特許拒絶査定不服審判
2016-005119
仮想アプリケーション拡張ポイント
- 審判番号
- 2016-005119
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-503780外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年04月07日
- 審決日
- 2017年07月21日
- 公報発行日
- 2017年09月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-503780「仮想アプリケーション拡張ポイント」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月13日国際公開、WO2011/126776、平成25年 6月17日国内公表、特表2013-524365、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は,2011年3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月6日(以下,「優先日」という。),米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年3月25日付けで手続補正がされ,平成27年4月20日付けで拒絶理由通知がされ,平成27年7月17日付けで手続補正がされ,平成27年12月2日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成28年4月7日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成28年5月31日に前置報告がされ,平成28年8月15日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定(平成27年12月2日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-20に係る発明は,以下の引用文献1-2に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.クライアント環境 劇的“カイゼン”計画 Part2 第4の仮想化環境Microsoft SoftGrid試用レポート,Windows Server World,株式会社アイ・ディ・ジー・ジャパン,2007年 9月 1日,Vol.12,No.9(通巻199号),p.53-61
2.特表2008-509475号公報
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は,特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1,15に「記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け,」及び「,前記相互作用は,前記他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるかについて検討すると,追加された前記事項は,平成27年7月17日付け手続補正により補正された請求項(以下,「補正前の請求項」という。)1,15に記載した発明を特定するために必要な事項である「仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶するプライベート名前空間」の「記憶された前記1つ又は複数の項目」が「ファイルの種類の関連付けの定義を含み」,当該「ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け」るとの限定を加え,「前記相互作用」が,「他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む」との限定を加えるものである。
また,補正前の請求項1,15に記載された発明と,補正後の請求項1,15に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するから,「記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け,」及び「,前記相互作用は,前記他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む」という事項を追加する補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように,補正後の請求項1-4に係る発明は,独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1-20に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は,平成28年4月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
デバイスで仮想アプリケーションを動作させるためにコンピュータプロセッサにより実施される方法であって,
アプリケーションバーチャライザを前記デバイスにインストールするステップであって,前記アプリケーションバーチャライザは,前記仮想アプリケーションを実行し,該仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶するプライベート名前空間を管理するように構成され,記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け,該プライベート名前空間は,当該プライベート名前空間に記憶された前記項目は前記仮想アプリケーションにより概してアクセス可能であるが,前記デバイス上の他のアプリケーションは前記プライベート名前空間に記憶された前記項目にネイティブにアクセスすることを妨げられるように,前記仮想アプリケーションに対してプライベートである,ステップと,
前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップであって,前記リンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶されたある項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記リンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用可能なように構成され,前記相互作用は,前記他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む,ステップと,
前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記リンクを,該リンクを前記デバイスのホストオペレーティングシステムのパブリック名前空間に記憶することにより作成するステップと,
前記リンクの選択を含むコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記リンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちのあるアプリケーションによって選択されたものである,ステップと,
前記リンクの選択を受けることに応答して,
記憶された前記ある項目を前記リンクから識別し,
前記あるアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目へのアクセスを介した前記特定の手法で相互作用することを可能にする
ステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
第2のリンクを前記プライベート名前空間に定めるステップであって,前記第2のリンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶された第2の項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記第2のリンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用することを可能にするように構成される,ステップと,
前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記第2のリンクを,該第2のリンクを前記パブリック名前空間に記憶することによって作成するステップと,
