるタービン材の腐食損傷を確実に防止するが可能となる。 【0060】また、ディスクと動翼との接合面やディスク及び動翼の外表面に、犠牲陽極を固定するだけでよいから、タービン製造時に腐食防止の策を施すことが可能である。」(段落【0055】ないし【0060】) (2)引用発明1 上記(1)の記載並びに図1ないし4及び6の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。 「蒸気タービン内に配置され、蒸気が衝突する外表面を有する12クロム鋼を含む動翼3と、 前記外表面上に配置された犠牲陽極と を備えるシステムであって、前記犠牲陽極が、12クロム鋼よりも腐食電位が低い亜鉛からなり、亜鉛が、優先的に腐食して12クロム鋼の防食を図るよう構成されており、前記犠牲陽極が、亜鉛により形成された層であるシステム。」 2 引用文献2 (1) 引用文献2の記載事項 本願の優先日前に頒布され、当審拒絶理由で引用された特開昭59-63301号公報(引用文献2)には、「地熱用タ-ビンロ-タ」に関し、図面とともに次の記載がある。 (ア)「本発明は地熱タービンに使用されるタービンロータの改良に関する。」(第1ページ左下欄第14及び15行) (イ)「本発明の目的は、容易にかつ均一に溶射皮膜を形成することができ、耐硫化腐食性に優れたタービンロータを提供するにある。 本発明は低合金鋼のタービンロータの母材料に、その母材料に比較して電気的に卑なる材料の溶射皮膜を形成したことをタービンロータに関するものである。 本発明において、溶射皮膜の材料としてアルミニウム(Al)を選らび、このAlを低合金鋼に火炎溶射あるいはプラズマ溶射することにより達成される。Alは種々の溶射材料の中から、熱蒸気中での暴露試験結果によつて選定されたものである。Al溶射皮膜は優れた耐硫化腐食抵抗に加え、地熱蒸気中でも低合金鋼に比較し、電気的に卑であるという知見が実験によつて得られた。Al溶射層が犠牲陽極の働きをし、母料の腐食減肉を防止するという相乗効果を有することがわかつた。 本発明の実施態様は、まず防食処理を行なう部分をトリクレンなどによつて脱脂したのち、シヨツトブラストまたはサンドブラストを行ない、表面酸化スケールを除去するとともに、溶射層の機械的接着性も良くする前処理を行なう。この後に溶射装置によつてAlを溶射するもので、溶射法としてAl線を用いたメタライジング、Al粉末を用いたサーモスプレイあるいはプラズマ溶射が可能であり、いずれの方法でも同等の効果が期待できる。 実施例1 第1表に示す組成のタービンロータ材の試験片1を、第1図に示すように一部を露出させてプラズマによってAl溶射を行なつてAl溶射被膜2で被覆した。 …(中略)… 上記の第3表の結果から明らかなようにAlを溶射したタービンロータ材は、耐硫化腐食性が著しく向上しており、また他の溶射材を被覆したものと比較し、Alが犠牲陽極として働き、試験片1の露出部における減肉現象も見られなかつた。 したがつて、本発明においては、タービンロータ材にAl粉末を被覆することにより、地熱環境中という腐食環境状態においても優れた耐食性を有し、また運転中に一部の溶射層が剥離してもAl溶射被膜層21が犠牲陽極として働き、母材20を保護することから、従来に比較して一段と寿命が長くなり、優れた効果が発揮された。 実施例2 第3図に示す実施例においては、タービンケーシング22内を回転するタービンロータ23のホイール部24にAl溶射被膜層21を施こしたものである。このAl溶射被膜層21を施こしたホイール部24は、ノズルラビリンス25を通過したドレンによつてエロージヨンコロージヨンが発生し易い個所であるが、これを被膜層21によつて有効に防止するとともに、腐食に起因する割れも防止できる。この外にタービンにおける地熱環境位所にも同様に適用することにより耐食性を持たせることができる。 以上のように本発明によれば、タービンの特に地熱環境部所にAl溶射被覆を施こしたことにより、この部所の耐硫化腐食性が著しく向上し、タービン自体の安全性と耐久性を維持することができる。」(第2ページ左下欄第10行ないし第3ページ右下欄第7行) (2)引用発明2 上記(1)の記載及び第1図ないし第3図の記載からみて、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。 「地熱用タービン内に配置されたタービンロータ23の母材料を含むタービンロータ23と、 前記タービンロータ23のホイール部24上に配置されたAl溶射被膜層21からなる犠牲陽極と、 を備えるシステムであって、前記犠牲陽極が、タービンロータ23の母材料よりも電気的に卑なるAl溶射被膜層21からなり、前記Al溶射被膜層21が、犠牲陽極の働きをしてタービンロータ23の母材料の腐食減肉を防止するよう構成されており、前記犠牲陽極が、Al溶射被膜層21であるシステム。」 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)引用発明1に対する検討 ア 対比 本願発明1と引用発明1とを対比すれば、引用発明1における「蒸気タービン」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「タービンエンジン」に相当し、以下同様に、「蒸気が衝突する外表面」は「流体流経路に曝される表面」に、「12クロム鋼」は「第1の材料」に、「動翼3」は「タービンエンジン部品」に、「外表面」は「表面」に、「犠牲陽極」は「犠牲アノード層」に、「システム」は「システム」に、「腐食電位が低い」ことは「電気化学的活性の高い」ことに、「亜鉛」は「第2の材料」に、「優先的に腐食して12クロム鋼の防食を図る」ことは「第1の材料を腐食から保護する」ことに、それぞれ相当する。 