前記第2のリンクの選択を含む第2のコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記第2のリンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちの第2のアプリケーションにより選択されたものである,ステップと,
前記第2のリンクの選択を受けることに応答して,
記憶された前記第2の項目を前記第2のリンクから識別し,
前記第2のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目へのアクセスを介した第2の特定の手法で相互作用することを可能にする
ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のリンクは,ホストファイルシステム内に配置されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のリンクは,ホストレジストリ内に配置されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記プライベート名前空間は,前記仮想アプリケーション用の実行可能なコードを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記プライベート名前空間は,前記仮想アプリケーション用のレジストリ設定を備えることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アプリケーションバーチャライザと,前記リンクとは,インストールパッケージ内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記インストールパッケージは,
前記リンクを備えるマニフェストを読み取り,
前記ホストオペレーティングシステム内に前記リンクを構築する
インストールプログラムを備えることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記リンクの選択を含むコマンドを受けるステップは,該コマンドを,前記デバイスの第2のアプリケーションバーチャライザ内で実行される第2の仮想アプリケーションから受けるステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記仮想アプリケーションは,前記アプリケーションバーチャライザにストリーム配信されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
デバイスが,アプリケーションバーチャライザを前記デバイスにインストールするステップであって,前記アプリケーションバーチャライザは,仮想アプリケーションを実行し,該仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶するプライベート名前空間を管理するように構成され,記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け,前記プライベート名前空間は,当該プライベート名前空間に記憶された前記項目は前記仮想アプリケーションにより概してアクセス可能であるが,前記デバイス上の他のアプリケーションは前記プライベート名前空間に記憶された前記項目にネイティブにアクセスすることを妨げられるように,前記仮想アプリケーションに対してプライベートである,ステップと,
前記デバイスが,前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップであって,前記リンクは,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記リンクはマニフェストにおいて定義され,前記リンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションを前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより起動することを可能にする,ステップと,
前記デバイスが,前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記リンクを,該リンクを前記デバイスのホストオペレーティングシステムのレジストリに記憶することによって作成するステップであって,該ホストオペレーティングシステムのレジストリは前記デバイスのパブリック名前空間に配置された,ステップと,
前記デバイスが,前記特定のファイルの種類を有するあるファイルを開く要求を受けるステップと,
前記デバイスが,前記ホストオペレーティングシステムのレジストリから,前記リンクが前記特定のファイルの種類に関連付けられていることを判定するステップと,
前記デバイスが,前記リンクに従い前記あるファイルを処理するための前記仮想アプリケーションを起動するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記デバイスが,第2のリンクを前記プライベート名前空間に定めるステップであって,前記第2のリンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶された第2の項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記第2のリンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用することを可能にするように構成される,ステップと,
前記デバイスが,前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記第2のリンクを,該第2のリンクを前記パブリック名前空間に記憶することによって作成するステップと,
前記デバイスが,前記第2のリンクの選択を含む第2のコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記第2のリンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちの第2のアプリケーションにより選択されたものである,ステップと,
前記第2のリンクの選択を受けることに応答して,前記デバイスが,
記憶された前記第2の項目を前記第2のリンクから識別し,
前記第2のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目へのアクセスを介した第2の特定の手法で相互作用することを可能にする
ステップと
をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第2の要求は第2の仮想アプリケーションにより構築されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記仮想アプリケーションは,前記アプリケーションバーチャライザにストリーム配信されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
デバイスで仮想アプリケーションを動作させるための方法を実装するためのコンピュータプログラムであって,該コンピュータプログラムは,1つ又は複数のコンピュータ記憶デバイスに記憶されたコンピュータ実行命令を含み,該コンピュータ実行命令がプロセッサにより実行されると前記方法が実行され,当該方法は,
アプリケーションバーチャライザを前記デバイスにインストールするステップであって,前記アプリケーションバーチャライザは,前記仮想アプリケーションを実行し,該仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶するプライベート名前空間を管理するように構成され,記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け,該プライベート名前空間は,当該プライベート名前空間に記憶された前記項目は前記仮想アプリケーションにより概してアクセス可能であるが,前記デバイス上の他のアプリケーションは前記プライベート名前空間に記憶された前記項目にネイティブにアクセスすることを妨げられるように,前記仮想アプリケーションに対してプライベートである,ステップと,
前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップであって,前記リンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶されたある項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記リンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用可能なように構成され,前記相互作用は,前記他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む,ステップと,