よって、本願発明1と引用発明1とは、 「タービンエンジン内に配置された流体流経路に曝される表面を有する第1の材料を含むタービンエンジン部品と、 前記表面上に配置された犠牲アノード層と を備えるシステムであって、前記犠牲アノード層が、第1の材料よりも電気化学的活性の高い第2の材料からなり、第2の材料が、優先的に腐食して第1の材料を腐食から保護するよう構成されている、システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> (a)本願発明1においては「犠牲アノード層に結合した変圧整流器と、該変圧整流器に電流を供給する電源」を備え、「前記変圧整流器が、前記犠牲アノード層に電流を印加して、第1の材料を腐食から能動的に保護するように構成されている」のに対し、引用発明1においては、そのような構成を備えない点(以下、「相違点1」という。)。 (b)本願発明1においては、「犠牲アノード層が、第2の材料のパターン形成された層であって互いに接続された複数の犠牲アノード部分を含む層を含んで」いるのに対し、引用発明1においては、「犠牲陽極が亜鉛により形成された層である」ものの、該亜鉛の層がパターン形成されたものであるか否かが不明である点(以下、「相違点2」という。)。 イ 相違点に対する判断 まず、相違点1について検討すると、タービンエンジンの技術分野において、タービンエンジン部品の表面上に配置された犠牲アノード層に変圧整流器で電流を印加して、タービンエンジン部品を構成する材料を腐食から能動的に保護するという構成は、上記引用文献1及び2には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。 (2)引用発明2に対する検討 ア 対比 本願発明1と引用発明2とを対比すれば、引用発明2における「地熱用タービン」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「タービンエンジン」に相当する。 また、引用発明2におけるタービンロータ23は、その構成からみて、地熱蒸気にさらされるものであるから、引用発明2における「タービンロータ23の母材料」は、本願発明1における「流体流経路に曝される表面を有する第1の材料」に相当する。 そして、引用発明2における「タービンロータ23」は、その構造、機能又は技術的意義からみて、本願発明1における「タービンエンジン部品」に、以下同様に、「タービンロータ23のホイール部24」は流体流経路に曝される表面を有するといえるから「表面」に、「犠牲陽極」は「犠牲アノード層」に、「システム」は「システム」に、「電気的に卑なる」ことは「電気化学的活性の高い」ことに、「Al溶射被膜層21」は「第2の材料」に、「犠牲陽極の働きをしタービンロータ23の母材料の腐食減肉を防止する」ことは「優先的に腐食して第1の材料を腐食から保護する」ことに、それぞれ相当する。 よって、本願発明1と引用発明2とは、 「タービンエンジン内に配置された流体流経路に曝される表面を有する第1の材料を含むタービンエンジン部品と、 前記表面上に配置された犠牲アノード層と を備えるシステムであって、前記犠牲アノード層が、第1の材料よりも電気化学的活性の高い第2の材料からなり、第2の材料が、優先的に腐食して第1の材料を腐食から保護するよう構成されている、システム。」 である点で一致し、次の点で相違する。 <相違点> (a)本願発明1においては「犠牲アノード層に結合した変圧整流器と、該変圧整流器に電流を供給する電源」を備え、「前記変圧整流器が、前記犠牲アノード層に電流を印加して、第1の材料を腐食から能動的に保護するように構成されている」のに対し、引用発明2においては、そのような構成を備えない点(以下、「相違点3」という。)。 (b)本願発明1においては、「犠牲アノード層が、第2の材料のパターン形成された層であって互いに接続された複数の犠牲アノード部分を含む層を含んで」いるのに対し、引用発明2においては、「犠牲陽極がタービンロータ23の母材料よりも電気的に卑なるAl溶射被膜層21である」ものの、該Al溶射被膜層21がパターン形成されたものであるか否かが不明である点(以下、「相違点4」という。)。 イ 相違点に対する判断 まず、相違点3について検討すると、タービンエンジンの技術分野において、タービンエンジン部品の表面上に配置された犠牲アノード層に変圧整流器で電流を印加して、タービンエンジン部品を構成する材料を腐食から能動的に保護するという構成は、上記引用文献2及び1には記載されておらず、本願の優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって、相違点4について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし9について 上記第4に記載したように、本願発明2ないし9は本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明2ないし9は、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1又は2に基いて容易に発明することができたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 平成29年8月21日付けの補正により、補正後の請求項1は、「犠牲アノード層に結合した変圧整流器と、該変圧整流器に電流を供給する電源」を備え、「前記変圧整流器が、前記犠牲アノード層に電流を印加して、第1の材料を腐食から能動的に保護するように構成されている」ものとなった。当該「犠牲アノード層に結合した変圧整流器と、該変圧整流器に電流を供給する電源」を備え、「前記変圧整流器が、前記犠牲アノード層に電流を印加して、第1の材料を腐食から能動的に保護するように構成されている」との技術的事項は、原査定における引用文献Aには記載されていないので、本願発明1及びこれを減縮した発明である本願発明2ないし9は、当業者であっても、原査定における引用文献Aに基いて容易に発明することができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。

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2016-006335

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