前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記リンクを,該リンクを前記デバイスのホストオペレーティングシステムのパブリック名前空間に記憶することにより作成するステップと,
前記リンクの選択を含むコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記リンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちのあるアプリケーションによって選択されたものである,ステップと,
前記リンクの選択を受けることに応答して,
記憶された前記ある項目を前記リンクから識別し,
前記あるアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目へのアクセスを介した前記特定の手法で相互作用することを可能にする
ステップと
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータ実行命令であって,実行されると,
第2のリンクを前記プライベート名前空間に定めるステップであって,前記第2のリンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶された第2の項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記第2のリンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用することを可能にするように構成される,ステップと,
前記他のアプリケーションによりアクセス可能な前記第2のリンクを,該第2のリンクを前記パブリック名前空間に記憶することによって作成するステップと,
前記第2のリンクの選択を含む第2のコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記第2のリンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちの第2のアプリケーションにより選択されたものである,ステップと,
前記第2のリンクの選択を受けることに応答して,
記憶された前記第2の項目を前記第2のリンクから識別し,
前記第2のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記第2の項目へのアクセスを介した第2の特定の手法で相互作用することを可能にする
ステップと
を実行する前記コンピュータ実行命令をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記あるアプリケーション及び前記第2のアプリケーションは同じアプリケーションであることを特徴とする請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記プライベート名前空間は第1のプライベート名前空間であり,前記あるアプリケーションは第2の仮想化アプリケーションであり,該第2の仮想化アプリケーションは,第2のプライベート名前空間に記憶された1つ又は複数の第2の項目に関係し,該第2のプライベート名前空間は前記第1のプライベート名前空間とは異なることを特徴とする請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
実行されると前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップを実行するコンピュータ実行命令は,実行されると,パラメータを前記仮想アプリケーションに渡すことと前記仮想アプリケーションに対する構成情報をトラバースすることのうちの一方を可能とする前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップを実行するコンピュータ実行命令を含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
実行されると前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップを実行するコンピュータ実行命令は,実行されると,前記パブリック名前空間内のファイルシステムと前記パブリック名前空間内のレジストリのうちの一方から前記プライベート名前空間へのリンクを定めるステップを実行するコンピュータ実行命令を含むことを特徴とする請求項15に記載のコンピュータプログラム。」
(当審注:下線は,請求人が付与したものである。)
第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
ア 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されていると解される。
(ア) 55-56頁の記載からすると,引用文献1には,
“配信されるアプリケーションのパッケージには,アプリケーションがインストールされた仮想ランタイム環境が含まれ,前記アプリケーションは,前記仮想ランタイム環境から起動,実行され,クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離される”ことが記載されていると解される。
(イ) 図2(55頁)及び56頁の記載からすると,引用文献1には,
“仮想ランタイム環境はクライアントのプロセッサとメモリを使用し,クライアントのローカルドライブやネットワーク共有,USBデバイス,プリンタなどのリソースにアクセスでき,仮想ランタイム環境内のアプリケーションはクライアントのOSのファイルシステムに対して読み書きすることができる”ことが記載されていると解される。
(ウ) 56-57,59,61頁の記載からすると,引用文献1には,
“アプリケーションは,パッケージ化される際にファイル拡張子と関連付けられており,クライアント側で自動的に前記アプリケーションの仮想ランタイム環境のセットアップが行われると,前記アプリケーションとファイルの拡張子との関連付けが登録され,その後,アプリケーションの起動が要求されると,オンデマンドでサーバからアプリケーション本体がストリーミング配信される”ことが記載されていると解される。
イ したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「クライアントでアプリケーションを動作させるためにクライアントにより実施される方法であって,
仮想ランタイム環境を前記クライアントにセットアップするステップであって,
前記アプリケーションとファイル拡張子との関連付けが登録され,
前記仮想ランタイム環境は,
クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離された環境で前記アプリケーションを起動,実行し,かつ,
クライアントのプロセッサとメモリを使用し,クライアントのローカルドライブやネットワーク共有,USBデバイス,プリンタなどのリソースにアクセスするとともに,仮想ランタイム環境内のアプリケーションが,クライアントのOSのファイルシステムに対して読み書きすることを可能とする
ステップと,
アプリケーションの起動が要求されると,オンデマンドでサーバからアプリケーション本体がストリーミング配信される,ステップ
とを含むことを特徴とする方法。」
2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の【要約】,段落【0014】-段落【0015】,段落【0110】,段絡【0112】の記載からみて,当該引用文献2には,アプリケーションが稼働し得る仮想環境を提供するコンピュータにおいて,各リソース404,405,406は別々の名前空間コンテナオブジェクトに格納されており,アプリケーションB403用に構成されたリソース406を,他のアプリケーションA402が使用することを可能にするという技術的事項が記載されていると認められる。
第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。
引用発明における「クライアント」,「アプリケーション」,「セットアップする」,「アプリケーションとファイル拡張子との関連付け」,「クライアントのOS環境」は,本願発明1における「デバイス」,「仮想アプリケーション」,「インストールする」,「仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け」る「ファイルの種類の関連付け」,「ホストオペレーティングシステムのパブリック名前空間」に相当する。
また,引用発明では,「クライアント」が仮想ランタイム環境を介してアプリケーションを起動,実行するところ,一般的に,コンピュータにおいてクライアントの動作を実際に制御するのはプロセッサであることから,引用発明の「クライアントのプロセッサ」が,本願発明1の「コンピュータプロセッサ」に相当する。
さらに,引用発明では,「仮想ランタイム環境は,クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離された環境で前記アプリケーションを起動,実行」するところ,仮想ランタイム環境は,OS環境や別のアプリケーションとは別個の,切り離された環境で,当該アプリケーションを動作させることを可能とするものと解されることから,引用発明の「仮想ランタイム環境」,「クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離された環境」は,それぞれ本願発明1の「アプリケーションバーチャライザ」,「プライベート名前空間」に対応し,引用発明の「仮想ランタイム環境」と本願発明1の「アプリケーションバーチャライザ」とは“仮想アプリケーションを実行し,プライベート名前空間を管理するように構成され”る点で共通するといえる。
また,引用発明の「仮想ランタイム環境」は,アプリケーションを起動,実行することから,当該アプリケーションの起動,実行に関連する1つ又は複数のパラメータや定義などのデータを有しているものと解され,本願発明1の「プライベート名前空間」と,“仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶する”点で共通するといえる。
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
<一致点>
「デバイスで仮想アプリケーションを動作させるためにコンピュータプロセッサにより実施される方法であって,
アプリケーションバーチャライザを前記デバイスにインストールするステップであって,前記アプリケーションバーチャライザは,前記仮想アプリケーションを実行し,該仮想アプリケーションに関する1つ又は複数の項目を記憶するプライベート名前空間を管理するように構成され,該プライベート名前空間は,当該プライベート名前空間に記憶された前記項目は前記仮想アプリケーションにより概してアクセス可能であるが,前記デバイス上の他のアプリケーションは前記プライベート名前空間に記憶された前記項目にネイティブにアクセスすることを妨げられるように,前記仮想アプリケーションに対してプライベートである,ステップ
を含むことを特徴とする方法。」
<相違点1>
本願発明1は「プライベート名前空間へのリンクを定めるステップであって,前記リンクは,記憶された前記1つ又は複数の項目から選択された,記憶されたある項目にアクセスするための拡張ポイントを提供し,前記リンクは,前記他のアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目にアクセスすることによる特定の手法で相互作用可能なように構成され,前記相互作用は,前記他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動することを含む,ステップ」と,「他のアプリケーションによりアクセス可能な前記リンクを,該リンクを前記デバイスのホストオペレーティングシステムのパブリック名前空間に記憶することにより作成するステップ」とを備えるのに対し,引用発明は,仮想アプリケーションがOS環境にアクセスすることは可能とするものの,パブリック名前空間にプライベート名前空間へのリンクを記憶させ,他のアプリケーションが当該リンクにアクセス可能とする構成は記載されていない点。
<相違点2>
本願発明1は「リンクの選択を含むコマンドを前記アプリケーションバーチャライザで受けるステップであって,前記リンクは,前記パブリック名前空間から,前記他のアプリケーションのうちのあるアプリケーションによって選択されたものである,ステップと,
前記リンクの選択を受けることに応答して,
記憶された前記ある項目を前記リンクから識別し,
前記あるアプリケーションが前記仮想アプリケーションと,記憶された前記ある項目へのアクセスを介した前記特定の手法で相互作用することを可能にするステップ」とを備えるのに対して,引用発明では,リンクの選択を含むコマンドについて言及されていない点。
<相違点3>
本願発明1は「記憶された前記1つ又は複数の項目は,ファイルの種類の関連付けの定義を含み,該ファイルの種類の関連付けは,前記仮想アプリケーションを特定のファイルの種類に関連付け」であるという構成を備えるのに対し,引用発明では,「クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離された環境」が「アプリケーションとファイル拡張子との関連付け」を有しているか言及されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1について検討すると,引用発明では,仮想ランタイム環境にインストールされているアプリケーションを,前記仮想ランタイム環境によって起動,実行するところ,インストールされていない,別のアプリケーションがアクセスできる,プライベート名前空間へのリンクをクライアントのOS環境に設けることの動機付けを直ちに見い出すことはできない。
また,引用文献2には(「第5 2.」を参照),アプリケーションが稼働し得る仮想環境を提供するコンピュータにおいて,アプリケーションB403用に構成されたリソース406を,他のアプリケーションA402が使用する点が記載されているものの,他のアプリケーションAがアクセス可能な,アプリケーションBへのリンクをOS環境に設けることは言及されていない。
加えて,アプリケーションBへのリンクをOS環境に記憶し,他のアプリケーションAが前記リンクにアクセスすることによってアプリケーションBのリソースにアクセス可能とすることが,本願の優先日前に当該技術分野における周知技術であったとも認められない。
そうすると,引用発明において,仮想ランタイム環境にインストールされているアプリケーションとは別のアプリケーションがアクセスできる,クライアントのOS環境や別のアプリケーションからは完全に分離された環境へのリンクを,クライアントのOS環境に設けること,すなわち,上記相違点1に係る構成とすることは,当業者が適宜なし得たものであるとすることはできない。
したがって,上記相違点2,3について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明及び引用例2に記載の技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
2.本願発明2-10について
本願発明2-10も,本願発明1の「他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動すること」が可能なように構成されたリンクと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3.本願発明11-14について
本願発明11-14は,本願発明1,2,9,10に対応する方法の発明であり,本願発明1の「他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動すること」が可能なように構成されたリンクと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
4.本願発明15-20について
本願発明15は,本願発明1に対応するコンピュータプログラム発明であり,本願発明15-20は,本願発明1の「他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動すること」が可能なように構成されたリンクと同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定について
理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により,本願発明1-20は,「他のアプリケーションが,前記ファイルの種類の関連付けにアクセスすることにより,前記仮想アプリケーションを起動すること」が可能なように構成されたリンクを有するものとなっており,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1-2に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
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